(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172407
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】燃料供給ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 59/44 20060101AFI20241205BHJP
F02M 57/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F02M59/44 C
F02M57/02 310D
F02M59/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090111
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 啓道
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AA16
3G066AB02
3G066AB05
3G066BA36
3G066CA08
3G066CA09
3G066CB16
3G066CE13
(57)【要約】
【課題】プランジャ室側から油圧室側への燃料の漏洩を抑制することができる燃料供給ポンプを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様である燃料供給ポンプは、外部供給管を介して燃料を受け入れる燃料供給室と、外部吐出管に通じるプランジャ室と、前記燃料供給室から前記プランジャ室へ前記燃料を流入させる内部流路と、前記プランジャ室の内部を往復運動し、前記プランジャ室の内部の燃料を加圧することにより、前記プランジャ室から前記外部吐出管へ前記燃料を吐出するプランジャと、油圧室の内部に圧入された作動油の圧力を利用して、前記燃料の加圧を前記プランジャに行わせる油圧ピストンと、前記燃料供給室から前記油圧室側へ漏洩する前記燃料の流れを阻止するシール部と、を備える。前記燃料供給室は、前記プランジャと前記プランジャ室との隙間を介して前記プランジャ室から漏洩した前記燃料を受け入れる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部供給管を介して燃料を受け入れる燃料供給室と、
外部吐出管に通じるプランジャ室と、
前記燃料供給室から前記プランジャ室へ前記燃料を流入させる内部流路と、
前記プランジャ室の内部を往復運動し、前記プランジャ室の内部の燃料を加圧することにより、前記プランジャ室から前記外部吐出管へ前記燃料を吐出するプランジャと、
油圧室の内部に圧入された作動油の圧力を利用して、前記燃料の加圧を前記プランジャに行わせる油圧ピストンと、
前記燃料供給室から前記油圧室側へ漏洩する前記燃料の流れを阻止するシール部と、
を備え、
前記燃料供給室は、前記プランジャと前記プランジャ室との隙間を介して前記プランジャ室から漏洩した前記燃料を受け入れる、
ことを特徴とする燃料供給ポンプ。
【請求項2】
前記内部流路を介しての前記燃料供給室から前記プランジャ室への前記燃料の流入を許容するとともに、前記内部流路を介しての前記プランジャ室から前記燃料供給室への前記燃料の逆流を禁止する逆止弁をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料供給ポンプ。
【請求項3】
前記内部流路および前記逆止弁は、前記プランジャの内部に設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料供給ポンプ。
【請求項4】
前記油圧ピストンの外径と異なり且つ前記プランジャの外径と同じ寸法の外径を有し、前記プランジャと前記油圧ピストンとの間に介在する中間軸をさらに備え、
前記プランジャの往復運動の際、前記中間軸は前記燃料供給室の内部に位置し、前記油圧ピストンは前記燃料供給室の外部に位置する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の燃料供給ポンプ。
【請求項5】
前記中間軸を摺動自在に支持する支持部をさらに備え、
前記シール部は、前記中間軸と前記支持部との隙間をシールする、
ことを特徴とする請求項4に記載の燃料供給ポンプ。
【請求項6】
前記シール部は、前記中間軸と前記支持部との間に形成されたシール油によって構成され、
前記中間軸は、前記プランジャの往復運動に伴って前記シール油を通過する油溝部を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料供給ポンプ。
【請求項7】
前記内部流路および前記逆止弁は、前記プランジャを往復運動可能に収容する吐出シリンダの内部に設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料供給ポンプ。
【請求項8】
前記プランジャは、前記油圧ピストンから前記燃料供給室の内部を通って前記プランジャ室の内部へ延在するように設けられる、
ことを特徴とする請求項1、2、7のいずれか一つに記載の燃料供給ポンプ。
【請求項9】
前記シール部は、前記油圧ピストンを往復運動可能に収容する油圧シリンダと前記油圧ピストンとの隙間をシールする、
ことを特徴とする請求項8に記載の燃料供給ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンには、シリンダの燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給ポンプが適用されている。一般に、燃料供給ポンプは、プランジャ室および油圧室を内部に有するポンプ筐体と、プランジャ室内を往復運動し得るプランジャと、油圧室内の作動油の圧力を利用してプランジャを作動させ得る油圧ピストンとを備えている。この燃料供給ポンプにおいて、プランジャ室内には、外部の供給管を介して燃料供給源から燃料が供給される。プランジャは、油圧ピストンの作用によってプランジャ室内を往復運動しつつ、このプランジャ室内の燃料を加圧する。このように加圧された燃料は、プランジャ室から外部の吐出管を介して舶用ディーゼルエンジンの燃料噴射弁に向けて吐出され、燃料噴射弁の噴射口から舶用ディーゼルエンジンの燃焼室内に供給(噴射)される。
【0003】
例えば、燃料供給ポンプによって吐出される燃料には、従来、重油等の化石燃料が使用されている。また、船舶の分野においては、近年、二酸化炭素の排出量を削減するために、従来の化石燃料を代替する代替燃料を適用可能な舶用ディーゼルエンジンが開発されつつある。ここでいう代替燃料とは、例えばアンモニア、メタノールまたは液化石油ガス(LPG)等、化石燃料に比べて燃焼時における二酸化炭素の排出量が少ない燃料である。このような舶用ディーゼルエンジンには、吐出対象の燃料が化石燃料から代替燃料に置き換えられた燃料供給ポンプが適用される。
【0004】
上述したように燃料(具体的には化石燃料または代替燃料)を吐出する燃料供給ポンプにおいては、油圧ピストンと油圧室との摺動部の隙間から漏洩した作動油または潤滑油等の油成分(以下、リーク油という)が、ドレン液としてドレン排出管から排出される。このように排出されたドレン液は、作動油等に再利用されることが好ましい。しかしながら、上述した燃料供給ポンプにおいては、プランジャとプランジャ室との摺動部の隙間から燃料が漏洩し、この漏洩した燃料(以下、リーク燃料という)が、リーク油とともにドレン液(すなわちリーク油とリーク燃料とが混ざったドレン液として)排出される場合がある。この場合、ドレン液を作動油として再利用することが困難になるため、例えば、上記燃料の漏洩をシールすることにより、リーク燃料とリーク油との混合を抑制することが好ましい。
【0005】
例えば、従来のシール技術として、ノズルニードルのガイド部に溝(ニードル潤滑チャンバ)を設け、当該溝に供給した潤滑オイルにより、当該ガイド部を経由した燃料の漏洩をシールする二元燃料噴射装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の燃料供給ポンプにおいて、プランジャ室内の燃料の圧力は、一定ではなく、プランジャによる加圧時に最も高圧になり、プランジャ室内への燃料の供給時等、プランジャによる加圧時以外の時に、当該加圧時に比べて低圧になる。このため、プランジャとプランジャ室との摺動部の隙間から漏洩するリーク燃料の圧力も、上記プランジャ室内の燃料の圧力変化に伴って高圧と低圧とに変化することから、上記リーク燃料の流れをシールして、プランジャ室側から油圧室側への燃料の漏洩を抑制することは困難である。
【0008】
例えば、上記リーク燃料の流路にシール油を形成した場合、シール油の圧力を上記リーク燃料の圧力変化に応じて制御することは困難であり、シール油の圧力が上記リーク燃料の圧力未満であれば、上記リーク燃料の流れをシールすることはできない。また、シール油の圧力が常に上記リーク燃料の圧力以上となるように、シール油の圧力を上記リーク燃料の最高圧力(プランジャ室内の燃料がプランジャによって加圧された時の圧力)に設定した場合、上記プランジャによる加圧時以外の時に、プランジャ室内の燃料に比べて高圧のシール油がプランジャ室内に流入して当該燃料と混ざる問題が生じる。
【0009】
また、上記シール油の代わりに金属製等の構造体であるシール材を上記リーク燃料の流路に設けようとしても、上記プランジャによる加圧時のリーク燃料の高圧に耐え得るシール材を入手することは困難である。たとえ上記高圧に耐え得るシール材を入手できたとしても、上記リーク燃料の流路に設けた状態でシール材にかかる圧力の差に起因して、当該シール材は劣化し易く、それ故、当該シール材の信頼性および寿命に問題がある。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、プランジャ室側から油圧室側への燃料の漏洩を抑制することができる燃料供給ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る燃料供給ポンプは、外部供給管を介して燃料を受け入れる燃料供給室と、外部吐出管に通じるプランジャ室と、前記燃料供給室から前記プランジャ室へ前記燃料を流入させる内部流路と、前記プランジャ室の内部を往復運動し、前記プランジャ室の内部の燃料を加圧することにより、前記プランジャ室から前記外部吐出管へ前記燃料を吐出するプランジャと、油圧室の内部に圧入された作動油の圧力を利用して、前記燃料の加圧を前記プランジャに行わせる油圧ピストンと、前記燃料供給室から前記油圧室側へ漏洩する前記燃料の流れを阻止するシール部と、を備え、前記燃料供給室は、前記プランジャと前記プランジャ室との隙間を介して前記プランジャ室から漏洩した前記燃料を受け入れる、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る燃料供給ポンプは、上記の発明において、前記内部流路を介しての前記燃料供給室から前記プランジャ室への前記燃料の流入を許容するとともに、前記内部流路を介しての前記プランジャ室から前記燃料供給室への前記燃料の逆流を禁止する逆止弁をさらに備える、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る燃料供給ポンプは、上記の発明において、前記内部流路および前記逆止弁は、前記プランジャの内部に設けられる、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る燃料供給ポンプは、上記の発明において、前記油圧ピストンの外径と異なり且つ前記プランジャの外径と同じ寸法の外径を有し、前記プランジャと前記油圧ピストンとの間に介在する中間軸をさらに備え、前記プランジャの往復運動の際、前記中間軸は前記燃料供給室の内部に位置し、前記油圧ピストンは前記燃料供給室の外部に位置する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る燃料供給ポンプは、上記の発明において、前記中間軸を摺動自在に支持する支持部をさらに備え、前記シール部は、前記中間軸と前記支持部との隙間をシールする、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る燃料供給ポンプは、上記の発明において、前記シール部は、前記中間軸と前記支持部との間に形成されたシール油によって構成され、前記中間軸は、前記プランジャの往復運動に伴って前記シール油を通過する油溝部を有する、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る燃料供給ポンプは、上記の発明において、前記内部流路および前記逆止弁は、前記プランジャを往復運動可能に収容する吐出シリンダの内部に設けられる、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る燃料供給ポンプは、上記の発明において、前記プランジャは、前記油圧ピストンから前記燃料供給室の内部を通って前記プランジャ室の内部へ延在するように設けられる、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る燃料供給ポンプは、上記の発明において、前記シール部は、前記油圧ピストンを往復運動可能に収容する油圧シリンダと前記油圧ピストンとの隙間をシールする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る燃料供給ポンプによれば、プランジャ室側から油圧室側への燃料の漏洩を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る燃料供給ポンプの一構成例を示す断面模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1に係る燃料供給ポンプの動作の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプの一構成例を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプの動作の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、プランジャの往復運動に伴う中間軸の油溝の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る燃料供給ポンプの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0023】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る燃料供給ポンプの構成について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る燃料供給ポンプの一構成例を示す断面模式図である。本実施形態1に係る燃料供給ポンプ10は、作動油110の圧力を利用して燃料102を吐出する油圧駆動式のポンプであり、
図1に示すように、吐出シリンダ1と、油圧シリンダ2と、プランジャ3と、油圧ピストン4と、シール部5とを備える。また、燃料供給ポンプ10は、外部供給管6と、外部吐出管7と、吐出逆止弁8と、ドレン排出管9と、排出管31と、排出弁32とを備える。
【0024】
吐出シリンダ1は、例えば金属製のスリーブ(円筒状構造体)等によって構成され、
図1に示すように、プランジャ3を往復動可能に収容し得る内部空間を有する。詳細には、
図1に示すように、吐出シリンダ1は、この内部空間のうち、燃料吐出側の空間部分としてプランジャ室11を有し、燃料受入側の空間部分として燃料供給室12を有する。また、吐出シリンダ1は、プランジャ室11と燃料供給室12とを連通する内部流路13と、内部流路13における燃料100の流通方向を燃料供給室12からプランジャ室11への一方向に規制する逆止弁14と、燃料100の吐出口を形成する吐出部15とを有している。
【0025】
プランジャ室11は、吐出対象の燃料102をプランジャ3によって加圧して吐出するための空間である。詳細には、
図1に示すように、プランジャ室11は、吐出シリンダ1の内壁とプランジャ3の外壁と吐出部15の外壁とによって区画される。これにより、プランジャ室11は、燃料供給室12よりも燃料吐出側の空間をなし、吐出部15の吐出口を介して外部吐出管7に通じる。また、プランジャ室11は、プランジャ3が軸方向F1に往復運動し得るように、プランジャ3の外部形状に対応して形成される。なお、軸方向F1は、プランジャ3の長手方向(長手軸の方向)であって、プランジャ3の径方向F2に対して垂直な方向である。プランジャ室11は、燃料供給ポンプ10に供給された燃料100のうち、吐出対象の燃料102を貯蔵する。プランジャ室11の内部に貯蔵された燃料102は、プランジャ3によって加圧されることにより、外部吐出管7の内部へ吐出される。
【0026】
燃料供給室12は、プランジャ室11の内部へ供給する燃料101を貯蔵するための空間である。詳細には、
図1に示すように、燃料供給室12は、吐出シリンダ1の内壁およびプランジャ3の外壁等によって区画される。本実施形態1において、燃料供給室12は、プランジャ室11と油圧シリンダ2の油圧室21との間に介在する空間をなし、吐出シリンダ1に設けられた外部供給管6と通じる。また、
図1に示すように、燃料供給室12は、少なくともプランジャ3の外径に比べて大きい内径を有するように形成される。燃料供給室12の内径は、プランジャ3の径方向F2の寸法であり、例えば、プランジャ3の外径に比べて大きく且つ油圧ピストン4の外径に比べて若干大きい。このような燃料供給室12には、外部の燃料供給源(図示せず)から外部供給管6を介して燃料100が供給される。燃料供給室12は、この供給された燃料100を受け入れ、プランジャ室11の内部へ供給する供給対象の燃料101として、この受け入れた燃料100を貯蔵する。
【0027】
また、燃料供給室12には、プランジャ3とプランジャ室11との隙間からリーク燃料が流入する。このリーク燃料は、
図1に示すように、プランジャ3とプランジャ室11との隙間を介してプランジャ室11から漏洩した燃料102である。すなわち、このリーク燃料は、燃料供給室12内の燃料101と同じ燃料(燃料100)である。燃料供給室12は、このようなリーク燃料をプランジャ3とプランジャ室11との隙間から受け入れ、受け入れたリーク燃料を燃料101として貯蔵する。これと同時に、燃料供給室12は、上記リーク燃料の受入量(流入量)分の燃料101を、外部供給管6の内部へ戻す、あるいは、内部流路13を介してプランジャ室11の内部へ戻す。これにより、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、外部供給管6を介して燃料供給室12内へ供給される燃料100と同じ圧力(燃料100の供給圧力)となるよう一定に維持される。すなわち、プランジャ室11内から燃料供給室12内へのリーク燃料の圧力は、当該燃料100の供給圧力に変換される。
【0028】
なお、上述したように外部供給管6を介して燃料供給ポンプ10内へ供給される燃料100としては、例えば、舶用ディーゼルエンジン等の燃料消費機器(図示せず)によって消費される化石燃料または代替燃料が挙げられる。化石燃料は、ディーゼル燃料、留出油、残渣油等、原油から精製され得る燃料一般である。代替燃料は、化石燃料を代替する燃料であり、例えば液体アンモニア、メタノール、液化石油ガス(LPG)または液化天然ガス(LNG)等、化石燃料に比べて燃焼時における二酸化炭素の排出量が少ない燃料である。以下では、燃料供給室12内の燃料101およびプランジャ室11内の燃料102を総称して、燃料100という場合がある。
【0029】
内部流路13および逆止弁14は、燃料供給室12からプランジャ室11へ燃料100を供給するためのものである。詳細には、
図1に示すように、内部流路13は、プランジャ室11の内部と燃料供給室12の内部とを連通するように吐出シリンダ1の内部に設けられる。内部流路13は、燃料供給室12からプランジャ室11へ燃料100を流入させる。
【0030】
また、
図1に示すように、逆止弁14は、内部流路13の所定部位に配置されるように吐出シリンダ1の内部に設けられる。例えば、逆止弁14は、
図1に示すように内部流路13の中途部に配置されてもよいし、内部流路13の入口端部(燃料供給室12側の端部)に配置されてもよいし、内部流路13の出口端部(プランジャ室11側の端部)に配置されてもよい。逆止弁14は、内部流路13における燃料100の流通方向を燃料供給室12側からプランジャ室11側への一方向に規制する。すなわち、逆止弁14は、内部流路13を介しての燃料供給室12からプランジャ室11への燃料100(燃料101)の流入を許容するとともに、内部流路13を介してのプランジャ室11から燃料供給室12への燃料100(燃料102)の逆流を禁止する。この逆止弁14の作用により、内部流路13は、プランジャ室11内の燃料102を燃料供給室12側へ逆流させることなく、燃料供給室12内の燃料101をプランジャ室11内へ流入させることができる。
【0031】
油圧シリンダ2は、例えば金属製のスリーブ等によって構成される円筒状構造体であり、
図1に示すように、プランジャ3を作動させる油圧ピストン4を往復運動可能に収容する。詳細には、
図1に示すように、油圧シリンダ2は、作動油110を受け入れ可能な内部空間である油圧室21を有し、この油圧室21の内部に、油圧ピストン4を往復運動可能に収容する。油圧シリンダ2の一端部は、ボルト等の連結部材(図示せず)によって吐出シリンダ1と連結されている。油圧シリンダ2の他端部は、作動油110の圧力を蓄積する蓄圧部等の作動油供給設備(図示せず)に取り付けられている。なお、吐出シリンダ1および油圧シリンダ2は、燃料供給ポンプ10のポンプ筐体を構成する。
【0032】
油圧室21は、油圧ピストン4を往復動可能に収容し得るように、油圧ピストン4の外部形状に対応して形成される。本実施形態1において、油圧室21は、
図1に示すように、燃料供給室12と連通している。油圧室21は、配管等を介して作動油供給設備から供給された作動油110を受け入れ、この受け入れた作動油110の圧力によって油圧ピストン4を軸方向F1に往復運動させる。
【0033】
また、油圧シリンダ2の内壁には、
図1に示すように、シール油溝22が形成されている。シール油溝22は、シール部5を構成する油成分(シール油)を溜めるための溝である。例えば、シール油溝22は、油圧ピストン4を径方向F2から囲むように、油圧シリンダ2の内周方向に沿って環状に形成される。シール油溝22の内部には、配管等(図示せず)を介してシール油が供給される。シール油溝22は、この供給されたシール油を溜めることにより、当該シール油からなるシール部5を形成する。
【0034】
プランジャ3は、吐出対象の燃料102を吐出すべく加圧するものである。
図1に示すように、プランジャ3は、例えば円柱形状に形成され、プランジャ室11の内部を軸方向F1に往復運動し得るように、吐出シリンダ1の内部空間に収容される。プランジャ3は、軸方向F1の一端部に、プランジャ室11内の燃料102を加圧する加圧面を有する。また、本実施形態1において、プランジャ3の軸方向F1の他端部は、
図1に示すように、油圧ピストン4に接合されている。例えば、プランジャ3は、
図1に示すように、油圧ピストン4から燃料供給室12の内部を通ってプランジャ室11の内部へ延在するように設けられる。このようなプランジャ3は、油圧ピストン4の作用により、プランジャ室11の内壁に沿って軸方向F1に摺動しながら、プランジャ室11の内部を往復運動する。この際、プランジャ3は、プランジャ室11を圧縮する方向に移動して、プランジャ室11の内部の燃料102を加圧する。これにより、プランジャ3は、プランジャ室11から外部吐出管7へ燃料102を吐出する。
【0035】
油圧ピストン4は、作動油110の圧力を利用してプランジャ3を作動させるものである。
図1に示すように、油圧ピストン4は、例えばプランジャ3に比べて外径が大きい円柱形状に形成され、プランジャ3の軸方向F1に往復運動し得るように油圧シリンダ2の油圧室21の内部に収容される。本実施形態1において、油圧ピストン4の一端部には、上述したようにプランジャ3が接合されている。また、油圧ピストン4は、軸方向F1の他端部(プランジャ3の接合部とは反対側の端部)に、作動油110を受ける受圧面を有する。油圧ピストン4は、油圧室21の内部に供給(圧入)された作動油110の圧力を上記受圧面で受け、この作動油110の圧力により、プランジャ3とともに軸方向F1の一端側(プランジャ室11側)へ移動する。油圧ピストン4は、このように作動油110の圧力を利用して、プランジャ室11内の燃料102の加圧をプランジャ3に行わせる。また、油圧ピストン4は、例えばプランジャ室11の内部へ供給される燃料100の圧力等により、油圧室21内の作動油110を作動油供給設備側へ押し出しながら、プランジャ3とともに軸方向F1の他端側(プランジャ室11から離間する側)へ移動する。
【0036】
シール部5は、燃料供給室12から油圧室21側へ漏洩するリーク燃料の流れを阻止するものである。例えば、
図1に示すように、シール部5は、シール油溝22に溜められたシール油によって構成され、シール油溝22に沿って環状に形成される。本実施形態1において、シール部5は、
図1に示すように、油圧シリンダ2と油圧ピストン4との隙間をシールする。これにより、シール部5は、燃料供給室12から油圧シリンダ2と油圧ピストン4との隙間へ漏洩するリーク燃料の流れを阻止し、このリーク燃料と作動油110との混合を抑制する。ここで、このリーク燃料は、燃料供給室12からのリーク燃料であり、燃料供給室12内の燃料101と同じものである。すなわち、このリーク燃料の圧力は、燃料供給室12内の燃料101と同じ一定の圧力である。したがって、シール部5としてのシール油の圧力は、このリーク燃料の流れを阻止するに十分な圧力に設定されればよく、例えば、燃料供給室12内の燃料101の圧力以上、プランジャ3による加圧時の燃料102の圧力未満における一定の圧力に設定される。
【0037】
なお、上記シール油は、例えば、配管等を介して外部のシール油供給装置(図示せず)からシール油溝22の内部へ供給される油成分(シール用の油成分)であってもよいし、油圧シリンダ2と油圧ピストン4との摺動を円滑にする潤滑油の一部であってもよい。あるいは、上記シール油は、作動油110の一部であってもよい。
【0038】
外部供給管6は、外部の燃料供給源(図示せず)から燃料供給ポンプ10の内部へ燃料100を供給するための配管である。
図1に示すように、外部供給管6は、燃料供給室12の内部に通じるように吐出シリンダ1に設けられる。外部供給管6は、上記燃料供給源と燃料供給室12の内部とを連通し、上記燃料供給源からの燃料100を燃料供給室12の内部へ流入させる。また、外部供給管6は、逆止弁等によって燃料100の流通方向が一方向に規制されておらず、燃料供給室12内への燃料100の流入と、燃料供給室12内からの燃料101の逆流とを可能にする。
【0039】
外部吐出管7および吐出逆止弁8は、燃料供給ポンプ10から吐出された燃料102を燃料消費機器(図示せず)に対して供給するためのものである。詳細には、
図1に示すように、外部吐出管7の入口端部は、プランジャ室11の内部に通じるように吐出シリンダ1の吐出部15に接合される。特に図示しないが、外部吐出管7の出口端部は、燃料消費機器に接合される。外部吐出管7は、これらプランジャ室11の内部と燃料消費機器とを連通し、プランジャ3の加圧によってプランジャ室11から吐出された燃料102を燃料消費機器に向けて流通させる。
【0040】
また、
図1に示すように、吐出逆止弁8は、外部吐出管7の所定部位に設けられる。例えば、吐出逆止弁8は、
図1に示すように外部吐出管7の中途部に配置されてもよいし、外部吐出管7の入口端部に配置されてもよいし、外部吐出管7の出口端部に配置されてもよい。吐出逆止弁8は、外部吐出管7における燃料102の流通方向を燃料供給ポンプ10側から燃料消費機器側への一方向に規制する。すなわち、吐出逆止弁8は、外部吐出管7におけるプランジャ室11側から燃料消費機器側への燃料102の流通を許容するとともに、外部吐出管7における燃料消費機器側からプランジャ室11側への燃料102の逆流を禁止する。この吐出逆止弁8の作用により、外部吐出管7は、プランジャ室11から吐出された燃料102を、プランジャ室11側へ逆流させることなく、燃料消費機器に向けて流通させることができる。
【0041】
なお、上記燃料消費機器は、燃料供給ポンプ10から供給された燃料102を消費して駆動する機器である。例えば、上記燃料消費機器としては、舶用ディーゼルエンジン(主機)、発電機(補機)等が挙げられる。具体的には、上記燃料消費機器が舶用ディーゼルエンジである場合、外部吐出管7は、プランジャ室11から吐出された燃料102を舶用ディーゼルエンジンの燃料噴射弁内へ流入させる。この燃料102は、燃料噴射弁から舶用ディーゼルエンジンの燃焼室内へ噴射される。
【0042】
ドレン排出管9は、燃料供給ポンプ10のポンプ筐体内の余分な油成分を排出するための配管である。例えば、
図1に示すように、ドレン排出管9は、シール部5よりも燃料供給室12から離間した部位において油圧室21の内部(詳細には油圧シリンダ2と油圧ピストン4との隙間)に通じるように、油圧シリンダ2に設けられる。ドレン排出管9は、油圧シリンダ2と油圧ピストン4との隙間に存在する余分な油成分を、ドレン液120として燃料供給ポンプ10の外部へ排出する。例えば、当該余分な油成分としては、油圧シリンダ2と油圧ピストン4との隙間に過剰に残留する潤滑油、シール部5のシール油と混ざった作動油110等が挙げられる。特に図示しないが、ドレン排出管9の出口端部は、ドレン液120を貯蔵するタンクに接合されている。ドレン液120は、油圧シリンダ2内からドレン排出管9を介して上記タンクへ排出される。なお、シール部5のシール油が作動油110と同じ油成分である場合、当該シール油と作動油110とが混ざっても問題にならないため、燃料供給ポンプ10は、ドレン排出管9を備えていなくてもよい。
【0043】
排出管31および排出弁32は、燃料供給ポンプ10の内部からパージされた燃料100を排出するためのものである。
図1に示すように、排出管31の入口端部は、外部吐出管7の中途部(例えば吐出逆止弁8よりも燃料102の流通方向の下流側)に接合される。特に図示しないが、排出管31の出口端部は、パージされた燃料100等を貯蔵するタンクに接合される。排出管31は、外部吐出管7を介してプランジャ室11の内部と上記タンクとを連通する。
【0044】
また、排出弁32は、手動弁または自動弁等によって構成され、例えば
図1に示すように、排出管31を開閉し得るように設けられる。例えば、燃料供給ポンプ10の内部空間をパージする場合、窒素等のパージガスが、配管等(図示せず)を介してプランジャ室11および燃料供給室12の各内部へ導入される。これにより、プランジャ室11および燃料供給室12の各内部に残留する燃料100は、パージガスとともに外部吐出管7へ除去される。このとき、排出弁32は開状態であり、上記除去された燃料100は、パージガスとともに排出管31を介して上記タンクへ排出される。なお、上記パージが行われない場合、排出弁32は閉状態である。この場合、外部吐出管7内の燃料102は、排出管31から上記タンクへ排出されることなく、上述したように燃料消費機器側へ流通する。
【0045】
つぎに、本発明の実施形態1に係る燃料供給ポンプ10の動作について詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態1に係る燃料供給ポンプの動作の一例を示す模式図である。
図2に示すように、燃料供給ポンプ10は、油圧シリンダ2の油圧室21内に圧入された作動油110の圧力を利用して、油圧ピストン4とともにプランジャ3を作動させることにより、吐出対象の燃料102を加圧して吐出する。
【0046】
詳細には、
図2に示すように、吐出対象の燃料102を吐出する前の状態S1の燃料供給ポンプ10において、燃料供給室12は、外部供給管6から流入した燃料100を、プランジャ室11へ供給する燃料101として貯蔵している。このとき、燃料供給室12の内部は、貯蔵した燃料101で満たされた状態にある。プランジャ室11は、燃料供給室12から内部流路13および逆止弁14を介して流入した燃料101を、吐出対象の燃料102として貯蔵している。このとき、プランジャ室11の内部は、貯蔵した燃料102で満たされた状態にある。
【0047】
状態S1において、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、外部供給管6からの燃料100の圧力と同じ一定の圧力(供給圧力)に維持されている。また、プランジャ室11内の燃料102の圧力は、燃料供給室12内の燃料101の圧力に比べて、プランジャ室11内への燃料101の流入時に逆止弁14を開状態にした分、若干低い圧力になっている。
【0048】
ここで、プランジャ3とプランジャ室11との隙間(詳細には、これら両者同士の摺動部の隙間)から燃料供給室12側へ燃料102が漏洩した場合、この漏洩した燃料102であるリーク燃料は、
図2に示すように、燃料供給室12内へ流入して燃料供給室12内の燃料101と混ざる。この場合、当該リーク燃料は燃料供給室12内の燃料101と実質的に同じ燃料であるから、当該リーク燃料と燃料101とが混ざっても、問題にはならない。また、当該リーク燃料と燃料101との混合に伴い、増量した分の燃料101は、例えば、燃料供給室12から内部流路13を介してプランジャ室11の内部へ戻る。これにより、当該リーク燃料の圧力が燃料101の圧力に変換されるとともに、当該リーク燃料との混合後の燃料101の圧力が、上記一定の圧力に維持される。
【0049】
また、
図2に示すように、状態S1においては、燃料供給室12から油圧室21側(具体的には油圧シリンダ2と油圧ピストン4との摺動部の隙間)へ、燃料101が漏洩する場合がある。この場合、燃料101の漏洩時の圧力は、上記一定の圧力である。シール部5は、上記一定の圧力に対抗するに十分な圧力のシール油によって構成されるため、燃料供給室12から油圧シリンダ2と油圧ピストン4との摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の流れを阻止することができる。これにより、燃料供給室12からのリーク燃料(燃料101)と作動油110との混合が抑制される。ドレン排出管9は、このようにリーク燃料と作動油110との混合が抑制されつつドレン液120を燃料供給ポンプ10から排出する。
【0050】
つぎに、上記状態S1の燃料供給ポンプ10の油圧室21内へ作動油110が圧入された場合、
図2に示すように、油圧ピストン4は、この作動油110の圧力を利用して、プランジャ室11を圧縮する方向にプランジャ3を作動させる。プランジャ3は、この油圧ピストン4の作用により、プランジャ室11内の燃料102を加圧する。加圧された燃料102は、プランジャ室11から外部吐出管7を介して燃料消費機器側へ吐出される。
【0051】
詳細には、
図2に示すように、吐出対象の燃料102を吐出する際の状態S2の燃料供給ポンプ10において、プランジャ室11内の燃料102は、プランジャ3の加圧によって高圧化される。このとき、プランジャ室11内の燃料102の圧力は、例えば、燃料供給室12内の燃料101の圧力に比べて数倍以上、高い圧力になっている。また、状態S2においては、
図2に示すように、油圧ピストン4の一部がプランジャ3の作動に伴って燃料供給室12内へ進入する。これにより、燃料供給室12の容積が変化するため、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、若干変化する。しかし、当該燃料101の圧力変化は、プランジャ3の加圧による燃料102の圧力変化(圧力上昇)に比べて無視できる程度に小さい。すなわち、当該燃料101の圧力は、外部供給管6からの燃料100の圧力と略同じ一定の圧力に維持されている。
【0052】
状態S2において、プランジャ3とプランジャ室11との摺動部の隙間から燃料供給室12側へ加圧後の燃料102が漏洩した場合、この漏洩した燃料102である高圧リーク燃料は、
図2に示すように、燃料供給室12内へ流入して燃料供給室12内の燃料101と混ざる。この場合、当該高圧リーク燃料と燃料101との混合に伴い、増量した分の燃料101は、例えば
図2に示すように、燃料供給室12から外部供給管6の内部へ戻る。これにより、当該高圧リーク燃料の圧力が燃料101の圧力に変換(緩和)されるとともに、当該高圧リーク燃料との混合後の燃料101の圧力が、上記一定の圧力に維持される。また、当該高圧リーク燃料は、高圧であること以外、燃料供給室12内の燃料101と実質的に同じ燃料であるから、当該高圧リーク燃料と燃料101との混合は、上記状態S1と同様に問題にはならない。
【0053】
なお、上記加圧後の燃料102は、逆止弁14の作用により、プランジャ室11から内部流路13を介して燃料供給室12へ逆流することはない。また、状態S2において、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、上記高圧リーク燃料と燃料101との混合後も含め、プランジャ室11内の燃料102の圧力よりも低い。したがって、上記燃料101が燃料供給室12(低圧側)から内部流路13を介してプランジャ室11(高圧側)へ流入することは殆どない。
【0054】
また、
図2に示すように、状態S2においても上記状態S1と同様に、燃料供給室12から油圧シリンダ2と油圧ピストン4との摺動部の隙間へ、燃料101が漏洩する場合がある。しかし、上記摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の圧力は、たとえ上記高圧リーク燃料が燃料供給室12内へ流入しても、上記一定の圧力である。したがって、シール部5は、状態S2においても上記状態S1と同様に、燃料供給室12から油圧シリンダ2と油圧ピストン4との摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の流れを阻止することができる。これにより、状態S2における燃料供給室12からのリーク燃料(燃料101)と作動油110との混合は、上記状態S1と同様に抑制される。ドレン排出管9は、状態S2においても、リーク燃料と作動油110との混合が抑制されつつドレン液120を燃料供給ポンプ10から排出することが可能である。
【0055】
上記状態S2の燃料供給ポンプ10による燃料102の吐出が終了した場合、プランジャ室11の内部圧力は、燃料100の供給圧力に比べて低い圧力になる。この場合、
図2に示すように、外部供給管6から燃料供給室12の内部へ燃料100が供給され、供給された燃料100(燃料101)が燃料供給室12内から内部流路13を介してプランジャ室11内へ供給(補給)される。これに伴い、プランジャ3および油圧ピストン4は、作動前の位置に戻る。
【0056】
詳細には、
図2に示すように、吐出対象の燃料102を吐出し終えた状態S3の燃料供給ポンプ10において、燃料供給室12は、外部供給管6から燃料100を受け入れるとともに、受け入れた燃料100を、プランジャ室11へ供給する燃料101として貯蔵する。燃料101は、燃料供給室12内から内部流路13を介してプランジャ室11内へ流入する。プランジャ室11は、内部流路13から流入した燃料101を、吐出対象の燃料102として貯蔵する。このとき、プランジャ室11内の燃料102の圧力は、上記燃料100の供給圧力に比べて、プランジャ室11内への燃料101の流入時に逆止弁14を開状態にした分、若干低い圧力になっている。この燃料102の圧力により、プランジャ3は、吐出対象の燃料102を加圧する前の位置まで押し戻される。このプランジャ3の移動(後退)に伴い、油圧ピストン4は、油圧室21から作動油110を押し出しながら、プランジャ室11から離間する方向へ移動(後退)し、プランジャ3を作動させる前の位置に戻る。
【0057】
また、状態S3においては、
図2に示すように、油圧ピストン4の一部が、上記後退に伴って燃料供給室12内から油圧室21内へ後退する。これにより、燃料供給室12の容積が変化するため、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、若干変化する。しかし、当該燃料101の圧力変化は、上記状態S2と同様に、プランジャ3の加圧による燃料102の圧力変化に比べて無視できる程度に小さい。すなわち、当該燃料101の圧力は、上記燃料100の供給圧力と略同じ一定の圧力に維持されている。
【0058】
状態S3において、プランジャ3とプランジャ室11との摺動部の隙間から燃料供給室12側へ燃料102が漏洩した場合、この漏洩した燃料102であるリーク燃料は、
図2に示すように、燃料供給室12内へ流入して燃料供給室12内の燃料101と混ざる。この場合、当該リーク燃料と燃料101との混合に伴い、増量した分の燃料101は、上記状態S1と同様に、燃料供給室12から内部流路13を介してプランジャ室11の内部へ戻る。これにより、当該リーク燃料の圧力が燃料101の圧力に変換(緩和)されるとともに、当該リーク燃料との混合後の燃料101の圧力が、上記一定の圧力に維持される。また、当該リーク燃料は、燃料供給室12内の燃料101と実質的に同じ燃料であるから、当該リーク燃料と燃料101との混合は、上記状態S1、S2と同様に問題にはならない。
【0059】
また、
図2に示すように、状態S3においても上記状態S1と同様に、燃料供給室12から油圧シリンダ2と油圧ピストン4との摺動部の隙間へ、燃料101が漏洩する場合がある。しかし、上記摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の圧力は、上記一定の圧力である。したがって、シール部5は、状態S3においても上記状態S1と同様に、燃料供給室12から油圧シリンダ2と油圧ピストン4との摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の流れを阻止することができる。これにより、状態S3における燃料供給室12からのリーク燃料(燃料101)と作動油110との混合は、上記状態S1と同様に抑制される。ドレン排出管9は、状態S3においても、リーク燃料と作動油110との混合が抑制されつつドレン液120を燃料供給ポンプ10から排出することが可能である。
【0060】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る燃料供給ポンプ10は、外部供給管6を介して燃料100を受け入れる燃料供給室12と、外部吐出管7に通じるプランジャ室11と、燃料供給室12からプランジャ室11へ燃料100を流入させる内部流路13と、プランジャ室11内を往復運動してプランジャ室11内の燃料100を加圧することにより、プランジャ室11から外部吐出管7へ燃料100を吐出するプランジャ3と、油圧室21内に圧入された作動油110の圧力を利用してプランジャ室11内の燃料100の加圧をプランジャ3に行わせる油圧ピストン4と、燃料供給室12から油圧室21側へ漏洩する燃料100(以下、燃料供給室12からのリーク燃料という)の流れを阻止するシール部5と、を備えている。この燃料供給ポンプ10において、燃料供給室12は、プランジャ3とプランジャ室11との隙間を介してプランジャ室11から漏洩した燃料100(プランジャ室11からのリーク燃料という)を受け入れるように構成されている。
【0061】
このため、プランジャ3による加圧前後でのプランジャ室11内の燃料100の圧力変化に伴い、プランジャ室11からのリーク燃料の圧力が大きく高低変化しても、当該リーク燃料の圧力変化を、燃料供給室12内における燃料100の略一定の圧力に緩和することができる。これにより、プランジャ室11からのリーク燃料を、圧力が略一定に維持されたリーク燃料である燃料供給室12からのリーク燃料に変換することができ、当該燃料供給室12からのリーク燃料の流れをシール部5によって阻止できることから、プランジャ室11側から油圧室21側への燃料100の漏洩を抑制することができる。
【0062】
また、本発明の実施形態1に係る燃料供給ポンプ10では、内部流路13に逆止弁14を設け、この逆止弁14により、燃料供給室12からプランジャ室11へ燃料100の流入を許容するとともに、プランジャ室11から燃料供給室12への燃料100の逆流を禁止している。このため、プランジャ3によって加圧した燃料100を、内部流路13から燃料供給室12の内部へ逆流させることなく、プランジャ室11から外部吐出管7の内部へ効率よく吐出することができる。
【0063】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプの構成について詳細に説明する。
図3は、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプの一構成例を示す断面模式図である。
図3に示すように、本実施形態2に係る燃料供給ポンプ10Aは、上述した実施形態1に係る燃料供給ポンプ10の吐出シリンダ1に代えて吐出シリンダ1Aを備え、プランジャ3に代えてプランジャ3Aを備え、シール部5に代えてシール部5Aを備え、シール油溝22に代えてシール油溝22Aを備える。また、
図3に示すように、燃料供給ポンプ10Aは、上記構成部に加え、中間軸16と、油溝17と、支持部18とをさらに備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0064】
吐出シリンダ1Aは、例えば金属製のスリーブ等によって構成され、
図3に示すように、プランジャ3Aおよび中間軸16を往復動可能に収容し得る内部空間を有する。この吐出シリンダ1Aの内部空間には、
図3に示すように、プランジャ3Aおよび中間軸16と、この中間軸16を摺動自在に支持する支持部18とが配置されている。
【0065】
詳細には、
図3に示すように、吐出シリンダ1Aの内部空間には、上述したプランジャ室11および燃料供給室12が含まれる。本実施形態2において、プランジャ室11は、吐出シリンダ1Aの内壁とプランジャ3Aの外壁と吐出部15の外壁とによって区画される。このプランジャ室11は、上述した実施形態1と同様に、燃料供給ポンプ10Aに供給された燃料100のうち、吐出対象の燃料102を貯蔵する。プランジャ室11の内部に貯蔵された燃料102は、プランジャ3Aによって加圧されることにより、吐出部15の吐出口を介して外部吐出管7の内部へ吐出される。
【0066】
また、本実施形態2において、燃料供給室12は、
図3に示すように、吐出シリンダ1Aの内壁と、プランジャ3Aおよび中間軸16の各外壁と、支持部18の一端部とによって区画される。この燃料供給室12は、プランジャ室11と支持部18との間に介在する空間をなし、上述した実施形態1と同様に、吐出シリンダ1Aに設けられた外部供給管6に通じる。また、
図3に示すように、燃料供給室12は、少なくともプランジャ3Aおよび中間軸16の各外径に比べて大きい内径を有するように形成される。例えば、燃料供給室12の内径は、プランジャ3Aおよび中間軸16の各外径に比べて大きく且つ油圧ピストン4の外径に比べて若干大きい。このような燃料供給室12は、上述した実施形態1と同様に、外部の燃料供給源から外部供給管6を介して供給された燃料100を受け入れ、この受け入れた燃料100を、プランジャ室11に対する供給対象の燃料101として貯蔵する。
【0067】
また、本実施形態2において、燃料供給室12には、プランジャ3Aとプランジャ室11との隙間からリーク燃料が流入する。このリーク燃料は、
図3に示すように、プランジャ3Aとプランジャ室11との隙間を介してプランジャ室11から漏洩した燃料102である。すなわち、このリーク燃料は、上述した実施形態1と同様に、燃料供給室12内の燃料101と同じ燃料(燃料100)である。燃料供給室12は、上述した実施形態1と同様に、プランジャ3Aとプランジャ室11との隙間から受け入れたリーク燃料を燃料101として貯蔵する。これと同時に、燃料供給室12は、上記リーク燃料の受入量(流入量)分の燃料101を、外部供給管6の内部へ戻す、あるいは、内部流路13Aを介してプランジャ室11の内部へ戻す。これにより、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、外部供給管6を介して燃料供給室12内へ供給される燃料100と同じ圧力となるよう一定に維持される。すなわち、プランジャ室11内から燃料供給室12内へのリーク燃料の圧力は、当該燃料100の供給圧力に変換される。
【0068】
プランジャ3Aは、吐出対象の燃料102を吐出すべく加圧するものである。
図3に示すように、プランジャ3Aは、例えば円柱形状に形成され、プランジャ室11の内部を軸方向F1に往復運動し得るように、吐出シリンダ1Aの内部空間に収容される。プランジャ3Aは、軸方向F1の一端部に、プランジャ室11内の燃料102を加圧する加圧面を有する。また、本実施形態2において、プランジャ3Aの軸方向F1の他端部には、
図3に示すように、中間軸16が設けられている。中間軸16は、油圧ピストン4の外径と異なり且つプランジャ3Aの外径と同じ寸法の外径を有し、油圧ピストン4とプランジャ3Aとの間に介在する構造体である。例えば
図3に示すように、中間軸16は、油圧ピストン4の外径よりも小さく且つプランジャ3Aの外径と同じ寸法の外径を有する円柱形状に形成され、油圧ピストン4とプランジャ3Aとの間に介在する。すなわち、中間軸16の軸方向F1の一端部はプランジャ3Aに接合され、中間軸16の軸方向F1の他端部は油圧ピストン4に接合される。これらのプランジャ3Aおよび中間軸16は、
図3に示すように、油圧ピストン4から軸方向F1に延在して燃料供給室12を軸方向F1に貫通する一体の円柱形状体をなす。なお、油圧ピストン4の外径は、中間軸16の外径よりも小さくてもよい。
【0069】
このようなプランジャ3Aは、油圧ピストン4の作用により、プランジャ室11の内壁に沿って軸方向F1に摺動しながら、プランジャ室11の内部を往復運動する。この際、プランジャ3Aは、上述した実施形態1と同様に、プランジャ室11の内部の燃料102を加圧し、これにより、プランジャ室11から外部吐出管7へ燃料102を吐出する。プランジャ3Aが上記のように往復運動する際、中間軸16は、燃料供給室12の内部に位置する。すなわち、中間軸16の少なくとも一部(
図3ではプランジャ3Aと中間軸16との接合部)は、プランジャ3Aとともに燃料供給室12の内部を往復運動する。また、プランジャ3Aが上記のように往復運動する際、油圧ピストン4は、燃料供給室12の外部に位置する。すなわち、油圧ピストン4は、プランジャ3Aの往復運動時に、燃料供給室12の内部へ進入することなく、油圧シリンダ2に沿って往復運動する。
【0070】
また、
図3に示すように、吐出シリンダ1Aには、上述した内部流路13および逆止弁14が設けられておらず、これらの代わりに、内部流路13Aおよび逆止弁14Aが、プランジャ3Aの内部に設けられている。詳細には、
図3に示すように、内部流路13Aは、プランジャ室11の内部と燃料供給室12の内部とを連通するようにプランジャ3Aの内部に設けられる。内部流路13Aは、燃料供給室12からプランジャ室11へ燃料100を流入させる。
【0071】
逆止弁14Aは、内部流路13Aの所定部位に配置されるように、プランジャ3Aの内部に設けられる。例えば、逆止弁14Aは、
図3に示すように内部流路13Aの中途部に配置されてもよいし、内部流路13Aの入口端部(燃料供給室12側の端部)に配置されてもよいし、内部流路13Aの出口端部(プランジャ室11側の端部)に配置されてもよい。逆止弁14Aは、内部流路13Aにおける燃料100の流通方向を燃料供給室12側からプランジャ室11側への一方向に規制する。すなわち、逆止弁14Aは、内部流路13Aを介しての燃料供給室12からプランジャ室11への燃料100(燃料101)の流入を許容するとともに、内部流路13Aを介してのプランジャ室11から燃料供給室12への燃料100(燃料102)の逆流を禁止する。この逆止弁14Aの作用により、内部流路13Aは、プランジャ室11内の燃料102を燃料供給室12側へ逆流させることなく、燃料供給室12内の燃料101をプランジャ室11内へ流入させることができる。
【0072】
支持部18は、上述したプランジャ3Aと油圧ピストン4との間に介在する中間軸16を摺動自在に支持するものである。例えば、
図3に示すように、支持部18は、油圧シリンダ2の油圧室21から所定の空間をあけて離間するように、吐出シリンダ1Aの内部に設けられる。支持部18は、中間軸16の外壁と径方向F2に対向する内壁を有し、当該内壁によって囲まれる空間内に、中間軸16を摺動自在に支持する。
【0073】
また、本実施形態2においては、
図3に示すように、油圧シリンダ2に上記シール油溝22が設けられておらず、これの代わりに、シール油溝22Aが、支持部18の内壁に設けられている。シール油溝22Aは、シール部5Aを構成するシール油を溜めるための溝である。例えば
図3に示すように、シール油溝22Aは、中間軸16を径方向F2から囲むように、支持部18の内周方向に沿って環状に形成される。シール油溝22Aの内部には、上述した実施形態1のシール油溝22と同様にシール油が供給される。シール油溝22Aは、この供給されたシール油を溜めることにより、当該シール油からなるシール部5Aを形成する。
【0074】
シール部5Aは、燃料供給室12から油圧室21側へ漏洩するリーク燃料の流れを阻止するものである。例えば
図3に示すように、シール部5Aは、シール油溝22Aに溜められたシール油によって構成され、シール油溝22Aに沿って環状に形成される。本実施形態2において、シール部5Aは、
図3に示すように、中間軸16と支持部18との隙間をシールする。これにより、シール部5Aは、燃料供給室12から中間軸16と支持部18との隙間へ漏洩するリーク燃料の流れを阻止し、このリーク燃料と作動油110との混合を抑制する。このリーク燃料は、上述した実施形態1と同様に、燃料供給室12内の燃料101と同じ燃料である。すなわち、このリーク燃料の圧力は、燃料供給室12内の燃料101と同じ一定の圧力である。したがって、シール部5Aとしてのシール油の圧力は、このリーク燃料の流れを阻止するに十分な圧力に設定されればよく、例えば、燃料供給室12内の燃料101の圧力以上、プランジャ3Aによる加圧時の燃料102の圧力未満における一定の圧力に設定される。
【0075】
また、
図3に示すように、中間軸16は、シール油を利用して中間軸16と支持部18との摺動部に潤滑油の油膜を形成するための油溝17を有する。詳細には、
図3に示すように、油溝17は、支持部18の内壁と径方向F2に対向するように中間軸16の外壁に設けられる。例えば、油溝17は、中間軸16の外周方向に沿って環状をなすように形成されてもよいし、中間軸16の外周方向に所望の間隔(好ましくは等間隔)で並ぶように形成されてもよい。油溝17は、プランジャ3Aの往復運動に伴い、中間軸16とともに軸方向F1に移動(往復)して、シール油溝22A内のシール油を通過する。なお、上述したシール部5Aは、中間軸16と支持部18との間に形成された当該シール油によって構成される。油溝17は、当該シール油(すなわちシール部5A)を通過するとともに当該シール油の一部を受け入れ、受け入れたシール油を利用して、中間軸16と支持部18との摺動部に油膜を形成する。この形成された油膜は、中間軸16と支持部18との摺動部における潤滑性を確保するための潤滑油の油膜として機能する。
【0076】
なお、本実施形態2において、ドレン排出管9は、シール部5Aよりも燃料供給室12から離間した部位の空間、例えば
図3に示すように、支持部18と油圧シリンダ2の油圧室21との間の空間に通じるように、吐出シリンダ1Aに設けられている。このドレン排出管9は、上記空間内の油成分を、ドレン液120として上記空間から燃料供給ポンプ10Aの外部へ排出する。例えば、上記空間内の油成分としては、中間軸16と支持部18との摺動部の隙間から上記空間内へ漏れ出たシール油や潤滑油、油圧ピストン4と油圧シリンダ2との摺動部の隙間から上記空間内へ漏れ出た作動油110や潤滑油等が挙げられる。
【0077】
つぎに、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプ10Aの動作について詳細に説明する。
図4は、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプの動作の一例を示す模式図である。
図4に示すように、燃料供給ポンプ10Aは、油圧シリンダ2の油圧室21内に圧入された作動油110の圧力を利用して、油圧ピストン4とともに中間軸16およびプランジャ3Aを作動させることにより、吐出対象の燃料102を加圧して吐出する。
【0078】
詳細には、
図4に示すように、吐出対象の燃料102を吐出する前の状態S11の燃料供給ポンプ10Aにおいて、燃料供給室12は、上述した実施形態1の状態S1(
図2参照)と同様に、外部供給管6から流入した燃料100(燃料101)を貯蔵するとともに燃料101で満たされた状態にある。プランジャ室11は、燃料供給室12から内部流路13Aおよび逆止弁14Aを介して流入した燃料101を、吐出対象の燃料102として貯蔵するとともに、この貯蔵した燃料102で満たされた状態にある。
【0079】
状態S11において、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、外部供給管6からの燃料100の供給圧力と同じ一定の圧力に維持されている。また、プランジャ室11内の燃料102の圧力は、燃料供給室12内の燃料101の圧力に比べて、プランジャ室11内への燃料101の流入時に逆止弁14Aを開状態にした分、若干低い圧力になっている。
【0080】
ここで、プランジャ3Aとプランジャ室11との隙間(詳細には、これら両者同士の摺動部の隙間)から燃料供給室12側へ燃料102が漏洩した場合、この漏洩した燃料102であるリーク燃料は、
図4に示すように、燃料供給室12内へ流入して燃料供給室12内の燃料101と混ざる。この場合、当該リーク燃料は燃料供給室12内の燃料101と実質的に同じ燃料であるから、上述した実施形態1の状態S1と同様に、問題にはならない。また、当該リーク燃料と燃料101との混合に伴い、増量した分の燃料101は、例えば、燃料供給室12から内部流路13Aを介してプランジャ室11の内部へ戻る。これにより、当該リーク燃料との混合後の燃料101の圧力は、上述した実施形態1の状態S1と同様に、上記一定の圧力に維持される。
【0081】
また、
図4に示すように、状態S11においては、燃料供給室12から油圧室21側(具体的には中間軸16と支持部18との摺動部の隙間)へ、燃料101が漏洩する場合がある。この場合、燃料101の漏洩時の圧力は、上記一定の圧力である。シール部5Aは、上記一定の圧力に対抗するに十分な圧力のシール油によって構成されるため、燃料供給室12から中間軸16と支持部18との摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の流れを阻止することができる。これにより、燃料供給室12からのリーク燃料(燃料101)と作動油110との混合が抑制される。ドレン排出管9は、このようにリーク燃料と作動油110との混合が抑制されつつドレン液120を燃料供給ポンプ10Aから排出する。
【0082】
つぎに、上記状態S11の燃料供給ポンプ10Aの油圧室21内へ作動油110が圧入された場合、
図4に示すように、油圧ピストン4は、この作動油110の圧力を利用して、プランジャ室11を圧縮する方向に中間軸16およびプランジャ3Aを作動させる。中間軸16は、油圧ピストン4の作用により、支持部18の内部を摺動しつつプランジャ室11側の方向へ移動する。これに伴い、プランジャ3Aは、中間軸16を介した油圧ピストン4の作用により、プランジャ室11内の燃料102を加圧する。加圧された燃料102は、プランジャ室11から外部吐出管7を介して燃料消費機器側へ吐出される。
【0083】
詳細には、
図4に示すように、吐出対象の燃料102を吐出する際の状態S12の燃料供給ポンプ10Aにおいて、プランジャ室11内の燃料102は、プランジャ3Aの加圧によって高圧化される。このとき、プランジャ室11内の燃料102の圧力は、上述した実施形態1の状態S2と同様に、高い圧力になっている。また、状態S12においては、
図4に示すように、プランジャ3Aの作動に伴って中間軸16が燃料供給室12内を移動(前進)する。この中間軸16の外径はプランジャ3Aの外径と同じであるから、プランジャ3Aによる燃料102の加圧時において、燃料供給室12の容積は、変化せず一定である。したがって、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、状態S12において、外部供給管6からの燃料100の供給圧力と同じ一定の圧力に維持される。
【0084】
状態S12において、プランジャ3とプランジャ室11との摺動部の隙間から燃料供給室12側へ加圧後の燃料102が漏洩した場合、この漏洩した燃料102である高圧リーク燃料は、
図4に示すように、燃料供給室12内へ流入して燃料供給室12内の燃料101と混ざる。この場合、当該高圧リーク燃料と燃料101との混合に伴い、増量した分の燃料101は、例えば
図4に示すように、燃料供給室12から外部供給管6の内部へ戻る。これにより、当該高圧リーク燃料の圧力が燃料101の圧力に変換(緩和)されるとともに、当該高圧リーク燃料との混合後の燃料101の圧力が、上記一定の圧力に維持される。また、当該高圧リーク燃料は、高圧であること以外、燃料供給室12内の燃料101と実質的に同じ燃料であるから、当該高圧リーク燃料と燃料101との混合は、上記状態S11と同様に問題にはならない。
【0085】
なお、上記加圧後の燃料102は、逆止弁14Aの作用により、プランジャ室11から内部流路13Aを介して燃料供給室12へ逆流することはない。また、状態S12において、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、上記高圧リーク燃料と燃料101との混合後も含め、プランジャ室11内の燃料102の圧力よりも低い。したがって、上記燃料101が燃料供給室12(低圧側)から内部流路13Aを介してプランジャ室11(高圧側)へ流入することは殆どない。
【0086】
また、
図4に示すように、状態S12においても上記状態S11と同様に、燃料供給室12から中間軸16と支持部18との摺動部の隙間へ、燃料101が漏洩する場合がある。しかし、上記摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の圧力は、たとえ上記高圧リーク燃料が燃料供給室12内へ流入しても、上記一定の圧力である。したがって、シール部5Aは、状態S12においても上記状態S11と同様に、燃料供給室12から中間軸16と支持部18との摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の流れを阻止することができる。これにより、状態S12における燃料供給室12からのリーク燃料(燃料101)と作動油110との混合は、上記状態S11と同様に抑制される。ドレン排出管9は、状態S12においても、リーク燃料と作動油110との混合が抑制されつつドレン液120を燃料供給ポンプ10Aから排出することが可能である。
【0087】
上記状態S12の燃料供給ポンプ10Aによる燃料102の吐出が終了した場合、プランジャ室11の内部圧力は、燃料100の供給圧力に比べて低い圧力になる。この場合、
図4に示すように、外部供給管6から燃料供給室12の内部へ燃料100が供給され、供給された燃料100(燃料101)が燃料供給室12内から内部流路13Aを介してプランジャ室11内へ供給(補給)される。これに伴い、プランジャ3A、中間軸16および油圧ピストン4は、作動前の位置に戻る。
【0088】
詳細には、
図4に示すように、吐出対象の燃料102を吐出し終えた状態S13の燃料供給ポンプ10Aにおいて、燃料供給室12は、上述した実施形態1の状態S3と同様に、外部供給管6から燃料100を受け入れて貯蔵する(燃料101の貯蔵)。燃料101は、燃料供給室12内から内部流路13Aを介してプランジャ室11内へ流入する。プランジャ室11は、内部流路13Aから流入した燃料101を、吐出対象の燃料102として貯蔵する。このとき、プランジャ室11内の燃料102の圧力は、上記燃料100の供給圧力に比べて、プランジャ室11内への燃料101の流入時に逆止弁14Aを開状態にした分、若干低い圧力になっている。この燃料102の圧力により、プランジャ3Aは、吐出対象の燃料102を加圧する前の位置まで押し戻される。
【0089】
上記プランジャ3の移動(後退)に伴い、中間軸16は、支持部18の内部を摺動しつつプランジャ室11から離間する方向へ移動(後退)する。このとき、中間軸16は、
図4に示すように、プランジャ室11側から油圧室21側に向かって燃料供給室12の内部を後退する。上述したように、中間軸16の外径はプランジャ3Aの外径と同じであるから、プランジャ室11内への燃料供給時(プランジャ3Aの後退時)において、燃料供給室12の容積は、変化せず一定である。したがって、燃料供給室12内の燃料101の圧力は、状態S13において、上記燃料100の供給圧力と同じ一定の圧力に維持される。なお、油圧ピストン4は、上記プランジャ3の移動(後退)に伴い、上述した実施形態1の状態S3と同様に、油圧室21から作動油110を押し出しながら後退して、プランジャ3Aを作動させる前の位置に戻る。
【0090】
状態S13において、プランジャ3Aとプランジャ室11との摺動部の隙間から燃料供給室12側へ燃料102が漏洩した場合、この漏洩した燃料102であるリーク燃料は、
図4に示すように、燃料供給室12内へ流入して燃料供給室12内の燃料101と混ざる。この場合、当該リーク燃料と燃料101との混合に伴い、増量した分の燃料101は、上記状態S11と同様に、燃料供給室12から内部流路13Aを介してプランジャ室11の内部へ戻る。これにより、当該リーク燃料の圧力が燃料101の圧力に変換(緩和)されるとともに、当該リーク燃料との混合後の燃料101の圧力が、上記一定の圧力に維持される。また、当該リーク燃料は、燃料供給室12内の燃料101と実質的に同じ燃料であるから、当該リーク燃料と燃料101との混合は、上記状態S11、S12と同様に問題にはならない。
【0091】
また、
図4に示すように、状態S13においても上記状態S11と同様に、燃料供給室12から中間軸16と支持部18との摺動部の隙間へ、燃料101が漏洩する場合がある。しかし、上記摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の圧力は、上記一定の圧力である。したがって、シール部5Aは、状態S13においても上記状態S11と同様に、燃料供給室12から中間軸16と支持部18との摺動部の隙間へ漏洩する燃料101の流れを阻止することができる。これにより、状態S13における燃料供給室12からのリーク燃料(燃料101)と作動油110との混合は、上記状態S11と同様に抑制される。ドレン排出管9は、状態S13においても、リーク燃料と作動油110との混合が抑制されつつドレン液120を燃料供給ポンプ10Aから排出することが可能である。
【0092】
図5は、プランジャの往復運動に伴う中間軸の油溝の作用を説明する図である。燃料供給ポンプ10Aが燃料102を吐出する場合(
図4の状態S12参照)、中間軸16は、
図5に示すように、支持部18の内部を摺動しつつ、プランジャ3Aとともに燃料供給室12の内部を前進する。このとき、油溝17は、中間軸16の前進に伴い、燃料供給室12に接近する方向へ移動しながらシール油溝22A内のシール油を通過し、このシール油(シール部5A)の一部を受け入れる。油溝17は、この受け入れたシール油を支持部18の内壁面に付与する。
【0093】
また、燃料供給ポンプ10A内に燃料100が供給される場合(
図4の状態S13参照)、中間軸16は、
図5に示すように、支持部18の内部を摺動しつつ、プランジャ3Aとともに燃料供給室12の内部を後退する。このとき、油溝17は、中間軸16の後退に伴い、燃料供給室12から離間する方向へ移動しながらシール油溝22A内のシール油を通過し、このシール油(シール部5A)の一部を受け入れる。油溝17は、この受け入れたシール油を支持部18の内壁面に付与する。
【0094】
油溝17は、上述したシール油の通過を繰り返すことにより、支持部18の内壁に対し、シール油溝22Aを挟んで両側の領域に付与し続ける。中間軸16は、このように付与されたシール油を、支持部18と摺動しながら支持部18の内壁に塗り広げる。これにより、中間軸16と支持部18との摺動部の隙間には、
図5に示すように、シール油の油膜115が形成される。この油膜115により、中間軸16と支持部18との摺動部の潤滑性が確保される。
【0095】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプ10Aでは、上述した実施形態1のプランジャ3の代わりにプランジャ3Aを設け、シール部5の代わりにシール部5Aを設け、シール油溝22の代わりにシール油溝22Aを設け、さらに、中間軸16と、油溝17と、支持部18とを設けて、その他を実施形態1と同様にしている。この燃料供給ポンプ10Aにおいて、プランジャ3Aの内部に、燃料供給室12からプランジャ室11へ燃料100を流入させる内部流路13Aと、逆止弁14Aとを設け、この逆止弁14Aにより、燃料供給室12からプランジャ室11へ燃料100の流入を許容するとともに、プランジャ室11から燃料供給室12への燃料100の逆流を禁止している。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、プランジャ3Aが往復運動するプランジャ室11および燃料供給室12を有する吐出シリンダ1Aを、実施形態1の吐出シリンダ1よりも小型化(特に径方向F2について小型化)することができ、これにより、燃料供給ポンプ10Aの小型化を促進することができる。
【0096】
また、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプ10Aでは、油圧ピストン4の外径と異なり且つプランジャ3Aの外径と同じ寸法の外径を有する中間軸16を、プランジャ3Aと油圧ピストン4との間に介在させ、プランジャ3Aの往復運動の際、中間軸16が燃料供給室12の内部に位置し、油圧ピストン4が燃料供給室12の外部に位置するようにしている。このため、プランジャ3Aの往復運動の際において、燃料供給室12の容積変化を抑制することができ、これにより、燃料供給室12内の燃料101の圧力を、実施形態1の場合よりも一定の圧力に維持できることから、プランジャ室11からのリーク燃料の圧力変化を、燃料供給室12内のより一定な燃料圧力に緩和することができる。この結果、プランジャ室11からのリーク燃料を、より一定圧力に維持されたリーク燃料に変換して、当該リーク燃料の流れをシール部5Aによって容易に阻止することができる。
【0097】
また、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプ10Aでは、中間軸16を摺動自在に支持する支持部18を設け、中間軸16と支持部18との隙間をシール部5Aによってシールしている。このため、燃料供給室12からのリーク燃料の流れをシール部5Aによって効率よく抑制することができる。
【0098】
また、本発明の実施形態2に係る燃料供給ポンプ10Aでは、中間軸16と支持部18との間に形成されたシール油によってシール部5Aを構成し、中間軸16に設けた油溝17が、プランジャ3Aの往復運動に伴って当該シール油を通過するようにしている。このため、シール部5Aを構成するシール油の一部を、油溝17により、中間軸16と支持部18との摺動部に付与することができ、この付与したシール油の油膜により、中間軸16と支持部18との摺動部の潤滑性を確保することができる。
【0099】
なお、上述した実施形態1、2では、シール油によってシール部5、5Aを構成していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、シール部5、5Aの各々は、シールリング等のシール材によって構成されてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態1では、シール部5を構成するためのシール油を溜めるシール油溝22が、油圧シリンダ2の内壁に形成されていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、シール油溝22は、油圧シリンダ2の内壁と摺接する油圧ピストン4の外壁に形成されてもよい。
【0101】
また、上述した実施形態2では、シール部5Aを構成するためのシール油を溜めるシール油溝22Aが、支持部18の内壁に形成されていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、シール油溝22Aは、支持部18の内壁と摺接する中間軸16の外壁に形成されてもよい。
【0102】
また、上述した実施形態1では、油圧シリンダ2との隙間に供給された潤滑油によって潤滑性が確保された油圧ピストン4を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、油圧ピストン4の外壁に油溝を設け、油圧ピストンの往復運動に伴い、当該油溝がシール部5を通過することにより、シール部5のシール油を油圧シリンダ2と油圧ピストン4との隙間に付与して潤滑油の油膜を形成してもよい。
【0103】
また、上述した実施形態1、2により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、上述した実施形態1におけるプランジャ3の内部に内部流路13および逆止弁14を設けてもよい。その他、上述した実施形態1、2に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1、1A 吐出シリンダ
2 油圧シリンダ
3、3A プランジャ
4 油圧ピストン
5、5A シール部
6 外部供給管
7 外部吐出管
8 吐出逆止弁
9 ドレン排出管
10、10A 燃料供給ポンプ
11 プランジャ室
12 燃料供給室
13、13A 内部流路
14、14A 逆止弁
15 吐出部
16 中間軸
17 油溝
18 支持部
21 油圧室
22、22A シール油溝
31 排出管
32 排出弁
100、101、102 燃料
110 作動油
115 油膜
120 ドレン液
F1 軸方向
F2 径方向