(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172409
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】組織同志度評価方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20241205BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090113
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】504358609
【氏名又は名称】株式会社パラドックス
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】井手 亮介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐介
(72)【発明者】
【氏名】安藤 亘
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彩
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA01
5L049AA01
(57)【要約】
【課題】組織の方向性に資する同志度という新たな指標についてのデータ算出を、所定のアルゴリズムに従ってコンピュータ処理することで実現する組織同志度評価方法を提供する。
【解決手段】同じ組織に属する複数人からの回答を利用し所定のアルゴリズムに従ってコンピュータにより処理することにより、前記複数人が所属する前記組織の同志度を算出する組織同志度評価方法であって、前記回答から相互認知、相互共感、および相互貢献についてのデータを取得するステップと、これらの取得された相互認知、相互共感、及び相互貢献についてのデータを個人から組織と組織から個人へのデータに分けて処理するステップを実行して当該組織の同志度を得ることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ組織に属する複数人からの回答を利用し所定のアルゴリズムに従ってコンピュータにより処理することにより、前記複数人が所属する前記組織の同志度を算出する組織同志度評価方法において、
前記回答から相互認知、相互共感、及び相互貢献についてのデータを取得するステップと、
これらの取得された相互認知、相互共感、及び相互貢献についてのデータを個人から組織に対してのデータと組織から個人に対してのデータに分けて処理するステップを実行して当該組織の同志度を得ることを特徴とする組織同志度評価方法。
【請求項2】
請求項1の組織同志度評価方法であって、前記相互認知、前記相互共感、及び前記相互貢献についての各データについて、価値観、強み、ありたい姿の3つの項目への細分化をすることを特徴とする組織同志度評価方法。
【請求項3】
請求項1の組織同志度評価方法であって、前記同組織に属する複数人からの前記回答は、組織及びその人員に関連する、前記コンピュータにより提示された設問に対する回答であることを特徴とする組織同志度評価方法。
【請求項4】
請求項1の組織同志度評価方法であって、得られた同志度について前記相互認知、前記相互共感、及び前記相互貢献の各データを重ね合わせた図形で表示するステップを実行することを特徴とする組織同志度評価方法。
【請求項5】
請求項1の組織同志度評価方法であって、組織の同志度については属性情報に応じた出力をすることができることを特徴とする組織同志度評価方法。
【請求項6】
請求項1の組織同志度評価方法であって、同じ組織の異なる2つの時点で、それぞれ組織の同志度を算出する評価を行い、その2つの時点の間での変化を示すことを特徴とする組織同志度評価方法。
【請求項7】
請求項1の組織同志度評価方法であって、異なる組織のそれぞれ組織の同志度を算出する評価を行い、その2つの評価の違いを示すことを特徴とする組織同志度評価方法。
【請求項8】
請求項1の組織同志度評価方法であって、前記回答には、欲求の充足度、誇り、および職場推奨度の中から少なくとも1つに関する設問の回答が含まれることを特徴とする組織同志度評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の人員が所属する組織の同志度を評価するための組織同志度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会での企業やグループなどの複数の人員が所属する組織では、団結した力が効率良く発揮されているかどうかは組織の発展のための重要な鍵であり、組織の理念が十分に共有され、組織が約束する価値を提供し続けるようなマネジメントが求められつつある。組織の構造に着目した場合には、人と組織、また会社などの場合には、社員と企業がお互いの志を認知し、共感し、貢献し合う、相互の志がどれくらい結びついているのかを資する指標が求められている。
【0003】
このような指標を求める手段の1つとして、アンケートを活用する方法が知られており、特許文献1には、企業経営を評価・診断し、それを高めるためのコミュニティを自動生成する知識経営診断方法として、従業員の意識や働き方等に関するアンケートを集め、そのアンケートに基づき、組織の経営状況を診断し、改善・改革の方向性を示すと共に、特定の知識に興味を持つ人々やワークスタイルの近い人々のコミュニティを自動生成する技術が開示されている。また、本発明の組織の強化・改善を支援するエンゲージメントシステムは、長期スパンでのサーベイと、短期スパンでの小規模サーベイを行うことにより、組織の強化・改善を支援するエンゲージメントシステムにおいて、長期スパンでの前記サーベイのサーベイ集計結果を分析した結果に基づいて、短期スパンでの前記小規模サーベイに用いるサーベイ設問を選択するシステムなども知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-207844号公報
【特許文献2】特許第6208911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンケートを求めて回答を活用する方法の多くは、組織の対象者から収集し蓄積したデータを用いて調査および分析をしているものの、組織や経営の方向性についてはトップダウン的な分析がなされているか、若しくはその組織や経営の方向性については全く分析されていないかのどちらかである。したがって、組織や経営の方向性について問われた場合に、組織の理想と合っているかどうかの指標に終始する傾向があり、現状を分析しながら新たな組織の方向性に資する指標についてのデータ算出が求められている。
【0006】
そこで、本発明は上述の技術的な課題に鑑み、新たな組織の方向性に資する指標についてのデータ算出を、所定のアルゴリズムに従ってコンピュータ処理することで実現する組織同志度評価方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題に鑑み、本発明の組織同志度評価方法においては、同じ組織に属する複数人からの回答を利用し所定のアルゴリズムに従ってコンピュータにより処理することにより、前記複数人が所属する前記組織の同志度を算出する組織同志度評価方法であって、前記回答から相互認知、相互共感、および相互貢献についてのデータを取得するステップと、これらの取得された相互認知、相互共感、及び相互貢献についてのデータを個人から組織に対してのデータと組織から個人に対してのデータに分けて処理するステップを実行して当該組織の同志度を得ることを特徴とする。
【0008】
従来の組織の方向性に資する指標は、単純な数値や言葉で表現される、単方向の場合が多いが、本発明の組織同志度評価方法においては、少なくとも個人から組織に対してと組織から個人に対してのデータに分けた双方向の数値とすることができ、より深いレベルでの同志度を表現できる。ここでいう組織同志度とは、組織と個人がどの程度、志の接点で働けているか、つまり叶え合うことができているかという本件出願人が提案する独自の基準を表す。このような同志度の表現に際して、さらに前記相互認知、前記相互共感、及び前記相互貢献についての各データについて、価値観、強み、ありたい姿の3つの項目への細分化をすることも可能であり、その細分化したデータについても表示することができる。
【0009】
また、好適な実施形態によれば、前記同組織に属する複数人からの前記回答は、組織及びその人員に関連する、前記コンピュータにより提示された設問に対する回答とすることができ、得られた同志度について相互認知、相互共感、及び相互貢献の各データを重ね合わせた図形で表示するステップを実行することも可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムの全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムのサーバーの機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムのデータベースに格納されるデータセットの一例を示す模式図である。
【
図4】本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムの出力結果となるユーザーインターフェースを示す図である。
【
図5】本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムの出力結果となるユーザーインターフェースを示す図であって、同志度を示す図である。
【
図6】本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムの出力結果となるユーザーインターフェースを示す図であって、同志度の内容を表で示す図である。
【
図7】本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムの出力結果となるユーザーインターフェースを示す図であって、同志度以外のファクターを示す図である。
【
図8】本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムにおいて、サーバーから取り出した質問の一部と同志度データを示す図である。
【
図9】本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムにおいて、回答者に出される質問のユーザーインターフェースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不合理に限定するものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らないものである。
【0012】
本実施形態の組織同志度評価方法は、所定のアルゴリズムに従ってコンピュータにより処理することにより実現される評価方法であり、所要の契約に基づいて利用者となった組織に向けてネットを介して提供されるサービス形態をとるものである。具体的には、
図1に示すような通信環境下で、有線又は無線の通信規格を用い、例えばインターネットなどのネットワーク14を介して相互に通信可能に接続され、サーバー10と複数の端末12の間で信号を送受信しながら処理を進めることができる。サーバー10には、管理プログラム、端末12でのユーザーインターフェースを作成するプログラムなどの所定のアルゴリズムが収納され、プログラムへのアクセスを介して組織同志度評価方法を実現する。端末12は通常のPC(パーソナルコンピュータ)や、スマートフォン、タブレット端末などの種々の電子機器を利用することができ、ブラウザーを開いて所定のデータの送受信をすることができる。サーバー10へのアルゴリズムのインストールやサーベイ対象の設定などは、本サービスの提供者が扱う管理用端末16を用いて行われる。
【0013】
図1に示す例では、組織Aに複数台の端末12が配置されて、組織に属する個人が操作するところを図示しており、サーバー10は同時に他の組織B、組織Cも同様な組織同志度評価方法を実現させることができ、これらの組織B、組織Cは同じ会社の別部門を対象とすることもでき、同志度の評価としては独立した異なる企業の別組織であっても良い。各組織A~Cには、それぞれ複数の個人が属していることが前提となるが、ここでは組織Aを典型例として説明する。
【0014】
図2は本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムのサーバーの機能的な構成を示す。そのシステム上で展開するステップについて説明すると、初めに評価される組織に対しての準備のステップがあり、次に組織に属する個人への質問および回答を得るステップがあり、そのような個人からの回答を複数集計するステップがあり、最終的に評価された組織同志度を提示するステップがある。これらの各ステップは本実施形態の組織同志度評価方法を実施するシステムのプログラムに従って進められる。なおプログラム自体やデータは、サーバー10内のデータベース20に格納されており、必要に応じてクライアントまで呼び出される。
【0015】
組織同志度評価方法の実施の準備のステップでは、組織A自体が契約などで、まず利用者となることが最初であり、組織Aが利用者となったところで、その組織Aに属する個人の人数に応じた回答者ログインIDを発行し、できればパスワードも発行して、予定した組織Aに属する個人にだけ組織同志度評価方法の実行システムへのアクセスを促す。例えば回答者ログインIDを組織発行の電子メールアドレスとすることもでき、ログインIDと紐付けされた個人毎の処理番号を付与することもできる。
【0016】
次に、組織Aに属する個人は、それぞれ回答開始する前若しくは回答を提出する前に、属性情報を入力する。主な属性情報としては、性別、年齢、在籍年数、雇用形態、配属地域、役職、職種などであり、これらは利用者に応じて適宜カスタマイズすることも可能である。例えば、前職や転職回数などを属性情報として入力することもでき、組織がサッカーやバスケットボールなどのプロスポーツチームである場合には、ポジジョンや年俸などの属性情報を追加することもでき、多国籍企業であれば、学歴、国籍や母国語を追加することができ、IT系のエンジニアからなる組織には有資格や可能なプログラム言語などを追加することができる。また、契約後に予め情報を取得して、個人が入力するのではなく、回答者ログインIDの発行時点でこれらの属性情報を入力済みとすることもできる。
【0017】
また、組織同志度評価方法の実施の準備のステップでは、組織に適合する質問の組を選ぶことも可能とされる。本実施形態の組織同志度評価方法では、概ね80問から90問程度の質問が1つの質問の組を構成するように準備される。なお、1つの質問の組を構成する設問数は、組織の特性やその他の要因に応じて変えることもできる。この質問の組は概ね一定の内容を含む様に準備され、例えば、1つの質問の組の内容を変更せずに、他の組織に用いることもできる。80~90問程度の各質問は、i)個人から組織に対してのデータ、ii)組織から個人に対してのデータ、iii)個人から組織に対してと組織から個人に対しての双方向のデータに分けることができ、さらに、各質問を価値観、強み、ありたい姿に関連付けするとともに、これらの各質問毎に相互認知、相互共感、相互貢献の各因子に分類する。この予め設定された分類項目は、質問を受けて回答する者には示されず、回答する者は質問だけを一例として5段階評価で回答できるように配信される。また、5段階評価で回答する質問だけではなく、記述式な回答すなわち質問に対して自分の考えを表現する文字による回答も5~10問程度含めることができる。なお、5段階は他の評価法、例えば10段階や数値化可能な英字(ABCD&F)を用いた評価法であっても良い。
【0018】
ここで
図9に、質問の例を示す。
図9には、回答時の質問を表示したスクリーンショットであり、その質問の組の番号21から番号34までの質問を表示している。例えば質問21は、“自分の強みを言葉にできる”という問いであり、それを5段階の“1 全く言葉にできない、3 どちらとも言えない、5 明確に言葉にできる”とし、段階2と段階4は補完する形式で、1つの自分の段階を選択することで回答する。同様に、質問33は、“私は自社の強みを生かしてお客様に貢献している”という問いであり、それを5段階の“1 全くそう思わない、3 どちらとも言えない、5 非常そう思う”とし、段階2と段階4は補完する形式で、1つの自分の段階を選択することで回答する。回答者には、このような問いが80~90問程度の質問として与えられ、回答者は所定の時間内での回答をする。また、質問の中には、5段階の評価ではない、自由形式の回答欄を設けることができる。例えば、“Q31について、あなたの理解をご記述ください”というような問いかけをして、空欄にテキスト文字を入力する方法で回答する。これに対しては、テキストマイニングの手法で自動化した評価をすることも可能であり、その評価に応じて他の質問の重み付けを変化させることも可能である。
【0019】
回答者に対する回答欄には表示されないものの、各質問には、それぞれ相互認知、相互共感、相互貢献の各因子に分類するデータと、価値観、強み、ありたい姿に関連付けするデータと、組織と個人の同志度の方向性についてのデータが付属し、これらはデータベースに質問の内容と共に格納される。一例を挙げれば、相互認知、相互共感、相互貢献の各因子に分類するデータは、例えば“mutual factor”という文字列に対して格納され、”recognition”, “sympathy”, “contribution”若しくは“all”の文字で識別される。価値観、強み、ありたい姿に関連付けするデータは、例えば“basic feature” という文字列に対して格納され、“concepted value”, “strength”, “ideal style”の文字で識別される。組織と個人の同志度の方向性についてのデータは、例えば“direction”の文字列に対して格納され、”organization”、“person”、“both”の文字で識別される。先の質問の例で説明すると、質問21の “自分の強みを言葉にできる”という問いについては、相互認知、相互共感、相互貢献の各因子に分類するデータは共通とされ、関連付けされる基本的特徴のデータは強みであり、同志度の方向性についてのデータは、[basic feature=”strength”; mutual factor=”recognition”; direction=”person”]のコーディングと共にデータベースに格納される。また、質問の例で、質問33の“私は自社の強みを生かしてお客様に貢献している”の問いについては、相互認知、相互共感、相互貢献の各相互因子に分類するデータは共通とされ、関連付けされる基本的特徴のデータは強みであり、同志度の方向性についてのデータは、[basic feature=”strength”; mutual factor=” contribution”; direction=” organization”]のコーディングと共にデータベースに格納される。また、質問の例で、質問16の“私は自社の理念を言葉にできる”の問いについては、相互認知、相互共感、相互貢献の各相互因子に分類するデータは相互認知とされ、関連付けされる基本的特徴のデータは価値感であり、同志度の方向性についてのデータは個人から組織の方向と分類されるため、[basic feature=” concepted value”; mutual factor=”recognition”; direction=”organization”]のコーディングと共にデータベースに格納される。このような質問作成は、
図2の質問形成部24に対して、システム管理部22からのアクセスによって処理を実行することで進められる。
【0020】
質問については、
図3に示すような形式でデータベースに格納可能である。各質問には番号が付与されており、図示の例では質問21の番号部35のデータを表示している。次にコーディングの格納部36があり、basic feature; mutual factor; directionの3つの因子のデータが格納される。質問の内容は質問内容部37に文字列として保存されるものであり、
図2のシステム管理部22を操作することで、編集、保存、消去、複写などを各質問に対して行うことができる。
【0021】
複数の質問をデータベースに格納して、それらの質問を回答者に提示することは、多くのアンケートをとるシステムで行われていることであるが、このようなデータベースを使用することで、設問の一部を回答に応じた条件でジャンプさせ、少し変更を加えた質問の組を回答者に与えることも可能である。例えば、属性情報の年齢で、質問の組を変化させたり、質問の中の1つに、条件を入れて、その他の質問の一部を他の設問と入れ替えたりするようにもできる。例えば、設問の前半で回答者が強みに関して4.5以上の点数がある場合に、後半の質問の一部を入れ替えることも可能である。
【0022】
以上のような質問の組を準備した後、次に組織に属する個人への質問および回答を得るステップとして、例えば、
図2に示すシステム管理部22の機能により、電子メールに参加用のURLを付加して複数の回答者に送信し、複数の回答者には参加用のパスワードも第3者には秘匿される手段で渡す。回答者は、リモート環境での回答も可能であり、
図2に示す入力部26の機能を発揮するPC、携帯端末或いはタブレット端末などによって回答をする。本実施形態の組織同志度評価方法の実施の際には、複数の回答者が同時若しくは所要の時間差の範囲内でそれぞれ回答を行い、質問についての回答を完了する。回答を完了する前には、提出ボタンがあり、提出ボタンを選択した場合にその回答者の回答の提出となる。
【0023】
次に、複数の個人からの回答を集計するステップについては、各質問における前述のコーディングに従った仕分け作業が進められる。仕分け作業は、各回答者のID毎に、前記回答から相互認知についてのデータを取得するステップと、相互共感についてのデータを取得するステップと、相互貢献についてのデータを取得するステップとを繰り返して、該当する場合には、その回答値を記憶する。
図2のサーバーの機能的な構成に従えば、相互認知・相互共感・相互貢献算出部30を作動させて相互因子として該当する値を抽出し、価値観・強み・ありたい姿算出部32を作動させて関連付けされる基本的特徴のデータの値を抽出し、個人から組織に対しての方向と組織から個人に対しての方向への方向性同志度算出部34を作動させて、個人から組織に対しての方向と、組織から個人に対しての方向、或いは両方向なのかを判断してデータをセットする。セットする値は回答者の該当する質問の回答であり、一旦、
図6に示すマトリクスの各区分の全てに回答された値をセットし、不要と判断された区分の値を消去するように相互認知・相互共感・相互貢献算出部30、価値観・強み・ありたい姿算出部32、方向性同志度算出部34を作動させても良い。このような値についての処理を1人の回答者について最初の質問(1)から最後の質問まで進める。1人の回答者が済んだところで、他の回答者についても進める。その組織で予定されている全員の回答についての処理が完了すると、複数の個人からの回答を集計するステップの終了となる。
【0024】
質問ごとの処理について、より具体的には、例えば、質問16の “自分の強みを言葉にできる”という問いに対して或る回答者が3を入力したとすると、質問16は、[ basic feature=” concepted value”; mutual factor=”recognition”; direction=”organization”]のコーディングがされているために、価値観の区分で、相互認知の区分で、さらに個人から組織に対しての方向性について区分だけが3ポイントの加算となる。また、質問21の “自分の強みを言葉にできる”という問いに対して或る回答者が4を入力したとすると、質問21は、[basic feature=”strength”; mutual factor=”recognition”; direction=”person”]のコーディングがされているために、同様に強みの区分であって、相互認知の区分の、組織から個人に対しての方向性の区分だけに4ポイントが加算される。なお、強みの相互共感については集計をしないものとしている。
【0025】
各区分の合計は値の加算回数で割ることで、その組織についての平均値を出すことができる。本実施形態の組織同志度評価方法では、質問の回答が数値の1~5で応答されることから、この間の平均値が集計値として記憶されることになる。多くの場合は、3点台となり、全部の回答者が5ポイントとした場合だけ5.00となる。これらの各区分のデータは、データベース20に格納される。
【0026】
次に、集計したデータから最終的に評価された組織同志度を抽出して、その組織同志度を提示するステップの処理が進められる。
図2のサーバーの機能に従うブロックでは、出力部28がサーバー内のデータベース20からのデータを受け取って結果表示の機能を果たす。その結果表示の方法としては、特定されるものではないが、
図4に示すように、同志度評価の結果の一覧を示すことができ、
図6に示すような表形式で各区分のデータを提示し、さらに
図5に示すような水平方向にスライドする帯グラフで特に個人から組織に対してと組織から個人に対してのデータを重ね合わせ、両者の位置関係と長さから視覚的に組織同志度を表示することもできる。
【0027】
図4に示すサーベイ結果のユーザーインターフェースでは、各種の操作ボタンやプルダウンメニューを操作することで、所望の情報を取り出すことが可能である。画面40の上側には、表示範囲についてのラジオボタン41があり、「すべて」、「サマリーのみ」、「詳細のみ」を選ぶことができる。画面40の上側右端部には、メインメニューとして選択されるスコア分析のアイコン42と、属性情報のアイコン43が並ぶ。ラジオボタン41の下部には、属性情報によるフィルターのためのボタンがフィルターセクション45に並んでおり、このサンプル組織の例では「性別」、「年齢層」、「在籍年数」、「雇用形態」、「配属地域」、「役職」、「職種」の項目がある。ここで表示される属性情報は、組織毎に入替えたり、編集することもでき、例えば、サッカーや野球などでは「ポジション」などの項目を追加できる。このフィルターセクション45にボタンを選択した場合にはモーダルウインドウが開かれ、さらに詳細なフィルターリングのためのチェックボックスが開かれる。例えば、「配属地域」のボタンを選択すると、ウインドウが開いて、チェックボックスと“東京”の文字、その該当する人数(x1)、チェックボックスと“名古屋”の文字、その該当する人数(x2)、チェックボックスと“大阪”の文字、その該当する人数(x3)、チェックボックスと“福岡”の文字、その該当する人数(x4)のような表示がなされ、属性情報から対象を絞る場合には、その部分のチェックを入れれば良く、このような操作で絞られた結果がすぐに表示される。
【0028】
画面40の上側の右端部には、比較ボタン46と別レポート比較ボタン44の2つが並んでおり、比較ボタン46を選択すると、過去のレポートとの比較をすることができ、別レポート比較ボタン44を選択すると、例えば別組織の同志度の結果と比較することができる。
【0029】
このような画面40のフィルターセクション45の下部には、
図5、
図6,
図7,
図8に示す様な同志度の評価結果についての表示が現れる。
図5、
図6,
図7がサマリー区分を示す図であり、
図8は詳細区分を示す。
【0030】
図5は出力結果となるユーザーインターフェースを示しており、集計されて得られた同志度を見た目でも理解し易いように、帯グラフで表現したものである。即ち、
図5では、得られた同志度について相互認知、相互共感、及び相互貢献の各データを、人から組織に対してのデータと組織から個人に対してのデータを重ね合わせた図形で表示している。ここで重ね合わせた図形は角丸な帯グラフ状の長方形であり、それぞれ透過度を有する色に設定しており、重ね合った部分が最も暗色となって、その範囲が分かるようになっている。同志度は、それぞれ個人から組織に対しての認知、共感、貢献と、組織から個人に対しての認知、共感、貢献の各値を入れて表現され、一番下の目盛りのように中心が5で、その両隣が4、さらにその隣が3というスケールに合わせて表示される。個人から組織に対しての認知、共感、貢献は例えば緑などの第1の色で設定され、組織から個人に対しての認知、共感、貢献は例えば紫などの第2の色で設定される。認知、共感、貢献の各値が高いほど中央の5に近い位置を水平方向の中心とする帯グラフの位置となるが、値が低くなれば帯グラフの位置は中心から離れた位置にずれることになり、このような位置が水平方向にずれる表示法によれば同志度の指標となる相互認知、相互共感、相互貢献の値が高いほど、中央寄りに位置し、個人から組織に対してと、組織から個人に対しての双方向で数値が高ければ重なり度合いが高くなり、そのような状態が一目でわかることになる。また、個人から組織に対してと、組織から個人に対してのどちらかの数値が低い場合には、中央の5から離れた位置に帯グラフが移動し、そのような傾向を一目で把握することもできる。これらから算出された組織同志度は全体の総合的な数値として、
図5の上端部に表示される。この同志度自体も個人から組織に対してと、組織から個人に対しての2つの方向から分けた分析をすることができ、その傾向も
図5の最も上部の帯グラフから把握することができる。
【0031】
図6は、先に説明したように、多くの回答から
図2の相互認知・相互共感・相互貢献算出部30、価値観・強み・ありたい姿算出部32、方向性同志度算出部34を作動させて集計していった結果の数値を表形式で示している。相互認知では個人から組織に対してと組織から個人に対しての数値があり、それぞれ価値観、強み、ありたい姿に分けられている。相互共感では個人から組織に対してと組織から個人に対しての数値があり、それぞれ価値観、ありたい姿に分けられているが、強みについてはデータがないように設定されている。また、相互貢献では個人から組織に対してと組織から個人に対しての数値があり、それぞれ価値観、強み、ありたい姿に分けられている。このような細分化によって、数値が高いところや数値が低いところ見出すことができ、
図6に示す表形式の分析は同志度を構成する数値の中の内容の把握に寄与する。
【0032】
図7は出力結果となるユーザーインターフェースを示す図であって、同志度以外のファクターを示すサマリー区分の図である。この同志度以外のファクターとしては、各欲求ごとの質問の平均、エンゲージに関する質問の数値、NPSが挙げられ、これらの質問についての回答に応じた集計が行われて、
図4の画面40の下部側に表示される。NPSはNet Promotor Scoreの短縮形であって、顧客推奨度或いは職場推奨度とも呼ばれ、顧客の継続利用意向を知るための指標とされている。このシステムにおいては、NPSは「この組織を親しい友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対する答えを基に数値化される。各欲求ごとの質問の平均は、具体的にはマズローの欲求に準じた質問の回答から評価した数値を示し、ここでは承認欲求、所属と愛についての欲求、安全欲求、生理的欲求を分析し、その結果を示す。また、エンゲージに関する質問は、仕事への誇り、職場への誇り、会社(組織)への誇りとして分析して表示される。
【0033】
図8はサーバーから取り出した質問の一部と同志度データを示す詳細区分の図であり、この
図8に示した画面40をスクロールさせることで、質問の全部をそこで算出された同志度データを表示できる。画面40のラジオボタンで“すべて”若しくは“詳細のみ”を選択する場合に、表示される集計後のデータである。詳細区分には、質問毎に、各ファクターの表示と、質問内容が表示され、その右に集計された同志度値が表示され、次に帯グラフで5段階の色分けでポイントの分布を示している。このような一覧表示と同志度を突き合わせることで、どのような問いに対する答えが良い点として把握できるか、改善点はどこにあるのかというような指標を得ることができる。会社の理想が社員のモチベーションと乖離している場合なども分析可能となる。
【0034】
ここで分析方法の例について説明すると、その分析方法の1つは、1つの企業で時間をおいた2つのサーベイを比較する方法である。ある企業が例えば5年の組織同志度評価方法を利用して、全社員を対象に半年ごとのサーベイを行うと契約した場合には、それぞれ1回目から10回目までのデータが揃うことになり、多少の人数の増減があったとしても、本実施形態の組織同志度評価方法では平均値を算出することになるため、集計される同志度の変化を表示して
比べることができる。例えば、企業が理念を作成し直し、その理念に基づいたインナーブランディング施策を選択した場合に、その施策が社員に浸透しているかなどの視点での評価を数値として表示できることになる。
【0035】
また、比較的に規模の大きな企業においては、事業部ごとの同志度の違いを測定することが可能であり、経営者の判断として同志度の高い事業部には、多くの予算を採るなどの方向性を得たり、事業部ごとの同志度の違いを、経営判断を支援するデータとしても機能させることができる。或いは属性情報を操作することで、集団にフィルターをかけることができるため、例えばこの会社は高い年齢層の同志度が若い年齢より低いなどの分析も可能であり、高度な同志度の分析もできる。
【0036】
また、同じような職種の会社が複数ある場合や、比較対象となるデータが存在する場合には、これらの同志度の集計データ同士の比較も可能であり、他社の優れた点や自社の秀でた点を把握することも可能である。例えば、同業他社となる2つの会社のデータが揃えば、互いに比較も可能となる。また、例えば、数チームが参加するスポーツリーグのチームごとのデータが揃えばその同志度の比較も可能であり、さらには他国のチームとの比較などもリモートで配信することができることから、同志度の比較が可能とされ、本実施形態の利用による社会貢献は極めて広範囲に亘るということができる。
【0037】
さらに、同志度のデータを公表することで、優良な企業か否かの指標を公表することが可能であり、新たな企業の判断軸となることが期待され、企業のブランド力の改善や採用面においては大きな力を発揮し得る。本実施形態の組織同志度評価方法に対して非常に多くの組織が参加する場合には、組織間のランキングの集計も可能とされる。
【符号の説明】
【0038】
10 サーバー
12 端末
14 ネットワーク
16 管理者端末
20 データベース
22 システム管理部
24 質問形成部
26 入力部
28 出力部
30 相互認知・相互共感・相互貢献算出部
32 価値観・強み・ありたい姿算出部
34 方向性同志度算部
35 番号部
36 格納部
37 質問内容部
40 画面
41 ラジオボタン
42、43 アイコン
45 フィルターセクション