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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172382
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】監視装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090059
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大石 圭史
【テーマコード(参考)】
3F027
【Fターム(参考)】
3F027AA02
3F027DA21
3F027EA01
3F027EA09
3F027FA01
(57)【要約】
【課題】より簡素な構成を備えた監視装置を提供する。
【課題手段】本発明の監視装置は、例えば、複数の巻回部材間に掛け渡されて転動する無端状のベルトの転動に伴って生じた摩擦による発熱を当該ベルトの転動とともに移動することなく検出する検出部と、前記検出部による検出信号に基づいて所定の処理を実行する処理実行部と、を備える。検出部は、ベルトの幅方向の端縁と、当該端縁と幅方向に面した静止部材との間の摩擦による発熱を検出するセンサを含んでもよい。また、静止部材は、ベルトが間に位置するように幅方向に並ぶ二つの部材を含み、検出部は、二つの部材のそれぞれと端縁との摩擦による発熱を検出する二つのセンサを含んでもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巻回部材間に掛け渡されて転動する無端状のベルトの転動に伴って生じた摩擦による発熱を当該ベルトの転動とともに移動することなく検出する検出部と、
前記検出部による検出信号に基づいて所定の処理を実行する処理実行部と、
を備えた、監視装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記ベルトの幅方向の端縁と、当該端縁と前記幅方向に面した静止部材との間の摩擦による発熱を検出するセンサを含む、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記静止部材は、前記ベルトに対して前記幅方向の両側に配置された二つの部材を含み、
前記検出部は、前記二つの部材のそれぞれと前記端縁との摩擦による発熱を検出する二つのセンサを含む、請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記ベルトの前記複数の巻回部材間での移動方向または当該移動方向の反対方向の端部と、当該端部の前記端縁と前記静止部材と、の摩擦による発熱を検出するセンサを含む、請求項2に記載の監視装置。
【請求項5】
前記静止部材は、熱伝導性を有した材料で作られ、
前記検出部は、前記静止部材に取り付けられたセンサを含む、請求項2に記載の監視装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記静止部材の前記ベルトから離れた部位に取り付けられたセンサを含む、請求項5に記載の監視装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記静止部材を介して前記ベルトとは反対側となる位置で当該静止部材に取り付けられたセンサを含む、請求項5に記載の監視装置。
【請求項8】
前記検出部は、温度センサを含み、
前記処理実行部は、所定のリファレンス温度と前記温度センサによって検出された温度との差に応じて所定の処理を実行する、請求項1に記載の監視装置。
【請求項9】
前記リファレンス温度は、前記ベルトの摩擦による発熱部位と熱的に接続されない位置の温度である、請求項8に記載の監視装置。
【請求項10】
前記リファレンス温度は、前記ベルトの転動開始前に前記温度センサによって検出された温度である、請求項8に記載の監視装置。
【請求項11】
前記検出部は、複数の温度センサを含み、
前記処理実行部は、所定のリファレンス温度と前記ベルトの転動状態において前記端縁との摩擦が生じた前記静止部材および当該端縁に対応した前記温度センサによって検出された温度との差に応じた処理を実行し、
前記リファレンス温度は、複数の温度センサのうち、前記ベルトの転動状態において前記端縁との摩擦が生じていない前記静止部材および当該端縁に対応した前記温度センサによって検出された温度である、請求項2に記載の監視装置。
【請求項12】
前記静止部材は、前記ベルトに対して前記幅方向の両側に配置された二つの部材を含むとともに、
前記検出部は、前記二つの部材のそれぞれと前記端縁との摩擦による発熱を検出する二つの温度センサを含み、
前記処理実行部は、前記二つの温度センサによって検出された温度の差に応じた処理を実行する、請求項2に記載の監視装置。
【請求項13】
前記検出部は、温度センサを含み、
前記処理実行部は、前記温度センサによって検出された温度の経時変化に応じて所定の処理を実行する、請求項1に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサを有したICタグをコンベヤベルトに埋設し、温度センサによって検出した温度のデータを当該ICタグを介して無線で取得することによりコンベヤベルトの内部の温度をモニタリングするシステムが、知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-20807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、コンベヤベルトに温度センサ付きのICタグが埋設される分、構成が複雑になる虞がある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、より簡素な構成を備えた監視装置を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の監視装置は、複数の巻回部材間に掛け渡されて転動する無端状のベルトの転動に伴って生じた摩擦による発熱を当該ベルトの転動とともに移動することなく検出する検出部と、前記検出部による検出信号に基づいて所定の処理を実行する処理実行部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態のベルト装置の例示的かつ模式的な側面図である。
図2図2は、実施形態のベルト装置の一部の例示的かつ模式的な平面図であって、ベルトが正しい位置に位置した状態を示す図である。
図3図3は、実施形態のベルト装置の一部の例示的かつ模式的な平面図であって、ベルトが偏った位置に位置した状態を示す図である。
図4図4は、実施形態の監視装置の例示的な制御ブロック図である。
図5図5は、実施形態の監視装置において所定の処理を実行する手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態の監視装置において検出された温度の経時変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成から得られる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、下記の構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0009】
各図中には、方向を示す矢印が描かれている。X方向およびY方向は、水平方向に略沿っている。また、Z方向は、上下方向に略沿うとともに、鉛直上方を向いている。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交している。
【0010】
また、図2,3では、ベルトの符号(30)に、その位置を示す符号(P1,P2)を、括弧付きで付記している。
【0011】
[ベルト装置]
図1は、実施形態のベルト装置100の側面図である。また、図2は、ベルト装置100の一部の平面図である。ベルト装置100は、例えば、ベルトコンベヤである。
【0012】
図1に示されるように、ベルト装置100は、支持構造10と、複数のローラ20と、ベルト30と、モータ40と、を備えている。
【0013】
支持構造10は、設置場所のフロアに対して静止した状態に設けられ、ローラ20やモータ40を支持している。
【0014】
図1,2に示されるように、支持構造10は、側板11L,11Rを有している。側板11L,11Rは、いずれも、例えば、略四角形状かつ板状の形状を有し、Y方向における略一定の厚さおよびZ方向における略一定の幅(高さ)で、X方向に延びている。また、図2に示されるように、側板11Lと側板11Rとは、Y方向に離れており、互いに略平行である。側板11L,11Rは、例えば、鉄系材料のような熱伝導性を有した金属材料で作られる。
【0015】
支持構造10は、複数のローラ20を、軸受(不図示)等を介して、Y方向に延びた回転軸回りに回転可能に支持している。ローラ20は、Y方向に所定の長さを有しており、その外周面は、略円筒面状の形状を有している。複数のローラ20は、互いに平行である。
【0016】
図1に示されるように、ベルト30は、無端状の形状を有し、複数のローラ20間に掛け渡された状態で巻回されており、当該複数のローラ20の回転に伴って転動する。ローラ20は、巻回部材の一例である。
【0017】
モータ40のシャフトの回転は、回転伝達機構(不図示)を介して、ローラ20のうちの一つである駆動ローラ20Dに伝達される。回転伝達機構は、例えば、ギヤやローラ等を有した構成とすることができる。駆動ローラ20Dの回転に伴ってベルト30が転動し、当該ベルト30の転動に伴って、駆動ローラ20D以外のローラ20が回転する。駆動ローラ20Dは、主動ローラとも称され、駆動ローラ20D以外のローラ20は、従動ローラとも称されうる。
【0018】
図2に示されるように、ベルト30は、Y方向において略一定の幅を有している。側板11L,11Rは、それぞれ、ベルト30の幅方向の端縁30aと、当該幅方向に面している。側板11L,11Rは、ベルト30に対して幅方向の両側に配置された二つの部材の一例であり、静止部材の一例である。
【0019】
図2は、ベルト30がY方向における正しい位置P1に位置した状態を示している。このように、ベルト30が偏りのない正しい位置P1に位置した状態においては、当該ベルト30の幅方向の端縁30aは、側板11L,11Rの双方から離れている。
【0020】
図3は、ベルト装置100の一部の平面図であって、ベルト30が幅方向、この例ではY方向に偏った位置P2に位置した状態を示す図である。ローラ20は、ベルト30の幅方向の位置を規制しないため、ベルト30は幅方向にずれる虞がある。図3に示されるように、ベルト30がY方向に偏った位置P2に位置した状態では、ベルト30のY方向の端縁30aは、側板11Lと、少なくとも部分的に接することになる。また、図示しないが、ベルト30が図3とは逆方向、すなわちY方向の反対方向に偏った状態では、ベルト30のY方向の反対方向の端縁30aは、側板11Rと、少なくとも部分的に接することになる。このようにベルト30が偏った状態は、ベルト30の蛇行状態とも称されうる。
【0021】
図3のようにベルト30が偏った状態では、静止した側板11Lまたは側板11Rと、転動するベルト30との間に摩擦が生じ、これに伴って、ベルト30の摩耗や発熱が生じる。この場合、速やかに、ベルト30を正しい位置P1に修正するのが好ましい。なお、ベルト30の位置の修正は、例えばローラ20の回転軸の傾きの調整等によって行われうる。
【0022】
そこで、本実施形態のベルト装置100では、転動するベルト30の端縁30aと静止部材としての側板11L,11Rとの間の摩擦による発熱を検出するセンサ220が設けられている。センサ220の検出信号に基づいて、例えば、音声出力や表示出力のような電気的な所定の処理を実行することにより、作業員等に、当該摩擦による発熱が生じていることを認識させることができる。センサ220は、ベルト30の転動に伴って生じた摩擦による発熱を検出する。センサ220は、検出部の一例である。
【0023】
図2,3には、このような発熱を検出するセンサ220として、二つのセンサ221L,221Rが示されている。センサ221L,221Rは、例えば、熱電対や、RTD(resistance temperature detector)、サーミスタ、半導体センサのような温度センサである。
【0024】
センサ221Lは、側板11Lに取り付けられており、当該側板11Lの取付位置における温度を検出する。ここで、センサ221Lは、ベルト30のX方向の端部30b1の近傍に設けられている。また、上述したように、側板11Lは、熱伝導性を有した材料で作られている。よって、ベルト30のX方向の端部30b1およびその近傍において、端縁30aと側板11Lとの間の摩擦によって生じた熱は、側板11Lにおいて、センサ221Lの取付位置へと伝わる。すなわち、端縁30aと側板11Lとの摩擦部位と、センサ221Lとは、側板11Lを介して熱的に接続されている。したがって、センサ221Lは、側板11Lと面したベルト30の端部30b1の端縁30aと側板11Lとの間の摩擦による発熱を、検出することができる。
【0025】
他方、センサ221Rは、側板11Rに取り付けられており、当該側板11Rの取付位置における温度を検出する。ここで、センサ221Rは、ベルト30のX方向の端部30b1の近傍に設けられている。また、上述したように、側板11Rは、熱伝導性を有した材料で作られている。よって、ベルト30のX方向の端部30b1およびその近傍において、端縁30aと側板11Rとの間の摩擦によって生じた熱は、側板11Rにおいて、センサ221Rの取付位置へと伝わる。すなわち、端縁30aと側板11Rとの摩擦部位と、センサ221Rとは、側板11Rを介して熱的に接続されている。したがって、センサ221Rは、側板11Rと面したベルト30の端部30b1の端縁30aと側板11Rとの間の摩擦による発熱を、検出することができる。
【0026】
ベルト30の幅方向の偏りは、ベルト30の複数のローラ20間での移動方向の端部、すなわちX方向の端部で、大きくなり易い。よって、ベルト30のX方向の端部30b1の近傍に設けられたセンサ221L,221Rによれば、ベルト30の偏りをより迅速にまたはより精度良く検出することができる。センサ221L,221Rは、ベルト30の端部30b1近傍において当該ベルト30の幅方向の両側に配置された二つのセンサの一例である。
【0027】
また、図1に示されるように、ベルト装置100には、ベルト30のX方向の反対方向の端部30b2および当該端部30b2を支持するローラ20の近傍に、センサ222L,222Rが設けられている。センサ222Lは、図2,3に示されるセンサ221Lと同様の形態で、側板11Lに取り付けられている。また、センサ222Rは、図2,3に示されるセンサ221Rと同様の形態で、側板11Rに取り付けられている。ベルト30の幅方向の偏りは、ベルト30の複数のローラ20間での移動方向の反対方向の端部、すなわちX方向の反対方向の端部でも、大きくなり易い。よって、ベルト30のX方向の反対方向の端部30b2の近傍に設けられたセンサ222L,222Rによっても、ベルト30の偏りをより迅速にまたはより精度良く検出することができる。センサ222L,222Rは、ベルト30の端部30b2近傍において当該ベルト30の幅方向の両側に配置された二つのセンサの一例である。なお、センサ222L,222Rも、例えば、熱電対や、RTD、サーミスタ、半導体センサのような温度センサである。
【0028】
また、図1に示されるように、センサ221L,221R,222L,222Rは、いずれも、側板11L,11Rの、ベルト30から離れた部位に取り付けられている。さらに、図2,3に示されるように、センサ221L,221R(およびセンサ222L,222R)は、いずれも、側板11L,11Rを介してベルト30とは反対側となる位置で、当該側板11L,11Rに取り付けられている。これにより、ベルト装置100の製造やメンテナンスの際に、ベルト30とセンサ221L,221R,222L,222Rとが干渉するのを抑制することができる。よって、このような構成によれば、ベルト装置100の製造やメンテナンスを、より容易にあるいはより迅速に実行することができる。
【0029】
[監視装置]
図4は、センサ220を含む監視装置200の制御ブロック図である。図4に示されるように、監視装置200は、制御装置210、センサ220、および出力部230を備えている。
【0030】
出力部230は、例えば、スピーカのような音声出力部や、ランプやディスプレイのような表示出力部であり、音声や表示による出力を実行する。出力部230による出力は、例えば、摩擦による発熱が生じていることを示す出力や、当該発熱の程度を示す出力、対策の実施を促す出力等である。出力部230は、処理実行部の一例である。この場合、所定の処理は、音声出力および表示出力のうち少なくとも一方である。
【0031】
制御装置210は、センサ220から検出信号を取得するとともに、当該検出信号に基づいて所定の出力を実行するよう、出力部230を制御する。制御装置210は、演算処理部211と、主記憶部212と、補助記憶部213と、を有しており、コンピュータ(回路)として構成されている。
【0032】
演算処理部211は、例えば、CPU(central processing unit)であり、インストールされたプログラムにしたがって作動することにより所定のアルゴリズムで処理を実行する。演算処理部211は、検出処理部211a、指標算出部211b、判定部211c、および出力制御部211dとして作動する。
【0033】
検出処理部211aは、センサ220から検出信号を取得する。
【0034】
指標算出部211bは、センサ220の検出信号に基づいて、摩擦による発熱の程度に応じた指標を算出する。指標は、例えば、温度である。一例として、センサ220の検出信号の電圧値と温度との関係が、例えば、マップ、テーブル、数式等によって定められている場合、指標算出部211bは、当該関係に基づいて、発熱の程度に応じた指標として、センサ220の検出信号の電圧値に応じた温度を算出する。なお、指標は、発熱の程度と比例した数値となるものであればよく、温度でなくてもよい。
【0035】
判定部211cは、指標算出部211bによって算出された指標の値と、予め定められた所定の条件とを比較して、出力部230による出力の実行の可否や、当該出力の程度、当該出力の内容等を決定する。
【0036】
出力制御部211dは、判定部211cによる判定に応じた出力を実行するよう、出力部230を制御する。
【0037】
主記憶部212は、例えば、RAM(random access memory)や、ROM(read only memory)等であり、補助記憶部213は、SSD(solid state drive)や、HDD(hard disk drive)等である。
【0038】
[処理手順]
図5は、所定の処理を実行する手順の一例を示すフローチャートである。検出処理部211aは、まず、現在時刻がセンサ220による検出を実行するタイミングが否かを判定する(S11)。現在時刻が検出を実行するタイミングであった場合、具体的には、例えば、所定の時間間隔(例えば数秒おき)で設定された検出時刻であった場合(S11でYes)、検出処理部211aは、センサ220から検出信号を取得する(S12)。なお、現在時刻が検出を実行するタイミングではなかった場合(S11でNo)、再度S11を実行する。
【0039】
S12の後、指標算出部211bは、検出信号の検出値に基づいて発熱に応じた指標を算出する(S13)。なお、当該指標は、例えば、センサ220による検出温度に基づいて推測した発熱部位の温度等であってもよい。この場合、当該推測は、予め取得されたセンサ220における検出温度と発熱部位の温度との関係に基づいて、実行される。
【0040】
S13の後、判定部211cは、算出された指標と所定の条件とを比較に基づいて、出力部230によって所定の処理を実行するか否かを判定する(S14)。判定方法の詳細については、後述する。
【0041】
S13で算出された指標が所定の処理を実行する条件を満たす場合(S14でYes)、出力制御部211dは、所定の処理を実行するよう、出力部230を制御する(S15)。なお、当該指標が所定の処理を実行する条件を満たさない場合(S14でNo)、S11に戻る。
【0042】
[判定方法]
判定部211cは、S14において、指標に基づいて摩擦による発熱の有無、および発熱の程度を判定する。指標が温度である場合、判定部211cは、温度が所定値より高い場合に摩擦による発熱が生じていると判定することができ、さらに、温度が高いほど摩擦による発熱の程度が高いと判定することができる。
【0043】
(1)リファレンス温度
判定には、リファレンス温度を導入してもよい。ベルト装置100の設置された環境における温度が、例えば、季節や時間等に応じて変動する場合、センサ220による検出温度だけでは精度良く判定できない虞がある。例えば、判定部211cは、検出温度に夏や昼に気温が高くなった分が加算されていると、摩擦による発熱がそれほど大きくない状況にも拘わらず、摩擦による発熱が大きいと判定したり、逆に検出温度に冬や夜に気温が低くなった分が減算されていると、摩擦による発熱がある程度大きい状況にも拘わらず、摩擦による発熱が小さいと判定したりする虞がある。そこで、判定部211cは、例えば、検出温度とリファレンス温度との差に応じた判定を行い、出力制御部211dは、当該判定に応じた出力を実行するよう、出力部230を制御する。リファレンス温度は、例えば、室温(気温)のような環境温度である。
【0044】
判定部211cは、例えば、検出温度とリファレンス温度との差が第一閾値未満である第一範囲、当該差が第一閾値以上かつ当該第一閾値より大きい第二閾値未満である第二範囲、および当該差が第二閾値以上である第三範囲のうち、いずれに入っているかを判定する。そして、出力制御部211dは、差が第一範囲内である場合には、出力部230が出力を実行せず、差が第二範囲内である場合には、音声および表示のうち少なくとも一方による所定の注意出力を実行するよう、出力部230を制御する。また、出力制御部211dは、差が第三範囲内である場合には、音声および表示のうち少なくとも一方による所定の警報出力を実行するよう、出力部230を制御する。警報出力は、例えば、注意出力より作業員等がより認識しやすい出力とし、具体的には、より大きい音声による音声出力やより明るい表示による表示出力である。
【0045】
リファレンス温度は、例えば、図1に示されるセンサ223(220)のように、ベルト30から離れたベルト装置100の周辺の気温等を検出する温度センサによって、検出されうる。この場合、当該センサ223の検出値に応じた検出温度は、ベルト30の摩擦による発熱部位と熱的に接続されない位置の温度である。すなわち、センサ223は、ベルト30の摩擦による発熱部位とは熱的に接続されないよう、設置される。
【0046】
図6は、ベルト30の端縁30aと、当該ベルト30に対して幅方向の両側に配置された側板11L,11Rと、の摩擦による発熱を検出するセンサ221L,221Rによる検出温度の、経時変化を示すグラフである。図6は、図3に示されるように、ベルト30がY方向に偏り、当該ベルト30のY方向の端縁30aと側板11Lとが接触して摩擦による発熱が生じた場合の経時変化を示している。ベルト30は、時刻t0から転動を開始している。
【0047】
リファレンス温度は、時刻t0より前、すなわちベルト30の転動開始前の時刻t2においてセンサ221Lによって検出された温度としてもよい。この場合、時刻t1における検出温度とリファレンス温度との差は、時刻t1におけるセンサ221Lによる検出温度と、時刻t2におけるセンサ221Lによる検出温度との温度差Td1とすることができる。
【0048】
また、図3に示されるように、ベルト30のX方向の端縁30aが側板11Lと接触した状態では、ベルト30のX方向の反対方向の端縁30aは側板11Rから離れ、側板11Rとの摩擦が生じていない状態となる。したがって、ベルト30を介して互いに反対側に配置されたセンサ221L,221Rの組み合わせにおいては、当該二つのセンサ221L,221Rのうち低い方の検出温度をリファレンス温度とし、時刻t1における検出温度とリファレンス温度との差を当該二つのセンサ221L,221Rの温度差Td2とすることができる。このような構成によれば、ベルト30の幅方向の両側の端縁30aと側板11L,11Rとの摩擦による発熱の検出のために設けられた一対のセンサ221L,221Rのうち、一方を摩擦による発熱の検出に利用し、他方をリファレンス温度の検出に利用することができる。また、ベルト30がY方向の反対方向に偏り、ベルト30と側板11Rとが接触して摩擦が生じた状態では、センサ221Rによって摩擦による発熱に応じた温度を検出することができるとともに、センサ221Lによってリファレンス温度を検出することができる。すなわち、当該構成によれば、ベルト30の幅方向の両側の端縁30aに対応して一対のセンサ221L,221Rを設けるという比較的簡素な実装によって、ベルト30のY方向またはY方向の反対方向への偏りに伴う発熱を、より精度良く検出することができるようになる。センサ222L,222Rについても同様の効果が得られる。
【0049】
(2)温度の経時変化
図6に示されるように、ベルト30と側板11Lまたは側板11Rとの摩擦が生じた場合、図6中のAのように、センサ220による検出温度が急上昇する場合がある。したがって、判定部211cは、センサ220による検出温度の経時変化、すなわち、所定時間における温度変化に応じた判定を行い、出力制御部211dは、当該判定に応じた出力を実行するよう、出力部230を制御してもよい。この場合、判定部211cは、例えば、所定時間(例えば、数秒間)における温度変化が第三閾値未満である第四範囲、当該所定時間における温度変化が第第三閾値以上かつ当該第三閾値より大きい第四閾値未満である第五範囲、および当該所定時間における温度変化が第四閾値以上である第六範囲のうち、いずれに入っているかを判定する。そして、出力制御部211dは、所定時間における温度変化が第四範囲内である場合には、出力部230が出力を実行せず、所定時間における温度変化が第五範囲内である場合には、音声および表示のうち少なくとも一方による所定の注意出力を実行するよう、出力部230を制御する。また、出力制御部211dは、所定時間における温度変化が第六範囲内である場合には、音声および表示のうち少なくとも一方による所定の警報出力を実行するよう、出力部230を制御する。このような検出温度の経時変化に基づく制御は、摩擦による発熱の兆候をより早い段階で捉えて所定の処理を実行することができるため、より速やかに対策を実施できる場合がある。なお、所定時間における温度変化は、検出温度の時間微分値であってもよい。
【0050】
以上、説明したように、本実施形態では、センサ220(検出部)がベルト30の転動に伴って生じた摩擦による発熱を当該ベルト30の転動とともに移動することなく検出し、出力部230(処理実行部)がセンサ220による検出信号に基づいて所定の処理を実行する。このような構成によれば、ベルト30の転動に伴って摩擦による発熱が生じた場合に、当該発熱を速やかに検出し、摩擦が生じた状況を解消するよう対策を施すことができる。また、本実施形態によれば、センサ220は特許文献1のようにベルト30内には埋め込まれず、ベルト30の転動とともに移動しないため、監視装置200をより簡素な構成によって実現することができる。これにより、監視装置200の製造の手間やコストを低減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、センサ221L,221R,222L,222R(検出部)は、ベルト30の幅方向の端縁30aと側板11L,11R(静止部材、二つの部材)との間の摩擦による発熱を検出する。このような構成によれば、例えば、幅方向におけるベルト30の偏り(蛇行状態)に伴う端縁30aと側板11L,11Rとの間の摩擦による発熱を検出することができ、当該蛇行状態を迅速に解消することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、センサ221L,221R,222L,222Rは、ベルト30のX方向(移動方向)またはX方向の反対方向の端部30b1,30b2と、側板11L,11Rとの摩擦による発熱を検出する。幅方向におけるベルト30の偏りは端部30b1,30b2において大きくなり易いため、このような構成によれば、ベルト30の偏りをより迅速にまたはより確実に検出することができる。
【0053】
また、本実施形態では、側板11L,11Rは、熱伝導性を有した材料で作られ、センサ221L,221R,222L,222Rは、側板11L,11Rに取り付けられる。このような構成によれば、監視装置200をより簡素な構成によって実現することができるとともに、センサ221L,221R,222L,222Rを、側板11L,11Rのうち発熱部位と熱的に接続された範囲内の任意の位置に取り付けることができるため、センサ221L,221R,222L,222Rを設置する位置の自由度が高まるという利点が得られる。
【0054】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0055】
例えば、本発明の検出対象としてのベルトの転動に伴って生じた摩擦による発熱は、ベルトと静止部材との摩擦による発熱には限定されず、例えば、ベルトとローラのような巻回部材との摩擦による発熱や、巻回部材を回転可能に支持する軸受の構成要素間で生じる摩擦による発熱等であってもよい。
【0056】
静止部材は、例えば、ガイド部材のような、側板とは異なる部材あるいは部位であってもよい。また、静止部材との摩擦による発熱を検出するセンサ(検出部)による検出位置は、ベルトの移動方向または移動方向の反対方向の端部には限定されず、例えば、ベルトの移動方向の中間位置、すなわち掛け渡された二つの巻回部材の間の位置のような、端部とは異なる位置であってもよい。
【0057】
センサ(検出部)は、種々の位置に取り付けることができる。また、センサは、例えば赤外線センサのような、非接触センサであってもよい。この場合、当該センサは、ベルトの転動に伴って生じた摩擦による発熱を、静止部材を介して検出するのではなく、ベルトから直接検出してもよい。
【0058】
また、本発明は、ベルトコンベヤのみに適用されうるものではなく、複数の巻回部材の間にベルトが掛け渡されたベルトコンベヤ以外のベルト装置等に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…支持構造(静止部材)
11L…側板
11R…側板
20…ローラ(巻回部材)
20D…駆動ローラ(巻回部材)
30…ベルト
30a…端縁
30b1,30b2…端部
40…モータ
100…ベルト装置
200…監視装置
210…制御装置
211…演算処理部
211a…検出処理部
211b…指標算出部
211c…判定部
211d…出力制御部
212…主記憶部
213…補助記憶部
220,221L,221R、222L,222R…センサ(温度センサ、検出部)
223…センサ(温度センサ)
230…出力部(処理実行部)
P1…位置
P2…位置
t0…時刻(開始時刻)
t1…時刻
t2…時刻
Td1…温度差
Td2…温度差
X…方向(移動方向)
Y…方向(幅方向)
Z…方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6