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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172404
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ドラムパッチ及び打面の保護方法
(51)【国際特許分類】
   G10D 13/10 20200101AFI20241205BHJP
   G10D 13/02 20200101ALI20241205BHJP
   G10D 13/20 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
G10D13/10 170
G10D13/02 100
G10D13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090107
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】黒木 遼
(57)【要約】
【課題】打面から剥がれることを抑制できるドラムパッチ及びそのドラムパッチを用いた打面の保護方法を提供すること。
【解決手段】シート状に形成されるドラムパッチ1がドラム100の打面106aに接着される。被打撃領域R1に向けて延びる第1スリット10及び第2スリット20がドラムパッチ1の外縁に形成されるため、かかる外縁部分において比較的柔軟な変形が可能となる。これにより、被打撃領域R1が打撃された場合に、ドラムパッチ1の外縁部分が打面106aから浮き上がるような変形を各スリット10,20によって吸収できる。よって、打面106aからドラムパッチ1が剥がれることを抑制できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムの打面に接着可能なシート状に形成されるドラムパッチであって、
打撃を受ける被打撃領域に向けて延びるスリットが外縁に形成されることを特徴とするドラムパッチ。
【請求項2】
前記被打撃領域が複数の前記スリットによって取り囲まれることを特徴とする請求項1記載のドラムパッチ。
【請求項3】
前記スリットは、第1スリットと、その第1スリットよりも長さが長い第2スリットと、から少なくとも構成されることを特徴とする請求項2記載のドラムパッチ。
【請求項4】
前記第1スリットよりも前記第2スリットの数が少ないことを特徴とする請求項3記載のドラムパッチ。
【請求項5】
前記スリットの長手方向に延びる縁には、前記スリットの幅方向における内側または外側に凸となる湾曲形状の湾曲部が形成されることを特徴とする請求項1記載のドラムパッチ。
【請求項6】
前記スリットの幅方向内側に凸となる湾曲形状の前記湾曲部と、前記スリットの幅方向外側に凸となる湾曲形状の前記湾曲部と、が前記スリットの長手方向に交互に並んでいることを特徴とする請求項5記載のドラムパッチ。
【請求項7】
前記スリットは、前記被打撃領域を放射状に取り囲むことを特徴とする請求項2記載のドラムパッチ。
【請求項8】
前記被打撃領域を取り囲む複数の貫通孔を備え、
前記被打撃領域の外周回りの方向において、前記スリットと前記貫通孔とが異なる位置に形成されることを特徴とする請求項2記載のドラムパッチ。
【請求項9】
複数の前記被打撃領域の各々が複数の前記スリットによって取り囲まれることを特徴とする請求項2記載のドラムパッチ。
【請求項10】
前記スリットの長手方向に延びる縁同士を接続する前記スリットの先端縁が円弧状であることを特徴とする請求項1記載のドラムパッチ。
【請求項11】
前記スリットの長手方向に延びる縁には、前記スリットの幅方向外側に延びるスリット状の切り込みが形成されることを特徴とする請求項1記載のドラムパッチ。
【請求項12】
前記切り込みの長手方向に延びる縁同士を接続する前記切り込みの先端縁が円弧状であることを特徴とする請求項11記載のドラムパッチ。
【請求項13】
シート状に形成されるドラムパッチを用いたドラムの打面の保護方法であって、
打撃を受ける被打撃領域に向けて延びるスリットが外縁に形成された前記ドラムパッチを前記打面に接着することを特徴とする打面の保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムパッチ及び打面の保護方法に関し、特に、打面から剥がれることを抑制できるドラムパッチ及びそのドラムパッチを用いた打面の保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラムの打面にシート状のドラムパッチを貼り付けることにより、打撃時に生じる打音を調整したり、打撃時の衝撃から打面を保護したりする技術がある(例えば、特許文献1)。この種のドラムパッチは、打面に接着剤などによって接着されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5986196号(例えば、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、打撃時の衝撃によってドラムパッチが打面から剥がれ易いという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、打面から剥がれることを抑制できるドラムパッチ及びそのドラムパッチを用いた打面の保護方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のドラムパッチは、ドラムの打面に接着可能なシート状に形成されるドラムパッチであって、打撃を受ける被打撃領域に向けて延びるスリットが外縁に形成される。
【0007】
本発明の打面の保護方法は、シート状に形成されるドラムパッチを用いたドラムの打面の保護方法であって、打撃を受ける被打撃領域に向けて延びるスリットが外縁に形成された前記ドラムパッチを前記打面に接着する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のドラムパッチが取り付けられたドラムの斜視図である。
図2】第1実施形態のドラムパッチの正面図である。
図3】第2実施形態のドラムパッチの正面図である。
図4】(a)は、第3実施形態のドラムパッチの正面図であり、(b)は、第4実施形態のドラムパッチの正面図である。
図5】(a)は、第5実施形態のドラムパッチの正面図であり、(b)は、第6実施形態のドラムパッチの正面図である。
図6】第7実施形態のドラムパッチの正面図である。
図7】第8実施形態のドラムパッチの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、第1実施形態のドラムパッチ1について説明する。図1は、第1実施形態のドラムパッチ1が取り付けられたドラム100の斜視図であり、図2は、ドラムパッチ1の正面図である。なお、図1では、ドラムパッチ1の一部を破断して図示している。
【0010】
図1に示すように、ドラムパッチ1が取り付けられるドラム100は、円筒状のシェル101の軸方向端部の開口部分をヘッド102で塞いだ打楽器(バスドラム)である。ヘッド102は、合成樹脂製のフィルムを用いて円盤状に形成され、円環状のフープ103によってシェル101に取り付けられる。
【0011】
フープ103には、その周方向の複数箇所に貫通孔(図示せず)が形成され、この貫通孔にテンションボルト104が挿入される。シェル101の外周面には複数のラグ105が設けられており、ヘッド102の外縁をフープ103に引っ掛けた状態で、テンションボルト104をラグ105にねじ込むことによってヘッド102に張力が付与される。
【0012】
ヘッド102には、図示しない貫通孔が形成され、この貫通孔に円盤状のアタッチメント106が取り付けられる。アタッチメント106は、ヘッド102への打撃時に生じる打音を低減させるための減音具であり、アタッチメント106の表面にはメッシュ製の打面106aが形成される。
【0013】
図示は省略するが、打面106aは軟質ポリウレタン製のパッド(クッション)に重ねられており、アタッチメント106には打面106aへの打撃の振動を検出するセンサ(ピエゾ素子)が取り付けられている。なお、このアタッチメント106は公知の構成が採用可能であるが、公知の構成としては、国際公開第2017/038226号の被打撃部40が例示される。
【0014】
アタッチメント106の打面106aは、フットペダル110によって打撃される。フットペダル110は、演奏者によって踏み込まれるペダル111と、そのペダル111の踏み込みによって回転するビーター112と、を備えるシングルペダル形のものである。
【0015】
ビーター112による打撃がアタッチメント106のセンサで検出されると、その検出結果に基づく楽音信号が音源(図示せず)により生成される。その楽音信号がアンプやスピーカ(共に図示せず)に出力されることにより、電子楽音がスピーカから放音される。即ち、ドラム100は、電子ドラムとして構成されている。
【0016】
アタッチメント106の打面106aには、ビーター112からの打撃を受ける位置にドラムパッチ1が貼り付けられる。ドラムパッチ1は、ビーター112の打撃による衝撃から打面106aを保護するためのフィルム(膜)状の部材であり、打面106の略全体を覆っている。
【0017】
図2に示すように、ドラムパッチ1は、正面視において円形に形成され、ドラムパッチ1の外縁には、切り込み深さが比較的浅い第1スリット10と、その第1スリット10よりも切り込み深さが深い第2スリット20と、が形成される。なお、「スリット」とは、その幅方向の寸法よりも長手方向の寸法が長い(例えば、1.5~2倍以上の)切り込みであり、後述する他の実施形態においても同様である。
【0018】
第1スリット10は、ドラムパッチ1の外周回りの方向(以下「周方向」という。)に複数(本実施形態では、32箇所に)形成される。これらの複数の第1スリット10同士の周方向における間隔は一定である。
【0019】
第2スリット20は、ドラムパッチ1の周方向に複数(本実施形態では、4か所に)形成され、これらの複数の第2スリット20同士の周方向における間隔は一定である。つまり、第2スリット20は、複数の第1スリット10を等分(4等分)する位置に形成される。
【0020】
以下の説明においては、ドラムパッチ1の正面視において各第2スリット20の縁に接する仮想円を被打撃領域R1とし、被打撃領域R1側を各スリット10,20の先端側として説明する。なお、被打撃領域R1は、ビーター112(図1参照)による打撃が想定される領域であるが、被打撃領域R1の外側が打撃されることもあり得る。
【0021】
ビーター112による打撃がドラムパッチ1の被打撃領域R1に加わると、ドラムパッチ1の被打撃領域R1が窪むように変形する。よって、例えばドラムパッチ1に各スリット10,20が形成されていない場合、被打撃領域R1が打撃されるとドラムパッチ1の全体が波打つように変形し、打面106a(図1参照)からドラムパッチ1の外縁が浮き上がって剥がれ易くなる。
【0022】
これに対して本実施形態では、被打撃領域R1に向けて延びる第1スリット10及び第2スリット20がドラムパッチ1の外縁に形成されているため、かかる外縁部分において比較的柔軟な変形が可能になっている。つまり、被打撃領域R1が打撃された場合に、ドラムパッチ1の外縁部分が打面106aから浮き上がるような変形を各スリット10,20によって吸収できる。よって、打面106aからドラムパッチ1が剥がれることを抑制できる。
【0023】
また、被打撃領域R1の全体が複数の第1スリット10及び第2スリット20によって取り囲まれているため、被打撃領域R1におけるビーター112の打撃位置に依らず、打面106aからドラムパッチ1の外縁が浮き上がるような変形をドラムパッチ1の全周にわたって抑制できる。
【0024】
また、第1スリット10及び第2スリット20の各々がドラムパッチ1の径方向に沿って延びているので、これらの各スリット10,20によって被打撃領域R1が放射状に取り囲まれる。これにより、打面106aからドラムパッチ1の外縁部分が浮き上がるような変形を、ドラムパッチ1の全周にわたって効果的に抑制できる。
【0025】
ここで、図2の拡大部分に示すように、第1スリット10の長手方向(ドラムパッチ1の径方向)に延びる一対の縁11とドラムパッチ1の外縁との交点P1(ドラムパッチ1の外縁の曲率が変化する点)同士を結んだ線分を仮想線V1とする。また、一対の縁11の先端同士を接続する第1スリット10の縁を先端縁12とすると、先端縁12の先端(仮想線V1の中点C1から最も離れている部位)と仮想線V1の中点C1とを結ぶ線分の長さが第1スリット10の長さである。
【0026】
これと同様に、第2スリット20の長手方向に延びる一対の縁21とドラムパッチ1の外縁との交点P2同士を結んだ線分を仮想線V2とすると、一対の縁21同士を接続する第2スリット20の先端縁22の先端と、仮想線V2の中点C2とを結ぶ線分の長さが第2スリット20の長さである。
【0027】
この第2スリット20の長さは、第1スリット10よりも長いので、被打撃領域R1が打撃された場合に、ドラムパッチ1の波打つような変形が第2スリット20によって吸収され易くなる。よって、打面106aからドラムパッチ1が剥がれることを抑制できる。
【0028】
ドラムパッチ1の波打つような変形を抑制するためには、比較的長い第2スリット20を多数形成することが好ましいものの、第2スリット20を多数形成すると、ビーター112からの打撃を受ける領域が減少してしまう。即ち、複数の第2スリット20に接する領域を被打撃領域R1として説明しているが、上述した通り、ビーター112によって被打撃領域R1よりも外側が打撃されることも想定される。このため、第2スリット20の本数を増やすと、被打撃領域R1よりも外側が打撃された時の衝撃が打面106aに加わり易くなってしまう。
【0029】
これに対して本実施形態では、第1スリット10の数(20本)よりも第2スリット20の数(4本)が少ないので、ドラムパッチ1が波打つ変形を第2スリット20によって抑制しつつ、ビーター112からの打撃を受ける領域を被打撃領域R1の外側に広く確保できる。よって、ドラムパッチ1が打面106aから剥がれることを抑制しつつ、ドラムパッチ1によって打面106aを効果的に保護できる。
【0030】
第1スリット10の一対の縁11は、先端縁12に近付くにつれて互いの間隔が徐々に拡大しており、これら一対の縁11同士が円弧(劣弧)状の先端縁12で接続される。また、第2スリット20の一対の縁21も同様に、円弧状の先端縁22で接続される。このように各スリット10,20の縁11,21同士を円弧状に接続することにより、被打撃領域R1への打撃時の衝撃によって各スリット10,20の先端縁12,22から亀裂が生じることを抑制できる。よって、ドラムパッチ1の耐久性を向上できる。
【0031】
上述した通り、第1スリット10の先端縁12の先端と仮想線V1の中点C1とを結ぶ線分の長さが第1スリット10の長さである。つまり、かかる線分に沿う方向が第1スリット10の長手方向であり、それとは直交する方向が第1スリット10の幅方向である。第2スリット20においても同様である。
この場合、第1スリット10の一対の縁11の各々は、第1スリット10の幅方向外側に向けて湾曲している(湾曲部が形成される)。また、第2スリット20の一対の縁21の各々には、第2スリット20の幅方向外側および内側に湾曲する湾曲部21a,21bが形成される。このように、各スリット10,20の縁11,21を湾曲させることにより、例えばそれらの縁11,21が直線状である場合に比べ、被打撃領域R1への打撃時に各スリット10,20の縁11,21が打面106aから浮き上がり難くなる。
【0032】
また、第2スリット20においては、その基端側(交点P2側)から先端側にかけて湾曲部21a,21bが交互に並んでいるので、被打撃領域R1への打撃時に第2スリット20の縁21が打面106aから浮き上がることをより効果的に抑制できる。打面106aからの縁21の浮き上がりを抑制することにより、打面106aからドラムパッチ1が剥がれることを抑制できる。
【0033】
次いで、図3を参照して第2実施形態のドラムパッチ201について説明する。図3は、第2実施形態のドラムパッチ201の正面図である。なお、上述した第1実施形態のドラムパッチ1と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する(後述する他の実施形態においても同様である)。
【0034】
図3に示すように、第2実施形態のドラムパッチ201の外縁には、複数(本実施形態では、12本)の第1スリット10と、その第1スリット10よりも切り込み深さが深い第2スリット220と、が形成される。
【0035】
第2スリット220は、ドラムパッチ201の周方向に複数(本実施形態では、4か所に)形成され、これらの複数の第2スリット220同士の周方向における間隔は一定である。つまり、第2スリット220は、複数の第1スリット10を等分(4等分)する位置に形成される。
【0036】
各第2スリット220の縁に接する仮想円を被打撃領域R2とすると、本実施形態においても、被打撃領域R2に向けて延びる第1スリット10及び第2スリット220がドラムパッチ201の外縁に形成されている。よって、被打撃領域R2が打撃された場合に、打面106a(図1参照)からドラムパッチ201の外縁部分が浮き上がるような変形を各スリット10,220によって吸収できる。
【0037】
また、被打撃領域R2が放射状に延びる複数の第1スリット10及び第2スリット220によって取り囲まれているため、打面106aからドラムパッチ1の外縁部分が浮き上がるような変形を、ドラムパッチ1の全周にわたって効果的に抑制できる。
【0038】
図3の拡大部分に示すように、第2スリット220の長手方向に延びる一対の縁221とドラムパッチ201の外縁との交点P3同士を結んだ線分を仮想線V3とすると、一対の縁221同士を接続する第2スリット220の先端縁222の先端と、仮想線V3の中点C3とを結ぶ線分の長さが第2スリット220の長さである。
【0039】
本実施形態においても、第2スリット220の長さが第1スリット10よりも長いので、被打撃領域R2が打撃された場合に、ドラムパッチ201の波打つような変形が第2スリット220に吸収され易くなる。
【0040】
また、第1スリット10の数(12本)よりも第2スリット220の数(4本)が少ないので、ドラムパッチ201が波打つ変形を第2スリット220によって抑制しつつ、ビーター112からの打撃を受ける領域を被打撃領域R2よりも外側に広く確保できる。よって、ドラムパッチ201が打面106aから剥がれることを抑制しつつ、ドラムパッチ201によって打面106aを効果的に保護できる。
【0041】
第2スリット220の一対の縁221は、先端縁222に近付くにつれて互いの間隔が徐々に小さくなる直線状に形成され、これら一対の縁221同士が円弧状の先端縁222で接続される。これにより、被打撃領域R2への打撃時の衝撃によって第2スリット220の先端縁222から亀裂が生じることを抑制できるので、ドラムパッチ201の耐久性を向上できる。
【0042】
また、第2スリット220の縁221には、第2スリット220の幅方向外側に延びる切り込み223が形成される。切り込み223は、第2スリット220の各縁221の長手方向において複数(本実施形態では、3箇所ずつ)形成される。
【0043】
各々切り込み223の長手方向(ドラムパッチ201の径方向)に延びる一対の縁223aと第2スリット220の縁221との交点P4同士を結んだ線分を仮想線V4とすると、一対の縁223a同士を接続する切り込み223の先端縁223bの先端と、仮想線V4の中点C4とを結ぶ線分の長さが切り込み223の長さである。切り込み223の長さは、第2スリット220の長さ(中点C3から先端縁222までの長さ)よりも短いスリット状に形成される。
【0044】
このような切り込み223を形成することにより、例えば第2スリット220の縁221が直線状である場合に比べ、被打撃領域R2への打撃時に第2スリット220の縁221が打面106aから浮き上がり難くなる。よって、ドラムパッチ201が打面106aから剥がれることを抑制できる。
【0045】
また、切り込み223の一対の縁223a同士が円弧状の先端縁223bで接続されるので、被打撃領域R2への打撃時の衝撃によって切り込み223の先端縁223bから亀裂が生じることを抑制できる。よって、ドラムパッチ201の耐久性を向上できる。
【0046】
次いで、図4を参照して、第3,4実施形態のドラムパッチ301,401について説明する。図4(a)は、第3実施形態のドラムパッチ301の正面図であり、図4(b)は、第4実施形態のドラムパッチ401の正面図である。
【0047】
図4(a)に示すように、第3実施形態のドラムパッチ301は、第1実施形態のドラムパッチ1(図2参照)から第2スリット20を省略すると共に、第1スリット10の本数を36本に増加させたものである。
【0048】
各第1スリット10の縁に接する仮想円を被打撃領域R3とすると、本実施形態においても、被打撃領域R3に向けて延びる第1スリット10がドラムパッチ301の外縁に形成されている。よって、被打撃領域R3が打撃された場合に、ドラムパッチ301の外縁部分が打面106a(図1参照)から浮き上がるような変形を各第1スリット10によって吸収できる。
【0049】
なお、本実施形態では、ドラムパッチ301に第1スリット10のみが形成されているが、第1スリット10を省略し、第2スリット20,220(図2及び図3参照)のみを形成することは当然可能である。
【0050】
図4(b)に示すように、第4実施形態のドラムパッチ401は、第3実施形態のドラムパッチ301に円形の貫通孔430を追加したものである。貫通孔430は、ドラムパッチ401の周方向等間隔に複数並んでおり、これら複数の貫通孔430は、第1スリット10よりも内周側(ドラムパッチ401の径方向内側)に形成される。
【0051】
各貫通孔430の縁に接する仮想円を被打撃領域R4とすると、被打撃領域R4が打撃された時の衝撃が各貫通孔430によって吸収されるので、かかる衝撃が各貫通孔430よりも外周側に伝達されることを抑制できる。
【0052】
貫通孔430は、被打撃領域R4の周方向において、第1スリット10とは異なる位置に(被打撃領域R4の径方向で第1スリット10と重ならない位置)に形成されている。即ち、被打撃領域R4の周囲に第1スリット10及び貫通孔430が交互に並んでいるので、被打撃領域R4が打撃された時の衝撃が第1スリット10同士の間の領域に伝達されることを抑制できる。これにより、ドラムパッチ401の外縁部分が打面106aから浮き上がるような変形を効果的に抑制できる。
【0053】
次いで、図5を参照して第5,6実施形態のドラムパッチ501,601について説明する。図5(a)は、第5実施形態のドラムパッチ501の正面図であり、図5(b)は、第6実施形態のドラムパッチ601の正面図である。
【0054】
図5(a)に示すように、第5実施形態のドラムパッチ501の外縁には、その周方向で等間隔に並ぶ複数(本実施形態では、6本)のスリット540が形成される。スリット540の長手方向に延びる一対の縁541は、スリット540の先端縁542に近付くにつれて互いの間隔が徐々に小さくなる直線状に形成される。
【0055】
スリット540の一対の縁541とドラムパッチ501の外縁との交点P5同士を結んだ線分を仮想線V5とすると、スリット540の先端縁542の先端と、仮想線V5の中点C5とを結ぶ線分の長さがスリット540の長さである。複数のスリット540の各々の長さは同一であるため、それら全てのスリット540に接する仮想円が被打撃領域R5である。
【0056】
本実施形態においても、被打撃領域R5に向けて延びるスリット540がドラムパッチ501の外縁に形成されるので、被打撃領域R5が打撃された場合に、ドラムパッチ501の外縁部分が打面106a(図1参照)から浮き上がるような変形を抑制できる。
【0057】
また、スリット540の一対の縁541同士が円弧状の先端縁542で接続されるので、被打撃領域R5への打撃時の衝撃によってスリット540の先端縁542から亀裂が生じることを抑制できる。よって、ドラムパッチ501の耐久性を向上できる。
【0058】
図5(b)に示すように、第6実施形態のドラムパッチ601の外縁には、その周方向で等間隔に並ぶ複数(本実施形態では、5本)のスリット640が形成される。スリット640の長手方向に延びる一対の縁641は、先端縁642に近付くにつれて互いの間隔が徐々に小さくなっている。
【0059】
スリット640の一対の縁641とドラムパッチ601の外縁との交点P6同士を結んだ線分を仮想線V6とすると、スリット640の先端縁642の先端と、仮想線V6の中点C6とを結ぶ線分の長さがスリット640の長さである。複数のスリット640の各々の長さは同一であるため、それら全てのスリット640に接する仮想円が被打撃領域R6である。
【0060】
本実施形態においても、被打撃領域R6に向けて延びるスリット640がドラムパッチ601の外縁に形成されるので、被打撃領域R6が打撃された場合に、ドラムパッチ601の外縁部分が打面106aから浮き上がるような変形を抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では、スリット640がドラムパッチ601(被打撃領域R6)の径方向に対して傾斜している。これにより、被打撃領域R6への打撃時の衝撃がドラムパッチ601の外縁側に伝達することを、1本のスリット640で効果的に(周方向において広範囲に)抑制できる。
【0062】
スリット640の一対の縁641の各々は、スリット640の幅方向内側に向けて湾曲している(湾曲部が形成される)。これにより、スリット640の縁641が直線状である場合に比べ、被打撃領域R6への打撃時にスリット640の縁641が打面106aから浮き上がることを抑制できる。
【0063】
また、スリット640の一対の縁641同士が円弧状の先端縁642で接続されるので、被打撃領域R6への打撃時の衝撃によってスリット640の先端縁642から亀裂が生じることを抑制できる。よって、ドラムパッチ601の耐久性を向上できる。
【0064】
次いで、図6を参照して、第7実施形態のドラムパッチ701について説明する。図6は、第7実施形態のドラムパッチ701の正面図である。
【0065】
図6に示すように、第7実施形態のドラムパッチ701の外形は、左右に延びる楕円形に形成される。ドラムパッチ701の外縁には、その周方向に並ぶ複数(本実施形態では、16本)のスリット740が形成される。スリット740の長手方向に延びる一対の縁741は、先端縁742に近付くにつれて互いの間隔が徐々に小さくなっている。
【0066】
スリット740の一対の縁741とドラムパッチ701の外縁との交点P7同士を結んだ線分を仮想線V7とすると、スリット740の先端縁742の先端と、仮想線V7の中点C7とを結ぶ線分の長さがスリット740の長さである。
【0067】
複数のスリット740のうち、一部のスリット740が他のスリット740とは異なる長さに設定されているが、3以上のスリット740の先端縁742に接し、且つ他のスリット740に交わらない仮想円のうち、最も直径が大きい仮想円が被打撃領域R7である。被打撃領域R7は、互いの一部が重なり合うようにしてドラムパッチ701の中心を挟んで左右一対に形成される。即ち、本実施形態では、ビーター112(図1参照)が2つのツインペダル形のフットペダル110による打撃から打面106aを保護すること想定しており、2つのビーター112によって打撃される位置に被打撃領域R7が配置される。
【0068】
ドラムパッチ701の外縁には、一対の被撃領域R7の各々に向けて延びる複数のスリット740が形成されるので、被打撃領域R7が打撃された場合に、ドラムパッチ701の外縁部分が打面106aから浮き上がるような変形を抑制できる。また、想定される一対の被打撃領域R7の各々に沿うようにしてスリット740が配置されるので、被打撃領域R7を広く確保できる。
【0069】
また、スリット740の一対の縁741同士が円弧(優弧)状の先端縁742で接続されるので、被打撃領域R7への打撃時の衝撃によってスリット740の先端縁742から亀裂が生じることを抑制できる。よって、ドラムパッチ701の耐久性を向上できる。
【0070】
次いで、図7を参照して、第8実施形態のドラムパッチ801について説明する。図7は、第8実施形態のドラムパッチ801の正面図である。
【0071】
図7に示すように、第8実施形態のドラムパッチ801は、その中央部分を構成する本体部801aと、その本体部801aから左右に張り出す張出部801bと、を備え、これらの各部801a,801bが一体に形成される。
【0072】
本体部801aは、上下に延びる楕円形に形成され、左右の張出部801bは、本体部801aから左右に延びる半楕円形に形成される。即ち、ドラムパッチ801の外形は、複数の楕円を重ね合わせた形状になっている。
【0073】
本体部801a及び張出部801bの外縁には、その周方向に並ぶ複数(本実施形態では、本体部801aに10本、各張出部801bに7本ずつの合計24本)のスリット740が形成される。スリット740は、上述した第7実施形態のスリット740(図6参照)と同一の形状である。
【0074】
複数のスリット740のうち、一部のスリット740が他のスリット740とは異なる長さに設定されているが、3以上のスリット740の先端縁742に接し、且つ他のスリット740に交わらない仮想円のうち、最も直径が大きい仮想円が第1の被打撃領域R8aである。この第1の被打撃領域R8aは、本体部801aに形成されるものである。また、第1の被打撃領域R8aに接していないスリット740のうちの3以上のスリット740の先端縁742に接し、且つ他のスリット740に交わらない仮想円を描いた場合に、最も直径の大きい仮想円が第2の被打撃領域R8bである。この第2の被打撃領域R8bは、一対の張出部801bの各々に1箇所ずつ形成される。
【0075】
即ち、本実施形態では、ビーター112(図1参照)が1つのシングルペダル形のフットペダル110を用いる場合には、本体部801aの第1の被打撃領域R8aで打撃を受ける一方、ビーター112が2つのツインペダル形のフットペダル110を用いる場合には、一対の張出部801bの第2の被打撃領域R8bで打撃を受けることを想定している。
【0076】
ドラムパッチ801(本体部801a及び張出部801b)の外縁には、3つの被打撃領域R8a,R8bの各々に向けて延びる複数のスリット740が形成されるので、被打撃領域R8a,R8bが打撃された場合に、ドラムパッチ801の外縁部分が打面106aから浮き上がるような変形を抑制できる。また、想定される3つの被打撃領域R8a,R8bの各々に沿うようにしてスリット740が配置されるので、被打撃領域R8a,R8bを広く確保できる。
【0077】
また、本体部801aの外縁と張出部801bの外縁との交点P8にスリット740が形成されるので、被打撃領域R8a,R8bへの打撃時の衝撃によって交点P8から亀裂が生じることを抑制できる。よって、ドラムパッチ801の耐久性を向上できる。
【0078】
以上、上記実施形態に基づき説明をしたが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0079】
上記各実施形態のドラムパッチ1,201,301,401,501,601,701,801(以下、これらを併せて「ドラムパッチ1~801」という。)の一部または全部を、他の実施形態の一部または全部と組み合わせてドラムパッチを構成しても良い。即ち、例えば第1スリット10、第2スリット20,220、貫通孔430、又はスリット540,640,740の一部または全部を1つのドラムパッチに形成しても良い。
【0080】
上記各実施形態では、ドラム100(バスドラム)に取り付けられたアタッチメント106の打面106aにドラムパッチ1~801が接着される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、アタッチメント106を有さないドラム100のヘッド102(打面)にドラムパッチ1~801を直接貼り付けても良いし、スネアやタムの打面にドラムパッチ1~801を貼り付けても良い。即ち、ドラムを模した電子打楽器の打面にドラムパッチ1~801を貼り付けても良いし、アコースティックのドラムの打面にドラムパッチ1~801を貼り付けても良い。
【0081】
上記各実施形態では、演奏者によって打撃される打面106aの全体がドラムパッチ1~801で覆われる場合を説明したが、打面106aの一部の領域をドラムパッチ1~801で覆う構成でも良い。
【0082】
上記各実施形態では、ドラムパッチ1~801の外形が円形(楕円形)である場合や、楕円形を組み合わせた形状である場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ドラムパッチ1~801の外形は、多角形(例えば、ひし形や長方形)であっても良いし、円形や多角形を組み合わせた形状でも良い。即ち、打面106aを保護できるものであれば、ドラムパッチ1~801の外形は適宜設定できる。
【0083】
上記各実施形態では説明を省略したが、ドラムパッチ1~801は、打面106aに接着される第1の接着層と、その第1の接着層に重ねられる樹脂フィルムと、その樹脂フィルムに重ねられる第2の接着層と、その第2の接着層に重ねられる布と、から構成されている。第1の接着層は、基材(フィルムや布)に粘着剤が保持された両面テープであり、第2の接着層は、そのような基材を有さない両面テープである。
【0084】
但し、ドラムパッチ1~801は、上記のような材料を積層したものに限定されない。例えば、基材を有さない両面テープを用いて第1の接着層を形成しても良いし、第1の接着層と同様の基材を有する両面テープを用いて第2の接着層を形成しても良い。また、1層の織布、不織布、又は樹脂フィルムから構成されるドラムパッチ1~801を両面テープによって打面106aに接着する構成でも良い。即ち、打面106aを保護できるものであれば、ドラムパッチ1~801の材質は適宜設定できる。
【0085】
上記各実施形態では、第1スリット10、第2スリット20,220、及びスリット540の長手方向がドラムパッチの径方向に沿う場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、それらの各スリット10,20,220,540を、第6実施形態のスリット640のようにドラムパッチ(被打撃領域)の径方向に対して傾斜させても良い。
【0086】
上記各実施形態では、第1スリット10、第2スリット20,220、貫通孔430、及びスリット540,640,740がドラムパッチ1~801に複数形成される場合を説明したが、それらのスリットまたは貫通孔の数は1つであっても良い。
【0087】
上記各実施形態では、例えば第1スリット10同士の長さや間隔が一定である場合を説明したが、第1スリット10同士の長さや間隔は異なっていても良い。第2スリット20,220やスリット540,640においても同様である。
【0088】
上記第1実施形態では、第2スリット20の縁21に湾曲部21a,21bが形成される場合を説明し、第2実施形態では、第2スリット220に切り込み223が形成される場合を説明したが、このような湾曲部や切り込みを第1スリット10やスリット540,640,740に形成しても良いし、湾曲部21a,21bや切り込み223を省略する(例えば、各スリット10,20の縁11,21を直線状に形成する)構成でも良い。
【0089】
上記各実施形態では、第1スリット10、第2スリット20,220、切り込み223、及びスリット540,640,740の先端縁12,22,223b,542,642,742が円弧状である場合を説明したが、かかる先端縁12,22,223b,542,642,742が鋭角になっていても良い。
【0090】
上記第1,2実施形態では、第1スリット10よりも第2スリット20,220の数が少ない場合を説明したが、第1スリット10と第2スリット20,220との数が同一であっても良いし、第1スリット10よりも第2スリット20,220の数を多くしても良い。
【0091】
上記第4実施形態では、貫通孔430が円形である場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、貫通孔430は、多角形状であっても良いし、長穴であっても良い。即ち、ドラムパッチを貫通する孔であれば、貫通孔430の形状は適宜設定できる。
【符号の説明】
【0092】
1,201,301,401,501,601,701,801 ドラムパッチ
10 第1スリット(スリット)
11 スリットの縁
12 スリットの先端縁
20,220 第2スリット(スリット)
21,221 スリットの縁
21a,21b 湾曲部
22,222 スリットの先端縁
223 切り込み
223a 切り込みの縁
223b 切り込みの先端縁
430 貫通孔
540,640,740 スリット
541,741 スリットの縁
641 スリットの縁(湾曲部)
542,642,742 スリットの先端縁
100 ドラム
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8a,R8b 被打撃領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7