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特開2024-172429二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172429
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20241205BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20241205BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20241205BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241205BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20241205BHJP
   F02G 5/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
B01D53/14 220
C01B32/50
F02G5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090142
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】塚田 圭祐
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002BA02
4D002BA20
4D002CA07
4D002EA08
4D002GA03
4D002GB20
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB04
4D020BC01
4D020CB08
4D020CC09
4D020DA01
4D020DB20
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC28
4G146JC35
4G146JD03
4G146JD06
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素回収設備を好適に暖気することが可能な二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法を提供する。
【解決手段】一の実施形態によれば、二酸化炭素回収システムは、発電設備の排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備を備える。前記システムはさらに、前記二酸化炭素の回収のために前記二酸化炭素回収設備に熱を供給する熱供給部を備える。前記システムはさらに、前記発電設備の停止から起動までの間に、前記二酸化炭素回収設備の事前暖気が行われるように、または、前記発電設備が発電していたときと同じ前記二酸化炭素回収設備の温度状態であるホットスタンバイの状態になるように、前記熱供給部から前記二酸化炭素回収設備への熱の供給を制御する制御部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備の排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備と、
前記二酸化炭素の回収のために前記二酸化炭素回収設備に熱を供給する熱供給部と、
前記発電設備の停止から起動までの間に、前記二酸化炭素回収設備の事前暖気が行われるように、または、前記発電設備が発電していたときと同じ前記二酸化炭素回収設備の温度状態であるホットスタンバイの状態になるように、前記熱供給部から前記二酸化炭素回収設備への熱の供給を制御する制御部と、
を備える二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記熱供給部は、前記排ガスの熱を蓄熱し、蓄熱された熱を前記二酸化炭素回収設備に放熱する蓄熱装置を含む、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記発電設備の定格運転中に、前記排ガスの熱を前記蓄熱装置に蓄熱させる、請求項2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記二酸化炭素回収設備の事前暖気が行われるように、または、前記二酸化炭素回収設備がホットスタンバイの状態になるように、前記蓄積装置に蓄積された熱を前記二酸化炭素回収設備に放熱させる、請求項2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記二酸化炭素回収設備の事前暖気を行う事前暖気モードと、前記二酸化炭素回収設備をホットスタンバイの状態にするホットスタンバイモードとを設定可能である、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記発電設備の停止時間に基づいて、前記事前暖気モードまたは前記ホットスタンバイモードを設定する、請求項5に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記発電設備の起動時から前記二酸化炭素回収設備が前記二酸化炭素を回収できるように、前記蓄熱装置から前記二酸化炭素回収設備への熱の供給を制御する、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
前記発電設備の前記排ガスから熱を回収する排熱回収ボイラをさらに備え、
前記二酸化炭素回収設備は、前記排熱回収ボイラから排出された前記排ガスから前記二酸化炭素を回収する、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
前記熱供給部は、前記発電設備と前記排熱回収ボイラとの間の流路から前記排ガスを供給されるか、前記排熱回収ボイラから抽気された前記排ガスを供給されるか、前記排熱回収ボイラと前記二酸化炭素回収設備との間の流路から前記排ガスを供給されるか、または、前記排ガスの熱から得られた熱を有する流体を供給される、請求項8に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項10】
前記熱供給部は、前記発電設備と前記二酸化炭素回収設備との間の流路から、熱交換器を介して前記排ガスを供給される、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項11】
前記二酸化炭素回収設備は、
前記排ガスに含まれる前記二酸化炭素を吸収液に吸収させ、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液を排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された前記吸収液から前記二酸化炭素を放出させ、前記二酸化炭素を放出した前記吸収液を排出する再生塔と、
前記再生塔から排出された前記吸収液を加熱し、加熱された前記吸収液を前記再生塔に戻すリボイラとを備え、
前記熱供給部は、前記リボイラに熱を供給する、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項12】
前記吸収液から放出された前記二酸化酸素を用いて発熱反応を生じさせ、前記発熱反応により生じた熱を前記リボイラに供給する反応器をさらに備える、請求項11に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項13】
前記蓄熱装置は、前記排ガスの熱を蓄熱する蓄熱槽を備え、前記蓄熱槽を通過した熱媒を前記二酸化炭素回収設備に供給することで、前記二酸化炭素回収設備に熱を供給する、請求項2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項14】
前記蓄熱装置は、前記蓄熱槽にガスを供給するガス供給装置を備え、前記ガス供給装置からの前記ガスにより生成された熱により、前記蓄熱槽を通過する前記熱媒を加熱する、請求項13に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項15】
二酸化炭素回収設備が、発電設備の排ガスから二酸化炭素を回収し、
熱供給部が、前記二酸化炭素回収設備に熱を供給し、
前記発電設備の停止から起動までの間に、前記二酸化炭素回収設備の事前暖気が行われるように、または、前記発電設備が発電していたときと同じ前記二酸化炭素回収設備の温度状態であるホットスタンバイの状態になるように、前記熱供給部から前記二酸化炭素回収設備への熱の供給を制御する、
ことを含む二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を背景として、発電時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギー発電の普及が求められている。例えば、風力発電や太陽光発電は、技術的成熟度が高いことや、コストが低減されたことなどを理由に、急速に利用が拡大している。しかしながら、電力系統では、周波数を一定に保つ必要があり、様々な周期で変動する電力需要に対して電力供給量を調整する必要がある。火力発電設備などの同期電源は、回転体の慣性力によってミリ秒単位の微小な負荷変動を吸収できるため、電力系統を安定化させる調整力の役割を担うことができる。
【0003】
そこで、再生可能エネルギー発電設備と火力発電設備とを含む電力系統を構築することが考えられる。この場合、この電力系統でカーボンニュートラルを達成するためには、火力発電設備の排ガスから二酸化炭素を分離回収するCCS(Carbon Dioxide Capture and Storage)技術の導入が必要となる。
【0004】
CCS設備では、アミン吸収液を用いて排ガスから二酸化炭素を回収する化学吸収法が用いられることが多い。化学吸収法では、アミン吸収液が吸収できる二酸化炭素の量が温度によって変化する性質を利用して、排ガスから二酸化炭素を回収する。具体的には、吸収塔内で低温(例えば40℃程度)のアミン吸収液と排ガスとを接触させて、二酸化炭素をアミン吸収液に吸収させる。二酸化炭素を吸収したアミン吸収液は、吸収塔から再生塔へと送られ、再生塔内で高温(例えば120℃程度)に加熱されて、二酸化炭素と分離される。そのため、アミン吸収液から二酸化炭素を分離するためには、アミン吸収液を加熱するための熱エネルギーが必要となる。電力系統が火力発電設備を含む場合には、火力発電用の蒸気を火力発電設備から抽気し、抽気された蒸気を用いてアミン水溶液を加熱することが多い。
【0005】
このように、アミン吸収液を用いるCCS設備では、再生塔に熱が供給され、再生塔内でアミン吸収液が加熱される。CCS設備の起動時など、再生塔の温度が低いと、再生塔内でアミン吸収液から二酸化炭素を十分に分離できなくなり、その結果、吸収塔内でアミン吸収液により二酸化炭素を十分に回収できなくなる。そのため、再生塔の温度が低い場合には、再生塔の温度を高めるための熱が再生塔に供給される。これを、CCS設備の暖気と呼び、具体的には再生塔の暖気と呼ぶ(一方、CCS設備が、二酸化炭素の回収を開始できる状態に維持されていることを、CCS設備のホットスタンバイと呼ぶ)。しかしながら、再生塔の暖気には、長い時間(例えば数時間)を要する場合がある。この場合、再生塔の暖気が完了するまでの間、CCS設備での二酸化炭素の回収量が少なくなってしまう。
【0006】
一方、再生可能エネルギー発電により得られた電力を、送電時の電力ロスの少ないマイクログリッドで送電することが検討されている。しかしながら、マイクログリッドでは、大規模集中型の電力系統と比べて、再生可能エネルギー発電の不安定性による電力供給の変動が顕著となり、電力の需要と供給のバランスを保つ調整力が必要となる。そのため、マイクログリッドでは、負荷変動速度が速く、急速な起動が可能な、化石燃料焚きの小型発電設備(数MW級)が用いられることが多い。化石燃料焚きの小型発電設備の例は、ガスエンジンによる発電設備や、航空機転用型ガスタービンによる発電設備である。このような小型発電設備は、電力系統の安定化のために、急速な負荷変動やピーク需要に応じた頻繁な起動や停止を余儀なくされる。具体的には、小型発電設備が、電力需要の変化に対して急速に起動または停止することとなる。
【0007】
化石燃料焚きの小型発電設備がマイクログリッドに導入される場合、マイクログリッドでカーボンニュートラルを達成するためには、小型発電設備用にCCS設備を導入する必要がある。しかしながら、小型発電設備は、頻繁な起動や停止を余儀なくされるため、小型発電設備の起動に伴いCCS設備を起動させ、小型発電設備の停止に伴いCCS設備を停止させると、再生塔の暖気(またはホットスタンバイ)も頻繁に行われることになる。その結果、CCS設備での二酸化炭素の回収量が、再生塔の暖気に起因して減少してしまう。また、火力発電設備から抽気された蒸気が再生塔の暖気に用いられると、発電効率が低下し、発電コストが増加してしまう。
【0008】
二酸化炭素の回収に必要な熱エネルギーを削減するための技術として、蓄熱技術が注目されている。例えば、発電以外で発生する熱を蓄熱材に蓄熱し、蓄熱された熱をリボイラを介して再生塔に供給する方法が知られている。また、蓄熱材に蓄熱された熱を適切なタイミングでリボイラに供給することで、火力発電設備の負荷変動とCCS設備の時定数とを合わせる方法が知られている。これらの方法によれば、二酸化炭素の回収に必要な熱エネルギーを削減することや、火力発電設備の急速な負荷変動による熱エネルギーの損失を削減することが可能となる。しかしながら、これらの方法は、CCS設備の暖気に起因する二酸化炭素の回収量の減少に対処することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009-018977号公報
【特許文献2】特開2021-181786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
化石燃料焚きの小型発電設備がマイクログリッドに導入される場合、電力の需要と供給のバランスを保つために、小型発電設備は、頻繁な起動や停止を余儀なくされる。また、小型発電設備用にCCS設備がマイクログリッドに導入される場合、CCS設備の暖気が必要となる。マイクログリッドの構成によっては、CCS設備の暖気時間は、CCS設備の運転時間に対して無視できない程度の長さとなる。CCS設備は、暖気中は二酸化炭素を十分に回収することができない。そのため、CCS設備の暖気時間が長くなると、CCS設備における二酸化炭素の回収効率が低下してしまう。
【0011】
CCS設備の暖気時間が長い場合、小型発電設備の起動と同時にCCS設備の暖気を開始することには問題がある。小型発電設備の起動後には、小型発電設備からCCS設備に排ガスが排出されるにもかかわらず、CCS設備での二酸化炭素の回収量が暖気のせいで少なくなってしまうからである。また、小型発電設備の起動後に上述の抽気蒸気を用いて暖気が行われると、発電効率が低下し、発電コストが増加してしまうからである。
【0012】
そこで、本発明の実施形態は、二酸化炭素回収設備を好適に暖気することが可能な二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一の実施形態によれば、二酸化炭素回収システムは、発電設備の排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備を備える。前記システムはさらに、前記二酸化炭素の回収のために前記二酸化炭素回収設備に熱を供給する熱供給部を備える。前記システムはさらに、前記発電設備の停止から起動までの間に、前記二酸化炭素回収設備の事前暖気が行われるように、または、前記発電設備が発電していたときと同じ前記二酸化炭素回収設備の温度状態であるホットスタンバイの状態になるように、前記熱供給部から前記二酸化炭素回収設備への熱の供給を制御する制御部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の発電システムの構成例を示す模式図である。
図2】第1実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
図3】第1実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
図4】第1実施形態の発電システムの動作例を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態の発電システムの別の動作例を示すフローチャートである。
図6図1に示す発電システムの動作を説明するための模式図である。
図7図2に示す発電システムの動作を説明するための模式図である。
図8図3に示す発電システムの動作を説明するための模式図である。
図9】第1実施形態の発電システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図10】第2実施形態の発電システムの構成例を示す模式図である。
図11】第2実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
図12】第3実施形態の発電システムの構成例を示す模式図である。
図13】第3実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
図14】第3実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
図15】第4実施形態の蓄熱装置5の構成例を示す模式図である。
図16】第4実施形態の蓄熱装置5の別の構成例を示す模式図である。
図17】第5実施形態の蓄熱装置5の構成例を示す模式図である。
図18】第5実施形態の蓄熱装置5の別の構成例を示す模式図である。
図19】第6実施形態の蓄熱装置5の構成例を示す模式図である。
図20】第6実施形態の蓄熱装置5の別の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1図20において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の発電システムの構成例を示す模式図である。
【0017】
図1の発電システムは、発電設備1と、排熱回収ボイラ2と、蒸気タービン3と、CCS設備4と、蓄熱装置5と、制御部6とを備えている。CCS設備4は、吸収塔11と、再生塔12と、リボイラ13とを備えている。CCS設備4、蓄熱装置5、および制御部6は、図1の発電システム内で二酸化炭素回収システムを構成している。CCS設備4は、二酸化炭素回収設備の例である。蓄熱装置5は、熱供給部の例である。
【0018】
図1において、一点鎖線で示す矢印は、排ガスの流れを表す。さらに、二点鎖線で示す矢印は、吸収液の流れを表す。さらに、実線で示す矢印は、熱の流れを表す。
【0019】
発電設備1は例えば、化石燃料焚きの小型発電設備である。この小型発電設備の定格出力は、例えば10MW以下である。本実施形態の発電設備1は、化石燃料を燃焼させて排ガスを排出する燃焼器と、排ガスにより駆動されるガスタービンと、ガスタービンにより駆動されて発電する発電設備本体とを備えている。ガスタービンを駆動させた排ガスは、ガスタービンから排熱回収ボイラ2に排出される。なお、発電設備1は、上記の構造とは別の構造を有していてもよい。例えば、発電設備1は、ガスタービン以外の機器から排熱回収ボイラ2に排ガスを排出してもよい。
【0020】
排熱回収ボイラ2は、発電設備1の排ガスから熱を回収する。例えば、排熱回収ボイラ2は、排ガスの熱により水から蒸気を生成し、蒸気を蒸気タービン3に供給する。このようにして、排ガスの熱が、水から蒸気を生成するために利用され、蒸気の熱エネルギーや運動エネルギーに変換される。排熱回収ボイラ2に供給された排ガスは、排熱回収ボイラ2からCCS設備4に排出される。
【0021】
蒸気タービン3は、排熱回収ボイラ2からの蒸気により駆動される。蒸気タービン3に接続された発電設備は、蒸気タービン3により駆動されて発電する。この発電設備により発電された電力や、発電設備1により発電された電力は、例えばマイクログリッドにより送電される。このマイクログリッドはさらに、再生可能エネルギー発電により得られた電力を送電してもよい。なお、排熱回収ボイラ2により生成された蒸気は、蒸気タービン3の代わりに熱需要用に供給されてもよい。
【0022】
CCS設備4は、排熱回収ボイラ2から排出された排ガスから二酸化炭素(CO)を回収する。本実施形態のCCS設備4は、吸収液により排ガスから二酸化炭素を回収する化学吸収法を採用する。吸収液は、例えばアミン吸収液である。本実施形態の二酸化炭素の回収は、吸収塔11、再生塔12、およびリボイラ13により行われる。なお、吸収液は、アミン吸収液以外の液体でもよく、例えばアミン吸収液以外の塩基性溶液でもよい。
【0023】
吸収塔11は、排熱回収ボイラ2から排ガスを供給され、再生塔12から吸収液(リーン液)を供給される。吸収塔11は、排ガスと吸収液とを接触させ、排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる。その結果、排ガスから二酸化炭素が回収される。吸収塔11は、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)を塔底から排出し、二酸化炭素を吸収された排ガスを含む吸収塔排出ガスを塔頂から排出する。吸収塔排出ガスは、大気へと放出される。
【0024】
再生塔12は、吸収塔11から吸収液(リッチ液)を供給される。再生塔12は、吸収液を加熱し、吸収液から二酸化炭素を放出させる。その結果、吸収液から二酸化炭素が分離される。再生塔12は、二酸化炭素を放出した吸収液(リーン液)を塔底から排出し、吸収液から放出された二酸化炭素を含む再生塔排出ガスを塔頂から排出する。再生塔排出ガス内の二酸化炭素はその後、再生塔排出ガス内の蒸気を水へと凝縮させることで、再生塔排出ガス内の蒸気と分離される。
【0025】
リボイラ13は、再生塔12から吸収液(リーン液)を供給され、排熱回収ボイラ2から蒸気を供給される。図1は、排熱回収ボイラ2から抽気された蒸気が、リボイラ13に供給される流路を、実線で示している。リボイラ13は、蒸気と吸収液との間で熱交換を行うことで、蒸気の熱により吸収液を加熱する。その結果、吸収液の温度が上昇し、さらには、吸収液から蒸気や二酸化炭素が発生する。吸収液はその後、吸収液から発生した蒸気や二酸化炭素と共に、再生塔12に戻される。再生塔12内の吸収液は、リボイラ13から戻された吸収液、蒸気、および二酸化炭素により加熱される。
【0026】
CCS設備4では、吸収塔11から再生塔12へとリッチ液が流れ、再生塔12から吸収塔11へとリーン液が流れる。このようにして、吸収液が、吸収塔11と再生塔12との間を循環し、排ガス内の二酸化炭素が、CCS設備4により回収される。なお、リーン液の一部は、上述のように、再生塔12からリボイラ13へと流れ、リボイラ13から再生塔12へと戻される。
【0027】
蓄熱装置5は、発電設備1の排ガスを供給され、排ガスの熱を蓄熱する。図1では、蓄熱装置5が、発電設備1と排熱回収ボイラ2との間の流路から排ガスを供給される。蓄熱装置5は、蓄熱された熱をCCS設備4に放熱することで、CCS設備4に熱を供給することができる。蓄熱装置5からCCS設備4に供給される熱は、例えばCCS設備4の暖気に用いられる。本実施形態では、蓄熱装置5からの熱が、リボイラ13に供給される。リボイラ13は、蓄熱装置5からの熱を用いて再生塔12からの吸収液を加熱し、加熱された吸収液等を再生塔12に戻すことで、再生塔12を暖気することができる。
【0028】
蓄熱装置5は、発電設備1の排ガスの熱を蓄熱するための蓄熱材を含んでいる。蓄熱装置5は、蓄熱材の種類によっては、発電設備1と排熱回収ボイラ2との間の流路以外の箇所から排ガスを供給されてもよいし、排ガスの熱から得られた熱を有する排ガス以外の流体を供給されてもよい。このように、発電設備1の排ガスの熱は、様々な態様で蓄熱装置5に供給することが可能である。この詳細については、図2図3を参照して後述する。
【0029】
本実施形態の蓄熱装置5への性能要求は、蓄熱装置5が、再生塔12の暖気に必要な熱量を蓄熱可能な大きさを有することや、再生塔12における吸収液の再生温度(再生塔温度)に当たる温度の熱媒を供給可能な特性を有することである。前者は、蓄熱運転に関する性能要求に相当し、後者は、放熱運転に関する性能要求に相当する。ただし、コストを鑑みて、蓄熱装置5の蓄熱量および熱媒温度を低くする方が効率的な場合には、蓄熱装置5は、これらの性能要求を満たしていなくてもよい。
【0030】
制御部6は、CCS設備4や蓄熱装置5の種々の動作を制御する。制御部6は、図1の発電システム全体を制御する制御部の一部として設けられていてもよいし、図1の発電システム全体を制御する制御部とは別個に設けられていてもよい。制御部6は例えば、蓄熱装置5の蓄熱運転および放熱運転や、蓄熱装置5からの熱を用いたCCS設備4の暖気を制御する。なお、制御部6により自動的に行われる制御は、代わりに人間が手動で行ってもよい。
【0031】
図2は、第1実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
【0032】
図2の発電システムは、図1の発電システムと同様の構成要素を備えている。ただし、図2の蓄熱装置5は、排熱回収ボイラ2から抽気された蒸気を供給され、この蒸気の熱を蓄熱する。このように、図2の蓄熱装置5は、排ガスの熱を直接的に供給されるのではなく、排ガスの熱を蒸気を介して間接的に供給される。なお、図2の蓄熱装置5は、排熱回収ボイラ2から抽気された排ガスを供給され、この排ガスの熱を蓄熱してもよい。
【0033】
図3は、第1実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
【0034】
図3の発電システムは、図1図2の発電システムと同様の構成要素を備えている。ただし、図3の蓄熱装置5は、排熱回収ボイラ2と吸収塔11との間の流路から排ガスを供給され、この排ガスの熱を蓄熱する。このように、図3の蓄熱装置5は、発電設備1と排熱回収ボイラ2との間の流路以外の箇所から排ガスを供給される。
【0035】
図1の発電システムは例えば、蓄熱装置5に高温の排ガスを供給したい場合に採用される。図2の発電システムは例えば、蓄熱装置5に中程度の温度の蒸気(または排ガス)を供給したい場合に採用される。図3の発電システムは例えば、蓄熱装置5に低温の排ガスを供給したい場合に採用される。蓄熱装置5に供給する排ガスや蒸気の温度は、例えば蓄熱装置5内の蓄熱材の種類に応じて選択される。
【0036】
以下の説明においては、本実施形態の発電システムは、図1に示す構成を有していると想定する。ただし、以下の説明は、図2に示す構成や図3に示す構成にも同様に適用可能である。
【0037】
図4は、第1実施形態の発電システムの動作例を示すフローチャートである。図4は、CCS設備4の事前暖気を行う場合のフローを示している。
【0038】
発電設備1が停止した場合、制御部6は、ピーク需要要請や電気予報などの情報に基づいて、発電設備1が次に起動する時間(次回起動時間)を決定または予測する(ステップS101)。例えば、発電設備1が起動するタイミングが制御部6により制御される場合には、制御部6により次回起動時間が決定され、発電設備1が起動するタイミングが制御部6以外の機器により制御される場合には、制御部6により次回起動時間が予測される。
【0039】
次に、制御部6は、決定または予測された次回起動時間までにCCS設備4の暖気が完了しているように、蓄熱装置5で放熱の準備を開始する(ステップS102)。放熱の準備が完了したら、制御部6は、蓄熱装置5からCCS設備4への放熱を開始する(ステップS103)。このようにして、暖気のためのCCS設備4への熱供給が開始される。この熱供給は、CCS設備4の暖気が完了するまで続けられる。そして、この熱供給は、決定または予測された次回起動時間の直前に終了し、蓄熱装置5からCCS設備4への放熱が停止される(ステップS104)。
【0040】
一方、蓄熱装置5からCCS設備4への放熱が開始されると、蓄熱装置5からの熱がリボイラ13に供給され、リボイラ13により再生塔12が加熱される。このようにして、再生塔12の暖気が開始される(ステップS105)。再生塔12の暖気は、決定または予測された次回起動時間の直前に完了する(ステップS106)。よって、CCS設備4は、発電設備1の起動時から二酸化炭素を回収できるようになる。
【0041】
図4のフローでは、CCS設備4の暖気が、発電設備1の停止中に開始され、発電設備1の起動前に完了する。よって、図4のフローにおけるCCS設備4の暖気を、CCS設備4の事前暖気と呼ぶ。この暖気は、発電設備1の起動前に事前に行われる。
【0042】
事前暖気の完了後に、制御部6は、ピーク対応要請や電力需給バランスの状況を確認した後(ステップS201)、発電設備1を起動させる(ステップS202)。制御部6はさらに、発電設備1に合わせてCCS設備4を起動させる(ステップS203)。
【0043】
発電設備1が起動すると、発電設備1が発電を開始する(ステップS204)。また、発電設備1が起動すると、発電設備1の排ガスが、排熱回収ボイラ2を経てCCS設備4に供給される。排熱回収ボイラ2は、排ガスにより暖気されて起動する(ステップS205)。一方、CCS設備4の暖気はすでに完了しているため、CCS設備4は、排ガスからの二酸化炭素の回収を開始する(ステップS206)。吸収塔11は、発電設備1の起動時から吸収液により二酸化炭素を回収可能であり、再生塔12は、発電設備1の起動時から二酸化炭素を吸収液から分離可能である。
【0044】
排熱回収ボイラ2が起動すると、排熱回収ボイラ2が蒸気の生成や供給を開始する(ステップS207)。排熱回収ボイラ2により生成された蒸気は、蒸気タービン3やCCS設備4に供給される。その結果、蒸気タービン3が起動する(ステップS208)。一方、CCS設備4に供給された蒸気は、リボイラ13から再生塔12に熱を供給して吸収液から二酸化炭素を放出させるために、リボイラ13で使用される。
【0045】
一方、発電設備1が発電を開始した後、制御部6は、蓄熱装置5への蓄熱を開始する(ステップS209)。具体的には、発電設備1と排熱回収ボイラ2との間の流路から蓄熱装置5へと、排ガスの供給が開始される。蓄熱装置5は、発電設備1からの排ガスの代わりに、排熱回収ボイラ2からの蒸気を供給されてもよい。蓄熱装置5内に蓄熱された熱は、発電設備1が次に停止した際に、CCS設備4を暖気するために利用される。
【0046】
その後、何らかの理由により発電設備1が停止すると(ステップS210)、排熱回収ボイラ2、蒸気タービン3、CCS設備4、および蓄熱装置5も停止する(ステップS211~S214)。その結果、蓄熱装置5への蓄熱が終了する。その後、ステップS101からの処理が再び行われる。
【0047】
図5は、第1実施形態の発電システムの別の動作例を示すフローチャートである。図5は、CCS設備4をホットスタンバイの状態にする場合のフローを示している。
【0048】
発電設備1が停止した場合、制御部6は、蓄熱装置5で放熱の準備を開始する(ステップS102)。放熱の準備が完了したら、制御部6は、蓄熱装置5からCCS設備4への放熱を開始する(ステップS103)。
【0049】
図4のステップS103は、再生塔12の温度が、発電設備1の停止前における温度から大きく下がった後に行われるが、図5のステップS103は、再生塔12の温度が、発電設備1の停止前における温度から大きく下がる前に場合に行われる。例えば、図4のステップS103は、発電設備1の停止から長い時間が経過した後に行われ、図5のステップS103は、発電設備1の停止から長い時間が経過する前に行われる。
【0050】
よって、図5のステップS103では、再生塔12の温度を発電設備1の停止前における温度に保つためのCCS設備4への熱供給が開始される。この熱供給は、発電設備1が起動する直前に終了し、蓄熱装置5からCCS設備4への放熱が停止される(ステップS104)。
【0051】
一方、蓄熱装置5からCCS設備4への放熱が開始されると、蓄熱装置5からの熱がリボイラ13に供給され、リボイラ13により再生塔12が加熱される。このようにして、再生塔12の温度を保つための処理が開始され、この処理が、発電設備1が起動する直前まで継続される(ステップS107)。よって、CCS設備4は、発電設備1の起動時から二酸化炭素を回収できるようになる。
【0052】
図5のフローでは、CCS設備4が、蓄熱装置5からの放熱の開始以降、二酸化炭素の回収を開始できる状態に維持される。具体的には、再生塔12の温度が、発電設備1の停止前(発電中)における温度に保たれる。よって、CCS設備4のこの状態を、ホットスタンバイの状態と呼ぶ。ホットスタンバイ中のCCS設備4は、二酸化炭素の回収開始を待機(スタンバイ)している状態にある。本実施形態のホットスタンバイの状態にて、CCS設備4は、発電設備1が発電していたときと同じ温度状態にある。
【0053】
その後、図5のステップS201~S214は、図4のステップS201~S214と同様に行われる。
【0054】
本実施形態の制御部6は、CCS設備4の事前暖気を行う事前暖気モードと、CCS設備4をホットスタンバイの状態にするホットスタンバイモードとを設定可能である。発電システムが事前暖気モードに設定された場合には、発電設備1の停止中にCCS設備4の事前暖気が行われる。発電システムがホットスタンバイモードに設定された場合には、発電設備1の停止中にCCS設備4がホットスタンバイの状態になる。例えば、本実施形態の制御部6は、発電設備1の停止時間に基づいて、事前暖気モードまたはホットスタンバイモードを設定する。この詳細については、図9を参照して後述する。
【0055】
図6は、図1に示す発電システムの動作を説明するための模式図である。図6(a)にて破線で示す矢印は、図6(a)に示す時点では使用されない流路を表す。これは、図6(b)についても同様である。
【0056】
図6(a)は、発電設備1が定格運転中である場合の発電システムを示している。発電設備1の定格運転中には、排熱回収ボイラ2が、排ガスの熱を用いて蒸気を生成し、生成された蒸気を蒸気タービン3およびリボイラ13に供給する。リボイラ13は、この蒸気の熱を再生塔12に供給することで、二酸化炭素の分離に必要な熱を再生塔12に供給する。
【0057】
一方、図6(a)の蓄熱装置5は、発電設備1と排熱回収ボイラ2との間の流路から排ガスを供給され、排ガスの熱を蓄熱する。このように、発電設備1が定格運転中の場合には、蓄熱装置5は蓄熱運転を行う。蓄熱運転中には、蓄熱装置5からリボイラ13への熱供給は行われない。さらに、蓄熱装置5は、発電設備1が部分負荷運転中の場合にも、蓄熱運転を行う。
【0058】
図6(b)は、CCS設備4の起動が蓄熱装置5により補助されている場合の発電システムを示している。図6(b)では、CCS設備4の事前暖気が行われているか、または、CCS設備4がホットスタンバイの状態にある。この場合、発電設備1は排ガスの排出を停止しており、排熱回収ボイラ2も蒸気の供給を停止している。
【0059】
一方、図6(b)の蓄熱装置5は、蓄熱された熱をリボイラ13に放熱することで、起動補助用の熱をリボイラ13に供給する。蓄熱装置5は例えば、蓄熱された熱により熱媒を加熱し、加熱された熱媒をリボイラ13に供給する。この熱媒は例えば、排熱回収ボイラ2からリボイラ13に蒸気を供給するための流路に供給される。このように、CCS設備4の起動が蓄熱装置5により補助されている場合には、蓄熱装置5は放熱運転を行う。放熱運転中には、蓄熱装置5への熱供給は行われない。さらに、蓄熱装置5は、CCS設備4内の吸収液の温度を保持する必要がある場合にも、放熱運転を行う。
【0060】
図7は、図2に示す発電システムの動作を説明するための模式図である。
【0061】
図7(a)は、図6(a)と同様に、発電設備1が定格運転中である場合の発電システムを示している。図7(a)の蓄熱装置5は、排熱回収ボイラ2から抽気された蒸気を供給され、蒸気の熱を蓄熱する。排熱回収ボイラ2から抽気された蒸気は、蓄熱装置5およびリボイラ13に供給される。図7(b)は、図6(b)と同様に、CCS設備4の起動が蓄熱装置5により補助されている場合の発電システムを示している。
【0062】
図8は、図3に示す発電システムの動作を説明するための模式図である。
【0063】
図8(a)は、図6(a)や図7(b)と同様に、発電設備1が定格運転中である場合の発電システムを示している。図8(a)の蓄熱装置5は、排熱回収ボイラ2と吸収塔11との間の流路から排ガスを供給され、排ガスの熱を蓄熱する。図8(b)は、図6(b)や図7(b)と同様に、CCS設備4の起動が蓄熱装置5により補助されている場合の発電システムを示している。
【0064】
なお、蓄熱装置5に供給する排ガスまたは蒸気を取得する場所は、蓄熱運転時における蓄熱材の温度や、蒸気タービン3での蒸気の需要量を考慮して決定される。例えば、蓄熱運転時の蓄熱材の温度を高くしたい場合には、蓄熱装置5は、発電設備1と排熱回収ボイラ2との間の流路から排ガスを供給されることが望ましい。一方、蓄熱運転時の蓄熱材の温度を低くしたい場合には、蓄熱装置5は、排熱回収ボイラ2と吸収塔11との間の流路から排ガスを供給されることが望ましい。
【0065】
ある蓄熱材が蓄熱装置5用に採用されるか否かは、例えば、その蓄熱材が、再生塔12における吸収液の再生温度(再生塔温度)に当たる温度の熱媒を供給可能な特性を有するか否かに基づいて決定される。このような特性を有する蓄熱材が複数存在する場合には、コストが最も低い蓄熱材が採用されることが多い。なお、最適な蓄熱材は、CCS設備4で使用される吸収液の特性によっても異なる。
【0066】
図9は、第1実施形態の発電システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【0067】
発電設備1が化石燃料焚きの小型発電設備である場合、発電設備1は、ピーク対応の運転を行うと予測される。そのため、発電設備1が起動してから停止するまでの時間、すなわち、蓄熱装置5への熱供給が行われる時間は、数時間であると想定される。発電設備1の起動頻度は、1日に数回起動する頻度、1日に1回起動する頻度、2~3日に1回起動する頻度、週に1回起動する頻度などになることが考えられる。
【0068】
発電設備1が停止してから起動するまでの時間を、発電設備1の停止時間と呼ぶ。発電設備1の停止時間の長さは、発電設備1の起動頻度などに応じて変化する。また、再生塔12が停止してから、再生塔12の温度が大気温度になるまでの時間を、再生塔12の放熱時間と呼ぶ。再生塔12の放熱時間は、例えば、再生塔12の設計値に基づいて計算することが可能である。また、再生塔12の放熱時間は、再生塔12の容量、初期温度、および外気温度に基づいて再生塔12の放熱量の時間変化を計算することを通じて予測することが可能である。
【0069】
図9のフローでは、発電設備1が起動すると(ステップS1)、蓄熱装置5への熱供給が開始される(ステップS2)。蓄熱装置5への熱供給は、その後に発電設備1が停止するまで継続される。
【0070】
発電設備1が停止すると(ステップS3)、制御部6は、発電設備1の次回起動時間を決定または予測する(ステップS4)。制御部6はさらに、決定または予測された次回起動時間に基づいて、発電設備1の今回の停止から次回の起動までの停止時間を算出する。次に、制御部6は、算出された停止時間を用いて、発電設備1の停止時間と再生塔12の放熱時間とを比較する(ステップS5)。
【0071】
制御部6は、発電設備1の停止時間が再生塔12の放熱時間よりも長いと判断した場合には、CCS設備4の停止中にCCS設備4の事前暖気を行う(ステップS6)。すなわち、制御部6は、発電システムの動作モードを事前暖気モードに設定する。CCS設備4の事前暖気は、発電設備1が起動するまで継続される(ステップS8)。すなわち、発電設備1の待機中にCCS設備4の事前暖気が行われる。
【0072】
一方、制御部6は、発電設備1の停止時間が再生塔12の放熱時間以下であると判断した場合には、CCS設備4の停止中にCCS設備4をホットスタンバイの状態にする(ステップS7)。すなわち、制御部6は、発電システムの動作モードをホットスタンバイモードに設定する。CCS設備4は、発電設備1が起動するまでホットスタンバイの状態に保たれる(ステップS8)。
【0073】
なお、CCS設備4の事前暖気が、発電設備1の起動までに完了しない場合があることも想定される。この場合、発電設備1の起動後も、CCS設備4の暖気が継続される。その結果、発電設備1が発電を開始しても、CCS設備4は二酸化炭素の回収を開始できないことになる。しかしながら、すでにCCS設備4の事前暖気が行われているため、発電設備1の起動後のCCS設備4の暖気は、短時間で完了することが可能となる。このように、本実施形態によれば、CCS設備4の事前暖気が発電設備1の起動までに完了しても完了しなくても、CCS設備4による二酸化炭素の回収量を向上させることが可能となる。
【0074】
なお、ステップS5での判断は、再生塔12の放熱時間以外の再生塔12の放熱特性に基づいて行われてもよい。例えば、ステップS5では、発電設備1の停止時間以外の発電設備1の特徴量と、再生塔12の放熱時間以外の再生塔12の特徴量とを比較してもよい。
【0075】
以上のように、本実施形態の制御部6は、発電設備1の停止から起動までの間に、CCS設備4の事前暖気が行われるように、または、CCS設備4がホットスタンバイの状態になるように、蓄熱装置5からCCS設備4への熱の供給を制御する。よって、本実施形態によれば、CCS設備4を好適に暖気することが可能となる。例えば、発電設備1の起動後の暖気を不要とすることや、発電設備1の起動後の暖気に要する時間を短縮することが可能となる。
【0076】
なお、本実施形態の制御部6は、事前暖気に関する制御と、ホットスタンバイに関する制御の両方を行うが、代わりに、事前暖気に関する制御と、ホットスタンバイに関する制御のいずれか一方のみを行ってもよい。また、本実施形態の事前暖気やホットスタンバイは、蓄熱装置5からの熱を用いて実現されるが、その他の熱供給部からの熱を用いて実現されてもよい。このような熱供給部の例として、電気ヒータなどが挙げられる。例えば、本実施形態の事前暖気やホットスタンバイは、蓄熱装置5および電気ヒータを用いて行ってもよいし、蓄熱装置5または電気ヒータを用いて行ってもよい。前者の場合には、蓄熱装置5により足りない熱を、電気ヒータにより補ってもよい。
【0077】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態の発電システムの構成例を示す模式図である。
【0078】
図10の発電システムは、図1の発電システムから排熱回収ボイラ2や蒸気タービン3を除去した構成を有している。よって、図10の発電システムでは、吸収塔11が、発電設備1から排ガスを直接供給される。さらには、蓄熱装置5やリボイラ13が、発電設備1と吸収塔11との間の流路から排ガスを供給される。よって、リボイラ13は、この排ガスからの熱を用いて、二酸化炭素の分離に必要な熱を再生塔12に供給する。
【0079】
図11は、第2実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
【0080】
図11の発電システムは、図10の発電システムに対し熱交換器21を追加した構成を有している。図11の発電システムでは、蓄熱装置5やリボイラ13が、発電設備1と吸収塔11との間の流路から、熱交換器21を介して排ガスを供給される。熱交換器21は、排ガスと熱媒との間で熱交換を行い、排ガスの温度を低下させる。蓄熱装置5やリボイラ13は、熱交換により温度が低下した排ガスを供給される。一方、熱交換により温度が上昇した熱媒は、この熱媒の熱を利用する機器に供給されてもよい。この機器は、発電システムの内部にあっても外部にあってもよい。
【0081】
図10図11のリボイラ13は、排ガスと吸収液との間で熱交換を行う。吸収液の種類によっては、高温の排ガスと吸収液との間で熱交換が行われると、吸収液の劣化や変性が起こるおそれがある。同様に、蓄熱材の種類によっては、高温の排ガスが蓄熱材に供給されると、蓄熱材の劣化や変性が起こるおそれがある。そのため、図11の発電システムは、熱交換器21により温度が低下した排ガスを蓄熱装置5やリボイラ13に供給する。これにより、吸収液や蓄熱材の劣化や変性を抑制することが可能となる。
【0082】
本実施形態によれば、排熱回収ボイラ2や蒸気タービン3のないシンプルな発電システムで、CCS設備4を好適に暖気することが可能となる。
【0083】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態の発電システムの構成例を示す模式図である。
【0084】
図12の発電システムは、図1の発電システムに対し反応器31を追加した構成を有している。反応器31は、再生塔12から排出された再生塔排出ガスを供給され、再生塔排出ガス中の二酸化酸素を用いて発熱反応を生じさせる。反応器31は、この発熱反応により生じた反応熱をリボイラ13に供給する。この場合、リボイラ13は、反応器31から供給された熱を用いて、二酸化炭素の分離に必要な熱を再生塔12に供給する。なお、反応器31は、蒸気と分離された後の再生塔排出ガスを供給されてもよい。
【0085】
例えば、発電設備1、排熱回収ボイラ2、蒸気タービン3、およびCCS設備4を備える既設の発電システムに蓄熱装置5を導入する場合、CCS設備4が利用可能な排熱の熱量が減少してしまう。この場合、この発電システムに反応器31を導入することで、上記の熱量の減少を補償することが可能となる。これにより、CCS設備4に十分な熱を供給しつつ、蓄熱装置5に熱を蓄熱することが可能となる。
【0086】
反応器31で利用可能な反応は、例えば二酸化炭素とエチレンオキシドとを用いたエチレンカーボネート合成反応である。この反応は反応熱が大きく、排ガス中の二酸化炭素の濃度によっては、二酸化炭素の分離に必要な熱エネルギーと同程度の熱エネルギーを発生することができる。
【0087】
図13は、第3実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
【0088】
図13の発電システムは、図2の発電システムに対し反応器31を追加した構成を有している。図13の反応器31の動作は、図12の反応器31の動作と同様である。
【0089】
図14は、第3実施形態の発電システムの別の構成例を示す模式図である。
【0090】
図14の発電システムは、図3の発電システムに対し反応器31を追加した構成を有している。図14の反応器31の動作は、図12の反応器31の動作と同様である。
【0091】
本実施形態によれば、CCS設備4に十分な熱を供給しつつ、蓄熱装置5に熱を蓄熱することが可能となる。
【0092】
(第4実施形態)
図15は、第4実施形態の蓄熱装置5の構成例を示す模式図である。
【0093】
図15の蓄熱装置5は、例えば図1の発電システム内に設けられている。図15では、蓄熱装置5が、蓄熱材を含む蓄熱槽41を備えている。蓄熱装置5に供給された排ガスの熱は、蓄熱槽41内の蓄熱材により蓄熱される。蓄熱材は例えば、潜熱・顕熱蓄熱材であり、具体的には、岩石、加圧水、エリスリトールなどである。
【0094】
本実施形態の蓄熱装置5は、例えば発電設備1が1日に1回以上起動する場合に有効である。本実施形態では、蓄熱装置5が、熱A1の供給流路と、熱媒A2の流通通路とを備えている。蓄熱槽41は、蓄熱材と流体との間で熱交換できる構造を有している。蓄熱運転時には、熱A1を有する排ガスが蓄熱槽41に供給され、蓄熱材と排ガスとの間の熱交換によって熱A1が蓄熱材に蓄熱される。放熱運転時には、熱媒A2が蓄熱槽41に供給され、熱媒A2が蓄熱槽41を通過する際に、蓄熱材と熱媒A2との間の熱交換によって蓄熱材の熱A1が熱媒A2に放熱される。蓄熱槽41を通過した熱媒A2は、リボイラ13に排出され、リボイラ13に熱を供給する。熱媒A2は、例えば蒸気である。
【0095】
図16は、第4実施形態の蓄熱装置5の別の構成例を示す模式図である。
【0096】
図16の蓄熱装置5は、図15の蓄熱装置5に電気ヒータ42を追加した構成を有している。図16では、放熱運転時に蓄熱槽41で加熱された熱媒A2が、さらに電気ヒータ42で加熱される。これにより、蓄熱槽41を通過した熱媒A2の温度が十分に高くない場合に、熱媒A2の温度を電気ヒータ42により十分に高めることが可能となる。なお、図16の蓄熱装置5は、電気ヒータ42の代わりにヒートポンプを備えていてもよい。
【0097】
本実施形態によれば、上記のような蓄熱槽41を用いて蓄熱装置5を構成することが可能となる。
【0098】
なお、顕熱・潜熱蓄熱材は、時間の経過に伴い蓄熱量が減少する。よって、顕熱・潜熱蓄熱材は、発電設備1が1日に平均1回以下起動する場合には、リボイラ13への熱供給用に十分な熱エネルギーを確保できない場合がある。その場合、顕熱・潜熱蓄熱材の代わりに後述の化学蓄熱材を用いてもよい。
【0099】
(第5実施形態)
図17は、第5実施形態の蓄熱装置5の構成例を示す模式図である。
【0100】
図17の蓄熱装置5は、図15の蓄熱装置5にガス供給装置51を追加した構成を有している。図17にて、蓄熱槽41内の蓄熱材は例えば、化学蓄熱材であり、具体的には、金属酸化物、ゼオライト、塩化物などである。
【0101】
本実施形態の蓄熱装置5は、例えば発電設備1が2~3日に1回起動する場合に有効である。本実施形態では、蓄熱装置5が、熱A1の供給流路と、熱媒A2の流通通路と、反応性蒸気A3の供給流路とを備えている。蓄熱槽41は、蓄熱材と流体との間で熱交換できる構造を有している。蓄熱運転時には、熱A1を有する排ガスが蓄熱槽41に供給され、蓄熱材と排ガスとの間の熱交換によって熱A1が蓄熱材に蓄熱される。放熱運転時には、熱媒A2が蓄熱槽41に供給され、熱媒A2が蓄熱槽41を通過する際に、蓄熱材と熱媒A2との間の熱交換によって蓄熱材の熱A1が熱媒A2に放熱される。また、放熱運転時には、反応性蒸気A3がガス供給装置51から蓄熱槽41に供給され、反応性蒸気A3と蓄熱材との間で発熱反応が起こる。この発熱反応により生じた熱は、蓄熱材を加熱し、蓄熱材から熱媒A2に放熱される。蓄熱槽41を通過した熱媒A2は、リボイラ13に排出され、リボイラ13に熱を供給する。熱媒A2は、例えば蒸気である。よって、図17では、熱媒A2の流通通路が、反応性蒸気A3の供給流路と連結されている。これにより、反応性蒸気A3の一部または全部を、熱媒A2で賄うことが可能となる。
【0102】
図18は、第5実施形態の蓄熱装置5の別の構成例を示す模式図である。
【0103】
図18の蓄熱装置5は、図17の蓄熱装置5に電気ヒータ42を追加した構成を有している。図18の蓄熱装置5は、電気ヒータ42の代わりにヒートポンプを備えていてもよい。図18の電気ヒータ42の動作は、図16の電気ヒータ42の動作と同様である。
【0104】
本実施形態によれば、上記のような蓄熱槽41およびガス供給装置51を用いて蓄熱装置5を構成することが可能となる。
【0105】
(第6実施形態)
図19は、第6実施形態の蓄熱装置5の構成例を示す模式図である。
【0106】
図19の蓄熱装置5は、図17の蓄熱装置5と同様に、図15の蓄熱装置5にガス供給装置51を追加した構成を有している。図19にて、蓄熱槽41内の蓄熱材は例えば、化学蓄熱材であり、具体的には、塩化マグネシウム、塩化マンガンなどである。
【0107】
本実施形態の蓄熱装置5は、例えば発電設備1が2~3日に1回起動する場合に有効である。本実施形態では、蓄熱装置5が、熱A1の供給流路と、熱媒A2の流通通路と、反応性アンモニアA4の供給流路とを備えている。蓄熱槽41は、蓄熱材と流体との間で熱交換できる構造を有している。蓄熱運転時には、熱A1を有する排ガスが蓄熱槽41に供給され、蓄熱材と排ガスとの間の熱交換により熱A1が蓄熱材に蓄熱される。放熱運転時には、熱媒A2が蓄熱槽41に供給され、熱媒A2が蓄熱槽41を通過する際に、蓄熱材と熱媒A2との間の熱交換により蓄熱材の熱A1が熱媒A2に放熱される。また、放熱運転時には、反応性アンモニアA4がガス供給装置51から蓄熱槽41に供給され、反応性アンモニアA4と蓄熱材との間で発熱反応が起こる。この発熱反応により生じた熱は、蓄熱材を加熱し、蓄熱材から熱媒A2に放熱される。蓄熱槽41を通過した熱媒A2は、リボイラ13に排出され、リボイラ13に熱を供給する。熱媒A2は、例えば蒸気である。本実施形態のガス供給装置51は、反応性アンモニアA4以外の反応性ガスを蓄熱槽41に供給してもよい。
【0108】
図20は、第6実施形態の蓄熱装置5の別の構成例を示す模式図である。
【0109】
図20の蓄熱装置5は、図19の蓄熱装置5に電気ヒータ42を追加した構成を有している。図20の蓄熱装置5は、電気ヒータ42の代わりにヒートポンプを備えていてもよい。図20の電気ヒータ42の動作は、図16の電気ヒータ42の動作と同様である。
【0110】
本実施形態によれば、上記のような蓄熱槽41およびガス供給装置51を用いて蓄熱装置5を構成することが可能となる。
【0111】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムおよび方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムおよび方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0112】
1:発電設備、2:排熱回収ボイラ、3:蒸気タービン、
4:CCS設備、5:蓄熱装置、6:制御部、
11:吸収塔、12:再生塔、13:リボイラ、21:熱交換器、
31:反応器、41:蓄熱槽、42:電気ヒータ、51:ガス供給装置
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