(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172402
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】部品内蔵基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20241205BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20241205BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/00 J
H01L23/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090102
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕之
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC32
5E316DD22
5E316EE06
5E316EE07
5E316EE09
5E316FF15
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316HH31
5E316JJ13
5E316JJ26
(57)【要約】
【課題】キャビティ内への電子部品の搭載作業性が向上した部品内蔵基板を提供する。
【解決手段】本開示の部品内蔵基板には、平面形状が四角形の複数のキャビティが備えられ、キャビティ内に電子部品が収容されると共に、キャビティと電子部品との隙間に樹脂が充填されている。複数のキャビティには、その四角形の角部に、四角形の隣り合う2辺に跨って外側に膨出する膨出縁部がそれぞれ設けられる第1キャビティと第2キャビティが含まれ、第1キャビティの長辺が第2キャビティの長辺より長く、第1キャビティの膨出縁部の幅が第2キャビティの膨出縁部の幅より大きくなっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が四角形の複数のキャビティを備え、前記キャビティ内に電子部品が収容されると共に、前記キャビティと前記電子部品との隙間に樹脂が充填される部品内蔵基板であって、
前記複数のキャビティには、前記四角形の角部に、前記四角形の隣り合う2辺に跨って外側に膨出する膨出縁部がそれぞれ設けられる第1キャビティと第2キャビティが含まれ、
前記第1キャビティの長辺が前記第2キャビティの長辺より長く、前記第1キャビティの膨出縁部の幅が前記第2キャビティの膨出縁部の幅より大きい。
【請求項2】
請求項1に記載の部品内蔵基板であって、
前記膨出縁部は、円弧状をなしている。
【請求項3】
請求項2に記載の部品内蔵基板であって、
前記第1キャビティの方が前記第2キャビティよりも前記膨出縁部の円弧の半径が大きくなっている。
【請求項4】
請求項1に記載の部品内蔵基板であって、
前記膨出縁部は、前記四角形の全ての角部に配されている。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1の請求項に記載の部品内蔵基板であって、
前記部品内蔵基板は、コア基板と、前記コア基板の表裏の両面に積層されるビルドアップ層とを有し、前記第1キャビティと前記第2キャビティは前記コア基板に形成され、前記樹脂は前記ビルドアップ層に含まれる層間絶縁層から染み出た樹脂である。
【請求項6】
ルータ加工によって平面形状が四角形の複数のキャビティが形成されることと、前記キャビティ内に電子部品が収容されることと、前記キャビティと前記電子部品との隙間に樹脂が充填されることと、を含む部品内蔵基板の製造方法であって、
前記キャビティの形成が、
前記四角形の角部に、前記四角形の隣り合う2辺に跨って外側に膨出する膨出縁部が形成されることと、
前記複数のキャビティに含まれる第1キャビティと第2キャビティとを、前記第1キャビティの長辺が前記第2キャビティの長辺より長くかつ、前記第1キャビティの膨出縁部の幅が前記第2キャビティの膨出縁部の幅より大きくなるように形成されることと、を含む。
【請求項7】
請求項6に記載の部品内蔵基板の製造方法であって、
前記膨出縁部の形成は、ルータが前記四角形の一辺に沿って動かされる工程と、その隣の辺に沿って動かされる工程との間に行われて、前記ルータが外側に膨らむように動かされる。
【請求項8】
請求項6に記載の部品内蔵基板の製造方法であって、
前記膨出縁部は、ルータにより前記四角形が形成された後、前記四角形の角部にドリルを差し込んで形成され、
前記第1キャビティの前記膨出縁部の形成において、前記第2キャビティの前記膨出縁部の形成時よりも径が大きいドリルが使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部品内蔵基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子部品が収容されるキャビティを有する部品内蔵基板が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-309207号公報(段落[0013]、[0014]、
図1及び
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の部品内蔵基板に対して、キャビティ内に電子部品を搭載する際、電子部品の角部がキャビティの隅部に干渉しやすく、搭載作業性の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の部品内蔵基板は、平面形状が四角形の複数のキャビティを備え、前記キャビティ内に電子部品が収容されると共に、前記キャビティと前記電子部品との隙間に樹脂が充填される部品内蔵基板であって、前記複数のキャビティには、前記四角形の角部に、前記四角形の隣り合う2辺に跨って外側に膨出する膨出縁部がそれぞれ設けられる第1キャビティと第2キャビティが含まれ、前記第1キャビティの長辺が前記第2キャビティの長辺より長く、前記第1キャビティの膨出縁部の幅が前記第2キャビティの膨出縁部の幅より大きい。
【0006】
本開示の部品内蔵基板の製造方法は、ルータ加工によって平面形状が四角形の複数のキャビティが形成されることと、前記キャビティ内に電子部品が収容されることと、前記キャビティと前記電子部品との隙間に樹脂が充填されることと、を含む部品内蔵基板の製造方法であって、前記キャビティの形成が、前記四角形の角部に、前記四角形の隣り合う2辺に跨って外側に膨出する膨出縁部が形成されることと、前記複数のキャビティに含まれる第1キャビティと第2キャビティとを、前記第1キャビティの長辺が前記第2キャビティの長辺より長くかつ、前記第1キャビティの膨出縁部の幅が前記第2キャビティの膨出縁部の幅より大きくなるように形成されることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係る部品内蔵基板の断面図
【
図10】(A)隅部が直角のキャビティに電子部品が収容されている状態を示す平面図、(B)隅部に膨出縁部を備えるキャビティに電子部品が収容されている状態を示す平面図
【
図11】電子部品の長辺の長さによってキャビティ内で電子部品が傾けられる許容角度が変化することを示す平面図
【
図12】膨出縁部の膨出幅の大きさによりキャビティ内で電子部品が傾けられる許容角度が変化することを示す平面図
【
図13】第2実施形態に係る部品内蔵基板の製造工程を示す拡大平面図
【
図14】他の実施形態に係る部品内蔵基板の製造工程を示す拡大平面図
【
図15】他の実施形態に係る部品内蔵基板の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図12を参照して本開示の一実施形態について説明する。本実施形態の部品内蔵基板10は、例えば、平面形状が四角形をなし、
図1に示すように、コア基板11と、その表裏の両面(第1面11F、第2面11S)に積層されるビルドアップ層12とを有する。
【0009】
コア基板11は、絶縁性基材11Kと、その表裏の両面に積層される導電層13とを備え、表裏の導電層13は、絶縁性基材11Kを貫通するスルーホール導体14によって接続されている。絶縁性基材11Kには、電子部品90,91が収容される第1と第2のキャビティ20,30が形成されている。第1と第2のキャビティ20,30については、後で詳説する。
【0010】
ビルドアップ層12は、層間絶縁層15と導電層16とを有する。また、ビルドアップ層12の上には、ソルダーレジスト層17が積層されている。なお、層間絶縁層15は、絶縁性基材11Kよりも厚みが薄くなっている。導電層16は、層間絶縁層15を貫通する複数のビア導体15Dによって、コア基板11の導電層13、電子部品90,91の電極に接続される。
【0011】
ソルダーレジスト層17には、ビルドアップ層12の導電層16を露出させる複数の開口17Aが形成されている。そして、導電層16のうち開口17Aから露出する部分がパッド18を構成する。
【0012】
さて、第1と第2のキャビティ20,30は、上述したように、絶縁性基材11Kに形成されている。第1と第2のキャビティ20,30は、コア基板11を厚さ方向に貫通し、その内側面21,31は、コア基板11の表裏の両面に対して略垂直に形成され、
図2に示すように、第1と第2のキャビティ20,30は、どちらも平面形状が四角形をなしており、長辺の長さは、第1キャビティ20の方が第2キャビティ30よりも長くなっている。
【0013】
第1と第2のキャビティ20,30の四隅には、外側に膨出する膨出縁部23,33が備えられている。膨出縁部23,33は、第1と第2のキャビティ20,30の隣り合う内側面21,31に跨って膨出する円弧状の内面23A,33Aを有している。本実施形態では、円弧状内面23Aの円弧の半径の方が、円弧状内面33Aの円弧の半径よりも大きくなっている。
【0014】
第1と第2のキャビティ20,30内に収容される電子部品90,91は、平面形状が四角形をなし、角部は略直角に形成されている。電子部品90,91は、例えば、積層セラミックコンデンサ(MLCC)である。第1と第2のキャビティ20,30の内面と電子部品90,91との間の隙間には樹脂50が充填される。本実施形態では、樹脂50は、層間絶縁層15を構成する樹脂と同じである。
【0015】
以下、
図3~
図9を参照して部品内蔵基板10の製造方法を説明する。
【0016】
(1)絶縁性基材11Kの両面に銅箔11Cが積層されている銅張積層板11Zが用意される。
図3(A)に示すように、銅張積層板11Zの両面にレーザーが照射されて複数のスルーホール14Hが形成される。絶縁性基材11Kは、例えば、エポキシ樹脂又はBT(ビスマレイドトリアジン)樹脂とガラスクロスなどの補強材からなる。
【0017】
(2)銅張積層板11Zの表裏の両面に、公知の製造方法により、導電層13が形成されると共に、スルーホール14Hにスルーホール導体14が形成される(
図3(B)参照)。これにより、コア基板11が形成される。
【0018】
(3)
図3(C)に示すように、切削加工によって、コア基板11に第1と第2のキャビティ20,30が形成される。第1と第2のキャビティ20,30の形成工程として、内側面形成工程と、膨出縁部形成工程が順に行われる。
【0019】
内側面形成工程では、コア基板11にルータRを突入させ、ルータ加工により第1と第2のキャビティ20,30の内側面21,31が形成される。具体的には、ルータRを、回転軸方向がコア基板11の厚み方向と平行となるように配置させ、四角形の枠状に反時計回りに走らせる。これにより、
図4に示すように、四隅が丸みを帯び、直線部分が第1と第2のキャビティ20,30の内側面21,31となる四角形が形成される。
【0020】
膨出縁部形成工程では、内側面形成工程で形成された四角形の四隅に上方からそれぞれドリルD1,D2が差し込まれ、ドリル加工により膨出縁部23,33が形成される。具体的には、
図4に示すように、隣り合う内側面21,31の仮想延長面同士が交差する交差部分、即ち、上方から見て、内側面形成工程で形成された四角形の隣り合う二辺の仮想延長線が交差する仮想交点20K,30Kに、それぞれドリルD1,D2の回転軸を突入させる。また、本実施形態では、ドリルD1,D2は、ドリルD1の方が径が大きいものが使用される。これにより、四隅に外側に膨出する膨出縁部23,33を備えた第1と第2のキャビティ20,30が形成される。
【0021】
(4)
図5(A)に示すように、コア基板11の第1面11F上にテープ80が貼り付けられて第1と第2のキャビティ20,30が塞がれ、次いで、
図5(B)に示すように、図示しないマウンターによって、電子部品90,91が第1と第2のキャビティ20,30内に収められる。
【0022】
(5)
図5(C)に示すように、コア基板11の第2面11S上に層間絶縁層15と銅箔40が積層され、加熱プレスが行われる。層間絶縁層15としては、無機フィラーを含有するプリプレグ(心材に無機フィラーを含有する樹脂を含浸してなるBステージの樹脂シート)が用いられる。このとき、コア基板11の第2面11S側の導体層13同士の間の隙間がプリプレグにて埋められる。また、プリプレグから染み出た熱硬化性樹脂が、第1と第2のキャビティ20,30の内面と電子部品90,91との間の隙間に入り込み、樹脂50となる。
【0023】
(6)
図6(A)に示すように、テープ80が剥離され、続いて
図6(B)に示すように、コア基板11の第1面11F上に層間絶縁層15としてのプリプレグと銅箔40が積層され、加熱プレスが行われる。このとき、コア基板11の第1面11F側の導体層13同士の間の隙間がプリプレグにて埋められる。
【0024】
(7)第1面11F側の銅箔40及び層間絶縁層15と第2面11S側の銅箔40及び層間絶縁層15とにレーザーが照射されて、複数のビアホール15Hが形成され、次いで、無電解めっき処理が行われ、銅箔40上とビアホール15H内とに無電解めっき膜41が形成される(
図6(C)参照)。
【0025】
(8)
図7(A)に示すように、無電解めっき膜41上に所定パターンのめっきレジスト42が形成され、次いで、
図7(B)に示されるように、電解めっき処理が行われ、電解めっきがビアホール15H内に充填されてビア導体15Dが形成されると共に、無電解めっき膜41のうちめっきレジスト42から露出する部分の上に電解めっき膜43が形成される。
【0026】
(9)めっきレジスト42が剥離されると共に、めっきレジスト42の下方の無電解めっき膜41及び銅箔40が除去される。すると、
図8(A)に示すように、銅箔40、無電解めっき膜41及び電解めっき膜43からなる導電層16が層間絶縁層15の上に形成される。導電層16は、ビア導体15Dによって、導電層13、電子部品90,91の電極に接続される。
【0027】
なお、層間絶縁層15として、プリプレグの代わりに、心材を含まないで無機フィラーを含有する樹脂フィルムが用いられてもよい。この場合には、銅箔40が積層されず、セミアディティブ法によって、樹脂フィルムの上に導電層16が形成される。
【0028】
(10)
図8(B)に示すように、導電層16上にソルダーレジスト層17が積層される。露光・現象によってソルダーレジスト層17の所定箇所に開口17Aが形成される。そして、導電層16のうち開口17Aから露出する部分によってパッド18が形成される。以上により、
図1に示される部品内蔵基板10が完成する(
図9参照)。
【0029】
次に部品内蔵基板10の作用効果について説明する。本実施形態の部品内蔵基板10には、平面形状が四角形をなす第1と第2のキャビティ20,30が形成されており、第1と第2のキャビティ20,30の四隅には、それぞれ、外側に円弧状に膨出する円弧状内面23A,33Aを有する膨出縁部23,33が備えられている。この構成によれば、第1と第2のキャビティ20,30内に、第1と第2のキャビティ20,30の四辺と略同じ長さの四角形をなしてその四隅が略直角の電子部品90,91を収容することができる。即ち、第1と第2のキャビティ20,30の寸法を電子部品90,91の寸法に近づけることが可能になる。これにより、電子部品90,91が搭載された第1と第2のキャビティ20,30内に充填される樹脂50の厚みを小さくして、ボイドの発生を抑えることができる。
【0030】
ここで、電子部品は、キャビティに接触させないようにして搭載される必要があるが、電子部品がキャビティの各辺に対して傾いた状態で搭載されると、その傾けられる角度の大きさによってはキャビティに接触してしまうことがあるため、搭載作業に手間がかかる。これに対して、例えば、
図10(A)、(B)に示すように、四隅が直角のキャビティ70と、四隅が膨出縁部73Sにより拡大されるキャビティ70Sに、電子部品92を搭載させる場合を比較すると、四隅が直角のキャビティ70に対しては電子部品92が接触してしまう傾きであっても、キャビティ70Sに対しては電子部品92との接触が防がれていることが分かる。換言すれば、キャビティ70Sの四隅を拡大する膨出縁部73Sによって、電子部品92がキャビティ70S内で傾けられる許容角度を大きくすることができる。つまり、本実施形態の第1と第2のキャビティ20,30には、四隅に膨出縁部23,33が備えられているので、搭載される電子部品90,91が傾けられる許容角度が大きくすることができ、搭載作業が容易になる。
【0031】
また、第1と第2のキャビティ20,30内で電子部品90,91が傾けられる許容角度は、各キャビティ20,30の長辺の長さ、及び、膨出縁部23,33のうち各キャビティ20,30の一辺上の幅(以下、膨出幅Wという)の大きさによって異なる。ここで、平面形状が正方形で辺の長さが異なる電子部品93,94を例に挙げて説明する。まず、これら電子部品93,94を、
図11に示すように、それぞれ、四隅が直角のキャビティ71A,71Bに搭載させる。この例において、電子部品93,94を、その中心をキャビティ71A,71Bの中心と一致させて、キャビティ71A,71B内に傾かないように配置される場合(この位置を正規位置とする)、キャビティ71A,71Bと電子部品93,94との隙間はどちらも同じとする。そして、電子部品93,94を正規位置から回転させてキャビティ71A,71Bに接触させると、正規位置からの傾きは電子部品93の方が大きくなっていることが分かる。つまり、電子部品の辺の長さが長くなると、キャビティ内で電子部品が正規位置から傾けられる許容角度の範囲が小さくなる。
【0032】
次に、キャビティ71Bの四隅に、膨出幅W1の膨出縁部73Tが備えられると、上述したように、四隅が直角の場合よりも電子部品94が傾けられる許容角度が大きくなるので、
図12に示すように、電子部品94を正規位置から回転させてキャビティ71Bに接触させたときの正規位置からの傾きは、四隅が直角の場合よりも大きくなっている。さらに、キャビティ71の四隅に、膨出幅W1よりも大きい膨出幅W2の膨出縁部73Uが備えられると、電子部品94を正規位置から回転させてキャビティ71Bに接触させたときの正規位置からの傾きは、膨出縁部73Tの場合よりも大きくなっていることが分かる。つまり、膨出縁部の膨出幅Wを大きくすると、電子部品のキャビティ内で傾けられる許容角度の範囲を大きくすることができる。
【0033】
これに対し、本実施形態では、第1キャビティ20の膨出縁部23の円弧状内面23Aの円弧の半径が、第2キャビティ30の膨出縁部33の円弧状内面33Aの円弧の半径よりも大きく構成されている。つまり、長辺の長さが長い電子部品90が搭載される第1キャビティ20の膨出縁部23の膨出幅Wを、長辺の長さが短い電子部品91が搭載される第2キャビティ30の膨出縁部33の膨出幅Wよりも大きくしている。これにより、電子部品91と比較してキャビティ内で傾けられる許容角度の範囲が小さい電子部品90に対して、第1キャビティ20内で傾けられる許容角度の範囲を大きくすることができる。
【0034】
以上のことから、本実施形態の部品内蔵基板10は、第1と第2のキャビティ20,30の四隅に膨出縁部23,33を設けることで、第1と第2のキャビティ20,30の寸法を電子部品90,91の寸法に近づけて充填される樹脂50の厚みを減らしてボイドの発生を抑えつつ、長辺の長さが長い電子部品90が搭載される第1キャビティ20の膨出縁部23の膨出幅Wを、長辺の長さが短い電子部品91が搭載される第2キャビティ30の膨出縁部33の膨出幅Wよりも大きくすることで、長辺の長さが短い電子部品91と比較して搭載作業性が劣る電子部品90の搭載作業性を向上することができる。また、長辺の長さが短い電子部品91が搭載される第2キャビティ30を不必要に大きくすることも防がれる。
【0035】
[第2実施形態]
本実施形態の部品内蔵基板10X(図示しない)では、第1と第2のキャビティ20X,30Xの膨出縁部23X,33Xの形成方法が第1実施形態と異なる。即ち、第1実施形態では、第1と第2のキャビティ20,30の内側面21,31を有する四角形がルータRを周回させて形成された後で、その四角形の四隅にドリルDが差し込まれて膨出縁部23,33が形成される構成であったが、本実施形態では、ルータRを周回させて内側面21,31を有する四角形が形成される途中で膨出縁部23X,33Xも形成される。つまり、ルータ加工により内側面21,31と膨出縁部23X,33Xの両方が形成される。以下の説明では、上記第1実施形態との相違点のみを説明し、共通する構成については重複した説明は省略する。
【0036】
まず、第2キャビティ30Xの内側面31Xの形成方法について説明する。
図13(A)に示すように、第2キャビティ30Xの四辺となる内側面31を、例えば、反時計回りに、第1内側面31A、第2内側面31B、第3内側面31C、第4内側面31Dということとし、これら第1~第4の内側面31A~31Dを、それぞれ、第1~第4の内側面形成工程によって順に形成されるとすると、第1と第2の内側面形成工程の間、第2と第3の内側面形成工程の間、第3と第4の内側面形成工程の間、第4の内側面形成工程の後に、それぞれ第1~第4の膨出縁部形成工程が行われる。以下、第1の膨出縁部形成工程について説明する。
【0037】
図13(A)にルータRの回転軸の軌道が矢印で示されるように、ルータRが第1内側面31Aの一端部である第1位置61から他端部である第2位置62を向く第1方向H1に沿って移動して第1内側面31Aが形成された後、ルータRの回転軸の軌道が第2位置62で第1方向H1から90度外方を向く第2方向H2に変更され、ルータRが第2方向H2に沿って第3位置63まで動かされる。そして、第3位置63に到達すると、ルータRの回転軸の軌道が第1方向H1に変更されて第4位置64まで動かされる。なお、第3位置63は、第1内側面31A上であり、第4位置64は、隣り合う二辺である第1内側面31Aと第2内側面31Bの仮想延長線が交差する仮想交点30K(
図4参照)と同一である。
【0038】
そして、ルータRの回転軸の軌道が第4位置64に到達すると、ルータRの回転軸の軌道が第2方向H2を折り返す方向に変更されて第5位置65まで動かされ、さらに、ルータRの回転軸の軌道が第1方向H1を折り返す方向に変更されて第2位置62に戻される。これにより、第1内側面31Aと第2内側面31Bとの間に膨出縁部33Xが形成される。なお、第5位置65は、第2内側面31B上にある。
【0039】
第1キャビティ20Xの膨出縁部23Xの形成方法においても、ルータRの移動のさせ方は、上述した第2キャビティ30Xの膨出縁部33Xの形成方法と略同じであるが、
図13(B)に示すように、膨出縁部33Xよりも膨出幅Wが大きくなるように動かされる。
【0040】
本実施形態によっても、長辺の長さが長い電子部品90が搭載される第1キャビティ20Xの膨出縁部23Xの膨出幅Wを、長辺の長さが短い電子部品91が搭載される第2キャビティ30Xの膨出縁部33Xの膨出幅Wよりも大きくすることができ、長辺の長さが短い電子部品91と比較して搭載作業性が劣る電子部品90の搭載作業性を向上することができる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、膨出縁部23X,33Xを形成させる工程が、第1と第2のキャビティ20X,30Xの内側面21,31を形成させる工程に組み込まれて、ルータRを四角形の枠状に周回させる過程で内側面21,31と膨出縁部23X,33Xの両方を形成させることができるので、第1と第2のキャビティ20X,30Xの形成工程を効率化することができる。
【0042】
[他の実施形態]
(1)前記第1実施形態では、膨出縁部23,33の円弧状内面23A,33Aの円弧の中心は、第1と第2のキャビティ20,30の隣り合う二辺の仮想延長線が交差する仮想交点20K,30K(
図6参照)に配置されるが、円弧の中心は、仮想交点20K,30Kよりも第1と第2のキャビティ20,30の内側に配置されてもよく、例えば、仮想交点20K,30Kが円弧状内面23A,33A上に配置されてもよい。
【0043】
(2)前記第1実施形態では、膨出縁部23,33は、内側面21,31が形成された後で、ドリル加工によって形成されているが、切り欠き加工により形成されてもよい。この場合、膨出縁部23,33の内面は、円弧状に限られず、平坦であってもよい。
【0044】
(3)前記第2実施形態では、膨出縁部23X,33Xが形成される際に、ルータRを四角形状に移動させるが、これに限らず、例えば、円軌道を描くように移動させてもよい。
【0045】
また、以下のようにルータRを移動させてもよい。
図14に示すように、第1内側面31Aが形成された後、ルータRの回転軸の軌道を第2位置62で第1方向H1から45度外側を向く第3方向H3に変更させて、ルータRを第3方向H3に沿って往復させることで膨出縁部33Xが形成されてもよい。このとき、ルータRは、その外周が、隣り合う二辺である第1内側面31Aと第2内側面31Bの仮想延長線が交差する仮想交点30K(
図6参照)と重なる位置まで動かされてもよい。この構成によれば、第2キャビティ30Xに充填される樹脂50の厚みを一層小さくすることができる。
【0046】
(4)前記実施形態において、ビルドアップ層12が複数の層間絶縁層15と複数の導電層16が交互に積層されてなる構成であってもよい。
【0047】
(5)前記実施形態では、第1と第2のキャビティ20,20X,30,30Xは、コア基板11に形成されていたが、
図15に示す部品内蔵基板10Yのように、ビルドアップ層12に形成されていてもよい。このとき、第1と第2のキャビティ20Y,30Yは、コア基板11にビルドアップ層12を積層した後で、例えば、ビルドアップ層12の第1面11F側又は第2面11S側のソルダーレジスト層17上からルータR又はドリルD1,D2を突入させて形成することができる。この場合、キャビティ20Y,30Yの底面となる部分に予め剥離フィルムを敷設しておき、例えば、ルータRを周回させた後にルータRによる切削部分に工具等を差し込んで、ルータRの周回部分に囲まれた部分を除去することで第1と第2のキャビティ20Y,30Yを形成することができる。
【0048】
また、第1と第2のキャビティ20,20X,20Y,30,30X,30Yは、互いに厚みが異なっていてもよいし、異なる層に形成されていてもよい。
【0049】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0050】
10 部品内蔵基板
20,20X 第1キャビティ
23,23X 膨出縁部
30、30X 第2キャビティ
33,33X 膨出縁部
D ドリル
R ルータ
W,W1,W2 膨出幅