(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172397
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】軸シール構造、及び、粉体処理装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20241205BHJP
F16J 15/40 20060101ALI20241205BHJP
F16J 15/453 20060101ALI20241205BHJP
B01F 35/30 20220101ALI20241205BHJP
【FI】
F16C33/76 Z
F16J15/40 Z
F16J15/453
B01F35/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090095
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】512284033
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 祥司
(72)【発明者】
【氏名】小泉 一郎
【テーマコード(参考)】
3J042
3J216
4G037
【Fターム(参考)】
3J042AA03
3J042AA16
3J042BA03
3J042BA08
3J042CA03
3J042CA15
3J042DA01
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB22
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA05
3J216CC59
3J216CC70
3J216DA01
3J216DA12
3J216EA06
3J216EA09
3J216GA04
4G037DA02
4G037EA02
(57)【要約】
【課題】軸シール部品と回転軸とを接触させることなく、隙間の寸法を小さくして空気量を抑制することが可能となる、軸シール構造、及び、粉体処理装置を提供する。
【解決手段】軸シール構造は、ケース部材2、軸部材4、ベアリング5、及び、軸部材4が挿通されてベアリング5の近傍に設けられる円筒状部材10を備え、円筒状部材10は、ケース部材2の内部でケース部材2と相対変位可能に保持され、円筒状部材10には、内面と外面とを連通する連通孔10aが開口され、連通孔10aを通じて円筒状部材10の外側から内側に向けて気体を流入させ、円筒状部材10の内面と軸部材4の外面との間を通じてベアリング5と反対の側に気体を流出させることにより、円筒状部材10の内面と軸部材4の外面との間に間隙を形成するとともに、円筒状部材10よりもベアリング5側への異物の流入を抑止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材用ケース部材と、前記軸部材用ケース部材の内部で回転する軸部材と、前記軸部材用ケース部材の内部で前記軸部材を支持する軸受部材と、前記軸部材が挿通されて前記軸受部材の近傍に設けられる円筒状部材と、を備え、
前記円筒状部材は、前記軸部材用ケース部材の内部で前記軸部材用ケース部材と相対変位可能に保持され、
前記円筒状部材には、内面と外面とを連通する連通孔が開口され、
前記連通孔を通じて前記円筒状部材の外側から内側に向けて気体を流入させ、前記円筒状部材の内面と前記軸部材の外面との間を通じて前記軸受部材と反対の側に気体を流出させることにより、前記円筒状部材の内面と前記軸部材の外面との間に間隙を形成するとともに、前記円筒状部材よりも前記軸受部材側への異物の流入を抑止する、軸シール構造。
【請求項2】
前記円筒状部材の軸方向の両端面と前記軸部材用ケース部材との間に、弾性を有するシール部材がそれぞれ介挿されることにより、前記円筒状部材が前記軸部材用ケース部材と相対変位可能に前記軸部材用ケース部材に保持される、請求項1に記載の軸シール構造。
【請求項3】
前記軸部材の外面と前記円筒状部材の内面との間隙の寸法が0.01mm以上0.1mm以下である、請求項2に記載の軸シール構造。
【請求項4】
前記円筒状部材には、前記連通孔が周方向に沿って複数個形成される、請求項2に記載の軸シール構造。
【請求項5】
前記円筒状部材の内面に多孔質層が形成される、請求項2に記載の軸シール構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の軸シール構造と、前記軸部材用ケース部材において前記円筒状部材に関して前記軸受部材と反対の側に設けられた粉体処理容器と、を備える、粉体処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の軸シール構造が対向して配置され、
それぞれの前記軸シール構造の間に粉体処理容器が設けられ、
それぞれの前記軸シール構造において、前記軸受部材は、前記円筒状部材に関して前記粉体処理容器と反対の側に設けられ、
それぞれの前記軸シール構造における前記軸部材が共有される、粉体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体処理装置等に採用される軸シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体処理装置等において、回転軸を支持する軸受部材への粉体の侵入を防止するために、固定されている軸シール部品と回転軸との隙間より空気を噴出させる構造が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に係る軸シール構造において、回転軸の軸径が所定の場合、使用する空気量は軸シール部品と回転軸との隙間の寸法によって規定される。回転軸は回転時の負荷による曲がりや軸受部材のがたつきなどによって振動を起こす場合があるため、軸シール部品と回転軸との隙間の寸法を小さくして空気量を抑制した場合、軸シール部品と回転軸とが接触する可能性が高くなっていた。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、軸部材の振動に対して軸シール部品を連動させることにより、軸シール部品と回転軸とを接触させることなく、隙間の寸法を小さくして空気量を抑制することを可能とする、軸シール構造、及び、粉体処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
本発明に係る軸シール構造は、軸部材用ケース部材と、前記軸部材用ケース部材の内部で回転する軸部材と、前記軸部材用ケース部材の内部で前記軸部材を支持する軸受部材と、前記軸部材が挿通されて前記軸受部材の近傍に設けられる円筒状部材と、を備え、前記円筒状部材は、前記軸部材用ケース部材の内部で前記軸部材用ケース部材と相対変位可能に保持され、前記円筒状部材には、内面と外面とを連通する連通孔が開口され、前記連通孔を通じて前記円筒状部材の外側から内側に向けて気体を流入させ、前記円筒状部材の内面と前記軸部材の外面との間を通じて前記軸受部材と反対の側に気体を流出させることにより、前記円筒状部材の内面と前記軸部材の外面との間に間隙を形成するとともに、前記円筒状部材よりも前記軸受部材側への異物の流入を抑止する。
【0008】
また、軸シール構造において、前記円筒状部材の軸方向の両端面と前記軸部材用ケース部材との間に、弾性を有するシール部材がそれぞれ介挿されることにより、前記円筒状部材が前記軸部材用ケース部材と相対変位可能に前記軸部材用ケース部材に保持されることが好ましい。
【0009】
また、軸シール構造において、前記軸部材の外面と前記円筒状部材の内面との間隙の寸法が0.01mm以上0.1mm以下であることが好ましい。
【0010】
また、軸シール構造において、前記円筒状部材には、前記連通孔が周方向に沿って複数個形成されることが好ましい。
【0011】
また、軸シール構造において、前記円筒状部材の内面に多孔質層が形成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る粉体処理装置は、上記の何れか一に記載の軸シール構造と、前記軸部材用ケース部材において前記円筒状部材に関して前記軸受部材と反対の側に設けられた粉体処理容器と、を備える。
【0013】
また、本発明に係る粉体処理装置は、上記の何れか一に記載の軸シール構造が対向して配置され、それぞれの前記軸シール構造の間に粉体処理容器が設けられ、それぞれの前記軸シール構造において、前記軸受部材は、前記円筒状部材に関して前記粉体処理容器と反対の側に設けられ、それぞれの前記軸シール構造における前記軸部材が共有される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る軸シール構造、及び、粉体処理装置によれば、軸部材の振動に対して円筒状部材を連動させることができるため、円筒状部材と回転軸とを接触させることなく、互いの隙間の寸法を小さくして空気量を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一実施形態に係る粉体処理装置を示す概略断面図。
【
図2】第一実施形態に係る円筒状部材を示す斜視図。
【
図3】第一実施形態に係る軸シール構造を示す断面図。
【
図4】第一実施形態の変形例に係る粉体処理装置を示す概略断面図。
【
図5】第二実施形態に係る粉体処理装置を示す概略断面図。
【
図6】第二実施形態に係る円筒状部材を示す斜視図。
【
図7】第二実施形態に係る軸シール構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[粉体処理装置1(第一実施形態)]
まず、
図1を用いて、本発明の第一実施形態に係る軸シール構造を採用した粉体処理装置1について説明する。粉体処理装置1は、医薬品や食品として使用される粉体を処理する装置であり、軸シール構造と粉体処理容器3とを備えて構成される。粉体処理装置1は、粉体の乾燥、粉砕、分級、混合、表面処理等、粉体に関する処理の何れかを行う装置である。なお、本実施形態において、軸シール構造を粉体処理装置1に採用しているが、本発明に係る軸シール構造が適用可能な用途はこれに限定されるものではない。即ち、本発明に係る軸シール構造は、軸シール構造を必要とする他の装置についても同様に採用することが可能である。
【0017】
図1に示す如く、粉体処理装置1に採用される軸シール構造は、軸部材用ケース部材であるケース部材2、軸部材4、軸受部材であるベアリング5、シール部材6、円筒状部材10、及び、エアーポンプP等を備える。軸部材4は、図示しないモータに接続されて、粉体処理装置1で行う粉体処理のために回転する。ケース部材2は、ベアリング5を収容する軸受ケース2Bと円筒状部材10を収容するシールケース2Sとで構成される。
【0018】
図1に示す如く、粉体処理容器3はケース部材2において円筒状部材10に関してベアリング5と反対の側に設けられている。粉体処理装置1においては、粉体処理容器3の内部で粉体の混合等の処理を行う。
【0019】
軸部材4は、ケース部材2の内部で回転可能に支持される。具体的には、ケース部材2(軸受ケース2B)の内部に設けられたベアリング5に支持されることにより、軸部材4がケース部材2の内部で回転可能とされる。軸部材4の一端部は粉体処理容器3の内部に延出されて、粉体の処理に用いられる。
【0020】
図1に示す如く、円筒状部材10は軸部材4が挿通されてベアリング5の近傍に設けられるステンレス製の部材である。本実施形態において、軸部材4の外面と円筒状部材10の内面との間隙の寸法は0.01mm以上0.1mm以下、より好ましくは5μm~100μmとなるように設定されている。
【0021】
粉体処理装置1においては
図1に示す如く、円筒状部材10が設けられた空間はエアーポンプPと連通されている。そして、エアーポンプPから
図1中の下向き矢印に示す流入空気Aiを、エア供給口21を介して円筒状部材10の周囲に流入させることができる。なお、本発明に係る軸シール構造において、窒素等、空気以外の気体を流通させる構成とすることも可能である。
【0022】
図2及び
図3に示す如く、円筒状部材10には、円筒状部材10の内面と外面とを連通する複数個の連通孔10aが周方向に沿って複数個(本実施形態においては30度ごとに12個)形成されている。この複数個の連通孔10aにより、エアーポンプPから送られた流入空気Aiは円筒状部材10の外面から内面に流通される。
【0023】
本実施形態において、連通孔10aは円筒状部材10の外周面と内周面とを連通する構成としている。なお、本明細書において円筒状部材の「内面」とは、円筒状部材の内周面を意味するとともに、円筒状部材の「外面」とは、円筒状部材の外周面を含む「円筒状部材の内周面以外の全ての面」を意味する。即ち、本発明に係る軸シール構造においては、円筒状部材の内周面と、円筒状部材の軸方向の端面と、を連通するように連通孔を形成することも可能である。
【0024】
粉体処理装置1に採用される軸シール構造において、円筒状部材10はケース部材2の内部でケース部材2と相対変位可能に保持されている。具体的には
図1及び
図3に示す如く、円筒状部材10の軸方向の両端面には溝部10bが形成されている。そして、溝部10bとケース部材2との間には、弾性を有するOリングであるシール部材6・6がそれぞれ介挿される。これにより、円筒状部材10はケース部材2及び軸部材4に対して相対変位可能とされる。
【0025】
粉体処理装置1において軸シール構造を用いる際は、
図1及び
図3に示す如く、連通孔10aを通じて円筒状部材10の外側から内側に向けて流入空気Aiを流入させる。そして、
図1及び
図3中の右向き矢印に示す如く円筒状部材10の内面と軸部材4の外面との間を通じてベアリング5と反対の側に流出空気Aoを流出させる。これにより、円筒状部材10よりもベアリング5の側への粉体等の異物の流入が抑止される。
【0026】
上記の如く、円筒状部材10の内面と軸部材4の外面との間に気体(本実施形態においては空気)を流通させることにより、円筒状部材10の内面と軸部材4の外面との間に間隙が形成される。この際、空気の粘性により円筒状部材10の内面と軸部材4の外面との間の間隙が維持され、また、円筒状部材10がシール部材6によりケース部材2及び軸部材4に対して相対変位可能に保持されていることから、軸部材4が振動した場合でも円筒状部材10は軸部材4に連動して動く。
【0027】
即ち、本実施形態においては、軸部材4が高速で回転することにより振動した場合でも、円筒状部材10の内面と軸部材4の外面が接触することを防止できる。このように、本実施形態に係るシール構造によれば、円筒状部材10は軸部材4に連動して動くことを可能とする構造であるため、軸部材4の外面と円筒状部材10の内面との間隙の寸法を従来よりも小さく設定することができ、使用する空気量を抑制することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態に係る軸シール構造によれば、使用する空気量を少なくすることで、省エネ化を図ると同時に、粉体処理装置1の内部に吹き込まれた空気を処理するためのフィルター面積を減少できる。さらに、真空乾燥を行う際の粉体処理装置1の内部を減圧するときの排気量を減らし、真空ポンプ容量を小さくすることが可能となる。
【0029】
例えば、円筒状部材10の内面と軸部材4の外面との隙間を20μmとし、軸部材4の軸径を20mm、空気の流速を20m毎秒とした場合、毎分1.5Lの空気が必要になる。従来技術に係る空気を用いた軸シール構造においては、軸部材と軸シール部品との間隔が0.5mm程度必要であるため毎分38Lの空気を必要とするが、本実施形態に係る軸シール構造によれば約1/25の空気で軸シールを行うことが可能となる。
【0030】
なお、本実施形態に係る軸シール構造は、一般的なエアパージ機構と同様に、空気を用いて軸シールを行っている。このため、非接触での軸部材4の周速が10m毎秒を超える装置でも用いることが可能である。また、装置の使用環境により変わることはあるが、適用可能な軸部材4の周速範囲は10~80m毎秒であり、円筒状部材10の内面と軸部材4の外面との隙間は5
~100μmに設定することが可能である。
【0031】
なお、本実施形態に係る軸シール構造において、円筒状部材10をケース部材2の内部でケース部材2と相対変位可能に保持する構成として弾性を有するOリングをシール部材6・6として用いているが、円筒状部材10をケース部材2と相対変位可能に保持することが可能であれば他の構成を採用することも可能である。例えば、オイルシール、Vリングのような弾性を有した接触式シールを使用する構成を採用することも可能である。又は、円筒状部材10の周囲に空気を流通させることにより、円筒状部材10をケース部材2と相対変位可能に保持する構成とすることもできる(以下に記載する変形例及び第二実施形態についても同様)。
【0032】
[粉体処理装置1A(第一実施形態の変形例)]
次に、
図4を用いて、第一実施形態の変形例に係る粉体処理装置1Aについて説明する。本変形例に係る粉体処理装置1Aは、前記第一実施形態に記載の軸シール構造が左右一対で対向して配置されること以外は粉体処理装置1と同様に構成されている。このため、以下では第一実施形態に係る粉体処理装置1と同じ構成については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
粉体処理装置1Aにおいては
図4に示す如く、それぞれの軸シール構造の間に粉体処理容器3Aが設けられている。そして、それぞれの軸シール構造において、ベアリング5は、円筒状部材10に関して粉体処理容器3Aと反対の側に設けられる。また、それぞれの軸シール構造において軸部材4Aが共有される。
【0034】
粉体処理装置1Aにおいてそれぞれの軸シール構造を用いる際は、
図4中の下向き矢印に示す如く、連通孔10aを通じて円筒状部材10の外側から内側に向けて流入空気Aiを流入させる。そして、
図4中の内向き矢印に示す如く円筒状部材10の内面と軸部材4Aの外面との間を通じてベアリング5と反対の側に流出空気Aoを流出させる。これにより、円筒状部材10よりも外側(ベアリング5の側)への粉体等の異物の流入が抑止される。
【0035】
本変形例においても、円筒状部材10の内面と軸部材4Aの外面との間に気体(本実施形態においては空気)を流通させることにより、円筒状部材10の内面と軸部材4Aの外面との間に間隙が形成される。この際、空気の粘性により円筒状部材10の内面と軸部材4Aの外面との間の間隙が維持されるため、軸部材4Aが振動した場合でも円筒状部材10は軸部材4に連動して動く。
【0036】
即ち、本変形例においては、軸部材4Aが高速で回転することにより振動した場合でも、円筒状部材10の内面と軸部材4Aの外面が接触することを防止できる。このように、本変形例に用いられているシール構造においても、軸部材4Aの外面と円筒状部材10の内面との間隙の寸法を従来よりも小さく設定することが可能となるため、使用する空気量を抑制することが可能となる。
【0037】
[粉体処理装置101(第二実施形態)]
次に、
図5を用いて、本発明の第二実施形態に係る軸シール構造を採用した粉体処理装置101について説明する。本実施形態に係る粉体処理装置101は、前記第一実施形態に記載の軸シール構造と比較して、円筒状部材110の構成以外は粉体処理装置1と同様に構成されている。このため、以下では第一実施形態に係る粉体処理装置1と同じ構成については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
図1に示す如く、粉体処理装置101に採用される軸シール構造は、軸部材用ケース部材であるケース部材2、軸部材4、軸受部材であるベアリング5、シール部材6、円筒状部材110、及び、エアーポンプP等を備える。ケース部材2は、ベアリング5を収容する軸受ケース2Bと円筒状部材110を収容するシールケース2Sとで構成される。
【0039】
図5に示す如く、粉体処理容器3はケース部材2において円筒状部材110に関してベアリング5と反対の側に設けられている。軸部材4は、ケース部材2の内部で回転可能に支持される。
【0040】
図5に示す如く、円筒状部材110は軸部材4が挿通されてベアリング5に隣接して設けられる。本実施形態において、軸部材4の外面と円筒状部材110の内面との間隙の寸法は0.01mm以上0.1mm以下、より好ましくは5μm~100μmとなるように設定されている。
【0041】
粉体処理装置101においては
図5に示す如く、円筒状部材110が設けられた空間はエアーポンプPと連通されている。そして、エアーポンプPから
図5中の下向き矢印に示す流入空気Aiを、エア供給口21を介して円筒状部材110の周囲に流入させることができる。
【0042】
図6に示す如く円筒状部材110は、外面に露出するステンレス製の外筒部111と、内面に設けられる多孔質層112と、を備えたエアベアリングである。
図6及び
図7に示す如く、外筒部111には外筒部111の内面と外面とを連通する連通孔111aが開口されている。また、本実施形態において、多孔質層112には多孔質の焼結合金が採用されることにより空気が流通可能に構成されている。これにより、エアーポンプPから送られた流入空気Aiは円筒状部材110の外面から内面に流通される。
【0043】
粉体処理装置101に採用される軸シール構造において、円筒状部材110はケース部材2の内部でケース部材2と相対変位可能に保持されている。具体的には
図5及び
図7に示す如く、円筒状部材110の軸方向の両端面と、ケース部材2において円筒状部材110の軸方向の両端面と対向する面に形成された溝部22と、の間には、弾性を有するOリングであるシール部材6・6がそれぞれ介挿される。これにより、円筒状部材110はケース部材2及び軸部材4に対して相対変位可能とされる。
【0044】
粉体処理装置101において軸シール構造を用いる際は、
図5及び
図7に示す如く、連通孔111a及び多孔質層112を通じて円筒状部材110の外側から内側に向けて流入空気Aiを流入させる。そして、
図5及び
図7中の右向き矢印に示す如く円筒状部材110の内面と軸部材4の外面との間を通じてベアリング5と反対の側に流出空気Aoを流出させる。これにより、円筒状部材110よりもベアリング5の側への粉体等の異物の流入が抑止される。
【0045】
上記の如く、円筒状部材110の内面と軸部材4の外面との間に気体(本実施形態においては空気)を流通させることにより、円筒状部材110の内面と軸部材4の外面との間に間隙が形成される。この際、空気の粘性により円筒状部材110の内面と軸部材4の外面との間の間隙が維持されるため、軸部材4が振動した場合でも円筒状部材110は軸部材4に連動して動く。
【0046】
即ち、本実施形態においても、軸部材4が高速で回転することにより振動した場合でも、円筒状部材110の内面と軸部材4の外面が接触することを防止できる。このように、本実施形態に係るシール構造においても、軸部材4の外面と円筒状部材110の内面との間隙の寸法を従来よりも小さく設定することが可能となるため、使用する空気量を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 粉体処理装置(第一実施形態)
1A 粉体処理装置(変形例)
2 ケース部材(軸部材用ケース部材)
2B 軸受ケース 2S シールケース
3 粉体処理容器 3A 粉体処理容器(変形例)
4 軸部材 4A 軸部材(変形例)
5 ベアリング(軸受部材)
6 Oリング(シール部材)
10 円筒状部材 10a 連通孔
10b 溝部
21 エア供給孔 22 溝部
101 粉体処理装置(第二実施形態)
110 円筒状部材 111 外筒部
111a 連通孔 112 多孔質層
Ai 流入空気 Ao 流出空気
P エアーポンプ