(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172422
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】フロアーハッチ
(51)【国際特許分類】
E04F 19/08 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
E04F19/08 101L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090130
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】592094243
【氏名又は名称】カネソウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】豊田 悟志
(57)【要約】
【課題】蓋体を容易に開閉できると共に、該蓋体が不必要に取り外されることを抑制し得るフロアーハッチを提案する。
【解決手段】蓋体3の側縁部に、蓋受枠2の回転軸部15を回転自在に嵌入する嵌入穴27と嵌入穴27に連通する案内溝路28とを備え、蓋体3を特定の傾斜角度範囲で傾斜させることにより、蓋体3と蓋受枠2の垂直後壁部12bとの間に間隙tを生じさせ、該蓋体3を後方へ移動させることで、回転軸部15を案内溝路28に挿入可能とする一方、特定の傾斜角度範囲外で傾斜させた場合に、回転軸部15を案内溝路28に挿入不能とした。かかる構成では、蓋体3を特定の傾斜角度範囲に傾斜させれば、回転軸部15を嵌入穴27から案内溝路28を介して取り出しできることから、蓋体3を蓋受枠2から取り外しできる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に形成された開口の内周縁に配設された蓋受枠と、前記蓋受枠に被着されて前記開口を閉鎖する矩形状の蓋体とを備え、
前記蓋受枠が、被着された前記蓋体を囲繞する矩形状の垂直周壁部と、該垂直周壁部に一体的に設けられて、該蓋体を支持する蓋支持部とを備えたものであるフロアーハッチにおいて、
前記蓋受枠には、前記垂直周壁部を構成する左右の側壁部の一端部に、内方へ夫々突出する回転軸部が対向状に設けられ、
前記蓋体には、左右の側面部の、前記蓋受枠の左右の回転軸部に夫々対向する部位に、各回転軸部が回転自在に嵌入される嵌入穴が夫々設けられ、
前記蓋体の嵌入穴に前記回転軸部が嵌入された状態で、該蓋体を回転させることによって、前記開口を開閉するものであり、
前記蓋体が、少なくとも左右一方の側面部に、当該側面部の前記嵌入穴に連通され且つ前記一端側に開口されて設けられた、当該嵌入穴に前記回転軸部を入出可能な案内溝路を備えてなり、
前記蓋体を特定の傾斜角度範囲で傾斜させるにより、当該蓋体の一端部と該一端部に対向する前記垂直周壁部との間に間隙を生じさせ、該間隙を狭める方向へ該蓋体を移動させることで、前記嵌入穴に嵌入された前記回転軸部を前記案内溝路へ挿入可能とする一方、
前記蓋体を前記特定の傾斜角度範囲外で傾斜させた場合に、前記嵌入穴に嵌入された前記回転軸部を前記案内溝路へ挿入不能としたものであることを特徴とするフロアーハッチ。
【請求項2】
前記蓋体は、
前記一端部が、左右方向に亘って、下底から外方へ上り勾配で傾斜するテーパ形状に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のフロアーハッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショールーム、店舗、およびオフィス等の床に配設されるフロアーハッチに関する。
【背景技術】
【0002】
ショールームやオフィス等の床には、該床に設けれた各種点検口を閉鎖するためのフロアーハッチが配設されている。こうしたフロアーハッチとして、例えば特許文献1には、床に固定された蓋受枠と該蓋受枠に被着される蓋体とを備え、該蓋体を蓋受枠に脱着することによって点検口を開閉する構成が提案されている。かかる構成は、蓋体と蓋受枠とがセパレートタイプのものであるから、該蓋体を蓋受枠から外すことにより点検口を開放できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、床下に配設されたコンセントやガス栓などのカバーとして、前記のフロアーハッチが適用されている。こうしたコンセント等のフロアーハッチは、前述した点検口のフロアーハッチに比して小型軽量であることから、蓋体の脱着を容易に行うことができる。このため、コンセント等の小型のフロアーハッチは、使用目的以外の悪戯などで蓋体が取り外されてしまうことがあった。特に、床下コンセント用としてホテルや飲食店の大広間や宴会場などに設けられたフロアーハッチでは、本来の使用目的以外で蓋体が取り外されることが懸念され、対策が急務となっていた。
【0005】
本発明は、蓋体を比較的容易に開閉できると共に、脱着可能でありながら不必要に取り外されてしまうことを抑制し得るフロアーハッチを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床に形成された開口の内周縁に配設された蓋受枠と、前記蓋受枠に被着されて前記開口を閉鎖する矩形状の蓋体とを備え、前記蓋受枠が、被着された前記蓋体を囲繞する矩形状の垂直周壁部と、該垂直周壁部に一体的に設けられて、該蓋体を支持する蓋支持部とを備えたものであるフロアーハッチにおいて、前記蓋受枠には、前記垂直周壁部を構成する左右の側壁部の一端部に、内方へ夫々突出する回転軸部が対向状に設けられ、前記蓋体には、左右の側面部の、前記蓋受枠の左右の回転軸部に夫々対向する部位に、各回転軸部が回転自在に嵌入される嵌入穴が夫々設けられ、前記蓋体の嵌入穴に前記回転軸部が嵌入された状態で、該蓋体を回転させることによって、前記開口を開閉するものであり、 前記蓋体が、少なくとも左右一方の側面部に、当該側面部の前記嵌入穴に連通され且つ前記一端側に開口されて設けられた、当該嵌入穴に前記回転軸部を入出可能な案内溝路を備えてなり、前記蓋体を特定の傾斜角度範囲で傾斜させるにより、当該蓋体の一端部と該一端部に対向する前記垂直周壁部との間に間隙を生じさせ、該間隙を狭める方向へ該蓋体を移動させることで、前記嵌入穴に嵌入された前記回転軸部を前記案内溝路へ挿入可能とする一方、前記蓋体を前記特定の傾斜角度範囲外で傾斜させた場合に、前記嵌入穴に嵌入された前記回転軸部を前記案内溝路へ挿入不能としたものであることを特徴とするフロアーハッチである。
【0007】
ここで、蓋体を特定の傾斜角度範囲外の角度で傾斜させた場合に回転軸部を案内溝路へ挿入不能であることは、具体的に言うと、当該蓋体の一端部と該一端部に対向する前記垂直周壁部との間に間隙が生じないこと、生じた間隙を狭める方向(換言すれば、閉じる方向)へ蓋体を移動できないこと、又は生じた間隙を狭める方向へ蓋体を移動させても回転軸部を案内溝路へ挿入できないことを示す。尚、特定の傾斜角度範囲外とは、特定の傾斜角度範囲を除く他の角度を示す。
【0008】
かかる構成にあっては、蓋体を回転させて特定の傾斜角度範囲に傾斜させると、該回転軸部が案内溝路を介して該蓋体の外へ取り出しできることから、当該蓋体を蓋受枠から取り外すことができる。一方、蓋体を特定の傾斜角度範囲外で傾斜させると、回転軸部が案内溝路に挿入できないことから、当該蓋体を蓋受枠から取り外せない。このように本発明の構成は、蓋体を特定の傾斜角度範囲に傾斜させた場合に限って、該蓋体を蓋受枠から取り外しできるようにしたものである。尚、当然ながら、取り外された蓋体は、特定の傾斜角度範囲で傾斜させた状態で蓋受枠に取り付けることが可能である。
【0009】
このように本発明の構成は、蓋体を特定の傾斜角度範囲に傾斜させた場合に限って取り外し可能であることから、メンテナンス時などで蓋体を取り外すことによって作業性を向上できると共に、悪戯等によって蓋体が不必要に取り外されることを抑制できる。
【0010】
前述した本発明のフロアーハッチにあって、前記蓋体は、前記一端部が、左右方向に亘って、下底から外方へ上り勾配で傾斜するテーパ形状に形成されたものである構成が提案される。
【0011】
かかる構成は、蓋体の一端部がテーパ形状に形成されていることから、該蓋体が回転軸部を中心として回転し易く、該蓋体をスムーズに開閉できる。さらに、蓋体を安定して回転できることから、一端部と該一端部に対向する垂直周壁部との間に、該蓋体の傾斜角度に応じて所望の間隔を適切に設定し易い。これにより、蓋体を特定の傾斜角度範囲に傾斜させた場合に、回転軸部を案内溝路に挿入可能とする間隙を安定して生じさせることができ、前述した本発明の作用効果が一層安定して発揮され得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフロアーハッチによれば、蓋体を容易に開閉することができると共に、該蓋体を特定の傾斜角度範囲で傾斜させることによって蓋受枠から取り外すことができるため、該蓋体が悪戯等によって不必要に取り外されてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】フロアーハッチ1の施工状態(閉鎖状態)を示す縦断面図である。
【
図2】蓋受枠2の、(A)平面図と、(B)X―X線断面図である。
【
図3】蓋体3の、(A)平面図と、(B)左側面図と、(C)右側面図である。
【
図4】蓋体3を45度傾けた状態を示す縦断面図である。
【
図5】蓋体3を60度傾けた状態における説明図である。
【
図6】蓋体3を75度傾けた状態における、該蓋体3を取り外す態様を示す説明図である。
【
図7】蓋体3を90度傾けた状態における、該蓋体3を取り外す態様を示す縦断面図である。
【
図8】蓋体3を全開した状態(110度傾けた状態)における説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる実施例を添付図面を用いて説明する。
図1に、ショールームやオフィス等の床101に設けられたフロアーハッチ1の施工状態を示す。本実施例のフロアーハッチ1は、床下に配設されたコンセントにコンセントプラグを接続するための開口を開閉するものであり、比較的小型の平面視矩形状を成す。ここで、床下には、上方開口されたコンセントボックス102が配設され、該コンセントボックス102の内部にコンセントが配置される(図示せず)。このコンセントボックス102上に、本実施例のフロアーハッチ1が配設される。
【0015】
本実施例にあって、
図2(B)と
図3(C)とを除く各図における左側を前方とし、これら図における右側を後方として規定する。そして、
図2(A)および
図3(A)の上下方向を左右方向として規定する。このように前後左右方向を規定して、本実施例の構成を以下で説明する。尚、本発明は、こうした本実施例の前後左右方向に限定されるものでは無い。
【0016】
フロアーハッチ1は、床に形成された開口の内周縁に配設された蓋受枠2と、該蓋受枠2に被着されて当該開口を閉鎖する蓋体3とを備える。蓋受枠2は、
図2に示すように、中央が開口された矩形枠状の水平支持部11と、該水平支持部11の外周縁に立設された垂直周壁部12とを備え、水平支持部11と垂直周壁部12とが薄板状のステンレス鋼板により形成されている。そして、水平支持部11が、床に配設された状態で、該床と略平行に配置されると共に、垂直周壁部12が、鉛直方向に沿って配置される(換言すれば、水平支持部11と略直交するように設けられている)。
【0017】
この蓋受枠2は、
図1に示すように、水平支持部11の中央開口と前記コンセントボックス102の上部開口とが重ねられて上下に連通されるように、該コンセントボックス102上に配置される。さらに、蓋受枠2には、
図2に示すように、水平支持部11の前部に、該水平支持部11の内周縁から外方へ凹む凹部14が設けられており、床101に配設された状態で、該凹部14がコンセントボックス102の内部と連通される。
【0018】
本実施例にあって、蓋受枠2の垂直周壁部12は、水平支持部11の前縁に立設された垂直前壁部12aと、該水平支持部11の後縁に立設された垂直後壁部12bと、該水平支持部11の左右側縁に夫々立設された垂直側壁部12c,12cとにより構成されている。そして、左右の垂直側壁部12c,12cが互いに対向配置され、垂直前壁部12aと垂直後壁部12bとが互いに対向配置されている。左右の垂直側壁部12c,12cの後部には、内方へ突出する円柱状の回転軸部15,15が対向状に設けられている。ここで、本実施例の回転軸部15は、垂直側壁部12cの後部に形成された開口部に、外方から嵌入されたリベットにより構成されており、該リベットが垂直側壁部12cに溶接されている。
【0019】
蓋体3は、
図3に示すように、上方開口された浅底状の蓋箱部21と、該蓋箱部21の内部に所定の化粧材が充填された化粧部22とを備え、該化粧部22の化粧材が床101と同じ材料により構成されている。蓋箱部21は、薄板状のステンレス鋼板により形成され、略矩形状の底板部24と、該底板部24の外周縁から立設された周縁部25とを備えてなる。そして、蓋箱部21の前部には、蓋体3を前記蓋受枠2に被着された状態で前記凹部14に対応する部位に、後方へ凹む蓋凹部26が設けられている。この蓋凹部26は、底板部24の前部に設けられた凹部と、当該凹部の内周縁に立設された凹縁部25dとにより形成されており、該凹縁部25dが前記周縁部25の一部を成す。
【0020】
前記周縁部25は、前記蓋凹部26の凹縁部25dと、該凹縁部25dにより左右に分割された前縁部25aと、該前縁部25aに対向する後縁部25bと、互いに対向する左右の側縁部25c,25cとにより構成されている。左右の側縁部25c,25cと凹縁部25dとは、底板部24に略直交するように設けられている一方、前縁部25aは、底板部24の前縁から前方へ上り勾配で傾斜するテーパ形状に形成されると共に、後縁部25bは、底板部24の後縁から後方へ昇り勾配で傾斜するテーパ形状に形成されている。尚ここで、本実施例にあっては、後縁部25bの角度が75度(後述する特定の傾斜角度範囲の下限値と略同じ角度)に設定されている。
【0021】
左右の側縁部25c,25cには、夫々の後部に、後縁部25bに沿って略平行四辺形状の嵌入穴27が形成されている。この嵌入穴27は、前記回転軸部15を回転自在に嵌入可能に設けられており、前後方向の幅に比して、後縁部25bに沿う幅が長くなっている。ここで、嵌入穴27は、前後方向の幅が回転軸部15の外径よりも僅かに大きく、後縁部25bに沿う幅が、該回転軸部15を該後縁部25bに沿って相対移動可能な寸法に設定されている。また、左方の側縁部25cには、左方と後方とに夫々開口された案内溝路28が、嵌入穴27に連通されて設けられている(
図3(B))。この案内溝路28は、回転軸部15を挿通可能に設けられている。これにより、嵌入穴27に嵌入された回転軸部15を、案内溝路28を介して外方へ取り出し可能であると共に、該案内溝路28を介して回転軸部15を該嵌入穴27に嵌入可能である。本実施例では、案内溝路28が左方の側縁部25cにのみ設けられていることから、該案内溝路28を介して左の回転軸部15を嵌入穴27に入出する際には、後述するように蓋体3を左右方向に傾けた状態で行うことを要する。
【0022】
こうした蓋体3は、左右の嵌入穴27,27に蓋受枠2の回転軸部15,15が夫々嵌入されて、該蓋受枠2の水平支持部11に載置されることにより、該蓋受枠2に被着されてコンセントボックス102の上方開口を閉鎖する(
図1参照)。蓋体3は、この被着された状態(以下、閉鎖状態という)で、該蓋体3の上面(化粧部22の上面)が床101の上面と略整一であると共に、所定のクリアランス(間隙)を介して蓋受枠2の垂直周壁部12内に嵌め合わされる。また、蓋体3の閉鎖状態で、該蓋体3の蓋凹部26が上方へ開口され、該蓋凹部26と蓋受枠2の凹部14とを介してコンセントボックス102に連通される。本実施例では、前記閉鎖状態で、図示しないキャップを蓋凹部26に嵌入させることによって、該蓋凹部26を閉鎖する。このようにキャップを蓋凹部26に嵌め合わせているだけであることから、該キャップの取り付けと取り外しとを比較的容易に行うことができる。また、コンセントボックス102のコンセントにコンセントプラグを接続した状態で、該コンセントプラグのケーブルを、蓋受枠2の凹部14と蓋体3の蓋凹部26とに挿通させることにより、該蓋体3を閉鎖できる(図示せず)。尚、蓋体3の閉鎖状態で前記キャップを取り外すことによって、蓋凹部26を持って該蓋体3を持ち上げることができる。
【0023】
本実施例のフロアーハッチ1は、蓋体3の前部を上方へ持ち上げることにより、左右の嵌入穴27,27に嵌入された回転軸部15,15を略中心として傾動させて、該蓋体3を前記閉鎖状態から開放された状態へ変換できる(
図4~8参照)。本実施例の蓋体3は、前述したように後縁部25bがテーパ形状に形成されていることから、開放(傾動)させる際に蓋受枠2の水平支持部11との干渉を抑制でき、スムーズに開放できる。このように蓋体3を傾動させることによって、前記コンセントボックス102の上部開口を開閉できる。そして、蓋体3を開放させることで、コンセントボックス102内のコンセントとコンセントプラグとの接続と接続解除とを行うことができると共に、該コンセントボックス102内のメンテナンス作業を行うことができる。ここで、本実施例にあって、蓋体3は、閉鎖状態を0度とした場合(
図1参照)に、最大で110度まで開放させることができる(
図8参照)。
【0024】
尚、本実施例のフロアーハッチ1は、コンセントプラグの差し込みと取り外しとを行うためのものであるため、比較的小型である。具体的には、蓋受枠2の四辺の長さが、150~200mmであり、該蓋受枠2の垂直周壁部12の高さが、15~20mmである。蓋体3は、蓋受枠2の前記寸法に応じて設定されている。かかる小型の構成では、蓋体3が比較的軽量であることから、該蓋体3を容易に開閉させることができる。
【0025】
さらに、本実施例のフロアーハッチ1は、蓋体3を特定の傾斜角度範囲(θ=75~90度)に傾斜させることによって、蓋受枠2から取り外し可能としたものである。
【0026】
詳述すると、蓋体3を前記特定の傾斜角度範囲に傾斜させた場合には、蓋体3と蓋受枠の垂直後壁部12bとの間に間隙tを生じ、この間隙tを狭める方向(後方)へ該蓋体3を移動させることによって、左方の嵌入穴27内で相対的に前方へ移動された左方の回転軸部15が案内溝路28に挿入可能となる。これは、前記特定の傾斜角度範囲に傾斜させた状態で、蓋体3の後方への移動によって、左方の回転軸部15が左方の嵌入穴27に対して案内溝路28に挿入可能な位置(
図6(B)および
図7(B)参照)に移動できることに因る。
一方で、蓋体3を前記特定の傾斜角度範囲外に傾斜させた場合には、前記間隙tを生じないために左方の回転軸部15が案内溝路28に挿入できないこと、該間隙tを生じても後方への移動により左方の回転軸部15が案内溝路28に挿入できないこととなる。これは、前記特定の傾斜角度範囲外で傾斜させた状態では、左方の回転軸部15が左方の嵌入穴27に対して案内溝路28に挿入可能な前記位置に移動できないことに因る。
【0027】
このように特定の傾斜角度範囲で回転軸部15を案内溝路28に挿入可能とし且つ該特定の傾斜角度範囲外で挿入不能とする構成は、傾斜角度に応じて生ずる間隙tと、嵌入穴27の形態と、該嵌入穴27に連通する案内溝路28の形態とによって設定され得る。本実施例では、これらの設定によって、特定の傾斜角度範囲が、傾斜角度θ=75~90度となっている。
【0028】
次に、前述した蓋体3を蓋受枠2から取り外す態様について、以下の具体例により説明する。尚、取り外された蓋体3は、取り外しと逆の態様で取り付けることができる。この取り付け態様については、説明を省略する。
【0029】
図4に、蓋体3を45度(=傾斜角度θ)傾斜させた状態を示す。ここで、傾斜角度θは、閉鎖状態(0度)に対する角度を示す。この状態では、蓋体3の後縁部25bの上端部が蓋受枠2の垂直後壁部12bと略接触することから、該蓋体3を後方へ移動不能である。これにより、蓋受枠2の左方の回転軸部15が蓋体3の左方の嵌入穴27に嵌入された状態で、該回転軸部15を案内溝路28に挿入できない。このため、蓋体3を蓋受枠2から取り外すことができない。
【0030】
図5(A)に示すように、蓋体3を60度(=傾斜角度θ)で傾斜させた状態では、該蓋体3の後縁部25bと蓋受枠2の垂直後壁部12bとの間に間隙tが生ずる。この状態では、間隙tが極短いことから、
図5(B)に示すように、当該間隙tだけ蓋体3を後方へ相対移動できるものの、左方の嵌入穴27に嵌入された回転軸部15が案内溝路28に挿入できない。そのため、蓋体3を蓋受枠2から取り外すことができない。
【0031】
一方、
図6(A)に示すように、蓋体3を75度(=傾斜角度θ)で傾斜させた状態では、該蓋体3の後縁部25bと蓋受枠2の垂直後壁部12bとの間に間隙tが生ずる。この状態では、嵌入穴27の長手方向が水平方向に略沿うことから、蓋体3を水平方向に沿って前記間隙tの距離を後方へ移動でき、該移動によって、
図6(B)に示すように、左方の嵌入穴27に嵌入された回転軸部15が案内溝路28へ挿入可能な位置に相対移動される。これにより、左方の回転軸部15を案内溝路28に挿入できることから、蓋体3の左側を上げることで左方の回転軸部15から取り外すことができ、これに伴って蓋体3を蓋受枠2から取り外すことができる。
【0032】
図7(A)に示すように、蓋体3を90度(=傾斜角度θ)で傾斜させた状態では、該蓋体3と蓋受枠2の垂直後壁部12bとの間に間隙tが生ずる。この状態では、当該間隙tを狭めるように蓋体3を後方へ移動でき、この移動によって、
図7(B)に示すように回転軸部15が嵌入穴27内で案内溝路28に挿入可能位置に相対移動される。これにより、左方の回転軸部15を案内溝路28に挿入できることから、蓋体3の左側を上げることで左方の回転軸部15から取り外すことができ、該蓋体3を蓋受枠2から取り外すことができる。
【0033】
また、
図8(A)に示すように、蓋体3を全開させた状態(110度傾斜させた状態)では、該蓋体3が蓋受枠2の垂直後壁部12bに当接することから、該蓋体3が後方へ移動不能である。これにより、左方の嵌入穴27に嵌入された回転軸部15が案内溝路28に挿入できないことから、該蓋体3を蓋受枠2から取り外すことができない。
【0034】
このように本実施例の構成は、蓋体3の傾斜角度θが75~90度の範囲で、左方の嵌入穴27に嵌入された回転軸部15を案内溝路28に挿入できるため、該蓋体3を蓋受部2から取り外すことができる。一方で、蓋体3の傾斜角度θが75度より小さい場合と90度よりも大きい場合とでは、左方の嵌入穴27に嵌入された回転軸部15が、案内溝路28に挿入可能な位置に相対移動できないことから、該蓋体3を取り外すことができない。ここで、これら場合(特定の傾斜角度範囲外)の、傾斜角度θ=45度、60度、および110度以外で傾斜された状態については、図示を省略しているが、45度、60度、および110度と同様に、回転軸部15を案内溝路28に挿入できないために取り外し不能である。
【0035】
尚、前述したように、蓋受枠2に蓋体3を取り付ける場合には、右方の嵌入穴27に右方の回転軸部15を嵌入させた後に、該蓋体3を前記傾斜角度θ=75度~90度の範囲(特定の傾斜角度範囲)で傾斜させることによって、左方の回転軸部15を案内溝路28を介して左方の嵌入穴27に嵌入できる。
【0036】
さらに、本実施例の構成は、蓋体3の左方の側縁部25cにのみ案内溝路28が設けられている。この構成では、右方の回転軸部15が右方の嵌入穴27内でのみ相対移動できるものであるから、左右の回転軸部15を夫々の嵌入穴27内で略平行に相対移動させる必要がある。そのため、左方の回転軸部15を案内溝路28に挿入させるためには、蓋体3を前記特定の傾斜角度範囲として左右略平行に動かすことによって、左方の嵌入穴27内の、案内溝路28に挿入可能な位置へ、左方の回転軸部15を相対移動させることを要する。これにより、本実施例の構成は、蓋体3を取り外し可能な状態(左方の回転軸部15を案内溝路28に挿入可能な位置へ相対移動できる状態)を、特定の傾斜角度範囲に傾斜させた場合に限って安定して生じさせ得る。加えて、本実施例の構成は、特定の傾斜角度範囲に傾斜させた蓋体3を取り外す際に、該蓋体3の左側を上げて左方の回転軸部15を嵌入穴27から取り出さなければならない。こうしたことから、本実施例の構成は、例えば左右の側縁部に案内溝路を夫々設けた構成に比して、蓋体3を取り外し難くなっている。
【0037】
このように本実施例のフロアーハッチ1は、特定の傾斜角度範囲で蓋体3を傾斜させた場合に限って、該蓋体3を取り外し可能であることから、使用目的以外の悪戯等で蓋体が取り外されてしまうことを抑制できる。特に、本実施例のフロアーハッチ1は、小型かつ軽量であることから、蓋体3を開閉し易いものの、前記のように取り外し難いことから、使用目的以外で取り外され難くできる。さらに、本実施例の構成は、蓋体3の左方の側縁部25cにのみ案内溝路28を設けていることから、特定の傾斜角度範囲に傾斜させた状態であっても悪戯等により取り外され難い。したがって、本実施例のフロアーハッチ1は、ショールームやホテル等で悪戯等により蓋体3が取り外されることを防止する効果に優れ、こうした場所で好適に設置できる。
【0038】
また、本実施例のフロアーハッチ1は、特定の傾斜角度範囲で傾斜させれば蓋体3を取り外し可能であることから、該蓋体3を取り外すことでメンテナンス作業等を行い易いという利点もある。
【0039】
尚、本実施例にあって、蓋受枠2の水平支持部11が、本発明にかかる蓋支持部に相当する。蓋体3を構成する蓋箱部21の側縁部25cが、本発明にかかる蓋体の側面部に相当する。特定の傾斜角度(θ=75~90度)が、本発明にかかる特定の傾斜角度範囲に相当する。
【0040】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、蓋体と蓋受枠との形状寸法は、適宜設定変更可能である。
【0041】
前述した実施例は、特定の傾斜角度範囲を75~90度に設定した構成であるが、これに限らず、変更可能である。この特定の傾斜角度範囲は、前述したように、該傾斜角度で生ずる蓋体と蓋受枠の垂直後壁部との間隙と、嵌入穴の形態と、該嵌入穴に連通する案内溝路の形態等とによって、適宜設定され得る。
【0042】
前述した実施例は、蓋体の左方の側縁部にのみ案内溝路を設けた構成であるが、これに限らず、左右の側縁部に案内溝路を夫々設けた構成とすることもできる。この構成にあっても、特定の傾斜角度範囲に蓋体を傾斜させた場合に該蓋体3を取り外しできるという前述の実施例と同様の作用効果を奏し得る。
【0043】
前述した実施例は、蓋体に蓋凹部を備えた構成であるが、これに限らず、蓋凹部を備えない構成であっても良い。この構成では、蓋凹部に取り付けるキャップを要しない。また、このように蓋凹部を備えない構成では、蓋体の前部に、該蓋体を持ち上げるためのフック部を備える構成とすることもできる。
【0044】
前述した実施例は、床下コンセント用として適用した構成であるが、これに限らず、点検口用の構成に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 フロアーハッチ
2 蓋受枠
3 蓋体
11 水平支持部(蓋支持部)
12 垂直周壁部
12a 垂直前壁部
12b 垂直後壁部
12c 垂直側壁部
14 凹部
15 回転軸部
21 蓋箱部
22 化粧部
24 蓋底部
25 周縁部
25a 前縁部
25b 後縁部
25c 側縁部
25d 凹縁部
26 蓋凹部
27 嵌入穴
28 案内溝路
101 床
102 コンセントボックス
t 間隙
θ 傾斜角度