IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特開2024-172405画像処理装置、画像処理方法、および、画像処理プログラム
<>
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、および、画像処理プログラム 図1
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、および、画像処理プログラム 図2
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、および、画像処理プログラム 図3
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、および、画像処理プログラム 図4
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、および、画像処理プログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172405
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、および、画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241205BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H04N1/00 912
H04N1/00 127Z
G06F3/12 312
G06F3/12 340
G06F3/12 385
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090109
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 啓史
【テーマコード(参考)】
5C062
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AA35
5C062AB38
5C062AB40
5C062AC24
5C062AC25
5C062AC38
5C062AC58
5C062AC60
5C062AF07
(57)【要約】
【課題】印刷ジョブのRIP処理を、ネットワークを介して接続される複数の画像処理装置で分散処理する場合に、ネットワークの通信速度が制約となるパフォーマンス低下を防ぐ。
【解決手段】ページ単位に分割された印刷ジョブのRIP処理を、自身の画像処理装置10およびネットワーク接続される他の画像処理装置に分散して処理する画像処理装置10は、他の画像処理装置における印刷ジョブの各ページのRIP処理後の画像状態を予測し、各ページのRIP処理後の画像状態に基づき、各ページのRIP処理を、自身の画像処理装置または他の画像処理装置に割り当てるページ割当部120を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ページ単位に分割された印刷ジョブのRIP(Raster Image Processor)処理を、自身の画像処理装置およびネットワーク接続される他の画像処理装置に分散して処理する画像処理装置であって、
前記他の画像処理装置における前記印刷ジョブの各ページのRIP処理後の画像状態を予測し、各前記ページのRIP処理後の画像状態に基づき、各前記ページのRIP処理を、前記自身の画像処理装置または前記他の画像処理装置に割り当てるページ割当部
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記ページのRIP処理後の画像状態は、RIP処理後の画像を圧縮する際の圧縮率である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ページのRIP処理後の画像状態は、RIP処理後の画像を圧縮して得られる圧縮データのデータサイズである
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ページのRIP処理後の画像状態は、各ページを構成するオブジェクトの属性情報、解像度、オブジェクトの数量を含むオブジェクト構成情報に基づき予測される
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ページ割当部は、前記他の画像処理装置との間のネットワーク通信速度を計測し、計測した前記ネットワーク通信速度と、各前記ページのRIP処理後の画像状態とに基づき、各前記ページのRIP処理を、前記自身の画像処理装置または前記他の画像処理装置に割り当てる
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ページ割当部は、前記他の画像処理装置における前記印刷ジョブの各ページのRIP処理にかかる時間をRIP処理予測時間として算出し、前記ネットワーク通信速度と前記ページのRIP処理後の画像状態と、算出した前記ページのRIP処理予測時間とに基づき、印刷機へのRIP処理後の画像送信タイミングに間に合うページを、前記他の画像処理装置に割り当てる
請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ページ割当部は、RIP処理後の画像を圧縮する際の圧縮率が高いページから順に、前記印刷機へのRIP処理後の画像送信タイミングに間に合うか否かを判定し、前記印刷機へのRIP処理後の画像送信タイミングに間に合うならば、当該ページを前記他の画像処理装置に割り当てる
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記ページ割当部は、前記自身の画像処理装置および前記他の画像処理装置の演算能力の比率に応じて、前記他の画像処理装置に割り当てるページ数の上限値を決定する
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記ページ割当部は、前記印刷ジョブの全ページを前記自身の画像処理装置で処理した場合のRIP処理の処理時間において、前記他の画像処理装置が当該他の画像処理装置のネットワーク通信速度で処理可能なデータサイズを、前記他の画像処理装置が処理できるRIP処理後の圧縮データのデータサイズの合計値の上限値として決定する
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項10】
ページ単位に分割された印刷ジョブのRIP処理を、自身の画像処理装置およびネットワーク接続される他の画像処理装置に分散して処理する画像処理装置の画像処理方法であって、
前記画像処理装置は、
前記他の画像処理装置における前記印刷ジョブの各ページのRIP処理後の画像状態を予測する工程と、
各前記ページのRIP処理後の画像状態に基づき、各前記ページのRIP処理を、前記自身の画像処理装置または前記他の画像処理装置に割り当てる工程と、
を実行する画像処理方法。
【請求項11】
ページ単位に分割された印刷ジョブのRIP処理を、自身の画像処理装置およびネットワーク接続される他の画像処理装置に分散して処理する画像処理装置としてのコンピュータに、
前記他の画像処理装置における前記印刷ジョブの各ページのRIP処理後の画像状態を予測する手順、
各前記ページのRIP処理後の画像状態に基づき、各前記ページのRIP処理を、前記自身の画像処理装置または前記他の画像処理装置に割り当てる手順、
を実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、および、画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷ジョブのRIP(Raster Image Processor)処理を行う画像処理装置(コントローラ)は、印刷機の印刷制御を行う。ここで、RIP処理とは、画像データ(例えば、PDFデータ)を、印刷機が印刷可能なビットマップデータに変換する処理である。
【0003】
大サイズの用紙に対応した産業用デジタル印刷機では、扱う印刷ジョブの画像データサイズも非常に大きく、例として、最大用紙サイズB2に対応した印刷機においては、印刷ジョブ1ページ当たりのRIP処理後の画像データサイズが約4GBにもなる。
【0004】
そこで、印刷ジョブのRIP処理を、所定の処理単位に分割し、分散処理する技術が開示されている(例えば、特許文献1等)。特許文献1に記載の技術では、所定の処理単位に分割したRIP処理について、各RIP処理の処理負荷を予測し、予測した処理負荷と、分散処理を担当する複数のラスタライズ部(ラスタライズ装置)の処理状態に基づき、分割した各RIP処理の終了時間を予測する。そして、各RIP処理の処理終了時間の差が小さくなるように、RIP処理の割り当てを行うことで、効率的な印刷ジョブの分散処理を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-093984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いて、自身の画像処理装置およびネットワークを介して接続される複数の画像処理装置により、RIPの分散処理を実現する場合、RIP処理後の画像のネットワークを介したデータ転送の速度がボトルネックとなり、分散処理によって十分なパフォーマンス向上が見込めないケースが発生する。
【0007】
具体的には、RIP処理後の画像の圧縮率が低いページのRIP処理が外部の画像処理装置に割り当てられ、大サイズのデータをネットワーク経由で転送しなければならない場合、分散処理により期待されるほどのパフォーマンスがでない、もしくは、逆に分散処理を実行することによりパフォーマンスが低下することがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、印刷ジョブのRIP処理を、ネットワークを介して接続される複数の画像処理装置で分散処理する場合に、ネットワークの通信速度が制約となるパフォーマンス低下を防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
【0010】
(1)ページ単位に分割された印刷ジョブのRIP(Raster Image Processor)処理を、自身の画像処理装置およびネットワーク接続される他の画像処理装置に分散して処理する画像処理装置であって、 前記他の画像処理装置における前記印刷ジョブの各ページのRIP処理後の画像状態を予測し、各前記ページのRIP処理後の画像状態に基づき、各前記ページのRIP処理を、前記自身の画像処理装置または前記他の画像処理装置に割り当てるページ割当部を備える画像処理装置。
【0011】
(2)前記ページのRIP処理後の画像状態は、RIP処理後の画像を圧縮する際の圧縮率である、上記(1)に記載の画像処理装置。
【0012】
(3)前記ページのRIP処理後の画像状態は、RIP処理後の画像を圧縮して得られる圧縮データのデータサイズである、上記(1)に記載の画像処理装置。
【0013】
(4)前記ページのRIP処理後の画像状態は、各ページを構成するオブジェクトの属性情報、解像度、オブジェクトの数量を含むオブジェクト構成情報に基づき予測される、上記(1)に記載の画像処理装置。
【0014】
(5)前記ページ割当部は、前記他の画像処理装置との間のネットワーク通信速度を計測し、計測した前記ネットワーク通信速度と、各前記ページのRIP処理後の画像状態とに基づき、各前記ページのRIP処理を、前記自身の画像処理装置または前記他の画像処理装置に割り当てる、上記(1)に記載の画像処理装置。
【0015】
(6)前記ページ割当部は、前記他の画像処理装置における前記印刷ジョブの各ページのRIP処理にかかる時間をRIP処理予測時間として算出し、前記ネットワーク通信速度と前記ページのRIP処理後の画像状態と、算出した前記ページのRIP処理予測時間とに基づき、印刷機へのRIP処理後の画像送信タイミングに間に合うページを、前記他の画像処理装置に割り当てる、上記(5)に記載の画像処理装置。
【0016】
(7)前記ページ割当部は、RIP処理後の画像を圧縮する際の圧縮率が高いページから順に、前記印刷機へのRIP処理後の画像送信タイミングに間に合うか否かを判定し、前記印刷機へのRIP処理後の画像送信タイミングに間に合うならば、当該ページを前記他の画像処理装置に割り当てる、上記(6)に記載の画像処理装置。
【0017】
(8)前記ページ割当部は、前記自身の画像処理装置および前記他の画像処理装置の演算能力の比率に応じて、前記他の画像処理装置に割り当てるページ数の上限値を決定する、上記(6)に記載の画像処理装置。
【0018】
(9)前記ページ割当部は、前記印刷ジョブの全ページを前記自身の画像処理装置で処理した場合のRIP処理の処理時間において、前記他の画像処理装置が当該他の画像処理装置のネットワーク通信速度で処理可能なデータサイズを、前記他の画像処理装置が処理できるRIP処理後の圧縮データのデータサイズの合計値の上限値として決定する、上記(6)に記載の画像処理装置。
【0019】
(10)ページ単位に分割された印刷ジョブのRIP処理を、自身の画像処理装置およびネットワーク接続される他の画像処理装置に分散して処理する画像処理装置の画像処理方法であって、前記画像処理装置は、前記他の画像処理装置における前記印刷ジョブの各ページのRIP処理後の画像状態を予測する工程と、各前記ページのRIP処理後の画像状態に基づき、各前記ページのRIP処理を、前記自身の画像処理装置または前記他の画像処理装置に割り当てる工程と、を実行する画像処理方法。
【0020】
(11)ページ単位に分割された印刷ジョブのRIP処理を、自身の画像処理装置およびネットワーク接続される他の画像処理装置に分散して処理する画像処理装置としてのコンピュータに、前記他の画像処理装置における前記印刷ジョブの各ページのRIP処理後の画像状態を予測する手順、各前記ページのRIP処理後の画像状態に基づき、各前記ページのRIP処理を、前記自身の画像処理装置または前記他の画像処理装置に割り当てる手順、を実行させるための画像処理プログラム。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、印刷ジョブのRIP処理を、ネットワークを介して接続される複数の画像処理装置で分散処理する場合に、ネットワークの通信速度が制約となるパフォーマンス低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る画像処理装置を含む印刷システムの全体構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る画像処理装置を含む印刷システムの全体構成の他の例を示す図である。
図3】本実施形態に係る画像処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
図4】本実施形態に係る画像処理装置を含む印刷システムの全体の処理の流れを示すシーケンス図である。
図5】本実施形態に係る画像処理装置が実行するページ割当処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称する。)を、図面を参照して説明する。但し、本明細書の全図において機能が対応する構成部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置10を含む印刷システム1000の全体構成を示す図である。
印刷システム1000は、印刷機20と、その印刷機20に接続される画像処理装置10と、画像処理装置10にネットワークを介して接続される複数の画像処理装置10a,10b,10cとを備える。
【0025】
画像処理装置10は、印刷ジョブの保持、管理、実行を行うコントローラである。この画像処理装置10は、RIP処理を実行する機能(後記するRIP処理部130)を備えるとともに、印刷ジョブのRIP処理時において、印刷ジョブの分割、各画像処理装置10a,10b,10cへのRIP処理の割り当て、印刷機20へのRIP処理後の画像の送信などのシステム全体の制御を行う。
印刷機20は、自身と接続される画像処理装置10からRIP処理後の画像を受け取り、印刷する装置である。
【0026】
各画像処理装置10a,10b,10cは、RIP処理を実行する機能(RIP処理部130)を備え、画像処理装置10からのRIP処理要求に従い、印刷ジョブの受信、RIP処理およびRIP後の画像データの圧縮を行い、圧縮した画像データを画像処理装置10へ送信する。この画像処理装置10a,10b,10cは、マスタノードとなる画像処理装置10に対する拡張ノードであり、図1に示す3台に限定されず、1台以上であればよい。
【0027】
図2は、本実施形態に係る画像処理装置10を含む印刷システム1000(1000a)の全体構成の他の例を示す図である。
印刷システム1000aは、図2で示すように、ネットワークハブ50を介して接続される複数の画像処理装置10(10A,10B,10C)とそれらに接続される印刷機20(20A,20B,20C)とを備える。
【0028】
印刷システム1000aでは、各画像処理装置10(10A,10B,10C)がRIP処理を実行する機能(RIP処理部130)を備えるとともに、印刷ジョブの保持、管理、実行を行う機能を備える。そして、印刷ジョブを印刷する印刷機20に接続する画像処理装置10(10A,10B,10C)のいずれかがマスタノードとなる。マスタノードの画像処理装置10以外の他の画像処理装置10は、拡張ノードとして、マスタノードからのRIP処理要求に従い、印刷ジョブの受信、RIP処理およびRIP後の画像データの圧縮を行い、圧縮した画像データをマスタノードとなる画像処理装置10へ送信する。
【0029】
なお、以下の説明においては、図1で示す印刷システム1000を前提として説明するが、図2の印刷システム1000aにおいても、各画像処理装置10(10A,10B,10C)のいずれかがマスタノードとなることにより、同様の処理を行う。
【0030】
≪画像処理装置≫
次に、本実施形態に係る画像処理装置10について、詳細に説明する。
本実施形態に係る画像処理装置10は、印刷ジョブをページ単位に分割し、分割された各ページのRIP処理を、ネットワークを介して接続される複数の画像処理装置10a,10b,10cを用いて分散処理する。画像処理装置10は、印刷ジョブの各ページについての画像処理装置10a,10b,10cへの割り当てに際し、ネットワーク接続される画像処理装置10a,10b,10cとのネットワーク通信速度の計測、および、印刷ジョブの各ページのRIP処理後の画像状態(圧縮率、データサイズ)の予測に基づき、分散処理における最適なページ割り当てを決定する。
【0031】
図3は、本実施形態に係る画像処理装置10の構成を示す機能ブロック図である。
この画像処理装置10は、図3で示すように、制御部100と、入出力部101と、記憶部102とを備える。画像処理装置10は、不図示のプロセッサと、記憶部102とを備えるコンピュータであり、不図示のプログラム(画像処理プログラム)を実行することで各機能部を具現化する。
【0032】
入出力部101は、他の装置(印刷機20や、他の画像処理装置10a,10b,10c)との間の情報についての入出力を行う。この入出力部101は、通信回線を介して情報の送受信を行う通信インタフェース(ネットワークインタフェース)と、印刷機20や、不図示のキーボード等の入力装置、モニタ等の出力装置との間で情報の入出力を行う入出力インタフェースとから構成される。
【0033】
記憶部102は、SSD(Solid State Drive)や、ハードディスク、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等により構成される。
この記憶部102には、制御部100の各機能部を実行させるためのプログラム(画像処理プログラム)や、制御部100の処理に必要な情報が一時的に記憶される。
なお、記憶部102には、画像処理装置10と接続される印刷機20により印刷するデータである、印刷ジョブ300が格納される。また、後記する圧縮率予測値の算出に用いる「圧縮率履歴情報」や、RIP処理予測時間の算出に用いる「RIP処理時間履歴情報」が記憶されていてもよい(詳細は後記)。
【0034】
制御部100は、画像処理装置10が実行する処理の全般を司り、ページ分割部110と、ページ割当部120と、RIP処理部130と、画像集約部140とを含んで構成される。
【0035】
ページ分割部110は、記憶部102に記憶された印刷ジョブ300を読み出し、印刷ジョブ300をページ単位に分割する。
【0036】
ページ割当部120は、他の画像処理装置10a,10b,10cにおける印刷ジョブの各ページのRIP処理後の画像状態(圧縮率、データサイズ)を予測し、予測したRIP処理後の画像状態に基づき、分割された各ページのジョブデータを、自身を含む画像処理装置10,10a,10b,10cのいずれで処理するかを決定する。そして、ページ割当部120は、決定した画像処理装置10および画像処理装置10a,10b,10cのいずれかのRIP処理部130へジョブデータを送信する。
このページ割当部120は、各RIP処理部130へのページ割当制御を実行するに際し、事前処理として、(1)印刷ジョブの各ページの圧縮率予測値の決定処理、(2)印刷ジョブの各ページのRIP処理時間予測処理、(3)画像処理装置10a,10b,10cとのネットワーク通信速度の計測処理、を実行する(詳細は後記)。
このページ割当部120は、図3で示すように、圧縮率予測部121、RIP処理時間予測部122、通信速度計測部123、および、ページ割当実行部124を備える。
【0037】
圧縮率予測部121は、印刷ジョブ300の各ページについてのRIP処理後の圧縮率を予測する。
具体的には、圧縮率予測部121は、その印刷ジョブ300のPreflight処理(印刷工程や指定可能な各種条件に対する妥当性を事前に判定する処理)により、各ページを構成するオブジェクトの属性情報、解像度、オブジェクトの数量を含む情報(以下、「オブジェクト構成情報」と称する。)を取得する。
画像処理装置10は、予め、このオブジェクト構成情報と、RIP処理後の圧縮率との関連を示す情報(以下、「圧縮率履歴情報」と称する。)を、過去のデータに基づき作成しておく。そして、圧縮率予測部121は、印刷ジョブ300の各ページの解析により求めたページを構成するオブジェクトの属性情報、解像度、オブジェクト数などに基づき、圧縮率履歴情報を参照して、各ページのRIP処理後の圧縮率予測値を決定する。
なお、このRIP処理後の圧縮率予測値と、各ページのジョブデータのデータサイズに基づき、RIP処理後の画像データの予測圧縮データサイズ(データサイズ)が算出される。
また、圧縮率履歴情報は、画像処理装置10の記憶部102に予め記憶しておいてもよいし、外部装置に圧縮率履歴情報を備えさせ、画像処理装置10の圧縮率予測部121が、問い合わせるようにしてもよい。
【0038】
RIP処理時間予測部122は、印刷ジョブ300の各ページについて、RIP処理にかかる時間を、RIP処理予測時間として決定する。
画像処理装置10は、予め、ページを構成するオブジェクトの属性情報、解像度、オブジェクトの数量を含む情報(オブジェクト構成情報)と、所定の基準とするCPU処理性能におけるページのRIP処理時間との関係を示す情報(以下、「RIP処理時間履歴情報」と称する。)を、過去のデータに基づき作成しておく。そして、RIP処理時間予測部122は、Preflight処理により得られた、オブジェクト構成情報に基づき、RIP処理時間履歴情報を参照して、各ページのRIP処理予測時間を決定する。
なお、RIP処理時間履歴情報は、画像処理装置10の記憶部102に予め記憶しておいてもよいし、外部装置にRIP処理時間履歴情報を備えさせ、画像処理装置10のRIP処理時間予測部122が、問い合わせるようにしてもよい。
【0039】
通信速度計測部123は、例えば、ping,iperf、netperf等のコマンドを用いた既存の遅延測定ツールを用いて、他の画像処理装置10a,10b,10cとの間のそれぞれの通信速度(遅延時間)を計測する。このとき、通信速度計測部123は、例えば複数段階のデータサイズの試験用ファイルを用いて遅延時間を計測しておき、各画像処理装置10a,10b,10cとのデータサイズに応じた遅延時間を算出できるようにしておく。
この通信速度計測部123による通信速度(遅延時間)の計測は、所定の時間間隔で行われてもよいし、ページ割当部120がページ割当処理を実行する直前に行うようにしてもよい。
【0040】
ページ割当実行部124は、印刷ジョブ300の各ページについて、各画像処理装置(10,10a,10b,10c)への割り当てを行う。なお、ここでは、印刷機20に接続される画像処理装置10を「マスタノード」と称し、画像処理装置10から印刷ジョブ200の各ページに割り当てを受け取る画像処理装置(10a,10b,10c)を、「拡張ノード」と称して説明する。
【0041】
ページ割当実行部124は、ページ割当処理に際して、まず、拡張ノードへの割当ページ数の上限値、および、データサイズの上限値を決定する。
【0042】
拡張ノードへの割当ページ数の上限値は、マスタノードと各拡張ノードの演算処理能力の比率により決定する。例えば、マスタノードと各拡張ノードの演算処理能力が同じであり、マスタノード1台と拡張ノード2台の構成において、ページ数割り当ての比率は、1対1対1とする。そして、印刷ジョブ全体のページ数から、各拡張ノードにおける割当ページ数上限値を決定する。
【0043】
データサイズの上限値は、各拡張ノードへ割り当てるページのRIP処理後の予測圧縮データサイズの合計値を上限として規定する。
このデータサイズの上限値は、印刷ジョブ300の全ページをマスタノードで処理した場合のRIP処理の予測時間をN秒とした場合に、予め計測した拡張ノードとのネットワーク通信速度における、データ転送時間がN秒以下となるデータサイズを(各拡張ノードの)上限値に設定する。
拡張ノードへ割り当てるページの予測圧縮データサイズの合計値を、この上限値以下に制限することにより印刷ジョブ300の全ページをマスタノードで処理した場合の処理時間N秒以上に、拡張ノードからマスタノードへのRIP後画像データの転送に時間がかかってしまうことを防止できる。
【0044】
ページ割当実行部124は、印刷ジョブ300の全ページ中から圧縮率予測値の最も高い未割当ページから順にページを選択し、選択したページを拡張ノードに割り当てた場合に、ネットワーク通信速度およびRIP処理予測時間から算出されるRIP済画像の画像集約部150への拡張ノードの送信タイミングが、画像集約部150による印刷機20への印刷データ(RIP処理後の画像データ)の送信タイミングに間に合う時間か否かを計算する。そして、ページ割当実行部124は、間に合うと判断した場合に、選択したページを拡張ノードに割り当て、間に合わないと判断した場合に、選択したページをマスタノードに割り当てる。
ページ割当実行部124は、ページを割り当てると、ネットワークを介して接続される拡張ノードへの割当ページ数、RIP処理後の圧縮データサイズの合計値のいずれかが、上限値に達しているか否かを判別する。そして、ページ割当実行部124は、上限値に達していない場合、拡張ノードへのページの割当処理を繰り返し、上限値に達した場合には、残った未割り当てのページのすべてをマスタノードの割り当てる。
【0045】
RIP処理部130は、ページ割当部120が割り当てたページについての、RIP処理を実行する。
なお、拡張ノードのRIP処理部130は、マスタノードから印刷ジョブ300の該当ページのジョブデータを受信すると、RIP処理を実行する。そして、拡張ノードのRIP処理部130は、RIP処理後の画像データを圧縮処理した上で、マスタノードの画像集約部140へ送信する。
【0046】
画像集約部140は、自身のRIP処理部130および各拡張ノードのRIP処理部130から、RIP処理後の画像データを取得し、当該RIP処理後の画像データを、適切な順番(ページ順)およびタイミングで、印刷機20へ出力する。
【0047】
<処理の流れ>
次に、画像処理装置10を含む印刷システム1000の処理の流れについて説明する。
図4は、本実施形態に係る画像処理装置10を含む印刷システム1000の全体の処理の流れを示すシーケンス図である。
ここでは、図1で示す印刷システム1000において、印刷機20に接続される画像処理装置10を「マスタノード」と称し、画像処理装置10から印刷ジョブ200の各ページの割り当てを受け取る画像処理装置(10a,10b,10c)を、「拡張ノード」と称して説明する。
【0048】
まず、画像処理装置10(マスタノード)のページ分割部110は、記憶部102に記憶された印刷ジョブ300を読み出し、ページ単位に分割する(ステップS1)。
【0049】
続いて、マスタノードのページ割当部120(圧縮率予測部121)は、印刷ジョブ300の各ページについて、Preflight処理を実行することにより、各ページを構成するオブジェクトの属性情報、解像度、オブジェクト数などの情報(オブジェクト構成情報)を取得する。
そして、圧縮率予測部121は、オブジェクト構成情報とRIP処理後の画像の圧縮率との関係を示す圧縮率履歴情報を参照して、各ページの圧縮率予測値を算出する(ステップS2)。なお、圧縮率予測部121は、各ページのデータサイズと算出した圧縮率予測値とから、RIP処理後の画像データの予測圧縮データサイズを算出する。
【0050】
次に、ページ割当部120(RIP処理時間予測部122)は、オブジェクト構成情報と、所定の基準とするCPU処理性能におけるページのRIP処理時間との関係を示すRIP処理時間履歴情報を参照して、各ページのRIP処理予測時間を算出する(ステップS3)。
【0051】
また、ページ割当部120(通信速度計測部123)は、他の画像処理装置10a,10b,10c(拡張ノード)との間の通信速度(遅延)を計測する(ステップS4)。
なお、このマスタノードと拡張ノードとの間の通信速度の計測は、予め所定の時間間隔で行った情報を取得してもよい。
【0052】
そして、マスタノードのページ割当部120(ページ割当実行部124)は、印刷ジョブ300の各ページについて、各画像処理装置(マスタノードおよび各拡張ノード)への割り当てを行う(ステップS5)。
ページ割当実行部124は、圧縮率予測値の最も高い未割当ページから順に選択し、印刷機20へのRIP処理後の画像の送信タイミングが間に合うと判断した場合に拡張ノードに割り当て、間に合わないと判断した場合にマスタノードに割り当てる(詳細は、図5参照)。
【0053】
そして、ページ割当実行部124は、各拡張ノードへの割り当てが決定したページのジョブデータを、拡張ノードのRIP処理部130へ送信する(ステップS6)。また、ページ割当部120は、自身(マスタノード)への割り当てが決定したページのジョブデータを、自身のRIP処理部130へ出力する。
【0054】
拡張ノードのRIP処理部130は、受信した各ページのジョブデータを、順次RIP処理し(ステップS7)、RIP処理後の画像データを圧縮して、マスタノードの画像集約部140へ送信する(ステップS8)。
【0055】
一方、マスタノードのRIP処理部130は、自身に割り当てられたページのジョブデータのRIP処理を実行する(ステップS9)。そして、RIP処理後の画像データを、画像集約部140に出力する。
【0056】
続いて、マスタノードの画像集約部140は、自身のRIP処理部130および各拡張ノードのRIP処理部130から、RIP処理後の画像データを取得し、適切な順番(ページ順)およびタイミングで、印刷機20へ出力する(ステップS10)。これにより、印刷機20による、印刷ジョブ300の印刷が実行される。
【0057】
<ページ割当処理>
次に、画像処理装置10のページ割当実行部124が実行するページ割当処理について詳細に説明する。
図5は、本実施形態に係る画像処理装置10が実行するページ割当処理の流れを示すフローチャートである。なお、このページ割当処理は、図4のステップS5において実行される。
【0058】
まず、画像処理装置10(マスタノード)のページ割当実行部124は、拡張ノードへの割当ページ数の上限値、および、データサイズの上限値を決定する(ステップS51)。
ここで、ページ割当実行部124は、割当ページ数の上限値を、マスタノードと各拡張ノードの演算処理能力の比率、および、印刷ジョブ300全体のページ数に基づき決定する。つまり、処理能力が高いほど多くのページ数が割り当てられるように上限値を設定する。
また、ページ割当実行部124は、印刷ジョブ300の全ページをマスタノードで処理した場合のRIP処理の予測時間(N秒)を計算し、拡張ノードとの間のネットワーク通信速度におけるデータ転送時間がN秒以下となるデータサイズを上限値として設定する。
【0059】
続いて、ページ割当実行部124は、印刷ジョブ300の全ページにおける未割当ページの中から、図4のステップS2で算出した圧縮率予測値が最も高いページを選択する(ステップS52)。
【0060】
次に、ページ割当実行部124は、選択したページの拡張ノードでのRIP処理が、印刷機20への画像データの送信タイミングに間に合うか否かを判定する(ステップS53)。
ここで、ページ割当実行部124は、ネットワーク通信速度、RIP処理後の画像データの圧縮率(RIP処理後の画像を圧縮して得られる圧縮データのデータサイズ)、および、RIP処理予測時間から、選択した拡張ノードにおいてRIP処理を行った結果をマスタノードが受信した場合に、印刷機20への画像データの送信タイミングに間に合うか否かを判定する。
【0061】
RIP処理を行う拡張ノードの選択は、所定の拡張ノード選択ロジックに基づき行う。例えば、拡張ノードのIDの若い順に選択してもよいし、ランダムに選択してもよい。また、拡張ノードの処理性能が高い順に選択してもよい。なお、ページ割当実行部124は、所定の拡張ノード選択ロジックにより選択した拡張ノードにおいて、画像データの送信タイミングに間に合わなかった場合に、他の拡張ノードを選択し、画像データの送信タイミングに間に合うか否かを順次判定する。そして、ページ割当実行部124は、すべての拡張ノードにおいて、画像データの送信タイミングに間に合わない場合に、印刷機20への画像データの送信タイミングに間に合わないと最終的に判定する。
【0062】
そして、ページ割当実行部124は、間に合わないと判定した場合に(ステップS53→No)、当該選択したページを、マスタノードに割り当て(ステップS54)、次のステップS56へ進む。
一方、ページ割当実行部124は、選択したいずれかの拡張ノードのRIP処理により、間に合うと判定した場合に(ステップS53→Yes)、選択した拡張ノードに、当該選択したページを割り当て(ステップS55)、次のステップS56へ進む。
【0063】
ステップS56において、ページ割当実行部124は、マスタノードおよび各拡張ノードに割り当てたページ数(割当済ページ数)をカウントし、選択した拡張ノードごとに、圧縮された画像データのデータサイズをカウント(合計)する。
【0064】
次に、ページ割当実行部124は、各拡張ノードへ割り当てたページ数が、拡張ノードへの割当ページ数への上限値に達したか、または、圧縮した画像データのデータサイズの合計が、データサイズの上限値に達したか否かを判定する(ステップS57)。
ここで、割当ページ数の上限値、データサイズの上限値の何れにも達していない場合には(ステップS57→No)、ステップS52へ戻り、処理を続ける。
一方、割当ページ数の上限値、データサイズの上限値の何れかに達した場合は(ステップS57→Yes)、ステップS58へ進む。
【0065】
ステップS58において、ページ割当実行部124は、未割り当てのページを、マスタノードに割り当てて、処理を終える。
【0066】
このようにすることで、画像処理装置10は、印刷ジョブのRIP処理を、ネットワークを介して接続される複数の画像処理装置10a,10b,10cで分散処理する場合に、ネットワークの通信速度が制約となるパフォーマンス低下を防ぐことができる。
【0067】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
10,10a,10b,10c 画像処理装置
20 印刷機
50 ネットワークハブ
100 制御部
101 入出力部
102 記憶部
110 ページ分割部
120 ページ割当部
121 圧縮率予測部
122 RIP処理時間予測部
123 通信速度計測部
124 ページ割当実行部
130 RIP処理部
140 画像集約部
1000,1000a 印刷システム
図1
図2
図3
図4
図5