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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172423
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20241205BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090132
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】地福 佳広
(72)【発明者】
【氏名】上野 岳
(72)【発明者】
【氏名】北村 正和
(72)【発明者】
【氏名】本田 瑶季
(72)【発明者】
【氏名】川島 笙平
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058ED15
2G058FA02
2G058FA10
2G058GA01
2G058GB03
2G058GB05
2G058GB10
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】ユーザが容器内の液体の撹拌状態を簡便かつ適切に把握できるようにすること。
【解決手段】実施形態に係る自動分析装置は、撹拌装置と、プローブと、液面検出部と、撹拌状態検知部とを備える。撹拌装置は、容器内の液体を撹拌する。プローブは、容器内の液体を分注する。液面検出部は、容器内の液体へのプローブの接触状態に基づいて容器内の液体の液面を検出する。撹拌状態検知部は、液面検出部により検出された液面に基づいて、撹拌装置による容器内の液体の撹拌状態を検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の液体を撹拌する撹拌装置と、
前記容器内の前記液体を分注するプローブと、
前記容器内の前記液体への前記プローブの接触状態に基づいて前記容器内の前記液体の液面を検出する液面検出部と、
前記液面検出部により検出された前記液面に基づいて、前記撹拌装置による前記容器内の前記液体の撹拌状態を検知する撹拌状態検知部と、
を備える自動分析装置。
【請求項2】
前記撹拌状態検知部は、前記撹拌状態として、前記容器内の前記液体の撹拌不良が発生しているか否かを検知する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記撹拌装置は、前記容器内に保持された撹拌子を回転駆動することで前記容器内の前記液体を撹拌する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記プローブと、前記容器と、前記撹拌装置とが鉛直方向に沿って位置されるように前記プローブ、前記容器、及び前記撹拌装置を相対的に移動させる移動機構を更に備える、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記液面検出部により検出された前記液面の変化を検出する液面変化検出部を更に備え、
前記撹拌状態検知部は、前記液面変化検出部により検出された前記液面の変化に基づいて前記撹拌状態を検知する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記液面検出部は、前記容器内の前記液体に前記プローブが接触しているか否かを示す液面検出信号を出力することで前記液面を検出し、
前記液面変化検出部は、前記撹拌装置による前記液体の撹拌前と前記撹拌装置による前記液体の撹拌中との間における前記液面検出信号の変化に基づいて、前記液面の変化を検出する、請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記液面検出部により検出された前記液面の高さを検出する液面高さ検出部を更に備え、
前記液面変化検出部は、前記撹拌装置による前記液体の撹拌前に前記液面高さ検出部により検出された前記液面の高さと、前記撹拌装置による前記液体の撹拌中に前記液面高さ検出部により検出された前記液面の高さとに基づいて前記液面の変化を検出する、請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記液面検出部により検出された前記液面の形状を検出する液面形状検出部を更に備え、
前記撹拌状態検知部は、前記液面形状検出部により検出された前記液面の形状に基づいて前記撹拌状態を検知する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記撹拌状態検知部により検知された前記撹拌不良をユーザに通知する通知部を更に備える、請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記撹拌状態検知部により前記撹拌不良が検知された場合に前記撹拌不良が検知された前記容器内の液体を用いた測定を禁止する測定禁止部を更に備える、請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記撹拌状態検知部により前記撹拌不良が検知された場合に測定動作を停止する測定停止部を更に備える、請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記液面変化検出部は、前記撹拌装置による前記液体の撹拌前に前記液面高さ検出部により検出された前記液面の高さと、前記撹拌装置による前記液体の撹拌中に前記液面高さ検出部により検出された前記液面の高さとの差分である液面高さ変化量を検出することで前記液面の変化を検出し、
前記撹拌状態検知部は、前記液面変化検出部により検出された前記液面高さ変化量が閾値以上であるか否かに基づいて前記撹拌状態を検知し、
前記自動分析装置は、
前記容器内の前記液体の残量を検出する残量検出部と、
前記残量検出部により検出された前記液体の残量に基づいて、前記撹拌状態検知部による前記撹拌状態の検知に用いられる前記液面高さ変化量の閾値を補正する閾値補正部と、
を更に備える、請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項13】
前記液面変化検出部は、前記撹拌装置による前記液体の撹拌前に前記液面高さ検出部により検出された前記液面の高さと、前記撹拌装置による前記液体の撹拌中に前記液面高さ検出部により検出された前記液面の高さとの差分である液面高さ変化量を検出することで前記液面の変化を検出し、
前記撹拌状態検知部は、前記液面変化検出部により検出された前記液面高さ変化量が閾値以上であるか否かに基づいて前記撹拌状態を検知し、
前記自動分析装置は、
前記容器の形状に基づいて、前記撹拌状態検知部による前記撹拌状態の検知に用いられる前記液面高さ変化量の閾値を選択する閾値選択部を更に備える、請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項14】
前記液面変化検出部は、前記撹拌装置による前記液体の撹拌前に前記液面高さ検出部により検出された前記液面の高さと、前記撹拌装置による前記液体の撹拌中に前記液面高さ検出部により検出された前記液面の高さとの差分である液面高さ変化量を検出することで前記液面の変化を検出し、
前記撹拌状態検知部は、前記液面変化検出部により検出された前記液面高さ変化量が閾値以上であるか否かに基づいて前記撹拌状態を検知し、
前記自動分析装置は、
前記容器内の前記液体の性質に基づいて、前記撹拌状態検知部による前記撹拌状態の検知に用いられる前記液面高さ変化量の閾値を選択する第2の閾値選択部を更に備える、請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項15】
前記液面検出部により検出された前記液面の高さを検出する液面高さ検出部と、
前記液面高さ検出部により検出された前記液面の高さに基づいて、前記容器内の前記撹拌子の有無を検知する撹拌子検知部と、
を更に備える、請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項16】
前記撹拌装置は、前記液面検出部による前記液面の検出前及び検出後の双方において前記容器内の前記液体を撹拌する、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動分析装置では、試薬が収容された容器を試薬庫内に保管しておき、測定する項目情報に応じてプローブにより試薬を吸引及び吐出する動作を行っていた。試薬の中には定期的に撹拌を行わないと測定精度に影響を与えるものも存在する。このため、予め容器の中に攪拌子を入れておき、撹拌子を回転駆動することで容器内の試薬を撹拌することが行われていた。
【0003】
容器内の試薬を適切に撹拌するためには、事前に人の手によって容器内に撹拌子を入れておく必要があり、また、撹拌を実施する自動分析装置の駆動部が正常である必要がある。すなわち、容器内への撹拌子の入れ忘れ又は駆動部の異常が生じた場合、容器内の試薬を適切に撹拌することができなくなる。
【0004】
しかしながら、自動分析装置の外装カバー及び試薬庫のカバーは不透明である部分が多く、また、自動分析装置の奥まった場所に容器が位置すると、容器の状態及び容器内の試薬の状態を目視で確認することは困難である。更に、自動分析装置の動作中は容器に自動分析装置の各ユニットがアクセスするため、不用意に容器に顔を近づけると顔にプローブが接触する可能性がある。このため、容器内の試薬が撹拌されないことにユーザが気付くことは困難である。
【0005】
したがって、従来の自動分析装置では、ユーザが容器内の液体の撹拌状態を簡便かつ適切に把握することが困難であった。ここで、攪拌状態とは、自動分析装置の攪拌装置による容器内の液体の攪拌動作に応じて生じる当該液体の流動の状態である(以下、同様)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-41961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ユーザが容器内の液体の撹拌状態を簡便かつ適切に把握できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る自動分析装置は、撹拌装置と、プローブと、液面検出部と、撹拌状態検知部とを備える。撹拌装置は、容器内の液体を撹拌する。プローブは、容器内の液体を分注する。液面検出部は、容器内の液体へのプローブの接触状態に基づいて容器内の液体の液面を検出する。撹拌状態検知部は、液面検出部により検出された液面に基づいて、撹拌装置による容器内の液体の撹拌状態を検知する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置の構成の一例を示すブロック図。
図2図2は、第1の実施形態に係る自動分析装置における分析機構の構成の一例を示す斜視図。
図3図3は、第1の実施形態に係る自動分析装置における分析機構が備える測光ユニットを示す平面図。
図4図4は、第1の実施形態に係る自動分析装置における分析機構が備える測光ユニットを示す側面図。
図5図5は、第1の実施形態に係る自動分析装置における分析機構が備える測光ユニットの変形例を示す平面図。
図6図6は、第1の実施形態に係る自動分析装置において、試薬容器と、分析機構の試薬分注プローブ及び撹拌装置とを示す部分断面図。
図7図7は、第1の実施形態に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図8図8は、第1の実施形態に係る自動分析装置の動作例を示す部分断面図。
図9図9は、第1の実施形態の第1の変形例に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図10図10は、第1の実施形態の第2の変形例に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図11図11は、第1の実施形態の第3の変形例に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図12図12は、第1の実施形態の第4の変形例に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図13図13は、第2の実施形態に係る自動分析装置の構成の一例を示すブロック図。
図14図14は、第2の実施形態に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図15図15は、第2の実施形態に係る自動分析装置の動作例を示す部分断面図。
図16図16は、第2の実施形態の第1の変形例に係る自動分析装置の構成の一例を示すブロック図。
図17図17は、第2の実施形態の第1の変形例に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図18図18は、第2の実施形態の第2の変形例に係る自動分析装置の構成の一例を示すブロック図。
図19図19は、第2の実施形態の第2の変形例に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図20図20は、第3の実施形態の第3の変形例に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図21図21は、第3の実施形態に係る自動分析装置の構成の一例を示すブロック図。
図22図22は、第3の実施形態に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
図23図23は、第3の実施形態に係る自動分析装置の動作例を示す部分断面図。
図24図24は、第4の実施形態に係る自動分析装置の構成の一例を示すブロック図。
図25図25は、第4の実施形態に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、自動分析装置の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置1の構成の一例を示すブロック図である。第1の実施形態に係る自動分析装置1は、例えば、血液凝固分析装置である。図1に示すように、第1の実施形態に係る自動分析装置1は、分析機構2と、解析回路3と、駆動機構4と、入力インタフェース5と、出力インタフェース6と、通信インタフェース7と、記憶回路8と、制御回路9とを備える。駆動機構4は、移動機構の一例である。
【0012】
分析機構2は、被検者の検体である血液検体と、各検査項目で用いられる試薬である凝固試薬とを混合した混合液を生成する。また、分析機構2は、検査項目によっては、所定の倍率で希釈した標準液と、この検査項目で用いられる試薬とを混合する。分析機構2は、血液検体と試薬との混合液や標準液と試薬との混合液の光学的な物性値を連続的に測定する。この測定により、例えば、透過光強度、吸光度、散乱光強度等で表される標準データ、及び被検データが生成される。
【0013】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データ、及び被検データを解析することで、血液検体の凝固に関する検量データ、及び分析データを生成するプロセッサである。解析回路3は、例えば、記憶回路8から解析プログラムを読み出し、読み出した解析プログラムに従って標準データ、及び被検データを解析する。なお、解析回路3は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えてもよい。
【0014】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、及びリードスクリュー等により実現される。
【0015】
入力インタフェース5は、例えば、ユーザ(すなわち、操作者)から、又は病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された血液検体に係る各検査項目の分析パラメータ等の設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド等により実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、ユーザから入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース5はマウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース5の例に含まれる。
【0016】
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路、及び音声デバイス等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。音声デバイスは、例えば、スピーカ等を含む。なお、音声信号を外部へ出力する出力回路も音声デバイスに含まれる。
【0017】
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行っても構わない。
【0018】
記憶回路8は、種々の情報を記憶する非一過性の記憶装置であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスク、SSD(Solid State Drive)、及び集積回路記憶装置等である。記憶回路8は、例えば、自動分析装置1を制御する制御プログラムと、この制御プログラムの実行に用いられる各種のデータとを記憶する。記憶回路8は、HDD及びSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)及びフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体、或いはRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0019】
より具体的には、記憶回路8は、解析回路3で実行される解析プログラム、及び制御回路9に備わる機能を実現するための制御プログラムを記憶している。記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを検査項目毎に記憶する。記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを血液検体毎に記憶する。記憶回路8は、ユーザから入力された検査オーダ、又は通信インタフェース7が病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。
【0020】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されているプログラムを実行することで、実行したプログラムに対応する機能を実現する。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えてもよい。
【0021】
図2は、図1に示される分析機構2の構成の一部における一例を示す模式図である。図2に示すように、第1の実施形態に係る分析機構2は、反応ディスク201と、恒温部202と、ラックサンプラ203と、試薬庫204と、撹拌装置205とを備える。
【0022】
反応ディスク201は、複数の反応容器(キュベット)2011を、環状に配列させて保持する。反応ディスク201は、反応容器2011を所定の経路に沿って搬送する。具体的には、検体の分析動作中、反応ディスク201は、駆動機構4により、既定の時間間隔で回動と停止とが交互に繰り返される。反応容器2011は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はアクリルにより形成されている。
【0023】
恒温部202は、所定の温度に設定された熱媒体を貯留し、貯留する熱媒体に反応容器2011を浸漬させることで、反応容器2011に収容される混合液を昇温及び保温する。
【0024】
ラックサンプラ203は、複数の試料容器を保持可能な試料ラック2031を、移動可能に支持しており、これら複数の試料容器には、測定を依頼された検体である血液検体が収容されている。図2に示される例において、試料ラック2031は、5本の試料容器を並列して保持可能である。
【0025】
ラックサンプラ203には、試料ラック2031を搬送する搬送領域2032が設けられている。すなわち、搬送領域2032を使用して、試料ラック2031が投入される投入位置から、測定が完了した試料ラック2031を回収する回収位置まで、試料ラック2031が搬送される。搬送領域2032では、長手方向に整列された複数の試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D1へ移動される。
【0026】
また、ラックサンプラ203には、試料ラック2031で保持される試料容器を所定のサンプル吸引位置へ移動させるため、試料ラック2031を搬送領域2032から引き込む引き込み領域2033が設けられている。サンプル吸引位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、ラックサンプラ203で支持されて試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。引き込み領域2033では、搬送されてきた試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D2へ移動される。
【0027】
また、ラックサンプラ203には、試料が吸引された試料容器を保持する試料ラック2031を搬送領域へ戻すための戻し領域2034が設けられている。戻し領域2034では、試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D3へ移動される。
【0028】
試薬庫204は、標準液、及び血液検体に対して実施される各検査項目で用いられる試薬等を収容する複数の試薬容器100を保冷しながら保持する。試薬容器100は、容器の一例である。試薬は、液体の一例である。試薬庫204内には、回転テーブルが回転自在に設けられている。回転テーブルは、複数の試薬容器100を円環状に載置して保持する。なお、第1の実施形態において、図2では図示していないが、試薬庫204は、着脱自在な試薬カバーにより覆われている。また、図2に示される例において、試薬容器100は、少なくとも部分的に円筒形状を有する。少なくとも部分的に円筒形状を有することに限定されず、例えば、試薬容器100は、少なくとも部分的に角筒形状を有していてもよい。
【0029】
さらに、図2に示すように、第1の実施形態に係る分析機構2は、サンプル分注アーム206と、サンプル分注プローブ207と、試薬分注アーム208と、試薬分注プローブ209とを備える。試薬分注プローブ209は、プローブの一例である。
【0030】
サンプル分注アーム206は、反応ディスク201とラックサンプラ203との間に設けられている。サンプル分注アーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。サンプル分注アーム206は、一端にサンプル分注プローブ207を保持する。
【0031】
サンプル分注プローブ207は、サンプル分注アーム206の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。回動軌道上には、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器から試料を吸引するためのサンプル吸引位置が設けられている。また、サンプル分注プローブ207の回動軌道上には、サンプル分注プローブ207が吸引した試料を反応容器2011へ分注するためのサンプル分注位置が設けられている。サンプル分注位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
【0032】
サンプル分注プローブ207は、駆動機構4によって駆動され、サンプル吸引位置、又はサンプル分注位置において上下方向に移動する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、サンプル吸引位置の直下に位置する試料容器から試料を吸引する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、サンプル分注位置の直下に位置する反応容器2011へ分注する。
【0033】
試薬分注アーム208は、反応ディスク201と試薬庫204との間に設けられている。試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。試薬分注アーム208は、一端に試薬分注プローブ209を保持する。
【0034】
試薬分注プローブ209は、試薬容器100内の試薬を分注するプローブである。試薬分注プローブ209は、試薬分注アーム208の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。回動軌道上には、試薬吸引位置が設けられている。試薬吸引位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、試薬庫204の回転テーブルに円環状に載置される試薬容器100の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。また、試薬分注プローブ209の回動軌道上には、試薬分注プローブ209が吸引した試薬を反応容器2011へ分注するための試薬分注位置が設定されている。試薬分注位置は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
【0035】
試薬分注プローブ209は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の試薬吸引位置、又は試薬分注位置において上下方向に移動する。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、試薬吸引位置で停止している試薬容器から試薬を吸引する。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した試薬を、試薬分注位置の直下に位置する反応容器2011へ分注する。
【0036】
さらに、第1の実施形態に係る分析機構2は、その内部に、反応ディスク201に保持可能な反応容器2011と同数の測光ユニットが設けられている。図3及び図4は、測光ユニット211の構成例を示す模式図である。図3は、測光ユニット211を、反応ディスク201の上方向から見たときの各構成要素の位置関係の例を示す平面図である。図4は、測光ユニット211を、反応ディスク201の断面方向から見たときの各構成要素の位置関係の例を示す側面図である。
【0037】
測光ユニット211は、反応容器2011内に分注された試料と試薬との混合液の光学的な物性値を連続的に測定する。第1の実施形態に係る分析機構2において、測光ユニット211は、複数設けられている。例えば、測光ユニット211は、反応ディスク201で保持可能な反応容器と同数だけ設けられている。すなわち、反応ディスク201で保持される1つの反応容器に対して、1つの測光ユニット211が設けられている。それぞれの測光ユニット211の構成は同様であるため、図3及び図4においては、1つの測光ユニット211を代表して図示している。
【0038】
図3及び図4に示す測光ユニット211は、例えば、光源2111と、光検出器2112、2113とを有する。例えば、測光ユニット211は、反応ディスク201で環状に保持される反応容器2011の環状中心側に光源2111を有する。光源2111は、反応容器2011が配列されている環の外側へ向けて光を照射するように設けられている。
【0039】
光源2111は、2種類の波長の光を発生する。光源2111は、例えば、波長が長い第1の光と、波長が短い第2の光とを発生する。例えば、第1の光の波長は、620~750nmの赤色の波長域に含まれ、第2の光の波長は、380~495nmの紫から青色の波長域に含まれる。なお、第1及び第2の光の波長は、620~750nmの赤色の波長域にそれぞれ含まれていても構わない。光源2111は、例えば、複数の波長の光を発生可能な多波長LED、所定の波長の光をそれぞれ発生する2つのLED、及び広い波長域の光からフィルタによって所望の波長の光を透過させる光源ユニット等により実現される。
【0040】
光源2111は、制御回路9の制御に従い、第1及び第2の光を発生する。具体的には、例えば、光源2111は、所定の周期で第1及び第2の光を交互に発生する。このとき、光源2111は、例えば、第1及び第2の光を、凝固の最小測定単位である、例えば0.1秒の半分である0.05秒周期で交互に光を発生する。光源2111から照射された光は、反応容器2011へ入射される。
【0041】
なお、光源2111は、制御回路9により指定される一方の波長の光を発生するようにしてもよい。また、光源2111は、第1及び第2の光を同時に発生するようにしてもよい。ただし、不要な波長の光を除外するためのフィルタを光検出器2112、2113に設ける必要がある。
【0042】
光検出器2112は、反応容器2011を挟んで光源2111と対向する位置に配設される。光源2111から出射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。光検出器2112は、反応容器2011から出射された光を検出する。光検出器2112は、例えば、透過光受光部の一例である。
【0043】
具体的には、例えば、光検出器2112は、反応容器2011内の標準液と試薬との混合液を透過した光を検出する。光検出器2112は、検出した光を所定の時間間隔、例えば、0.1秒間隔でサンプリングし、透過光強度、又は吸光度等で表される標準データを生成する。所定の時間間隔は、例えば、第1の光の発生頻度と同期する。なお、光検出器2112は、例えば、第1の光の波長と対応した波長の光のみを検出するようにしてもよい。また、光検出器2112は、反応容器2011内の血液検体と試薬との混合液を透過した光を検出する。光検出器2112は、検出した光を所定の時間間隔でサンプリングし、透過光強度、又は吸光度等により表される被検データを生成する。光検出器2112は、生成した標準データ、及び被検データを解析回路3へ出力する。
【0044】
光検出器2113は、光源2111の光の照射軸と、光検出器2113の受光軸とが反応容器2011内において略90度で交わるように配設される。光源2111から出射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、混合液内の粒子により散乱された後、第1側壁と90度隔てて隣接する第3側壁から出射される。光検出器2113は、反応容器2011から出射された光を検出する。光検出器2113は、例えば、散乱光受光部の一例である。
【0045】
具体的には、例えば、光検出器2113は、反応容器2011内の標準液と試薬との混合液で散乱された光を検出する。光検出器2113は、検出した光を所定の時間間隔、例えば、0.1秒間隔でサンプリングし、散乱光強度等で表される標準データを生成する。所定の時間間隔は、例えば、第2の光の発生頻度と同期する。なお、光検出器2113は、例えば、第2の光の波長と対応した波長の光のみを検出するようにしてもよい。また、光検出器2113は、反応容器2011内の血液検体と試薬との混合液で散乱された光を検出する。光検出器2113は、検出した光を所定の時間間隔でサンプリングし、散乱光強度等により表される被検データを生成する。光検出器2113は、生成した標準データ、及び被検データを解析回路3へ出力する。
【0046】
なお、光検出器2112、2113は、検出した光の強度を検出信号として解析回路3へ出力しても構わない。このとき、解析回路3が、所定の時間間隔、例えば、0.1秒間隔で検出信号をサンプリングし、標準データ、及び被検データを生成する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る測光ユニット211の別の構成例を表す模式図である。図5は、図3と同様に、測光ユニット211を、反応ディスク201の上方向から見たときの各構成要素の位置関係の例を示している。図5に示される測光ユニット211は、光源2111として、2つのLED51、52を有している。図5に示される例において、LED52の光の照射軸は、LED51の光の照射軸に対して所定の角度だけ傾けられている。
【0048】
光検出器2112は、図3及び図4の例と同様に、反応容器2011を挟んでLED51と対向する位置に配設されている。一方、光検出器2113は、LED52の光の照射軸と、光検出器2113の受光軸とが反応容器2011内において略90度で交わるように配置されている。
【0049】
図2に示される撹拌装置205は、試薬容器100内の試薬を撹拌する装置である。撹拌装置205は、例えば、試薬吸引位置に対応する試薬庫204の下方位置に配置されている。このような構成に限定されず、撹拌装置205は、例えば、試薬庫204内における各試薬容器100のそれぞれの下方位置に配置されていてもよい。図6に示される例において、撹拌装置205は、試薬容器100内の底部に保持された(すなわち、沈められた)撹拌子102を回転駆動することで、試薬容器100内の試薬101を撹拌する。撹拌子102は、例えば、ユーザによって予め試薬容器100内に挿入される。撹拌子102は、例えば、磁性体で構成することができる。撹拌装置205は、例えば、磁性体で構成された撹拌子102を回転駆動する磁力を発生させる電磁石で構成することができる。なお、撹拌装置205は、撹拌子102を回転駆動する構成に限定されず、例えば、モータ等の駆動源の駆動力によって試薬容器100自体を回転駆動する構成であってもよい。ただし、撹拌装置205は、試薬分注プローブ209を用いた試薬の撹拌状態の検知を妨げないようにするため、試薬容器100内に挿入されて試薬を直接撹拌する構成はとらない。
【0050】
図1に示すように、解析回路3は、記憶回路8に記憶されている解析プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、解析回路3は、解析プログラムを実行することで、解析機能31、及び複合解析機能32を有する。すなわち、解析回路3は、測光ユニット211で測定した結果に基づいて、検体に含まれる成分の分析結果を求める。なお、第1の実施形態では、単一のプロセッサによって解析機能31及び複合解析機能32が実現される例を説明するが、このような例に限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて解析回路を構成し、各プロセッサが解析プログラムを実行することにより解析機能31、及び複合解析機能32を実現しても構わない。
【0051】
解析機能31は、分析機構2により生成される標準データ、及び被検データを解析する機能であり、解析部の一例である。具体的には、例えば、解析機能31において解析回路3は、標準データに基づいて凝固時間を算出し、算出した凝固時間から検量データを生成する。解析回路3は、生成した検量データを制御回路9へ出力する。
【0052】
また、解析機能31において解析回路3は、例えば、被検データを解析することで、混合液中の凝固の過程を測定する。具体的には、解析回路3は、例えば、反応が強い試薬が添加された混合液の解析については、透過光を検出して得られる被検データを解析する。解析回路3は、被検データに基づいて血液凝固反応についての受光強度変化を取得する。なお、以下では、受光強度変化を反応曲線として説明を進める。解析回路3は、反応曲線における変曲点、及び飽和到達点等を凝固終了点として検出する。このときの変曲点、及び飽和到達点等の検出は、数学的なアルゴリズム、例えば、反応曲線の1次微分、2次微分、又は他の演算法を用いて実施される。解析回路3は、検出した凝固終了点に基づき、凝固点と、凝固点に到達する時間である凝固時間を算出する。なお、解析回路3は、反応が強い試薬を添加した後、凝固が進まない異常検体に対しては、散乱光を検出して得られる被検データを解析しても構わない。
【0053】
また、解析回路3は、例えば、反応が弱くて遅い試薬を添加した混合液の解析については、散乱光を検出して得られる被検データを解析する。なお、第1の実施形態においては、反応が弱くて遅い試薬について、反応が弱い試薬と記載する箇所もあるが、これらは同様のものとして扱うものとする。解析回路3は、被検データに基づいて反応曲線を取得し、取得した反応曲線から、血液検体の凝固に関する情報、例えば、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間を算出する。
【0054】
また、解析回路3は、検査項目によっては、算出した凝固時間と、この被検データに対応する検査項目の検量データとに基づき、濃度値等を算出する。解析回路3は、凝固終了点、凝固点、凝固時間、及び濃度値等を含む分析データを制御回路9へ出力する。
【0055】
複合解析機能32は、分析機構2により生成される2種類の被検データを複合して解析する機能であり、複合解析部の一例である。具体的には、複合解析機能32において解析回路3は、透過光を検出して得られる被検データと、散乱光を検出して得られる被検データとを取得する。解析回路3は、透過光についての被検データに基づく反応曲線、及び、散乱光についての被検データに基づく反応曲線から、血液検体の凝固に関する情報、例えば、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等を算出する。
【0056】
複合解析機能32は、例えば、制御回路9からの制御、及び解析機能31での解析結果に従って実施される。例えば、解析回路3は、制御回路9からの指示に応じ、複合解析機能32を実施する。また、解析回路3は、例えば、解析機能31において、反応が弱い試薬を添加した後、想定よりも反応が遅い等の場合、複合解析機能32を実施する。
【0057】
解析回路3は、凝固終了点、凝固点、及び凝固時間等を含む分析データを制御回路9へ出力する。
【0058】
制御回路9は、入力インタフェース5から入力される入力操作の電気信号に応じて、自動分析装置1全体の動作を制御する回路である。例えば、制御回路9は、システム制御機能91と、測光制御機能92と、液面検出機能93と、液面変化検出機能94と、撹拌状態検知機能95と、通知機能96とを有する。液面検出機能93は、液面検出部の一例である。液面変化検出機能94は、液面変化検出部の一例である。撹拌状態検知機能95は、撹拌状態検知部の一例である。通知機能96は、通知部の一例である。
【0059】
ここで、例えば、図1に示す制御回路9の構成要素であるシステム制御機能91、測光制御機能92、液面検出機能93、液面変化検出機能94、撹拌状態検知機能95、及び通知機能96が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路8に記録されている。制御回路9は、例えば、プロセッサである。制御回路9を構成するプロセッサは、記憶回路8から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の制御回路9は、図1の制御回路9内に示された各機能を有することとなる。
【0060】
なお、図1においては、システム制御機能91、測光制御機能92、液面検出機能93、液面変化検出機能94、撹拌状態検知機能95、及び通知機能96の各処理機能が単一の制御回路9によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、制御回路9は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、制御回路9が有する各処理機能は、単一又は複数の制御回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0061】
システム制御機能91は、入力インタフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する機能である。例えば、システム制御機能91において制御回路9は、検査項目に応じた解析を実施するように解析回路3を制御する。
【0062】
測光制御機能92は、測定に用いられる光の波長を制御する機能である。具体的には、測光制御機能92において制御回路9は、例えば、記憶回路8に記憶されている検査オーダを参照し、次に測定される検査項目で用いられる試薬情報を取得する。制御回路9は、例えば、取得した試薬情報に含まれる検査項目名、試薬名、反応に関する情報、及び再検に関する情報等に基づき、次に使用される試薬の反応が弱いか否かを判断する。
【0063】
液面検出機能93は、試薬容器100内の試薬への試薬分注プローブ209の先端部(すなわち、下端部)の接触状態(すなわち、接液状態)に基づいて、試薬容器100内の試薬の液面を検出する。例えば、液面検出機能93は、試薬容器100内の試薬に試薬分注プローブ209が接触しているか否かを示す液面検出信号を出力することで液面を検出する。液面検出信号は、例えば、試薬容器100内の試薬に試薬分注プローブ209が接触しているときはオン状態となり、試薬容器100内の試薬に試薬分注プローブ209が接触していないときはオフ状態となる。液面検出信号は、例えば、試薬分注プローブ209の下端部が試薬の液面に接触したときの電気特性(例えば、静電容量又は抵抗値)の変化に基づいてオフ状態からオン状態に切り替わる。
【0064】
液面変化検出機能94は、液面検出機能93により検出された液面の変化を検出する。例えば、液面変化検出機能94は、撹拌装置205による試薬の撹拌前と撹拌装置205による試薬の撹拌中との間における液面検出信号の変化に基づいて、液面の変化を検出する。
【0065】
撹拌状態検知機能95は、液面検出機能93により検出された液面に基づいて、撹拌装置205による試薬容器100内の試薬の撹拌状態(すなわち、攪拌装置205による試薬容器100内の試薬の攪拌動作に応じて生じる試薬の流動の状態)を検知する。具体的には、撹拌状態検知機能95は、攪拌状態として、試薬容器100内の試薬の撹拌不良が発生しているか否かを検知する。すなわち、撹拌状態検知機能95は、攪拌不良が発生していないことを検知することで攪拌状態を検知し、攪拌不良が発生していることを検知することで攪拌状態を検知しない。より具体的には、撹拌状態検知機能95は、液面変化検出機能94により検出された液面の変化に基づいて撹拌不良が発生しているか否かを検知する。
【0066】
通知機能96は、撹拌状態検知機能95により検知された撹拌不良をユーザに通知する。例えば、通知機能96は、撹拌不良の発生を、出力インタフェース6を介してユーザに通知する。
【0067】
次に、以上のように構成された第1の実施形態に係る自動分析装置1の動作例について説明する。図7は、第1の実施形態に係る自動分析装置1による試薬の撹拌状態の検知動作の動作例を示すフローチャートである。図8は、第1の実施形態に係る自動分析装置1の動作例を示す部分断面図である。
【0068】
なお、図7のフローチャートに示される撹拌状態の検知動作は、必要に応じて繰り返される(他のフローチャートにおいても同様)。また、撹拌状態の検知動作は、例えば、自動分析装置1の測定動作期間外の予め決められたタイミングで自動的に実施される。測定動作期間外のタイミングに限定されず、撹拌状態の検知動作は、測定動作期間中に発生させた空きサイクルを利用して実施されてもよい。測定動作期間中の撹拌状態の検知動作のタイミングは、入力インタフェース5を介してユーザが指定可能であってもよい。
【0069】
先ず、図7に示すように、撹拌状態検知機能95は、試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とが鉛直方向に沿って位置されるように、駆動機構4に、試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とを相対移動させる(ステップS1)。すなわち、駆動機構4は、試薬分注プローブ209を試薬吸引位置に位置させ、また、試薬容器100及び撹拌装置205を試薬吸引位置の下方に位置させる。なお、撹拌装置205が配置されている位置が試薬吸引位置の下方に固定されている場合、駆動機構4は、試薬分注プローブ209及び試薬容器100のみを移動させることで、試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とを鉛直方向に沿って位置させてもよい。
【0070】
試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とを鉛直方向に沿って位置させた後、撹拌状態検知機能95は、駆動機構4に、図8の矢印D4に示すように試薬分注プローブ209を下降(すなわち、鉛直方向に沿った下方向D4に移動)させる(図7のステップS2)。
【0071】
試薬分注プローブ209を下降させる過程において、図7に示すように、撹拌状態検知機能95は、液面検出機能93により出力された液面検出信号がオン状態であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0072】
液面検出信号がオン状態である場合(ステップS3:Yes)、撹拌状態検知機能95は、図8に示すように、駆動機構4に試薬分注プローブ209の下降を停止させる(図7及び図8のステップS4)。
【0073】
一方、図7に示すように、液面検出信号がオン状態でない場合(ステップS3:No)、撹拌状態検知機能95は、駆動機構4に、試薬分注プローブ209の下降を継続させる(ステップS2)。
【0074】
試薬分注プローブ209の下降が停止された後、撹拌状態検知機能95は、図8に示すように、撹拌装置205に試薬の撹拌動作を開始させる(図7及び図8のステップS5)。
【0075】
試薬の撹拌動作が開始された後、図7に示すように、液面変化検出機能94は、液面検出機能93により出力された液面検出信号が変化したか否かを判定する(ステップS6)。具体的には、液面変化検出機能94は、液面検出信号がオン状態からオフ状態に変化したか否かを判定する。ここで、試薬の撹拌動作が適切に行われている場合、例えば、図8に示すように、試薬容器100の中央部分において液面の高さが減少するため、試薬分注プローブ209の先端部(すなわち、下端部)が液面から離間して液面検出信号がオフ状態に変化する。
【0076】
液面検出信号が変化した場合(ステップS6:Yes)、撹拌状態検知機能95は、試薬が撹拌されていると判定する(ステップS7)。
【0077】
一方、液面検出信号が変化していない場合(ステップS6:No)、撹拌状態検知機能95は、試薬が撹拌されていないと判定する(ステップS8)。
【0078】
次いで、通知機能96は、撹拌状態検知機能95の判定結果をユーザに通知する(ステップS9)。例えば、撹拌不良が発生した場合、通知機能96は、エラーを出力することで撹拌不良の発生を通知する。エラーの出力は、例えば、エラーの表示により行われる。エラーの出力は、エラーの表示と共に、又は、エラーの表示に替えて、音声出力により行われてもよい。
【0079】
以上説明したように、第1の実施形態では、撹拌状態検知機能95が、試薬分注プローブ209を用いて液面検出機能93により検出された液面に基づいて、撹拌装置205による試薬容器100内の試薬の撹拌状態を検知する。
【0080】
これにより、ユーザは、自動分析装置1内に搭載された目視困難な試薬容器100内に収容された試薬の撹拌状態を、簡便かつ適切に把握することができる。
【0081】
また、第1の実施形態では、撹拌状態検知機能95が、攪拌状態として、試薬容器100内の試薬の撹拌不良が発生しているか否かを検知する。
【0082】
これにより、ユーザは、試薬容器100内の試薬の撹拌不良の発生の有無を簡便かつ適切に把握することができる。また、撹拌不良が発生した試薬を用いた測定の実施を未然に回避することもできるので、測定データの信頼性を向上させることができる。
【0083】
また、第1の実施形態では、撹拌装置205が、試薬容器100内の撹拌子102を回転駆動することで試薬容器100内の試薬を撹拌する。
【0084】
これにより、試薬分注プローブ209を用いた撹拌状態の検知を妨げずに試薬容器100内の試薬を撹拌することができる。
【0085】
また、第1の実施形態では、駆動機構4が、試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とが鉛直方向に沿って位置されるように、試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とを相対的に移動させる。
【0086】
これにより、試薬分注プローブ209を下降させることで、試薬容器100内の試薬への試薬分注プローブ209の接触状態に基づく液面の検出を適切に行うことができるので、液面に基づく撹拌状態の検知を適切に行うことができる。
【0087】
また、第1の実施形態では、液面変化検出機能94が、液面検出機能93により検出された液面の変化を検出する。また、撹拌状態検知機能95は、液面変化検出機能94により検出された液面の変化に基づいて撹拌状態を検知する。
【0088】
これにより、液面の変化に基づいてより適切に撹拌状態を検知することができる。
【0089】
なお、第1の実施形態には、以下に示される複数の変形例を適用することができる。
【0090】
(第1の実施形態の第1の変形例)
先ず、液面が落ち着くまで待機してから試薬分注プローブ209を下降させる第1の変形例について説明する。図9は、第1の実施形態の第1の変形例に係る自動分析装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0091】
図7では、試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とが鉛直方向に沿って位置された後に、試薬分注プローブ209を下降させる例について説明した。これに対して、図9に示される例において、撹拌状態検知機能95は、試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とが鉛直方向に沿って位置された後に、駆動機構4に、液面が落ち着くまで試薬分注プローブ209の下降を待機させる(ステップS10)。例えば、撹拌状態検知機能95は、予め記憶回路8に記憶されている待機時間にしたがって、駆動機構4による試薬分注プローブ209の下降を待機させる。
【0092】
試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とが鉛直方向に沿って位置された直後は、試薬容器100の移動時の振動によって発生した液面の変動が収まっていない可能性がある。
【0093】
第1の実施形態の第1の変形例によれば、液面が落ち着くまで待機してから試薬分注プローブ209を下降させることで、撹拌前の液面をより適切に検出することができる。撹拌前の液面をより適切に検出することで、撹拌前と撹拌中との間の液面の変化をより適切に検出して撹拌状態をより適切に検知することができる。
【0094】
(第1の実施形態の第2の変形例)
次に、撹拌不良が検知された試薬を用いた項目の検査を禁止する第2の変形例について説明する。図10は、第1の実施形態の第2の変形例に係る自動分析装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0095】
図10に示される例において、システム制御機能91(測定禁止部)は、撹拌状態検知機能95により撹拌不良が検知された場合に、撹拌不良が検知された試薬容器100内の試薬を用いた該当項目の測定を禁止する(ステップS101)。
【0096】
第1の実施形態の第2の変形例によれば、適切に撹拌されなかった試薬を用いた測定を未然に防ぐことができるので、測定精度の悪化を低減することができる。
【0097】
(第1の実施形態の第3の変形例)
次に、撹拌不良が検知された場合に測定を停止する第3の変形例について説明する。図11は、第1の実施形態の第3の変形例に係る自動分析装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0098】
図11に示される例において、システム制御機能91(測定停止部)は、撹拌状態検知機能95により撹拌不良が検知された場合に、測定動作を停止する(ステップS102)。
【0099】
第1の実施形態の第3の変形例によれば、精度が保証されない測定を停止することができるので無駄な測定を回避することができる。
【0100】
(第1の実施形態の第4の変形例)
次に、液面の検出前に試薬を撹拌する第4の変形例について説明する。図12は、第1の実施形態の第4の変形例に係る自動分析装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0101】
これまでは、液面検出機能93による液面の検出後に試薬容器100内の試薬を撹拌する例について説明した。これに対して、図12に示すように、第4の変形例において、撹拌状態検知機能95は、撹拌装置205に、液面検出機能93による液面の検出前に試薬容器100内の試薬の撹拌動作を行わせる(ステップS103)。
【0102】
試薬の性質によっては、試薬の表面に気泡が発生し易いものもある。試薬の表面に気泡が発生している状態で試薬分注プローブ209を下降させると、液面検出機能93が液面と誤って気泡を検出してしまう可能性がある。
【0103】
第1の実施形態の第4の変形例によれば、事前に試薬を撹拌して気泡を除去した後に試薬分注プローブ209を下降させることができるので、液面の誤検知を低減することができる。
【0104】
(第2の実施形態)
次に、撹拌前と撹拌中との間での液面高さの変化に基づいて撹拌状態を検知する第2の実施形態について、第1の実施形態との差異を中心に説明する。図13は、第2の実施形態に係る自動分析装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0105】
図13に示すように、第2の実施形態に係る自動分析装置1の制御回路9は、第1の実施形態の構成に加えて、更に、液面高さ検出機能97を有する。液面高さ検出機能97は、液面高さ検出部の一例である。
【0106】
液面高さ検出機能97は、液面検出機能93により検出された液面の高さを検出する。液面変化検出機能94は、撹拌装置205による試薬の撹拌前に液面高さ検出機能97により検出された液面の高さと、撹拌装置205による試薬の撹拌中に液面高さ検出機能97により検出された液面の高さとに基づいて液面の変化を検出する。
【0107】
図14は、第2の実施形態に係る自動分析装置1の動作例を示すフローチャートである。図15は、第2の実施形態に係る自動分析装置1の動作例を示す部分断面図である。図14及び図15に示すように、第2の実施形態において、液面高さ検出機能97は、試薬分注プローブ209の下降が停止された後(ステップS4)、試薬の撹拌前の液面高さH1を算出する(ステップS201)。液面高さ検出機能97は、例えば、液面検出機能93により液面が検出されるまでの試薬分注プローブ209の下降量A1に基づいて、試薬の撹拌前の液面高さH1を算出する。試薬の撹拌前の液面高さは、試薬分注プローブ209の下降量そのものであってもよい。
【0108】
試薬の撹拌前の液面高さを算出した後、液面高さ検出機能97は、算出された液面高さを記憶回路8に記録する(ステップS202)。
【0109】
試薬の撹拌前の液面高さが記憶回路8に記録された後、撹拌状態検知機能95は、図15の矢印D5に示すように、駆動機構4に、試薬分注プローブ209を上昇(すなわち、鉛直方向に沿った上方向D5に移動)させる(ステップS203)。このとき、駆動機構4は、試薬分注プローブ209の下降開始前の位置(すなわち、試薬吸引位置)まで試薬分注プローブ209を戻す。
【0110】
試薬の撹拌動作が開始された後(ステップS5)、撹拌状態検知機能95は、駆動機構4に、試薬分注プローブ209を再び下降させる(ステップS204)。
【0111】
試薬分注プローブ209を下降させる過程において、撹拌状態検知機能95は、液面検出機能93により出力された液面検出信号がオン状態であるか否かを判定する(ステップS205)。
【0112】
液面検出信号がオン状態である場合(ステップS205:Yes)、撹拌状態検知機能95は、図15に示すように、駆動機構4に試薬分注プローブ209の下降を停止させる(図14及び図15のステップS206)。
【0113】
一方、図14に示すように、液面検出信号がオン状態でない場合(ステップS205:No)、撹拌状態検知機能95は、駆動機構4に、試薬分注プローブ209の下降を継続させる(ステップS204)。
【0114】
試薬分注プローブ209の下降が停止された後、液面高さ検出機能97は、図14及び図15に示すように、試薬の撹拌中の液面高さH2を算出する(ステップS207)。液面高さ検出機能97は、例えば、液面検出機能93により液面が検出されるまでの試薬分注プローブ209の下降量A2に基づいて、試薬の撹拌前の液面高さH2を算出する。試薬の撹拌中の液面高さは、試薬分注プローブ209の下降量そのものであってもよい。
【0115】
試薬の撹拌中の液面高さを算出した後、図14に示すように、液面高さ検出機能97は、算出された液面高さを記憶回路8に記録する(ステップS208)。
【0116】
試薬の撹拌中の液面高さが記憶回路8に記録された後、撹拌状態検知機能95は、記憶回路8に記憶されている試薬の撹拌前の液面高さと撹拌中の液面高さとに基づいて、撹拌前と撹拌中とで液面高さに変化があるか否かを判定する(ステップS209)。
【0117】
撹拌前と撹拌中とで液面高さに変化がある場合(ステップS209:Yes)、撹拌状態検知機能95は、試薬が撹拌されていると判定する(ステップS7)。
【0118】
一方、撹拌前と撹拌中とで液面高さに変化がない場合(ステップS209:No)、撹拌状態検知機能95は、試薬が撹拌されていないと判定する(ステップS8)。
【0119】
第2の実施形態では、液面変化検出機能94が、撹拌装置205による試薬の撹拌前に液面高さ検出機能97により検出された液面の高さと、撹拌装置205による試薬の撹拌中に液面高さ検出機能97により検出された液面の高さとに基づいて液面の変化を検出する。
【0120】
これにより、第1の実施形態と同様に、ユーザは、自動分析装置1内に搭載された目視困難な試薬容器100内に収容された試薬の撹拌状態を、簡便かつ適切に把握することができる。また、液面高さの変化に基づいてより適切に撹拌状態を検知することができる。
【0121】
なお、第2の実施形態には、以下に示される複数の変形例を適用することができる。
【0122】
(第2の実施形態の第1の変形例)
先ず、試薬の残量に基づいて撹拌状態の検知に用いられる液面高さの変化量を補正する第1の変形例について説明する。図16は、第2の実施形態の第1の変形例に係る自動分析装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0123】
図16に示される例において、制御回路9は、図13の構成に加えて、更に、残量検出機能98と、閾値補正機能99とを有する。残量検出機能98は、残量検出部の一例である。閾値補正機能99は、閾値補正部の一例である。
【0124】
残量検出機能98は、試薬容器100内の試薬の残量を検出する。例えば、残量検出機能98は、記憶回路8に記憶されている試薬の分注回数のログデータに基づいて、試薬の使用量を算出し、算出された使用量を試薬の既知の初期量から減ずることで残量を算出してもよい。
【0125】
図16に示される例において、液面変化検出機能94は、撹拌装置205による試薬の撹拌前に液面高さ検出機能97により検出された液面の高さと、撹拌装置205による試薬の撹拌中に液面高さ検出機能97により検出された液面の高さとの差分である液面高さ変化量を検出することで、液面の変化を検出する。
【0126】
また、図16に示される例において、撹拌状態検知機能95は、液面変化検出機能94により検出された液面高さ変化量が閾値以上であるか否かに基づいて撹拌状態を検知する。
【0127】
また、図16に示される例において、閾値補正機能99は、残量検出機能98により検出された試薬の残量に基づいて、撹拌状態検知機能95による撹拌状態の検知に用いられる液面高さ変化量の閾値を補正する。
【0128】
図17は、第2の実施形態の第1の変形例に係る自動分析装置1の動作例を示すフローチャートである。なお、図17の初期状態において、自動分析装置1は、試薬容器100内の試薬を分注して測定を行っているものとする。図17に示すように、先ず、残量検出機能98は、試薬容器100内の試薬の残量を検出する(ステップS200)。
【0129】
試薬の残量が検出された後、閾値補正機能99は、検出された試薬の残量に基づいて、液面高さ変化量の閾値を初期値から補正する(ステップS210)。例えば、閾値補正機能99は、試薬の残量が少ないほど液面高さ変化量の閾値が大きくなるように、液面高さ変化量の閾値を補正してもよい。液面高さ変化量の閾値が補正された後、ステップS1以降の工程を実施する。
【0130】
また、図17に示される例においては、試薬の撹拌中の液面高さが記憶回路8に記録された後(ステップS208)、液面変化検出機能94は、記憶回路8に記憶された撹拌前の液面高さと撹拌中の液面高さとの差分を計算することで、液面高さ変化量を算出する(ステップS211)。
【0131】
液面高さ変化量が算出された後、撹拌状態検知機能95は、算出された液面高さ変化量がステップS210で補正された閾値以上であるか否かを判定する(ステップS2091)。
【0132】
液面高さ変化量が閾値以上である場合(ステップS2091:Yes)、撹拌状態検知機能95は、試薬が撹拌されていると判定する(ステップS7)。
【0133】
一方、液面高さ変化量が閾値以上でない場合(ステップS2091:No)、撹拌状態検知機能95は、試薬が撹拌されていないと判定する(ステップS8)。
【0134】
第2の実施形態の第1の変形例によれば、試薬の残量に基づいて液面高さ変化量の閾値を補正することで、撹拌状態をより適切に検知することができる。
【0135】
(第2の実施形態の第2の変形例)
次に、試薬容器100の形状に基づいて液面高さ変化量の閾値を選択する第2の実施形態の第2の変形例について説明する。図18は、第2の実施形態の第2の変形例に係る自動分析装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0136】
図18に示される例において、制御回路9は、図13の構成に加えて、更に、閾値選択機能910を有する。閾値選択機能910は、閾値選択部の一例である。
【0137】
図16と同様に、図18に示される例において、液面変化検出機能94は、撹拌装置205による試薬の撹拌前に液面高さ検出機能97により検出された液面の高さと、撹拌装置205による試薬の撹拌中に液面高さ検出機能97により検出された液面の高さとの差分である液面高さ変化量を検出することで、液面の変化を検出する。
【0138】
また、図16と同様に、図18に示される例において、撹拌状態検知機能95は、液面変化検出機能94により検出された液面高さ変化量が閾値以上であるか否かに基づいて撹拌状態を検知する。
【0139】
また、図18に示される例において、閾値選択機能910は、試薬容器100の形状に基づいて、液面高さ変化量の閾値を選択する。試薬容器100の形状は、例えば、入力インタフェース5を介してユーザによって入力される。閾値選択機能910は、例えば、出力インタフェース6を介して試薬容器100の形状についての複数の選択肢を表示し、表示された選択肢の中から入力インタフェース5を用いて選択された形状に対応する液面高さ変化量の閾値を選択してもよい。また、閾値選択機能910は、例えば、記憶回路8に記憶された試薬容器100の形状と液面高さ変化量の閾値との対応表に基づいて、入力された試薬容器100の形状に対応する閾値を選択してもよい。例えば、液面高さ変化量の閾値は、波立ちやすい形状(例えば、角筒形状)の試薬容器100ほど大きな値であってもよい。
【0140】
図19は、第2の実施形態の第2の変形例に係る自動分析装置1の動作例を示すフローチャートである。図19に示すように、先ず、閾値選択機能910は、入力インタフェース5からの入力情報に基づいて、試薬容器100の形状を選択する(ステップS212)。
【0141】
試薬容器100の形状を選択した後、閾値選択機能910は、選択された試薬容器100の形状に対応する液面高さ変化量の閾値を選択する(ステップS213)。その後は、ステップS1以降の工程を実施する。
【0142】
第2の実施形態の第2の変形例によれば、試薬容器100の形状に基づいて液面高さ変化量の閾値を補正することで、撹拌状態をより適切に検知することができる。
【0143】
(第2の実施形態の第3の変形例)
次に、試薬の性質に基づいて液面高さ変化量の閾値を選択する第2の実施形態の第3の変形例について説明する。なお、第3の変形例における自動分析装置1の基本構成は、図18と同様である。第3の変形例において、閾値選択機能910は、試薬の性質に基づいて、液面高さ変化量の閾値を選択する。試薬容器100の形状は、例えば、入力インタフェース5を介してユーザによって入力される。閾値選択機能910は、例えば、出力インタフェース6を介して試薬の性質についての複数の選択肢を表示し、表示された選択肢の中から入力インタフェース5を用いて選択された試薬の性質に対応する液面高さ変化量の閾値を選択してもよい。試薬の性質の選択肢は、試薬の種類の選択肢として提示されてもよい。また、閾値選択機能910は、例えば、記憶回路8に記憶された試薬の性質と液面高さ変化量の閾値との対応表に基づいて、入力された試薬の性質に対応する閾値を選択してもよい。また、閾値選択機能910は、例えば、気泡が発生し易い試薬ほど、液面高さ変化量の閾値を大きくしてもよい。
【0144】
図20は、第2の実施形態の第3の変形例に係る自動分析装置1の動作例を示すフローチャートである。図20に示すように、先ず、閾値選択機能910は、入力インタフェース5からの入力情報に基づいて、試薬の性質を選択する(ステップS214)。
【0145】
試薬の性質を選択した後、閾値選択機能910は、選択された試薬の性質に対応する液面高さ変化量の閾値を選択する(ステップS213)。その後は、ステップS1以降の工程を実施する。
【0146】
第2の実施形態の第3の変形例によれば、試薬の性質に基づいて液面高さ変化量の閾値を補正することで、撹拌状態をより適切に検知することができる。
【0147】
(第3の実施形態)
次に、試薬の液面形状に基づいて撹拌状態を検知する第3の実施形態について、第1の実施形態との差異を中心に説明する。
【0148】
図21は、第3の実施形態に係る自動分析装置1の構成の一例を示すブロック図である。図21に示される例において、制御回路9は、図1の液面変化検出機能94に替えて、液面形状検出機能911を有する。液面形状検出機能911は、液面形状検出部の一例である。
【0149】
液面形状検出機能911は、液面検出機能93により検出された液面の形状を検出する。例えば、液面形状検出機能911は、試薬の撹拌中において、試薬分注プローブ209を水平方向に移動させながら試薬の液面上の複数箇所において試薬分注プローブ209を用いて液面の高さを検出する。そして、液面形状検出機能911は、検出された複数箇所の液面の高さに基づいて、試薬の撹拌中の液面形状を検出する。
【0150】
撹拌状態検知機能95は、液面形状検出機能911により検出された液面形状に基づいて撹拌状態を検知する。例えば、撹拌状態検知機能95は、液面形状検出機能911により検出された液面形状が、記憶回路8に保存された正常な撹拌時の液面形状に類似するか否かに基づいて、撹拌不良の発生の有無を検知する。
【0151】
図22は、第3の実施形態に係る自動分析装置の動作例を示すフローチャートである。図22に示すように、第3の実施形態において、液面形状検出機能911は、試薬分注プローブ209と、試薬容器100と、撹拌装置205とが鉛直方向に沿って位置された後に、撹拌装置205に試薬の撹拌動作を開始させる(ステップS5)。
【0152】
試薬の撹拌動作が開始された後、液面形状検出機能911は、駆動機構4に、試薬分注プローブ209を水平方向に微小移動させる(ステップS301)。例えば、液面形状検出機能911は、予め記憶回路8に記憶されている移動量にしたがって、駆動機構4に水平方向への試薬分注プローブ209の微小移動を行わせる。
【0153】
試薬分注プローブ209を水平方向に微小移動させた後、液面形状検出機能911は、第1の実施形態と同様にステップS2~ステップS4の一連の工程を実施する。
【0154】
試薬分注プローブ209の下降が停止された後(ステップS4)、液面形状検出機能911は、試薬分注プローブ209の下降量を記憶回路8に記録する(ステップS302)。
【0155】
試薬分注プローブ209の下降量が記録された後、液面形状検出機能911は、駆動機構4に試薬分注プローブ209を上昇させる(ステップS203)。
【0156】
試薬分注プローブ209が上昇された後、液面形状検出機能911は、液面形状が検出されたか否かを判定する(ステップS303)。図23は、第3の実施形態に係る自動分析装置1の動作例を示す部分断面図である。例えば、図23に示すように、液面形状検出機能911は、試薬分注プローブ209の水平方向への微小移動を予め決められた回数繰り返したときまでに記憶回路8に蓄積された試薬分注プローブ209の下降量の変化量のログを、液面形状を検出してもよい。
【0157】
液面形状が検出された場合(ステップS303:Yes)、図22に示すように、撹拌状態検知機能95は、検出された液面形状が、記憶回路8に予め記憶された正常な撹拌時の液面形状に類似するか否かを判定する(ステップS304)。例えば、撹拌状態検知機能95は、検出された液面形状の勾配と正常な撹拌時の液面形状の勾配との差分が閾値以内であるか否かに基づいて、液面形状の類似の有無を判定してもよい。
【0158】
一方、液面形状が検出されなかった場合(ステップS303:No)、液面形状検出機能911は、試薬分注プローブ209の水平方向への微小移動を繰り返す(ステップS301)。
【0159】
液面形状検出機能911により検出された液面形状が正常な撹拌時の液面形状に類似する場合(ステップS304:Yes)、撹拌状態検知機能95は、試薬が撹拌されていると判定する(ステップS7)。
【0160】
一方、液面形状検出機能911により検出された液面形状が正常な撹拌時の液面形状の変化量に類似しない場合(ステップS304:No)、撹拌状態検知機能95は、試薬が撹拌されていないと判定する(ステップS8)。
【0161】
第3の実施形態では、液面形状検出機能911が、液面検出機能93により検出された液面の形状を検出する。撹拌状態検知機能95は、液面形状検出機能911により検出された液面の形状に基づいて撹拌状態を検知する。
【0162】
これにより、試薬が撹拌されているか否かだけでなく、期待通りの撹拌が行われているか否かを判断することも可能となる。
【0163】
(第4の実施形態)
次に、液面高さに基づいて試薬容器100内の撹拌子102の有無を検知する第4の実施形態について、第1の実施形態との差異を中心に説明する。図24は、第4の実施形態に係る自動分析装置1の構成の一例を示すブロック図である。図24に示される例において、制御回路9は、図1の構成に加えて、更に、液面高さ検出機能97と、撹拌子検知機能912とを有する。撹拌子検知機能912は、撹拌子検知部の一例である。
【0164】
第2の実施形態で説明したように、液面高さ検出機能97は、液面検出機能93により検出された液面の高さを検出する。撹拌子検知機能912は、液面高さ検出機能97により検出された液面の高さに基づいて、試薬容器100内の撹拌子102の有無を検知する。
【0165】
図25は、第4の実施形態に係る自動分析装置1の動作例を示すフローチャートである。図25に示すように、第4の実施形態において、液面高さ検出機能97は、試薬分注プローブ209の下降を停止させた後(ステップS4)、試薬の液面高さを算出する(ステップS401)。
【0166】
液面高さが算出された後、撹拌子検知機能912は、算出された液面高さに基づいて、試薬容器100内の撹拌子102の有無を判定する(ステップS402)。例えば、撹拌子検知機能912は、予め記憶回路8に記憶された撹拌子102を入れる前の液面高さと、算出された液面高さとを比較し、算出された液面高さが撹拌子102を入れる前の液面高さに対して閾値以上増加しているか否かに基づいて撹拌子102の有無を判定してもよい。
【0167】
試薬容器100内に撹拌子102が有ると判定された場合(ステップS402:Yes)、撹拌状態検知機能95は、撹拌装置205に、試薬の撹拌動作を開始させる(ステップS5)。
【0168】
一方、試薬容器100内に撹拌子102が無いと判定された場合(ステップS402:No)、通知機能96は、ユーザに撹拌子102の入れ忘れを通知する(ステップS403)。
【0169】
第4の実施形態では、撹拌子検知機能912が、液面高さ検出機能97により検出された液面高さに基づいて、試薬容器100内の撹拌子102の有無を検知する。
【0170】
これにより、撹拌子102の入れ忘れを未然に把握することができるため、より効果的に測定精度の悪化を低減することができる。
【0171】
上述した各実施形態で説明した変形例は、互いに異なる実施形態に適用することも可能である。例えば、第1の実施形態の第4の変形例で説明した試薬分注プローブ209の下降前における試薬の撹拌動作(ステップS103)は、第2~第4の実施形態に適用することも可能である。また、撹拌状態の検知対象である液体は、試薬に限定されず、試料及び希釈液等であってもよい。また、液面検出機能93は、試薬分注プローブ209を用いて試薬の液面を検出することに限定されず、例えば、サンプル分注プローブ207を用いて試薬の液面を検出してもよい。また、上述した各実施形態では、凝固型の自動分析装置1について説明したが、自動分析装置は、生化学反応型の自動分析装置であってもよい。
【0172】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成して構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサは、プロセッサ単一の回路として構成されている場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて、1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合して、その機能を実現するようにしてもよい。
【0173】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、容器内の液体の撹拌状態を簡便かつ適切に把握することができる。
【0174】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置及び方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置及び方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0175】
1 自動分析装置
100 試薬容器
102 撹拌子
205 撹拌装置
209 試薬分注プローブ
4 駆動機構
92 測光制御機能
93 液面検出機能
94 液面変化検出機能
95 撹拌状態検知機能
96 通知機能
97 液面高さ検出機能
98 残量検出機能
99 閾値補正機能
910 閾値選択機能
911 液面形状検出機能
912 撹拌子検知機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25