(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172417
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】増床用梁設計方法と増床用梁施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20241205BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20241205BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20241205BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E04B1/348 F
E04G23/02 J
E04B1/348 Z
E04B1/24 Q
E04B1/348 E
E04B1/58 506F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090123
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】今橋 裕里奈
(72)【発明者】
【氏名】野村 智文
(72)【発明者】
【氏名】辻本 政志
(72)【発明者】
【氏名】秦 雅子
【テーマコード(参考)】
2E125
2E176
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AB01
2E125AC15
2E125AG12
2E125CA05
2E176AA07
2E176BB34
(57)【要約】
【課題】既存建物の吹抜けにおける鉄骨造の既存部材に対して鉄骨造の新設梁を接合する設計及び施工において、溶接接合を適用することなく、さらには供用中の居室等に施工の影響を及ぼすことなく既存部材に対して増床用梁を接合することのできる、増床用梁設計方法と軸増床用梁施工方法を提供すること。
【解決手段】既存建物の吹抜けに対して増床用梁を設計する増床用梁設計方法であり、吹抜けに対する増床エリアZAを設定する増床エリア設定工程、負担面積に応じて交差する複数の鉄骨造の新設梁B1,B2の梁組BUを仮定する梁組仮定工程、既存建物の鉄骨造の既存部材G1乃至G4に対するそれぞれの新設梁B1,B2の端部の接合方法を設定する接合方法設定工程、新設梁B1,B2の端部の接合方法に基づいて相互に交差する新設梁B1,B2の一方を大梁とし、他方を大梁に接合される小梁とする梁種設定工程を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建物の吹抜けに対して増床用梁を設計する、増床用梁設計方法であって、
前記吹抜けに対する増床エリアを設定する、増床エリア設定工程と、
負担面積に応じて、相互に交差する複数の鉄骨造の新設梁の梁組を仮定する、梁組仮定工程と、
前記既存建物の鉄骨造の既存部材に対する、それぞれの前記新設梁の端部の接合方法を設定する、接合方法設定工程と、
それぞれの前記新設梁の端部の接合方法に基づいて、前記相互に交差する複数の新設梁の一方を大梁とし、他方を該大梁に接合される小梁とする、梁種設定工程とを有することを特徴とする、増床用梁設計方法。
【請求項2】
前記既存部材に対する前記新設梁の端部の接合方法には、ボルト接合方法と、ワンサイドボルト接合方法があり、
前記ボルト接合方法は、相互に接合される前記新設梁と前記既存部材の双方のボルト孔が連通する連通孔に対して、一方側から挿通されたボルトを他方側にあるナットで締め付ける方法であり、
前記ワンサイドボルト接合方法は、相互に接合される前記新設梁と前記既存部材の双方のボルト孔が連通する連通孔に対して、新設梁側からボルトを挿通して締め付ける方法であり、
前記梁種設定工程では、前記新設梁の両端部が前記既存部材に接合されると仮定した際に、該両端部に前記ボルト接合方法を適用できる場合に該新設梁を大梁とし、前記新設梁の両端部が前記既存部材に接合されると仮定した際に、少なくとも一方の端部に前記ボルト接合方法を適用できない場合に該新設梁を小梁とすることを特徴とする、請求項1に記載の増床用梁設計方法。
【請求項3】
既存建物の吹抜けに対して増床用梁を施工する、増床用梁施工方法であって、
前記吹抜けに対する増床エリアに対して、負担面積に応じて、相互に交差する複数の鉄骨造の新設梁である大梁と小梁を配置し、該大梁の両端部を前記既存建物の鉄骨造の既存部材に接合し、該小梁の一端を該大梁に接合し、他端を該既存部材に接合する、新設梁施工工程を有し、
前記大梁と前記小梁は、それらの端部と前記既存部材との接合方法に基づいて梁種が設定されていることを特徴とする、増床用梁施工方法。
【請求項4】
前記既存部材に対する前記新設梁の端部の接合方法には、ボルト接合方法と、ワンサイドボルト接合方法があり、
前記ボルト接合方法は、相互に接合される前記新設梁と前記既存部材の双方のボルト孔が連通する連通孔に対して、一方側から挿通されたボルトを他方側にあるナットで締め付ける方法であり、
前記ワンサイドボルト接合方法は、相互に接合される前記新設梁と前記既存部材の双方のボルト孔が連通する連通孔に対して、新設梁側からボルトを挿通して締め付ける方法であり、
前記大梁は、その両端部を前記ボルト接合方法にて前記既存部材に接合し、
前記小梁は、その一端を前記大梁に接合し、その他端を前記ワンサイドボルト接合方法にて前記既存部材に接合することを特徴とする、請求項3に記載の増床用梁施工方法。
【請求項5】
前記既存部材は、形鋼材により形成される既存本設梁と、該既存本設梁を補強して、該既存本設梁よりも梁成の低い既存補強梁とが相互に接合されている、既存ユニット梁であり、
前記既存ユニット梁では、前記既存本設梁の室内側の側面において、該既存本設梁の第1底面よりも上方の位置に該既存補強梁の第2底面が位置し、
前記既存補強梁を下方から支持する支持用形鋼材を該既存本設梁の側面に固定した後に、該既存補強梁に対して前記小梁の端部を前記ワンサイドボルト接合方法にて接合することを特徴とする、請求項4に記載の増床用梁施工方法。
【請求項6】
前記既存本設梁の室内側の側面において、該既存本設梁の第1天端面よりも落ち込んだ位置に前記既存補強梁の第2天端面が位置し、
前記小梁の端部の上方において該小梁の長手方向に張り出すリブを取り付けておき、該リブを前記第2天端面に係止させ、前記既存補強梁に対して前記小梁の端部を前記ワンサイドボルト接合方法にて接合することを特徴とする、請求項5に記載の増床用梁施工方法。
【請求項7】
前記第1天端面と前記リブの天端が面一であることを特徴とする、請求項6に記載の増床用梁施工方法。
【請求項8】
前記既存本設梁は溝形鋼もしくはリップ付き溝形鋼であり、前記既存補強梁はリップ付き溝形鋼であり、
前記既存本設梁のウェブに対して前記既存補強梁のリップが溶接接合されることにより、前記既存ユニット梁が形成されていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の増床用梁施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増床用梁設計方法と増床用梁施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吹抜けを有する既存建物において、例えば同居する家族が増えること等を理由として、吹抜けに対して増床するリフォームが行われることがある。このリフォームにおいては、吹抜けの増床エリアに対して鉄骨造の増床用の新設梁(増床用梁)が施工され、新設梁に床材が施工されることになる。この新設梁の施工においては、相互に交差する鉄骨造の新設梁が既存建物の鉄骨造の既存部材(既存梁等)に接合される方法で行われる。
【0003】
上記する鉄骨造の既存部材に対する鉄骨造の新設梁の接合方法としては、溶接接合が一般に適用される。しかしながら、溶接接合には有資格者による施工が余儀なくされることに加えて、施工品質が施工者の技量に左右されるといった課題がある。また、溶接接合の際に、既存部材の内側に敷き込んだ断熱材や木下地等に引火する可能性があり、安全のために天井や面材等の周辺部材を取り外した後に溶接接合を行う場合は、必要以上に施工範囲が広がることになって好ましくない。
【0004】
そこで、建物を新築する際のボルト接合のように、既存部材の裏側から当該既存部材のボルト孔にボルトを差し込み、当該ボルトを既存部材の表側である吹抜け側にある新設梁のボルト孔にさらに差し込み、ナット締めにて接合する、ボルト接合方法を適用することにより、溶接接合を不要にして上記溶接接合に固有の様々な課題を解消することができる。
【0005】
しかしながら、建物を新築する場合と異なり、既存部材に対して新設梁をボルト接合する場合には、既存部材の裏側に供用中の居室等が存在する場合が往々にしてあり、例えば吹抜け側から供用中の居室側へ手を入れてボルトを差し込み、吹抜け側に出たボルトに対して新設梁をナット締めする必要があることから、供用中の居室等に施工の影響が及んでしまい、好ましくない。
【0006】
以上のことから、溶接接合を適用することなく、さらには供用中の居室等に施工の影響を及ぼすことなく、既存建物の吹抜けに対して新設梁を設計する増床用梁設計方法と、この設計方法に基づく増床用梁施工方法が望まれる。
【0007】
ここで、特許文献1には、鉄筋コンクリート構造物の増床方法が提案されている。この鉄筋コンクリート構造物の増床方法は、鉄筋コンクリート構造物の吹抜空間の対向する内垂直壁面間に軽量箱状鋼管からなる桁材を複数個並列状態に架設し、同桁材の上面及び下面に発泡コンクリート板等耐火性軽量材を張設し、上方の耐火性軽量材上面に床用合板を被着し、下方の耐火性軽量材下面に天井用下地板を被着して吹抜空間に増床を形成する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の鉄筋コンクリート構造物の増床方法は、文字通り鉄筋コンクリート構造物における増床方法であることから、上記するように、既存建物の吹抜けにおける鉄骨造の既存部材に対して鉄骨造の新設梁を接合する設計及び施工において、溶接接合を適用せずに増床用梁を配設する技術を提案するものではない。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、既存建物の吹抜けにおける鉄骨造の既存部材に対して鉄骨造の新設梁を接合する設計及び施工において、溶接接合を適用することなく、さらには供用中の居室等に施工の影響を及ぼすことなく既存部材に対して増床用梁を接合することのできる、増床用梁設計方法と軸増床用梁施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による増床用梁設計方法の一態様は、
既存建物の吹抜けに対して増床用梁を設計する、増床用梁設計方法であって、
前記吹抜けに対する増床エリアを設定する、増床エリア設定工程と、
負担面積に応じて、相互に交差する複数の鉄骨造の新設梁の梁組を仮定する、梁組仮定工程と、
前記既存建物の鉄骨造の既存部材に対する、それぞれの前記新設梁の端部の接合方法を設定する、接合方法設定工程と、
それぞれの前記新設梁の端部の接合方法に基づいて、前記相互に交差する複数の新設梁の一方を大梁とし、他方を該大梁に接合される小梁とする、梁種設定工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、吹抜けの増床エリアに対して、負担面積に応じて相互に交差する複数の鉄骨造の新設梁の梁組を仮定し、鉄骨造の既存部材に対して設定したそれぞれの新設梁の端部の接合方法に基づいて相互に交差する新設梁の一方を大梁とし、他方を小梁とすることにより、溶接接合を適用することなく、さらには供用中の居室等に施工の影響を及ぼすことなく既存部材に対して増床用梁を接合することができる。
【0013】
ここで、「新設梁の端部の接合方法」には、溶接接合以外の方法として、ボルト接合方法とワンサイドボルト接合方法を挙げることができる。例えば、建物の構造信頼性の観点から、小梁に比べて大梁は、既存部材との間の接合強度が設計強度を充足していることをより一層高い精度で確認されることが求められることから、ボルトやナットの締め付け力の確認精度の高いボルト接合方法を採用できる新設梁を大梁とし、ボルトの締め付け力の確認精度が相対的に低いワンサイドボルト接合方法を採用せざるを得ない新設梁を小梁とする。例えば、既存部材の裏側に供用中の居室等があり、当該既存部材の裏側に手を入れることができない場合にワンサイドボルト接合方法が採用される。尚、大梁に対する小梁の一端の接合方法は、大梁に予め取り付けられているガセットプレートと小梁のウェブの双方のボルト孔を利用したボルト接合や、大梁の上下のフランジに予め取り付けられている取り付け用プレートと小梁の端部のエンドプレートの双方のボルト孔を利用したボルト接合等により行われる。
【0014】
また、本発明による増床用梁設計方法の他の態様において、
前記既存部材に対する前記新設梁の端部の接合方法には、ボルト接合方法と、ワンサイドボルト接合方法があり、
前記ボルト接合方法は、相互に接合される前記新設梁と前記既存部材の双方のボルト孔が連通する連通孔に対して、一方側から挿通されたボルトを他方側にあるナットで締め付ける方法であり、
前記ワンサイドボルト接合方法は、相互に接合される前記新設梁と前記既存部材の双方のボルト孔が連通する連通孔に対して、新設梁側からボルトを挿通して締め付ける方法であり、
前記梁種設定工程では、前記新設梁の両端部が前記既存部材に接合されると仮定した際に、該両端部に前記ボルト接合方法を適用できる場合に該新設梁を大梁とし、前記新設梁の両端部が前記既存部材に接合されると仮定した際に、少なくとも一方の端部に前記ボルト接合方法を適用できない場合に該新設梁を小梁とすることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、相互に交差する例えば2つの新設梁の一方を大梁とし、他方を小梁とすること、言い換えると、2つの新設梁の勝ち負けを設定する際に、新設梁の両端部の既存部材に対する接合方法としていずれもボルト接合方法が適用できる場合に当該新設梁を大梁とし、ボルト接合方法を適用できず、ワンサイドボルト接合方法を適用せざるを得ない新設梁を小梁とすることにより、大梁の両端部の接合方法として相対的に確認精度の高いボルト接合方法を採用でき、構造信頼性の高い増床用梁の設計を実現できる。
【0016】
すなわち、大梁の両端部は、既存部材である既存梁等に対して、小梁よりもより一層高い確実性を持って接合するべく、新築の建物を施工する際に適用されるボルト接合方法、すなわち、既存部材の裏側に手を入れてボルトを既存部材のボルト孔に挿通し、吹抜け側にて新設梁のボルト孔にさらに挿通されたボルトをナット締めする接合方法にて接合する。ボルト接合方法では、ナット締めの際のトルク管理や回転角管理等により、ボルトとナットが所望の締付け力にて締付けられていることを確認することができる。一方、ワンサイドボルト接合方法は、既存部材の裏側へ手を入れることができないケース、例えば、既存部材に隣接するように供用中の居室等が存在する場合に、既存部材に対して吹抜け側から開設したボルト孔に対して吹抜け側からボルトを差し込む方法により、居室等に対して施工の影響を及ぼさないようにできる接合方法である。
【0017】
ワンサイドボルト接合方法はボルト接合方法と同程度の接合強度を期待できるものの、ボルト孔に対して一方向からボルトを挿通して締め付ける方法であることから、ボルト接合方法よりもボルトの締付け管理の精度が低下し得る。そのため、仮に既存部材の裏側に手を入れることができないケースでは、当該既存部材に接合される新設梁を、大梁に比べて相対的に既存部材との接合強度が要求されない小梁とするものである。
【0018】
また、本発明による増床用梁施工方法の一態様は、
既存建物の吹抜けに対して増床用梁を施工する、増床用梁施工方法であって、
前記吹抜けに対する増床エリアに対して、負担面積に応じて、相互に交差する複数の鉄骨造の新設梁である大梁と小梁を配置し、該大梁の両端部を前記既存建物の鉄骨造の既存部材に接合し、該小梁の一端を該大梁に接合し、他端を該既存部材に接合する、新設梁施工工程を有し、
前記大梁と前記小梁は、それらの端部と前記既存部材との接合方法に基づいて梁種が設定されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、吹抜けの増床エリアに対して、相互に交差する複数の鉄骨造の新設梁である大梁と小梁を配置し、大梁の両端部を既存建物の鉄骨造の既存部材に接合し、小梁の一端を大梁に接合し、他端を既存部材に接合する施工において、それぞれの新設梁の梁種が、既存部材との接合方法に基づいて設定されていることにより、溶接接合を適用することなく、さらには供用中の居室等に施工の影響を及ぼすことなく既存部材に対して増床用梁を接合することができる。
【0020】
また、本発明による増床用梁施工方法の他の態様において、
前記既存部材に対する前記新設梁の端部の接合方法には、ボルト接合方法と、ワンサイドボルト接合方法があり、
前記ボルト接合方法は、相互に接合される前記新設梁と前記既存部材の双方のボルト孔が連通する連通孔に対して、一方側から挿通されたボルトを他方側にあるナットで締め付ける方法であり、
前記ワンサイドボルト接合方法は、相互に接合される前記新設梁と前記既存部材の双方のボルト孔が連通する連通孔に対して、新設梁側からボルトを挿通して締め付ける方法であり、
前記大梁は、その両端部を前記ボルト接合方法にて前記既存部材に接合し、
前記小梁は、その一端を前記大梁に接合し、その他端を前記ワンサイドボルト接合方法にて前記既存部材に接合することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、2つの新設梁の勝ち負けの設定に際して、新設梁の両端部の既存部材に対する接合方法としていずれもボルト接合方法が適用できる場合に当該新設梁が大梁とされ、ボルト接合方法を適用できず、ワンサイドボルト接合方法を適用せざるを得ない新設梁が小梁とされることにより、大梁の両端部の接合方法として相対的に確認精度の高いボルト接合方法が採用され、構造信頼性の高い増床用梁の施工を実現できる。
【0022】
また、本発明による増床用梁施工方法の他の態様において、
前記既存部材は、形鋼材により形成される既存本設梁と、該既存本設梁を補強して、該既存本設梁よりも梁成の低い既存補強梁とが相互に接合されている、既存ユニット梁であり、
前記既存ユニット梁では、前記既存本設梁の室内側の側面において、該既存本設梁の第1底面よりも上方の位置に該既存補強梁の第2底面が位置し、
前記既存補強梁を下方から支持する支持用形鋼材を該既存本設梁の側面に固定した後に、該既存補強梁に対して前記小梁の端部を前記ワンサイドボルト接合方法にて接合することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、既存ユニット梁を構成する既存補強梁を下方から支持する支持用形鋼材を、同様に既存ユニット梁を構成する既存本設梁の側面に固定した後に、既存補強梁に対して小梁の端部をワンサイドボルト接合方法にて接合することにより、仮に既存補強梁が新設梁から作用する荷重を既存本設梁に伝達可能な剛性を有していない場合であっても、既存補強梁に加えてこれを支持する支持用形鋼材を介して増床用梁から作用する荷重を既存本設梁に伝達することが可能になる。例えば、既存補強梁は、既存本設梁に対して十分な耐風性能を付与するために設けられているものであり、増床による鉛直荷重を支持できる剛性を備えていないことが十分にあり得ることから、支持用形鋼材にて既存補強梁の下方を支持することにより、既存補強梁と支持用形鋼材が増床用梁からの荷重に対抗しながら既存本設梁への荷重伝達が可能になる。
【0024】
また、本発明による増床用梁施工方法の他の態様は、
前記既存本設梁の室内側の側面において、該既存本設梁の第1天端面よりも落ち込んだ位置に前記既存補強梁の第2天端面が位置し、
前記小梁の端部の上方において該小梁の長手方向に張り出すリブを取り付けておき、該リブを前記第2天端面に係止させ、前記既存補強梁に対して前記小梁の端部を前記ワンサイドボルト接合方法にて接合することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、小梁の端部の上方に取り付けられている、該小梁の長手方向に張り出すリブを既存補強梁の第2天端面に係止させた後に、既存補強梁に対して小梁の端部をワンサイドボルト接合方法にて接合することにより、リブを介して小梁を既存補強梁に引っ掛けた状態(仮置きした状態)でワンサイドボルト接合することができるため、作業性と作業安全性を向上させることができる。また、既存補強梁に対して小梁がリブを介して係止されていることにより、リブを介して既存補強梁に作用する鉛直荷重の一部を新設梁に負担させることができる。
【0026】
また、本発明による増床用梁施工方法の他の態様において、
前記第1天端面と前記リブの天端が面一であることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、既存本設梁の第1天端面と、既存補強梁の第2天端面に係止されるリブが面一であることにより、リブが既存ユニット梁から上方に突出することが防止され、リブが増床用の床材の設置の障害となることが抑止される。
【0028】
また、本発明による増床用梁施工方法の他の態様において、
前記既存本設梁は溝形鋼もしくはリップ付き溝形鋼であり、前記既存補強梁はリップ付き溝形鋼であり、
前記既存本設梁のウェブに対して前記既存補強梁のリップが溶接接合されることにより、前記既存ユニット梁が形成されていることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、溝形鋼もしくはリップ付き溝形鋼からなる既存本設梁のウェブに対して、リップ付き溝形鋼からなる既存補強梁のリップが溶接接合されて既存ユニット梁が形成されていることにより、耐風性能に優れ、増床用梁の取り付け性が良好な既存ユニット梁となる。増床用梁である新設梁の取り付けに際しては、既存補強梁の背面に既存本設梁が存在し、作業員が既存補強梁の背面に手を入れることができないことから、既存補強梁に対してボルト孔を開設した後、ワンサイドボルト接合方法にて新設梁を接合する。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明から理解できるように、本発明の増床用梁設計方法と増床用梁施工方法によれば、既存建物の吹抜けにおける鉄骨造の既存部材に対して鉄骨造の新設梁を接合する設計及び施工において、溶接接合を適用することなく、さらには供用中の居室等に施工の影響を及ぼすことなく既存部材に対して増床用梁を接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態に係る増床用梁設計方法の一例のフローチャートである。
【
図2】実施形態に係る増床用梁設計方法と増床用梁施工方法が適用される既存建物の一例の2階の伏図である。
【
図3】増床エリア設定工程を説明する説明図である。
【
図4】梁組仮定工程、接合方法設定工程、及び梁種設定工程を説明する説明図である。
【
図6】ワンサイドボルト接合方法を説明する説明図である。
【
図7】ワンサイドボルト接合方法による接合構造の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施形態に係る増床用梁設計方法と増床用梁施工方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0033】
[実施形態に係る増床用梁設計方法と増床用梁施工方法]
図1乃至
図7を参照して、実施形態に係る増床用梁設計方法と増床用梁施工方法の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る増床用梁設計方法の一例のフローチャートであり、
図2は、実施形態に係る増床用梁設計方法と増床用梁施工方法が適用される既存建物の一例の2階の伏図である。また、
図3は、増床エリア設定工程を説明する説明図であり、
図4は、梁組仮定工程、接合方法設定工程、及び梁種設定工程を説明する説明図であり、
図5は、ボルト接合方法を説明する説明図である。さらに、
図6は、ワンサイドボルト接合方法を説明する説明図であり、
図7は、ワンサイドボルト接合方法による接合構造の一例を説明する説明図である。
【0034】
以下、実施形態に係る増床用梁設計方法と増床用梁施工方法が適用される既存建物として、鉄骨造の複数階建ての吹抜けを備えた戸建て住宅を例に説明する。
【0035】
実施形態に係る増床用梁施工方法では、既存部材である既存梁に対する増床用梁(新設梁)の接合に際して溶接接合を適用せず、ボルト接合方法もしくはワンサイドボルト接合方法を適用するものである。
【0036】
ボルト接合方法は、新築の建物を施工する際に適用されるように、ボルトとナットを締め付ける接合方法であり、新設梁の端部を既存梁に接合する際に、既存梁の裏側に作業員が手を入れることが可能な場合に、既存梁の裏側から吹抜け側に向かって既存梁のボルト孔にボルトを挿通し、吹抜け側にてボルトの先端を新設梁のボルト孔に挿通し、ナットにて締め付ける方法である。
【0037】
一方、ワンサイドボルト接合方法は、既存梁の裏側に作業員が手を入れることが不可能な場合に、吹抜け側において、新設梁のボルト孔に挿通したワンサイドボルトを既存梁のボルト孔に挿通し、締め付ける方法である。既存梁の裏側に作業員が手を入れることが不可能な場合とは、例えば、既存梁に隣接するように供用中の居室やフリースペース等が存在する場合や、既存梁の構造(構成)に依拠する場合等が挙げられる。ここで、ワンサイドボルト接合方法にて利用するワンサイドボルトには様々な形態があり、一例としては、ワンサイドボルトがワッシャと開脚部材を備え、複数の被接合部材のボルト孔に開脚部材を挿通した後、ボルトを締め付けることによって開脚部材が側方に開きながらワッシャに近接し、ワッシャと開いた開脚部材とによって複数の被接合部材を接合する形態を挙げることができる。また、ワンサイドボルトの他の例としては、複数の被接合部材のボルト孔に対してボルトをねじ込むことにより、複数の被接合部材を接合する形態を挙げることができる。以下、図示例のワンサイドボルト接合方法では、ボルトを一方の被接合部材側からねじ込んで複数の被接合部材を接合する例を取り上げて説明するが、他の例(ワッシャと開脚部材にて締め付けて接合する例)のワンサイドボルトを利用したワンサイドボルト接合方法が適用されてもよい。
【0038】
図1に示すように、吹抜けを備えた設計対象の既存建物において、まず、吹抜けに対する増床エリアの設定を行う(ステップS10,増床エリア設定工程)。
【0039】
ここで、
図2は、設計対象の建物の2階の伏図であり、吹抜けの周囲に階段とフリースペースを備えている。図示例では、1階のポーチや玄関、リビング(いずれも1階にあることから括弧内に示している)の上方に吹抜けが設けられている。2階において吹抜けを包囲するように、1階と2階の階間の屋外側に既存梁G1があり、既存梁G1に対向する室内側に既存梁G2があり、これらに直交するように別途の一対の既存梁G3,G4がある。
【0040】
尚、図示例では、吹抜けの左側にある既存梁G3と階段の間に収納スペース(収納4)があり、吹抜け側から既存梁G3の裏側に作業員が手を入れることが可能になっている。一方、既存梁G3に対向する別途の既存梁G4の裏側にはフリースペースが存在するが、このフリースペースは行き止まりのスペースであり、増床用梁施工期間中は、居住者の往来をできないようにしておくことが可能であることから、既存梁3と同様に、吹抜け側から既存梁G4の裏側に作業員が手を入れることが可能な梁である。
【0041】
一方、階間の梁となる既存梁G1は、以下で説明するように、既存本設梁と既存補強梁の既存ユニット梁であり、吹抜け側に位置する既存補強梁の裏側に作業員が手を入れることができない梁である。また、既存梁G1に対向する別途の既存梁G2は、その裏側に居住者により供用すされるフリースペースが存在することから、この既存梁G2も裏側に作業員が手を入れることができない梁である。
【0042】
図3に示すように、増床エリア設定工程では、4つの既存梁G1乃至G4で包囲された平面視矩形のエリアを増床エリアZAとして設定する。
【0043】
図1に戻り、次に、増床エリアにおける負担面積に応じて、相互に交差する複数の鉄骨造の新設梁の梁組を仮定する(ステップS12,組仮定工程)。
【0044】
具体的には、
図4に示すように、増床エリアZAの全面積の床荷重を支持できる梁組BUとして、相互に交差する2本の新設梁B1,B2からなる梁組BUを仮定する。尚、この仮定の際には、2本の新設梁B1,B2の仕様も同様に仮定する。例えば、床荷重を支持可能な所定仕様のH形鋼が仮定される。この梁組BUの仮定の段階では、2本の新設梁B1,B2の勝ち負け、すなわち、いずれが大梁と小梁であるかは設定されない。ここで、梁組は3本以上の既存梁が相互に交差する形態であってもよい。
【0045】
図1に戻り、次に、既存建物の鉄骨造の既存部材(既存梁G1乃至G4)に対する、それぞれの新設梁B1,B2の端部の接合方法を設定する(ステップS14,接合方法設定工程)。
【0046】
具体的には、
図4に示すように、梁組BUを構成する2本の新設梁B1,B2のそれぞれの両端部と、対応する既存梁G1乃至G4との各接合部D1乃至D4における接合方法を、既存建物における状況に基づいて設定する。既述するように、溶接接合は適用せず、ボルト接合方法とワンサイドボルト接合方法のいずれが適用されるかを各接合部の周辺状況に基づいて設定する。
【0047】
ここで、仮に、既存梁の裏側に作業員が手を入れることができる場合は、ボルト接合方法とワンサイドボルト接合方法のいずれを適用してもよいが、ボルト接合方法はナット締めの際のトルク管理や回転角管理等により、ボルトとナットが所望の締付け力にて締付けられていることを確認することができ、ワンサイドボルト接合方法に比べてボルトの締付け管理の精度が高くなることから、ボルト接合方法を設定するものとする。
【0048】
接合部D1,D2はいずれも、既存梁G1,G2のそれぞれの裏側に手を入れることができない(裏側から接合できない)ことから、ワンサイドボルト接合方法が設定される。対して、接合部D3,D4はいずれも、既存梁G3,G4のそれぞれの裏側に手を入れることができる(裏側から接合できる)ことから、ボルト接合方法が設定される。
【0049】
図1に戻り、次に、それぞれの新設梁B1,B2の両端部の接合方法に基づいて、相互に交差する複数の新設梁B1,B2の一方を大梁とし、他方を大梁に接合される小梁とする。
【0050】
具体的には、新設梁の両端部が既存部材の裏側から接合可能か否かを判定し(ステップS16)、既存部材に対して両端部をボルト接合方法にて接合できる新設梁B1を大梁とし(ステップS18)、既存部材に対して少なくとも一端がワンサイドボルト接合方法にて接合される(図示例は両端部がワンサイドボルト接合方法となる)新設梁B2を小梁として、相互に交差する2本の新設梁B1,B2の勝ち負けを設定する。すなわち、両端部においてボルトの締付け管理の精度が高いボルト接合方法が適用される新設梁を大梁に設定するものである。
【0051】
以上の各ステップS16乃至ステップS20が、梁種設定工程(ステップS22)となる。
【0052】
図示する増床用梁設計方法によれば、吹抜けの増床エリアZAに対して、負担面積に応じて相互に交差する複数の鉄骨造の新設梁B1,B2の梁組BUを仮定し、鉄骨造の既存部材G1乃至G4に対して設定したそれぞれの新設梁B1,B2の端部の接合方法に基づいて相互に交差する新設梁B1,B2の一方を大梁とし、他方を小梁とすることにより、溶接接合を適用することなく、さらには供用中の居室等に施工の影響を及ぼすことなく既存部材に対して増床用梁B1,B2を接合することができる。
【0053】
また、上記するように、吹抜けに対する増床エリアZAに対して、負担面積に応じて、相互に交差する複数の鉄骨造の新設梁である大梁B1と小梁B2を配置し、大梁B1の両端部を既存建物の鉄骨造の既存部材G3,G4に接合し、小梁B2の一端を大梁B1に接合し、他端を既存部材G1,G2に接合する方法は、実施形態に係る増床用梁施工方法の新設梁施工工程となる。
【0054】
ここで、増床用梁施工方法における、ボルト接合方法とワンサイドボルト接合方法の具体例を
図5乃至
図7を参照して説明する。まず、
図5を参照して、ボルト接合方法の一例を説明する。図示例の既存梁G3(G4)は、ウェブGaと上下のフランジGbを備えた溝形鋼により形成される。対して、新設梁B1はH形鋼により形成され、その端部には複数のボルト孔H1が開設されているエンドプレートEが接合されている。
【0055】
吹抜け側(の不図示の作業足場等の上)に居る作業員は、ウェブGaにボルト孔H2を開設し、新設梁G3の裏側に手を入れてボルトBOを裏側からボルト孔H2に挿通し、さらに、新設梁B1のエンドプレートEにおける対応するボルト孔H1に挿通し、ボルトBOに対してナットNを締め付けることにより、ボルト接合する。
【0056】
次に、
図6と
図7を参照して、ワンサイドボルト接合方法の一例を説明する。図示例の既存梁GUは、既存本設梁G1と、既存本設梁G1に対して耐風性能を向上させる目的で取り付けられている既存補強梁G5とを有する梁である。より具体的には、既存補強梁G5は、既存本設梁G1よりも梁成の低いリップ付き溝形鋼からなり、既存本設梁G1のウェブGaに対して既存補強梁G5のリップGfが溶接接合されており、新設梁B2は既存補強梁G5に接合されることになる。既存本設梁G1の上方のフランジGbの第1天端面Gbaよりも既存補強梁G5の上方のフランジGdの第2天端面Gdaは低い位置にあり、既存本設梁G1の下方のフランジGbの第1底面よりも既存補強梁G5の下方のフランジGeの第2底面は上方の位置にある。
【0057】
図6から明らかなように、既存補強梁G5の裏側に既存本設梁G1が存在することから、作業員は既存補強梁G5の裏側に手を入れることができないため、既存補強梁G5のウェブGcに対して複数(図示例は4つ)のボルト孔H3を開設した後、新設梁B2のエンドプレートEにある4つのボルト孔H1を対応するボルト孔H3に位置合わせし、連通するボルト孔H1,H3に対してエンドプレートE側からワンサイドボルトSBOを挿通して締め付けることにより、新設梁B2の端部をワンサイドボルト接合する。
【0058】
尚、新設梁B2のワンサイドボルト接合に先立ち、既存本設梁G1のウェブGaの下方にボルト孔H4を開設し、山形鋼からなる支持用形鋼材Sを既存補強梁G5のフランジGeの下方に挿入し、フランジGeに開設されているボルト孔H5をボルト孔H4に位置合わせし、ワンサイドボルトSBOにてワンサイドボルト接合する。ここで、図示例のワンサイドボルトSBOとしては、例えば構造用ドリルねじを適用できる。
【0059】
既存補強梁G5は既存本設梁G1の耐風性能を高めることを目的に設置されているものであり、増床される床荷重を既存本設梁G1に伝達することが当初から想定されるものでないことから、増床される床荷重を既存本設梁G1に伝達可能な剛性を有していない場合も往々にしてある。そこで、図示例のように、支持用形鋼材Sを既存本設梁G1の下方に固定して既存補強梁G5を支持させることにより、既存補強梁G5と支持用形鋼材Sの双方を介して増床される床荷重を既存本設梁G1に伝達することが可能になる。
【0060】
ここで、支持用形鋼材Sの長さは、当該支持用形鋼材Sの荷重負担幅等に応じて適宜設定される。
【0061】
また、新設梁B2のエンドプレートEには、新設梁B2の長手方向に張り出す複数(図示例は2つ)のリブR1が取り付けられている。
【0062】
既存補強梁G5に対して新設梁B2をワンサイドボルト接合する際は、各リブR1を既存補強梁G5のフランジGdの天端面(第2天端面Gda)に係止させる。
【0063】
このように、新設梁B2の上方から張り出す複数のリブR1が既存補強梁G5の天端面Gdaに係止された状態でワンサイドボルト接合されることにより、当該リブR1を既存補強梁G5の第2天端面Gdaに係止させた後に、既存補強梁G5に対して小梁B2の端部をワンサイドボルト接合することができる。このように、リブR1を介して小梁B2を既存補強梁G5に引っ掛けた状態でワンサイドボルト接合することができるため、作業性と作業安全性を向上させることができる。
【0064】
また、小梁B2を既存補強梁G5に引っ掛けた状態で、エンドプレートEの各ボルト孔H1をガイドとして、既存補強梁G5のウェブGcに対してボルト孔H3を開設することもできる。
【0065】
図7に示すように、既存補強梁G5に小梁B2がワンサイドボルト接合された状態において、既存本設梁G1の天端面(第1天端面Gba)と、リブR1の天端面Raと、小梁B2の天端面B2aはいずれも面一となっている。この構成により、面一の端面に対して不図示の床材を設置することが可能になる。尚、図示例では、既存本設梁G1の任意箇所に補強用のリブR2が接合されており、支持用形鋼材Sの任意箇所にも補強用のリブR3が接合されている。
【0066】
図示する増床用梁施工方法によれば、溶接接合を適用することなく、さらには供用中の居室等に施工の影響を及ぼすことなく既存部材に対して増床用梁を接合することができる。
【0067】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0068】
ZA:増床エリア
B1:新設梁(大梁、増床用梁)
B2:新設梁(小梁、増床用梁)
BU:梁組
G1:既存部材(既存梁、既存本設梁、溝形鋼)
G2:既存部材(既存梁、溝形鋼)
G3:既存部材(既存梁、溝形鋼)
G4:既存部材(既存梁、溝形鋼)
G5:既存部材(既存梁、既存補強梁、溝形鋼)
GU:既存ユニット梁(既存梁)
D1,D2,D3,D4:接合部
Ga,Gc:ウェブ
Gb,Gd、Ge:フランジ
Gba:第1天端面(天端面)
Gda:第2天端面(天端面)
Gf:リップ
H1,H2,H3,H4,H5:ボルト孔
N:ナット
BO:ボルト
SBO:ワンサイドボルト
E:エンドプレート
R1,R2,R3:リブ
S:支持用形鋼材