(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172415
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20241205BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02S50/00
G01W1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090120
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇広
(72)【発明者】
【氏名】田副 佑典
(72)【発明者】
【氏名】柏瀬 翔一
(72)【発明者】
【氏名】代田 孝広
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 雄喜
(72)【発明者】
【氏名】河本 雄二
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
(72)【発明者】
【氏名】有森 恭子
(72)【発明者】
【氏名】藪井 謙
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251KA09
(57)【要約】
【課題】過去の発電データが存在しなくても、太陽光発電所の発電性能を評価することが可能な太陽光発電性能評価装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る太陽光発電性能評価装置は、気象条件を説明変数とし、気象条件に基づいて太陽光発電所の発電性能をシミュレーションした結果を目的変数とする機械学習により作成された学習モデルを記憶する記憶部と、太陽光発電所で計測された気象データと、太陽光発電所に設置された複数種の電力機器で計測された発電データと、を取得するデータ取得部と、気象データを学習モデルに入力することによって算出される第1発電性能と、発電データから導出される第2発電性能との比較結果に基づいて太陽光発電所の発電性能を評価するデータ処理部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象条件を説明変数とし、前記気象条件に基づいて太陽光発電所の発電性能をシミュレーションした結果を目的変数とする機械学習により作成された学習モデルを記憶する記憶部と、
前記太陽光発電所で計測された気象データと、前記太陽光発電所に設置された複数種の電力機器で計測された発電データと、を取得するデータ取得部と、
前記気象データを前記学習モデルに入力することによって算出される第1発電性能と、前記発電データから導出される第2発電性能との比較結果に基づいて前記太陽光発電所の発電性能を評価するデータ処理部と、
を備える、太陽光発電性能評価装置。
【請求項2】
前記学習モデルが、ダミーの気象データを用いて作成されている、請求項1に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項3】
前記学習モデルが、前記電力機器の種類ごとに作成され、
前記データ処理部は、前記電力機器の種類ごとに、前記第1発電性能と前記第2発電性能とを比較する、請求項1または2に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、複数台の前記電力機器のシステム性能係数に基づいて、前記太陽光発電所の発電性能を評価する、請求項1または2に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項5】
前記データ処理部は、前記第1発電性能と前記第2発電性能との比較結果に応じて、前記学習モデルを更新する、請求項1または2に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項6】
前記太陽光発電所で消費される電力に関するデータが、前記学習モデルの説明変数に入力されている、請求項1または2に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項7】
前記データ処理部の評価結果を出力する出力部をさらに備える、請求項1または2に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項8】
前記データ処理部の評価結果が前記太陽光発電所の異常を示す場合、前記出力部は、前記異常を管理者へ通知する、請求項7に記載の太陽光発電性能評価装置。
【請求項9】
気象条件を説明変数とし、前記気象条件に基づいて太陽光発電所の発電性能をシミュレーションした結果を目的変数とする機械学習により作成された学習モデルを予め記憶し、
前記太陽光発電所で計測された気象データと、前記太陽光発電所に設置された複数種の電力機器で計測された発電データと、を取得し、
前記気象データを前記学習モデルに入力することによって算出される第1発電性能と、前記発電データから導出される第2発電性能との比較結果に基づいて前記太陽光発電所の発電性能を評価する、
太陽光発電性能評価方法。
【請求項10】
気象条件を説明変数とし、前記気象条件に基づいて太陽光発電所の発電性能をシミュレーションした結果を目的変数とする機械学習により作成された学習モデルを記憶する処理と、
前記太陽光発電所で計測された気象データと、前記太陽光発電所に設置された複数種の電力機器で計測された発電データと、を取得する処理と、
前記気象データを前記学習モデルに入力することによって算出される第1発電性能と、前記発電データから導出される第2発電性能との比較結果に基づいて前記太陽光発電所の発電性能を評価する処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、環境に左右されやすい。そのため、想定していた発電性能が得られているか否かを確認することが重要である。一般的に、発電性能は、現状の日射や気温などの気象データと、実際の発電量データとを利用して評価される。また、発電性能が低下しているか否かを評価するために、過去の気象データから算出される発電量と、現在の発電量とを比較する評価方法が採用される場合もある。
【0003】
しかし、太陽光発電所の運転開始直後においては過去の発電データが存在しない。そのため、上記評価方法では、発電性能の低下を検知することは困難である。また、上記評価方法は、過去の発電データが最適な発電を行った期間であることが前提となるため、当初想定していた発電量を得ているか否かを判定することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の実施形態は、過去の発電データが存在しなくても、太陽光発電所の発電性能を評価することが可能な太陽光発電性能評価装置、太陽光発電性能評価方法、およびプログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る太陽光発電性能評価装置は、気象条件を説明変数とし、気象条件に基づいて太陽光発電所の発電性能をシミュレーションした結果を目的変数とする機械学習により作成された学習モデルを記憶する記憶部と、太陽光発電所で計測された気象データと、太陽光発電所に設置された複数種の電力機器で計測された発電データと、を取得するデータ取得部と、気象データを学習モデルに入力することによって算出される第1発電性能と、発電データから導出される第2発電性能との比較結果に基づいて太陽光発電所の発電性能を評価するデータ処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、過去の発電データが存在しなくても、太陽光発電の発電性能を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る太陽光発電所の構成を示すブロック図である。
【
図2】太陽光発電性能評価装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る太陽光発電所の発電性能評価方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4】太陽光発電所の不具合の判定方法の他の一例を説明するための図である。
【
図5】第1変形例に係る記憶部に格納される学習モデルデータベースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る太陽光発電所の構成を示すブロック図である。
図1に示す太陽光発電所100は、PVパネル110と、接続箱120と、中間変電所130と、特高変電所140と、電力計測機器150と、環境計測機器160と、太陽光発電性能評価装置200と、を備える。
【0011】
PVパネル110は、入射した太陽光を光電変換する。
【0012】
接続箱120は、複数枚のPVパネル110の出力電力を集約する。なお、
図1では、1つの接続箱120に3枚のPVパネル110が接続されているが、PVパネル110の接続数は、特に制限されない。
【0013】
中間変電所130には、複数のPCS(Power Conditioning System)パッケージ131が設置される。各PCSパッケージ131は、PCS132および中間変圧器133を有する。PCS132は、例えば、接続箱120から入力された直流電圧を交流電圧に変換するインバータである。また、中間変圧器133は、PCS132の出力電圧を所定の電圧に変換する。
【0014】
特高変電所140には、高圧スイッチギヤ141と、特高変圧器142と、特高スイッチギヤ143と、が設置される。高圧スイッチギヤ141は、各中間変圧器133から入力される高圧電流を特高変圧器142へ供給するか否かを切り替える。高圧スイッチギヤ141がオン状態の時に、上記高圧電流が特高変圧器142へ供給される。特高変圧器142は、各中間変圧器133から高圧スイッチギヤ141を介して入力された中間電圧を特高電圧に変換する。特高スイッチギヤ143は、特高変圧器142の出力電力を商用系統300へ出力するか否かを切り替える。特高スイッチギヤ143がオン状態の時に、特高変圧器142の出力電力が、太陽光発電所100の発電電力として、特高スイッチギヤ143の出力端である連系点Pから商用系統300へ供給される。
【0015】
電力計測機器150は、接続箱120、PCS132、中間変圧器133、高圧スイッチギヤ141、特高変圧器142、および特高スイッチギヤ143といった電力機器の各々の電力量を計測する。本実施形態では、電力計測機器150の計測データが、太陽光発電所100で実測された発電データに相当する。
【0016】
環境計測機器160は、日射計161、気温計162、および風況計163を有する。日射計161は、PVパネル110に入射する太陽光の日射強度を計測する。気温計162は、太陽光発電所100の気温を計測する。風況計163は、太陽光発電所100の風力および風向を計測する。なお、環境計測機器160は、日射計161、気温計162、および風況計163に限定されない。環境計測機器160は、例えば、太陽光発電所100の湿度を計測する湿度計や、雨量や積雪量を計測する降雨計や積雪計、PVパネル110の温度を計測する温度計などを含んでいてもよい。本実施形態では、環境計測機器160を構成する種々の機器の計測データが、太陽光発電所100で実測された気象データに相当する。
【0017】
本実施形態では、電力計測機器150および環境計測機器160は、ネットワークを介して計測データを太陽光発電性能評価装置200へ送信する。太陽光発電性能評価装置200は、この計測データを用いて、太陽光発電所100の発電性能を評価する。
【0018】
ここで、太陽光発電所の発電性能は、別途計算により算出されることが多い。太陽光発電所の構成が単純な場合は、例えばJISC8907(太陽光発電システムの発電電力量推定方法)に定められた方法等の計算にて算出することが可能である。
【0019】
しかし、サイトが大型化したり、複雑なパネル配置をしたりしている場合には、単純な計算で算出することが困難である。そのため、ある気象条件下で得られる発電量を計算可能な専用のソフトウェアを用いることが多い。
【0020】
ここで、一般的に広く使用されているソフトウェアとしてPVSYST、Helios3DやPVcase等があるが、それ以外でもよい。これらのソフトウェアでは、気象および日射条件と、PVパネル110の配置、PVパネル110、PCS132、および中間変圧器133の性能、ケーブル性能やロス、アルベドや汚れによるロス等、各種条件が設定される。これにより、過去の気象データを必要とせず、ある気象条件下における発電性能を算出することが可能である。
【0021】
しかし、上記ソフトウェアの大部分は、オンプレミスのソフトウェアであることや、計算に時間を要すことなどの理由により、データ収集で得られた気象条件を自動的にソフトウェアで計算することが難しい問題がある。
【0022】
そこで、本実施形態では、ある気象条件とその条件下のシミュレーション結果をそれぞれ説明変数、目的変数とし、その応答をAI(Artificial Intelligence)や機械学習などにより予め学習させておくことによって、太陽光発電性能評価装置200は、上述したソフトウェアを不要とし、且つ、ある気象条件下における発電性能をリアルタイムに算出することが可能になる。以下、本実施形態に係る太陽光発電性能評価装置200について説明する。
【0023】
図2は、太陽光発電性能評価装置200の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、太陽光発電性能評価装置200は、データ取得部220は、記憶部210、データ取得部220、データ処理部230、および出力部240、を有する。太陽光発電性能評価装置200は、例えばCPU、ROM、RAM、HDD、GPUなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、太陽光発電性能評価装置200を用いた太陽光発電評価方法は、各種プログラムをコンピュータに実行させることによって、実現することができる。
【0024】
記憶部210には、太陽光発電所100の発電性能を算出するための学習モデルが記憶されている。この学習モデルは、種々の気象データから想定される発電量をシミュレーションした結果を機械学習することによって、予め作成される。機械学習で用いる気象データには、例えば、気象庁や、気象会社が提供および販売している気象データベース等の過去の実際の気象データを用いることができる。
【0025】
本実施形態では、発電性能は、シミュレーション結果により得られるため、太陽光発電所100において過去に実際に計測された発電データは不要となる。また、本実施形態では、機械学習に用いる気象データとして、過去に実際に計測された気象データを必ずしも使用する必要はない。すなわち、説明変数として入力するデータ自体も実際の気象データではなく、ダミーの気象データであってもよい。ダミーの気象データは、風速、風向、および気温等の気象条件の変数の範囲を、シミュレーション条件に応じて取り得る範囲内に予め設定した気象データである。このように、本実施形態によれば、太陽光発電所100の運転開始前、または開始してしばらくの間、実際の発電データが無い場合でも、学習モデルを用いて算出される発電性能と、実際の発電性能との比較が可能になる。もちろん、発電データが蓄積された後は、そのデータを使用しても良い。
【0026】
データ取得部220は、電力計測機器150および環境計測機器160から直接、またはネットワークを介して計測データを取得する。
【0027】
データ処理部230は、データ取得部220から入力された計測データを処理して、太陽光発電所100の発電性能を評価する。
【0028】
出力部240は、所定の情報を出力する。例えば、出力部240は、データ処理部230の評価結果を出力する。本実施形態に係る太陽光発電性能評価装置200には、評価結果の出力を行うディスプレイなどの画像の表示を行う装置が含まれる。つまり、出力部240は、ディスプレイに表示される画像を制御する。なお、このディスプレイは、コンピュータ本体と別体であってもよいし、一体であってもよい。
【0029】
なお、本実施形態に係る太陽光発電性能評価装置200は、ネットワークを介して接続される他のコンピュータが備えるディスプレイに表示される画像を制御してもよい。その場合には、他のコンピュータが備える出力部240が、データ処理部230が導き出した評価結果などの出力を制御してもよい。
【0030】
また、本実施形態では、画像の表示を行う装置としてディスプレイを例示するが、その他の態様であってもよい。例えば、プロジェクタを用いて情報の表示を行ってもよい。さらに、紙媒体に情報を印字するプリンタをディスプレイの替りとして用いてもよい。つまり、出力部240が制御する対象として、プロジェクタまたはプリンタが含まれていてもよい。
【0031】
次に、太陽光発電所100の発電性能評価方法について説明する。
【0032】
図3は、第1実施形態に係る太陽光発電所100の発電性能評価方法の手順を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、学習モデルの作成処理(ステップS11~ステップS14)と、太陽光発電性能評価装置200が学習モデルを用いて太陽光発電所100の発電性能を評価する処理(ステップS21~ステップS27)とで構成される。
【0033】
まず、学習モデルの作成処理について説明する。本実施形態では、学習モデルの作成処理は、太陽光発電性能評価装置200とは別体の機械学習装置(不図示)で実行される。
図3にフローチャートでは、まず、気象データが機械学習装置に入力される(ステップS11)。この気象データは、上述したように、実測の気象データであってもよいし、ダミーの気象データであってもよい。
【0034】
続いて、機械学習装置が、入力された気象データに基づいて、発電シミュレーションを行う(ステップS12)。ステップS12では、例えば、機械学習装置は、
図1に示す太陽光発電所100の各機器をモデル化したシミュレーションモデルを用いて、発電量を算出する。
【0035】
機械学習装置が、入力条件である気象データと出力結果である発電量を機械学習することによって、学習モデルが作成される(ステップS13)。ステップS13で使用される機械学習には、例えば、ニューラルネットワーク(NN)、サポートベクターマシーン(SVM)、決定木、ランダムフォレスト、ベイズ法、またはロジスティック回帰等が含まれる。ただし、ステップS13で使用される機械学習は、上述した手法に限定されず、他の手法であってもよい。
【0036】
作成された学習モデルは、機械学習装置から太陽光発電性能評価装置200の記憶部210に格納される(ステップS14)。これにより、学習モデルの作成処理が終了する。
【0037】
次に、太陽光発電性能評価装置200による発電性能評価処理について説明する。
図3に示すフローチャートでは、まず、データ取得部220が、電力計測機器150および環境計測機器160の計測データを取得する(ステップS21)。
【0038】
続いて、データ処理部230が、環境計測機器160の計測データである気象データに対してデータ前処理を行う(ステップS22)。ステップS22では、データ処理部230は、上記気象データを、記憶部210に記憶された学習モデルに適用できるように学習データへ変換する処理を行う。具体的には、データ処理部230は、気象データに対して、例えば、入力の値域合わせ、入力次元合わせ、時間リサンプリング処理、外れ値除去、および欠損値処理などを行う。
【0039】
続いて、データ処理部230は、記憶部210から読み出した学習モデルに、データ前処理した気象データを入力する(ステップS23)。その結果、第1発電性能が算出される(ステップS24)。第1発電性能は、太陽光発電所100で計測された気象条件で機械学習することによって想定される太陽光発電所100の発電量を示す。
【0040】
続いて、データ処理部230は、電力計測機器150の計測データに基づいて第2発電性能を導出する(ステップS25)。第2発電性能は、電力計測機器150で計測された太陽光発電所100全体の実際の発電量を示す。データ処理部230は、例えば、電力計測機器150の計測データから連系点Pで計測された電力量を抽出し、抽出した電力量を第2発電性能として導出する。
【0041】
続いて、データ処理部230は、第2発電性能を第1発電性能と比較することによって、太陽光発電所100の発電性能を評価する(ステップS26)。例えば、第1発電性能として算出された想定発電量が、ある気象条件に対して事前に定められた太陽光発電所100の発電量の保証値であるとする。この場合、第2発電性能として導出された実測発電量と、想定発電量との差が、予め設定されたしきい値よりも大きいときに、データ処理部230は、太陽光発電所100において何らかの異常や劣化等の不具合が発生していると判定する。ただし、太陽光発電所100の不具合の判定方法は、想定発電量と実測発電量との差に限定されない。
【0042】
図4は、太陽光発電所100の不具合の判定方法の他の一例を説明するための図である。
図4は、実測発電量を想定発電量で除算した比率(実測発電量/想定発電量)の経時的な変化を示す。この比率が、例えば数値1.0よりも小さいときに、データ処理部230は、太陽光発電所100において不具合が発生していると判定する。
図4では、6月11日から6月16日までの期間内で、異常値(1.0を大きく下回るプロット1点)が発生している。
【0043】
最後に、出力部240が、データ処理部230の評価結果を出力する(ステップS27)。ステップS27では、出力部240は、例えば、
図4のような太陽光発電所100の不具合の判定結果を画像表示する。このとき、実測発電量が想定発電量よりも少ない場合や、または実測発電量と想定発電量との関係式で表される発電量の傾向が異なる場合、出力部240は、正常時とは異なる色で画像表示する。また、出力部240は、太陽光発電所100の管理者が使用する通信端末にメールまたはSNS(Social Networking Service)を通じて太陽光発電所100の異常を通知してもよい。この場合、異常が早期に通知されるので、管理者はリアルタイムに太陽光発電所100の発電性能を把握することが可能になる。
【0044】
以上説明した本実施形態によれば、太陽光発電所100の発電性能を評価するのに用いられる学習モデルが、記憶部210に予め記憶されている。また、データ処理部230が、この学習モデルを用いて算出される想定発電量と、電力計測機器150の計測データから導出される実測発電量との比較結果に基づいて、太陽光発電所100の発電性能を評価する。したがって、過去の発電データが存在しなくても、太陽光発電所100の発電性能を評価することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、オンプレミスのソフトウェアも不要になるため、発電量の計算時間を短縮化することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、太陽光発電性能評価装置200の設置によりリアルタイムで太陽光発電所100の発電性能を評価できる。そのため、太陽光発電所の発電性能を評価できない顧客には、太陽光発電性能評価装置200を設置するサービスを提供することが可能となる。
【0047】
(第1変形例)
以下、第1変形例について説明する。本変形例に係る太陽光発電所の構成は、上述した第1実施形態に係る太陽光発電所100と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0048】
第1実施形態では、太陽光発電性能評価装置200のデータ処理部230が、太陽光発電所100全体の発電量、すなわち連系点Pにおける発電量に基づいて発電性能を評価する。一方、本変形例では、データ処理部230は、連系点Pに加えて、中間変電所130、PCS132、または接続箱120ごとに発電性能を評価する。
【0049】
図5は、第1変形例に係る記憶部210に格納される学習モデルデータベースの一例を示す図である。
図5に示す学習モデルデータベース400では、機械学習の対象機器、例えば中間変電所130、PCS132、または接続箱120ごとに学習モデルM1~M3が記憶されている。学習モデルM1~M3は、上述した第1実施形態の学習モデルの作成処理(ステップS11~ステップS14)によって作成することができる。
【0050】
学習モデルM1~M3が作成されて記憶部210に記憶されると、データ処理部230が、学習モデルM1~M3モデルから中間変電所130、PCS132、または接続箱120ごとに想定発電量を算出する。また、データ処理部230は、電力計測機器150の計測データから中間変電所130、PCS132、または接続箱120ごとに実測発電量を導出する。そして、データ処理部230は、中間変電所130、PCS132、または接続箱120ごとに、想定発電量と実測発電量とを比較した結果に基づいて、発電性能をそれぞれ評価する。
【0051】
なお、本変形例では、太陽光発電所100に設置される電力機器の複数の組み合わせにて説明変数を構築し、学習モデルを作成してもよい。この場合、計測点が複数に細分化さればされる程、異常が発生した場合にその要因や異常箇所の特定がしやすくなる。
【0052】
また、例えば複数台のPCS132が設置される太陽光発電所100において、上述したようにデータ処理部230が実測発電量を学習モデルから算出される想定発電量と比較する場合、1つの発電データからでは異常の判別が困難なデータであっても、複数データがあることで統計的な分析が可能になり、より異常の判定が容易に行うことが可能になる。
【0053】
例えば、N台(Nは2以上の整数)のPCS132が太陽光発電所100に設置される場合、N個のシステム性能係数、いわゆるPR値を算出することが可能になる。ここで、全てのPCS132が正常である場合、このN個のPR値のばらつき(偏差)は小さくなる。一方、太陽光発電所100内の特定部分で性能低下が生じている場合、他の(N-1)個のPR値と比較して、特定のPR値が低下するなどの傾向が生じる。データ処理部230は、このような傾向の検出有無に基づいて、太陽光発電所100の不具合を判定することができる。なお、複数のデータとして比較する対象は、計測地点に限られない。また、対象データもPR値に限らず、気象データや発電量など、太陽光発電所100で計測しているデータでもよい。さらに、統計分析方法も、複数のデータを基に比較および分析できる方法であれば特に限定されない。
【0054】
(第2変形例)
以下、第2変形例について説明する。本変形例に係る太陽光発電所の構成も、上述した第1実施形態に係る太陽光発電所100と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0055】
本変形例では、データ処理部230が、記憶部210に記憶されている学習モデルを、当初作成されたバージョンから随時更新させる。例えば、環境計測機器160で計測された実測気象データに基づく第1発電性能と、電力計測機器150の計測データに基づく第2発電性能との差が許容範囲外である場合、データ処理部230が、第2発電性能を目的変数として再学習するか、または学習モデルに対して転移学習やファインチューニングする。これにより、より高精度に太陽光発電所100の発電性能を評価することが可能となる。
【0056】
(第3変形例)
以下、第3変形例について説明する。本変形例に係る太陽光発電所の構成も、上述した第1実施形態に係る太陽光発電所100と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0057】
太陽光発電所100では、発電電力が存在する一方で、電力を消費する消費電力が存在する。例えば、PCS132や、通信機能を有する太陽光発電性能評価装置200を冷却するエアコンの消費電力が大きい。エアコンの消費電力は、環境温度に影響を受けやすいため、気象条件データと相関がある。
【0058】
そこで、本変形例では、学習モデルの作成処理(ステップS13)において、気象データに加えて消費電力に関するデータも説明変数へ入力される。これにより、学習モデルの精度が向上する。その結果、発電性能の低下の原因が、電力機器の異常によるものか、または太陽光発電所100内の消費電力によるものなのかを判定する弁別可能性が向上する。
【0059】
また、本変形例では、データ処理部230は、第1発電性能および第2発電性能を求める際に、特定の条件下の気象データおよび発電データを使用または除外してもよい。例えば、低日射時には、発電量の計算が不安定になりやすいため、予め設定された基準値よりも低い計測データを除外してもよい。また、例えば出力抑制時など性能算出に影響があるが、性能算出に含めるべきでない条件下のデータを除外して性能評価を行うことも有用である。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
100:太陽光発電所
110:PVパネル
120:接続箱
130:中間変電所
131:PCSパッケージ
132:PCS
133:中間変圧器
140:特高変電所
141:高圧スイッチギヤ
142:特高変圧器
143:特高スイッチギヤ
150:電力計測機器
160:環境計測機器
161:日射計
162:気温計
163:風況計
200:太陽光発電性能評価装置
210:記憶部
220:データ取得部
230:データ処理部
240:出力部
300:商用系統
400:学習モデルデータベース