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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172383
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】粒状浴用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20241205BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090060
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390029654
【氏名又は名称】株式会社マックス
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】勝山 皓平
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB361
4C083AB362
4C083AC012
4C083AC032
4C083AC092
4C083AC212
4C083AC342
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC842
4C083AD532
4C083BB04
4C083BB41
4C083CC25
4C083DD16
4C083EE03
(57)【要約】
【課題】本発明は、硫酸マグネシウム7水和物を含む粒状の浴用組成物の課題であった保存時の経時的な固結が抑制されている点で製剤安定性が良好な処方を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)硫酸マグネシウム7水和物と(B)水とを含み、前記(A)成分の含有量が80質量%以上であり、前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の含有量が0.5~20質量部である、粒状浴用組成物は、経時的固結が抑制されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硫酸マグネシウム7水和物と(B)水とを含み、前記(A)成分の含有量が80質量%以上であり、前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の含有量が0.5~20質量部である、粒状浴用組成物。
【請求項2】
(C)調湿性粒子をさらに含む、請求項1に記載の粒状浴用組成物。
【請求項3】
前記(C)成分がシリカである、請求項2に記載の粒状浴用組成物。
【請求項4】
前記(B)成分1質量部に対する前記(C)成分の含有量が0.1~8質量部である、請求項2又は3に記載の粒状浴用組成物。
【請求項5】
前記(A)成分の50%累積頻度径が、950~1300μmである、請求項1又は2に記載の粒状浴用組成物。
【請求項6】
前記(A)成分の{(90%累積頻度径-10%累積頻度径)/50%累積頻度径}が、0.8~2である、請求項1又は2に記載の粒状浴用組成物。
【請求項7】
前記(C)成分のBET比表面積が、150~250m2/gである、請求項2又は3に記載の粒状浴用組成物。
【請求項8】
(D)香料及び(E)ノニオン界面活性剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の粒状浴用組成物。
【請求項9】
前記(E)成分が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はソルビタン脂肪酸エステルである、請求項8に記載の粒状浴用組成物。
【請求項10】
前記(D)成分1質量部に対する前記(E)成分の含有量が、0.01~0.1質量部である、請求項8に記載の粒状浴用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固結抑制性に優れた粒状浴用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴剤の基本的な効果は、入浴そのものによって得られる温浴効果及び清浄効果を高めることにあり、この考え方を基に、商品に表示又は広告できる具体的な効能が医薬品医療機器等法で定められている。このような入浴剤の代表的な成分の例としては、無機塩類が挙げられ、より具体的には、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム等が用いられている。また、入浴剤の剤型も粉末状、粒状又は顆粒状等の様々な剤形で調製される。入浴剤の成分として汎用される無機塩類は、皮膚の表面の蛋白質と結合して膜を形成し、この膜が身体の熱の放散を防ぐために、入浴後の保温効果が高く湯冷めしにくくなるといわれている(非特許文献1)。
【0003】
加えて、これら無機塩類の中でも、硫酸マグネシウムの入浴剤については、皮膚から体内にマグネシウムが吸収される効果、及びリウマチの痛みの解消効果も報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】入浴剤の効果とメカニズム,[online],日本浴用剤工業会[令和5年5月24日検索],インターネット<URL:https://www.jbia.org/knowledge3.html>
【非特許文献2】Dr RH Waring, School of Biosciences, University of Birmingham,Report on Absorption of magnesium sulfate (Epsom salts) across the skin,[online],[令和5年5月24日検索],インターネット<URL:https://epsomsalt.jp/wp-content/uploads/2021/08/ReportsofBirmingham.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無機塩類の入浴剤は種々商品化されており、それらは実質的に当該無機塩類からなる粒状を呈する組成物であり、リラクゼーション効果を付与する目的で微量の香料等が配合されている。当然のことながら、硫酸マグネシウムの入浴剤も同様の形態で調製されている。
【0006】
しかしながら、硫酸マグネシウムの入浴剤として汎用される硫酸マグネシウム7水和物の粒状浴用組成物は、保存時において室温でも経時的に固結する特性があるため、粒状の形態を保持することが困難であり、この点で製剤化への処方検討が十分になされていなかった。また、このような経時的な固結は、高温時に著しく認められる傾向、所謂、高温時に固結が加速する傾向にある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、硫酸マグネシウム7水和物を含む粒状の浴用組成物の課題であった保存時の経時的な固結が抑制されている点で製剤安定性が良好な処方を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、硫酸マグネシウム7水和物を含む粒状の浴用組成物において、所定量の水を配合することで、保存時における経時的な固結が抑制されることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)硫酸マグネシウム7水和物と(B)水とを含み、前記(A)成分の含有量が80質量%以上であり、前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の含有量が0.5~20質量部である、粒状浴用組成物。
項2. (C)調湿性粒子をさらに含む、項1に記載の粒状浴用組成物。
項3. 前記(C)成分がシリカである、項2に記載の粒状浴用組成物。
項4. 前記(B)成分1質量部に対する前記(C)成分の含有量が0.1~8質量部である、項2又は3に記載の粒状浴用組成物。
項5. 前記(A)成分の50%累積頻度径が、950~1300μmである、項1~4のいずれかに記載の粒状浴用組成物。
項6. 前記(A)成分の{(90%累積頻度径-10%累積頻度径)/50%累積頻度径}が、0.8~2である、項1~5のいずれかに記載の粒状浴用組成物。
項7. 前記(C)成分のBET比表面積が、150~250m2/gである、項2~6のいずれかに記載の粒状浴用組成物。
項8. (D)香料及び(E)ノニオン界面活性剤をさらに含む、項1~7のいずれかに記載の粒状浴用組成物。
項9. 前記(E)成分が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はソルビタン脂肪酸エステルである、項8に記載の粒状浴用組成物。
項10. 前記(D)成分1質量部に対する前記(E)成分の含有量が、0.01~0.1質量部である、項8又は9に記載の粒状浴用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粒状浴用組成物は、経時的な固結を抑えることによる良好な製剤の保存安定性を発揮し、粒状の形態を保持することができるという格段に優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の粒状浴用組成物は、(A)硫酸マグネシウム7水和物と(B)水とを含み、前記(A)成分の含有量が80質量%以上であり、前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の含有量が0.5~20質量部であることを特徴とする。以下、本発明の粒状浴用組成物について詳述する。なお、本発明において「粒状」とは、粉末状、粒状、顆粒状等の粒形態を呈することを意味する。
【0012】
(A)硫酸マグネシウム7水和物
本発明の粒状浴用組成物は、(A)成分として硫酸マグネシウム7水和物を含む。
【0013】
用いられる(A)成分の粒子径は、所望の効果が発揮できるのであれば特に限定されないが、50%累積頻度径(つまりD50)で、例えば、950~1300μmの範囲のものを用いれば良く、本発明の効果を最大限に発揮させる観点から、1000~1250μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは1050~1200μm、さらに好ましくは1100~1150μmである。なお、D50は、レーザー回折散乱式粒子径分布測定法による累積粒度分布の、累積50体積%での粒径を示す。
【0014】
(A)成分の粒度分布についても所望の効果が発揮できるのであれば特に限定されないが、90%累積頻度径をD90、10%累積頻度径をD10とすると、{(D90-D10)/D50}で、例えば、0.8~2の範囲であればよく、本発明の効果を最大限に発揮させる観点から、0.9~1.7の範囲であることが好ましく、より好ましくは1~1.5、さらに好ましくは1.1~1.4である。なお、D90及びD10は、それぞれ、レーザー回折散乱式粒子径分布測定法による累積粒度分布の小粒子径側からの、累積90体積%及び累積10体積%での粒径を示す。
【0015】
本発明において上記(A)成分の配合に市販品を用いることができる。(A)成分の市販品は、硫酸マグネシウム7水和物の単独材料であっても、硫酸マグネシウム7水和物と他成分との混合材料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されないが、硫酸マグネシウム7水和物の単独材料であることが好ましい。
【0016】
本発明の粒状浴用組成物における(A)成分の含有量は、組成物100質量%中、80質量%以上である。本発明の粒状浴用組成物は、後述する成分と組み合わせることで保存時における固結抑制性に格段に優れた効果を発揮するため、硫酸マグネシウム7水和物が極めて多い処方であっても、効果的に固結抑制することができる。このような観点から、好適な(A)成分の含有量は、組成物100質量%中、好ましくは85質量%以上又は88質量%以上、より好ましくは90質量%以上、92質量%以上又は94質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。本発明の浴用組成物における(A)成分の含有量は、所定量の(B)成分を配合可能とする限りにおいてその上限も特に限定されないが、組成物100質量%中、例えば99.5質量%以下、99質量%以下、又は98質量%以下である。
【0017】
(B)水
本発明の粒状浴用組成物は、(B)成分として水を含む。用いられる(B)成分は特に限定されないが、精製水であることが好ましい。本発明において、(B)成分を上記(A)成分と組み合わせることにより、保存時の固結を抑えることができる。より詳細には、(B)成分を含むことにより、上記(A)成分の結合水の遊離が抑制され、固結抑制できると考えられる。
【0018】
本発明の粒状浴用組成物における(B)成分の含有量は、所望の固結抑制効果を発揮させる観点、及び粒状の製剤形態とする観点から、前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の含有量で、0.5~20質量部である。
【0019】
本発明の粒状浴用組成物では、固結抑制効果を向上させる観点から、上記(A)成分100質量部に対する上記(B)成分の含有量は、好ましくは0.8~20質量部又は0.9~20質量部、より好ましくは1~20質量部、さらに好ましくは1.5~20質量部、1.8~20質量部、1.9~20質量部、又は2~20質量部が挙げられる。
【0020】
なお、本発明では、固結抑制効果に加えて、組成物自体の湿り感を低減し使用性を向上させる等の観点から、上記(A)成分100質量部に対する上記(B)成分の含有量を、0.5~16質量部、好ましくは0.5~12.5質量部、0.5~7.5質量部、より好ましくは0.5~4.7質量部、さらに好ましくは0.5~4質量部、0.5~3.5質量部、0.5~3質量部、0.5~2.3質量部又は0.5~2.2質量部となるよう調製することが好ましい。
【0021】
本発明の浴用組成物における(B)成分の具体的な含有量については、(A)成分の含有量と、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量とにより定まるが、好ましくは0.5~15質量%又は0.7~10質量%、より好ましくは0.9~6質量%、さらに好ましくは1~4質量%、1.2~3質量%又は1.5~2.5質量%が挙げられる。
【0022】
(C)調湿性粒子
本発明の粒状浴用組成物には、(C)成分として調湿性粒子を更に含むことが好ましい。本発明において「調湿性粒子」とは、水分、若しくは水及び油分の、取込と放出との双方の機能を発揮する水不溶性の粒子のことをいう。本発明の好ましい形態では、(C)成分を用いることで、粒状浴用組成物自体の湿り感を低減できるようになる。
【0023】
具体的な(C)成分としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、ケイ酸カルシウム、マイカ、タルク、セリサイト等のケイ酸塩鉱物;白色活性炭、シクロデキストリン、結晶セルロース等が挙げられる。これら(C)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。本発明においては、上記効果に加え、本発明の特有の効果を最大限に発揮させる観点から、ケイ酸塩鉱物を用いることが好ましく、中でも、シリカ(二酸化ケイ素)を用いることがより好ましい。
【0024】
用いられる(C)成分のBET比表面積は、所望の効果が発揮できるのであれば特に限定されないが、例えば、150~250m2/gの範囲のものを用いれば良く、本発明の効果を最大限に発揮させる観点から、160~240m2/gの範囲のものが好ましく、より好ましくは170~230m2/g、さらに好ましくは180~220m2/gである。なお、BET比表面積は、ISO 5794/1に準拠して測定される。
【0025】
本発明において上記(C)成分の配合に市販品を用いることができる。(C)成分の市販品は、調湿性粒子の単独材料であっても、調湿性粒子と他成分との混合材料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されないが、調湿性粒子の単独材料であることが好ましい。
【0026】
本発明の粒状浴用組成物における(C)成分の含有量は特に限定されないが、組成物100質量%中、例えば0.1~15質量%である。組成物自体の湿り感をより一層低減させる観点から、(C)成分の含有量は、組成物100質量%中、0.5~15質量%であることが好ましく、0.7~15質量%であることがより好ましく、1~15質量%又は1.5~15質量%であることが更に好ましく、1.8~15質量%であることが一層好ましい。また、(C)成分自体の飛散を抑制する観点から、(C)成分の含有量は、組成物100質量%中、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~6.5質量%であることがより好ましく、0.1~6質量%以下であることが更に好ましく、0.1~5.5質量%、0.1~4質量%、0.1~3質量%、又は0.1~2.5質量%であることが一層好ましい。
【0027】
本発明の粒状浴用組成物では、上記(B)成分1質量部に対する上記(C)成分の含有量を、例えば0.1~8質量部となるように配合することができる。
【0028】
また、組成物自体の湿り感を更に一層低減する観点、又は当該観点に加えて組成物の増粘も抑制する観点から、上記(B)成分1質量部に対する上記(C)成分の含有量を、好ましくは0.5~8質量部、より好ましくは0.67~8質量部、又は0.7~8質量部、更に好ましくは0.77~8質量部、0.79~8質量部、0.8~8質量部、0.85~8質量部、0.9~8質量部、又は0.95~8質量部となるように配合することができる。
【0029】
さらに、(C)成分自体の飛散も抑制する観点から、上記(B)成分1質量部に対する上記(C)成分の含有量を、好ましくは0.77~6質量部、0.77~4質量部、又は0.77~3.5質量部、より好ましくは0.77~2.3質量部、0.77~2質量部、0.77~1.5質量部、又は0.77~1.2質量部となるように配合することができる。上記(B)成分と上記(C)成分の含有量がこのような比率を満たすことによる(C)成分自体の飛散抑制効果は、粒状浴用組成物の製造時及び使用時に(C)成分自体の飛散を抑えることができるため、粒状浴用組成物特有の懸念事項の低減を図ることができる。特に、使用時の飛散抑制性については、人体への影響を考慮すると絶大な効果を発揮する。
【0030】
本発明の粒状浴用組成物の好ましい形態においては、上記した必須構成成分及び必須要件を充足することにより、従来の課題であった経時的な固結を抑えて粒状の形態を保持するという製剤の保存安定性に格段に優れた効果を発揮するとともに、粒状浴用組成物特有の種々の問題や懸念事項の解決も図ることができるようになる。
【0031】
(D)香料
本発明の粒状浴用組成物には、(D)成分として香料を更に含むことができる。
【0032】
(D)としては、テルペン香料(例えば、リモネン、シトラール 、ゲラニオール、シトロネロール、ネロール、リナロール、ミルセン、ピネン、カリオフィレン、テルピネン、ピネン、テルピノレン、テルピノレン、カレン等)、エステル香料(例えば、ジヒドロジャスモン酸メチル、リナリルアセテート、ベンジル ベンゾエート、ネリルアセテート等)、アルデヒド香料(例えば、p-エチル-α,α-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、α-ヘキシルシンナムアルデヒド等)、ケトン香料(例えば、trans-p-メンタン-3-オン等)、オキサイド香料(例えば、1,8-シネオール、4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d] -1,3-ジオキシン等)が挙げられる。これらの(D)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の粒状浴用組成物における(D)成分の含有量としては、組成物100質量%中、例えば0.1~1.5質量%、好ましくは0.3~1質量%、より好ましくは0.45~0.8質量%が挙げられる。
【0034】
(E)ノニオン界面活性剤
本発明の粒状浴用組成物には、(E)成分としてノニオン界面活性剤を更に含むことができる。本発明の好ましい形態では、(E)成分を用いることで、香料((D)成分)を含む組成物において製剤の保存安定性(固結抑制性以外の保存安定性)に悪影響を及ぼさずに持続性に優れる香りを付与できるようになる。
【0035】
用いられる(E)成分としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグセリン脂肪酸エステル、ソショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。これら(E)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。本発明においては、香料((D)成分)を含む組成物において香り持続性を向上させる観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0036】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとは、脂肪酸とソルビタンとのモノエステル、ジエステル、又はトリエステルであるソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキサイドが縮合している化合物である。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数は、所望の効果が発揮できるのであれば特に限定されないが、例えば、8~30であることが好ましく、より好ましくは10~22、更に好ましくは16~20である。また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルに縮合されているエチレンオキサイドの平均付加モル数も特に限定されないが、例えば、6~160であることが好ましく、より好ましくは10~60、更に好ましくは10~30、一層好ましくは15~25である。
【0037】
具体的なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、ポリソルベート85(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート)、ステアリン酸PEG-6ソルビタン、イソステアリン酸PEG-20ソルビタン、オレイン酸PEG-6ソルビタン、ポリソルベート85等が挙げられる。これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ソルビタン脂肪酸エステルとは、脂肪酸とソルビタンとのモノエステル、ジエステル、又はトリエステルである。具体的なソルビタン脂肪酸エステルとして、例えば、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン等が挙げられる。これらのソルビタン脂肪酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明の粒状浴用組成物における(E)成分の含有量は、香料((D)成分)を含む組成物において香りを持続させる観点から、組成物100質量%中、0.005~0.0質量%であることが好ましく、0.008~0.02質量%であることがより好ましく、0.01~0.015質量%であることがより好ましい。
【0040】
本発明の粒状浴用組成物における(D)成分1質量部に対する(E)成分の含有量は、(D)成分による香り持続性を向上させる観点から、0.01~0.1質量部であることが好ましく、0.013~0.08質量部であることがより好ましく、0.015~0.05質量部であることがさらに好ましく、0.018~0.03質量部であることが一層好ましい。
【0041】
本発明の粒状浴用組成物のような入浴剤は、リラクゼーション効果も求められており、当該効果を発揮させるべく種々の香料が採用されている。しかしながら、香料成分を香りの持続性を鑑みて配合すると、粒状浴用組成物の保存安定性(固結抑制性以外)に悪影響を及ぼすという課題もある。本発明の粒状浴用組成物の好ましい形態は、当該課題の解決をも図ったものである。
【0042】
その他の成分
本発明の粒状浴用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、前記(A)成分及び(B)成分、並びに、必要に応じて配合される(C)成分、(D)成分及び/又は(E)成分の他に、粒状浴用組成物に通常配合される他の成分を含むことができる。
【0043】
他の成分の具体例としては、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、メタリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の無機塩類;トレハロース、エリスリトール、乳糖、還元水飴、ブドウ糖等の糖類;生薬エキスその他の植物エキス等のエキス類;油脂類;アルコール類;多価アルコール類;(E)成分以外の界面活性剤;色素;保湿剤;冷感剤等が挙げられる。
【0044】
本発明の粒状浴用組成物は、好ましくは、他の成分として香料及び/又は色素を含み、より好ましくは、香料及び/又は色素を含み且つ香料及び色素以外の成分を含まない。
【0045】
製剤形態等
本発明の粒状浴用組成物の製剤形態は、粒状を呈する組成物であれば特に限定されない。また、本発明の粒状浴用組成物は、固着しておらず、外力を加えた場合に流動性を示すものであればよく、上記(B)成分により湿っている状態も許容する。本発明の粒状浴用組成物の性状としては、例えば、わずかに湿り気があるもののほとんどさらさらの粒状、さらさらではないもののしっとりした粒状、湿り気で粘度が生じている状態、みぞれ状等が挙げられ、わずかに湿り気があるもののほとんどさらさらの粒状、若しくはさらさらではないもののしっとりした粒状であることが望ましい。
【0046】
本発明の粒状浴用組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、上記した各構成成分を混合し、リボンミキサー等を用いて撹拌する方法等が挙げられるが、これら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0047】
本発明の粒状浴用組成物は、適宜、任意の容器に収容することができる。容器としては特に限定されず、開閉自在な包装タイプの容器であっても、一回使い切りの個包装タイプの容器であってもよい。
【実施例0048】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限り「質量%」を表す。
【0049】
<試料の調製>
表1及び表2に示す組成に従い、実施例1~16及び比較例1~6の浴用組成物を常法に準じて調製し、得られた浴用組成物を試料として下記評価に供した。結果を表1及び表2に併記する。
【0050】
なお、(A)成分の粒径及び粒度分布は、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置LA-950(株式会社堀場製作所製)による測定により、D50が1114μm、{(D90-D10)/D50}が1.21であった。(C)成分のISO 5794/1に準拠して測定されるBET比表面積は、約200m2/g(180~220m2/gの範囲内)であった。(D)成分の配合に香料組成物を用いた。この香料組成物は、(D)成分として、d-リモネン、シトラール、ジヒドロジャスモン酸メチル、p-エチル-α,α-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、シトロネロール、リナリルアセテ-ト、ネロール、リナロール、ベンジル ベンゾエート、ミルセン 、β-ピネン、β-カリオフィレン、γ-テルピネン、α-ピネン、trans-p-メンタン-3-オン 、ネリル アセテート、1,8-シネオール、テルピノレン、3-カレン、及び4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-1,3-ジオキシンを含み、香料組成物100質量部に、(D)成分を総量で65.2質量部以上含む。
【0051】
<調製直後の性状>
実施例及び比較例で得られた各試料3.0gを、20cm四方の水平なガラス板の中央部の半径2cmの領域内に載せ、その後、ガラス板を水平な状態から段階的に傾け、3秒で試料全てが滑り落ちるのに要したガラス傾斜角度を測定した。
【0052】
以下に示すガラス傾斜角度の分類に応じて、さらさらな状態の程度を1~5の数値で評価した。なお、当該数値が小さいほどさらさらの程度が高く、乾燥した状態により近いことを表している。その反面、さらさらの程度が高いほど飛散リスクがあることから、下記分類の2~4が好ましく、2~3がより好ましく、2が最も好ましい。
【0053】
(傾斜角度の分類)
1:30°以内
2:30°超45°以内
3:45°超60°以内
4:60°超75°以内
5:75°超(3秒で落ち切らなかった場合も該当)
【0054】
<固結抑制性の評価>
実施例及び比較例で得られた各試料100gを、縦15×横11cmのアルミ製パウチ内に充填後、当該パウチを密封し、50℃の恒温機内に静置し、保存した。固結を抑制できた時間(つまり固結までに要した時間)を測定した。なお、固結は、浴用組成物全体が外力に対する流動性を失い1つの塊になった状態とした。当該保存条件で3日以上固結しなかった場合を、固結抑制性の合格基準とした。
【0055】
<実使用時の評価-1(剤の状態)>
実施例及び比較例で得られた各試料100gを、縦15×横11cmのアルミ製パウチ内に充填後、当該パウチを密封し、室温で1時間静置した。静置後、当該パウチを開封し、充填された剤の状態を以下の基準に従って目視評価した。
【0056】
(判断基準)
-:シリカによる増粘作用が認められる
+:シリカによる増粘作用が若干認められる
++:シリカによる増粘作用が認められない
【0057】
<実使用時の評価-2(粉塵の飛散)>
上記実使用時の評価-1の評価後、ウォーターバス中に剤を実際に投入、具体的には、アルミ製パウチを振りながら投入し、投入時の粉塵の飛散度合いを以下の基準に従って目視評価した。
【0058】
(判断基準)
×:使用時に、シリカの粉塵が多く飛散する
△:使用時に、シリカの粉塵が飛散する
〇:使用時に、シリカの粉塵がごく僅か飛散する
◎:使用時でのシリカの粉塵飛散が全く無い
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
(A)成分を含む浴用組成物で、本発明の必須構成要件を充足しない比較例1~6のうち、(B)成分を含まないもの(比較例1,3、市販品1,2)及び(B)成分を含んでいてもその含有比率が所定の範囲を満たさないもの(比較例2,4,5)では、所望の固結抑制性が得られず、短時間で固結するという結果であった。これは、高温保管時において、上記(A)成分の結合水が遊離したことにより固結したものと考えられる。また、(B)成分を含んでいてもその含有量が所定の範囲超えるもの(比較例6)では、粒状の性状を得ることができなかった。
【0063】
これに対し、(A)成分を含む浴用組成物で本発明の必須構成要件を充足するもの(実施例1~16)では、所望の固結抑制性が得られた。これは、高温保管時において、上記(A)成分の結合水の遊離が抑制されたことによるものと考えられる。また、実施例1~11の中でも、(B)成分をさらに限定された比率で含む実施例3~6,8~16では、特に優れた固結抑制性が得られた。
【0064】
実施例1~16の中でも、(C)成分を含むもの(実施例7~15)は、(C)成分を含まないもの(実施例1~6、実施例16)よりも、(C)成分に水分が取り込まれることにより調湿され、より優れた性状となっていた。中でも、(C)成分を限定された比率で含む実施例7~14では調湿の程度が向上しており、さらさらの程度により優れ、優れた使用感が得られた。さらに、実施例7~14の中でも、(C)成分をさらに限定された所定量及び比率で含む実施例9、11、12、13、14では、(C)成分による粉塵の飛散もなく、浴用組成物の製造時及び使用時の両方において、より一層優れた特性を有していた。
【0065】
さらに、実施例1~16の中でも、(D)成分及び(E)成分を含む実施例7~16では、(D)成分による香りの持続性に優れていた。なお、市販品1,2の組成のように、(D)成分を含み(E)成分を含まない組成の粒状浴用組成物を調製しても、香りの持続性は十分ではなかった。