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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172396
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】線香分離器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B65D85/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090092
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514111403
【氏名又は名称】誠和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 夏基
(72)【発明者】
【氏名】宮地 彩雅
(72)【発明者】
【氏名】徳原 哲豪
【テーマコード(参考)】
3E068
【Fターム(参考)】
3E068AA40
3E068AB09
3E068AC06
3E068BB03
3E068CC05
3E068CC15
3E068CE03
3E068DD06
3E068DD07
3E068DD28
3E068DE03
3E068DE12
3E068DE18
3E068EE40
(57)【要約】
【課題】2巻の線香が組み合わされた線香セットを、線香が折れることなく、簡便な操作で1巻ずつ分離することが可能な線香分離器を提供する。
【解決手段】線香セットCを平面方向に沿って支持するベース本体10と、ベース本体10に対して開閉自在に重ね合わせられ、ベース本体10との間で線香セットCを挟み込む蓋体20と、を備え、ベース本体10は、線香セットCにおける一方の線香C1に対応して配置される複数の本体凸部15を有し、蓋体20は、線香セットCにおける他方の線香C2に対応して配置される複数の蓋体凸部25を有し、ベース本体10と蓋体20との間に線香セットCが挟み込まれたとき、本体凸部15が一方の線香C1を押し込むとともに、蓋体凸部25が他方の線香C2を押し込むことで、一方の線香C1と他方の線香C2とを平面方向と直行する方向でずれ込ませることによって2巻に分離させる。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視渦巻状に巻回された2巻の線香同士が、各々の前記線香によって形成された渦巻状の隙間に相補的に配置された線香セットを、一方の前記線香と他方の前記線香とに分離する線香分離器であって、
前記線香セットを、該線香セットの平面方向に沿って支持するベース本体と、
前記ベース本体に対して開閉自在に重ね合わせられ、前記ベース本体との間で前記線香セットを挟み込む蓋体と、を備え、
前記ベース本体は、前記蓋体との対向面に、前記線香セットにおける一方の前記線香に対応する位置で配置される複数の本体凸部を有し、
前記蓋体は、前記ベース本体との対向面に、前記線香セットにおける他方の前記線香に対応する位置で配置される複数の蓋体凸部を有し、
前記ベース本体と前記蓋体とが重ね合わせられて前記線香セットが挟み込まれたとき、前記本体凸部が前記一方の線香を押し込むとともに、前記蓋体凸部が前記他方の線香を押し込むことで、前記一方の線香と前記他方の線香とを前記平面方向と直行する方向でずれ込ませることにより、前記線香セットを前記一方の線香と前記他方の線香とに分離させることを特徴とする線香分離器。
【請求項2】
前記本体凸部は、前記ベース本体の前記対向面に設けられており、平面視における長さが2~40mmの平面視線状であり、
前記蓋体凸部は、前記蓋体の前記対向面に設けられており、平面視における長さが2~40mmの平面視線状であることを特徴とする請求項1に記載に線香分離器。
【請求項3】
前記ベース本体は、該ベース本体の前記対向面に突設され、先端側から前記対向面側に向かうに従って、前記ベース本体の平面視中心部側に向かうように漸次傾斜するガイド部が、少なくとも1箇所に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の線香分離器。
【請求項4】
前記ベース本体及び前記蓋体のうちの一方あるいは両方に、前記線香セットの外周側に配置される前記線香の渦巻先端部と当接することで、前記線香の位置決めを行う位置決め部が、各々の前記対向面における少なくとも1箇所に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の線香分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線香分離器に関し、特に、2巻の線香が組み合わされた線香セットを1巻ずつに分離するための線香分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、線香の一種である蚊取り線香は、長時間にわたって使用できるようにするため、長尺の線香が巻回された平面視渦巻状に構成されている。また、近年では、蚊取り線香を製品として梱包、陳列又は保管する場合のスペース効率等を考慮するとともに、蚊取り線香の製造の自動化にも伴い、2巻の線香が1セット(1枚)となるように、金型で打ち抜かれたものが市販されている。このような場合、2巻の線香同士が、各々の線香によって形成された渦巻状の隙間に相補的に配置されるように組み合わせられることで、2巻の線香が概略平板状の線香セットを構成する。
【0003】
上記のような2巻の線香が組み合わされた線香セットを使用する際は、これら2巻の線香を1巻ずつに分離する(ばらす)必要がある。しかしながら、金型によって打ち抜き加工された線香セットは、2巻の線香が、一部が打ち抜かれることなく渦巻状で部分的に連結された状態であることから、蚊取り線香の使用者が2巻の線香を手作業によって分離することが難しいという問題がある。また、2巻の線香を分離する作業の際、使用者による手の力の入り具合等によっては、線香が折れてしまうおそれもある。さらに、2巻の線香を分離する際に、線香のカスが飛散したり、使用者の手に付着したりするという問題もあった。
【0004】
特許文献1には、蚊取り線香を内部に収容、支持して燻焼、発煙させるための容器として、蚊取り線香の支持突起を備えた構造のものが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、蚊取り線香の燻蒸容器及び燻焼支持体として、凸状の燻焼支持体が燻蒸容器の内部に備えられた構造のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-093959号公報
【特許文献2】特開平06-070668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2は、何れも、蚊取り線香を支持して燻焼、発煙させるためのものであり、2巻で組み合わされた線香セットを1巻ずつに分離することを目的とするものではなかった。
【0008】
即ち、従来は、2巻で組み合わされた線香セットを1巻ずつに分離するための器具は提供されていなかったことから、上記のような線香セットを分離することが可能な器具の実現が切に求められていた。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、2巻の線香が組み合わされた線香セットを、線香が折れることなく、簡便な操作で1巻ずつ分離することが可能な線香分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討を重ねた。この結果、ベース本体と蓋体とで線香セットを挟み込む構成を採用するとともに、ベース本体及び蓋体の各々の対向面に凸部を設け、これら各凸部と2巻の線香の各々との間の配置関係を最適化することを知見した。これにより、2巻で組み合わされた線香セットを、線香が折れることなく、簡便な操作で1巻ずつばらして分離することが可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、平面視渦巻状に巻回された2巻の線香同士が、各々の前記線香によって形成された渦巻状の隙間に相補的に配置された線香セットを、一方の前記線香と他方の前記線香とに分離する線香分離器であって、前記線香セットを、該線香セットの平面方向に沿って支持するベース本体と、前記ベース本体に対して開閉自在に重ね合わせられ、前記ベース本体との間で前記線香セットを挟み込む蓋体と、を備え、前記ベース本体は、前記蓋体との対向面に、前記線香セットにおける一方の前記線香に対応する位置で配置される複数の本体凸部を有し、前記蓋体は、前記ベース本体との対向面に、前記線香セットにおける他方の前記線香に対応する位置で配置される複数の蓋体凸部を有し、前記ベース本体と前記蓋体とが重ね合わせられて前記線香セットが挟み込まれたとき、前記本体凸部が前記一方の線香を押し込むとともに、前記蓋体凸部が前記他方の線香を押し込むことで、前記一方の線香と前記他方の線香とを前記平面方向と直行する方向でずれ込ませることにより、前記線香セットを前記一方の線香と前記他方の線香とに分離させることを特徴とする線香分離器を提供する。
【0012】
本発明の線香分離器は、上記の態様において、前記本体凸部が、前記ベース本体の前記対向面に設けられており、平面視における長さが2~40mmの平面視線状であり、前記蓋体凸部が、前記蓋体の前記対向面に設けられており、平面視における長さが2~40mmの平面視線状である構成を採用できる。
【0013】
本発明の線香分離器は、上記の態様において、前記ベース本体は、さらに、前記ベース本体の前記対向面に突設され、先端側から前記対向面側に向かうに従って、前記ベース本体の平面視中心部側に向かうように漸次傾斜するガイド部が、少なくとも1箇所に設けられている構成を採用できる。
【0014】
本発明の線香分離器は、上記の態様において、さらに、前記ベース本体及び前記蓋体のうちの一方あるいは両方に、前記線香セットの外周側に配置される前記線香の渦巻先端部と当接することで、前記線香の位置決めを行う位置決め部が、各々の前記対向面における少なくとも1箇所に設けられている構成を採用できる。
【0015】
本明細書において、本体凸部及び蓋体凸部が「平面視線状」であるとは、各凸部が平面視で概略直線状(例えば、図4中に示す本体凸部15を参照)であることの他、例えば、円弧状のような平面視で丸みを帯びた形状(例えば、図4中に示す本体凸部15A,15Bを参照)であることも含む。
また、本明細書において、2巻の線香が組み合わせられた線香セットの「平面方向」とは、線香セットを板状に見立てた場合の平面方向のことをいう(例えば、図3A中に示す線香セットC及び線香C1,C2の平面方向Sを参照)。
【発明の効果】
【0016】
本発明の線香分離器によれば、上記態様を採用することにより、2巻の線香が組み合わされた線香セットを、線香が折れることなく、簡便な操作で1巻ずつ分離することが可能となる。また、ベース本体と蓋体との間に線香セットを挟み込んだ状態で2巻の線香を分離することで、線香のカス等が周囲に飛散するのを抑制することも可能となる。
本発明の他の目的、特徴及び利点については、添付図面を参照した以下の本発明の実施の形態の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、ベース本体に対して開閉自在に連結された蓋体を開放した状態を示す斜視図である。
図1B図1Bは、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、ベース本体に蓋体を重ね合わせた状態を示す斜視図である。
図2A図2Aは、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、ベース本体に連結された蓋体を開放し、ベース本体に線香セットを載置、収容した状態を示す斜視図である。
図2B図2Bは、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、ベース本体に蓋体を重ね合わせることで、線香セットを挟み込んだ状態を示す斜視図である。
図2C図2Cは、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、ベース本体に蓋体を重ね合わせることで線香セットを挟み込み、さらに、2巻の線香をそれぞれ押し込んでずれ込ませた状態を示す斜視図である。
図3A図3Aは、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、図2B中に示すA-A断面図で、ベース本体に蓋体を重ね合わせることで、線香セットを挟み込んだ状態を示す図である。
図3B図3Bは、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、図2C中に示すB-B断面図で、本体凸部及び蓋体凸部が2巻の線香をそれぞれ押し込んでずれ込ませた状態を示す図である。
図4図4は、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、図1A中に示したベース本体を詳細に示す平面図である。
図5図5は、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、図4中に示したベース本体に備えられるガイド部を拡大して示す拡大斜視図である。
図6図6は、本発明に係る線香分離器の一実施形態について説明する図であり、図4中に示したベース本体に備えられる位置決め部を拡大して示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る線香分離器の実施の形態を挙げ、図面を適宜参照しながら詳しく説明する。
なお、以下の説明で用いる各図面は、本発明の線香分離器の特徴をわかりやすくするため、便宜上、特徴となる部分を若干拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更を施して実施することが可能である。
【0019】
[線香分離器の全体構成]
図1A及び図1B、並びに、図2A図2B及び図2Cは、本実施形態の線香分離器1を示す斜視図であり、図3Aは、図2B中に示すA-A断面図、図3Bは、図2C中に示すB-B断面図である。
上記各図面のうち、図1Aは、ベース本体10に対して開閉自在に連結された蓋体20を開放した状態を示す斜視図であり、図1Bは、ベース本体10に蓋体20を重ね合わせた状態を示す斜視図である。
図2Aは、ベース本体10に連結された蓋体20を開放し、ベース本体10に線香セットC(一方の線香C1及び他方の線香C2)を載置、収容した状態を示す斜視図である。図2Bは、ベース本体10に蓋体20を重ね合わせることで、線香セットCを挟み込んだ状態を示す斜視図で、図2Cは、さらに、2巻の線香C1,C2をそれぞれ押し込んでずれ込ませた状態を示す斜視図である。
図3Aは、ベース本体10に蓋体20を重ね合わせることで、線香セットCを挟み込んだ状態を示す断面図である。図3Bは、図3A中に示した線香セットCの挟み込み状態に対し、さらに、蓋体20をベース本体10側に押圧し、本体凸部15及び蓋体凸部25が2巻の線香C1,C2をそれぞれ押し込んでずれ込ませた状態を示す断面図である。
図4は、図1A中に示したベース本体10を蓋体20との対向面10A側から詳細に示す平面図である。
【0020】
本実施形態の線香分離器1は、平面視渦巻状に巻回された2巻の線香C1,C2同士が、各々の線香C1,C2によって形成された渦巻状の隙間CS1,CS2(図3Bを参照)に相補的に配置された線香セットCを、一方の線香C1と他方の線香C2とに分離する(ばらす)ものである。
【0021】
線香セットCを構成する線香C1,C2としては、例えば、殺虫成分、及び、蚊や害虫が忌避する成分を所定量で含むとともに、必要に応じて芳香成分等を選択的に含有する線香が挙げられる。また、線香C1,C2としては、例えば、殺虫成分、忌避成分、及び芳香成分のうちの少なくとも何れかを単独で含む線香も挙げられる。即ち、本実施形態において説明する線香C1,C2には、殺虫成分等を含んでなる蚊取り線香等のみならず、例えば、忌避や芳香用途で用いられる線香等も含まれる。
【0022】
線香分離器1は、上記のような線香セットCを、この線香セットCの平面方向S(図3Aを参照)に沿って支持するベース本体10と、ベース本体10に対して開閉自在に重ね合わせられ、ベース本体10との間で線香セットCを挟み込む蓋体20とを備え、概略構成される。
【0023】
本実施形態の線香分離器1は、ベース本体10と蓋体20とが重ね合わせられて線香セットCを挟み込むことで、2巻の線香C1,C2が組み合わされた線香セットCを、線香が折れることなく、簡便な操作で1巻ずつ分離することを可能とするものである。即ち、線香分離器1は、例えば、屋内において蚊取り線香を使用する際に、蚊取り線香の商品パッケージから線香セットCを取り出して、一方の線香C1及び他方の線香C2に1巻ずつ分離する用途で使用される。また、本実施形態の線香分離器1は、簡便な構成及び形状とされ、屋外にも携行しやすい構成とされていることから、例えば、屋外で蚊取り線香を使用する場合においても、線香セットCを線香C1,C2に分離する用途で使用できるものである。
【0024】
ベース本体10は、線香分離器1の基体となるものであり、上述したように、線香セットCを平面方向Sに沿って支持できるように構成される。
ベース本体10は、平面視において概略円形状で、且つ、概略平板状に構成されており、図示例においては、詳細を後述する本体壁部11が対向面10Aに立設されている。
ベース本体10は、例えば、線香分離器1の使用場所に平置きされることで、線香分離器1が平置きで使用可能となる機能を有する。
【0025】
そして、線香分離器1に備えられるベース本体10は、蓋体20との対向面10Aに、線香セットCにおける一方の線香C1に対応する位置で配置される複数の本体凸部15を有する。本体凸部15は、線香セットCにおける一方の線香C1を押し込むように構成され、例えば、ベース本体10の対向面10A上において、一方の線香C1の巻回数に対し、1ターン(1周)あたりで少なくとも1箇所に設けられる。図1A等に示す例では、本体凸部15は、対向面10Aの平面視における中心部10Cを介して、一方の線香C1の半径方向で1箇所ずつ設けられていることで、一方の線香C1の1ターンあたりで1箇所又は2箇所に設けられている。これとともに、本体凸部15は、一方の線香C1の径方向に沿って、一方の線香C1の巻回数に応じて複数で配列されており、図示例においては、一方の線香C1の半径方向における3箇所又は4箇所に、一列に並べられるように配列されている。
【0026】
なお、本明細書において説明する、一方又は他方の線香C1,C2の「巻回数」とは、各線香C1,C2を平面視渦巻状に巻回した状態における中心部近傍、即ち、渦巻の基端部近傍を除いた、巻回状態が一定となる範囲における巻回数のことをいう。より詳細に説明すると、上記の「巻回数」とは、各線香C1,C2の幅方向の寸法が概略一定となる範囲における巻回数のことをいう。そして、各線香C1,C2(線香セットC)を平面視し、渦巻中心部を起点とする直線状の仮想線を半径方向に描いたとき、上述した巻回状態が一定となる範囲において、各線香C1,C2が上記の仮想線と交差する回数が「巻回数」となる。
また、本明細書において説明する、一方又は他方の線香C1,C2の巻回数に対する「1ターンあたり」とは、上述した巻回状態が一定となる範囲における「巻回数」のうちの1回(1周)のターンのことをいう。
【0027】
図1A等に示す例のベース本体10は、上述した一方の線香C1の半径方向における3箇所又は4箇所に一列に並べられた本体凸部15に対し、それらの配列方向と直行(90°)する配列方向で、一方の線香C1の外周側に対応する位置に、本体凸部15が計2箇所で設けられている。
【0028】
さらに、図1A等に示す例のベース本体10は、対向面10Aの中心部10Cの近傍に、平面視円弧状とされた本体凸部15A,15Bが配置されている。図示例においては、本体凸部15Aと本体凸部15Bとが、中心部10Cを介して概略で対向するように設けられている。
【0029】
本体凸部15は、ベース本体10の対向面10A上において、一方の線香C1の1ターンあたりで少なくとも1箇所に設けられていればよく、図示例のように、複数で設けられていてもよい。また、本体凸部15は、例えば、一方の線香C1の1ターンあたりで複数設けられているとともに、これら複数の本体凸部15が、中心部10Cを介して概略180°となる位置で分配配置されていること、即ち、中心部10Cを介して概略直線状となる位置で分配配置されていることが、線香セットCの分離性を向上させる観点からより好ましい。
【0030】
本体凸部15の形状としては、特に限定されないが、例えば、図示例のような平面視で線状とすることができる。このような平面視線状の本体凸部としては、例えば、図1A及び図4等に示すような、平面視で概略直線状である本体凸部15の他、同図中に示す本体凸部15A,15Bのように、平面視で円弧状とされたものも含まれる。
【0031】
図1A図4中に示す例の本体凸部15,15A,15Bは、平面視における両端部が丸みをおびた形状とされている。
【0032】
本体凸部15の平面視における長さも、特に限定されないが、例えば、2~40mmの範囲であることが好ましい。
本体凸部15の平面視長さが上記下限以上であることで、一方の線香C1を効率的に押し込むことが可能な押圧力を発現できる。また、本体凸部15の平面視長さが上記上限以下であることで、本体凸部15の一方の線香C1に対する位置ずれが生じるのを抑制できる。
【0033】
本体凸部15の平面視での長さが上記範囲における下限未満だと、一方の線香C1に付与される押圧力が局所的になり、一方の線香C1を効率的に押し込むことが難しくなり、また、局所的な押圧によって線香の折れが生じてしまうおそれもある。
一方、本体凸部15の平面視での長さが上記範囲における上限を超えると、本体凸部15と一方の線香C1との間の位置ずれ許容度が低下し、例えば、本体凸部15が、一方の線香C1のみならず、隣接する他方の線香C2にも当接するおそれがある。このような場合、線香セットCをうまく分離できないばかりか、他方の線香C2が両面側から押圧されることで折れてしまうおそれもある。
【0034】
また、上述した一方の線香C1の押し込み効果を得る観点からは、本体凸部15の平面視での長さの下限は、2.5mmであることがより好ましく、3mmであることがさらに好ましい。
また、一方の線香C1に対する位置ずれの抑制効果を得る観点からは、本体凸部15の平面視での長さの上限は、30mmであることがより好ましく、25mmであることがさらに好ましい。
【0035】
なお、平面視で円弧状とされた本体凸部15A,15Bの場合、上記の平面視における長さとは弧の長さであり、この長さが上述した範囲の平面視長さであることが好ましい。
【0036】
また、本体凸部15の平面視形状を上記のような線状とした場合の幅寸法としても、特に限定されないが、例えば、0.3~5mmの範囲であることが好ましい。
本体凸部15の平面視における幅が上記下限以上であることで、上記の長さを最適範囲とした場合と同様、一方の線香C1を効率的に押し込むことが可能な押圧力を発現できる。また、本体凸部15の平面視における幅が上記上限以下であることで、本体凸部15の一方の線香C1に対する位置ずれが生じるのを抑制できる。
【0037】
本体凸部15の幅が上記範囲における下限未満だと、長さが短すぎる場合と同様、一方の線香C1に付与される押圧力が局所的になることから、一方の線香C1を効率的に押し込むことが難しくなり、また、局所的な押圧によって線香の折れが生じてしまうおそれもある。
一方、本体凸部15の幅が上記範囲における上限を超えると、長さ寸法が大きすぎる場合と同様、本体凸部15と一方の線香C1との間の位置ずれ許容度が低下し、例えば、本体凸部15が、一方の線香C1のみならず、隣接する他方の線香C2にも当接するおそれがある。このような場合、線香セットCをうまく分離できないばかりか、他方の線香C2が両面側から押圧されることで折れてしまうおそれもある。
【0038】
また、上述した一方の線香C1の押し込み効果を得る観点からは、本体凸部15の平面視における幅の上限は、4mmであることがより好ましく、3mmであることがさらに好ましい。
また、一方の線香C1に対する位置ずれの抑制効果を得る観点からは、本体凸部15の平面視における幅の下限は、0.5mmであることがより好ましく、0.7mmであることがさらに好ましい。
【0039】
ここで、例えば、本体凸部15の平面視形状を、一方の線香C1の平面視形状に合わせた長尺の渦巻状とすることも考えられる。しかしながら、凸部を長尺且つ渦巻状に構成した場合、凸部と一方の線香C1との位置合わせが難しくなる。このため、本体凸部15の平面視形状は、上記のような、一方の線香C1の巻回長さ方向の一部のみを押圧する、平面視での長さ及び幅が制限された線状とすることが好ましい。
【0040】
また、本体凸部の形状は、上記のような線状には限定されず、一方の線香C1に対して、巻回長さ方向の一部に当接する形状であれば、何れの形状であってもよく、例えば、平面視で円形状、矩形状、又は三角形状等の各形状を採用することも可能である。
【0041】
ベース本体10の材質は、特に限定されないが、射出成形等によって容易に加工できるとともに、低コストで十分な強度が得られるという観点から、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の各種樹脂材料を何ら制限なく採用することができる。
【0042】
蓋体20は、上述したように、ベース本体10に対して開閉自在に重ね合わせられ、ベース本体10との間で線香セットCを挟み込むことが可能な構成とされる。
蓋体20は、蓋体20が重ね合わせられるベース本体10と同様、平面視において概略円形状で、且つ、概略平で板状に構成されており、図示例においては、詳細を後述する蓋体壁部21が対向面20Aに立設されている。
【0043】
また、本実施形態の線香分離器1に備えられる蓋体20は、ベース本体10との対向面20Aに、線香セットCにおける他方の線香C2に対応する位置で配置される複数の蓋体凸部25を有する。蓋体凸部25は、線香セットCにおける他方の線香C2を押し込むように構成され、蓋体20の対向面20Aにおいて、他方の線香C2の巻回数に対し、1ターン(1周)あたりで少なくとも1箇所に設けられる。図1A等に示す例の蓋体凸部25は、対向面20Aを平面視したときの中心部20Cを介して、他方の線香C2の半径方向で1箇所ずつ、他方の線香C2の1ターンあたりで3箇所に設けられている。これとともに、蓋体凸部25は、他方の線香C2の径方向に沿って、他方の線香C2の巻回数に応じて複数で配列されており、図示例においては、他方の線香C2の半径方向の4箇所に、一列に並べられるように配列されている。また、上記のように配列された複数の蓋体凸部25は、他方の線香C2の周方向に沿って、概略90°ピッチで、計3列で配列されることで、対向面20Aにおける計12箇所に設けられている。
【0044】
さらに、図1A並びに図2A等に示す例の蓋体20は、対向面20Aを平面視したときの中心部20Cの近傍に、平面視円弧状とされた本体凸部25Aが配置されている。図示例では、本体凸部25Aは、計3列で配列された複数の蓋体凸部25のうちの一列に対し、中心部20Cを介して対向する位置で1箇所に設けられている。
【0045】
蓋体凸部25は、蓋体20の対向面20A上において、他方の線香C2の1ターンあたりで少なくとも1箇所に設けられていればよく、図示例のように、複数で設けられていてもよい。また、本体凸部15の場合と同様、蓋体凸部25は、例えば、他方の線香C2の1ターンあたりで複数設けられているとともに、これら複数の蓋体凸部25が、中心部20Cを介して概略180°となる位置で分配配置されていること、即ち、中心部20Cを介して概略直線状となる位置で分配配置されていることが、線香セットCの分離性を向上させる観点からより好ましい。
【0046】
本体凸部15と同様、蓋体凸部25の平面視における長さも、特に限定されないが、上述した本体凸部15の場合と同様、例えば、2~40mmの範囲であることが好ましい。
蓋体凸部25の平面視長さが上記下限以上であることで、他方の線香C2を効率的に押し込むことが可能な押圧力を発現できる。また、蓋体凸部25の平面視長さが上記上限以下であることで、蓋体凸部25の他方の線香C2に対する位置ずれが生じるのを抑制できる。
【0047】
蓋体凸部25の平面視での長さが上記範囲における下限未満だと、他方の線香C2に付与される押圧力が局所的になり、他方の線香C2を効率的に押し込むことが難しくなり、また、局所的な押圧によって線香の折れが生じてしまうおそれもある。
一方、蓋体凸部25の平面視での長さが上記範囲における上限を超えると、蓋体凸部25と他方の線香C2との間の位置ずれ許容度が低下し、例えば、蓋体凸部25が、他方の線香C2のみならず、隣接する一方の線香C1にも当接するおそれがある。このような場合、線香セットCをうまく分離できないばかりか、一方の線香C1が両面側から押圧されることとなり、各線香が折れてしまうおそれもある。
【0048】
また、上述した他方の線香C2の押し込み効果を得る観点からは、蓋体凸部25の平面視での長さの下限は、上述した本体凸部15の場合と同様、2.5mmであることがより好ましく、3mmであることがさらに好ましい。
また、他方の線香C2に対する位置ずれの抑制効果を得る観点からは、蓋体凸部25の平面視での長さの上限は、30mmであることがより好ましく、25mmであることがさらに好ましい。
【0049】
なお、本体凸部15A,15Bのケースと同様、平面視で円弧状とされた蓋体凸部25Aの場合、上記の平面視における長さとは弧の長さであり、この長さが上述した範囲の平面視長さであることが好ましい。
【0050】
また、本体凸部15の場合と同様、蓋体凸部25の平面視形状を上記のような線状とした場合の幅寸法としても、特に限定されないが、例えば、0.3~5mmの範囲であることが好ましい。
蓋体凸部25の平面視における幅が上記下限以上であることで、上記の長さを最適範囲とした場合と同様、他方の線香C2を効率的に押し込むことが可能な押圧力を発現できる。また、蓋体凸部25の平面視における幅が上記上限以下であることで、蓋体凸部25の他方の線香C2に対する位置ずれが生じるのを抑制できる。
【0051】
蓋体凸部25の幅が上記範囲における下限未満だと、長さが短すぎる場合と同様、他方の線香C2に付与される押圧力が局所的になることから、他方の線香C2を効率的に押し込むことが難しくなり、また、局所的な押圧によって線香の折れが生じてしまうおそれもある。
一方、蓋体凸部25の幅が上記範囲における上限を超えると、長さ寸法が大きすぎる場合と同様、蓋体凸部25と他方の線香C2との間の位置ずれ許容度が低下し、例えば、蓋体凸部25が、他方の線香C2のみならず、隣接する一方の線香C1にも当接するおそれがある。このような場合、線香セットCをうまく分離できないばかりか、一方の線香C1が両面側から押圧されることで折れてしまうおそれもある。
【0052】
また、上述した他方の線香C2の押し込み効果を得る観点からは、蓋体凸部25の平面視における幅の上限は、4mmであることがより好ましく、3mmであることがさらに好ましい。
また、他方の線香C2に対する位置ずれの抑制効果を得る観点からは、蓋体凸部25の平面視における幅の下限は、0.5mmであることがより好ましく、0.7mmであることがさらに好ましい。
【0053】
ここで、本体凸部15の説明でも記したように、例えば、蓋体凸部25の平面視形状を、他方の線香C2の平面視形状に合わせた長尺の渦巻状とすることも考えられるが、凸部を長尺且つ渦巻状に構成した場合、凸部と他方の線香C2との位置合わせが難しくなる。このため、蓋体凸部25の平面視形状も、上記のような、他方の線香C2の巻回長さ方向の一部のみを押圧する、平面視での長さ及び幅が制限された線状とすることが好ましい。
【0054】
また、蓋体凸部の形状も、本体凸部と同様、上記のような線状には限定されず、他方の線香C2に対して、巻回長さ方向の一部に当接する形状であれば、何れの形状であってもよい。このような蓋体凸部の形状としては、例えば、平面視で円形状、矩形状、又は三角形状等の各形状が挙げられる。
【0055】
また、図1A及び図2Aに示す例の蓋体凸部25,25Aは、平面視における両端部が丸みを帯びていない点で、図1A図4等に示す例の本体凸部15,15A,15Bとは異なる形状とされているが、線香を押し込む機能の点では、本体凸部15,15A,15Bと同様である。
【0056】
蓋体20の材質としても、特に限定されず、加工性やコスト等を勘案し、ベース本体10と同様、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の各種樹脂材料を何ら制限なく採用することができる。
【0057】
本実施形態の線香分離器1には、さらに、ベース本体10と蓋体20とを連結する連結部3が備えられており、蓋体20がベース本体10に対して開閉自在に連結されている。
連結部3の構造としては、特に限定されず、図示例のようなヒンジ機構からなるものを何ら制限なく採用することが可能である。
【0058】
ベース本体10と蓋体20とがヒンジ機構からなる連結部3で開閉自在に連結されていることで、線香分離器1の使用者が、ベース本体10と蓋体20との位置合わせを気にすることなく、ヒンジ機構による回動作用に従って蓋体20の開閉操作を行うことができる。これにより、線香セットCを正確な位置に配置した状態で、簡便な操作で線香セットCを2巻の線香C1,C2に分離することが可能となるので、使い勝手のよいものとなる。
【0059】
線香分離器1は、上記態様を有することで、図3Aに示すように、ベース本体10と蓋体20とが重ね合わせられて線香セットCが挟み込まれたとき、本体凸部15が一方の線香C1を押し込むとともに、蓋体凸部25が他方の線香C2を押し込む作用が得られる。これにより、図3Bに示すように、一方の線香C1と他方の線香C2とを平面方向Sと直行する方向でずれ込ませることで、線香セットCを一方の線香C1と他方の線香C2とに分離させることが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態の線香分離器1を用いて、線香セットCを2巻に分離するためには、ベース本体10の本体凸部15と蓋体20の蓋体凸部25とによる、一方の線香C1又は他方の線香C2に対する相互の押し込み量(押し込み寸法)が重要となる。例えば、線香セットC(線香C1,C2)の厚みが3mmである場合、即ち、一方の線香C1と他方の線香C2との入れ込み代が3mmである場合には、この入れ込み代が2mm以下まで減少するように、本体凸部15と蓋体凸部25とによる相互の押し込み量を調整することが好ましい。一方の線香C1と他方の線香C2との入れ込み代が上記の上限以下となるように、本体凸部15及び蓋体凸部25を相互に押し込むことで、線香セットCを2巻に分離することが可能になる。一方、本体凸部15と蓋体凸部25とによる相互の押し込み量が小さ過ぎて、押し込み後の一方の線香C1と他方の線香C2との入れ込み代が上記の上限を超える場合、線香セットCをうまく分離できない可能性がある。
【0061】
また、上述した線香セットCの分離効果が顕著に得られる観点からは、押し込み後の一方の線香C1と他方の線香C2との入れ込み代が1.5mm以下まで減少するように、各凸部による相互の押し込み量を調整することがより好ましい。
【0062】
上述したような、本体凸部15と蓋体凸部25とによる、一方の線香C1及び他方の線香C2に対する相互の押し込み量は、例えば、本体凸部15及び蓋体凸部25の高さ寸法を適宜設定することで、最適に調整することが可能である。
【0063】
図5は、図4中に示したベース本体10に備えられるガイド部13を拡大してより詳細に示す斜視図である。
図4に示すように、本実施形態の線香分離器1に備えられるベース本体10は、さらに、対向面10Aに突設されたガイド部13が、少なくとも1箇所に設けられていることが好ましい。図4に示す例においては、ガイド部13が、本体壁部11の内面側に設けられ、且つ、平面視で概略円形状に配置された本体壁部11の円周上に沿うように、概略等間隔で計9箇所に設けられている。
【0064】
図5の拡大図に示すように、ガイド部13は、先端(上端)13a側から対向面10A側に向かうに従って、ベース本体10の中心部10C側に向かうように漸次傾斜する形状とされている。ガイド部13は、上記のような傾斜形状を有することにより、線香セットC(各線香C1,C2)の外径寸法に製造時のばらつきが生じている場合でも、ベース本体10上に線香セットCを位置決め精度よく載置できる効果を奏するとともに、使用者による操作性が向上する効果も奏する。また、線香セットCの位置決め精度が向上することで、線香セットCを2巻の各線香C1,C2に分離する際、各線香C1,C2に無理な力が印加されることがないので、各線香C1,C2に折れが生じるのを防止できる。
【0065】
一般に、蚊取り線香は、2巻の線香が1セットとなるように金型で打ち抜かれた後、乾燥工程を経ることから、製造場所や環境条件等により、大きさにばらつきが生じることがある。一方、線香分離器1において、上記のようなガイド部13を有する構成を採用した場合には、線香セットC(各線香C1,C2)の大きさのばらつきに左右されることなく、位置決め精度よく簡便な操作で線香セットCを線香分離器1に収容することが可能になる。
【0066】
ガイド部13は、上述したように、対向面10A上における少なくとも1箇所に設けられていればよい。一方、ガイド部13は、図4中に示す例のように、対向面10A上に複数箇所(図示例では9箇所)で設けられていることが、上述した線香セットCの位置決め精度や、使用者による挿入操作性がさらに向上するという観点からより好ましい。
【0067】
本実施形態の線香分離器1は、図1A及び図1B、並びに、図2A図2B及び図2Cに示す例のように、蓋体20が、ベース本体10と蓋体20との間に挟持された線香セットCの一部を外部に表出させる開口部20bを備えていることがより好ましい。図示例では、蓋体20の一部が切り欠き形状とされることで開口部20bが設けられおり、この結果、蓋体20がベース本体10よりも平面視面積が小さなものとされている。
【0068】
蓋体20が開口部20bを有することにより、ベース本体10と蓋体20との間に挟み込まれた線香セットCを使用者が視認できるので、線香セットCを2巻に正常に分離できたかどうかを確認しながら分離操作することができる。また、蓋体20が開口部20bを有することで、万が一、線香C1,C2の何れかに折れが生じた場合に、直ちに状態確認を行うことができるので、例えば、線香のカスや破片等の処理を考慮しながら操作することが可能になる。
【0069】
図6は、図4中に示したベース本体10に備えられる位置決め部12を拡大してより詳細に示す斜視図である。
本実施形態の線香分離器1は、さらに、ベース本体10及び蓋体20のうちの一方あるいは両方に、線香セットCの外周側に配置される線香の渦巻先端部と当接することで、線香の位置決めを行う位置決め部12が、各々の対向面における少なくとも1箇所に設けられていることがより好ましい。図4図2Aも参照)に示す例では、ベース本体10の対向面10Aに、一方の線香C1の渦巻先端部Ct、又は、他方の線香C2の渦巻先端部Ctが当接する位置決め部12が、線香2巻分で計2箇所に設けられている。
【0070】
一般に、蚊取り線香は、着火性等を考慮し、線香セットCの外周側に配置される一方の線香C1の渦巻先端部Ct、及び、他方の線香C2の渦巻先端部Ctが、平面視において、内周壁側又は外周壁側の何れかが巻回方向で突出する傾斜形状とされている。図4図2Aも参照)中に示す例では、一方の線香C1及び他方の線香C2の渦巻先端部Ctにおける内周壁側が突出する平面視形状とされている。本実施形態においては、図2A中に示したように、位置決め部12が、平面視で、一方の線香C1及び他方の線香C2の渦巻先端部Ctに対応するように傾斜した形状とされていることが、位置決め精度の向上や、位置決め操作のしやすさ等の観点からより好ましい。
【0071】
なお、本実施形態では、上述した位置決め部12がベース本体10側にのみ設けられた例を説明しているが、これには限定されない。例えば、詳細を後述する本体壁部11及び蓋体壁部21の形状や寸法を変更することにより、蓋体10側に位置決め部を設けることも可能である。
【0072】
線香分離器1は、ベース本体10の対向面10Aに立設される本体壁部11を備えるとともに、蓋体20の対向面20Aに立設される蓋体壁部21を備えることが好ましい。
具体的には、本体壁部11は、対向面10Aにおける周縁部10aよりも中心部10C側に若干寄った位置から延出し、線香セットCを外周側から覆うように配置される。また、蓋体壁部21は、対向面20Aにおける周縁部20aの位置から延出し、ベース本体10と蓋体20とを重ね合わせたとき、ベース本体10の本体壁部11を外周側から覆うように配置される。
【0073】
線香分離器1は、本体壁部11及び蓋体壁部21を備えることで概略容器状に構成されることにより、例えば、線香セットCを2巻の線香C1,C2に分離する際に線香のカスや破片が発生した場合でも、これらが線香分離器1の外部に飛散するのを効果的に防止できる。これにより、線香のカスや破片が使用者の手に付着したり、周辺に飛散、落下したりするのを確実に防止できる。
【0074】
[線香分離器を用いた線香セットの分離方法(分離手順)]
本実施形態の線香分離器1を用いて、線香セットCを一方の線香C1と他方の線香C2とに分離させる具体的な手順について、上記同様、主に、図1A図2A図2B及び図2C、並びに、図3A及び図3Bを参照しながら以下に説明する。
【0075】
まず、図1Aに示すように、蓋体20をベース本体10上から引き上げて開放した状態とする。
次いで、図2Aに示すように、ベース本体10の対向面10A上に線香セットCを載置する。この際、線香セットCの一方の線香C1に対して本体凸部15,15A,15Bが当接することで、線香セットC全体が、複数の本体凸部15、及び、本体凸部15A,15Bによって支持された状態となる。
【0076】
次いで、図2Bに示すように、蓋体20をベース本体10側に重ね合わせ、ベース本体10の対向面10Aと蓋体20の対向面20A(何れも図1Aを参照)とが対向するように閉じることで、ベース本体10と蓋体20との間に線香セットCを挟み込む。このとき、図3Aに示すように、線香分離器1の内部においては、線香セットCを構成する一方の線香C1に対して、ベース本体10側の本体凸部15,15A,15Bが当接した状態が維持される。また、線香セットCを構成する他方の線香C2に対しては、蓋体20側の蓋体凸部25,25Aが当接する。
【0077】
次いで、蓋体20の外面側における、対向面20Aの中心部20Cに対応する位置を中心とした径方向全体、即ち、蓋体凸部25,25Aの配列ラインに対応する位置全体を使用者が押圧する。このとき、図3Bに示すように、本体凸部15,15A,15Bが一方の線香C1を押し込むとともに、蓋体凸部25,25Aが他方の線香C1を押し込むことで、一方の線香C1と他方の線香C2とが平面方向S(図3Aを参照)と直行する方向でずれ込む(図2Cの斜視図も参照)。これにより、線香セットCが一方の線香C1と他方の線香C2とに分離される。
【0078】
そして、ベース本体10から蓋体20を引き上げて開放状態とし、ベース本体10の対向面10A上から、2巻に分離された一方の線香C1及び他方の線香C2を取り出す。このような手順で分離された各線香C1,C2は、それぞれ、蚊取り線香等としての使用に供することができる。
【0079】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態の線香分離器1によれば、上述した構成を採用することにより、2巻の線香C1,C2が組み合わされた線香セットCを、各線香C1,C2が折れることなく、簡便な操作で1巻ずつ分離することが可能となる。また、ベース本体10と蓋体20との間に線香セットCを挟み込んだ状態で2巻の線香C1,C2を分離することで、線香のカス等が周囲に飛散するのを抑制することも可能となる。
【0080】
[本発明の変形例]
上記においては、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の線香分離器は上記の実施形態によって限定されるものではなく、本発明の原理及び添付の特許請求の範囲の範囲を逸脱しない限り、種々の変更及び修正を施して実施することが可能である。
【0081】
例えば、上記の実施形態においては、被分離物である線香セットとして2巻の線香が組み合わされたものを用い、1巻ずつに分離する例を説明しているが、これには限定されない。本発明の線香分離器は、例えば、3巻や4巻等、2巻超で組み合わされた線香セットを分離する用途にも、各凸部の配置を最適化することで適用可能であり、被分離物である線香セットの組み合わせ数は限定されない。
【0082】
また、上記の実施形態においては、被分離物である線香セットを1枚(1セット)のみ線香分離器内にセッティング(載置、収容)し、各線香に分離する例を説明しているが、これには限定されない。本発明の線香分離器は、例えば、線香セットを複数枚(複数セット)で同時にセッティングし、同時に分離する用途においても、上記同様、各凸部の配置やサイズ等を最適に変更することで適用可能であり、同時に分離可能な線香セットの数も限定されない。このように、線香セットを複数同時にセッティングして分離する形態としては、例えば、ベース本体上に線香セットを複数で積み重ね、この状態で複数の線香セットをベース本体と蓋体とで挟み込むことにより、各線香セットを線香単位に分離する形態が挙げられる。
【0083】
また、本発明の線香分離器は、さらに、ベース本体に載置・収容して用いる別部材(別パーツ)を備えた構成を採用することも可能である。このような別部材としては、詳細な図面等による説明は省略するが、例えば、当該線香分離器のサイズに対応した線香セットよりも平面視におけるサイズが小さな線香セットを、線香分離器内で隙間なく載置・収容可能とする、サイズ調整用のアダプタ等が挙げられる。このようなアダプタとしては、例えば、ベース本体の本体壁部に沿って取り付けることが可能な、概略円環状に構成されたもの等が挙げられる。また、上記のアダプタには、ベース本体と同様、位置決め部やガイド部が設けられていることが、線香セット(線香)の大きさのばらつきに左右されることなく、簡便な操作で位置決め精度よく線香セットを取り扱うことが可能になる観点からより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の線香分離器は、2巻の線香が組み合わされた線香セットを、線香が折れることなく、簡便な操作で1巻ずつ分離することが可能となり、また、線香のカス等が周囲に飛散するのを抑制することも可能なものである。従って、本発明の線香分離器は、2巻の線香が組み合わされた線香を1巻ずつに分離して燻焼、発煙させる用途において非常に好適である。
【符号の説明】
【0085】
1…線香分離器
10…ベース本体
10A…対向面
10C…中心部
10a…周縁部
11…本体壁部
12…位置決め部
13…ガイド部
13a…先端(上端)
15,15A,15B…本体凸部
20…蓋体
20A…対向面
20C…中心部
20a…周縁部
20b…開口部
21…蓋体壁部
25,25A…蓋体凸部
3…連結部
C…線香セット
C1…線香(一方の線香)
C2…線香(他方の線香)
S…平面方向
CS1,CS2…隙間
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6