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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172395
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】RSウイルスワクチン及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/12 20060101AFI20241205BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241205BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20241205BHJP
   C07K 14/08 20060101ALI20241205BHJP
   C12N 15/117 20100101ALI20241205BHJP
【FI】
A61K39/12
A61P31/14 ZNA
A61P37/04
A61K39/39
C07K14/08
C12N15/117 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】84
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090091
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 伸治
(72)【発明者】
【氏名】河村 明日香
(72)【発明者】
【氏名】松本 大
(72)【発明者】
【氏名】城内 直
(72)【発明者】
【氏名】六笠 隆太
(72)【発明者】
【氏名】降旗 啓
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA51
4C085CC08
4C085DD52
4C085DD62
4C085DD86
4C085FF12
4C085FF14
4C085FF17
4C085GG03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、RSウイルスに対して高い治療効果及び/又は予防効果を有するRSウイルスワクチンを提供することである。
【解決手段】本発明は、RSウイルス感染症を予防又は治療するためのワクチンであって、
(a)RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質、並びに(b)(i)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、及び、(ii)レンチナンからなる複合体を含むアジュバント、の組み合わせを含み、ヒトに投与され、かつ、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである、前記ワクチンに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RSウイルス感染症を予防又は治療するためのワクチンであって、
(a)RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質、並びに
(b)(i)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、及び、
(ii)レンチナン
からなる複合体を含むアジュバント、
の組み合わせを含み、
ヒトに投与され、かつ、
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである、前記ワクチン。
【請求項2】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項6】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項7】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項8】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項9】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項10】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
1年乃至5年に1回乃至10回投与され、かつ、1年間の投与回数は2回以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項12】
1年に1回又は2回投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項13】
1年に2回投与され、かつ、第一の投与から4週間後に第二の投与がなされる、請求項11又は12に記載のワクチン。
【請求項14】
前記投与が筋肉内投与である、請求項1~13のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項15】
ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、請求項1~14のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項16】
アジュバントが、
(i)配列番号2で示されるヌクレオチド配列を含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、および
(ii)レンチナン
からなる複合体を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項17】
抗原タンパク質が、
(A)(i) 配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている、ペプチドI、および
(ii) 配列番号4で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号4で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドII
を含み、
(B)ペプチドIおよびペプチドIIが、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、および配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されている、
タンパク質である、請求項1~16のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項18】
抗原タンパク質とアジュバントとが同じ容器に保持されている、請求項1~17のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項19】
抗原タンパク質とアジュバントとが別の容器に保持されており、投与前に混合される、請求項1~17のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項20】
直前の前記ワクチン投与4週後の抗原タンパク質抗体価に対する、当該ワクチン投与1年後の抗原タンパク質抗体価の比が、少なくとも0.1である、請求項1~19のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項21】
前記複合体が三重螺旋構造状のものである、請求項1~20のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項22】
ヒトのRSウイルス感染症を予防又は治療する方法であって、
(a)RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質、並びに
(b)(i)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、及び、
(ii)レンチナン
からなる複合体を含むアジュバント、
の組み合わせを含むワクチンをヒトに投与する工程を含み、
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである、前記方法。
【請求項23】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
1年乃至5年に1回乃至10回投与され、かつ、1年間の投与回数は2回以下である、請求項22~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
1年に1回又は2回投与される、請求項22~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
1年に2回投与され、かつ、第一の投与から4週間後に第二の投与がなされる、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記投与が筋肉内投与である、請求項22~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、請求項22~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
アジュバントが、
(i)配列番号2で示されるヌクレオチド配列を含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、および
(ii)レンチナン
からなる複合体を含む、請求項22~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
抗原タンパク質が、
(A)(i) 配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている、ペプチドI、および
(ii) 配列番号4で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号4で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドII
を含み、
(B)ペプチドIおよびペプチドIIが、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、および配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されている、
タンパク質である、請求項22~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
抗原タンパク質とアジュバントとが同じ容器に保持されている、請求項22~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
抗原タンパク質とアジュバントとが別の容器に保持されており、投与前に混合される、請求項22~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
直前の前記ワクチン投与4週後の抗原タンパク質抗体価に対する、当該ワクチン投与1年後の抗原タンパク質抗体価の比が、少なくとも0.1である、請求項22~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記複合体が三重螺旋構造状のものである、請求項22~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
ヒトのRSウイルス感染症を予防又は治療するためのワクチンの製造における、アジュバントと組み合わせた抗原タンパク質の使用であって、
前記抗原タンパク質が、(a)RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質であり、
前記アジュバントが、(b)(i)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、及び、
(ii)レンチナン
からなる複合体を含むアジュバントであり、
前記抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである、前記使用。
【請求項44】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項43に記載の使用。
【請求項46】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項43に記載の使用。
【請求項47】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項43に記載の使用。
【請求項48】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項43に記載の使用。
【請求項49】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項43に記載の使用。
【請求項50】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項43に記載の使用。
【請求項51】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項43に記載の使用。
【請求項52】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項43に記載の使用。
【請求項53】
1年乃至5年に1回乃至10回投与され、かつ、1年間の投与回数は2回以下である、請求項43~52のいずれか1項に記載の使用。
【請求項54】
1年に1回又は2回投与される、請求項43~53のいずれか1項に記載の使用。
【請求項55】
1年に2回投与され、かつ、第一の投与から4週間後に第二の投与がなされる、請求項53又は54に記載の使用。
【請求項56】
前記投与が筋肉内投与である、請求項43~55のいずれか1項に記載の使用。
【請求項57】
ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、請求項43~55のいずれか1項に記載の使用。
【請求項58】
アジュバントが、
(i)配列番号2で示されるヌクレオチド配列を含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、および
(ii)レンチナン
からなる複合体を含む、請求項43~57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項59】
抗原タンパク質が、
(A)(i) 配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている、ペプチドI、および
(ii) 配列番号4で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号4で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドII
を含み、
(B)ペプチドIおよびペプチドIIが、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、および配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されている、
タンパク質である、請求項43~58のいずれか1項に記載の使用。
【請求項60】
抗原タンパク質とアジュバントとが同じ容器に保持されている、請求項43~58のいずれか1項に記載の使用。
【請求項61】
抗原タンパク質とアジュバントとが別の容器に保持されており、投与前に混合される、請求項43~58のいずれか1項に記載の使用。
【請求項62】
直前の前記ワクチン投与4週後の抗原タンパク質抗体価に対する、当該ワクチン投与1年後の抗原タンパク質抗体価の比が、少なくとも0.1である、請求項43~61のいずれか1項に記載の使用。
【請求項63】
前記複合体が三重螺旋構造状のものである、請求項43~62のいずれか1項に記載の使用。
【請求項64】
ヒトのRSウイルス感染症の予防又は治療用の、アジュバントと組み合わせた抗原タンパク質であって、
前記抗原タンパク質が、(a)RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質であり、
前記アジュバントが、(b)(i)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、及び、
(ii)レンチナン
からなる複合体を含むアジュバントであり、
前記抗原タンパク質と前記アジュバントは、組み合わされてヒトに投与され、
前記抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである、アジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項65】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項64に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項66】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項64に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項67】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項64に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項68】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項64に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項69】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項64に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項70】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項64に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項71】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、請求項64に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項72】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、請求項64に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項73】
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、請求項64に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項74】
1年乃至5年に1回乃至10回投与され、かつ、1年間の投与回数は2回以下である、請求項64~73のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項75】
1年に1回又は2回投与される、請求項64~74のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項76】
1年に2回投与され、かつ、第一の投与から4週間後に第二の投与がなされる、請求項74又は75に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項77】
前記投与が筋肉内投与である、請求項64~76のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項78】
ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、請求項64~77のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項79】
アジュバントが、
(i)配列番号2で示されるヌクレオチド配列を含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、および
(ii)レンチナン
からなる複合体を含む、請求項64~78のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項80】
抗原タンパク質が、
(A)(i) 配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている、ペプチドI、および
(ii) 配列番号4で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号4で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドII
を含み、
(B)ペプチドIおよびペプチドIIが、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、および配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されている、
タンパク質である、請求項64~79のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項81】
抗原タンパク質とアジュバントとが同じ容器に保持されている、請求項64~80のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項82】
抗原タンパク質とアジュバントとが別の容器に保持されており、投与前に混合される、請求項64~80のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項83】
直前の前記ワクチン投与4週後の抗原タンパク質抗体価に対する、当該ワクチン投与1年後の抗原タンパク質抗体価の比が、少なくとも0.1である、請求項64~82のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【請求項84】
前記複合体が三重螺旋構造状のものである、請求項64~83のいずれか1項に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RSウイルス由来の抗原タンパク質、及び、オリゴデオキシヌクレオチドとレンチナンとからなる複合体を含むアジュバントを組み合わせて使用する、RSウイルス感染症を予防又は治療するためのワクチンに関する。また、本発明は、RSウイルス感染症の予防及び/または治療における当該ワクチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus (以下、RSV又はRSウイルスと表記する))は、乳児における下気道疾患(LRI)の主な原因である。また、特に乳児、幼児、及び高齢者にとってRSV感染症は依然として死亡の重大な原因になっている。したがって、RSVは、健康上の対応するべき優先事項として世界的に認識されている(非特許文献5)。
【0003】
そこで、各国でRSVワクチンの開発が進められている。例えば、安定な融合前RSVのFタンパク質(またはその断片)、前記タンパク質を含む組成物、ならびにRSV感染を防止および/または治療するためのその使用の開発(特許文献3及び6~8)や、RSV Fタンパク質突然変異体、RSV Fタンパク質突然変異体をコードする核酸またはベクター、RSV Fタンパク質突然変異体または核酸を含む組成物、ならびにこれらの使用の開発(特許文献4)、並びに、RSV感染を治療及び/又は予防するための組換えRSV抗原を含むワクチンの開発(特許文献5)が知られている。また、ヒトのメタニューモウィルス(hMPV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)及び呼吸器合胞体ウイルス(RSV)から選択される少なくとも2つのパラミクソウイルスのFタンパク質抗原(抗原は組換えFタンパク質ポリペプチドであり、それは三量体の前融合立体構造を安定化するために修飾されている)を含む免疫原性組成物の開発も知られている(特許文献10)。
【0004】
また、ワクチンには、有効成分である組換え抗原タンパク質など以外にアジュバントを合わせて含むことが有効であることが知られている。例えば、少なくとも約1μg及び最大約200μgのRSV可溶性Fタンパク質と、脂質Toll様受容体(TLR)アゴニストを含む少なくとも約1μg及び最大約20μgのアジュバントとを含有するワクチン組成物の開発が知られている(特許文献9)。
CpGオリゴヌクレオチド(CpG ODN)は、免疫賦活性のCpGモチーフを含有する、短い(約20塩基)、一本鎖の合成DNA断片であって、Toll様受容体9(TLR9)の強力なアゴニストであり、樹状細胞(DC)及びB細胞を活性化して、I型インターフェロン(IFN)及び炎症性サイトカインを産生させ(非特許文献1、2)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を含む、Th1型の液性及び細胞性免疫反応のアジュバントとして作用することが知られている(非特許文献3、4)。
【0005】
CpG ODNには、骨格配列及び免疫賦活特性がそれぞれ異なる、K型(B型とも呼ばれる)、D型(A型とも呼ばれる)、C型及びP型という少なくとも4つの型がある(非特許文献6)。その中で、K型CpG ODNは、非回文構造の複数のCpGモチーフを含有し、B細胞を強力に活性化してインターロイキン6(IL-6)を産生させ、プラズマサイトイドDC(pDC)を活性化して成熟化させるが、ほとんどインターフェロンα(IFN-α)を産生しないことが知られている(非特許文献7、8)。
【0006】
また、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)由来の可溶性β-グルカンであるシゾフィラン(SPG)と複合体化した、5'末端にポリdAのP-O骨格を連結させたマウス及びヒト化したCpG ODNが、サイトカイン産生を増強し、インフルエンザワクチンアジュバントやTh2細胞関連疾患の予防または治療剤として作用することが示されている(非特許文献9、10、特許文献2)。
さらに、3'末端にポリ(dA)テイルを有するK型CpG ODN及びSPGを含む複合体が、ワクチンアジュバント活性を有することも知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/041318号公報
【特許文献2】特開2008-100919号公報
【特許文献3】国際公開第2017/174568号公報
【特許文献4】国際公開第2017/109629号公報
【特許文献5】国際公開第2009/079796号公報
【特許文献6】国際公開第2017/005848号公報
【特許文献7】国際公開第2020/099383号公報
【特許文献8】国際公開第2014/174018号公報
【特許文献9】国際公開第2014/168821号公報
【特許文献10】国際公開第2010/149743号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hemmi, H., et al. A Toll-like receptor recognizes bacterial DNA. Nature 408, 740-745 (2000).
【非特許文献2】Krieg, A.M. Therapeutic potential of Toll-like receptor 9 activation. Nature reviews. Drug discovery 5, 471-484 (2006).
【非特許文献3】Brazolot Millan, C.L., Weeratna, R., Krieg, A.M., Siegrist, C.A. & Davis, H.L. CpG DNA can induce strong Th1 humoral and cell-mediated immune responses against hepatitis B surface antigen in young mice. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 95, 15553-15558 (1998).
【非特許文献4】Chu, R.S., Targoni, O.S., Krieg, A.M., Lehmann, P.V. & Harding, C.V. CpG oligodeoxynucleotides act as adjuvants that switch on T helper 1 (Th1) immunity. The Journal of experimental medicine 186, 1623-1631 (1997).
【非特許文献5】Jia Meng., et al. An Overview of Respiratory Syncytial Virus, PLOS Pathogens, April 2014, Volume 10, Issue 4, e1004016
【非特許文献6】Vollmer, J. & Krieg, A.M. Immunotherapeutic applications of CpG oligodeoxynucleotide TLR9 agonists. Advanced drug delivery reviews 61, 195-204 (2009).
【非特許文献7】Verthelyi, D., Ishii, K.J., Gursel, M., Takeshita, F. & Klinman, D.M. Human peripheral blood cells differentially recognize and respond to two distinct CPG motifs. Journal of immunology 166, 2372-2377 (2001).
【非特許文献8】Hartmann, G. & Krieg, A.M. Mechanism and function of a newly identified CpG DNA motif in human primary B cells. Journal of immunology 164, 944-953 (2000).
【非特許文献9】Shimada, N., et al. A polysaccharide carrier to effectively deliver native phosphodiester CpG DNA to antigen-presenting cells. Bioconjugate chemistry 18, 1280-1286 (2007).
【非特許文献10】Koyama, S., et al. Plasmacytoid dendritic cells delineate immunogenicity of influenza vaccine subtypes. Science translational medicine 2, 25ra24 (2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、RSウイルスに対して高い治療効果及び/又は予防効果を有するRSウイルスワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らはワクチンに含まれる成分や、ワクチン接種用量及びレジメンに関し、短期及び長期の免疫原性、並びに有効性の可能性を検討した。その際、本発明者らは、抗原量の低減、免疫応答の増加、免疫応答の質の向上、より少ない投与回数、より長期間持続する免疫応答、RSV感染症の発症予防、当該感染症の重症化予防や感染予防等を迅速に達成するために鋭意研究した。
そして、特定のヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドを含むポリデオキシヌクレオチドとレンチナンとからなる複合体、及び、特定のRSウイルス抗原を特定の割合でともに免疫接種すると、RSウイルス抗原に対する液性免疫反応及び細胞性免疫反応の両方を誘導することを発見し、新規のRSウイルスワクチンを完成させた。
【0011】
本願発明は以下の発明を包含する。
[1] RSウイルス感染症を予防又は治療するためのワクチンであって、
(a)RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質、並びに
(b)(i)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、及び、
(ii)レンチナン
からなる複合体を含むアジュバント、
の組み合わせを含み、
ヒトに投与され、かつ、
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである、前記ワクチン。
[2] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[1]に記載のワクチン。
[3] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[1]に記載のワクチン。
[4] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[1]に記載のワクチン。
[5] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[1]に記載のワクチン。
[6] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[1]に記載のワクチン。
[7] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[1]に記載のワクチン。
[8] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[1]に記載のワクチン。
[9] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[1]に記載のワクチン。
[10] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[1]に記載のワクチン。
[11] 1年乃至5年に1回乃至10回投与され、かつ、1年間の投与回数は2回以下である、[1]~[10]のいずれかに記載のワクチン。
[12] 1年に1回又は2回投与される、[1]~[11]のいずれかに記載のワクチン。
[13] 1年に2回投与され、かつ、第一の投与から4週間後に第二の投与がなされる、[11]又は[12]に記載のワクチン。
[14] 前記投与が筋肉内投与である、[1]~[13]のいずれかに記載のワクチン。
[15] ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、[1]~[14]のいずれかに記載のワクチン。
[16] アジュバントが、
(i)配列番号2で示されるヌクレオチド配列を含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、および
(ii)レンチナン
からなる複合体を含む、[1]~[15]のいずれかに記載のワクチン。
[17] 抗原タンパク質が、
(A)(i) 配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている、ペプチドI、および
(ii) 配列番号4で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号4で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドII
を含み、
(B)ペプチドIおよびペプチドIIが、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、および配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されている、
タンパク質である、[1]~[16]のいずれかに記載のワクチン。
[18] 抗原タンパク質とアジュバントとが同じ容器に保持されている、[1]~[17]のいずれかに記載のワクチン。
[19] 抗原タンパク質とアジュバントとが別の容器に保持されており、投与前に混合される、[1]~[17]のいずれかに記載のワクチン。
[20] 直前の前記ワクチン投与4週後の抗原タンパク質抗体価に対する、当該ワクチン投与1年後の抗原タンパク質抗体価の比が、少なくとも0.1である、[1]~[19]のいずれかに記載のワクチン。
[21] 前記複合体が三重螺旋構造状のものである、[1]~[20]のいずれかに記載のワクチン。
[22] ヒトのRSウイルス感染症を予防又は治療する方法であって、
(a)RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質、並びに
(b)(i)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、及び、
(ii)レンチナン
からなる複合体を含むアジュバント、
の組み合わせを含むワクチンをヒトに投与する工程を含み、
抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである、前記方法。
[23] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[22]に記載の方法。
[24] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[22]に記載の方法。
[25] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[22]に記載の方法。
[26] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[22]に記載の方法。
[27] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[22]に記載の方法。
[28] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[22]に記載の方法。
[29] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[22]に記載の方法。
[30] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[22]に記載の方法。
[31] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[22]に記載の方法。
[32] 1年乃至5年に1回乃至10回投与され、かつ、1年間の投与回数は2回以下である、[22]~[31]のいずれかに記載の方法。
[33] 1年に1回又は2回投与される、[22]~[32]のいずれかに記載の方法。
[34] 1年に2回投与され、かつ、第一の投与から4週間後に第二の投与がなされる、[32]又は[33]に記載の方法。
[35] 前記投与が筋肉内投与である、[22]~[34]のいずれかに記載の方法。
[36] ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、[22]~[35]のいずれかに記載の方法。
[37] アジュバントが、
(i)配列番号2で示されるヌクレオチド配列を含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、および
(ii)レンチナン
からなる複合体を含む、[22]~[36]のいずれかに記載の方法。
[38] 抗原タンパク質が、
(A)(i) 配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている、ペプチドI、および
(ii) 配列番号4で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号4で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドII
を含み、
(B)ペプチドIおよびペプチドIIが、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、および配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されている、
タンパク質である、[22]~[37]のいずれかに記載の方法。
[39] 抗原タンパク質とアジュバントとが同じ容器に保持されている、[22]~[38]のいずれかに記載の方法。
[40] 抗原タンパク質とアジュバントとが別の容器に保持されており、投与前に混合される、[22]~[38]のいずれかに記載の方法。
[41] 直前の前記ワクチン投与4週後の抗原タンパク質抗体価に対する、当該ワクチン投与1年後の抗原タンパク質抗体価の比が、少なくとも0.1である、[22]~[40]のいずれかに記載の方法。
[42] 前記複合体が三重螺旋構造状のものである、[22]~[41]のいずれかに記載の方法。
[43] ヒトのRSウイルス感染症を予防又は治療するためのワクチンの製造における、アジュバントと組み合わせた抗原タンパク質の使用であって、
前記抗原タンパク質が、(a)RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質であり、
前記アジュバントが、(b)(i)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、及び、
(ii)レンチナン
からなる複合体を含むアジュバントであり、
前記抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである、前記使用。
[44] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[43]に記載の使用。
[45] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[43]に記載の使用。
[46] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[43]に記載の使用。
[47] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[43]に記載の使用。
[48] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[43]に記載の使用。
[49] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[43]に記載の使用。
[50] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[43]に記載の使用。
[51] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[43]に記載の使用。
[52] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[43]に記載の使用。
[53] 1年乃至5年に1回乃至10回投与され、かつ、1年間の投与回数は2回以下である、[43]~[52]のいずれかに記載の使用。
[54] 1年に1回又は2回投与される、[43]~[53]のいずれかに記載の使用。
[55] 1年に2回投与され、かつ、第一の投与から4週間後に第二の投与がなされる、[53]又は[54]に記載の使用。
[56] 前記投与が筋肉内投与である、[43]~[55]のいずれかに記載の使用。
[57] ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、[43]~[55]のいずれかに記載の使用。
[58] アジュバントが、
(i)配列番号2で示されるヌクレオチド配列を含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、および
(ii)レンチナン
からなる複合体を含む、[43]~[57]のいずれかに記載の使用。
[59] 抗原タンパク質が、
(A)(i) 配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている、ペプチドI、および
(ii) 配列番号4で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号4で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドII
を含み、
(B)ペプチドIおよびペプチドIIが、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、および配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されている、
タンパク質である、[43]~[58]のいずれかに記載の使用。
[60] 抗原タンパク質とアジュバントとが同じ容器に保持されている、[43]~[58]のいずれかに記載の使用。
[61] 抗原タンパク質とアジュバントとが別の容器に保持されており、投与前に混合される、[43]~[58]のいずれかに記載の使用。
[62] 直前の前記ワクチン投与4週後の抗原タンパク質抗体価に対する、当該ワクチン投与1年後の抗原タンパク質抗体価の比が、少なくとも0.1である、[43]~[61]のいずれかに記載の使用。
[63] 前記複合体が三重螺旋構造状のものである、[43]~[62]のいずれかに記載の使用。
[64] ヒトのRSウイルス感染症の予防又は治療用の、アジュバントと組み合わせた抗原タンパク質であって、
前記抗原タンパク質が、(a)RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質であり、
前記アジュバントが、(b)(i)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、及び、
(ii)レンチナン
からなる複合体を含むアジュバントであり、
前記抗原タンパク質と前記アジュバントは、組み合わされてヒトに投与され、
前記抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである、アジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[65] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[64]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[66] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[64]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[67] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[64]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[68] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[64]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[69] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[64]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[70] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[64]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[71] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgである、[64]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[72] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgである、[64]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[73] 抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgである、[64]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[74] 1年乃至5年に1回乃至10回投与され、かつ、1年間の投与回数は2回以下である、[64]~[73]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[75] 1年に1回又は2回投与される、[64]~[74]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[76] 1年に2回投与され、かつ、第一の投与から4週間後に第二の投与がなされる、[74]又は[75]に記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[77] 前記投与が筋肉内投与である、[64]~[76]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[78] ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、当該オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、[64]~[77]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[79] アジュバントが、
(i)配列番号2で示されるヌクレオチド配列を含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチド、および
(ii)レンチナン
からなる複合体を含む、[64]~[78]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[80] 抗原タンパク質が、
(A)(i) 配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている、ペプチドI、および
(ii) 配列番号4で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号4で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むペプチドII
を含み、
(B)ペプチドIおよびペプチドIIが、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、および配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されている、
タンパク質である、[64]~[79]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[81] 抗原タンパク質とアジュバントとが同じ容器に保持されている、[64]~[80]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[82] 抗原タンパク質とアジュバントとが別の容器に保持されており、投与前に混合される、[64]~[80]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[83] 直前の前記ワクチン投与4週後の抗原タンパク質抗体価に対する、当該ワクチン投与1年後の抗原タンパク質抗体価の比が、少なくとも0.1である、[64]~[82]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
[84] 前記複合体が三重螺旋構造状のものである、[64]~[83]のいずれかに記載のアジュバントと組み合わせた抗原タンパク質。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、RSウイルス抗原に対する液性免疫反応及び細胞性免疫反応の両方を誘導するRSウイルスワクチン及びその使用法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
1.RSウイルス
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus (RSV))は、ニューモウイルス科(Pneumoviridae)のオルソニューモウイルス(Orthopneumovirus)属に分類され、感染すると、急性呼吸器感染症を引き起こし、小児における細気管支炎や肺炎などの急性下気道感染症の原因として知られる。RSウイルスはサブグループAとB(RSV A株とRSV B株)に分類され、ウイルス表面には、宿主への接着に寄与するGタンパク質と、膜融合を引き起こすFタンパク質があり、この2つのタンパク質、Fタンパク質とGタンパク質が感染に関与するとされている。
本明細書においてRSウイルスと記載する場合、全てのRSウイルスを対象として含み、感染症を引き起こす一般的なRSウイルスは全てを対象として含む。本明細書において、RSV A株としては、具体的には、RSV A2などが挙げられ、RSV B株としては、具体的には、RSV B WV/14617/85などが挙げられるが、本発明の対象のRSウイルスがこれらに限定されるものではない。
【0015】
2.RSウイルス由来の抗原タンパク質
RSウイルスのGタンパク質は、高度にグリコシル化され、抗原的に不均一である。これに対し、Fタンパク質は比較的保存されており、パリビズマブなどのいくつかの抗Fタンパク質中和mAbは、A株及びB株に対して防御できる。したがって、本発明で使用される抗原タンパク質としては、RSウイルスのFタンパク質(本発明の抗原タンパク質とも称する。)が好ましく挙げられる。本発明の抗原タンパク質には、RSウイルスのゲノムにコードされたFタンパク質の全アミノ酸配列を有するタンパク質が含まれるが、さらに製造時生産性の改善やワクチン接種時の免疫原性の改善などを目的として、Fタンパク質の全アミノ酸配列を常法の遺伝子組み換え技術で編集して得られるアミノ酸配列を有するタンパク質、例えば、細胞膜融合機能に関与する配列の一部及びC末端配列を欠失させた糖タンパク質なども含まれる。
【0016】
本発明の抗原タンパク質のアミノ酸配列は、RSウイルスに対する免疫をつくることができるものであれば特に限定されない。本発明の抗原タンパク質は、例えば、(A)(i) 配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上(96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むか、当該アミノ酸配列からなるペプチドであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている、ペプチドI、および
(ii) 配列番号4で示されるアミノ酸配列と95%以上(96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号4で示されるアミノ酸配列中、システインは維持される)を含むか、当該アミノ酸配列からなるペプチドII
を含み、
(B)ペプチドIおよびペプチドIIが、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、および配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されている、
タンパク質(CAS RN: 2769988-12-5)であってよい。
また、前記配列番号3で示されるアミノ酸配列と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列(または前記配列番号4で示されるアミノ酸配列)と95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列として、代わりに、前記配列番号3で示されるアミノ酸配列(または前記配列番号4で示されるアミノ酸配列)において1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列もまた、本発明の抗原タンパク質のアミノ酸配列として選択することが可能である。前記「数個」とは、例えば1乃至5個、1乃至4個、1乃至3個、又は1若しくは2個である。
【0017】
なお、本明細書において、二種類のアミノ酸配列間の配列同一性は、ClustalW version 2 (Larkin MA, Blackshields G, Brown NP, Chenna R, McGettigan PA, McWilliam H, Valentin F, Wallace IM, Wilm A, Lopez R, Thompson JD, Gibson TJ and Higgins DG(2007), 「Clustal W and Clustal X version 2.0」, Bioinformatics.23(21):2947-2948)のデフォルトパラメーターを使用して配列を整列させることによって決定できる。
【0018】
当該抗原タンパク質は、常法に従って作製できる。例えば、本発明の抗原タンパク質をコードする核酸分子を有するベクターを宿主細胞で発現させて、当該抗原タンパク質を産生してもよい。宿主細胞としては、例えば、哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト細胞株(例えばHEK293細胞及びその派生細胞)、或いは、酵母、真菌、昆虫細胞などから選択できる。
また、宿主細胞において、本発明の抗原タンパク質を産生する場合には、発現可能な状態でタンパク質をコードする核酸分子の宿主細胞への導入、当該宿主細胞の培養などを要する。本発明の抗原タンパク質をコードする核酸分子は、哺乳動物細胞などの宿主細胞での発現用に、常法でコドン最適化されていてもよい。一態様として、本発明の抗原タンパク質は、遺伝子組換えCHO細胞により産生されてもよい。
なお、タンパク質の発現に用いる核酸配列は、本分野で一般的に用いられる方法で生成し、及び/又は/合成し、及び/又は、クローニングすることなどで得られる。
【0019】
3.ポリデオキシヌクレオチド
本発明で使用されるポリデオキシヌクレオチド(PDN)は、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸を含む、ポリデオキシヌクレオチド(本発明のポリデオキシヌクレオチドとも称する。)である。なお、本明細書中、ポリデオキシヌクレオチドとPDNは同義である。また、本明細書中、ポリデオキシアデニル酸を「ポリ(dA)」又は「poly(dA)」と表記することもある。
【0020】
本発明のポリデオキシヌクレオチドは、ポリdAがK型CpG ODNの3'側に配置されていることにより、本発明の複合体(詳細は下に述べる)が、K型CpG ODNに特有の免疫賦活活性に加えて、D型CpG ODNに特有の免疫賦活活性を有することとなる。したがって、より具体的には、本発明のポリデオキシヌクレオチドは、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合されたポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドである。
【0021】
K型CpG ODNは、非回文構造の1つまたは複数の非メチル化CpGモチーフを含有し、B細胞を活性化してIL-6を産生させるが、形質細胞様樹状細胞(pDC)のIFN-α産生をほとんど誘導しないという構造的及び機能的特性を有する。非メチル化CpGモチーフとは少なくとも1つのシトシン(C)-グアニン(G)配列を含む短いヌクレオチド配列であって、該シトシン-グアニン配列におけるシトシンの5位がメチル化されていないものを差す。なお、以下の説明において、CpGとは、特にことわらない限り非メチル化CpGを意味する。本発明において用いられるK型CpG ODNは1つまたは複数のCpGモチーフを含む非回文構造を含有し、K型CpG ODNは1つまたは複数のCpGモチーフを含む非回文構造からなるものであってもよい。ヒト化K型CpG ODNを含む本発明のポリデオキシヌクレオチドは、ヒトに対してK型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、ヒトB細胞を活性化してIL-6を産生させる活性)を有する。ここで、本明細書において、「ヒト化」とは、ヒトTLR9に対するアゴニスト活性を有することを意味する。ヒト化K型CpG ODNは、TCGA又はTCGTからなる4塩基のCpGモチーフを有していてもよい。また、一つのヒト化K型CpG ODN中にこの4塩基のCpGモチーフが2又は3個含まれてもよい。本発明のヒト化K型CpG ODNは、少なくとも1個、少なくとも2個、又は、2個又は3個のTCGA又はTCGTからなる4塩基のCpGモチーフを含んでもよい。当該K型CpG ODNが2又は3個の4塩基のCpGモチーフを有する場合、これらの4塩基のCpGモチーフは同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、上記のCpGモチーフを有する限り特に制限されないが、例えば、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上(96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含んでよく、当該ヌクレオチド配列からなるものであってもよい。
【0023】
ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合されるポリデオキシアデニル酸としては、20~60ヌクレオチド長(例えば、30~50ヌクレオチド長(30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 又は50ヌクレオチド長)、あるいは、例えば、30~45ヌクレオチド長(30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 又は45ヌクレオチド長))のポリdAであってよい。
ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合されるポリデオキシアデニル酸が40ヌクレオチド長の場合、本発明のポリデオキシヌクレオチドは、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を含むか、配列番号2で表されるヌクレオチド配列からなるポリデオキシヌクレオチドであってもよい。
【0024】
ヒト化K型CpG ODNとポリdAとは、直接共有結合により連結されていてもよいし、スペーサー配列を介して連結されていてもよい。スペーサー配列とは、2つの近接した構成要素の間に挿入される1以上のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を意味する。スペーサー配列の長さは、本発明の複合体が、免疫賦活活性を有する限り、特に限定されないが、通常1~10ヌクレオチド長、1~5ヌクレオチド長、又は、1~3ヌクレオチド長であってもよい。ヒト化K型CpG ODNとポリdAとが、直接共有結合により連結されてもよい。
【0025】
本発明のポリデオキシヌクレオチドは、ヒト化K型CpG ODN、ポリdA及び任意的なスペーサー配列に加え、その5'末端及び/又は3'末端に付加的なヌクレオチド配列を有していてもよい。当該付加的なヌクレオチド配列の長さは、本発明の複合体が免疫賦活活性を有する限り、特に限定されないが、通常1~10ヌクレオチド長、好ましくは1~5ヌクレオチド長、より好ましくは1~3ヌクレオチド長である。
【0026】
本発明のポリデオキシヌクレオチドは、ヒト化K型CpG ODNおよびポリデオキシアデニル酸において、in vivoにおける分解(例えば、エクソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼによる分解)に対して抵抗性となるように適切にリン酸ジエステル結合の一部又は全てが、ホスホロチオエート結合(すなわち、WO 95/26204に記載されているように、非架橋酸素原子のうちの1つが、硫黄原子に置換される)又はホスホロジチオエート結合により置換されており、好ましくは、本発明のポリデオキシヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合の一部又は全てが、ホスホロチオエート結合により置換されている。本発明のポリデオキシヌクレオチドにおいて、ホスホロチオエート結合により、分解に対する抵抗性のみならず、免疫賦活活性(例えば、B細胞を活性化させてIL-6を産生させる活性)の増強、及び、CpG-β-1,3-グルカン複合体の高収率が期待される。
なお、本明細書におけるホスホロチオエート結合はホスホロチオエート骨格と、リン酸ジエステル結合はリン酸骨格と同義である。
【0027】
したがって、より具体的には、本発明のポリデオキシヌクレオチドは、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された20~60ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とを含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と95%以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチドであってもよい。
または、本発明のポリデオキシヌクレオチドは、配列番号2で示されるヌクレオチド配列を含むポリデオキシヌクレオチドであって、当該ポリデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部又は全てがホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている、ポリデオキシヌクレオチドであってもよい。
【0028】
本発明のポリデオキシヌクレオチドには、ポリデオキシヌクレオチドのあらゆる薬学的に許容可能な塩類、エステル、またはそのようなエステルの塩類を含む。
本発明のポリデオキシヌクレオチドの薬学的に許容可能な塩類としては、好適にはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等の金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;弗化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマール酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩を挙げることができる。
【0029】
本発明のポリデオキシヌクレオチドは、1本鎖、2本鎖、3本鎖のいずれの形態でもよいが、好ましくは1本鎖である。
【0030】
本発明のポリデオキシヌクレオチドは、好ましくは単離されている。「単離」とは、目的とする成分以外の因子を除去する操作がなされ、天然に存在する状態を脱していることを意味する。(単離された)ポリデオキシヌクレオチドの純度(評価対象物の総質量に占める目的とするポリデオキシヌクレオチド質量の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上である。
【0031】
本発明のポリデオキシヌクレオチドは、それ自体が優れた免疫賦活活性を有し、かつ、レンチナンとともに三重螺旋構造を形成する性質を有する。
本発明のポリデオキシヌクレオチドを作製する方法は特に限定されず、常法を用いることができ、例えば固相ホスホロアミダイト法を用いて合成してもよい。
【0032】
4.レンチナン
本発明で用いられるレンチナン(本発明のレンチナンとも称する)は、1,6-グルコピラノシド分枝を多く含有する(例えば、側鎖率33~40%)、β-1,3-グルカンである。レンチナン(LNT)は、シイタケ由来の公知のβ-1,3-1,6-グルカンであり、分子式は(C6H10O5)n、分子量は約30~70万である。レンチナンは、水、メタノール、エタノール(95)、又はアセトンにはほとんど溶けないが、極性有機溶媒であるDMSOや水酸化ナトリウム水溶液に溶解する。レンチナンは活性化マクロファージ、キラーT細胞、ナチュラルキラー細胞及び抗体依存性マクロファージ仲介性細胞障害作用(ADMC)活性の増強作用を有する(Hamuro, J., et al.:Immunology, 39, 551-559, 1980、Hamuro, J., et al.:Int. J. Immunopharmacol., 2, 171, 1980、 Herlyn, D., et al.:Gann, 76, 37-42, 1985)。動物実験においては同系腫瘍及び自家腫瘍に対して化学療法剤との併用投与により腫瘍増殖抑制作用ならびに延命効果が認められている。また、レンチナンの単独投与によっても腫瘍増殖抑制作用ならびに延命効果が認められている。レンチナンは、臨床試験においては手術不能又は再発胃癌患者に対して、テガフール経口投与との併用により生存期間の延長が認められている(医薬品インタビューフォーム「レンチナン静注用1mg「味の素」」)。
また、本発明のレンチナンは、クロロホルムを実質的に含まないものであってもよい。
【0033】
本発明のレンチナンの製造方法は特に限定されず、例えば特許文献1に記載の方法を用いてもよい。
また、本発明のレンチナンの製造方法として、より高純度のレンチナンを高い収量で得る手段としては、シイタケ子実体から得た熱水抽出液あるいはレンチナンを含む熱水溶液に対し、エタノール等の有機溶媒を加えることによって生成する浮遊画分を単離して用いること、ならびに、低温で高濃度のアルカリ処理を行うことが効果的である。当該製造方法によると、一般的に用いられてきたレンチナンの製造方法で必要だったクロロホルムを用いた精製工程が不要となる。また、当該製造方法で得られたレンチナンは、本発明の複合体を形成する効率を改善できる。
本発明のレンチナンは、具体的には、以下の工程を含む製法で得られてもよい。
(1)次の(a)~(d)から成る、浮遊画分を分離取得する工程、
(a)シイタケからレンチナンを熱水抽出すること
(b)(a)の熱水抽出液にアルコールを添加し混合すること
(c)18℃乃至25℃で15~24時間放置すること
(d)(c)により生成した浮遊画分を回収すること
(2)分離取得した浮遊画分の濃度が25mg/mLになるように2.5Mの水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、2℃乃至8℃で15時間乃至30時間処理し、次に精製水を加えて浮遊画分濃度5mg/mL、水酸化ナトリウム濃度0.5Mとし、2℃乃至8℃で15時間乃至30時間処理することにより、レンチナンの高次構造を壊す工程、及び
(3)工程(2)で得られた5mg/mLのレンチナンを、0.5M水酸化ナトリウム溶液を用いて40℃乃至50℃で所定時間反応させることにより、レンチナンの分子量を150kD乃至270kDに制御する工程。
【0034】
5.アジュバント(複合体)
本発明で使用されるアジュバントは、本発明のポリデオキシヌクレオチド及びレンチナンとからなる複合体(本発明の複合体とも称する。)からなるアジュバント(本発明のアジュバントとも称する。)、または、当該複合体を含むアジュバントである。
【0035】
本明細書において「複合体」とは、複数の分子が、静電結合、ファンデルワールス結合、水素結合、疎水性相互作用などの非共有結合又は共有結合を介して会合することにより得られる産物を意味する。
【0036】
本発明の複合体は、三重螺旋構造状であってもよい。好ましい態様において、当該三重螺旋構造を形成する3本の鎖のうち、2本はレンチナンの鎖であり、1本は、上記本発明のポリデオキシヌクレオチド中のポリデオキシアデニル酸の鎖である。なお、当該複合体は一部に、三重螺旋構造を形成していない部分を含んでいても良い。
【0037】
本発明の複合体における、ポリデオキシヌクレオチドとレンチナンの組成比は、ポリデオキシヌクレオチド中のポリデオキシアデニル酸の鎖長、及びレンチナンの長さ等に応じて、変化しうる。例えば、レンチナンを構成するβ-1,3-グルカン鎖と、ポリデオキシアデニル酸の鎖の長さが同等の場合には、2本のβ-1,3-グルカン鎖と、1本の本発明のポリデオキシヌクレオチドが会合し、三重螺旋構造を形成しうる。一般的には、β-1,3-グルカン鎖に対して、ポリデオキシアデニル酸の鎖長は短いので、2本のβ-1,3-グルカン鎖に対して、複数の本発明のポリデオキシヌクレオチドがポリデオキシアデニル酸を介して会合し、三重螺旋構造を形成する。
【0038】
本発明のポリデオキシヌクレオチドは、レンチナンと複合体を形成することにより、D型CpG ODNの配列を要することなく、D型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、形質細胞様樹状細胞を活性化してIFN-αを産生させる活性)を獲得する。すなわち、本発明の複合体は、K型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、ヒトB細胞を活性化してIL-6を産生させる活性)と、D型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えばヒト形質細胞様樹状細胞を活性化してIFN-αを産生させる活性)の両方を有する。
【0039】
本発明の複合体の調製方法に関しては、特に限定されないが、例えば特許文献1に記載された条件と同様に行うことができる。すなわち、本来は、天然で三重螺旋構造として存在するβ-1,3-グルカンの一種であるレンチナンを非プロトン性有機極性溶媒またはアルカリ水溶液に溶解して一本鎖に解く。このようにして得られた一本鎖のレンチナンの溶液と本発明のポリデオキシヌクレオチドの溶液(中性付近のpHの緩衝水溶液)とを混合し、適当時間保持する、例えば、5℃で一夜保持する。その結果、2本のレンチナンの鎖と当該ポリデオキシヌクレオチド中のポリdA鎖が三重螺旋構造を形成することにより、本発明の複合体が形成される。
【0040】
本発明のポリデオキシヌクレオチドとレンチナンとの混合比は、ポリdA鎖の長さ等を考慮して適宜設定することができるが、通常モル比(LNT/PDN)が0.02~2.0であってもよく、0.1~0.5であってもよい。
【0041】
一態様において、本発明の複合体は、竿状の粒子の形態を呈する。粒子径は、材料として用いるレンチナンが天然で三重螺旋構造を呈することにより形成する粒子の径と同等であり、通常平均粒子径が10~100 nmであってもよく、20~50 nmであってもよく、また、通常平均粒子径が100~180 nmであってもよく、130~180 nmであってもよい。該粒子径は、複合体を水に溶解し、Malvern Instruments Zeta Sizerを用いて80℃の条件で動的光散乱法により計測することができる。
【0042】
本発明の複合体は、好ましくは単離されている。「単離された複合体」の純度(評価対象物の総質量に占める目的とする複合体質量の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上である。
【0043】
6.ワクチン
本発明で使用されるワクチンは、本発明の抗原タンパク質、及び、本発明のアジュバントの組み合わせを含む医薬(本発明のワクチンとも称する。)である。本発明のワクチンは、RSV A株及びRSV B株のいずれか、又は、両方のRSウイルスに対して高い治療効果及び/又は予防効果を有する。ヒトにおいて、直前の本発明のワクチン投与4週後の抗原タンパク質抗体価に対する、直前の本発明のワクチン投与1年後の抗原タンパク質抗体価の比が、少なくとも0.1であり、0.2以上であってもよく、0.5以上であってもよい。なお、当該抗体価は、例えば本実施例と同じ方法で検討できる。
また、本発明のワクチンは、液性免疫反応と細胞性免疫反応の両方を誘導でき、例えば実施例のように、液性免疫反応は、血中抗RSV中和活性により、細胞性免疫反応は、抗原特異的IFN-γ産生応答により確認することができる。
【0044】
本発明のワクチンは、1年乃至5年に1回乃至10回投与されてもよく、この場合、1年間の投与回数は2回以下であってもよい。例えば、本発明のワクチンは、2年に1回投与されてもよいし、5年に1回投与されてもよく、例えば1年目に2回投与したのち、5年目に1回又は2回投与するという投与頻度であってもよい。また、本発明のワクチンは、1年に1回又は2回投与されてもよい。1年に2回投与される場合には、第一の投与から4週間後に第二の投与がなされてもよい。
【0045】
本発明のワクチンは、上記本発明の抗原タンパク質とアジュバントとを常法にしたがって製剤化することにより得ることができる。本発明のワクチンは、さらに薬理学的に許容され得る担体を含んでもよい。また、本発明のワクチンはRSウイルス由来の抗原以外の抗原を更に含んでいても良い。また、本発明のワクチンは、RSウイルスのFタンパク質由来の抗原タンパク質、及び、本発明のアジュバントに加えて、製薬学的に許容される賦形剤、溶剤、安定化剤、緩衝剤、分散剤、pH 調製剤、保存剤等の添加剤を含有してもよい。前記担体や前記添加剤としては、例えば、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸(L-ヒスチジンなど)、アミノ酸塩(L-ヒスチジン塩酸塩水和物など)重合アミノ酸、アミノ酸共重合体、ショ糖、トレハロース、ラクトース、糖アルコール(D-ソルビトールなど)、乳化剤(ポリソルベート20など)、酢酸緩衝塩、リン酸緩衝塩、クエン酸緩衝塩、ホウ酸緩衝塩、酒石酸緩衝塩、トリス緩衝塩、グリシン緩衝塩、及びアルギニン緩衝塩など、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0046】
本発明のワクチンは、経口又は非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のためのワクチンとしては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。また、本発明のワクチンは、筋肉内投与される筋肉注射剤であってもよい。
また、本発明のワクチン、例えば注射剤は、抗原タンパク質とアジュバントとが同じ容器に保持されていてもよい。また、本発明のワクチン、特に注射剤は、抗原タンパク質とアジュバントとが別の容器に保持されており、抗原タンパク質とアジュバントが同時に投与される、又は、投与前に混合されてもよい。このような注射剤は、公知の方法にしたがって調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明のポリデオキシヌクレオチド及び/又はアジュバントを通常注射剤に用いられる無菌の水性溶媒に溶解又は懸濁することによって調製してもよい。注射用の水性溶媒としては、例えば、蒸留水;生理的食塩水;リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液等が使用できる。このような水系溶媒のpHは5~10が挙げられ、好ましくは6~8である。調製された注射液は、適当なアンプルまたはバイアルに充填されてもよい。
【0047】
例えば、本発明の抗原タンパク質及び/又はアジュバントの懸濁液を、真空乾燥、凍結乾燥等の処理に付すことにより、本発明のワクチンの粉末製剤を調製してもよい。本発明のワクチンを粉末状態で保存し、使用時に当該粉末を注射用の水系溶媒で分散することにより、使用に供してもよい。
【0048】
本発明のワクチンは、ヒト用であり、かつ、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100~400μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100~400μgである。本発明のワクチンは、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgであってもよいし、150μgであってもよいし、200μgであってもよいし、250μgであってもよいし、300μgであってもよいし、350μgであってもよいし、400μgであってもよい。また、本発明のワクチンは、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgであってもよいし、150μgであってもよいし、200μgであってもよいし、250μgであってもよいし、300μgであってもよいし、350μgであってもよいし、400μgであってもよい。また、本発明のワクチンは、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgで、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgであってもよいし、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgで、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgであってもよいし、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が100μgで、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgであってもよいし、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgであってもよいし、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgであり、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgであってもよいし、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が200μgで、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgであってもよいし、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgで、アジュバントの1回あたりの投与量が100μgであってもよいし、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgで、アジュバントの1回あたりの投与量が200μgであってもよいし、抗原タンパク質の1回あたりの投与量が400μgで、アジュバントの1回あたりの投与量が400μgであってもよい。なお、本明細書において、アジュバントの投与量は、本発明の複合体の投与量と同義である。
【0049】
7.ワクチン機序
本発明のワクチンに含まれる本発明の複合体は、優れた免疫賦活活性を有するので、アジュバント、すなわち免疫賦活剤として用いられる。本発明のアジュバントをヒトに投与することにより、当該ヒトにおける免疫反応を惹起することができる。特に、本発明の複合体は、K型CpG ODNの活性特性を有し、末梢血単核球を刺激して、I型インターフェロン(Pan-IFN-α、IFN-α2等)及びII型インターフェロン(IFN-γ)の両方を大量に産生させるので、I型インターフェロン産生誘導剤、II型インターフェロン産生誘導剤、I型及びII型インターフェロン産生誘導剤として有用である。I型及びII型インターフェロンの両方の産生を誘導することから、本発明の複合体またはこれを含有するワクチンは、I型及びII型インターフェロンのいずれか一方又は両方が有効な疾患の予防又は治療に有用である。I型インターフェロンが有効な疾患としては、本発明に係るRSウイルス感染症や、それ以外のウイルス感染症(例、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス等)、癌等を挙げられる。II型インターフェロンが有効な疾患としては、アレルギー疾患、細胞内寄生性の原虫(リーシュマニア等)や細菌(リステリア、結核菌等)等の感染症等を挙げられる。RSウイルスやインフルエンザウイルスを含む急性ウイルス感染症に対しては、I型インターフェロン及びII型インターフェロン共に、ウイルス排除に関する免疫応答を高めるので、本発明の複合体またはこれを含有するワクチンは、急性ウイルス感染症に対する有効性が期待できる。
【0050】
また、本発明のポリデオキシヌクレオチドまたは複合体、特に、本発明の複合体は、強力なアジュバント活性を有し、本発明のポリデオキシヌクレオチドまたは複合体を、抗原と共に、哺乳動物、例えばヒトへ投与すると、当該抗原に対する免疫反応を強力に誘導できる。特に、本発明の複合体は、抗原に対する液性免疫反応と細胞性免疫反応の両方を強力に誘導する。
【0051】
本発明のワクチン中、RSウイルス由来の抗原を含むことで、当該抗原に対する免疫反応が惹起され、該抗原を含むRSウイルスを免疫学的に生体外へ排除する仕組みが構築される。したがって、当該抗原タンパク質に対する免疫反応を誘導するための本発明のワクチンは、RSウイルス感染症の予防又は治療のために有用である。
【0052】
本発明の複合体は、抗原に対する液性免疫反応とともに、細胞性免疫反応の両方を強力に誘導する。したがって、細胞傷害性Tリンパ球により認識されることが知られている細胞内感染性のRSウイルス由来の抗原と組み合わされて用いられる。
【0053】
本発明の複合体は、I型及びII型インターフェロンの両方を強力に誘導するので、一態様において、ウイルスとして、I型インターフェロン及びII型インターフェロンの両方が有効な急性ウイルス感染症を引き起こすRSウイルスが選択される。
【0054】
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
【0055】
以下に示す例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されるものではない。
【実施例0056】
[製造例:抗原タンパク質の調製]
RSウイルスのFタンパク質の全アミノ酸配列から、細胞膜融合機能に関与する配列の一部及びC末端配列を欠失させた、F1鎖及びF2鎖から構成される糖タンパク質を抗原タンパク質とした。具体的には、RSウイルスのFタンパク質の一部が改変された、配列番号3で示されるアミノ酸配列および配列番号4で示されるアミノ酸配列が、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC293と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC12、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC66と配列番号4で表されるアミノ酸配列のC44の間において、ジスルフィド結合によって分子間架橋されることによって得られる2量体抗原タンパク質原薬を調製した。当該抗原タンパク質は、常法に従って、遺伝子組換えCHO細胞により産生した。以下、本実施例では当該抗原タンパク質をRSV-rec-Fとも呼ぶ。
【0057】
F1鎖
1 AIASGVAVSK VLHLEGEVNK IKSALLSTNK AVVSLSNGVS VLTSKVLDLK
51 NYIDKQLLPI VNKQSCSISN IETVIEFQQK NNRLLEITRE FSVNAGVTTP
101 VSTYMLTNSE LLSLINDMPI TNDQKKLMSN NVQIVRQQSY SIMSIIKEEV
151 LAYVVQLPLY GVIDTPCWKL HTSPLCTTNT KEGSNICLTR TDRGWYCDNA
201 GSVSFFPQAE TCKVQSNRVF CDTMNSLTLP SEVNLCNVDI FNPKYDCKIM
251 TSKTDVSSSV ITSLGAIVSC YGKTKCTASN KNRGIIKTFS NGCDYVSNKG
301 VDTVSVGNTL YYVNKQEGKS LYVKGEPIIN FYDPLVFPSD EFDASISQVN
351 EKINQSLAFI RKSDELLHNV NAGKSTTNIM ITT(配列番号3)
(配列番号3で表されるアミノ酸配列中、C167とC197、C176とC187、C212とC221、C236とC247およびC270とC276の間において、ジスルフィド結合によって分子内架橋されている。)
【0058】
F2鎖
1 QNITEEFYQS TCSAVSKGYL SALRTGWYTS VITIELSNIK KNKCNGTDAK
51 VKLIKQELDK YKNAVTELQL LMQSTQATNN RARR(配列番号4)
【0059】
[製造例:アジュバントの調製]
レンチナンの製法以外は、特許文献1(WO2015/041318)に記載の製造方法を参照して、本発明で用いる複合体であるアジュバントを製造した。
本発明のレンチナンは以下の方法で準備した。シイタケからレンチナンを熱水抽出し、得られた熱水抽出液にアルコールを添加し混合し、18℃乃至25℃で15時間乃至24時間放置し、生成した浮遊画分を回収することにより、浮遊画分を分離取得した。その後、分離取得した浮遊画分の濃度が25mg/mLになるように2.5Mの水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、2℃乃至8℃で15時間乃至30時間処理し、次に精製水を加えて浮遊画分濃度5mg/mL、水酸化ナトリウム濃度0.5Mとし、2℃乃至8℃で15時間乃至30時間処理することにより、レンチナンの高次構造を壊した。得られた5mg/mLのレンチナンを、0.5M水酸化ナトリウム溶液を用いて40℃乃至50℃で所定時間反応させることにより、レンチナンの分子量を150kD乃至270kDに制御し、精製して本発明で使用するレンチナンを得た。
【0060】
配列番号1のヌクレオチド配列からなるヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合された40ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸とからなる、配列番号2のポリデオキシヌクレオチドは、常法である固相ホスホロアミダイト法を用いて合成した。
本発明のレンチナンとポリデオキシヌクレオチドとの複合体であるアジュバント原薬は以下のように製造した。
レンチナンをおよそ40 mg/mLとなるように、0.25 M NaOH水溶液に20℃で溶解し、5℃で一晩放置した。本発明のポリデオキシヌクレオチドは別途0.56 mMとなるように注射用水に溶解し、5℃に冷却した。調製したレンチナン溶液とポリデオキシヌクレオチド溶液をレンチナンとポリデオキシヌクレオチドがおよそ0.85:1の重量比率になるよう混合し、続いて0.3 M NaH2PO4水溶液を加え中和し、複合体を形成することでアジュバント原薬を製造した。当該複合体の形成は、サイズ排除クロマトグラフィーを用い、当該ポリデオキシヌクレオチドの高分子量側へのシフトを、260nmにおける吸収をモニタリングすることによって確認した。
【0061】
ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド
AsTsCsGsAsCsTsCsTsCsGsAsGsCsGsTsTsCsTsC(配列番号1)
(上記配列中のsは、ヌクレオシド間のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に置換されていることを示す。)
【0062】
ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド+40ヌクレオチド長のポリデオキシアデニル酸
AsTsCsGsAsCsTsCsTsCsGsAsGsCsGsTsTsCsTsCsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsAsA(配列番号2)
(上記配列中のsは、ヌクレオシド間のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に置換されていることを示す。)
【0063】
[製造例:ワクチン(実薬)]
抗原タンパク質(RSV-rec-F)原薬を無菌ろ過し、洗浄・滅菌済みの無色ガラスバイアルに充填した。充填後のバイアルに洗浄・滅菌済みのブチルゴム栓で打栓し、アルミキャップで巻締めることによりRSV-rec-F製剤を製造した。アジュバント製剤も同様にアジュバント原薬から製造した。ワクチン(実薬)は、RSV-rec-F、及び、アジュバント以外に、安定化剤、緩衝剤などの製薬学的に許容される添加剤を含んでいた。
RSV-rec-F製剤とアジュバント製剤を投与前に混合して、被験者または被験動物に投与した。なお、本発明のワクチンは抗原タンパク質とアジュバントとが始めから混合されてなる製剤であってもよい。
本実施例において、アジュバント量は、複合体量と同義である。
【0064】
[予備実験]非臨床試験
免疫原性試験として、BALB/cマウスにRSV-rec-F単独、アジュバント単独、又は本発明のワクチン(RSV-rec-F及びアジュバント双方)を筋肉内投与し、血中抗RSV-rec-F抗体応答、血中抗RSV中和活性、及びRSV-rec-F特異的細胞性免疫応答を評価した。
当該抗体応答の試験では、RSV-rec-F投与量と血中抗RSV-rec-FイムノグロブリンG(IgG)価に正の相関が認められ、アジュバント投与量と血中抗RSV-rec-F IgG価にも正の相関が認められた。
当該中和活性の試験では、RSV-rec-F用量依存的に血中抗RSV中和活性が認められ、アジュバント添加により有意に高い血中抗RSV中和活性が認められた。
細胞性免疫応答試験では、RSV-rec-F単独投与群と比較してアジュバントの添加によりRSV-rec-F特異的インターフェロン(IFN)-γ産生レベルは有意に高くなったが、RSV-rec-F特異的インターロイキン(IL)-13産生レベルは有意に低くなった。
【0065】
以上の結果、ワクチンの抗体応答、中和活性、及び特異的細胞性免疫応答において、RSV-rec-Fとアジュバントを組み合わせて投与する有用性が示唆された。
また、感染防御試験として、BALB/cマウスにRSV-rec-F単独、アジュバント単独、又は本発明のワクチン(RSV-rec-F及びアジュバント双方)を筋肉内投与後にRSVを感染させ肺中ウイルス力価を測定した結果、RSV-rec-F(1又は5μg/body)とアジュバント(10μg/body)を組み合わせて投与することにより、RSV-rec-F単独投与群に対して有意な肺中ウイルス力価の減少がみられた。この結果から、RSV-rec-Fの感染防御効果において、RSV-rec-Fとアジュバントを組み合わせて投与する有用性が示唆された。
【0066】
[実施例1]フェーズ1試験
単一施設、無作為化、プラセボ対照、一部担当者(治験薬管理・調製者)が非盲検となり得る二重盲検、群間用量漸増試験
目的:
・日本人健康成人(20歳以上50歳以下)及び健康高齢者(65歳以上80歳以下)へ本発明に係るワクチンを筋肉内投与した際の安全性及び忍容性を評価すること。
・日本人健康成人及び健康高齢者へ当該ワクチンを筋肉内投与した際の免疫原性を評価すること。
【0067】
《ステップ1》
健康成人の被験者からなるコホート1~3(プラセボ群を含む)を構成した。各コホートで8名の被験者を実薬投与群又はプラセボ投与群に3:1の比で無作為に割り付けた。各ステップでは、コホート1から投与を開始し、次コホートに移行した。
《ステップ2》
ステップ1が完了後に、健康高齢者の被験者からなるコホート1~3(プラセボ群を含む)を構成した。各コホートで8名の被験者を実薬投与群又はプラセボ投与群に3:1の比で無作為に割り付けた。各ステップでは、コホート1から投与を開始し、次コホートに移行した。
【0068】
《投与量と投与方法》
4週間間隔で2回、上腕三角筋部に筋肉内投与した。
各コホートにおける実薬投与群の人数は6名で、抗原タンパク質(RSV-rec-F)とアジュバントの投与量は下記の表の通りだった。なお、抗原タンパク質量及びアジュバント量は、非臨床薬理試験の結果などに基づき設定した。
【0069】
【表1】
【0070】
以下表中のコホート1~3では、特に断りがない限り、各コホートの実薬投与群を意味する。
【0071】
[評価例1]血中抗RSV中和活性の測定
被験者前腕の皮静脈から静脈血を採取して血清を調製し、凍結して測定施設に輸送した。血清は、非働化したものを測定に使用した。段階希釈したサンプル血清およびWHO標準血清とRSV(A2株、50 PFU)をそれぞれ混合して中和反応させ、その反応混合液にHEp-2細胞を添加して3日間培養後、RSVに感染したHEp-2細胞に発現するRSV Fタンパク質をhorse radish peroxidase標識した抗RSV Fタンパク質抗体で検出した。RSV増殖率が50%になる血清の希釈倍率 (ED50) を、サンプル血清および標準血清それぞれについて求め、以下の式で抗RSV中和活性 (IU/mL) を算出した:各サンプルの抗RSV中和活性(IU/mL)= 各サンプルのED50 /(標準血清のED50 / 2000)。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
高齢者では、実薬投与群(コホート1~3)のいずれの用量及び時点についても、中和活性はベースラインに対して上昇し、GMFRの95%信頼区間下限は1を上回った。成人においても、実薬投与群のいずれの用量及び時点についても中和活性はベースラインに対して数値として上昇し、コホート1のDay29、Day57、及びコホート2のDay29ではGMFRの95%信頼区間下限が1を上回った。従って、成人及び高齢者ともに液性免疫の誘導が示された。成人及び高齢者のいずれのコホートにおいても、Day29とDay57で値に大きな違いはなかった。
成人、高齢者とも、中和活性のGMFRに明確な正の用量反応性はなかった。
【0075】
[評価例2]血中抗RSV-rec-F抗体価の測定
被験者前腕の皮静脈から静脈血を採取して血清を調製し、凍結して測定施設に輸送した。血清を希釈し、RSV-rec-Fを固相化した酵素結合免疫吸着法(enzyme-linked immunosorbent assay: ELISA)によって、抗RSV-rec-F抗体レベルを測定した。段階希釈したWHO標準血清 (2,000 U/mLと定義) を同時に測定して作成した検量線を使用し、サンプル中の抗 RSV-rec-F抗体価をU/mLで表示した。
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
成人、高齢者ともに、いずれの用量及び時点についてもGMTはベースラインに対して上昇してGMFRの95%信頼区間下限は1を上回り、液性免疫の誘導が示された。いずれのコホートにおいても、Day29とDay57で値に大きな違いはなかった。
高齢者では、コホート3においてコホート1、コホート2よりもGMTおよびGMFRが高い傾向にあったが、成人では明確な正の用量反応性はなかった。
【0079】
[評価例3]RSV-rec-F特異的IFN-γ産生応答の測定
被験者前腕の皮静脈から静脈血を抗凝固剤入り採血管に採取し、測定施設に輸送した。末梢血単核細胞(PBMC)を単離して、凍結保存した。融解したPBMCを用いて、RSV-rec-Fの部分ペプチドを抗原刺激として用いた酵素結合免疫スポット法(enzyme-linked immunospot: ELISpot)によって、RSV-rec-F特異的IFN-γ産生応答を測定した。刺激時間は20時間とした。結果は、刺激なしのスポット数を差し引き、106 PBMCあたりのスポット数に換算して示した。
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】
Day57では、実薬投与群においてベースラインと比較したINF-γ産生細胞数は上昇し、細胞性免疫の誘導が示唆された。
成人では、Day57においてINF-γ産生細胞数のベースラインからの上昇はプラセボ群よりも実薬投与群(コホート1~3)で大きく、実薬投与群間では用量依存的に増加する傾向にあった。また、Day29よりもDay57の方の値が高い傾向であった。高齢者では、プラセボ群のDay57におけるN数が非常に少ないためにプラセボとの比較が困難ではあるが、Day57において測定値が得られているコホート2、コホート3では、INF-γ産生細胞数はベースラインに比べてそれぞれ8倍及び12~17倍に上昇した。
成人及び高齢者とも、多くの被験者でINF-γ産生細胞数は投与後に上昇した。
【0083】
以上の結果から、成人及び高齢者において、本発明に係るワクチンの投与により液性免疫が誘導されることが示された。一方で、用量群間で、液性免疫応答に明確な正の用量反応性は認められなかった。また、Day29とDay57で液性免疫応答に大きな違いはなかった。
また、成人及び高齢者において、Day57では実薬投与群でベースラインと比較したINF-γ産生細胞数は上昇しており、ワクチン投与により細胞性免疫が誘導されることが示唆された。データ数は限定的ではあるが、INF-γ産生細胞数は成人において用量依存的に増加する傾向にあり、Day29よりDay57の方が高い傾向にあった。
【0084】
[評価例4]安全性と忍容性評価
成人および高齢者のいずれの用量コホートにおいても、重篤な有害事象は発現しなかった。
本評価例では、特定有害事象として、1回目及び2回目の投与後から投与14日後までに発現した注射部位有害事象(注射部位紅斑、注射部位腫脹、注射部位硬結、注射部位疼痛、注射部位熱感、注射部位そう痒感)及び全身性有害事象(発熱、倦怠感、頭痛、発疹[全身性/局所]、筋肉痛)を定義した。
ステップ1(健康成人)での特定有害事象の発現割合は、プラセボ群0%、実薬投与群全体83.3%(15/18)であった。実薬投与群で比較的よくみられた特定有害事象とその発現割合は、注射部位疼痛(プラセボ群0%、実薬投与群全体72.2%[13/18]、以下同順)、倦怠感(0%、22.2%[4/18])、及び注射部位熱感(0%、16.7%[3/18])であった。
ステップ2(健康高齢者)での特定有害事象の発現割合は、プラセボ群16.7%(1/6)、実薬投与群全体61.1%(11/18)であった。実薬投与群で比較的よくみられた特定有害事象とその発現割合は、注射部位疼痛(16.7%[1/6]、38.9%[7/18])、注射部位紅斑(0%、33.3%[6/18])、注射部位硬結(0%、33.3%[6/18])、注射部位腫脹(0%、27.8%[5/18])、及び注射部位熱感(0%、22.2%[4/18])であった。
【0085】
成人において、実薬投与群すべてのコホートを合わせて2名以上の被験者に発現した特定外有害事象(局所部位及び全身性有害事象以外の事象)は、注射部位圧痛* 27.8%(5/18名)であり、いずれも実薬投与との因果関係がありと判定された。
高齢者において、実薬投与群すべてのコホートを合わせて2名以上の被験者に発現した特定外有害事象は、注射部位発赤** 16.7%(3/18名)、注射部位硬結** 11.1%(2/18名)であり、いずれも実薬投与との因果関係がありと判定された。
そして、成人及び高齢者において、本発明に係るワクチンを投与した被験者の特定有害事象の重症度はいずれも軽度又は中等度であり、その多くは5日以内に回復した。
【0086】
特定外有害事象の重症度はいずれの事象も軽度又は中等度であり、多くの事象は数日以内に消失した(*: 接種した腕を動かしても痛みがなく、接種部位を強く押した際のみ痛みを感じる場合に”注射部位圧痛”として収集した。(疼痛は自発的な痛みとした。)**: 長径が2.5cm未満の発赤及び硬結は、注射部位有害事象ではなく、特定外有害事象として収集した。)。
以上より、抗原100~400μg及びアジュバント100~400μgの用量範囲において、成人及び高齢者へ本発明のワクチンを筋肉内投与した際の安全性及び忍容性が確認された。
【0087】
[実施例2]フェーズ2試験
多施設共同、無作為化、一部担当者(治験薬管理・調製者)が非盲検となり得る二重盲検、用量探索試験
目的:
60歳以上80歳以下の健康日本人を対象に、ワクチンの各投与群における免疫原性を確認し至適用量を探索すること
【0088】
実施例1において、健康高齢者に抗原量100~400μgを接種後の血中抗RSV中和活性及び抗RSV-rec-F抗体価のGMT(Day29及びDay57)は、すべての群及び時点で、GMFRの95%信頼区間下限は1を上回るのでベースライン時点から上昇した(血中抗RSV中和活性の結果及び血中抗RSV-rec-F抗体価の結果参照)。健康高齢者に抗原量100~400μg接種後の血中抗RSV中和活性(Day29及びDay57)のベースラインに対するGMFRは約2.8~4.5倍で、抗原量100μgのときに最も高く(約4.1~4.5倍)、当該用量範囲で明確な正の用量反応関係は認められなかった(血中抗RSV 中和活性の結果参照)。一方、抗RSV-rec-F抗体価のベースラインに対するGMFR(Day29及びDay57)は抗原量100~200μg(約14~20倍)よりも抗原量400μg(約33~39倍)で高値であった(血中抗RSV-rec-F抗体価の結果参照)。
以上より、本実施例2の用量探索試験の抗原量は100~400μgの用量範囲とし、用量範囲の下限と上限である100μg及び400μgを中心に用量を設定することとした。
【0089】
実施例1の試験において、健康高齢者にアジュバント量100~400μgを接種後のRSV-rec-F特異的IFN-γ産生応答の平均値(Day29及びDay57)は、いずれの用量でもベースライン時点から数値的な上昇傾向を示し、また平均値のベースライン比はアジュバント量100~200μg(約8~12倍)よりも400μg(約12~16倍)で高値であった(RSV-rec-F特異的IFN-γ産生応答の結果参照)。健康成人においても、アジュバント量100~400μgを接種後のRSV-rec-F特異的IFN-γ産生応答のDay57時点の平均値のベースライン比は、アジュバント量100~200μg(約3.1倍)よりも400μg(約4.2倍)で高値であった(RSV-rec-F特異的IFN-γ産生応答の結果参照)。
以上より、本実施例2の用量探索試験のアジュバント量は100~400μgの用量範囲とした。
【0090】
(抗原量とアジュバント量の組み合わせの設定根拠)
実施例2では、抗原(RSV-rec-F)の用量については用量範囲の下限、上限である100及び400μgを含めた3水準(100、200及び400μg)、アジュバントの用量については新規のアジュバントであることを考慮し、抗原単独使用(0μg)を含めて用量範囲をカバーする4水準(0、100、200及び400μg)を設定し、それらを組み合わせるファクトリアルデザインとした。この試験デザインによって、抗原の単独使用時、並びにアジュバントの各用量との組み合わせにおける免疫原性及び安全性の用量反応関係の情報を得て、それに基づき、抗原とアジュバントの至適な用量の組み合わせを決定することができると考えた。
そこで、以下の表中で〇を記した10パターンの用量のいずれかを、4週間間隔で2回、上腕三角筋部に筋肉内投与する。なお、下記表中のnは投与する人数を意味する。
【0091】
【表8】
【0092】
以下の各項目について評価する。
Day 29、Day 57における血中抗RSV(RSV/A、RSV/B)中和活性の幾何平均抗体価(geometric mean titer: GMT)、幾何平均上昇倍数(geometric mean fold rise: GMFR)
Day 29、Day 57における抗RSV-rec-F抗体のGMT、GMFR
Day 29、Day 57におけるRSV-rec-F特異的IFN-γ産生応答の要約統計量
【0093】
さらに、以下の各項目についても評価する。
Month 6、Month 12における血中抗RSV(RSV/A、RSV/B)中和活性の幾何平均抗体価(geometric mean titer: GMT)、幾何平均上昇倍数(geometric mean fold rise: GMFR)
Month 6、Month 12における抗RSV-rec-F抗体のGMT、GMFR
Month 6、Month 12におけるRSV-rec-F特異的IFN-γ産生応答の要約統計量
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、RSウイルス抗原に対する液性免疫反応及び細胞性免疫反応の両方を誘導するRSウイルスワクチン及びその使用法を提供する。
【配列表フリーテキスト】
【0095】
配列番号1:ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドのヌクレオチド配列
配列番号2:ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドと、当該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3'側に結合されたポリデオキシアデニル酸とからなるポリデオキシヌクレオチドのヌクレオチド配列
配列番号3:RSウイルスのF1鎖タンパク質のアミノ酸配列
配列番号4:RSウイルスのF2鎖タンパク質のアミノ酸配列
【配列表】
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