(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172377
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B65G1/04 555Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090051
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩本 国大
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022EE01
3F022EE04
3F022EE05
3F022EE09
3F022FF01
3F022JJ11
3F022KK01
3F022MM55
3F022QQ00
(57)【要約】
【課題】載置台を昇降させる伸縮部の寿命を向上する搬送システムを実現する。
【解決手段】本開示の一形態に係る搬送システムは、移動可能な移動部11と、移動部11上に設けられた鉛直方向に伸縮可能な伸縮部12と、伸縮部12の先端に取り付けられた載置台13と、載置台13と棚2の間で荷物を移載する際の移動部11から見た棚2の方向を、伸縮部12に蓄積される応力負荷が伸縮部12の周方向で平準化されるように選択する制御部14とを備える
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な移動部と、
前記移動部に設けられ、上下方向に伸縮する伸縮部と、
前記伸縮部の先端に取り付けられた載置台と、
前記載置台と棚の間で荷物を移載する際の前記移動部から見た前記棚の方向である移載方向を、前記伸縮部に蓄積される応力負荷が前記伸縮部の周方向で平準化されるように選択する制御部と
を備える搬送システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記制御部によって過去に選択された移載方向を示す方向履歴に基づいて前記移載方向を選択する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記制御部は、過去に前記載置台と前記棚の間で移載された荷物の重量を示す重量履歴にさらに基づいて前記移載方向を選択する
請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記制御部は、過去に前記載置台と前記棚の間で荷物を移載したときの前記載置台と前記棚の間の距離を示す距離履歴にさらに基づいて前記移載方向を選択する
請求項2または3のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項5】
前記制御部は、複数の方向の中から前記移載方向をランダムに選択する
請求項1に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送システムに関し、特に搬送ロボットと棚の間で荷物を移載する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、荷物載置部との間で荷物を移載可能な搬送車に関する技術を開示している。搬送車は、搬送車に移載された荷物の走行方向へのずれ量を検出した後、荷物を荷物載置部に移載し、ずれ量に応じた補償量走行し、荷物載置部から収納部へ荷物を移載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
棚と載置台の間で荷物を移載する際、載置台に偏った荷重がかかる。したがって、載置台を昇降させる伸縮部に応力負荷が蓄積し、伸縮部の耐久性が低下する恐れがある。
【0005】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、載置台を昇降させる伸縮部の寿命を向上する搬送システムを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の搬送システムは、
移動可能な移動部と、
前記移動部上に設けられ、上下方向に伸縮する伸縮部と、
前記伸縮部の先端に取り付けられた載置台と、
前記載置台と棚の間で荷物を移載する際の前記移動部から見た前記棚の方向である移載方向を、前記伸縮部に蓄積される応力負荷が前記伸縮部の周方向で平準化されるように選択する制御部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、載置台を昇降させる伸縮部の寿命を向上する搬送システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1にかかる搬送ロボットの機能構成を説明する図である。
【
図2】実施形態1にかかる搬送ロボットの側面図および上面図である。
【
図3】実施形態1にかかる搬送ロボットの動作を説明する図である。
【
図4】実施形態1にかかる搬送ロボットの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0010】
実施形態1
以下、図面を参照して実施形態1にかかる搬送システムについて説明する。搬送システムは、荷物を搬送する搬送ロボットを備える。搬送システムは、搬送ロボットによる荷物の搬送を管理するサーバをさらに備えていてもよい。この場合、実施形態1にかかる搬送ロボットが備える機能の一部は、サーバに備えられていてもよい。なお、搬送ロボットにおいて処理が完結したシステムも、実施形態1にかかる搬送システムには含まれ得る。
【0011】
図1は、実施形態1にかかる搬送ロボット1の機能構成を説明する図である。
図2は、搬送ロボット1の側面図および上面図を示す。なお、
図2、
図3、および
図4の説明における上下方向、左右方向、および前後方向は、搬送ロボット1の向きを基準とする方向である。
【0012】
搬送ロボット1は、棚との間で荷物(例:通函)を移載可能に構成される。搬送ロボット1は、荷物を搬送し、搬送した荷物を棚に格納する。また、搬送ロボット1は、棚から荷物を取り出し、取り出した荷物を搬送する。搬送システムは、棚を含んでいてもよい。
【0013】
棚は、複数段の高さに荷物を収容可能に構成されていてもよい。棚に収容された荷物は、搬送ロボット1へ移載可能な状態で支持される。例えば、荷物(例:通函)の両サイド(例:つば)が、支持部材により支持されてもよい。また、棚2は、後述する載置台13の昇降をガイドするガイドレールを備えていてもよい。
【0014】
搬送ロボット1は、移動部11、伸縮部12、載置台13、および制御部14を備えている。上述した搬送ロボット1の向きは、移動部11の向きに対応する。
【0015】
移動部11は、本体111、一対の車輪112、およびモータ113を備える。一対の車輪112は、本体111の左右に回転可能に設けられている。モータ113は、減速機などを介して各車輪112を回転させる。駆動力を与えられないキャスタが、さらに設けられていてもよい。モータ113は、制御部14からの制御信号に応じて各車輪112を回転させる。これにより、本体111は任意の位置に移動する。移動部11は、各車輪112に設けられた回転センサにより検出された車輪112の回転情報などに基づいて、フィードバック制御、ロバスト制御等の周知の制御を行うことで、搬送ロボット1の移動を制御してもよい。
【0016】
棚との間で荷物が移載される際、本体111は棚の前に移動する。このとき、移動部11は、上記の制御信号に基づいて本体111の所定方向を棚に向ける。所定方向は、例えば、左方向または右方向であってもよい。また、所定方向は、前方向または後方向であってもよい。
【0017】
伸縮部12は、移動部11上、つまり本体111上に設けられている。伸縮部12が上下方向に伸縮することで、載置台13が昇降する。伸縮部12は、上下方向へ伸縮するテレスコピック型の伸縮機構として構成されていてもよい。伸縮部12は、制御部14からの制御信号に応じて伸縮する。これにより、荷物を載置台13と棚の間で移載できるように、載置台13の高さが制御される。
【0018】
載置台13は、伸縮部12の先端に設けられる。載置台13は、荷物を載置可能な台であり、天板とも言われる。なお、載置台13には、上記のガイドレールと篏合する溝(不図示)が形成されていてもよい。この場合、載置台13は、鉛直軸周りに回転可能に構成されていてもよい。
【0019】
搬送ロボット1は、棚から荷物を出し入れするための図示しない伸縮アーム(例:フック付きのアーム)を備えていてもよい。伸縮アームは、載置台13に取り付けられていてもよい。制御部14からの制御信号に応じて伸縮アームが伸縮することで、棚と載置台13の間で荷物が移載される。ただし、棚との間で荷物を移載する方法は、伸縮アームを用いる方法には限定されない。例えば、載置台13自体が棚に向かって平行移動してもよい。また、載置台13に多関節のロボットアームが設けられ、ロボットアームが棚から荷物を出し入れしてもよい。伸縮アームやロボットアームは棚側に設けられていてもよい。
【0020】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)141、メモリ142、およびインタフェース部(I/F)143などからなるマイクロコンピュータを中心にしてハードウェア構成されている。CPU141は、制御処理、演算処理等を行う。メモリ142は、CPU141によって実行される制御プログラム、演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)からなる。インタフェース部143は、外部と信号の入出力を行う。CPU141、メモリ142、およびインタフェース部143は、データバスを介して相互に接続されている。
【0021】
制御部14は、移動部11および伸縮部12の動作を制御する機能を備える。制御部14は、センサにより検出された距離情報、移動環境の地図情報などの情報に基づいて、移動部11および伸縮部12等の動作を制御してもよい。
【0022】
制御部14は、移動部11に制御信号を送信することで各車輪112の回転を制御し、本体111を任意の位置に移動させる。このとき、本体111の向きも任意の方向に変えられる。また、制御部14は、伸縮部12に制御信号を送信することで、載置台13の高さを制御する。制御部14は、さらに、伸縮アームに制御信号を送信することで、載置台13と棚の間で荷物を移載してもよい。
【0023】
また、制御部14は、荷物を移載する際の移動部11から見た棚の方向(移載方向と言われる)を選択する機能(選択機能とも言われる)を備える。換言すると、制御部14は、荷物を移載するときに本体111のどの方向を棚の開口に向けるかを選択する。移動部11から見た棚の方向は、搬送ロボット1から見た棚の方向とも言える。制御部14は、伸縮部12に蓄積される応力負荷が伸縮部12の周方向で平準化されるように移載方向を選択する。
【0024】
図3および
図4を参照し、搬送ロボット1の動作を具体的に説明する。
図3は、制御部14が左方向を選択したときの搬送ロボット1の動作を示している。
図4は、制御部14が右方向を選択したときの搬送ロボット1の動作を示している。
【0025】
棚2は、荷物20を収容されている。荷物20の両サイドが、支持部材21により支持される。搬送ロボット1が棚2から荷物20を取り出す際、搬送ロボット1の伸縮部12は、載置台13を荷物20の高さまで上昇させる。そして、伸縮アーム15等を用いて荷物20を引き寄せる。
【0026】
図3の場合、伸縮部12の左側に圧縮応力が発生し、伸縮部12の右側に引張応力が発生する。
図4の場合、伸縮部12の右側に圧縮応力がかかり、伸縮部12の左側に引張応力が発生する。載置台13に載置された荷物を棚2に格納する場合も同様である。なお、伸縮部12の基端部に発生する応力が大きいことが知られている。
【0027】
制御部14が左方向を選択する回数が多い場合、伸縮部12の左側に圧縮応力が蓄積しやすく、伸縮部12の右側に引張応力が蓄積し易い。同様に、制御部14が右方向を選択する回数が多い場合、伸縮部12の右側に圧縮応力が蓄積しやすく、伸縮部12の左側に引張応力が蓄積され易い。
【0028】
そこで、制御部14は、左方向を選択した回数が右方向を選択した回数に近くなるように移載方向を選択してもよい。例えば、制御部14は、左方向および右方向の中から移載方向をランダムに選択してもよい。また、制御部14は、過去に選択された移載方向を示す履歴(方向履歴と言われる)に基づいて、左方向および右方向のうち過去に選択された回数が少ない方向を選択してもよい。また、制御部14は、直近に移載方向として選択された方向とは異なる方向を選択してもよい。同じ方向が連続して選択されることを防止することで、伸縮部12に応力が蓄積することを防止できる。
【0029】
また、荷物の重量が重いほど、伸縮部12に発生する応力が大きい。そこで、制御部14は、過去に載置台13と棚2との間で移載された荷物の重量を示す履歴(重量履歴と言われる)にさらに基づいて移載方向を選択してもよい。過去に移載された荷物の重量が、その荷物を移載するために選択された移載方向と対応付けられていてもよい。
【0030】
制御部14は、過去に重い荷物が移載された方向が選択されにくくなるように移載方向を選択してもよい。例えば、制御部14は、左方向が移載方向として選択された荷物の重量の和を計算し、右方向が移載方向として選択された荷物の重量の和を計算し、和が小さい方向を選択してもよい。また、制御部14は、閾値以上の重量を有する荷物の移載方向として選択された回数が少ない方向を選択してもよい。制御部14は、移載する荷物の重量を加味して移載方向を選択してもよい。搬送ロボット1は、荷物の重量についての重量情報をサーバから受け取ってもよい。
【0031】
さらに、搬送ロボット1と棚2の間の距離が大きいほど、伸縮部12に発生する応力が大きい。そこで、制御部14は、過去に載置台13と棚2の間で荷物が移載されたときの載置台13と棚2の間の距離(移載距離と言われる)を示す履歴(距離履歴と言われる)にさらに基づいて移載方向を選択してもよい。制御部14は、例えば、左方向が移載方向として選択された複数の荷物の各々の重量と、その荷物を移載したときの移載距離との積の和を計算する。同様に、制御部14は、右方向が移載方向として選択された複数の荷物の各々の重量と、その荷物を移載したときの移載距離との積の和を計算する。そして、制御部14は、和が小さい方向を移載方向として選択してもよい。
【0032】
なお、移載方向が左方向または右方向である場合を例に挙げたが、移載方向が前方向または後方向である場合も同様の説明が可能である。さらに、移載方向が、3つ以上の方向(例:前後左右)から選択されることも可能である。
【0033】
制御部14は、伸縮部12に蓄積される応力負荷を伸縮部12の周方向で平準化する。したがって、実施形態1にかかる搬送システムは、伸縮部12の耐久性の低下を防止し、伸縮部の寿命を向上できる。
【0034】
搬送システムは、機能要素の全てが搬送ロボット1に集約された構成でなくてもよい。例えば、制御部14が有する選択機能は、搬送ロボット1とネットワークを介して接続されたサーバが備える演算部が担ってもよい。この場合、サーバは、選択した方向を搬送ロボット1へ送信する。また、方向履歴、重量履歴、距離履歴等は、サーバに記憶されていてもよい。このように、サーバと搬送ロボット1を含むように搬送システムを構成してもよい。上述したプロセッサやメモリは、サーバにあってもよく、搬送ロボット1とサーバの両方にあってもよい。
【0035】
上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0036】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 搬送ロボット
11 移動部
111 本体
112 車輪
113 モータ
12 伸縮部
13 載置台
14 制御部
141 CPU
142 メモリ
143 インタフェース部
15 伸縮アーム
2 棚
21 支持部材
20 荷物