(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172381
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/056 20060101AFI20241205BHJP
F04D 29/10 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F04D29/056 Z
F04D29/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090057
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】栗田 剛
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC19
3H130BA53D
3H130BA53E
3H130BA73E
3H130BA73F
3H130BA73Z
3H130BA74E
3H130BA74F
3H130BA74Z
3H130DB03Z
3H130DC11X
3H130DH02X
3H130DH04X
3H130EA06F
3H130EA06Z
3H130EA07F
3H130EA07Z
3H130EB01F
3H130EB01Z
3H130ED04F
3H130ED04Z
(57)【要約】
【課題】潤滑油の漏れを抑制可能な送風機を提供する。
【解決手段】送風機10は、上方に開口する凹部63を有するハウジング60と、貫通孔71を有し、凹部内に配置されたスリーブ70と、貫通孔を貫通するシャフト314と、前記シャフトが貫通した状態で前記スリーブの上方に配置されるキャップ部80と、前記シャフトの上端に接続されたプロペラ31と、凹部内に収容された潤滑油90と、を備えている。前記キャップ部は、第一キャップ81と、前記第一キャップよりも上方に配置された第二キャップ82とを備えている。前記第一キャップは、前記シャフトが貫通する第一貫通部813と、第一通気口814とを備えている。前記第二キャップは、前記シャフトが貫通する第二貫通部823を備えている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する凹部を有するハウジングと、
貫通孔を有し、前記凹部内に配置されたスリーブと、
前記貫通孔を貫通するシャフトと、
前記シャフトが貫通した状態で前記スリーブの上方に配置されるキャップ部と、
前記シャフトの上端に接続されたプロペラと、
前記凹部内に収容された潤滑油と、
を備え、
前記キャップ部は、第一キャップと、前記第一キャップよりも上方に配置された第二キャップとを備え、
前記第一キャップは、前記シャフトが貫通する第一貫通部と、第一通気口とを備え、
前記第二キャップは、前記シャフトが貫通する第二貫通部を備える、
送風機。
【請求項2】
前記第一通気口は、前記第一貫通部に形成された切欠である、
請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記第二キャップは、第二通気口を備える、
請求項1または2に記載の送風機。
【請求項4】
前記第二通気口は、前記第二貫通部に形成された切欠である、
請求項3に記載の送風機。
【請求項5】
前記第一キャップと前記第二キャップとの第一間隔は、前記スリーブと前記第一キャップとの第二間隔よりも大きい、
請求項1または2に記載の送風機。
【請求項6】
前記第一キャップの外周部には、切欠状の第一凹部が形成されている、
請求項1または2に記載の送風機。
【請求項7】
前記第二キャップの外周部には、上下方向視で前記第一凹部に重なる切欠状の第二凹部が形成されている、
請求項6に記載の送風機。
【請求項8】
上下方向視において前記第二凹部の大きさは、前記第一凹部の大きさ以上である、
請求項7に記載の送風機。
【請求項9】
前記第一キャップの外周部には、当該第一キャップの中心に向かって延びるスリットが形成されている、
請求項1または2に記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノートパソコン、車載用電子機器(カーナビゲーションシステム及びLEDヘッドライド等)などの電子機器に搭載される送風機においては、シャフトと、当該シャフトを回転自在に保持するスリーブとの間に潤滑油が充填されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、使用時においては潤滑油が漏れ出るおそれがあった。そこで、本開示の目的は、潤滑油の漏れを抑制可能な送風機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る送風機は、上方に開口する凹部を有するハウジングと、貫通孔を有し、前記凹部内に配置されたスリーブと、前記貫通孔を貫通するシャフトと、前記シャフトが貫通した状態で前記スリーブの上方に配置されるキャップ部と、前記シャフトの上端に接続されたプロペラと、前記凹部内に収容された潤滑油と、を備え、前記キャップ部は、第一キャップと、前記第一キャップよりも上方に配置された第二キャップとを備え、前記第一キャップは、前記シャフトが貫通する第一貫通部と、第一通気口とを備え、前記第二キャップは、前記シャフトが貫通する第二貫通部を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様に係る送風機によれば、潤滑油の漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る送風機の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る送風機の断面斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る軸受部及びシャフトの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係るハウジングの上面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係るスリーブの断面斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係るキャップ部を示す上面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る第一キャップを上方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る第一キャップを下方から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る第二キャップを上方から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る第二キャップを下方から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る軸受部を示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態に係る送風機の一部を拡大して示す断面図である。
【
図13】
図13は、実施の形態に係る送風機において軸方向が水平に沿う姿勢で配置された場合を示す部分断面図である。
【
図14】
図14は、変形例1に係る第二キャップを示す上面図である。
【
図15】
図15は、変形例2に係る第二キャップを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
技術1に係る送風機は、上方に開口する凹部を有するハウジングと、貫通孔を有し、前記凹部内に配置されたスリーブと、前記貫通孔を貫通するシャフトと、前記シャフトが貫通した状態で前記スリーブの上方に配置されるキャップ部と、前記シャフトの上端に接続されたプロペラと、前記凹部内に収容された潤滑油と、を備え、前記キャップ部は、第一キャップと、前記第一キャップよりも上方に配置された第二キャップとを備え、前記第一キャップは、前記シャフトが貫通する第一貫通部と、第一通気口とを備え、前記第二キャップは、前記シャフトが貫通する第二貫通部を備える。
【0009】
ここで、潤滑油内に気泡が含まれていると、その気泡を起因としてシャフトとスリーブとが直接的に接触してしまい、焼き付けを発生させるおそれがある。本形態のように第一キャップが第一通気口を有していれば、この第一通気口から気泡を外部へ放出することができ、気泡を起因とした焼き付けを抑制できる。そして、キャップ部は、第一キャップと第二キャップとからなる二重構造であるので、第一キャップの第一貫通部及び第一通気口から潤滑油が漏れたとしても第二キャップでそれ以上の漏れ出しを抑制できる。特に、第一キャップから漏れ出た潤滑油は、第一通気口から第一キャップの内方に戻すことも可能である。これらのことにより、潤滑油の漏れを抑制できる。
【0010】
技術2は、技術1に記載の送風機であって、前記第一通気口は、前記第一貫通部に形成された切欠である、としてもよい。
【0011】
潤滑油内の気泡は、シャフトの周辺に集まりやすい特性があるので、第一通気口が第一貫通部に形成された切欠であれば、第一通気口に気泡が集まることになり、気泡を放出させやすい。これにより、気泡を起因とした焼き付けをより抑制できる。
【0012】
技術3は、技術1または技術2に記載の送風機であって、前記第二キャップは、第二通気口を備える、としてもよい。
【0013】
これによれば、第二キャップが第二通気口を有しているので、第一通気口から放出された気泡を第二通気口からより外方へ放出させることができる。したがって、気泡の放出をスムーズに行うことができる。
【0014】
技術4は、技術3に記載の送風機であって、前記第二通気口は、前記第二貫通部に形成された切欠である、としてもよい。
【0015】
これによれば、第二通気口が第二貫通部に形成された切欠であるので、シャフトの周辺に集まる気泡を効率的に第二通気口から外部へと放出できる。
【0016】
技術5は、技術1~技術4のいずれかひとつに記載の送風機であって、前記第一キャップと前記第二キャップとの第一間隔は、前記スリーブと前記第一キャップとの第二間隔よりも大きい、としてもよい。
【0017】
これによれば、第一間隔が第二間隔よりも広いので、第一間隔内に潤滑油が漏れ出たとしても第一間隔で潤滑油を留めることができる。これにより、潤滑油が第二キャップから漏れ出ることを抑制できる。さらに、第二間隔が第一間隔よりも小さいので、第二間隔内に潤滑油を循環させようとする圧力を発生させやすい。これにより、潤滑油をスムーズに循環させることも可能である。
【0018】
技術6は、技術1~技術5のいずれかひとつに記載の送風機であって、前記第一キャップの外周部には、切欠状の第一凹部が形成されている、としてもよい。
【0019】
これによれば、第一キャップの外周部に第一凹部が形成されているので、第一凹部からも気泡を放出できる。さらに、第一キャップと第二キャップとの間にある潤滑油を第一凹部からハウジングの凹部内に回収できる。
【0020】
技術7は、技術6に記載の送風機であって、前記第二キャップの外周部には、上下方向視で前記第一凹部に重なる切欠状の第二凹部が形成されている、としてもよい。
【0021】
これによれば、第二キャップの外周部に、第一凹部に重なる第二凹部が形成されているので、第一凹部から放出された気泡を第二凹部からより外方に放出させることができる。
【0022】
技術8は、技術7に記載の送風機であって、上下方向視において前記第二凹部の大きさは、前記第一凹部の大きさ以上である、としてもよい。
【0023】
これによれば、上下方向視で第二凹部の大きさが第一凹部の大きさ以上であるので、万が一、第二キャップの外方に潤滑油が漏れ出たとしても、その潤滑油を第二凹部から第一凹部へと導くことができ、潤滑油の回収を促すことができる。第一凹部の大きさが毛細管現象を発揮できる大きさであれば、回収の促進効果も高められる。
【0024】
技術9は、技術1~技術8のいずれかひとつに記載の送風機であって、前記第一キャップの外周部には、当該第一キャップの中心に向かって延びるスリットが形成されている、としてもよい。
【0025】
これによれば、第一キャップの外周部にスリットが形成されているので、第一キャップと第二キャップとの間に漏れ出た潤滑油をスリットからハウジングの凹部内に回収できる。
【0026】
(実施の形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る送風機について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0027】
以下の説明及び図面中において、送風機に備わるシャフトの軸方向をZ軸方向と定義し、Z軸方向に直交する平面内において互いに直交する各方向を、X軸方向及びY軸方向と定義する。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0028】
以下の説明において、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行であるとは、当該2つの方向が完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行であること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0029】
[送風機の構成]
まず、実施の形態に係る送風機10の概要について説明する。
図1は、実施の形態に係る送風機10の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る送風機10の断面斜視図である。具体的には、
図2は、
図1におけるII-II線を含む切断面を見た断面斜視図である。
【0030】
図1~
図2に示すように、実施の形態に係る送風機10は、フレーム20と、ロータ部30と、ステータ部40と、軸受部50とを有している。
【0031】
フレーム20は、ロータ部30と、ステータ部40と、軸受部50と収容する部材であり、上下方向に開放した円柱状の開口部21を有している。開口部21内における下端部は、開口部21の内縁から中央に向けて延びる複数の梁部22(
図2では1つのみ図示)が放射状に配置されている。複数の梁部22の先端部には、ロータ部30、ステータ部40及び軸受部50を保持する基台23が連結されている。つまり、基台23は、開口部21の中央部に配置されている。
【0032】
ロータ部30は、プロペラ31と、ヨーク32と、マグネット33とを有している。プロペラ31は、有底円筒状の本体部311と、本体部311の周囲から外方に延びる複数の羽根312とを有している。
【0033】
本体部311は、上方に底部313を有し、下方が開放された円筒状に形成されている。本体部311の内周面には、円筒状のヨーク32が取り付けられており、このヨーク32の内周面には、円筒状のマグネット33が取り付けられている。底部313において平面視(Z軸方向視)の中央部には、Z軸方向を軸方向とする円柱状のシャフト314が固定されている。
【0034】
ステータ部40は、駆動電流に応じて時速を発生される部位である。ステータ部40は、ステータコア41と、当該ステータコア41に取り付けられた複数のコイル42と、各コイル42に電力を供給するための回路基板43とを有している。ステータコア41は、例えば、珪素鋼板等の電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなる。ステータコア41は、基台23に直接的あるいは間接的に固定されている。ステータコア41は、外方に向けて突出した複数のティース411を有しており、この各ティース411に対して各コイル42が取り付けられている。これにより、複数のコイル42は、ステータコア41を中心にした周方向に等間隔で配置されている。複数のコイル42は、巻回された導線の集合体であり、各コイル42の直下に配置された回路基板43に対して電気的に接続されている。各コイル42は、ヨーク32及びマグネット33の内方に配置されている。
【0035】
次に軸受部50について詳細に説明する。軸受部50は、プロペラ31のシャフト314を回転自在に支持する部位である。
図3は、実施の形態に係る軸受部50及びシャフト314の分解斜視図である。
図3に示すように、軸受部50は、ハウジング60と、スリーブ70と、キャップ部80とを有している。
【0036】
ハウジング60は、シャフト314の一部とスリーブ70とキャップ部80とを収容する部材である。
図4は、実施の形態に係るハウジング60の上面図である。
図3及び
図4に示すように、ハウジング60は、平面視長円板状の基部61と、基部61から上方に突出した円筒状の筒部62とを有している。筒部62は、上方が開放され、下方の端部が底となっている。このため、筒部62の内部が、上方に開口を有した円柱状の凹部63である。凹部63の内周面においてX軸マイナス方向の端部には、上端部から底までZ軸方向に沿って延びる第一ハウジング溝64が形成されている。
【0037】
図4に示すように、凹部63の底面の中央部には円形状の窪み631が形成されており、この窪み631内には、シャフト314の先端部を受ける受け板632(
図11参照)が配置されている。凹部63の底面には、第一ハウジング溝64と窪み631とを繋ぐため、X軸方向に沿って延びる第二ハウジング溝65が形成されている。
【0038】
図5は、実施の形態に係るスリーブ70の断面斜視図である。具体的には
図5は、
図3におけるV-V線を含む切断面を見た断面斜視図である。
図3及び
図5に示すように、スリーブ70は、円筒状の部材であり、Z軸方向視の中心部に、Z軸方向に延びる貫通孔71が形成されている。この貫通孔71内にはシャフト314が当該貫通孔71を貫通するように配置される。スリーブ70の内周面(内側面)、つまり貫通孔71をなす内周面には、複数のガイド溝72が形成されている。複数のガイド溝72は、周方向に所定の間隔をあけて配置されている。各ガイド溝72における上部及び下部は、屈折した形状となっており、その中間部ではZ軸方向に沿う直線状となっている。例えばシャフト314が、Z軸プラス方向視(上面視)において反時計回りで回転する場合には、各ガイド溝72の上部及び下部では、シャフト314の回転方向の先方に向かうほど先細る屈折形状となっている。シャフト314とスリーブ70との間には、潤滑油90(
図11参照)が、充填されるが、シャフト314が回転すると、前述した各ガイド溝72の形状によって潤滑油90が下方へと推進させることができる。なお、ガイド溝72の設置個数またはその形状は、部分的に潤滑油90を上方へ推進させることがあっても、全体として潤滑油90を下方へ推進させることができるのであれば、如何様でもよい。
【0039】
スリーブ70の外周面(外側面)は寸胴であり円筒面となっている。スリーブ70の上面において貫通孔71の周囲には、上方に突出した突出部73が形成されている。突出部73の外周面は、上方に向けて先細るテーパ面となっている。スリーブ70の上面において突出部73以外の部分と、突出部73の先端面(上面)は平坦面となっている。
【0040】
製造時に、スリーブ70がハウジング60の凹部63に収容されると、スリーブ70の上面の周縁部に複数のカシメ部(図示省略)が形成される。これらのカシメ部によって、スリーブ70の外周面の一部が外方に広げられて、ハウジング60の内周面に接合されたり、各第一ハウジング溝64を閉塞しない程度に当該第一ハウジング溝64内に嵌合されたりしている。これにより、スリーブ70がハウジング60の凹部63内で固定されている。
【0041】
図6は、実施の形態に係るキャップ部80を示す上面図である。
図6では、キャップ部80に備わる第二キャップ82にドットハッチングを付している。
図3及び
図6に示すように、キャップ部80は、第一キャップ81と、第一キャップ81よりも上方に配置された第二キャップ82とを備えている。第一キャップ81及び第二キャップ82は、シャフト314が貫通した状態でスリーブ70の上方に配置される。
【0042】
図7は、実施の形態に係る第一キャップ81を上方から見た斜視図である。
図8は、実施の形態に係る第一キャップ81を下方から見た斜視図である。
図6~
図8に示すように、第一キャップ81は、円環状に形成された板金であるが、例えば樹脂などのその他の素材から形成されていてもよい。第一キャップ81は第一円錐台部811と、第一円錐台部811の周縁部から外方に突出した第一鍔部812とを有している。
【0043】
第一円錐台部811の上面には、Z軸方向視の中央部に第一貫通部813が形成されている。第一貫通部813は、シャフト314が貫通する貫通孔を有する。第一貫通部813の内周面においてX軸マイナス方向の端部には、第一通気口814が設けられている(
図6参照)。第一通気口814は、Z軸方向視で半円状に切り欠かれた切欠である。本実施の形態では、第一通気口814が1つのみ設けられている場合を例示しているが、複数設けられていてもよい。
【0044】
第一鍔部812には、周方向に複数の第一凹部815が形成されている。ここでは複数の第一凹部815は、周方向に等間隔で並んでいる場合を例示するが等間隔で並んでいなくてもよい。各第一凹部815は、第一鍔部812の外周縁に形成された弧状の切欠である。本実施の形態では、第一凹部815が4つ設けられている場合を例示したが、第一凹部の設置個数は如何様でもよく、例えばひとつであってもよい。
【0045】
第一鍔部812において、X軸マイナス方向の端部には、上方に突出しX軸方向に延びる凸条816が形成されている。この凸条816の下方の空間は、X軸方向に貫通しており、潤滑油90の流路となる。凸条816のX軸マイナス方向の端部は、第一ハウジング溝64内に配置されて閉塞する蓋部817である。蓋部817は、第一ハウジング溝64に対応するように、X軸マイナス方向に弧状に突出している。
【0046】
第一鍔部812において、X軸プラス方向の端部には、X軸方向に延びるスリット818が形成されている。スリット818のX軸プラス方向の端部は開放されており、X軸マイナス方向の端部は第一円錐台部811内に進入している。
【0047】
図9は、実施の形態に係る第二キャップ82を上方から見た斜視図である。
図10は、実施の形態に係る第二キャップ82を下方から見た斜視図である。
図6、
図9及び
図10に示すように、第二キャップ82は、円環状に形成された板金である。第二キャップ82は第二円錐台部821と、第二円錐台部821の周縁部から外方に突出した第二鍔部822とを有している。
【0048】
第二円錐台部821の上面には、Z軸方向視の中央部に第二貫通部823が形成されている。第二貫通部823は、シャフト314が貫通する貫通孔を有する。第二貫通部823の内周面においてX軸マイナス方向の端部には、第一通気口814に重なるように、第二通気口824が設けられている。第二通気口824は、Z軸方向視で半円状に切り欠かれた切欠である。本実施の形態では、第二通気口824が1つのみ設けられている場合を例示しているが、複数設けられていてもよい。第二貫通部823及び第二通気口824の全体的な外形は、第一貫通部813及び第一通気口814の全体的な外形よりもわずかに大きく形成されている(
図6参照)。
【0049】
第二鍔部822には、周方向に複数の第二凹部825が形成されている。複数の第二凹部825は、周方向に等間隔で並んでいる。各第二凹部825は、第二鍔部822の外周縁に形成された弧状の切欠である。本実施の形態では、第二凹部825が4つ設けられている場合を例示したが、第二凹部の設置個数は如何様でもよく、例えばひとつであってもよい。各第二凹部825は、各第一凹部815に対応する位置に配置されている。各第二凹部825の大きさは、各第一凹部815の大きさ以上である。
【0050】
また、第二鍔部822において、X軸マイナス方向の端部には、Y軸方向に長い切欠状の嵌合部826が形成されている。この嵌合部826には、第一キャップ81の凸条816が嵌合される。
【0051】
図11は、実施の形態に係る軸受部50を示す断面図である。
図11は、シャフト314の軸方向に沿う断面を見た図である。
図11では、ハウジング60内に、シャフト314の一部と、スリーブ70と、キャップ部80とを収容した状態を示している。
図11では、シャフト314を二点鎖線で図示している。
図11に示すように、ハウジング60の凹部63内には、下方から順に受け板632、スリーブ70、キャップ部80が収容されている。具体的には、凹部63の底面の窪み631内には、円板状の受け板632が配置されている。この受け板632は、スリーブ70及びキャップ部80を貫通したシャフト314の下端部を受けている。シャフト314の下端部は、スリーブ70の下面よりも下方に位置しており、受け板632に接触している。シャフト314の下端部は球面状に形成されているため、当該下端部と受け板632とは点接触に近い形態で接触している。したがって、シャフト314がスムーズに回転できるようになっている。
【0052】
スリーブ70は、受け板632の上方に配置されており、上述した各カシメ部によって凹部63内で固定されている。キャップ部80は、第二キャップ82の上端部が凹部63から突出しているものの、その他の部分は、凹部63内に収容されている。具体的には、第一キャップ81及び第二キャップ82は、ハウジング60の凹部63内に圧入されることで固定されている。第一キャップ81において凸条816の蓋部817は、第一ハウジング溝64内に配置されて、当該第一ハウジング溝64を閉塞する。なお、第一キャップ81の上端部も凹部63から突出していてもよい。
【0053】
ここで、第一キャップ81と第二キャップ82との第一間隔H1と、スリーブ70と第一キャップ81との第二間隔H2とについて説明する。第一間隔H1は、第一キャップ81と第二キャップ82とのZ軸方向での間隔である。より具体的には、第一間隔H1は、第一キャップ81の第一円錐台部811の外上面と、第二キャップ82の第二円錐台部821の内上面との間隔である。第二間隔H2は、スリーブ70と、第一キャップ81とのZ軸方向での間隔である。より具体的には、第二間隔H2は、スリーブ70の突出部73の先端面と、第一キャップ81の第一円錐台部811の内上面の間隔である。第一間隔H1は、第二間隔H2よりも大きいので、第一間隔H1内に潤滑油90が漏れ出たとしても第一間隔H1で潤滑油90を蓄えることができる。なお、第一キャップ81と第二キャップ82との間には、その容積の半分程度に潤滑油90を常時蓄えているのがよい。
【0054】
また、スリーブ70の内周面(内側面)と、シャフト314の外周面(外側面)との間には、第一隙間S1が形成されている。スリーブ70の外周面(外側面)と、第一ハウジング溝64との間には、第二隙間S2が形成されている。第二隙間S2は、断面視において全体として一様な形状でZ軸方向に延びている。スリーブ70の上面と、第一キャップ81の凸条816の下面との間には、第一隙間S1及び第二隙間S2に繋がる第三隙間S3が形成されている。スリーブ70の下面と、ハウジング60の第二ハウジング溝65との間には、第一隙間S1及び第二隙間S2に繋がる第四隙間S4が形成されている。
【0055】
ハウジング60の凹部63内には、潤滑油90が収容されている。
図11において潤滑油90はドットハッチングで図示している。潤滑油90は、第一隙間S1、第二隙間S2、第三隙間S3及び第四隙間S4内にも収容されている。
【0056】
[動作]
次に、送風機10の動作について説明する。送風機10の各コイル42に電流が供給されると、各ティース411に磁束が発生する。そして、ティース411とマグネット33との間の磁束の作用により、ステータ部40とロータ部30との間に周方向のトルクが生じる。その結果、プロペラ31がシャフト314を中心にして回転し、各羽根312によって気流が発生することになる。軸受部50においては、回転するシャフト314を安定的に支持している。
【0057】
シャフト314の回転により、ハウジング60の凹部63内の潤滑油90には、第一隙間S1、第四隙間S4、第二隙間S2及び第三隙間S3を循環する流れが生じる。具体的には、シャフト314の回転によって、第一隙間S1内では、スリーブ70の各ガイド溝72を起因とした推進力が潤滑油90に作用する。これにより第一隙間S1内では下方に向かう流れが潤滑油90に生じる。第一隙間S1内で下方に向かって流れた潤滑油90は、第四隙間S4に進入する。潤滑油90は、第四隙間S4を凹部63の径方向外方に向けて流れて第二隙間S2に進入する。潤滑油90は、第二隙間S2内を上方に向けて流れて第三隙間S3に進入する。この流れが繰り返されることで、潤滑油90が第一隙間S1、第四隙間S4、第二隙間S2及び第三隙間S3を循環する。つまり、第一隙間S1、第四隙間S4、第二隙間S2及び第三隙間S3が潤滑油90の循環路となる。
【0058】
このように潤滑油90がハウジング60の凹部63内で循環するので、潤滑油90に含まれる気泡Bが、各隙間内で留まることを抑制できる。さらに、循環時における気泡Bは、潤滑油90よりも軽いために、シャフト314の回転を起因とした遠心力によりシャフト314の周辺に集まりやすい。第一キャップ81の第一通気口814が第一貫通部813に設けられた切欠であるので、シャフト314の周辺に集まった気泡Bが第一通気口814から第一キャップ81外へと放出される。第一通気口814上には、第二キャップ82の第二通気口824が配置されているので、第一通気口814から放出された気泡Bを第二通気口824からスムーズに第二キャップ82外へと放出できる。したがって、気泡Bを起因としたえ焼き付けを抑制できる。潤滑油90内に含まれる気泡Bは、第一キャップ81の各第一凹部815及び第二キャップ82の各第二凹部825からも外部へ放出可能である。
【0059】
ところで、振動や送風機10の姿勢によっては、第一キャップ81外へと潤滑油90が漏れ出るおそれもある。
図12は、実施の形態に係る送風機10の一部を拡大して示す断面図である。
図12では、第一キャップ81の外部へ潤滑油90が漏れ出た状態を示している。第一キャップ81の第一貫通部813、第一通気口814及び第一凹部815から潤滑油90が漏れ出たとしても、第二キャップ82によりそれ以上の漏れ出しが抑制される。このとき、第一間隔H1が第二間隔H2よりも大きいので、潤滑油90の大半を第二間隔H2内で留まらせることができ、第二キャップ82外に潤滑油が漏れ出ることをより確実に抑制できる。さらに、潤滑油90が漏れ出たとしても、当該潤滑油90を各第一凹部815、スリット818及び第二キャップ82の各第二凹部825から回収することも可能である。
【0060】
スリット818からの潤滑油90の回収は、軸方向が水平に沿う姿勢で送風機10が配置された場合に効果的である。
図13は、実施の形態に係る送風機10において軸方向が水平に沿う姿勢で配置された場合を示す部分断面図である。
図13に示すように、送風機10はスリット818が下方となるように配置されている。シャフト314の回転によって第二間隔H2内に潤滑油90を循環させようとする圧力が発生しているので、潤滑油90をスリット818から第一キャップ81内に引き込みやすい。つまり、第一キャップ81の外方に漏れ出た潤滑油90は、
図13中の矢印に示すように、スリット818を介して、第一キャップ81内に回収される。
【0061】
[効果等]
以上のように、本実施の形態に係る送風機10は、第一キャップ81が第一通気口814を有しているので、この第一通気口814から気泡Bを外部へ放出することができ、気泡Bを起因とした焼き付けを抑制できる。そして、キャップ部80は、第一キャップ81と第二キャップ82とからなる二重構造であるので、第一キャップ81の第一貫通部813及び第一通気口814から潤滑油90が漏れたとしても第二キャップ82でそれ以上の漏れ出しを抑制できる。特に、第一キャップ81から漏れ出た潤滑油90は、第一通気口814から第一キャップ81の内方に戻すことも可能である。これらのことにより、潤滑油90の漏れを抑制できる。
【0062】
また、潤滑油90内の気泡Bは、シャフト314の周辺に集まりやすい特性があるので、第一通気口814が第一貫通部813に形成された切欠であれば、第一通気口814に気泡Bが集まることになり、気泡Bを放出させやすい。これにより、気泡Bを起因とした焼き付けをより抑制できる。
【0063】
また、第二キャップ82が第二通気口824を有しているので、第一通気口814から放出された気泡Bを第二通気口824からより外方へ放出させることができる。したがって、気泡Bの放出をスムーズに行うことができる。
【0064】
また、第二通気口824が第二貫通部823に形成された切欠であるので、シャフト314の周辺に集まる気泡Bを効率的に第二通気口824から外部へと放出できる。
【0065】
また、第一間隔H1が第二間隔H2よりも広いので、第一間隔H1内に潤滑油90が漏れ出たとしても第一間隔H1で潤滑油90を留めることができる。これにより、潤滑油90が第二キャップ82から漏れ出ることを抑制できる。さらに、第二間隔H2が第一間隔H1よりも小さいので、第二間隔H2内に潤滑油90を循環させようとする圧力を発生させやすい。これにより、潤滑油90をスムーズに循環させることも可能である。
【0066】
また、第一キャップ81の外周部に第一凹部815が形成されているので、第一凹部815からも気泡Bを放出できる。さらに、第一キャップ81と第二キャップ82との間にある潤滑油90を第一凹部815からハウジング60の凹部63内に回収できる。
【0067】
また、第二キャップ82の外周部に、第一凹部815に重なる第二凹部825が形成されているので、第一凹部815から放出された気泡Bを第二凹部825からより外方に放出させることができる。
【0068】
また、上下方向視で第二凹部825の大きさが第一凹部815の大きさ以上であるので、万が一、第二キャップ82の外方に潤滑油90が漏れ出たとしても、その潤滑油90を第二凹部825から第一凹部815へと導くことができ、潤滑油90の回収を促すことができる。第一凹部815の大きさが毛細管現象を発揮できる大きさであれば、回収の促進効果も高められる。
【0069】
また、第一キャップ81の外周部にスリット818が形成されているので、第一キャップ81と第二キャップ82との間に漏れ出た潤滑油90をスリット818からハウジング60の凹部63内に回収できる。
【0070】
[その他]
以上、本実施の形態に係る送風機10について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。また、以下の説明において上記実施の形態と同等の部位においては、同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0071】
例えば、上記実施の形態では、循環路が一系統のみ設けられている場合を例示した。しかしながら、循環路は複数系統設けられていてもよい。例えば、上記したシャフト314のX軸マイナス方向に配置された循環路(第一隙間S1、第四隙間S4、第二隙間S2及び第三隙間S3)に加えて、シャフト314のX軸プラス方向に形成された循環路を設けてもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、第一通気口814が第一貫通部813に設けられた切欠である場合を例示した。しかしながら、第一通気口は第一貫通部から独立した貫通孔であってもよい。これは第二通気口においても同様である。
【0073】
また、第二キャップの第二貫通部及び第二通気口の形状は如何様でもよい。
図14は、変形例1に係る第二キャップ82aを示す上面図である。
図14は、
図6に対応する図であり、第一キャップ81も図示されている。
図14に示すように、第二キャップ82aは、第二貫通部823aと第二通気口824aとが上面視にて卵状に一体化されている。第二貫通部823aは、第一貫通部814に重なる部分であり、第一貫通部814からはみ出た部分が第二通気口824aとして機能する。なお、第一キャップの第一貫通部及び第一通気口も同様に上面視にて卵状に一体化されていてもよい。
【0074】
図15は、変形例2に係る第二キャップ82bを示す上面図である。
図15は、
図6に対応する図であり、第一キャップ81も図示されている。
図15に示すように、第二キャップ82bは、第二貫通部823bと第二通気口824bとが円形状に一体化されている。第二貫通部823bは、第一貫通部814に重なる部分であり、第一貫通部814からはみ出た部分が第二通気口824bとして機能する。なお、第一キャップの第一貫通部及び第一通気口も同様に円形状に一体化されていてもよい。第一キャップの第一貫通部及び第一通気口が円形状に一体化されるとともに、第二キャップの第一貫通部及び第一通気口が円形状に一体化されていてもよい。この場合、シャフトに重複する部分及びその近傍か通気部(第一通気部または第二通気部)として機能し、それら以外が通気口(第一通気口または第二通気口)として機能する。
【0075】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、例えば電子機器に内蔵される送風機に有用である。
【符号の説明】
【0077】
10 送風機
20 フレーム
21 開口部
22 梁部
23 基台
30 ロータ部
31 プロペラ
32 ヨーク
33 マグネット
40 ステータ部
41 ステータコア
42 コイル
43 回路基板
50 軸受部
60 ハウジング
61 基部
62 筒部
63 凹部
64 第一ハウジング溝
65 第二ハウジング溝
70 スリーブ
71 貫通孔
72 ガイド溝
73 突出部
80 キャップ部
81 第一キャップ
82、82a、82b 第二キャップ
90 潤滑油
311 本体部
312 羽根
313 底部
314 シャフト
411 ティース
632 受け板
811 第一円錐台部
812 第一鍔部
813 第一貫通部
814 第一通気口
815 第一凹部
816 凸条
817 蓋部
818 スリット
821 第二円錐台部
822 第二鍔部
823、823a、823b 第二貫通部
824、824a、824b 第二通気口
825 第二凹部
826 嵌合部
B 気泡
H1 第一間隔
H2 第二間隔
S1 第一隙間
S2 第二隙間
S3 第三隙間
S4 第四隙間