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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172390
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B60C13/00 C
B60C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090083
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】中谷 友暉
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC47
3D131BC51
3D131GA01
3D131GA03
(57)【要約】
【課題】標章表示部を形成する色ゴムの意図しない露出を抑制できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ1のサイドウォール20は、タイヤ子午線面の断面視においてサイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出する標章表示部60Aを備え、標章表示部60Aは、カバーゴム65と、標章表示部60Aの標章面70に露出する露出部62を有し、当該露出部62以外がカバーゴム65で覆われる色ゴム61と、カバーゴム65で覆われ、タイヤ径方向において、ビードトウ10Aから、トレッド先端30Aまでの距離をタイヤ側面視長さLaとしたときに、サイドウォール20のプロファイルラインPLと標章表示部60Aの突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点としての点P2iは、ビードトウ10Aから、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下の長さの位置に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、
前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォールの間に配置されているトレッドと、を備えた空気入りタイヤであって、
前記サイドウォールは、タイヤ子午線面の断面視において前記サイドウォールのプロファイルラインからタイヤ軸方向外側に突出する突出部を含み、その突出端面に標章面を有する標章表示部を備え、
前記標章表示部は、
カバーゴムと、
前記標章面に露出する露出部を有し、当該露出部以外が前記カバーゴムで覆われる色ゴムと、を含み、
タイヤ径方向において、前記ビードのタイヤ径方向内側の先端から、前記トレッドのタイヤ径方向外側の先端までの距離をタイヤ側面視長さLaとしたときに、前記サイドウォールのプロファイルラインと前記標章表示部の突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点は、前記ビードのタイヤ径方向内側の先端から、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下の長さの位置に配置されている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記標章表示部は、
前記カバーゴムで覆われ、前記標章面の最外形の輪郭を形成する当該標章面の外縁から前記サイドウォールの外表面にわたる外側隅部を含み、
前記外側隅部は、前記標章面の側に凹となる断面円弧状であって、その曲率半径RAが6mm以上10mm以下の湾曲面を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記外側隅部の裾野の長さは、4mm以上8mm以下である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記プロファイルラインから前記標章面までの距離である前記標章表示部の突出高さHAに対し、前記曲率半径RAは2.3倍以上である、請求項2または3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記標章表示部は、閉じられた輪郭を形成する前記標章面の内縁の内側に凹みを含むとともに、当該凹みの底面から前記内縁にわたる内側隅部を含み、
前記内側隅部は、前記標章面の側に凹となる断面円弧状であって、その曲率半径RBが6mm以上10mm以下の湾曲面を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記内側隅部の裾野の長さは、4mm以上8mm以下である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記プロファイルラインから前記標章面までの距離である前記標章表示部の突出高さHBに対し、前記曲率半径RBは2.3倍以上である、請求項5または6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記内縁で囲まれる前記凹みの領域の面積は、前記標章表示部の最小外接四角形面積の13%以上31%以下である、請求項5または6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記標章表示部のタイヤ径方向の寸法は、13mm以上28mm以下である、請求項5または6に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの外観性を向上させる等の目的で、標章に応じた突出部をサイドウォールに形成し、その表面に色ゴムを露出させて標章表示部を設けた空気入りタイヤが知られている。色ゴムは、表面が薄肉のカバーゴムによって覆われた状態でサイドウォールに加硫成形された後、標章表示部に対応する部分のカバーゴムをバフ研削等で除去することによって、サイドウォールの表面に露出させられる(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-102407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、タイヤの幅に対してタイヤ断面高さが小さい低扁平の空気入りタイヤに、標章表示部を表示する要望が増えている。低扁平の空気入りタイヤは、タイヤ径方向の標章表示部の長さが短くなることから、全体サイズは自ずと小さくなる。このように標章表示部のサイズが小さくなると、タイヤを加硫成型した後の標章表示部を形成する突出部側面の、色ゴムを覆っているカバーゴムが拡張して引き裂かれやすくなる。このようにカバーゴムが引き裂かれると、色ゴムが意図しない位置において露出し、標章表示部の外観が低下する。
【0005】
本発明は上述事情に鑑みてなされたものであり、外観性の低下を抑制できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、一対のビードと、前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されているトレッドと、を備えた空気入りタイヤであって、前記サイドウォールは、タイヤ子午線面の断面視において前記サイドウォールのプロファイルラインからタイヤ軸方向外側に突出する突出部を含み、その突出端面に標章面を有する標章表示部を備え、前記標章表示部は、カバーゴムと、前記標章面に露出する露出部を有し、当該露出部以外が前記カバーゴムで覆われる色ゴムと、を含み、タイヤ径方向において、前記ビードのタイヤ径方向内側の先端から、前記トレッドのタイヤ径方向外側の先端までの距離をタイヤ側面視長さLaとしたときに、前記サイドウォールのプロファイルラインと前記標章表示部の突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点は、前記ビードのタイヤ径方向内側の先端から、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下の長さの位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外観性の低下を抑制できる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ軸方向(タイヤ子午線面)半断面図である。
図2】第1実施形態の標章表示部を示すタイヤ軸方向断面図である。
図3図2のIII矢視図であって、標章表示部の例を示すサイドウォールの一部側面図である。
図4】第2実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ軸方向(タイヤ子午線面)半断面図である。
図5図6AのIV-IV線に対応する断面図であって、実施形態の標章表示部を示すタイヤ軸方向断面図である。
図6A図5のV矢視図であって、標章表示部の一例(標章が英文字「O」)を示すサイドウォールの一部側面図である。
図6B】実施形態に係る標章表示部の他の例を示す図であって、標章が英文字「R」の場合を示す。
図6C】実施形態に係る標章表示部の他の例を示す図であって、標章が英文字「A」の場合を示す。
図6D】実施形態に係る標章表示部の他の例を示す図であって、標章が英文字「P」の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ軸方向(タイヤ子午線面)の半断面を示している。図2は、タイヤ1が備えるサイドウォール20の一部拡大断面図であって、第1実施形態に係る標章表示部60Aを含む断面を示している。図3は、図2においてIII方向から見た図であって、標章表示部60Aの例を示す図である。
【0010】
図1の断面図は、タイヤ1を図示しない正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷状態のタイヤ軸方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRA、及びETRTOであれば”Measuring Rim”である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、トラックバス用タイヤ、ライトトラック用タイヤの場合は、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”INFLATION PRESSURE”である。乗用車用タイヤの場合は通常180kPaとするが、タイヤに、Extra Load、または、Reinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。
【0011】
タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ軸方向(タイヤ子午線面)の断面において左右対称となっている。図1は、タイヤ1の右半分の断面を示しており、不図示の左半分も同じ構造である。図1中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつ、タイヤ軸方向中心に位置する面である。
【0012】
ここで、タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ軸方向Xとして図示している。タイヤ軸方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては紙面左側である。タイヤ軸方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては紙面右側である。
【0013】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示している。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては紙面下側である。
【0014】
また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心とした円弧線であって、タイヤ1の回転方向に沿った方向であり、図3においては円弧線Z方向で示している。
【0015】
図1に示すように、実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に架け渡されて配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備えている。
【0016】
一対のビード10は、タイヤ軸方向両側、かつ、タイヤ径方向内側の端部に配置されている。ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を有している。
【0017】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。
【0018】
ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に延びるにつれて厚みが減じる先細り形状となっている。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性及び安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。ビードコア11のタイヤ径方向外側の面に、ビードフィラー12のタイヤ径方向内側の面が接合されている。
【0019】
チェーハー13は、ビードコア11及びビードフィラー12を囲むカーカスプライ40の外側をさらに囲んでいる。
【0020】
リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。
【0021】
また、ビード10は、タイヤ径方向内側の先端にビードトウ10Aを有する。ビードトウ10Aは、タイヤ径方向内側の先端であって、断面形状が直角に近い鋭角形状の頂部に形成されている。
【0022】
サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置されたサイドウォールゴム21と、サイドブロック22と、標章表示部60Aと、を含む。サイドウォールゴム21、サイドブロック22及び標章表示部60Aは、タイヤ1の外壁面を構成する。
【0023】
サイドウォールゴム21は、標章表示部60Aを囲んでおり、図1においては、標章表示部60Aのタイヤ径方向外側と内側とに配置されている。タイヤ径方向内側のサイドウォールゴム21には、リムライン21a及びセリアル部21bが形成されている。
【0024】
サイドブロック22は、サイドウォール20のタイヤ径方向外側の端にブロック状に形成された部分であって、サイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出している。実施形態のサイドブロック22は、サイドウォール20のタイヤ径方向外側の端からトレッド30のタイヤ軸方向外側の端まで延びており、この部分はサイドウォールゴム21とは異なるゴムで構成されている。
また、サイドブロック22は、サイドブロック端の点P5を有する。サイドブロック端の点P5は、サイドウォール20のプロファイルラインPLと、サイドブロック22の突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点の位置を指す。
【0025】
サイドウォール20は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分である。そのため、通常、サイドウォール20のサイドウォールゴム21は、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。標章表示部60Aについての詳細は、後述する。
【0026】
トレッド30は、無端状のベルト31及びキャッププライ32と、トレッドゴム33と、を有している。
【0027】
ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ32は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0028】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト31は、タイヤ径方向において外側のベルト311と内側のベルト312と、を有する二層構造である。外側のベルト311及び内側のベルト312は、いずれも複数のスチールコード等のコードがゴムで覆われた構造を有している。なお、ベルト31は二層構造に限らず、一層、あるいは三層以上の構造を有していてもよい。
【0029】
キャッププライ32は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ32は、例えばポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ32を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0030】
トレッドゴム33は、キャッププライ32のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム33は、トレッド30の外表面であるトレッド面34を構成する部材である。
【0031】
また、トレッド30は、タイヤ径方向外側の先端にトレッド先端30Aを有する。実施形態のトレッド先端30Aは、トレッド面34とタイヤ赤道面S1とが交差する位置を指す。ここで、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、トレッド30のタイヤ径方向外側の先端としてのトレッド先端30Aまでの距離をタイヤ側面視長さLaとする。
【0032】
カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10間を、一対のサイドウォール20及びトレッド30を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となる不図示の複数のカーカスコードを含んでいる。複数のカーカスコードは、例えばタイヤ軸方向に延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。そのカーカスコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のカーカスコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0033】
カーカスプライ40は、一方のビードコア11から他方のビードコア11に延び、トレッド30とビード10との間に延在するプライ本体部40Aと、プライ本体部40Aからビードコア11で折り返される一対の屈曲部40Bと、屈曲部40Bのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対の折り返し部40Cと、を有する。プライ本体部40A、屈曲部40B及び折り返し部40Cは、ビードフィラー12及びビードコア11を囲んでいる。ビードフィラー12よりもタイヤ径方向外側の部分の折り返し部40Cは、プライ本体部40Aに重ね合わされている。
【0034】
実施形態のカーカスプライ40は、トレッド30の部分においてタイヤ径方向外側の第1カーカスプライ41と、タイヤ径方向内側の第2カーカスプライ42と、を含む二層構造である。カーカスプライ40としては、このように二層構造に限らず、一層、あるいは三層以上の構造を有していてもよい。
【0035】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部40Bを含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、チェーハー13及びカーカスプライ40の折り返し部40Cの、タイヤ軸方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム21で覆われている。
【0036】
インナーライナー50は、タイヤ1の内面を構成する部材であって、カーカスプライ40のプライ本体部40Aの内面及び一対のビード10のチェーハー13の内面を覆っている。インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。実施形態のタイヤ1のインナーライナー50は、外側インナーライナー51と内側インナーライナー52との二層により構成されているが、インナーライナー50としては、一層構造であってもよい。
【0037】
図1及び図2に示すように、標章表示部60Aは、サイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出している。標章表示部60Aは、その突出端面に、平坦な標章面70を有する。
【0038】
図1及び図2に示すように、標章表示部60Aは、色ゴム61と、カバーゴム65と、を有する。色ゴム61は、カーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置される。図2に示す標章表示部60Aは、タイヤ1を側面から見た場合(図2のIII矢視)において、図3に示すように、「P」を意匠的に描いて表示した部分であり、図2は、図3のII-II線に沿った部分のタイヤ軸方向断面を示している。なお、図2は断面図であるが、寸法線や符号等を明示するために、ハッチングを省略している。
【0039】
カバーゴム65の色は、タイヤ1と同色の黒色が好ましい。色ゴム61の色としては、黒色とのコントラストが明確となる白色が好適であるが、これに限定はされず、例えば黄色、緑色、赤色等も選択される。
【0040】
図2及び図3に示すように、標章表示部60Aにおいて実質的に標章60AAとして視認される部分、すなわち「P」として視認される部分は、サイドウォール20の表面から突出してサイドウォール20の外側面に露出する色ゴム61の露出部62と、色ゴム61を囲むように配置されているカバーゴム65による縁取り66と、によって形成されている。色ゴム61の露出部62及びカバーゴム65の縁取り66の各表面は、平坦な同一面を形成している。すなわち標章60AA(文字「P」)は、平坦な単一面で構成される。
【0041】
図2に示すように、カバーゴム65は比較的薄いゴム膜であって、色ゴム61のタイヤ外表面側に配置され、色ゴム61の露出部62以外の部分を覆っている。
【0042】
標章表示部60Aは、タイヤ1を加硫成型する際に、サイドウォール20のタイヤ周方向の一部に、サイドウォール20のプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に突出する突出部を含むように形成される。タイヤ1が加硫成型された後は、色ゴム61は全体がカバーゴム65で覆われ、露出部62は形成されていない。タイヤ1の加硫成型後に、標章60AAに対応する部分のカバーゴム65がバフ研削等の手段で研削除去されることにより、色ゴム61が露出して、色ゴム61による露出部62及びカバーゴム65による縁取り66から標章60AAが露出する。標章表示部60Aの研削面が、標章60AAの平坦な単一面である標章面70を構成する。
【0043】
図2に示すように、標章表示部60Aの標章面70の外縁71からプロファイルラインPLに直交する線L1と、プロファイルラインPLとの交点P1から、湾曲面72aがプロファイルラインPLに達する点P2までが、外側隅部72の裾野の長さL2である。なお、タイヤ径方向内側の点P2を点P2iとし、タイヤ径方向外側の点P2を点P2oとする。
また、図1に示すように、タイヤ径方向において、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、トレッド30のタイヤ径方向外側の先端としてのトレッド先端30Aまでの距離を、タイヤ1を側面から見たときのタイヤ側面視における、タイヤ側面視長さLaとする。サイドウォール20のプロファイルラインPLと標章表示部60Aの突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点としての点P2iは、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%の長さの位置に配置されていることが好ましい。言い換えると、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、サイドウォール20のプロファイルラインPLと標章表示部60Aの突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点としての点P2iまでの距離Lbとしたときに、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbは、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下の長さであることが好ましい。
【0044】
例えば、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの35%を超える位置に配置されているタイヤは、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下に配置されているタイヤよりも、標章表示部60Aがタイヤ径方向外側に配置されることとなる。このようなタイヤが加硫成型されると、標章表示部60Aの膨張量が大きくなるため、色ゴム61が露出する可能性が高くなる。しかしながら、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの35%以下であれば、標章表示部60Aを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
また、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの25%未満のときは、タイヤ製造番号等を表示するセリアル部21bを標章表示部60Aよりもタイヤ径方向内側に配置する場合、このセリアル部21bに標章表示部60Aが近づき、標章表示部60Aの外観性を低下させるおそれがある。しかしながら、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの25%以上であれば、標章表示部60Aの外観性を維持することができる。
【0045】
また、タイヤ径方向において、サイドウォール20のプロファイルラインPLと標章表示部60Aの突出部との交点であって、タイヤ径方向外側の交点としての点P2oから、サイドウォール20のプロファイルラインPLとサイドブロック22の突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点としての点P5までの距離Lcは、10mm以上であることが好ましい。これにより、標章表示部60Aを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0046】
図2に示すように、標章表示部60Aは、標章面70の最外形の輪郭を形成する外縁71からサイドウォール20の外表面に沿ったプロファイルラインPLにわたる外側隅部72と、をさらに含む。図3に示すように、外側隅部72は、標章60AAの外形の全周にわたって形成されている。図2に示すように、外側隅部72は、サイドウォール20の側面、すなわち標章表示部60Aの標章面70の側に凹となる断面円弧状の湾曲面72aを含む。実施形態において、この湾曲面72aの曲率半径RAは、6mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0047】
裾野の長さL2は、上述した外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径RAよりも大きいことが好ましく、具体的な裾野の長さL2としては、4mm以上8mm以下であることが好ましく、4mm以上6.5mm以下であることがより好ましい。
【0048】
また、図2に示すように、プロファイルラインPLから標章表示部60Aの標章面70までの距離HAは、すなわち標章表示部60Aの突出高さHAである。実施形態において、上述した外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径RAは、この突出高さHAよりも例えば2倍程度、あるいはそれ以上の大きさであるとよく、より具体的には、2.3倍以上、すなわち、RA≧2.3HAであることが好ましい。
【0049】
本実施形態の標章表示部60Aが備える外側隅部72は、タイヤ子午線面の断面視において、実質的に一つの曲率半径RAの湾曲面72aにより形成されており、その湾曲面72aの曲率半径RAは、6mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0050】
標章表示部60Aは、タイヤ1の加硫成型の際には、成型用の金型に形成されている凹部に、色ゴム61とともにカバーゴム65が流入して形成される。このとき、外側隅部72の湾曲面72aを形成する金型側の凸の湾曲面の曲率半径が小さければ小さいほど、ゴムは流動しにくく、特に薄いカバーゴム65は、強い引っ張り力がかかって拡張し、破れる可能性がある。しかし、実施形態の標章表示部60Aの外側隅部72は、湾曲面72aの曲率半径RAが6mm以上10mm以下と、比較的曲率半径が大きく曲率が小さい、すなわち、なだらかであるため、加硫成型の際に、標章表示部60Aを形成する凹部にゴムが流入しやすい。また、流入しやすいことから、カバーゴム65に強い引っ張り力がかかる可能性も低くなる。このため、加硫成型時において、標章表示部60Aを形成するカバーゴム65が拡張して引き裂かれることが抑制され、色ゴム61及びカバーゴム65は十分、かつ、的確な形状に形成される。その結果、例えば外側隅部72において色ゴム61がカバーゴム65で覆われず露出してしまい、標章表示部60Aの外観が低下するといったことが抑制される。すなわち、実施形態のタイヤ1によれば、標章表示部60Aを形成する色ゴム61の意図しない露出が抑制される。
【0051】
標章表示部60Aにおいて外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径RAが6mmを下回ると、加硫成型時においてカバーゴム65に引っ張り力がかかって拡張し、破れが生じる可能性が高くなる。一方、外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径RAが10mmを上回ると、標章表示部60Aの立体的な視認性が低下するおそれがある。したがって、標章表示部60Aにおいて外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径RAは、6mm以上10mm以下であることが好ましく、6mm以上8mm以下であればより好ましい。
【0052】
また、実施形態のタイヤ1は、上述したように、標章表示部60Aの裾野の長さL2が、4mm以上8mm以下である場合、外側隅部72の湾曲面72aはなだらかである。さらに、実施形態のタイヤ1は、上述したように、外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径RAは、標章表示部60Aの突出高さHAに対し2.3倍以上である場合にも、外側隅部72の湾曲面72aは同様になだらかである。したがってこれらのことからも、加硫成型時において標章表示部60Aを形成する色ゴム61及びカバーゴム65は流動しやすく、色ゴム61及びカバーゴム65はよって適正な標章表示部60Aが形成される。したがって、標章表示部60Aを形成する色ゴム61の意図しない露出が抑制される。
【0053】
以上説明した第1実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0054】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されているトレッド30と、を備え、サイドウォール20は、タイヤ子午線面の断面視においてサイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出する突出部を含み、その突出端面に標章面70を有する標章表示部60Aを備え、標章表示部60Aは、カバーゴム65と、標章面70に露出する露出部62を有し、露出部62以外がカバーゴム65で覆われる色ゴム61と、を含み、タイヤ径方向において、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、トレッド30のタイヤ径方向外側の先端としてのトレッド先端30Aまでの距離をタイヤ側面視長さLaとしたときに、サイドウォール20のプロファイルラインPLと標章表示部60Aの突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点としての点P2iは、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下の長さの位置に配置されている。これにより、外観性の低下を抑制できる。
【0055】
(2)実施形態に係るタイヤ1においては、標章表示部60Aは、カバーゴム65で覆われ、標章面70の最外形の輪郭を形成する外縁71からサイドウォール20の外表面にわたる外側隅部72と、を含み、外側隅部72は、標章面70の側に凹となる断面円弧状であって、その曲率半径RAが6mm以上10mm以下の湾曲面72aを含む。これにより、標章表示部60Aを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0056】
(3)実施形態に係るタイヤ1においては、外側隅部72の裾野の長さL2は、4mm以上8mm以下であることが好ましい。これにより、標章表示部60Aを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0057】
(4)実施形態に係るタイヤ1においては、プロファイルラインPLから標章表示部60Aの標章面70までの距離である標章表示部の突出高さHAに対し、外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径RAは2.3倍以上であることが好ましい。これにより、標章表示部60Aを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【実施例0058】
[実験例1]
以下、実験例1について説明する。表1に示すように、標章表示部60Aを備える上述の実施形態のタイヤ1と同様の構成を備え、タイヤ側面視長さLaと、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbを変化させた実施例1~3及び比較例1、2のタイヤを作製した。表1には、作製した各タイヤにつき、標章表示部60Aの色ゴム61が露出しているか否か、及び外観性について調べ、色ゴム61が露出していたり、外観性が悪かったりした場合であってタイヤの総合的に考慮し許容できない状態を「×」、色ゴム61が露出しておらずカバーゴム65が適正に形成され、かつ、外観性も良好な場合を「〇」として評価した。その評価の結果を表1に併記する。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、標章表示部60Aにおいて、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの長さの25%、30%、35%である実施例1、2、3は、いずれも色ゴム61が外側隅部72で露出しておらず、外観性も良好であった。一方、比較例1、2は、色ゴム61が露出していたり、外観性が悪かったり、タイヤの総合的に考慮し許容できない状態であった。以上より、標章表示部60Aにおけるビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの長さの25%以上35%以下であると、外側隅部72での色ゴム61の露出が抑制されるとともに、標章表示部60Aの外観性が良好になることが確認された。
【実施例0061】
[実験例2]
以下、実験例2について説明する。表2に示すように、標章表示部60Aを備える上述の実施形態のタイヤ1と同様の構成を備え、標章表示部60Aの外側隅部72における湾曲面72aの曲率半径RAと、標章表示部60Aの突出高さHAを変化させた実施例1~3及び比較例1、2のタイヤを作製した。表2には、標章表示部60Aの突出高さHAに対する湾曲面72aの曲率半径RAの比率として、HAを1とした場合の曲率半径RAの比率を示している。また、表2に示す裾野の長さL2は、湾曲面72aの曲率半径RAと標章表示部60Aの突出高さHAに応じた値である。作製した各タイヤにつき、標章表示部60Aの色ゴム61が外側隅部72に露出しているか否か、及び外観性について調べ、色ゴム61が露出する等した場合は「露出あり」、外観性が低い場合を「外観低下」、色ゴム61が露出しておらずカバーゴム65が適正に形成され、かつ、外観性も良好な場合を「〇」として評価した。その評価の結果を表2に併記する。
【0062】
【表2】
【0063】
表2に示すように、標章表示部60Aにおいて外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径RAが6mm、8mm、10mmの実施例1、2、3は、いずれも色ゴム61が外側隅部72で露出しておらず、外観性も良好であった。一方、比較例1は、外側隅部72で色ゴム61が露出しており、これは、加硫成型時において標章表示部60Aのカバーゴム65に破れが発生したことに起因すると推測された。また、比較例2は、外側隅部72での色ゴム61の露出は認められなかったが、立体的な視認性に欠けており、標章表示部としての機能が不十分であった。以上より、標章表示部60Aにおける外側隅部72の湾曲面72aの曲率半径RAは、6mm以上10mm以下であると、外側隅部72での色ゴム61の露出が抑制されるとともに、標章表示部60Aの外観性が良好になることが確認された。
【0064】
(第2実施形態)
次いで、図4図6Dを参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、本発明に係る標章表示部60Bの形態が、上記第1実施形態の標章表示部60Aと相違しており、他の構成は同一または近似している。したがって、以下の説明においては、上記第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0065】
標章表示部60Bは、色ゴム61と、カバーゴム65と、を有する。色ゴム61は、カーカスプライ40のタイヤ軸方向外側に配置される。図5に示す標章表示部60Bは、タイヤ1を側面から見た場合(図5のV矢視)において、図6Aに示すように、英文字「O」を意匠的に描いて表示した部分であり、図5は、図6AのIV-IV線に沿った部分のタイヤ軸方向断面を示している。なお、図5は断面図であるが、寸法線や符号等を明示するために、ハッチングを省略している。
【0066】
図5及び図6Aに示すように、標章表示部60Bにおいて実質的に標章60BAとして視認される部分、すなわち英文字「O」として視認される部分は、サイドウォール20の表面から突出してサイドウォール20の側面に露出する色ゴム61の露出部62と、色ゴム61を囲むように配置されているカバーゴム65による縁取り66と、によって形成されている。色ゴム61の露出部62及びカバーゴム65の縁取り66の各表面は、平坦な同一面を形成している。すなわち標章60BA(文字「O」)は、平坦な単一面で構成される。図6Aに示すように、実施形態の標章60BAである英文字「O」は、右側に傾倒する態様の略平行四辺形状にデザインされ、当該文字の上下方向はタイヤ径方向に沿っており、文字の下側がタイヤ径方向内側に配置され、かつ、文字の上側がタイヤ径方向外側に配置されている。
【0067】
標章表示部60Bは、タイヤ1を加硫成型する際に、サイドウォール20のタイヤ周方向の一部に、サイドウォール20のプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に突出する突出部を含むように形成される。タイヤ1が加硫成型された後は、色ゴム61は全体がカバーゴム65で覆われ、露出部62は形成されていない。タイヤ1の加硫成型後に、標章60BAに対応する部分のカバーゴム65がバフ研削等の手段で研削除去されることにより、色ゴム61が露出して、色ゴム61による露出部62及びカバーゴム65による縁取り66からなる標章60BAが露出する。標章表示部60Bの研削面が、標章60BAの平坦な単一面である標章面80を構成する。
【0068】
図4に示すように、タイヤ径方向において、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、トレッド30のタイヤ径方向外側の先端としてのトレッド先端30Aまでの距離を、タイヤ1を側面から見たときのタイヤ側面視における、タイヤ側面視長さLaとする。サイドウォール20のプロファイルラインPLと標章表示部60Bの突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点としての点P2iは、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下の長さの位置に配置されていることが好ましい。言い換えると、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、サイドウォール20のプロファイルラインPLと標章表示部60Bの突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点としての点P2iまでの距離Lbとしたときに、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbは、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下の長さであることが好ましい。
【0069】
例えば、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの35%を超える位置に配置されているタイヤは、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下に配置されているタイヤよりも、標章表示部60Bがタイヤ径方向外側に配置されることとなる。このような、タイヤが加硫成型されると、標章表示部60Bの膨張量が大きくなるため、色ゴム61が露出する可能性が高くなる。しかしながら、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの35%以下であれば、標章表示部60Bを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
また、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの25%未満のときは、タイヤ製造番号等を表示するセリアル部21bを標章表示部60Aよりもタイヤ径方向内側に配置する場合、このセリアル部21bに標章表示部60Aが近づき、標章表示部60Bの外観性を低下させるおそれがある。しかしながら、ビードトウ10Aから点P2iまでの距離Lbが、タイヤ側面視長さLaの25%以上であれば、標章表示部60Bの外観性を維持することができる。
【0070】
また、タイヤ径方向において、サイドウォール20のプロファイルラインPLと標章表示部60Bの突出部との交点であって、タイヤ径方向外側の交点としての点P2oから、サイドウォール20のプロファイルラインPLとサイドブロック22の突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点としての点P5までの距離Lcは、10mm以上であることが好ましい。これにより、標章表示部60Bを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0071】
標章表示部60Bは、標章面80の内側において閉じられた輪郭を形成する内縁81の内側に凹み85を有する。そしてこの凹み85の底面85aから内縁81にわたり、内側隅部82が形成されている。凹み85の底面85a及び内側隅部82は、カバーゴム65で覆われている。図6Aに示すように、内側隅部82は、標章60BAの内縁81の内側に全周にわたって形成されている。図5に示すように、内側隅部82は、サイドウォール20の側面、すなわち標章表示部60Bの標章面80の側に凹となる断面円弧状の湾曲面82aを含む。実施形態において、この湾曲面82aの曲率半径RBは、6mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0072】
実施形態の標章60BA(文字「O」)の内縁81で囲まれる凹み85の領域の面積は、図6Aに示すように、標章表示部60Bの最小外接四角形Fの面積の13%以上31%以下である。この場合の凹み85の領域の面積とは、凹み85を正面視した状態での、内縁81に囲まれた二次元的な領域の面積であり、底面85a及び内側隅部82の湾曲面82aを含む凹み85の立体的な内面の総面積ではない。また、図4に示すように、標章表示部60Bのタイヤ径方向の寸法Gは、13mm以上28mm以下であることが好ましい。
【0073】
図5に示すように、標章表示部60Bの標章面80の内縁81からプロファイルラインPLに直交する線L3と、プロファイルラインPLとの交点P3から、湾曲面82aが凹み85の底面85aに達する点P4までが、内側隅部82の裾野の長さL4である。この内側隅部82の裾野の長さL4は、上述した内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBよりも大きいことが好ましく、具体的な裾野の長さL4としては、4mm以上8mm以下であることが好ましく、4mm以上6.5mm以下であればより好ましい。
【0074】
また、図5に示すように、プロファイルラインPLから標章表示部60Bの標章面80までの距離HBは、すなわち標章表示部60Bの突出高さHBである。実施形態において、上述した内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBは、この突出高さHBよりも例えば2倍程度、あるいはそれ以上の大きさであるとよく、より具体的には、2.3倍以上、すなわち、RB≧2.3HBであることが好ましい。
【0075】
本実施形態の標章表示部60Bが備える内側隅部82は、タイヤ子午線面の断面視において、実質的に一つの曲率半径RBの湾曲面82aにより形成されており、その湾曲面82aの曲率半径RBは、6mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0076】
標章表示部60Bは、タイヤ1の加硫成型の際には、成型用の金型に形成されている凹部に、色ゴム61とともにカバーゴム65が流入して形成される。このとき、内側隅部82の湾曲面82aを形成する金型側の凸の湾曲面の曲率半径が小さければ小さいほど、ゴムは流動しにくく、特に薄いカバーゴム65は、強い引っ張り力がかかって拡張し、破れる可能性がある。しかし、実施形態の標章表示部60Bの内側隅部82は、湾曲面82aの曲率半径RBが6mm以上10mm以下と、比較的曲率半径が大きく曲率が小さい、すなわち、なだらかであるため、加硫成型の際に、標章表示部60Bを形成する凹部にゴムが流入しやすい。また、流入しやすいことから、カバーゴム65に強い引っ張り力がかかる可能性も低くなる。このため、加硫成型時において、標章表示部60Bを形成するカバーゴム65が拡張して引き裂かれることが抑制され、色ゴム61及びカバーゴム65は十分、かつ、的確な形状に形成される。その結果、例えば内側隅部82において色ゴム61がカバーゴム65で覆われず露出してしまい、標章表示部60Bの外観が低下するといったことが抑制される。すなわち、実施形態のタイヤ1によれば、内側隅部82において、標章表示部60Bを形成する色ゴム61の意図しない露出が抑制される。
【0077】
標章表示部60Bにおいて内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBが6mmを下回ると、加硫成型時においてカバーゴム65に引っ張り力がかかって拡張し、破れが生じる可能性が高くなる。一方、内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBが10mmを上回ると、標章表示部60Bの立体的な視認性が低下するおそれがある。したがって、標章表示部60Bにおいて内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBは、6mm以上10mm以下であることが好ましく、6mm以上8mm以下であればより好ましい。
【0078】
また、実施形態のタイヤ1は、上述したように、内側隅部82の裾野の長さL4が、4mm以上8mm以下である場合、内側隅部82の湾曲面82aはなだらかである。さらに、実施形態のタイヤ1は、上述したように、内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBは、標章表示部60Bの突出高さHBに対し2.3倍以上である場合にも、内側隅部82の湾曲面82aは同様になだらかである。したがってこれらのことからも、加硫成型時において標章表示部60Bを形成する色ゴム61及びカバーゴム65は流動しやすく、色ゴム61及びカバーゴム65によって適正な標章表示部60Bが形成される。したがって、内側隅部82において標章表示部60Bを形成する色ゴム61の意図しない露出が抑制される。
【0079】
以上説明した第2実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0080】
(5)実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されているトレッド30と、を備え、サイドウォール20は、タイヤ子午線面の断面視においてサイドウォール20のプロファイルラインPLからタイヤ軸方向外側に突出する突出部を含み、その突出端面に標章面80を有する標章表示部60Bを備え、標章表示部60Bは、カバーゴム65と、標章面80に露出する露出部62を有し、露出部62以外がカバーゴム65で覆われる色ゴム61と、を含み、タイヤ径方向において、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、トレッド30のタイヤ径方向外側の先端としてのトレッド先端30Aまでの距離をタイヤ側面視長さLaとしたときに、サイドウォール20のプロファイルラインPLと標章表示部60Bの突出部との交点であって、タイヤ径方向内側の交点としての点P2iは、ビード10のタイヤ径方向内側の先端としてのビードトウ10Aから、タイヤ側面視長さLaの25%以上35%以下の長さの位置に配置されており、さらに標章表示部60Bは、閉じられた輪郭を形成する標章面80の内縁81の内側に凹み85を含むとともに、当該凹み85の底面85aから内縁81にわたる内側隅部82を含み、内側隅部82は、標章面80の側に凹となる断面円弧状であって、その曲率半径RBが6mm以上10mm以下の湾曲面82aを有する。これにより、内側隅部82において標章表示部60Bを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0081】
(6)実施形態に係るタイヤ1においては、内側隅部82の裾野の長さL4は、4mm以上8mm以下であることが好ましい。これにより、内側隅部82において標章表示部60Bを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0082】
(7)実施形態に係るタイヤ1においては、プロファイルラインPLから標章表示部60Bの標章面80までの距離である標章表示部の突出高さHBに対し、内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBは2.3倍以上であることが好ましい。これにより、内側隅部82において標章表示部60Bを形成する色ゴム61の意図しない露出を抑制できる。
【0083】
(8)実施形態に係るタイヤ1においては、内縁81で囲まれる凹み85の領域の面積は、標章表示部60Bの最小外接四角形面積の13%以上31%以下であることが好ましい。これにより、内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBを、6mm以上10mm以下に設定しやすく、上述の効果を得やすい。
【0084】
(9)実施形態に係るタイヤ1においては、標章表示部60Bのタイヤ径方向の寸法は、13mm以上28mm以下であることが好ましい。これにより、比較的低扁平のタイヤに当該標章表示部60Bをサイドウォールに配置することができ、低扁平のタイヤにおける明確な標章表示部60Bを設けることが可能となる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良等を行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0086】
上記実施形態では、標章表示部60Bの例として英文字「O」を示したが、標章表示部60Bとしては、図6B図6C図6Dに示すような他の英文字であってよい。
【0087】
図6Bに示す標章表示部60Bの標章60BAは、英文字「R」である。図6Cに示す標章表示部60Bの標章60BAは、英文字「A」である。図6Dに示す標章表示部60Bの標章60BAは、英文字「P」である。いずれの標章60BAも、上記「O」と同様の右側に傾倒する字体である。
【0088】
図6B図6C図6Dに示す各標章60BAも、閉じられた輪郭を形成する標章面80の内縁81の内側に凹み85を含み、その凹み85の底面85aから内縁81にわたる内側隅部82を有する。これら内側隅部82においても、上記実施形態のように、内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBは6mm以上10mm以下であり、内側隅部82の裾野の長さL4は、4mm以上8mm以下である。また、標章表示部60Bの突出高さHBに対し、内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBは2.3倍以上である。また、凹み85の面積は、標章表示部60Bの最小外接四角形Fの面積の、少なくとも13%を有する。
【0089】
本開示に係る標章表示部は、上記各実施形態の英文字に代表される文字の他に、図形、記号、模様等が挙げられ、限定はされない。
【0090】
上記各実施形態に係る構成は、軽自動車やSUV等を含む乗用車用の空気入りタイヤの他に、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用の空気入りタイヤに適用できる。
【0091】
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良等を行っても、本発明の範囲に含まれる。
【実施例0092】
[実験例3]
以下、実験例3について説明する。表3に示すように、標章表示部60Bを備える上述の実施形態のタイヤ1と同様の構成を備え、標章表示部60Bの内側隅部82における湾曲面82aの曲率半径RBと、標章表示部60Bの突出高さHBを変化させた実施例1~3及び比較例1、2のタイヤを作製した。表3には、標章表示部60Bの突出高さHBに対する湾曲面82aの曲率半径RBの比率として、HBを1とした場合の曲率半径RBの比率を示している。また、表3に示す裾野の長さL4は、湾曲面82aの曲率半径RBと標章表示部60Bの突出高さHBに応じた値である。作製した各タイヤにつき、標章表示部60Bの色ゴム61が内側隅部82で露出しているか否か、及び外観性について調べ、色ゴム61が露出する等した場合は「露出あり」、外観性が低い場合を「外観低下」、色ゴム61が露出しておらずカバーゴム65が適正に形成され、かつ、外観性も良好な場合を「〇」として評価した。その評価の結果を表3に併記する。
【0093】
【表3】
【0094】
表3に示すように、標章表示部60Bにおいて内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBが6mm、8mm、10mmの実施例1、2、3は、いずれも色ゴム61が内側隅部82で露出しておらず、外観性も良好であった。一方、比較例1は、内側隅部82で色ゴム61が露出しており、これは、加硫成型時において標章表示部60Bのカバーゴム65に破れが発生したことに起因すると推測された。また、比較例2は、内側隅部82での色ゴム61の露出は認められなかったが、立体的な視認性に欠けており、標章表示部としての機能が不十分であった。以上より、標章表示部60Bにおける内側隅部82の湾曲面82aの曲率半径RBは、6mm以上10mm以下であると、内側隅部82での色ゴム61の露出が抑制されるとともに、標章表示部60Bの外観性が良好になることが確認された。
【符号の説明】
【0095】
1 空気入りタイヤ
10 ビード
10A ビードトウ
20 サイドウォール
30 トレッド
60A、60B 標章表示部
61 色ゴム
62 露出部
65 カバーゴム
70 標章面
71 標章面の外縁
72 外側隅部
72a 外側隅部の湾曲面
80 標章面
81 標章面の内縁
82 内側隅部
82a 内側隅部の湾曲面
85 凹み
85a 凹みの底面
G 標章表示部のタイヤ径方向の寸法
HA 標章表示部の突出高さ
HB 標章表示部の突出高さ
La タイヤ側面視長さ
L2 外側隅部の裾野の長さ
L4 内側隅部の裾野の長さ
PL プロファイルライン
P2i 点
RA 外側隅部の湾曲面の曲率半径
RB 内側隅部の湾曲面の曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D