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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172432
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】吊り金具用脱落防止金具
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20241205BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20241205BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16B2/12 B
F16B1/00 A
E04B9/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090149
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 真也
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA30
3J022EA41
3J022EB04
3J022EC02
3J022ED02
3J022FA01
3J022FB06
3J022FB16
3J022GA12
3J022GB82
(57)【要約】
【課題】構築物の設備工事において、配管や設備機器、電気器具等を設置するための吊りボルトを支持する吊り金具を、溝形鋼やアングル材等の形鋼材のフランジ部に取付ける際、吊り金具の締付けボルトが振動等により緩んでも形鋼材から脱落するのを防ぐことができ、地震時の水平方向への荷重に対して変形することのない脱落防止金具を提供することを目的とする。
【解決手段】形鋼材に係止する係止体10と、該係止体の透孔に挿通する連結ボルト40と、前記係止体とで吊り金具を挟持する受止体50と、ナット60を備え、前記係止体は、形鋼材に係止する係止片11と、係止片から屈曲して延伸する固定片12からなり、前記連結ボルトの軸部42を、前記固定片と前記形鋼材の水平フランジの水平面とで挟持することができる位置に、前記係止片の透孔51を設けることで、前記連結ボルトの頭部41が、前記形鋼材の角部に係止することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直フランジの正面から水平フランジが延出する形鋼材の該水平フランジを金具本体の開口に挿入して、締付けボルトにより上下方向から挟持して固定する吊り金具の抜出しを防止する吊り金具用脱落防止金具であって、
前記吊り金具に取付ける受止体と、前記形鋼材の垂直フランジに係止する係止体と、該受止体及び該係止体に挿通して緊締する連結ボルトとナットと、を備え、
前記係止体は、前記垂直フランジの背面に係止する係止片と、該係止片から略L型に屈曲してその端部が前記水平フランジに取付けた吊り金具の開口端部に当接する固定片とを有し、
前記係止片は、前記連結ボルトを挿通した際に、該連結ボルトの軸部が前記固定片の上面に載置した状態となる位置に透孔を有することを特徴とする吊り金具用脱落防止金具。
【請求項2】
前記係止片は、前記水平フランジの下面に当接して回転を防止する突出片を有することを特徴とする請求項1に記載の吊り金具用脱落防止金具。
【請求項3】
前記固定片の端部から屈曲して前記吊り金具の開口端部に当接する支持片を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の吊り金具用脱落防止金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築物の設備工事において、配管や設備機器、電気器具等を吊設するための吊りボルトを支持する吊り金具を溝形鋼やアングル材等の形鋼材の水平フランジに取付けた際、繰り返しの振動等による締付けボルトの緩みや、地震等による水平力の負荷により水平フランジからの抜出しを防止する脱落防止金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種、形鋼材の水平フランジに開口部分を挿入して、開口の一方に設けた締付けボルトにより上下方向から水平フランジを挟持して固定する吊り金具の脱落防止金具として以下に挙げるものが開示されていた。
形鋼材に係止する係止体と、水平フランジに取付けた吊り金具に連結する連結体と、これら係止体と連結体とに挿通してナットによりネジ止め緊締する連結ボルトからなり、連結ボルトは係止体の係止片に設けた透孔に挿通した金具(特許文献1)。
また、上記と同様の構成であるものの、係止体となる部分において、連結ボルトを挿通する透孔が形鋼の背面への係止部分より下方に設けられた金具(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3046369号公報
【特許文献2】意匠登録第1457128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吊り金具に対して、水平フランジから抜出す方向に荷重が掛かるため、上記の脱落防止金具の構成は、その荷重に対する反力を、吊り金具の背面に連結する連結体から連結ボルトを介して形鋼材の背面に係止する係止体において負担する。特許文献1のように連結ボルトの荷重を係止片で受ける場合、係止片が前記荷重により変形しないように相応の強度を有する板厚の材料の選定が必要である。また、特許文献2のように、係止片に対して連結ボルトの位置が離れて荷重方向が偏心状態である場合、係止片に曲げ応力が生じて変形を増長させるので、前記と同様に荷重により変形しないように相応の強度を有する板厚の材料の選定が必要になると共に、係止片を形鋼材の背面に対して斜めに当接させて曲げ応力に抗するような形態にするための加工を施す必要がある。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたもので、その目的は、溝形鋼やアングル材等の形鋼材の水平フランジから吊り金具が抜出す方向に掛かる荷重に対して、加工工程の少ない簡易的な形状であっても必要な強度を有する薄鋼板を用い、軽量で取り扱い易い脱落防止金具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための脱落防止金具は、垂直フランジの正面から水平フランジが延出する形鋼材の該水平フランジを金具本体の開口に挿入して、締付けボルトにより上下方向から挟持して固定する吊り金具の抜出しを防止する吊り金具用脱落防止金具であって、
前記吊り金具に取付ける受止体と、前記形鋼材の垂直フランジに係止する係止体と、該受止体及び該係止体に挿通して緊締する連結ボルトとナットと、を備え、
前記係止体は、前記垂直フランジの背面に係止する係止片と、該係止片から略L型に屈曲してその端部が前記水平フランジに取付けた吊り金具の開口端部に当接する固定片とを有し、
前記係止片は、前記連結ボルトを挿通した際に、該連結ボルトの軸部が前記固定片の上面に載置した状態となる位置に透孔を有することを要旨とする。
脱落防止金具について、前記係止片は、前記水平フランジ下面に当接して回転を防止する突出片を有してもよい。
脱落防止金具について、前記固定片の端部から屈曲して前記吊り金具の開口端部に当接する支持片を設けてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、形鋼材の垂直フランジに係止する係止体の係止片に、連結ボルトが挿通した際に、連結ボルトの軸部が固定片の上面に載置した状態となる位置に透孔を設けているので、係止体の形鋼材への配置に際し、連結ボルトを係止片の透孔に挿通した状態で連結ボルトの軸部を水平フランジの下面に当接するように配置することができる。連結ボルトの頭部は軸部より大径なので、このように配置されることにより、頭部の上側は係止片を介して垂直フランジに重なった状態となると共に、下側は固定片に重なった状態となる。
したがって、水平フランジから抜出す方向に係る荷重を垂直フランジに負担させることができる。係止片には荷重による曲げ応力がほぼ掛からないので、係止片が負担する荷重は極めて少なくなり、求められる強度を大きく削減することができる。すなわち、係止体を、薄鋼板により略L字形の加工の少ない簡易的な形状にしても効率よく荷重を負担することができる。
係止片に形鋼材の水平フランジ下面に当接して回転を防止する突出片を設けることで、ナットを回転して締付ける際に連結ボルトを介して回転しようとする係止体の共回りを防ぐことで、取付け作業が容易になる。
固定片の端部から屈曲して吊り金具の開口端部に当接する支持片を設けたことで、吊り金具への当接面が広くなり安定した取付けができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態1の分解状態の説明図である。
図3】本発明の実施形態1を溝形鋼の側面から見た使用状態図である。
図4】本発明の実施形態1を溝形鋼の背面から見た使用状態図である。
図5】本発明の実施形態2の係止体を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態3の係止体を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態3を溝形鋼の側面から見た使用状態図である。
図8】本発明の実施形態3を溝形鋼の背面から見た使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吊り金具用脱落防止金具の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0010】
本発明の吊り金具用脱落防止金具は、形鋼材に取り付けられる吊り金具の脱落を防止するための金具である。形鋼材は、水平方向に延びる水平フランジB1と、水平フランジB1に対して垂直方向に延びる垂直フランジB2とを有し、垂直フランジB2の正面側から水平フランジB1が延出する鋼材である。形鋼材としては、例えば、山形鋼や溝形鋼等を適用可能である。吊り金具Aは、本体の正面側に開口が設けられており、その開口に形鋼材の水平フランジB1を挿入し、締付けボルトA1により上下方向から挟持して固定する。つまり、吊り金具Aと形鋼材は、互いに正面側を内側にして向かい合わせるとともに、背面側を外側に向けて連結固定される。
【0011】
(実施形態1)
図1、2は実施形態1を示す。本実施形態では、形鋼材として、垂直フランジB2の上下両端部において、正面側から水平方向に水平フランジB1が延びる溝形鋼Bを用いている。実施形態1の吊り金具用脱落防止金具は、吊り金具Aに取付ける受止体50と、溝形鋼Bの垂直フランジB2に係止する係止体10と、受止体50及び係止体10に挿通して緊締する連結ボルト40とナット60と、を備える。係止体10と受止体50は、溝形鋼B及び吊金具Aを挟み込むようにその両側に配置され、連結ボルト40によって連結される。
【0012】
係止体10は、薄鋼板を略L字状に屈曲して係止片11と固定片12とを形成し、前記係止片11に透孔13を有する。透孔13の位置は、連結ボルト40が挿通した際に該連結ボルト40の軸部42が前記固定片12の上面に載置される高さである。本実施形態において、透孔13は、係止片11と固定片12との間の屈曲部を含む係止片11の端部に形成される。
【0013】
50は受止体であり、薄鋼板からなる。受止体50は、透孔51を形成した受け片52と、その両端を略L型に屈曲させた折曲片53、53を有する。受止体50は、吊り金具Aの開口の反対側面である背面に外嵌した状態で配置され、連結ボルト40を透孔51に挿通させて外側からナット60を締付けることができる。本実施形態において、受け片52は、吊金具A及び溝形鋼Bを間に挟んで係止片11に対向する。
【0014】
図3、4は、実施形態1を吊り金具Aに取付けた状態である。
吊り金具Aは、水平方向に延びる溝形鋼Bの水平フランジB1を開口に挿入し、締付ボルトA1の締付けにより上下方向から挟持して固定されている。
係止体10の透孔13に連結ボルト40を挿入し、係止片11が溝形鋼Bの垂直フランジB2の背面に係止した状態で前記連結ボルト40の先端を前記吊り金具の背面に配置した受止体50の透孔51に挿通させて外側からナット60を締付ける。
その際、連結ボルト40の軸部42を溝形鋼Bの水平フランジB1の下面に当接するように係止体10を上方へ押し付けることで、図4中の斜線部に示すように、前記連結ボルト40の頭部41の上側が係止片11を介して垂直フランジB2に重なった状態となる。
ナット60の締付けにより、係止体10は吊り金具Aの方向に引っ張られて、溝形鋼Bの垂直フランジB2に当接する係止片11と、吊り金具Aの開口側の端部に当接する固定片12が反力の支点となり、安定して固定することができる。
【0015】
(実施形態2)
図5は、実施形態2の係止体を示す。以下、実施形態2の吊り金具用脱落防止金具については、上記実施形態1と異なる係止体20のみの説明とし、共通部分の説明は省略する。実施形態2の係止体20は、実施形態1と同様に薄鋼板を略L字状に屈曲して、係止片21と固定片22とを形成し、前記係止片21には、連結ボルト40の軸部42が前記固定片22の上面に載置される高さ位置に透孔23を形成する。
前記係止片21には、固定片22の延出方向に向かって突出し、且つ、前記透孔23の上端とほぼ同じ高さ位置にその上端が形成された突出片24を設ける(図5(ロ)参照)。
係止体20と受止体50とに連結ボルト40を挿通してナット60を回転して締付ける際に、その回転に起因して係止体20が共回り(回転)するが、突出片24が溝形鋼Bの水平フランジB1の下面に当接することで共回りを防ぐことができ、係止体20を水平に取り付けることができる。
また、透孔23に挿通する連結ボルト40の軸部42の上端と、前記突出片24の上端とがほぼ同じ高さとなるので、係止体20を溝形鋼Bに宛がう際に、両者を溝形鋼Bの水平フランジB1の下面に当接すれば係止体20を溝形鋼B対して水平に配置する目安とすることができる。
突出片は固定片の端部を折り曲げて上方に突出させ、その上端が前記透孔13の上端部とほぼ同じ高さ位置に形成された略L型に形成してもよい(図示省略)。
【0016】
(実施形態3)
図6は、実施形態3の係止体を示す。以下、実施形態3の吊り金具用脱落防止金具については、上記実施形態2と異なる係止体30のみの説明とし、共通部分の説明は省略する。実施形態3の係止体30は、実施形態2と同様に薄鋼板を略L字状に屈曲して、係止片31と固定片32とを形成する。係止片31には、連結ボルト40の軸部42が前記固定片32の上面に載置される高さ位置に透孔33を形成し、前記係止片31には内側に向かって突出し、且つ、前記透孔33の上端とほぼ同じ高さ位置にその上端が形成された突出片24を設ける(図6(ロ)参照)。
前記固定片32には端部から下方に延出するように折り曲げて形成した支持片35を設ける。支持片35により吊り金具Aの開口端部に広く当接することができるので、溝形鋼Bの垂直フランジB2に当接する係止片31と共に、反力の支点としてより安定して固定することができる。
【0017】
図7、8は、実施形態3を吊り金具Aに取付けた状態であり、実施形態1で説明した通り、吊り金具Aは、水平方向に延びる溝形鋼Bの水平フランジB1に開口を挿入し、締付ボルトA1の締付けにより上下方向から挟持して固定された状態で、係止体30の透孔33に連結ボルト40を挿入し、係止片31が溝形鋼Bの垂直フランジB2の背面に当接した状態で前記連結ボルトの40の端部を前記吊り金具の背面に配置した受止体50の透孔51に挿通させて外側からナット60を締付ける。
その際、連結ボルト40が溝形鋼Bの水平フランジB1の下面に当接するように係止体30を上方へ押し付けることで、図8中の斜線部に示すように、連結ボルト40の頭部41の上側が係止片11を介して垂直フランジB2に重なった状態とする。
ナット60を回転させて締付ける際には、突出片34が溝形鋼Bの水平フランジB1の下面に当接することで係止体30との共回りを防ぐことができ、係止体30を水平に取り付けることができる。
ナット60の締付けにより係止体30は吊り金具Aの方向に引っ張られて、溝形鋼Bの垂直フランジB2に当接する係止片31と、吊り金具Aの開口端面に当接する支持片35が反力の支点となり、より安定して固定することができる。
透孔33の周辺において外側に突出する複数の突起36を、連結ボルト40の六角状の頭部41の6つの側面のうち少なくとも2つの側面と対向する位置に突起36を形成してもよい。突起36を形成することで、ナット60を回転させて締付ける際に、突起36が頭部41に当接して回転を規制し、連結ボルト40が共回りするのを防ぐことができ、より取付けの手間がなくなり容易になる。
前記実施形態1~3として示した係止体10、20、30は薄鋼鈑をプレス加工により一体的に形成することが望ましい。
【符号の説明】
【0018】
10、20、30 係止体
11、21、31 係止片
12、22、32 固定片
13、23、33 透孔
24、34 突出片
35 支持片
36 突起
40 連結ボルト
41 頭部
42 軸部
50 受止体
51 透孔
52 受け片
53 折曲片
60 ナット
A 吊り金具
A1 締付けボルト
B 溝形鋼
B1 水平フランジ
B2 垂直フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8