(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172420
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】監視設備、防火・監視システム、及び、配管・監視システム
(51)【国際特許分類】
A62C 37/08 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A62C37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090128
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 晃生
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修治
(72)【発明者】
【氏名】田本 英司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 まり子
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189GA01
(57)【要約】
【課題】
不活性ガスが放出され得る監視対象区域を監視する監視設備であって、監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を精度よく検出可能な監視設備を提供する。
【解決手段】
本開示の一態様に係る監視設備は、不活性ガスが放出され又は漏洩し得る監視対象区域を監視する監視設備であって、前記監視対象区域内の空気中に含まれる酸素を用いて前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を検出する第1検出装置と、前記監視対象区域外の酸素を用いて前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を検出する第2検出装置と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスが放出され又は漏洩し得る監視対象区域を監視する監視設備であって、
前記監視対象区域内の空気中に含まれる酸素を用いて前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を検出する第1検出装置と、
前記監視対象区域外の空気中に含まれる酸素を用いて前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を検出する第2検出装置と、を備えている、監視設備。
【請求項2】
前記第2検出装置は、前記監視対象区域に不活性ガスが放出される前は前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度の検出を停止し、前記監視対象区域に不活性ガスが放出された後は前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度の検出を実施する、請求項1に記載の監視設備。
【請求項3】
前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出結果を表示する表示装置を備え、
前記表示装置は、前記監視対象区域に不活性ガスが放出される前と前記監視対象区域に不活性ガスが放出された後で、前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出結果を異なる表示態様で表示する、請求項1に記載の監視設備。
【請求項4】
前記監視対象区域は複数の監視対象区域を含み、
当該監視設備は、
前記複数の監視対象区域から延びる複数の個別配管と、
前記複数の個別配管が接続されており、前記複数の監視対象区域のうち任意の監視対象区域から延びる個別配管を介して、前記任意の監視対象区域から吸引した気体を前記第2検出装置に供給可能な集合配管と、を備えている、請求項1に記載の監視設備。
【請求項5】
前記第1検出装置は複数の第1検出装置を含み、
前記複数の第1検出装置は、前記複数の監視対象区域内にそれぞれ位置している、請求項4に記載の監視設備。
【請求項6】
前記監視対象区域に不活性ガスを放出する防火設備と、
請求項1に記載の監視設備と、を備えている、防火・監視システム。
【請求項7】
前記監視対象区域に配置され不活性ガスが流れる配管と、
請求項1に記載の監視設備と、を備えている、配管・監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視設備、防火・監視システム、及び、配管・監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、マンホール筒体内のガス濃度をガス検知器により検知し、危険ガスがマンホール筒体内に混入した場合に、消火剤をマンホール筒体に送り込み、火災の発生を未然に防ぐ、マンホール構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度(以下、単に「ガス濃度」と称する場合がある)は、例えば接触燃焼式センサ又は定電位電解式センサを備えた検出装置によって検出することができる。ただし、このような検出装置は、原理上、ガス濃度の検出に酸素が必要となる。そのため、監視対象区域に消火剤として不活性ガスが放出された場合、監視対象区域内の酸素量が少なくなることから、監視対象区域内のガス濃度を検出できなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、不活性ガスが放出され得る監視対象区域を監視する監視設備であって、監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を精度よく検出可能な監視設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る監視設備は、不活性ガスが放出され又は漏洩し得る監視対象区域を監視する監視設備であって、前記監視対象区域内の空気中に含まれる酸素を用いて前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を検出する第1検出装置と、前記監視対象区域外の酸素を用いて前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を検出する第2検出装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、防火・監視システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(防火・監視システム)
以下、実施形態について説明する。
図1は、防火・監視システム100の概略図である。防火・監視システム100は、監視対象区域101を監視し、監視対象区域101に対して防火対策を実施するシステムである。防火・監視システム100は、陸上施設に設けられていてもよく、船舶などの浮体構造物に設けられていてもよい。
【0010】
本実施形態に係る防火・監視システム100は、複数の監視対象区域101に対して監視と防火対策を実施する。ただし、防火・監視システム100は、1つの監視対象区域101に対して監視と防火対策を実施してもよい。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る防火・監視システム100は、防火設備10と、監視設備20と、を備えている。以下、これらの設備について順に説明する。
【0012】
(防火設備)
防火設備10は、監視対象区域101に対して防火対策を実施する設備である。なお、「防火」には、火災の未然防止、及び、火災発生時における消火が含まれる。監視対象区域101は、例えば、可燃性ガスの供給制御を行うための弁や計装品が設置された部屋であり、可燃性ガスが漏れるおそれがある区域である。また、本実施形態では、可燃性ガスとして水素ガスを想定しているが、可燃性ガスは天然ガスなど水素ガス以外のガスであってもよい。
【0013】
本実施形態の防火設備10は、各監視対象区域101内に位置する不活性ガス放出装置11を備えている。不活性ガス放出装置11は、監視対象区域101で火災が発生した場合、又は、監視対象区域101内のガス濃度が規定値以上となった場合に、監視対象区域101に不活性ガスを放出する。なお、不活性ガス放出装置11による不活性ガスの放出は、自動で行ってもよく、手動で行ってもよい。また、不活性ガスは、例えば二酸化炭素やハロゲン化物質などである。
【0014】
(監視設備)
監視設備20は、監視対象区域101を監視する設備である。監視設備20は、第1検出装置21と、個別配管22と、集合配管23と、第2検出装置24と、表示装置25と、を備えている。
【0015】
<第1検出装置>
第1検出装置21は、監視対象区域101内のガス濃度を検出する装置である。本実施形態の監視設備20は、複数の第1検出装置21を備えており、各監視対象区域101内に第1検出装置21が位置している。ただし、各第1検出装置21は、対応する監視対象区域101外に位置していてもよい。この場合、各第1検出装置21は、対応する監視対象区域101内の気体を吸引し、吸引した気体中における可燃性ガスの濃度を検出してもよい。
【0016】
第1検出装置21は、ガス濃度を検出するにあたり、酸素が必要となるガスセンサを含んでいる。このようなガスセンサとしては、例えば、検知セルに接触した可燃性ガスが燃焼することでガス濃度を検出する接触燃焼式センサや、可燃性ガスを電気分解することでガス濃度を検出する定電位電解式センサなどがある。
【0017】
第1検出装置21は、監視対象区域101内の空気中に含まれる酸素を用いて、監視対象区域101内のガス濃度を検出する。監視対象区域101に不活性ガスが放出される前は、監視対象区域101内の空気中に含まれる酸素の割合はほぼ一定である。そのため、監視対象区域101に不活性ガスが放出される前においては、第1検出装置21は監視対象区域101内のガス濃度を高い精度で、かつ、速やかに検出することができる。
【0018】
なお、前述した防火設備10の不活性ガス放出装置11は、第1検出装置21が検出したガス濃度を取得し、取得したガス濃度が規定値以上になったとき、監視対象区域101に不活性ガスを放出するように構成されていてもよい。
【0019】
<個別配管>
個別配管22は、監視対象区域101から延びる配管である。本実施形態の監視設備20は、複数の個別配管22を備えており、各監視対象区域101から個別配管22が延びている。また、各個別配管22には、遮断弁31が位置している。
【0020】
<集合配管>
集合配管23は、各個別配管22が接続する配管である。集合配管23には、吸引ポンプ32が位置している。この吸引ポンプ32が駆動することにより、集合配管23は個別配管22を介して監視対象区域101内の気体を吸引し、吸引した気体を第2検出装置24に供給することができる。
【0021】
例えば、吸引ポンプ32を駆動させるとともに、複数の監視対象区域101のうち任意の監視対象区域101から延びる個別配管22の遮断弁31を開き、それ以外の監視対象区域101から延びる個別配管22の遮断弁31を閉じれば、集合配管23は任意の監視対象区域101内の気体を吸引して第2検出装置24に供給することができる。
【0022】
<第2検出装置>
第2検出装置24は、監視対象区域101内のガス濃度を検出する装置である。前述のとおり、個別配管22及び集合配管23を介して、任意の監視対象区域101内の気体が第2検出装置24に供給される。そのため、第2検出装置24は、任意の監視対象区域101内のガス濃度を検出することができる。つまり、本実施形態では、1つの第2検出装置24によって複数の監視対象区域101内のガス濃度を検出することができる。ただし、監視設備20は複数の第2検出装置24を備え、各第2検出装置24が対応する監視対象区域101内のガス濃度を検出してもよい。
【0023】
第2検出装置24は、第1検出装置21と同様に、ガス濃度を検出するにあたり、酸素が必要となるガスセンサを含んでいる。ただし、第2検出装置24は、第1検出装置21と異なり、監視対象区域101外の空気中に含まれる酸素を用いて、監視対象区域101内のガス濃度を検出する。そのため、監視対象区域101に不活性ガスが放出されて監視対象区域101内の酸素量が少なくなったとしても、監視対象区域101内のガス濃度を精度よく検出することができる。
【0024】
本実施形態では、第2検出装置24に外部配管26が接続されており、外部配管26が第2検出装置24に監視対象区域101外の空気を供給する。なお、外部配管26は、第2検出装置24に供給される監視対象区域101内の気体と第2検出装置24に供給する監視対象区域101外の空気との割合が一定となるように、第2検出装置24に監視対象区域101外の空気を供給する。
【0025】
このように、本実施形態では、外部配管26から第2検出装置24に供給する空気の量を調整する必要があるため、監視対象区域101内の酸素量が一定である場合、第1検出装置21の方が第2検出装置24よりも検出精度が高い。そのため、監視対象区域101に不活性ガスが放出される前においては、第1検出装置21による検出のみを実施し、第2検出装置24による検出を停止してもよい。つまり、第2検出装置24は、監視対象区域101に不活性ガスが放出されたときのみ、監視対象区域101内のガス濃度を検出してもよい。
【0026】
なお、第2検出装置24による監視対象区域101内のガス濃度の検出の停止には、例えば、全ての遮断弁31を閉じること、吸引ポンプ32を停止すること、及び、第2検出装置24への給電を停止することなどのうち少なくとも1つを含む。
【0027】
<表示装置>
表示装置25は、監視対象区域101の状況を表示する装置である。本実施形態の表示装置25は、第1検出装置21及び第2検出装置24による検出結果を表示することができる。さらに、本実施形態の表示装置25は、監視対象区域101に不活性ガスが放出される前と監視対象区域101に不活性ガスが放出された後で、第1検出装置21及び第2検出装置24による検出結果を異なる表示態様で表示する。
【0028】
具体的には、表示装置25は、表示装置25を見た作業者が、監視対象区域101に不活性ガスが放出される前は第1検出装置21の検出結果を把握しやすく、監視対象区域101に不活性ガスが放出された後は第2検出装置24の検出結果を把握しやすいように、第1検出装置21及び第2検出装置24による検出結果を表示する。
【0029】
例えば、表示装置25は、監視対象区域101に不活性ガスが放出される前は第1検出装置21の検出結果のみを表示し、監視対象区域101に不活性ガスが放出された後は第2検出装置24の検出結果のみを表示してもよい。また、例えば、表示装置25は、監視対象区域101に不活性ガスが放出される前は第2検出装置24の検出結果よりも第1検出装置21の検出結果を大きく表示し、監視対象区域101に不活性ガスが放出された後は第1検出装置21の検出結果よりも第2検出装置24の検出結果を大きく表示してもよい。
【0030】
上記のとおり、表示装置25が、監視対象区域101に不活性ガスが放出される前と監視対象区域101に不活性ガスが放出された後で、第1検出装置21及び第2検出装置24による検出結果を異なる表示態様で表示することにより、表示装置25を見た作業者は、より正確な監視対象区域101内のガス濃度を把握することができる。
【0031】
なお、以上で説明した監視設備20は、不活性ガスが放出され得る監視対象区域101を監視している。ただし、監視設備20は、不活性ガスが放出されることはないが、不活性ガスが漏洩し得る区域を監視対象区域101として監視してもよい。例えば、ある区域に不活性ガスの配管が配置されており、その配管から不活性ガスが漏れるおそれがある場合、当該区域を監視対象区域101としてもよい。また、この場合、監視対象区域101に配置された配管を流れる不活性ガスは防火用に限定されず、可燃性ガス供給用の配管から可燃ガスを排出するためのパージ用であってもよい。さらに、この監視対象区域101に配置され不活性ガスが流れる配管と上述した監視設備20とによって、配管・監視システムを構成してもよい。
【0032】
(まとめ)
本明細書で開示する第1の項目は、不活性ガスが放出され又は漏洩し得る監視対象区域を監視する監視設備であって、前記監視対象区域内の気体中に含まれる酸素を用いて前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を検出する第1検出装置と、前記監視対象区域外の酸素を用いて前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を検出する第2検出装置と、を備えている、監視設備である。
【0033】
この構成によれば、監視対象区域に不活性ガスが放出される前及び放出された後において、監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を精度よく検出することができる。
【0034】
本明細書で開示する第2の項目は、前記第2検出装置は、前記監視対象区域に不活性ガスが放出される前は前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度の検出を停止し、前記監視対象区域に不活性ガスが放出された後は前記監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度の検出を実施する、第1の項目に記載の監視設備である。
【0035】
この構成によれば、監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を精度よく、かつ、効率よく検出することができる。
【0036】
本明細書で開示する第3の項目は、前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出結果を表示する表示装置を備え、前記表示装置は、前記監視対象区域に不活性ガスが放出される前と前記監視対象区域に不活性ガスが放出された後で、前記第1検出装置及び前記第2検出装置による検出結果を異なる表示態様で表示する、第1又は2の項目に記載の監視設備である。
【0037】
この構成によれば、表示装置を見た作業者は、より正確な監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を把握することができる。
【0038】
本明細書で開示する第4の項目は、前記監視対象区域は複数の監視対象区域を含み、当該監視設備は、前記複数の監視対象区域から延びる複数の個別配管と、前記複数の個別配管が接続されており、前記複数の監視対象区域のうち任意の監視対象区域から延びる個別配管を介して、前記任意の監視対象区域から吸引した気体を前記第2検出装置に供給可能な集合配管と、を備えている、第1乃至3の項目のうちいずれか一の項目に記載の監視設備である。
【0039】
この構成によれば、第2検出装置の設置数を抑制することができ、監視設備を簡略化することができる。
【0040】
本明細書で開示する第5の項目は、前記第1検出装置は複数の第1検出装置を含み、前記複数の第1検出装置は、前記複数の監視対象区域内にそれぞれ位置している、第4の項目に記載の監視設備である。
【0041】
この構成によれば、各監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を速やかに把握することができる。
【0042】
本明細書で開示する第6の項目は、前記監視対象区域に不活性ガスを放出する防火設備と、第1乃至5の項目のうちいずれか一の項目に記載の監視設備と、を備えている、防火・監視システムである。
【0043】
この構成によれば、監視対象区域に不活性ガスが放出される前及び放出された後において、監視対象区域に対して適切な防火対策を実施することができる。
【0044】
本明細書で開示する第7の項目は、前記監視対象区域に配置され不活性ガスが流れる配管と、第1乃至5の項目のうちいずれか一の項目に記載の監視設備と、を備えている、配管・監視システムである。
【0045】
この構成によれば、配管から監視対象区域に不活性ガスが漏れる前及び漏れた後において、監視対象区域内の気体中における可燃性ガスの濃度を精度よく検出することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 防火設備
20 監視設備
21 第1検出装置
22 個別配管
23 集合配管
24 第2検出装置
25 表示装置
100 防火・監視システム
101 監視対象区域