(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172434
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光モジュール及び光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241205BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20241205BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H05K1/02 J
G02F1/01 F
H05K1/02 C
H05K1/14 C
H05K1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090151
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2K102
5E338
5E344
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA03
2K102BA40
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA06
2K102CA07
2K102DA04
2K102DB05
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA03
2K102EA09
2K102EB16
2K102EB22
2K102EB30
5E338AA02
5E338AA12
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5E338BB63
5E338BB75
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5E338EE11
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5E344AA02
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5E344BB02
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5E344CC09
5E344DD02
5E344EE06
5E344EE16
(57)【要約】
【課題】インピーダンス整合を維持しながら、FPCの配線パターンを補強できる。
【解決手段】光モジュールは、第1の部品と、第2の部品と、第1の部品と第2の部品とを電気的に接続するFPCとを有する。FPCは、信号用パッドと、接地用パッドと、信号線と、接地パターンと、第1の突出部を有する第1のカバーレイと、第2の突出部を有する第2のカバーレイと、を有する。第1の突出部は、第1の面上に形成され、FPCの信号線が配置される範囲を覆い、信号用パッドが配置される位置において、信号線が配置される範囲よりもFPCの第1の部品側の端部へ向かって突出した。第2の突出部は、第2の面上に形成され、信号用パッドが配置される位置において、FPCの第1の部品側の端部へ向かって突出し、少なくとも信号用パッドと対向する範囲の接地パターンを覆う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品と、第2の部品と、前記第1の部品と前記第2の部品とを電気的に接続するフレキシブル基板とを有し、
前記フレキシブル基板は、
少なくとも一部が前記第1の部品に固着される信号用パッドと、
少なくとも一部が前記第1の部品に固着される接地用パッドと、
前記フレキシブル基板の第1の面に形成され、前記信号用パッドと前記第2の部品とを接続し、前記信号用パッドよりも幅が狭い信号線と、
前記第1の面の裏面である第2の面に形成される接地パターンと、
前記第1の面上に形成され、前記フレキシブル基板の前記信号線が配置される範囲を覆い、前記信号用パッドが配置される位置において、前記信号線が配置される範囲よりも前記フレキシブル基板の前記第1の部品側の端部へ向かって突出した第1の突出部を有する第1のカバーレイと、
前記第2の面上に形成され、前記信号用パッドが配置される位置において、前記フレキシブル基板の前記第1の部品側の端部へ向かって突出し、少なくとも前記信号用パッドと対向する範囲の前記接地パターンを覆う第2の突出部を有する第2のカバーレイと、
を有することを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記フレキシブル基板は、
前記第1の面に形成され、前記信号線と前記信号用パッドとの間をつなぎ、幅がテーパ状に変化するテーパ状信号線を有し、
前記第1の突出部は、
前記信号線と少なくとも一部の前記テーパ状信号線とを覆うことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記フレキシブル基板と接続する基板を有し、
前記基板は、
前記フレキシブル基板の前記信号用パッドと接続する信号電極と、
前記フレキシブル基板の前記接地用パッドと接続する接地電極と、を有し、
前記接地電極の前記第2の部品側の先端は、
前記信号電極の前記第2の部品側の先端に比較して前記第2の部品に近い方に位置することを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記第1のカバーレイの外面形状と前記第2のカバーレイの外面形状とは、
同一形状であって、前記第1のカバーレイと前記第2のカバーレイとを接合することでカバーレイを構成することを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記接地パターンの前記第1の部品側の先端は、
前記テーパ状信号線と前記信号線とが接続する接続部位に比較して前記信号用パッドに近い方に位置することを特徴とする請求項2に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記信号用パッドを貫通する複数の第1のスルーホールと、
前記接地用パッドを貫通する複数の第2のスルーホールと、を有し、
前記第2のスルーホールの内、前記第1の部品側の端部から最も離れた第2のスルーホールは、
前記第1のスルーホールに比較して前記第1の部品側の端部から遠い方に位置することを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記接地用パッドの幅は、
前記信号用パッドの幅に比較して広くする構造にしたことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記接地用パッドは、
前記第1の部品側の端部から前記第2の部品側に向けて前記接地用パッドと前記信号用パッドとの間の間隔が連続的に近くなるように前記接地用パッドの幅を広くする構造を有することを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記信号用パッドを貫通する複数の第1のスルーホールと、
前記接地用パッドを貫通する複数の第2のスルーホールと、を有し、
前記第2のスルーホールの内、前記第1の部品側の端部から最も離れた第2のスルーホールは、
前記第1のスルーホールに比較して前記第1の部品側の端部から遠い方に位置することを特徴とする請求項8に記載の光モジュール。
【請求項10】
基板と、
前記基板に搭載され、光信号の送受信に係る処理を実行する処理部品と、
前記基板と前記処理部品とを電気的に接続するフレキシブル基板とを有する光トランシーバであって、
前記フレキシブル基板は、
少なくとも一部が前記基板に固着される信号用パッドと、
少なくとも一部が前記基板に固着される接地用パッドと、
前記フレキシブル基板の第1の面に形成され、前記信号用パッドと前記処理部品とを接続し、前記信号用パッドよりも幅が狭い信号線と、
前記第1の面の裏面である第2の面に形成される接地パターンと、
前記第1の面上に形成され、前記フレキシブル基板の前記信号線が配置される範囲を覆い、前記信号用パッドが配置される位置において、前記信号線が配置される範囲よりも前記フレキシブル基板の前記基板側の端部へ向かって突出した第1の突出部を有する第1のカバーレイと、
前記第2の面上に形成され、前記信号用パッドが配置される位置において、前記フレキシブル基板の前記基板側の端部へ向かって突出し、少なくとも前記信号用パッドと対向する範囲の前記接地パターンを覆う第2の突出部を有する第2のカバーレイと、
を有することを特徴とする光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及び光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源において発生する光を変調する光変調器には、マッハツェンダ干渉計が用いられることがある。このような光変調器においては、平行な光導波路に沿って信号電極及び接地電極が設けられる。近年では、光変調方式が多様化しているため、光変調器は、複数のマッハツェンダ干渉計を備えることが多くなっている。この場合、複数のマッハツェンダ干渉計を1チップに集積することにより、光変調器のサイズを小さくすることが可能となる。
【0003】
複数のマッハツェンダ干渉計を備える光変調器は、複数の異なる電気信号が入力されることで多値変調信号を生成することができる。すなわち、それぞれのマッハツェンダ干渉計に対応する信号電極に、異なる電気信号が外部から入力されることにより、例えば、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)方式等の多値変調方式による光変調が可能となる。
【0004】
光変調器への電気信号の入力部には、コネクタが設けられることがある。しかしながら、複数の電気信号それぞれに関してコネクタが設けられると、光変調器のサイズが大きくなり、実装面積が増大する。そこで、電気信号の入力部に可撓性を有するフレキシブルプリント回路板(FPC:Flexible Printed Circuits)を用いることにより、装置の小型化が図られることがある。
【0005】
FPCには、光変調器の複数の信号電極に対応する複数の配線パターンがプリントされており、ドライバから出力される電気信号が、FPCにプリントされた配線パターンを介して光変調器へ入力される。FPCのドライバ側の端部には、幅広の電極であるパッドが形成されており、ドライバから出力される電気信号を伝送する基板上の電極とパッドとが半田付けされることにより、FPCとドライバとが電気的に接続される。一方、FPCの光変調器側の端部においては、例えば、光変調器から延出するリードピンがFPCにプリントされた配線パターンに半田付けされることにより、FPCと光変調器とが電気的に接続される。
【0006】
ところで、FPCにプリントされる配線パターンとしては、例えば、数10GHz(ギガヘルツ)以上の高周波の電気信号を伝送するために、マイクロストリップライン(以下、単にMSLと称する)が用いられることがある。従って、FPCのドライバ側の端部においては、幅広のパッドとパッドよりも幅が狭いMSLとが接続される。そして、MSLを覆って保護するために、FPCの表面にカバーレイが設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-3655号公報
【特許文献2】特開2007-123741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カバーレイに関しては、外形加工や張り合わせの精度が悪く公差が大きいため、FPCの表面にカバーレイを設けても、MSLの一部が露出してしまうことがある。すなわち、カバーレイの製造誤差が大きいため、特にパッドに接続する部分においてMSLが露出して断線等の発生が考えられる。
【0009】
そこで、カバーレイを大きくしてパッドの一部までを覆うことにより、FPCのMSLが形成される部分を補強することも考えられる。しかし、この場合には、パッドと基板上の電極との間にカバーレイが挟まれることになり、パッドと基板上の電極との間の半田付けが阻害される。そして、パッドの一部がカバーレイに覆われて半田付けされない結果、FPCと基板との接続部分においてインピーダンスミスマッチが発生する。
【0010】
具体的には、FPCのパッドは、全体が基板上の電極と半田付けされた場合に特性インピーダンスが50Ωとなるように設計されているが、カバーレイによってパッドの一部における半田付けが阻害されると、インピーダンス整合の維持が困難となる。そして、インピーダンスミスマッチが発生すると、基板とFPCの接続部分とにおいて高周波の反射が増大し、伝送周波数帯域が狭くなってしまう。
【0011】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、インピーダンス整合を維持しながら、フレキシブル基板の配線パターンを補強できる光モジュール等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願が開示する光モジュールは、1つの態様において、第1の部品と、第2の部品と、前記第1の部品と前記第2の部品とを電気的に接続するフレキシブル基板とを有する。前記フレキシブル基板は、信号用パッドと、接地用パッドと、信号線と、接地パターンと、第1の突出部を有する第1のカバーレイと、第2の突出部を有する第2のカバーレイと、を有する。信号用パッドは、少なくとも一部が前記第1の部品に固着される。接地用パッドは、少なくとも一部が前記第1の部品に固着される。信号線は、前記フレキシブル基板の第1の面に形成され、前記信号用パッドと前記第2の部品とを接続し、前記信号用パッドよりも幅が狭い信号線である。接地パターンは、前記第1の面の裏面である第2の面に形成される。第1の突出部は、前記第1の面上に形成され、前記フレキシブル基板の前記信号線が配置される範囲を覆い、前記信号用パッドが配置される位置において、前記信号線が配置される範囲よりも前記フレキシブル基板の前記第1の部品側の端部へ向かって突出する。第2の突出部は、前記第2の面上に形成され、前記信号用パッドが配置される位置において、前記フレキシブル基板の前記第1の部品側の端部へ向かって突出する。第2の突出部は、少なくとも前記信号用パッドと対向する範囲の前記接地パターンを覆う。
【発明の効果】
【0013】
本願が開示する光モジュールの1つの態様によれば、インピーダンス整合を維持しながら、フレキシブル基板の配線パターンを補強できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例1の光モジュールの構成の一例を示す平面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すA-A線部分の一例を示す断面模式図である。
【
図3】
図3は、実施例1の光モジュールに関わるPCBとFPCとの接続部における電極の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施例2の光モジュールに関わるPCBとFPCとの接続部における電極の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施例3の光モジュールに関わるPCBとFPCとの接続部における電極の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施例4の光モジュールに関わるPCBとFPCとの接続部における電極の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施例5の光モジュールに関わるPCBとFPCとの接続部における電極の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、光トランシーバの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願が開示する光モジュール及び光トランシーバの一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例0016】
図1は、実施例1の光モジュール1の構成の一例を示す平面模式図である。
図1に示す光モジュール1は、プリント回路板(PCB:Printed Circuits Board)10と、光変調器20と、光ファイバ30と、FPC40と、ドライバ50とを有する。
【0017】
PCB10は、例えば、ガラスエポキシ基板等であり、光モジュール1を構成する各種の部品を搭載する基板となる部品である。PCB10の表面には、各種の部品を電気的に接続するための電極である信号電極11及び接地電極12がプリントされている。
【0018】
光変調器20は、光ファイバ30からの光を変調して出力する。光変調器20は、ドライバ50から出力される電気信号に基づいて光変調を行う。具体的には、光変調器20は、変調器チップ21と、中継基板22と、を有する。尚、光変調器20は、パッケージ20A内に収容している。
【0019】
変調器チップ21は、平行な光導波路21Aと、信号電極及び接地電極等の電極21Bとを有し、光ファイバ30からの光を光導波路21Aによって伝搬しつつ、信号電極に供給される電気信号を用いて光変調を実行することになる。具体的には、光導波路21Aは、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3(LN))やタンタル酸リチウム(LiTaO2)等の電気光学結晶を用いた結晶基板上の一部に、チタン(Ti)等の金属膜を形成し熱拡散することによって形成される。また、光導波路21Aは、パターニング後に安息香酸中でプロトン交換することによって形成されても良い。
【0020】
信号電極及び接地電極等の電極21Bは、平行な光導波路21Aに沿って形成されるコプレーナ電極である。信号電極及び接地電極は、例えば、それぞれの光導波路21Aの上にパターニングされる。そして、光導波路21A中を伝搬する光が信号電極及び接地電極によって吸収されるのを防ぐために、結晶基板と信号電極及び接地電極との間にバッファ層が設けられる。バッファ層としては、例えば、厚さ0.2~2μm程度の二酸化ケイ素(SiO2)等を用いることができる。
【0021】
中継基板22は、ドライバ50から出力された電気信号を変調器チップ21へ中継し、変調器チップ21の信号電極へ入力する。
図1においては、中継基板22は、変調器チップ21に形成される光導波路21Aに対応する配線パターン22Aを有する。変調器チップ21に形成された複数の信号電極に電気信号を入力する場合、全ての電気信号の入力部が光変調器20の片側に並んでいれば、実装が容易となり、実装面積が小さくて済む。そこで、本実施の形態においては、光変調器20に中継基板22を配置し、光変調器20の片側から入力される電気信号を中継基板22が変調器チップ21へ中継する構成としている。
【0022】
FPC40は、可撓性を有するフレキシブル基板であり、ドライバ50から出力される電気信号を光変調器20へ供給する。すなわち、FPC40の一端は、光変調器20の中継基板22と電気的に接続され、FPC40の他端は、PCB10上の電極を介してドライバ50と接続される。
図1に示すように、FPC40のPCB10と接続する端部40Cには、一対の信号用パッド42と一対の接地用パッド43とが形成されており、一対の信号用パッド42を一対の接地用パッド43が挟むGSSG構造となっている。尚、説明の便宜上、GSSG構造とする場合を例示したが、これに限定されるものではなく、GSG構造等でも良く、適宜変更可能である。
【0023】
後述するように、それぞれの信号用パッド42及び接地用パッド43は、スルーホール44,45を介してFPC40の両面に形成されている。そして、FPC40のPCB10に対向する面であるFPC表面に形成された信号用パッド42B(42)及び接地用パッド43B(43)がPCB10上の信号電極11及び接地電極12に半田付けされる。尚、信号電極11及び接地電極12は、例えば、RF電極である。また、FPC40のPCB10に対向する面(FPC表面)には、信号用パッド42と中継基板22の配線パターン22Aとを接続するマイクロストリップライン(以下、単にMSLと称する)41が形成されている。
【0024】
一方、FPC40のPCB10から遠い側の面であるFPC裏面には、各接地用パッド43に共通して接続する平面状の接地パターン46が形成されている。尚、以下の説明においては、FPC40のFPC表面を「信号面」といい、FPC40のFPC裏面を「接地面」という。すなわち、MSL41が形成される面を信号面といい、接地パターン46が形成される面を接地面という。
【0025】
ドライバ50は、光ファイバ30からの光を変調するための高周波の電気信号を生成する。すなわち、ドライバ50は、送信データに応じた振幅・位相の電気信号を生成し、この電気信号によって光変調器20を駆動する。ドライバ50は、PCB10上の信号電極11に接続されている。
【0026】
次に、
図2を参照して、FPC40とPCB10上の信号電極11及び接地電極12との接続について説明する。
図2は、
図1に示すA-A線部分の一例を示す断面模式図である。
【0027】
図2に示すように、PCB10には光変調器20及びドライバ50が搭載されており、PCB10の表面にはドライバ50から延びる信号電極11がプリントされている。そして、この信号電極11にFPC40の端部40Cが半田付けされ、FPC40の他端が光変調器20に接続されることにより、ドライバ50から出力される電気信号が光変調器20へ伝送可能になっている。
【0028】
PCB10の表面にプリントされた信号電極11とFPC40の端部40Cとの接続部分においては、PCB10の表面にプリントされた信号電極11とFPC40の端部に形成された信号用パッド42とが半田71によって半田付けされている。信号用パッド42は、FPC40の信号面及び接地面に配置された幅広の電極であり、信号面と接地面とをスルーホール45A,45Bによって接続している。このため、信号電極11と信号面の信号用パッド42との半田付けに用いられる半田71が、スルーホール45A、45Bを介して接地面にまで溢れ出している。
【0029】
接地用パッド43は、接地面において接地パターン46が接続されている。一方、接地用パッド43は、信号面において他の電極と接続されていないものである。FPC40は中継基板22と半田72で半田付けされてFPC40の信号面にあるMSL41と中継基板22の配線パターン22Aと電気的に接続する。更に、中継基板22の配線パターン22Aは、変調器チップ21上の電極21Bとの間をワイヤ73を使用して電気的に接続する。
【0030】
図3は、実施例1の光モジュール1に関わるPCB10とFPC40との接続部における電極の一例を示す説明図である。
図4Aは、
図3に示すB-B線部分の一例を示す断面模式図である。
図4Bは、
図3に示すC-C線部分の一例を示す断面模式図である。
図3においては、PCB10の表面10A、FPC40の接地面40B及びFPC40の信号面40Aにおける電極の配置の一例が示されている。すなわち、PCB10の表面10Aに配置された一対の信号電極11と、FPC40の信号面40Aに配置された一対の信号用パッド42A及び接地面40Bに配置された一対の信号用パッド42Bとが半田付けされる。更に、PCB10の表面10Aに配置された一対の接地電極12と、信号面40Aに配置された一対の接地用パッド43A及び接地面40Bに配置された一対の接地用パッド43Bとが半田付けされる。尚、
図3において、「G」は接地用の電極又はパッドを示し、「S」は信号用の電極又はパッドを示している。第1のカバーレイ60Aは、FPC40の信号面40Aの内、MSL41が配置された部分を覆っている。
【0031】
PCB10の表面10Aには、一対の信号電極11がプリントされ、一対の信号電極11を挟むように一対の接地電極12がプリントされている。接地電極12は、スルーホール13を介して、PCB10の内部にある接地電極の層と接続されていても良い。
【0032】
FPC40の接地面40Bには、端部40Cから中央に延伸する一対の信号用パッド42Bが配置され、一対の信号用パッド42Bを挟むように一対の接地用パッド43Bが配置されている。一対の接地用パッド43BもFPC40の接地面40Bの端部40Cから中央に延伸し、その先端は、接地パターン46に接続する。
【0033】
FPC40の信号面40Aには、端部40Cから中央に延伸する一対の信号用パッド42Aが配置され、一対の信号用パッド42Aを挟むように一対の接地用パッド43Aが配置されている。一対の信号用パッド42Aの先端は、MSL41に接続する。また、一対の信号用パッド42AとMSL41との接続部分は、テーパ状に変化し、MSL41に近づくにつれて先細りの形状となるテーパ状信号線41Aである。
【0034】
カバーレイ60は、例えば、ポリイミド樹脂等を成形して製造された補強用の部材であり、第1のカバーレイ60Aと、第2のカバーレイ60Bとを有する。第1のカバーレイ60Aは、
図4Aに示すように、FPC40の信号面40AのMSL41が配置された範囲を覆っている。第1のカバーレイ60Aは、信号面40Aの光変調器20側(
図3では上方)の端部40Dから接地用パッド43Aの先端と離れた部位付近までを覆い、さらに信号用パッド42A近傍では、テーパ状信号線41Aを覆うように第1の突出部61Aを有する。すなわち、第1の突出部61Aは、接地用パッド43Aの先端と離れた部位付近からFPC40のドライバ50側の端部40Cに向かって突出し、信号用パッド42Aの一部であるテーパ状信号線41Aを覆っている。尚、第1のカバーレイ60Aは、接地用パッド43Aの先端と離れた部位付近まで覆うものの、
図4Bに示すように、接地用パッド43A及び信号用パッド42A自体を覆うものではない。
【0035】
また、第2のカバーレイ60Bは、
図4Aに示すように、FPC40の接地面40Bの接地パターン46が配置された範囲を覆っている。第2のカバーレイ60Bは、接地面40Bの光変調器20側(
図3では上方)の端部40Dから、信号面40Aのテーパ状信号線41Aの裏面にある接地面40Bを覆うように第2の突出部61Bを有する。第2の突出部61Bは、接地用パッド43Bの先端と離れた接地パターン46の部位付近からFPC40のドライバ50側の端部40Cに向かって突出し、信号用パッド42Bの一部であるテーパ状信号線41Aの裏面にある接地面40Bの部位を覆っている。尚、第2のカバーレイ60Bは、接地用パッド43Bの先端と離れた接地パターン46の部位付近まで覆うものの、
図4Bに示すように、接地用パッド43B及び信号用パッド42B自体を覆うものではない。
【0036】
カバーレイ60がこのような形状をしているため、カバーレイ60の製造誤差が比較的大きい場合でも、MSL41とテーパ状信号線41Aの先端の細い部分とは確実に第1のカバーレイ60Aの第1の突出部61Aによって覆われる。このため、テーパ状信号線41A付近が補強され、MSL41が断線する可能性を低減できる。第2のカバーレイ60Bの第2の突出部61Bは、FPC40の接地パターン46を覆うため、FPC40の接地面40Bにある信号用パッド42Bと接地パターン46との間に半田が流れてショートするような事態を回避できる。
【0037】
また、カバーレイ60の形状により、接地用パッド43の全体をPCB10の表面10Aにプリントされた接地電極12に半田付けすることができる。このため、接地用パッド43全体がPCB10に固定され、FPC40を折り曲げる場合でもテーパ状信号線41A付近はほとんど曲がらない。その結果、テーパ状信号線41A付近にかかる曲げ応力が小さく、この付近でのMSL41の断線を抑止できる。さらに、テーパ状信号線41Aがテーパ状になっているため、一点に応力が集中することがなく、MSL41が断線する可能性をより低減することができる。
【0038】
また、カバーレイ60は、第1の突出部61A及び第2の突出部61Bを有するため、信号用パッド42は、テーパ状信号線41Aを除く部分でPCB10の表面10Aの信号電極11に半田付けされる。従って、第1の突出部61A及び第2の突出部61Bの先端の位置と信号電極11の先端の位置とは、ほぼ一致している。この際、テーパ状信号線41Aは半田付けされていないため、この部分での特性インピーダンスが50Ωからずれてインピーダンスミスマッチが発生する可能性がある。接地パターン46の大きさを調整し、テーパ状信号線41Aに接地電圧の電極を近づけることにより、インピーダンス整合をとるようにすれば良い。
【0039】
カバーレイ60の第1の突出部61A及び第2の突出部61Bを除く部分の先端の位置よりも、接地パターン46が信号用パッド42へ向かって延びる量を調整することで、テーパ状信号線41Aと接地パターン46との電気結合の強度を調整できる。その結果、テーパ状信号線41Aにおける特性インピーダンスを50Ωに調整し、インピーダンス整合をとることができる。インピーダンス整合を確保することで、PCB10とFPC40のテーパ状信号線41Aとの接続部分において高周波の反射が抑制することで伝送周波数帯域を広くできる。
【0040】
カバーレイ60は、第1の突出部61A及び第2の突出部61Bを有するため、テーパ状信号線41Aを覆う一方で、接地用パッド43を覆わないようにしたので、テーパ状信号線41Aを補強すると共に、半田付けの面積を十分に広くできる。このため、テーパ状信号線41Aを保護してMSL41の断線を抑止できる。さらに、接地パターン46の大きさを調整することにより、テーパ状信号線41Aと接地パターン46との電気結合の強度を調整してインピーダンス整合をとることができる。換言すれば、インピーダンス整合を維持しながら、FPC40の配線パターンを補強できる。
【0041】
実施例1の光モジュール1では、第1の突出部61Aを有する第1のカバーレイ60Aと、第2の突出部61Bを有する第2のカバーレイ60Bとを有する。第1の突出部61Aは、信号面40A上に形成され、FPC40のMSL41が配置される範囲を覆い、信号用パッド42が配置される位置において、MSL41が配置される範囲よりもFPC40のドライバ50側の端部40Cへ向かって突出する。更に、第1の突出部61Aは、接地用パッド43との境界付近を除いて、MSL41を覆う。その結果、第1のカバーレイ60Aの張り合わせずれによるMSL41の露出を防止しながら、MSL41の断線を防止できる。
【0042】
第2の突出部61Bは、接地面40B上に形成され、信号用パッド42が配置される位置において、FPC40のドライバ50側の端部40Cへ向かって突出する。更に、第2の突出部61Bは、接地用パッド43との境界付近を除いて、少なくとも信号用パッド42と対向する範囲の接地パターン46を覆う。その結果、第2の突出部61Bが接地パターン46を覆うことで、半田接合時のFPC裏面の接地パターン46と信号用パッド42との間のショートを防止できる。
【0043】
更に、FPC40の接地面40Bにおいては、接地パターン46の大きさを調整して、FPC40の信号面40Aにおけるテーパ状信号線41Aとの間の電気結合の強度を調整することでインピーダンスを調整する。その結果、インピーダンス整合を維持しながら、接地用パッド43全体をPCB10の表面の接地電極12に半田付けし、テーパ状信号線41Aにかかる曲げ応力を小さくして、MSL41の断線の可能性を低減できる。換言すれば、インピーダンス整合を維持しながら、FPC40の配線パターンを補強できる。
【0044】
第1のカバーレイ60Aの第1の突出部61Aは、MSL41と少なくとも一部のテーパ状信号線41Aとを覆う。MSL41及びテーパ状信号線41Aの露出を防止しながら、MSL41及びテーパ状信号線41Aの断線を防止できる。
【0045】
PCB10の表面10A上の接地電極12の先端は、表面10A上の信号電極11の先端に比較して光変調器20の近い方に位置する。その結果、PCBの表面10Aの接地電極12に対してFPC40の接地用パッド43Bを半田付けする半田面積を広くできる。更に、第1の突出部61Aで形成する開口部61A1及び第2の突出部61Bで形成する開口部61B1によってFPC40が折れ曲がって電極の断線を回避できる。
【0046】
FPC40の信号面40Aを覆う第1のカバーレイ60Aの外面形状と、FPC40の接地面40Bを覆う第2のカバーレイ60Bの外面形状とをほぼ同一の形状にし、第1のカバーレイ60Aと第2のカバーレイ60Bとを接合する。その結果、カバーレイ60を共通化してカバーレイ60の製造コストを低減できる。
【0047】
FPC40の接地面40Bに設けられた接地パターン46の一端46Aが、信号面40Aに設けられたMSL41とテーパ状信号線41Aとの間の接続部分に比較してドライバ50側に位置する。その結果、インピーダンスを調整できる。
【0048】
MSL41は、高周波の電気信号を伝送する信号線である。その結果、PCB10とFPC40の接続部分とにおいて高周波の反射が小さくして、伝送周波数帯域を広くできる。
【0049】
実施例1の光モジュール1のFPC40では、端部40Cから中央に延伸する一対の信号用パッド42A及び一対の接地用パッド43Aが配置されている場合を例示した。しかしながら、一対の信号用パッド42A及び一対の接地用パッド43Aが端部40Cから延伸する構成に限定されるものではなく、信号面40Aの端部40C以外の端面から延伸しても良く、適宜変更可能である。
【0050】
尚、実施例1の光モジュール1のFPC40では、接地用パッド43のスルーホール44の位置を変更しても良く、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。尚、実施例1の光モジュール1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
FPC40の接地面40Bのドライバ50側の端部40Cから中央へ延伸する接地用パッド43Bの光変調器20側のスルーホール44B1までの距離は、端部40Cから信号用パッド42Bの光変調器20側のスルーホール45Bまでの距離に比較して長くする。尚、光変調器20側のスルーホール44B1は、接地用パッド43Bを貫通する複数のスルーホール44Bの内、ドライバ50側の端部40Cから最も離れたスルーホールである。
すなわち、内部に電極が貼付された貫通孔であるスルーホール44A1及び44B1は、内部に電極が貼付された分だけ強度が高い。そこで、テーパ状信号線41Aと隣接する位置にスルーホール44A1及び44B1を設けることで、テーパ状信号線41A付近が補強される。この結果、FPC40を折り曲げる際に、開口部61A1及び開口部61B1によってテーパ状信号線41A付近がより曲がりにくくなり、MSL41の断線を抑制できる。
実施例2の接地用パッド43Aの光変調器20側のスルーホール44A1及び接地用パッド43Bの光変調器20側のスルーホール44B1は、MSL41と接続するテーパ状信号線41A付近に配置した。スルーホール44A1及び44B1を通って這い上がる半田を確認することで、テーパ状信号線41Aの両側の接地用パッド43が半田で固定されていることを確認できる。その結果、実装時にFPC40がカバーレイ60の開口部61A1及び61B1でテーパ状信号線41Aが折れ曲がりにくくなるため、MSL41の断線を抑制できる。
尚、実施例2のFPC40では、接地用パッド43及び信号用パッド42の幅を同一する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、その実施の形態につき、実施例3として以下に説明する。尚、実施例2の光モジュール1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。