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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017242
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電気駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/02 20060101AFI20240201BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240201BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B25F5/02
B23Q11/00 D
B25F5/00 G
B25F5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119756
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 康介
(72)【発明者】
【氏名】花井 禎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英次
【テーマコード(参考)】
3C011
3C064
【Fターム(参考)】
3C011AA14
3C064AA01
3C064AA03
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC03
3C064BA11
3C064BA18
3C064BA33
3C064BA35
3C064BB01
3C064BB62
3C064CA04
3C064CA41
3C064CB17
3C064CB64
3C064CB67
3C064CB69
3C064CB71
3C064CB91
3C064DA02
3C064DA43
3C064DA59
3C064DA73
3C064DA91
(57)【要約】
【課題】付属部材と装置本体とを接続する接続部への影響がなく、付属部材の把持状態を検出可能な電気駆動装置を構成する。
【解決手段】電気駆動装置Aは、アクチュエータを有する装置本体1と、装置本体1に着脱可能なハンドル5とを有する。ハンドル5は、装置本体1に分離可能に接続される接続部5Aと、使用者がハンドル5を把持した際の把持力で変位する受圧部材5Bと、受圧部材5Bの変位に連係して永久磁石Mgを作動させる磁石制御機構5Cと、受圧部材5Bを変位可能に支持し、磁石制御機構5Cを収容するフレーム部5Dとを有する。装置本体1は、ハンドル5が装置本体1に装着された状態で受圧部材5Bが変位したときに接続部5Aから作用する永久磁石Mgの磁気を検出する磁気センサSを備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体に着脱可能な付属部材と、を備え、
前記付属部材は、前記装置本体に接続される接続部と、使用者が前記付属部材を把持した際の把持力によって内方に変位する受圧部材と、永久磁石と、前記受圧部材の変位に連係して前記永久磁石を移動または向きを変更させる磁石制御機構と、前記受圧部材を変位可能に支持すると共に、前記磁石制御機構を収容するフレーム部とを有しており、
前記装置本体は、前記付属部材が前記装置本体に装着された状態で前記受圧部材が変位したときに、前記接続部の少なくとも一部を介して作用する前記永久磁石の磁気を検出する磁気センサを有している電気駆動装置。
【請求項2】
前記接続部は、連結部材が連結されることにより前記付属部材の前記装置本体への連結を可能にする接続保持部を有している請求項1に記載の電気駆動装置。
【請求項3】
前記接続部は、磁性体製の連結部材を有しており、
前記装置本体は、前記連結部材の先端が連結されることにより前記付属部材の前記装置本体への連結を可能にする接続保持部を有しており、
前記永久磁石は、前記連結部材を介して前記磁気を前記磁気センサに作用させる請求項1に記載の電気駆動装置。
【請求項4】
前記磁石制御機構は、前記受圧部材が非把持位置において変位しないときに、前記永久磁石から前記連結部材を介して前記磁気センサに作用する前記磁気を、第1条件を満たさない状態に維持し、前記把持力によって前記受圧部材が変位したときに、前記永久磁石から前記連結部材を介して前記磁気センサに作用する前記磁気が、第2条件を満たす状態になるように前記永久磁石の磁極の位置を制御する請求項3に記載の電気駆動装置。
【請求項5】
前記第1条件を満たさない状態では、電気駆動装置での電流の供給が不能に設定され、前記受圧部材が変位して前記第1条件が満たされる状態に移行することにより、電気駆動装置での電流の供給を可能にし、
前記第1条件が満たされ且つ前記第2条件が満たされた状態では、電気駆動装置での電流の供給開始が可能であり、
電流供給中に前記第1条件が満たされた状態で且つ前記第2条件が満たされない状態に移行しても電流供給の継続が可能である請求項4に記載の電気駆動装置。
【請求項6】
前記磁石制御機構は、前記把持力によって前記受圧部材が変位したときに、前記永久磁石から前記連結部材を介して前記磁気センサに作用する前記磁気が、前記第1条件を満たし且つ第3条件を満たさない状態に前記永久磁石の磁極の位置又は向きを制御し、
前記第1条件を満たし且つ前記第3条件を満たさない状態では、電流のセーブを可能にする請求項5に記載の電気駆動装置。
【請求項7】
前記磁石制御機構は、前記永久磁石を回転自在に支持する回転部材と、前記把持力によって前記受圧部材が変位した際の変位作動を回転作動に変換して前記回転部材に伝えるギヤユニットで構成されており、
前記受圧部材が変位したときに、前記回転部材が回転して前記磁気センサに作用する前記磁気が作用するように前記永久磁石の前記磁極が前記連結部材に近接する請求項4に記載の電気駆動装置。
【請求項8】
前記フレーム部の長手方向に沿う姿勢のフレーム軸芯を挟む位置の2箇所に前記受圧部材が配置されることにより、使用者が前記付属部材を把持した際に一対の前記受圧部材が互いに接近する方向に少なくとも1つの前記受圧部材が変位するように構成され、
前記ギヤユニットが、一対の前記受圧部材の夫々と一体的に移動する一対の作動フレームに形成されたラックギヤ部に咬み合うピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの回転作動を前記回転部材に伝える複数の連動ギヤとを備えている請求項7に記載の電気駆動装置。
【請求項9】
前記ピニオンギヤが、第1ピニオンギヤと、第2ピニオンギヤとで構成され、
一対の前記受圧部材の夫々と一体的に移動する一対の作動フレームの一方側の第1作動フレームに形成された第1ラックギヤ部に咬み合うように前記第1ピニオンギヤを備え、一対の作動フレームの他方側に形成された第2ラックギヤ部に咬み合うように前記第2ピニオンギヤを備え、前記第1ピニオンギヤと前記第2ピニオンギヤを連動させる連結ラックギヤを備えている請求項8に記載の電気駆動装置。
【請求項10】
前記フレーム部の内部に、前記受圧部材が内方に変位したときに、前記フレーム部の長手方向に沿う姿勢のフレーム軸芯から離間する方向に前記受圧部材を押し出す付勢力を作用させる付勢部材を備えている請求項1に記載の電気駆動装置。
【請求項11】
前記付勢部材として、エラストマーゴム、コイルスプリング、板バネの少なくとも1つが用いられている請求項10に記載の電気駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータにより駆動される作動部を有する装置本体と、装置本体に着脱可能なハンドルとを備えた電気駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータにより駆動される電気駆動装置としてディスクグラインダや電動ドリル等が利用されてきた。このような電気駆動装置には、使用時にハンドルを装着し、不使用時にはハンドルを取り外せるものがある(例えば、特許文献1~2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電気駆動装置は、ハンドルの先端からボルトの雄ねじを突出させ、雄ねじを装置本体に螺合することにより着脱可能に構成されている。雄ねじの内部に磁石を配置し、装置本体にホール素子を配置することにより、ハンドルが装置本体に装着されたことが検出可能となっている。
【0004】
特許文献2に記載の電気駆動装置は、ハンドル内部に圧力センサ等を収容し、装置本体に設けた検出回路に圧力センサからの電気信号を送っている。これにより、使用者がハンドルを把持したことを検出できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0272494号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0231113号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電気駆動装置は、ハンドルが装置本体に装着されたことを検出できるが、使用者がハンドルを把持したことを検出できない。また、ハンドルを装置本体から取り外したとき、雄ねじの内部に配置された磁石が鉄粉等の磁性体を雄ネジの表面に引き付け、ハンドルを装置本体に装着する際に該磁性体による異物噛み込み等の不具合が生じるおそれがある。
【0007】
特許文献2に記載の電気駆動装置は、使用者がハンドルの把持を検出可能であるが、ハンドルと装置本体との間に、給電、通信のための電気接点が必要となり、この電気接点が汚れ,錆等により導通不良を起こし、ハンドルの把持を検出できないおそれがある。また、ハンドルと装置本体との電気接点に至るまで、ハンドルの雄ねじに電気配線が必要となり、ボルト強度の低下や大型化を招きやすい。
【0008】
そこで、付属部材と装置本体とを接続する接続部への影響がなく、付属部材の把持状態を検出可能な電気駆動装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
装置本体と、前記装置本体に着脱可能な付属部材と、を備え、前記付属部材は、前記装置本体に接続される接続部と、使用者が前記付属部材を把持した際の把持力によって内方に変位する受圧部材と、永久磁石と、前記受圧部材の変位に連係して前記永久磁石を移動または向きを変更させる磁石制御機構と、前記受圧部材を変位可能に支持すると共に、前記磁石制御機構を収容するフレーム部とを有しており、前記装置本体は、前記付属部材が前記装置本体に装着された状態で前記受圧部材が変位したときに、前記接続部の少なくとも一部を介して作用する前記永久磁石の磁気を検出する磁気センサを有している点にある。
【0010】
本構成では、使用者が付属部材を把持し、この把持に伴い磁石制御機構により永久磁石が移動または向きを変更した場合は、接続部の少なくとも一部を介して作用する永久磁石の磁気を、磁気センサで検知できる。この磁石制御機構は、フレーム部の内部に収容され、把持に伴い機械的に作動するため、接続部に電気接点や電気配線等を設ける必要がない。また、フレーム部の内部に永久磁石と、磁石制御機構とを収容するため、使用者が付属部材を把持していないときには接続部等に鉄粉等の磁性体が引き付けられ難く、該磁性体による異物噛み込みによる装着不具合も低減できる。従って、電気接点が不要で、異物の噛み込みによる装置不具合が解消され、しかも、付属部材と装置本体とを接続する接続部への影響がなく、付属部材の把持状態を検出可能な電気駆動装置が構成された。
【0011】
他の特徴構成として、前記接続部は、連結部材が連結されることにより前記付属部材の前記装置本体への連結を可能にする接続保持部を有している点にある。
【0012】
これによると、連結部材によって装置本体に付属部材を連結させるように接続部を構成することが可能となる。
【0013】
他の特徴構成は、前記接続部は、磁性体製の連結部材を有しており、前記装置本体は、前記連結部材の先端が連結されることにより前記付属部材の前記装置本体への連結を可能にする接続保持部を有しており、前記永久磁石は、前記連結部材を介して前記磁気を前記磁気センサに作用させている点にある。
【0014】
本構成のように、磁性体製の連結部材を備えているため、磁石の磁気を磁性体製の連結部材を介して磁気センサに作用させることが可能となり、永久磁石と磁気センサとの距離を短縮することなく、磁気の検出精度を高めることができる。また、磁性体製の連結部材を用いるため、磁気センサに磁気を作用させるためにヨークを別途備えずに部品点数の増大の抑制が可能となる。
【0015】
他の特徴構成は、前記磁石制御機構は、前記受圧部材が非把持位置において変位しないときに、前記永久磁石から前記連結部材を介して前記磁気センサに作用する前記磁気を、第1条件を満たさない状態に維持し、前記把持力によって前記受圧部材が変位したときに、前記永久磁石から前記連結部材を介して前記磁気センサに作用する前記磁気が、第2条件を満たす状態になるように前記永久磁石の磁極の位置を制御する点にある。
【0016】
本構成のように、ハンドルが装着されない場合は、使用者がハンドルを把持しないため、永久磁石から磁気センサに作用する磁気が第1条件を満たさない状態に維持される。ハンドルが装着され、使用者がハンドルを把持しても把持が適正でなく第2条件を満たさない場合は、電気駆動装置の電動モータ等のアクチュエータに電流の供給開始はできない状態である。これに対し、使用者がハンドルを適正に把持したときには、第2条件を満たす状態であると判定することにより、電気駆動装置の電動モータ等のアクチュエータに電流の供給開始が可能な状態に移行できる。
【0017】
他の特徴構成は、前記第1条件を満たさない状態では、電気駆動装置での電流の供給が不能に設定され、前記受圧部材が変位して前記第1条件が満たされる状態に移行することにより、電気駆動装置での電流の供給を可能にし、前記第1条件が満たされ且つ前記第2条件が満たされた状態では、電気駆動装置での電流の供給開始が可能であり、電流供給中に前記第1条件が満たされた状態で且つ前記第2条件が満たされない状態に移行しても電流供給の継続が可能である点にある。
【0018】
本構成のように、第1条件が満たされた状態において、使用者がハンドルを把持することにより、第2条件が満たされる状態に移行することにより、例えば、電動駆動装置の電動モータ等のアクチュエータへの電流の供給を可能にする。このように電流が供給される状況において、使用者によるハンドルの把持力が低下した場合のように、第1条件が満たされた状態で且つ前記第2条件が満たされない状態に移行しても、電流の供給を継続できる。
【0019】
他の特徴構成は、前記磁石制御機構が、前記把持力によって前記受圧部材が変位したときに、前記永久磁石から前記連結部材を介して前記磁気センサに作用する前記磁気が、前記第1条件を満たし且つ第3条件を満たさない状態に前記永久磁石の磁極の位置又は向きを制御し、前記第1条件を満たし且つ前記第3条件を満たさない状態では、電流のセーブを可能にする点にある。
【0020】
本構成では、第2条件に達した後に使用者によるハンドルの把持力が低下した場合に、第3条件に移行するように第3条件を設定することが可能であり、このように第3条件に移行した場合には、例えば、電動駆動装置の電動モータ等のアクチュエータへの電流の供給をセーブすることにより、アクチュエータに供給する電流の上限を決める等の形態で電流供給を継続できる。
【0021】
他の特徴構成は、前記磁石制御機構は、前記永久磁石を回転自在に支持する回転部材と、前記把持力によって前記受圧部材が変位した際の変位作動を回転作動に変換して前記回転部材に伝えるギヤユニットで構成されており、前記受圧部材が変位したときに、前記回転部材が回転して前記磁気センサに作用する前記磁気が作用するように前記永久磁石の前記磁極が前記連結部材に近接する点にある。
【0022】
本構成では、使用者がハンドルを把持した場合に、把持力によって磁石制御機構が永久磁石を回転させ、磁石の磁極を移動させることや向きを変更することにより、連結部材に磁極を近づけさせることにより、磁気センサで検出される磁気の条件を満たすことが可能となる。
【0023】
他の特徴構成は、前記フレーム部の長手方向に沿う姿勢のフレーム軸芯を挟む位置の2箇所に前記受圧部材が配置されることにより、使用者が前記付属部材を把持した際に一対の前記受圧部材が互いに接近する方向に少なくとも1つの前記受圧部材が変位するように構成され、前記ギヤユニットが、一対の前記受圧部材の夫々と一体的に移動する一対の作動フレームに形成されたラックギヤ部に咬み合うピニオンギヤと、前記ピニオンギヤの回転作動を前記回転部材に伝える複数の連動ギヤとを備えている点にある。
【0024】
本構成では、一対の受圧部材と、この一対の受圧部材と一体的に一対の作動フレームが作動し、一対の作動フレームの夫々に形成したラックギヤ部に咬合するピニオンギヤを回転させ、このピニオンギヤの回転作動を複数の連動ギヤを介して回転部材に伝えることにより確実に永久磁石を回転させ、磁気センサに作用する磁気の増減や、磁極の切り換えにより磁気の条件の制御を可能にする。
【0025】
他の特徴構成は、前記ピニオンギヤが、第1ピニオンギヤと、第2ピニオンギヤとで構成され、一対の前記受圧部材の夫々と一体的に移動する一対の作動フレームの一方側の第1作動フレームに形成された第1ラックギヤ部に咬み合うように前記第1ピニオンギヤを備え、一対の作動フレームの他方側に形成された第2ラックギヤ部に咬み合うように前記第2ピニオンギヤを備え、前記第1ピニオンギヤと前記第2ピニオンギヤを連動させる連結ラックギヤを備えた点にある。
【0026】
本構成によると、受圧部材の変位に伴い第1ピニオンギヤと第2ピニオンギヤとが回転すると共に、第1ピニオンギヤと第2ピニオンギヤとが連結ラックによって連動して回転することにより受圧部材を偏って把持しても、受圧部材は平行の姿勢を維持した状態で平行移動した変位をギヤユニットに伝える形態での伝動を実現する。
【0027】
他の特徴構成は、前記フレーム部の内部に、前記受圧部材が内方に変位したときに、前記フレーム部の長手方向に沿う姿勢のフレーム軸芯から離間する方向に前記受圧部材を押し出す付勢力を作用させる付勢部材を備えている点にある。
【0028】
本構成のように、付勢部材を用いることにより、使用者が付属部材を把持しないときに付勢部材の付勢力により受圧部材を非把持位置に速やかに復帰させることができる。
【0029】
他の特徴構成は、前記付勢部材として、エラストマーゴム、コイルスプリング、板バネの少なくとも1つが用いられている点にある。
【0030】
本構成では、必要とする付勢力を得るために、エラストマーゴム、コイルスプリング、板バネや同様の付勢力を機能させることが可能なその他の部材の少なくとも1つを用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ディスクグラインダの斜視図である。
図2】ディスクグラインダのハンドルの分解斜視図である。
図3】ハンドルを作動レバーの作動方向に直交する方向から見た断面図である。
図4】ハンドルを作動レバーの作動方向に沿う方向から見た断面図である。
図5】作動レバーが把持されない状態と、把持された状態とにおける永久磁石の姿勢を示す断面図である。
図6】ハンドルを長手方向に直交する方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、電気駆動装置の一例として、ディスクグラインダAを説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0033】
〔基本構成〕
図1に示すように、電動モータMを内蔵した装置本体1と、装置本体1の端部に備えられたディスク2と、ディスク2の外周の一部を覆うディスクカバー3と、電動モータMの駆動(ON)および停止(OFF)を行う電源スイッチ4と、装置本体1の外面に装着された付属部材としてのハンドル5(付属部材の一例)とを備えてディスクグラインダAが構成されている。
【0034】
このディスクグラインダAは、電動モータMを駆動する電力が給電線6を介して供給される。装置本体1は全体的に筒状に形成され、ハンドル5は、装置本体1より小径で、装置本体1の長手方向に直交する姿勢のフレーム軸芯Xに沿って備えられる。
【0035】
ディスクグラインダAは、ディスク2が砥石で構成され、このディスク2が高速回転することにより加工対象の研削を可能にする。ディスクグラインダAは、使用者が右手で装置本体1を握り、左手でハンドル5を把持する(握る)形態で操作される。
【0036】
ハンドル5は、装置本体1から取り外し可能(着脱可能)である。ディスクグラインダAは、ハンドル5が装置本体1に適正に装着された状態において、使用者がハンドル5を、設定値を超えた力(把持力)で把持することにより、電動モータMの駆動を許容する制御回路(図示せず)を備えている。
【0037】
図面には示していないが、ディスクグラインダAは、右手でハンドル5を把持する(握る)状態で操作できるように、図1に示す位置と反対側にハンドル5の着脱を可能に構成されている。制御回路は、このように反対側に装着されたハンドル5を把持した場合でも、電動モータMの駆動を許容する。
【0038】
制御回路は、使用者がハンドル5を把持しない場合や、把持力が非常に弱い場合には電源スイッチ4をON操作しても電動モータMへの電流の供給を不能にする。また、制御回路は、ハンドル5が装置本体1に対して適正に装着されない場合には、電動モータMへの電流の供給を不能にする。尚、制御回路はハンドル5を把持して電流が供給された状態から把持力が弱くなった場合に、電動モータMへの電流の供給を抑制する状態を維持することで、電流をセーブする状態に移行させることが可能である。これらの制御形態は後述する。
【0039】
〔ハンドル〕
ハンドル5は、図1図2に示すように、装置本体1に対し分離可能に接続する接続部5Aと、使用者の把持力により変位する一対の受圧部材5Bと、受圧部材5Bの変位に連係して永久磁石Mgを移動させる磁石制御機構5Cと、筒状のフレーム部5Dとを有している。
【0040】
フレーム部5Dは、一対の作動レバー17(受圧部材5Bの一部)を変位自在に支持しており、永久磁石Mgと、磁石制御機構5Cとを内部空間に収容している。
【0041】
ハンドル5は、一対の受圧部材5Bの作動レバー17の外面と、フレーム部5Dのフレーム本体14の外面とが柔軟なゴムで成るゴムグリップ7で覆われている。ゴムグリップ7が、受圧部材5Bを保護し、フレーム部5Dの内部への塵埃の侵入を防止する。また、ゴムグリップ7は、フレーム部5Dの全周を均等に覆っているので、例えば、ひも状のもので縛って受圧部材5Bを変位させることが困難となり、使用者が非把持の状態においても把持状態として使用する形態での作業を防止できる。これにより、装置本体1のみを把持していた片手作業を阻止できる。
【0042】
〔ハンドル:接続部〕
接続部5Aは、図1図2図5に示すように、鋼鉄材等の磁性体製のボルト11(連結部材の一例)と、このボルト11の先端を露出させる形態でボルト11を収容する保持部材12とを有している。ボルト11と、保持部材12とは、フレーム軸芯Xと同軸芯上に配置され、保持部材12にはフレーム軸芯Xに対して直交する姿勢のフランジ部12aが一体的に形成されている。
【0043】
このハンドル5は、保持部材12のフランジ部12aの内部にボルト11の頭部11aが嵌合し、この嵌合によりボルト11と保持部材12とが一体回転する。
【0044】
図1図5に示すように、装置本体1は、ボルト11に螺合する接続保持部としてのナット8を備えている。装置本体1の内部でナット8の近傍には、ボルト11を介して永久磁石Mgから作用する磁気(磁束密度)を検知するためホール素子で成る磁気センサSを配置しており、この磁気センサSの検出信号が制御回路に伝えられる。尚、磁気センサSとして磁気抵抗素子を用いることや、半導体磁気抵抗素子を用いても良い。
【0045】
ハンドル5は全体を回転させることにより、ボルト11の先端をナット8(接続保持部)に螺合させる形態で装置本体1に装着される。図5に示すように、ハンドル5を装置本体1に装着した場合、保持部材12の端部が装置本体1の外面に接触することで、ハンドル5を螺合する際の回転の限界が決まり、ボルト11の先端が磁気センサSの近傍に達する。また、ハンドル5の全体を逆方向に回転させることにより装置本体1からハンドル5を分離できる。
【0046】
接続保持部としてのナット8は少なくとも一つあればよく、二つの場合は、磁気センサSは夫々のナット近傍に配置される。
【0047】
〔ハンドル:フレーム部〕
図2図4図6に示すように、フレーム部5Dは、樹脂製で半円筒の一対のフレーム本体14を有し、これらを複数の連結ビス15で連結することにより、円柱状の外周面を有する筒状のフレーム部5Dを作り出している。フレーム本体14のうち、保持部材12に近接する端部にフレーム軸芯Xと直交する外方に突出する連結体14aが一体的に形成されている。
【0048】
これにより一対のフレーム本体14を連結した状態で、フレーム本体14の連結体14aと、保持部材12のフランジ部12aとを固定ビス16で固定することにより、接続部5Aとフレーム部5Dとが一体化される。
【0049】
図3図6に示すように、フレーム部5Dの合わせ面に受圧部材5Bの作動フレーム18の挿通が可能な一対のスリットがフレーム軸芯Xを挟む位置の2箇所に形成されている。フレーム部5Dは、スリットの外方位置に作動レバー17(受圧部材5Bの一部)を配置する空間が窪む形状で形成されている。このように窪む空間を凹状領域5Sと称している。
【0050】
この凹状領域5Sが形成されることにより、図6に示すように、フレーム部5Dの外部とゴムグリップ7の内面との間に空間が作られ、把持力による作動レバー17の作動を容易にしている。
【0051】
〔ハンドル:受圧部材〕
図2図5に示すように、一対の受圧部材5Bは、フレーム軸芯Xを挟む位置の2箇所に配置されている。この受圧部材5Bは、作動レバー17と、この作動レバー17のうちフレーム軸芯Xに沿う方向での両端部からハンドル5の径方向内方に突出するプレート状の一対の作動フレーム18とを有している。
【0052】
作動フレーム18は、スリットを挿通する位置に配置され、この作動フレーム18は、ラックギヤ部18aが形成されている。
【0053】
図2~5に示すように、ハンドル5は、このハンドル5の内部で一方の受圧部材5Bの作動フレーム18のラックギヤ部18aと他方の受圧部材5Bの作動フレーム18のラックギヤ部18aが対向する位置関係となるようにガイドブロック19と、ガイドプレート20とを備えている。
【0054】
ガイドブロック19は、作動レバー17の作動方向に沿う方向視において、作動レバー17と重なり合う位置に配置されたブロック状物であり、図2に示すように、ラックギヤ部18aに咬合するピニオンギヤ23(磁石制御機構5Cの一部)を収容する一対の凹状部19aと、ピニオンギヤ23を回転自在に支持するピニオン支軸23sなどの挿通が可能な一対の孔状部19bとが側面に形成され、ラックギヤ部18aが配置される切り欠き部19cが端縁に形成されている。
【0055】
ガイドプレート20は、ピニオンギヤ23が配置される一対の貫通孔部20aが形成され、図2図3に示す連結ラックギヤ24を、フレーム軸芯Xに沿う方向にスライド移動自在に支持するレール部20bを備えている。本実施形態では、一対のピニオンギヤ23を備えているが、ピニオンギヤ23は単一でも良い。また、連結ラックギヤ24を用いないように構成することも可能である。
【0056】
一対の作動レバー17は、作動レバー17とガイドブロック19との間に配置されたブロック状のエラストマーゴムや樹脂で成る複数の付勢部材21によってハンドル5の凹状領域5Sからフレーム軸芯Xから遠ざけられる方向に付勢されている。これにより、使用者がハンドル5を把持した場合に作動レバー17の変位に伴って付勢部材21が圧縮され、把持を解除した場合に、付勢部材21の付勢力により、一対の作動レバー17が非把持位置に復元する。
【0057】
〔ハンドル:磁石制御機構〕
磁石制御機構5Cは、図2~4に示すように、一対のピニオンギヤ23と、第1中間ギヤ25と、第2中間ギヤ26と、回転部材27と備えている。回転部材27は、セクタギヤ27aと、永久磁石Mgを支持するホルダ部27bとを有している。ホルダ部27bは、このホルダ部27bに一体的に形成された回転支軸27sを有している。
【0058】
この磁石制御機構5Cは、一対のピニオンギヤ23の一方が第1ピニオンギヤであり、他方が第2ピニオンギヤである。また、一対の作動フレーム18の夫々において、第1ピニオンギヤに咬み合うギヤが第1ラックギヤ部であり、第2ピニオンギヤに咬み合うギヤが第2ラックギヤ部である。この一対のピニオンギヤ23に連結ラックギヤ24が咬合する。
【0059】
図2~4に示すように、ピニオンギヤ23はピニオン支軸23sで回転自在に支持され、第1中間ギヤ25は第1支軸25sで回転自在に支持され、第2中間ギヤ26は、第2支軸26sで回転自在に支持されている。
【0060】
ピニオン支軸23sと、第1支軸25sと、第2支軸26sとは、一対のフレーム本体14の夫々の内面に両端部が支持される。また、回転支軸27sは、回転部材27を挟む両側の位置に配置され、夫々の回転支軸27sは、一対のフレーム本体14の内面に対して回転自在に支持される。
【0061】
ピニオン支軸23sと、第1支軸25sと第2支軸26sと、一対の回転支軸27sは夫々ピニオンギヤ23、第1中間ギヤ25、第2中間ギヤ26、回転部材27に一体形成されてもよい。
【0062】
磁石制御機構5Cは、永久磁石Mgの移動形態として、回転部材27と一体的に永久磁石Mgを回転させている。この磁石制御機構5Cによる永久磁石Mgの制御形態として、図面には示していないが、永久磁石Mgの直線的な移動や、円弧状の軌跡に沿う移動及びフレーム軸芯Xに略直交する方向での回転が含まれる。
【0063】
ギヤユニットGUは、一対のピニオンギヤ23と、第1中間ギヤ25と、第2中間ギヤ26とで構成され、作動レバー17の直線的な変位を回転作動に変換し、回転部材27に伝える。ギヤユニットGUを構成する複数のギヤは、小径ギヤ部と大径ギヤ部とを有する二段ギヤとして構成され、ピニオンギヤ23、第1中間ギヤ25、第2中間ギヤ26の順序で回転角を拡大する増速型の伝達を実現する。
【0064】
この増速側の伝達を実現するために、ピニオンギヤ23の大径ギヤ部の回転を、第1中間ギヤ25の小径ギヤ部に伝え、第1中間ギヤ25の大径ギヤ部の回転を、第2中間ギヤ26の小径ギヤ部に伝え、第2中間ギヤ26の大径ギヤ部の回転を、回転部材27のセクタギヤ27aに伝える。
【0065】
また、一対のピニオンギヤ23の小径ギヤ部が、連結ラックギヤ24のギヤ部に咬合している。これにより、使用者がハンドル5の受圧部材5Bを偏って把持しても把持力によって一対のピニオンギヤ23を等しい角度で回転させ、フレーム軸芯Xに平行の姿勢で平行移動した作動レバー17の変位をギヤユニットGUに伝えることが可能である。
【0066】
図5に示すように、永久磁石Mgは両端に磁極(N極とS極)を配置した棒磁石として構成されている。磁石制御機構5Cは、ハンドル5が把持されない状態では、図5の(A)欄、図6に示すように、一対の作動レバー17は、複数の付勢部材21の付勢力によりフレーム軸芯Xから最も離間した非把持位置にある。
【0067】
また、ギヤユニットGUのうち、第1中間ギヤ25と、第2中間ギヤ26と、セクタギヤ27aとの各ギヤが、ピニオンギヤ23の回転作動を回転部材27に伝える連動ギヤとして構成されている。永久磁石Mgは、両端に磁極(N極とS極)を配置したブロック状に形成されている。
【0068】
制御回路は、装置本体1にハンドル5が適正に装着され、このハンドル5の永久磁石Mgの磁気を磁気センサSが検知することにより、磁界の方向と磁気(磁束密度)の大きさから第1条件を満たさないが適正にハンドル5が装着されていると判定し、ハンドル5が把持されていないか適正に把持されていない場合は第2条件を満たさないと判定する。また、制御回路は、ハンドル5が適正に把持されたときの磁界の方向と磁気(磁束密度)の大きさを磁気センサSが検知したときに第2条件を満たすと判定する。更に、制御回路は、この第2条件を満たす状態からハンドル5の把持力が低下した場合のように、第1条件を満たし且つ第2条件を満たさないと予め設定された磁気を検知したときに第3条件を満たす状態と設定する。尚、第2条件と第3条件は、装置本体1にハンドル5が適正に装着された状態でのみ満たされる。これらの制御形態を以下に説明する。
【0069】
つまり、磁石制御機構5Cは、ハンドル5が装着されず一対の受圧部材5Bが変位しないときに、永久磁石Mgから磁性体製のボルト11(連結部材の一例)を介して磁気センサSに作用する磁気を、第1条件を満たさない状態に維持する。これに対し、磁石制御機構5Cは、ハンドル5が適正に装着された状態で、一対の受圧部材5Bが変位しない状態で永久磁石Mgから磁性体製のボルト11を介して磁気センサSに作用する磁気を、第1状態を満たす状態に維持する。
【0070】
次に、磁石制御機構5Cは、使用者がハンドル5を把持し、その把持力によって一対の受圧部材5Bが変位したときに、永久磁石Mgを、回転支軸27sを中心に90度だけ回転させることにより、永久磁石Mgの磁極からボルト11を介して磁気センサSに作用する磁気が第2条件を満たす状態になるように永久磁石Mgの磁極の位置を制御する。これにより、使用者が電源スイッチ4をONすることにより制御回路は電動モータMに電流を供給する。
【0071】
このように電動モータMに電流が供給される状態において、使用者がハンドル5の把持力を低下させたときに、磁石制御機構5Cは、第2条件は満たさないものの、第3条件を満たす状態になるように永久磁石Mgの磁極の位置を制御する。制御装置は、この第3条件にあることを判定した場合には電動モータMに供給する電流を維持する。特に、この電動モータMに対する電流の供給の維持は、第2条件を満たす状態から、第2条件を満たさない状態に移行した場合にのみ行われる。
【0072】
この第3条件を満たす状態を基準に使用者がハンドル5の把持力を更に低下させときに、磁石制御機構5Cは、第3条件は満たさない状態になるように永久磁石Mgの磁極の位置を制御する。このように、第3条件を満たさない状態にあることを判定した場合には電動モータMに対し、制限された電流(セーブされた電流)を供給する。特に、この電動モータMに対する電流の供給の維持は、第3条件を満たす状態から、第3条件を満たさない状態に移行した場合にのみ行われる。
【0073】
このように、制御回路は、第1条件を満たしたことを判定しただけでは電源スイッチ4をONしても、電動モータMに電流を供給することはなく、ハンドル5が適正に把持され第2条件を満たすことを判定した状態で電源スイッチ4がONされた場合に電動モータMに電流を供給する。制御回路は、この後に、把持力が低下し第2条件を満たさないが、第3条件を満たす状態にあることを判定した場合に、電動モータMに対する電流の供給を継続する。更に、制御回路は、第3条件を満たしている状態から、把持力が更に低下し第3条件を満たさない状態に移行したことを判定した場合には、電動モータMに対して予め設定された電流を供給するセーブモードに移行する。
【0074】
本実施形態においては、第1条件、第2条件、及び、第3条件は磁気センサSに作用する磁気(磁束密度)の大きさ又は磁気(磁束密度)の大きさ及び磁界の方向で決まる条件である。磁気センサSに作用する磁気の方向と磁気とが所定の大きさ以上であれば、装置本体1の第1条件を満たす状態となる。この場合は、磁気センサSに作用させる磁極はN極とS極のいずれであってもよいし、磁気センサSの特性に合わせてN極とS極が配置されていてもよい。
【0075】
尚、第3条件を満たさない状態でセーブモードに移行する設定を電動モータMに対する電流の供給をストップさせる設定としてもよいし、第3条件を満たさない状態でセーブモードに移行する設定として第3条件を満たさず且つ第1条件を満たす状態で電動モータMに対する電流の供給をストップさせる条件を設定することが可能である。
【0076】
ハンドル5の大きさ、受圧部材5Bとボルト11の距離や永久磁石Mgの大きさや形状により、第1中間ギヤ25と第2中間ギヤ26のうちの一つまたは全部を省略することが可能であり、中間ギヤを増やすことも可能である。
【0077】
〔作動形態〕
図5の(A)欄に示すように、ハンドル5が把持されない非把持位置にある場合、磁石制御機構5Cは、永久磁石Mgの磁極(N極とS極)が並ぶ方向を、フレーム軸芯Xに対して直交する方向に維持するように回転部材27の回転姿勢を設定する。
【0078】
このように永久磁石Mgの姿勢が設定されることにより、永久磁石Mgの一対の磁極の夫々がボルト11の頭部11aから最も離間し、永久磁石Mgからボルト11を介して磁気センサSに作用する磁気(磁束密度)の大きさは極めて小さいものとなる。つまり、磁気センサSに作用する磁気(磁束密度)の大きさが第1条件を満たさない状態に維持される。
【0079】
装置本体1の制御回路(図示せず)は、磁気センサSを構成するホール素子に永久磁石Mgから印加される磁気(磁束密度)の大きさに対応して変化する出力電圧から把持の有無を判定できるように、磁気(磁束密度)の大きさの閾値を設定してもよく、磁界の方向と磁気(磁束密度)の大きさの閾値を設定してもよい。
【0080】
これにより、制御回路は、図5の(A)欄に示すように、ハンドル5が非把持位置にある場合、磁気センサSの出力電圧から把持されていないことを判定し、電動モータMへの電流の供給を不能にする。
【0081】
これに対し、図5の(B)欄に示すように、ハンドル5が把持された把持位置まで操作された場合、磁石制御機構5Cは、作動レバー17の直線的な作動を、ギヤユニットGUで回転作動に変換し、永久磁石Mgの磁極(N極とS極)の並ぶ方向を、フレーム軸芯Xに沿わせる(平行姿勢にする)ように回転支軸27sを中心に回転部材27の回転姿勢を90度回転させるように制御する。これにより、磁気センサSに作用する磁界の方向および磁気(磁束密度)の大きさが第1条件を満たす状態を経由して第2条件を満たす状態に達する。
【0082】
このように永久磁石Mgの姿勢が制御されることにより、永久磁石Mgの一対の磁極の一方がボルト11の頭部11aに接近する位置で対向することになり、永久磁石Mgからボルト11を介して磁気センサSに作用する磁気(磁束密度)の大きさを増大させる。
【0083】
これにより、制御回路は、図5の(B)欄に示すように、ハンドル5が把持位置まで操作された場合に、磁気センサSの出力電圧から、ハンドル5が把持されていることを判定し、電動モータMへの電流の供給を可能にし、電動モータMを駆動させる電源スイッチ4のON操作による電流の供給開始可能な第2条件を満たす状態に達する。
【0084】
また、このディスクグラインダAでは、ハンドル5を把持して電流が供給された状態から把持力が弱くなった場合に、磁気センサSに作用する磁気(磁束密度)の大きさが第2条件を満たさなくても、第3条件を満たす場合には、セーブモード(セーブする状態)への移行を可能にするように構成できる。
【0085】
このディスクグラインダAでは、ハンドル5の把持が緩んだりハンドル5から手が離れることで、第2条件又は第3条件を満たす状態から第1条件を満たさない状態に移行すると、磁気センサSの出力電圧から、電動モータMへの電流の供給を停止させるように制御回路の設定をすることが可能である。
【0086】
このセーブモードでは、電動モータMを除く機器への電流の供給を可能にすることにより電流の消費を抑制しており、例えば、セーブモードにあることを示すランプを点灯させることや、ハンドル5の把持が不充分であることを認識させる報知を可能にする。また、セーブモードでは、電動モータMに供給する電流を小さくしてディスク2の回転数を低下させることによりハンドル5の把持力が不充分であることを認識させるように構成されてもよい。
【0087】
〔磁石制御機構の変形例〕
このように説明した磁石制御機構5Cは、回転支軸27sを中心に永久磁石Mgを90度回転させるものであったが、永久磁石Mgを180度回転させるように構成することも考えられる。
【0088】
この場合、磁気センサSとして磁極を判別できるものを用いることにより、ハンドル5が把持されず、作動レバー17が変位しない場合に、例えば、永久磁石MgのN極をボルト11の頭部11aに接近させ、ハンドル5が把持され、作動レバー17が変位した場合に永久磁石Mgを180度回転させることによりS極をボルト11の頭部11aに接近させることで、ハンドル5が把持されたことを検知できるように構成することになる。このとき、ボルト11から永久磁石MgのS極に向かう磁界の方向と磁気センサSに作用する永久磁石MgのS極による磁気(磁束密度)の大きさが所定の大きさ以上であれば、第2条件を満たす状態となる。
【0089】
磁石制御機構5Cは、回転支軸27sを中心に永久磁石Mgを回転させる角度は90°や180°に限らず、90°未満でも90以上でも磁気センサSを制御するための条件の状態とする角度に設定することが可能である。
【0090】
〔実施形態の作用効果〕
このように構成されたディスクグラインダAは、ハンドル5の装着が不適正である場合や、使用者が適正に把持しない場合には、電動モータMの作動を不能するものであり、ハンドル5の装着が適正で、使用者が適正にハンドル5を把持する条件を満足することにより、電動モータMを作動させ、作業を実現するものである。
【0091】
このように適正にハンドル5を適正に把持したことを判定するための一つの構成として、使用者がハンドル5を把持した際の作動レバー17の僅かな作動を磁石制御機構5Cによって拡大し、永久磁石Mgを90度回転させるため、作業者がハンドル5を把持した際に作動レバー17を大きいストロークで変位させる必要がない。その結果、ハンドル5の外径を大径化する不都合を招くことがない。
【0092】
ハンドル5が、このハンドル5を装置本体1に連結するため接続部5Aとしてボルト11に鉄鋼材等の磁性体を用いており、永久磁石Mgの磁気を磁気センサSに作用させるために接続部5Aを構成するボルト11の少なくとも一部を用いるため、ボルト11とは別体である専用のヨーク等を用いない構成とすることが可能である。
【0093】
また、ボルト11の内端の頭部11aの近傍で永久磁石Mgを回転させることにより、永久磁石Mgの磁気(磁束)を、ボルト11を介して磁気センサSに作用させる構成である。このため、例えば、永久磁石Mgの磁束を直接的に磁気センサSに作用させる構成と比較して、永久磁石Mgの配置に無理がなくハンドル5の設計も容易になる。
【0094】
この磁石制御機構5Cは、作動レバー17の作動を回転に変換する一対のピニオンギヤ23が連結ラックギヤ24によって連動するため、受圧部材5Bを偏って把持しても、受圧部材5Bの作動レバー17をフレーム軸芯Xに平行する姿勢を維持した状態で平行移動した変位をギヤユニットGUに伝える形態を実現できるので、例えば把持が緩むなどしても磁気センサSに作用する磁気の条件の状態に応じた磁気センサSの出力電圧により制御回路の設定に即して動作することが可能となる。
【0095】
セーブモードに移行可能であるため、ハンドル5の把持が不充分であることをセーブモードにおいて認識することも可能である。
【0096】
この磁石制御機構5Cは、フレーム部5Dの内部に収容され、把持に伴い機械的に作動するため、接続部5Aに電気接点や電気配線等を設ける必要がなく、電気接点の腐食や摩耗、変形等が原因となる接触不良や、製造工程での電気配線の引き回し作業が不要であり、電気配線の断線による把持検知不能となることはない。また、フレーム部の内部に永久磁石Mgと、磁石移動機構とを収容し、受圧部材5Bが非把持位置で永久磁石Mgの磁極がボルト11から離間した位置に配置されボルト11の保持部材12から露出した装置本体1のナット8に螺合する螺合部8aは永久磁石Mgによる磁力がほとんど作用されない構造とすることで、使用者がハンドル5を把持していないときには螺合部8aに鉄粉等の磁性体が引き付けられ難く、該磁性体による異物噛み込みによる装着不具合も低減できる。
【0097】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0098】
(a)作動レバー17が把持されない状況でも、ハンドル5が装置本体1に装着された場合には、永久磁石Mgからボルト11を介して磁気センサSに作用する磁気(磁束密度)の大きさに基づき、ハンドル5が適正に装置本体1に装着されたことを判定できるように構成する。
【0099】
つまり、作動レバー17が把持されない状況では、永久磁石Mgから磁気センサSに作用する磁気(磁束密度)は大きくない(上記の第1条件及び第2条件に相当する磁気(磁束密度)の大きさよりも小さい)ものの、ボルト11を介して磁気センサSで多少の磁気(磁束密度)の大きさが検知可能であるため、例えば、ハンドル5が装着された際の磁気(磁束密度)の大きさを判定するための条件が設定される。
【0100】
この別実施形態(a)のように電気駆動装置を構成する場合、ハンドル5が装置本体1に装着された際に磁気センサSで検知される磁界の方向と磁気(磁束密度)の大きさに対応する条件と、ハンドル5が装置本体1に装着された状態でハンドル5が把持された際に磁気センサSで検知される磁界の方向と磁気(磁束密度)の大きさに対応する条件が設定される。この条件を満たす状態と満たさない状態によって、電気駆動装置を制御できる設定を行うことが可能である。磁界の方向と磁気(磁束密度)の大きさに対応する条件は2つ(第1条件と第2条件)設定することが可能であるが、第1条件と第2条件は同じであってもよく、3つ以上の条件が設定されてもよい。
【0101】
従って、ハンドル5が装置本体1に装着されない状態や、装着が不充分である状態の判定も可能となり、例えば、ランプを点灯させることにより、使用者にハンドル5が適正に装着されていないことを認識させることも可能になる。
【0102】
使用者がハンドル5を非把持状態であるときに、ハンドル5の装着の状態が適正かどうかを判定させるために、非把持状態での永久磁石Mgの方向が磁気センサSの極性によって選択されたN極とS極のいずれかが磁気センサSに近づく方向に傾いていてもよく、適正な把持状態であるときに、磁気センサSの極性によって選択されたN極とS極のいずれかが磁気センサSに対向していてもよいし、傾いていてもよい。
【0103】
(b)ハンドル5(付属部材)として、先端に係合用の爪体(連結部材)を有する磁性体製の棒状体を用いる。この構成では、フレーム軸芯Xを中心にハンドル5を回転させ、装置本体1の複数の爪体(接続部材)に係合させるバヨネット型の連結可能な構成を用いる。また、異なる構成として、ハンドル5(付属部材)として、先端に係合用の凹部(結部材)を有する磁性体製の棒状材を用いる。この異なる構成では、棒状材の先端の凹部にロック部材(接続部材)を係合させることに抜け止め状態を作り出す構成が考えられ、その他の接続機構によって連結可能な構成とすることが可能である。
【0104】
このように、ハンドル5(付属部材)を装置本体1に装着するための連結部材は、ボルト11に限るものではなく、連結部材を装置本体1に連結させる接続部材はナット8に限るものではなく、任意の構成を用いることが可能である。また、連結部材と接続部材は夫々1つに限るものではなく複数の部材で構成されていてもよい。
【0105】
(c)磁気センサSに印加される磁気(磁束密度)の大きさを高めるため、例えば、磁気センサSの裏面側(ボルト11の反対側の面)や、磁気センサSの近傍に鉄片等の磁性体(ヨークとして捉えることも可能である)を配置する。また、たとえば、ハンドル5を装置本体1に装着しない状態で、装置本体1の外部の磁気が磁気センサSに作用して誤検出する不都合を解消するため、磁気センサSの近傍等に磁気シールドを備える。
【0106】
(d)ハンドル5を把持する操作と同時に、フレーム軸芯Xを中心にハンドル5を捻る操作を行った場合にのみ、電源スイッチ4のON操作による電動モータMの駆動を可能にするようにディスクグラインダA(電気駆動装置)を構成する。
【0107】
この別実施形態(d)の構成として、実施形態に記載したように受圧部材5Bの把持を検知する構成の他に、ハンドル5の捻り操作を検知するスイッチ類を必要とするものの、把持操作と捻り操作とに基づいて電動モータMの駆動を可能にすることから誤って電動モータMを駆動させる不都合の排除が可能となる。
【0108】
(e)磁石制御機構5Cを、ギヤを用いずに作動レバー17の変位をロッドやワイヤを介して回転部材27に伝えることにより、回転部材27を、回転支軸27sを中心に回転させるように構成する。この場合、一対の作動レバー17のうち少なくとも一方が変位するように構成されてもよい。
【0109】
この別実施形態(e)では、例えば、一対の作動レバー17をパンタグラフ型のリンクで連係させ、一対の作動レバー17が把持力によって変位する際に、パンタグラフ型のリンクの変位をロッドやワイヤを介して回転部材27に伝えるように磁石制御機構5Cを、構成することが考えられる。この場合、一対の作動レバー17のうち少なくとも一方が変位するように構成されてもよい。
【0110】
(f)磁石制御機構5Cを、ギヤを用いずに作動レバー17の変位を流体の圧力に変換し、この圧力を回転部材27に伝えることにより、この回転部材27を、回転支軸27sを中心に回転させるように構成する。この場合、一対の作動レバー17のうち少なくとも一方が変位するように構成されてもよい。
【0111】
この別実施形態(f)では、例えば、作動レバー17の変位により容積が変化するチャンバーやベローズ等にオイル等流体を封入し、このオイルの圧力が伝えられることにより、実施形態で示した回転部材27を回転させるシリンダ等を用いることが考えられる。
【0112】
(g)磁石制御機構5Cを、作動レバー17からの圧力で変形し、圧力が解除されることで元の形状に復元する可逆性を有する弾性部材を、この作動レバー17の近傍位置から、実施形態で示した回転部材27の近傍に亘る領域に配置することにより、弾性部材の変形に伴う圧力を弾性部材から、直接的に回転部材27に伝え、回転部材27を回転させ、圧力が解除されることにより回転部材27を元の姿勢に戻すように構成する。
【0113】
また、この別実施形態(g)の変形例として、ギヤ等の機械的に作動する機構を用いずに弾性部材だけで磁石制御機構5Cを構成することが考えられる。この変形例では、例えば、圧力の作用によって永久磁石Mgをボルト11の頭部11aに近づけさせ、圧力が低下した場合に永久磁石Mgをボルト11の頭部11aから離間させるように構成することが可能であり、弾性部材に圧力の作用と、作用の解除に対応して、実施形態と同様に永久磁石Mgを、回転させるように機械的な構成を一部用いる構成も考えられる。
【0114】
(h)ボルト11の内端に対して永久磁石Mgをフレーム軸芯Xに沿う方向に接近する位置と、離間する位置と切り換えるように、磁石制御機構5Cを構成する。
【0115】
別実施形態(a)~(h)において、永久磁石Mgを回転させずに永久磁石Mgの磁極の位置の切り換えを行う構成として、永久磁石Mgを、例えば、直線的に移動させることや円弧状の軌跡に沿って移動させる構成が考えられる。
【0116】
(i)付勢部材21として、エラストマーゴムに限らず、圧縮スプリングを用いることや、板バネを用いる。このようにスプリング等を用いることにより、作動レバー17を非把持位置への移動を確実に行わせる。
【0117】
(j)給電線6を用いずに、内部に二次電池を備え、二次電池から供給される電力で電動モータMを駆動するように電気駆動装置を構成する。
【0118】
(k)作動レバー17は、一対でなく一つだけ備えるように構成する。若しくは、三つ以上備えるように構成する。
【0119】
ピニオンギヤ23は、一つであってもよく、受圧部材5Bの作動フレーム18は一つでありラックギヤ部18aも一つである構成とする。
【0120】
(l)電気駆動装置として、ディスクグラインダAに限らず、穿孔用の工具としてのハンディドリルや、ボルト等をさせる電動ドライバー等の電動工具に用いる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、電気駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0122】
1 装置本体
5 ハンドル(付属部材)
5A 接続部
5B 受圧部材
5C 磁石制御機構
5D フレーム部
8 ナット(接続保持部)
18 作動フレーム
18a ラックギヤ部
21 付勢部材
23 ピニオンギヤ
24 連結ラックギヤ
25 第1中間ギヤ(連動ギヤ)
26 第2中間ギヤ(連動ギヤ)
27 回転部材
27a セクタギヤ(連動ギヤ)
11 ボルト(連結部材)
12 保持部材
A ディスクグラインダ(電気駆動装置)
GU ギヤユニット
Mg 永久磁石
S 磁気センサ
X フレーム軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6