(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172438
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】耐火断熱ボード、耐火断熱構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20241205BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20241205BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20241205BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20241205BHJP
F16L 59/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B32B5/18
E04B1/94 W
C09K21/02
C04B22/14 D
C04B22/14 B
F16L59/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090157
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】長崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】水田 航平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
(72)【発明者】
【氏名】薄井 雅明
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博伸
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠
【テーマコード(参考)】
2E001
3H036
4F100
4G112
4H028
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001GA12
2E001HA03
2E001HD01
2E001HD02
2E001HD03
2E001HD09
2E001HE10
3H036AA09
3H036AB16
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3H036AB18
3H036AC06
3H036AE01
4F100AB10B
4F100AB33B
4F100AE06A
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4F100AK33A
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4F100BA10A
4F100BA10B
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4F100YY00A
4G112MB12
4G112MB23
4G112MB33
4H028AA12
4H028BA04
(57)【要約】
【課題】優れた耐火性、断熱性、及び形状保持性を有し、上記性能を保持できる耐火断熱ボードを提供することを目的とする。
【解決手段】連続空隙を有する発泡樹脂成形体を含み、前記連続空隙にエトリンガイト及び/または石膏を含む水和物が充填されている耐火断熱ボードであって、含水量が50kg/m3以上であり、最表面に金属層含有被覆材を有する耐火断熱ボード。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続空隙を有する発泡樹脂成形体を含み、前記連続空隙にエトリンガイト及び/または石膏を含む水和物が充填されている耐火断熱ボードであって、
含水量が50kg/m3以上であり、最表面に金属層含有被覆材を有する耐火断熱ボード。
【請求項2】
前記発泡樹脂成形体が、発泡ポリウレタン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂、発泡ポリオレフィン樹脂、及び発泡フェノール樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1に記載の耐火断熱ボード。
【請求項3】
前記発泡樹脂成形体の連続空隙率が25~70体積%である、請求項1または2に記載の耐火断熱ボード。
【請求項4】
前記含水量のうち、結晶水に由来する含水量が40kg/m3以上である、請求項1または2に記載の耐火断熱ボード。
【請求項5】
前記含水量のうち、自由水に由来する含水量が10kg/m3以上である、請求項1または2に記載の耐火断熱ボード。
【請求項6】
前記水和物が、エトリンガイト及び/または石膏を50質量%以上含有する、請求項1または2に記載の耐火断熱ボード。
【請求項7】
密度が200~600kg/m3である、請求項1または2に記載の耐火断熱ボード。
【請求項8】
請求項1または2に記載の耐火断熱ボードを含む、耐火断熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火断熱ボード及び耐火断熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物には、様々な断熱材や耐火材が使用されており、断熱材としては、断熱効果が高く軽量で作業性が良い樹脂発泡体であるポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、及びフェノールフォーム等が使われ、又コスト的に安価なグラスウールやロックウール等の無機系の繊維集合体も使われている。
【0003】
樹脂発泡体は有機物のため火災発生時には燃焼し、しばしば延焼による被害拡大の原因となるため、その対策が望まれている。
【0004】
一方、グラスウールやロックウール等の無機系の繊維集合体は燃えない素材を主体に構成されている。しかし、樹脂発泡体に比べ熱伝導率が高い傾向があり断熱性の点で劣り、又、繊維状であるため穿刺感を感じ、作業性に劣る問題もあった。さらに従来、施工時には繊維集合体をプラスティック製の袋に収めた荷姿とし、これを住宅の柱と外壁の間にはめ込む方法が採られているが、隙間が生じたり、経年で脱落したりするといった課題があった。
【0005】
他方、樹脂発泡体に不燃性を付与した断熱材は既に市販されている。例えば、フェノールフォームのボードの片面あるいは両面を不燃材であるアルミニウム箔、水酸化アルミニウム紙、セッコウ系板材等で積層した構造の不燃断熱ボードが挙げられる。しかし、こうした従来の不燃断熱ボードは、火災時には火炎に面した表面は燃えないものの、その熱で内部のフェノールフォームが溶けて空洞ができ、ボード自体が脱落して延焼するという課題が解決できておらず、建築基準法で定められた耐火構造仕様を満足する資材とはなっていない。
【0006】
樹脂発泡体の耐燃焼性を向上する既往の技術を例示すると、例えば、ポリウレタンフォームの耐燃焼性を向上する技術としては、アルカリ金属炭酸塩、イソシアネート類、水及び反応触媒で発泡体を形成する断熱材料に関する技術(特許文献1)や、リチウム、ナトリウム、カリウム、ホウ素、及びアルミニウムからなる群より選ばれる金属の、水酸化物、酸化物、炭酸塩類、硫酸塩、硝酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩類からなる群より選ばれる一種又は二種以上の無機化合物と水とイソシアネート類とからなる硬化性組成物で、主にトンネルの地盤改良用の注入材に関する技術(特許文献2)が知られている。
【0007】
しかし特許文献2の従来技術は、地盤改良用に開発されたものであり断熱性を得ることを目的とするものではない。特に特許文献1のように、アルカリ金属炭酸塩の30%以上の水溶液とイソシアネート類を反応させる従来の手法では、多量の水を使用することにより未反応の水が多量に残ることから、断熱材として使用するためには乾燥する必要があり、しかも得られる発泡体の気泡サイズが大きくなることから断熱性は大きくないと考えられる。
【0008】
合成樹脂発泡体を被覆して耐燃焼性を向上する技術としては、セピオライトと水溶性樹脂を主成分とする水性有機バインダーとからなる被覆を形成して表面処理を施した合成樹脂の発泡体粒子に、無機粉体とアルカリ金属ケイ酸塩を主成分とする水ガラスを含む水性無機バインダーとからなるコーティング材を更に被覆し、乾燥硬化させる断熱性被覆粒体に関する技術(特許文献3)や、合成樹脂発泡体の少なくとも一部の表面の気泡構造内に、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミノケイ酸塩のうちの1種又は2種以上の混合物からなるシリカ系無機物が充填した無機物含有合成樹脂発泡体に関する技術(特許文献4)が開示されている。
【0009】
しかしこれらケイ酸塩類を用いる従来技術は、燃焼によって、樹脂発泡体が溶けて充填されたケイ酸塩自体の結合力も失われ粉化するため、断熱ボードとしての形状を保つことが難しいと考えられる。
【0010】
ビーズ法ポリスチレンフォームで形成された発泡樹脂において、発泡ビーズ間に形成された連通空隙に、酸素指数が21より大きい有機系物質からなる充填材料を充填した発泡樹脂複合構造体に関する技術(特許文献5)や、連通した空隙を有し、空隙率が5~60%である熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の空隙に、スメクタイトを含有するセメント又は石膏の硬化物が充填されている複合成形体に関する技術(特許文献6)が知られている。
【0011】
しかし特許文献5では、連通空隙に有機系物質である充填材料を充填するため、不燃レベルの耐燃焼性の向上は期待できない。特許文献5は、発泡体の空隙率が3%程度の非常に密実な空隙を持つ発泡ポリスチレンフォームを対象にしているものであり、その空隙を有効に利用できているとは言い難い。特許文献6はセメントとしてその硬化物にエトリンガイトを含有することが好ましく、エトリンガイトを含有するセメントとして商品名で例示しており、材料分離低減材の一つと考えられるスメクタイトを含有することを記載している。
【0012】
特許文献7はCaO含有量が40質量%以上のカルシウムアルミネート、セッコウ、平均粒子径が20~60μmの中空構造を有する無機粉末、平均粒子径が20~130μmの廃ガラス発泡体粉末を含有する組成物を記載する。特許文献8に記載の材料は、鉄骨表面を被覆し火災から保護する目的で使用されるものであり、大きな断熱性を有していないと考えられる。
【0013】
エトリンジャイトを主たる成分として含有してなることを特徴とする耐火被覆用組成物であり、更に100~1000℃で不燃性ガスを放出する無機化合物粉粒体や酸化チタン粉粒体を含有する耐火被覆用組成物(特許文献9)も知られている。
【0014】
また、耐火構造としては、木質材料で構成された木質下地と、該木質下地の室内側に取り付けられた第1石膏ボードと、該第1石膏ボードの室内側に取り付けられたアルミ層付ガラス繊維シートと、該アルミ層付ガラス繊維シートの室内側に取り付けられた第2石膏ボードとを含む木造建築物の耐火構造であって、該アルミ層付ガラス繊維シートは、少なくとも一方の面がアルミ箔に覆われたガラス繊維シートからなる木造建築物の耐火構造も知られている(特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10-67576号公報
【特許文献2】特開平8-92555号公報
【特許文献3】特開2001-329629号公報
【特許文献4】特開2012-102305号公報
【特許文献5】特許第4983967号公報
【特許文献6】特開2015-199945号公報
【特許文献7】特開2017-77994号公報
【特許文献8】特開平7-48153号公報
【特許文献9】特開平7-61841号公報
【特許文献10】特開2007-39915公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述した従来技術を通常環境下で使用する耐火断熱ボードに用いた場合、耐火性、断熱性、及び形状保持性がより向上することが求められている。特に、長期間保管した場合、経年劣化によって性能が低下しないことが求められている。
【0017】
以上より、本発明は、優れた耐火性、断熱性、及び形状保持性を有し、上記性能を保持できる耐火断熱ボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記のような課題を踏まえて鋭意検討を行った結果、連続空隙を有する発泡樹脂成形体を含み、当該連続空隙に特定の水和物が充填され、所定の含水量を有し、最表面に金属層含有被覆材を有する耐火断熱ボードが、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0019】
[1] 連続空隙を有する発泡樹脂成形体を含み、前記連続空隙にエトリンガイト及び/または石膏を含む水和物が充填されている耐火断熱ボードであって、含水量が50kg/m3以上であり、最表面に金属層含有被覆材を有する耐火断熱ボード。
[2] 前記発泡樹脂成形体が、発泡ポリウレタン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂、発泡ポリオレフィン樹脂、及び発泡フェノール樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む、上記[1]に記載の耐火断熱ボード。
[3] 前記発泡樹脂成形体の連続空隙率が25~70体積%である、上記[1]または[2]に記載の耐火断熱ボード。
[4] 前記含水量のうち、結晶水に由来する含水量が40kg/m3以上である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の耐火断熱ボード。
[5] 前記含水量のうち、自由水に由来する含水量が10kg/m3以上である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の耐火断熱ボード。
[6] 前記水和物が、エトリンガイト及び/または石膏を50質量%以上含有する、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の耐火断熱ボード。
[7] 密度が200~600kg/m3である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の耐火断熱ボード。
[8] 上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の耐火断熱ボードを含む、耐火断熱構造体。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた耐火性、断熱性、及び形状保持性を有し、上記性能を保持できる耐火断熱ボードを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐火断熱構造体の構造を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る耐火断熱構造体の構造を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)を詳細に説明するが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書における「%」や「部」は特に規定しない限り質量基準とし、本明細書における数値範囲は、別段の定めがない限りはその上限値及び下限値を含むものとする。
【0023】
本実施形態に係る耐火断熱ボードは、連続空隙を有する発泡樹脂成形体を含み、前記連続空隙にエトリンガイト及び/または石膏を含む水和物が充填されている耐火断熱ボードであって、含水量が50kg/m3以上であり、最表面に金属層含有被覆材を有する耐火断熱ボードである。本発明の耐火断熱ボードは、発泡樹脂成形体の連続空隙にエトリンガイト及び/または石膏を含む水和物が充填され、最表面に金属層含有被覆材を有することで、優れた耐火性、断熱性、及び形状保持性を有し、これら性能を保持できる耐火断熱ボードとすることができる。
【0024】
耐火断熱ボードは、連続空隙を有する発泡樹脂成形体(以下、樹脂成形体とも略記する。)を有し、スラリー等の水和物を充填できる空隙を有するものをいう。樹脂の種類としては、例えば、発泡ポリビニルアルコール樹脂、発泡ポリウレタン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂、発泡ポリオレフィン樹脂、発泡フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中では、発泡ポリウレタン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂、発泡ポリオレフィン樹脂、及び発泡フェノール樹脂からなる群から選択される1種または2種以上が好ましい。これらの樹脂からなる、独立気泡を有する直径数mmの粒状発泡体を、型に詰めて加熱加圧成形し、粒状発泡体間に連続空隙が生じるように成形することで、当該樹脂成形体を得られる。樹脂成形体の連続空隙率は、製造時の加圧の程度によって調節可能である。ポリスチレン樹脂については、ビーズ法ポリスチレンフォームの製造方法に準拠して連続空隙を有する樹脂成形体を製造できる。これらの中では、汎用性の点から、発泡ポリスチレン樹脂成形体の使用が好ましい。
【0025】
発泡樹脂成形体の連続空隙率は、25~70体積%であることが好ましい。25体積%以上であると、得られるボードに十分な耐火性を付与できるため好ましい。また、発泡樹脂成形体の連続空隙率が70体積%以下であると、ボード密度が小さくなり熱伝導率が小さく、断熱性が向上するため好ましい。
【0026】
発泡樹脂成形体の連続空隙は、エトリンガイト及び/または石膏を含む水和物が充填されている。水和物は、エトリンガイト及び/または石膏を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することがよりさらに好ましい。また、100質量%含有してもよい。エトリンガイト及び石膏以外の成分としては、水酸化カルシウム、モノサルフェート水和物(AFm)や、原材料の残渣等を含むことができる。
【0027】
エトリンガイトは、セメントやカルシウムアルミネート等と石膏等との水和反応により生成される。石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏のいずれであってもよく、特に限定されるものではない。無水石膏とは、硫酸カルシウム無水物でCaSO4なる分子式で示される化合物の総称であり、半水石膏とは、CaSO4・1/2H2Oなる分子式で示される化合物の総称であり、二水石膏とは、CaSO4・2H2Oなる分子式で示される化合物の総称である。
【0028】
水和物は、原材料と水とを混合して得ることができる。原材料としては、粉体が好ましく、例えば、セメント、カルシウムアルミネート、及び石膏等を用いることができる。発泡樹脂成形体への水和物の充填方法は、特に限定されないが、例えば、原材料と水とを混合してスラリーを調製することで、発泡樹脂成形体の連続空隙に水和物を充填することができ、圧搾空気による圧入や真空ポンプで減圧して吸引により充填する方法や、振動テーブルに発泡樹脂成形体を設置し、30~60ヘルツの振動を加えながら空隙内に充填する方法を用いることができる。このうち品質安定性の面から振動を加えながら空隙内に充填する方法が好ましい。
【0029】
上記セメントとしては、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種セメント、これらのセメントに、高炉スラグやフライアッシュやシリカフューム等を混合した各種混合セメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)、市販されている微粒子セメント等が挙げられ、各種セメントや各種混合セメントを微粉末化して使用することも可能である。また、通常セメントに使用されている成分量を増減して調整されたものも使用可能である。
【0030】
上記カルシウムアルミネートとは、カルシア原料とアルミナ原料等とを混合して、キルンで焼成または電気炉で溶融し冷却して得られるCaOとAl2O3とを主成分とする水和活性を有する物質の総称である。カルシウムアルミネートは、特に限定されるものではないが、硬化後の初期強度発現性の点で、溶融後に急冷した非晶質カルシウムアルミネートが好ましい。カルシウムアルミネートのCaO含有量は反応活性の点で、30質量%以上が好ましく、34質量%以上がより好ましく、40質量%以上が最も好ましい。上限は特に規定されないが、50質量%が好ましい。また、カルシウムアルミネートのCaOやAl2O3の一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物も使用できるし、あるいは、CaOとAl2O3とを主成分とするものに、これらが少量固溶した化合物も使用できる。
【0031】
カルシウムアルミネートのガラス化率は、8%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。カルシウムアルミネートのガラス化率は、以下の手法で算出できる。加熱前のサンプルについて、粉末X線回折法により結晶鉱物のメインピーク面積Sを予め測定し、その後1,000℃で2時間加熱後、1~10℃/分の冷却速度で徐冷し、粉末X線回折法による加熱後の結晶鉱物のメインピーク面積S0を求め、さらに、これらのS0及びSの値を用い、次の式を用いてガラス化率χを算出する。
ガラス化率χ(%)=100×(1-S/S0)
【0032】
カルシウムアルミネートの粒度は、初期強度発現性の点で、ブレーン比表面積値で3,000cm2/g以上が好ましく、5,000cm2/g以上がより好ましく、当該粒度が3,000cm2/g以上であると初期強度発現性が向上しやすい。ここで、ブレーン比表面積値とは、JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)に準拠して測定した値である。
【0033】
原材料として用いる石膏としては、既述の無水石膏、半水石膏、二水石膏のいずれも使用でき、特に限定されるものではない
【0034】
石膏の粒度は、不燃性や初期強度発現性と適正な作業時間が得られる点で、平均粒子径1~30μmが好ましく、5~25μmがより好ましい。ここで、平均粒子径とは、測定レーザー開設式粒度分布計を用い、超音波装置を用いて分散させた状態で測定した値である。また、不燃性や初期強度発現性と適正な作業時間とが得られる点で、ブレーン比表面積値で3,000cm2/g以上が好ましく、4,000cm2/g以上がより好ましい。
【0035】
石膏を水に浸漬させたときのpHは、弱アルカリから酸性の値を示すことが好ましく、pH8以下がより好ましい。pH8以下だと、石膏成分の溶解度が小さく、不燃性や初期強度発現性を向上するため好ましい。ここでいうpHとは石膏/イオン交換水=1g/100gの20℃における希釈スラリーのpHを、イオン交換電極等を用いて測定したものである。
カルシウムアルミネートと石膏とを併用する場合、石膏の使用量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して70~300質量部が好ましく、100~200質量部がより好ましい。70質量部以上だと不燃性や初期強度発現性が得られ、300質量部以下だと不燃性を示す。
【0036】
水和物を調製するための水の使用量は、特に限定されないが、原材料100質量部に対して40~300質量部が好ましく、80~250質量部がより好ましい。水の使用量が40質量部以上であれば、空隙への充填にばらつきが生じず、耐火性を損なわない。水の使用量が300質量部以下であれば、空隙内の水和物含有量が減少せず、耐火性を損なわない。
【0037】
水和物の調製にあたって、さらに、性能に影響を与えない範囲であらゆる各種添加剤を使用でき、例えば、界面活性剤、空気連行剤、糖類等の炭化促進剤、リン化合物、臭素化合物、ホウ素化合物、窒素化合物、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等の難燃性付与剤、熱膨張黒鉛等の延焼防止剤、タルクやゼオライト等の無機物、消石灰や各種炭酸塩等の水和促進剤、オキシカルボン酸塩や酒石酸等の凝結遅延剤、従来の防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、ベントナイトやセピオライト等の粘度鉱物、ハイドロタルサイト等のアニオン交換体を使用することができ、上記1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
耐火断熱ボードは、最表面に金属層含有被覆材を有する。耐火断熱ボードの最表面、すなわち耐火断熱ボードの全ての面が金属層含有被覆材によって被覆される。耐火断熱ボードが最表面に金属層含有被覆材を有することにより、含有する水分が水蒸気となった際、水蒸気をボード内部に留め、また、加熱面と反対側のボード内部に水膜を形成することによって温度上昇を抑制することができるため、優れた耐火性、断熱性、及び形状保持性を有することができ、これら性能を保持することができる。被覆材が含有する金属層としては、例えばアルミニウム、銅、真鍮、チタン、ニッケル、ステンレス合金等を使用することができる。また、金属層含有被覆材は、被覆材表面に金属箔等により形成される金属層を含有することが好ましく、市販の金属テープや金属箔とクラフト紙とを貼合した市販の金属クラフトテープ等を用いることができる。
【0039】
金属層含有被覆材の厚さは、0.005~3.0mmであることが好ましい。また、金属層含有被覆材における金属層の厚さは、1~2000μmであることが好ましく、これらの厚みは、被覆材の構成や使用する金属種、耐火断熱ボードの形状によって自由に選択できる。金属層含有被覆材の厚さ及び金属層の厚さが、上記範囲内であると、耐火断熱ボードの耐火性、断熱性、及び形状保持性をより優れたものとすることができる。
【0040】
本実施形態の一態様としての耐火断熱ボードは、上記発泡樹脂成形体の連続空隙が、上記水和物で充填されており、該発泡樹脂成形体の最表面が上記金属層含有被覆材で被覆されている。金属層含有被覆材の被覆方法は、特に限定されないが、例えば、接着剤塗布、テープ留め、タッカー留め、ビズ留め、釘留めする方法等で被覆することができる。
【0041】
本実施形態に係る耐火断熱ボードは、含水量が50kg/m3以上である。耐火断熱ボードの含水量が50kg/m3未満であると、十分な耐火性、断熱性、及び形状保持性が得られないおそれがある。含水量は、60kg/m3以上であることが好ましく、75kg/m3以上であることがより好ましい。また、含水量は、400kg/m3以下であることが好ましく、300kg/m3以下であることがより好ましい。含水量は、水和物の原料の配合比や水の使用量等を調整することよって、適宜調整することができる。
【0042】
上記含水量のうち、結晶水に由来する含水量が40kg/m3以上であることが好ましく、48kg/m3以上であることがより好ましく、60kg/m3以上であることがさらに好ましい。結晶水に由来する含水量が上記範囲内であることで、十分な耐火性、断熱性、及び形状保持性が得られやすく、これら性能を保持しやすい。上限としては、特に制限されないが、320kg/m3以下であることが好ましく、240kg/m3以下であることがより好ましい。結晶水に由来する含水量は、水和物の原料の配合比や水の使用量等を調整することよって、適宜調整することができる。
【0043】
上記含水量のうち、自由水に由来する含水量が10kg/m3以上であることが好ましく、12kg/m3以上であることがより好ましく、15kg/m3以上であることがさらに好ましい。自由水に由来する含水量が上記範囲内であることで、十分な耐火性、断熱性、及び形状保持性が得られやすく、これら性能を保持しやすい。上限としては、特に制限されないが、80kg/m3以下であることが好ましく、60kg/m3以下であることがより好ましい。自由水に由来する含水量は、水和物の原料の配合比や水の使用量等を調整することよって、適宜調整することができる。
【0044】
耐火断熱ボードは、繊維を含有することが好ましい。繊維としては、無機系繊維が好ましく、例えば、バサルトファイバー、セラミックファイバー等が好ましい。バサルトファイバーとは高密度の玄武岩を粉砕し、1,500℃以上の高温で溶融し、それを紡糸することで得られるファイバーをいう。セラミックファイバーとは、アルミナとシリカを主成分とした人造鉱物繊維の総称をいう。セラミックファイバーは、非晶質のアルミナシリカ繊維(RCF:Refractory Ceramic Fiber)や、アルミナ含有量が60%以上のアルミナとシリカからなる結晶質の繊維(AF:Alumina Fiber)に分類されるが、いずれも使用可能である。
【0045】
繊維の使用形態は特に限定されるものではないが、繊維の束をクロス状に編んで加工したもの、長さ1~50mmまたは1~30mm程度に裁断し、短繊維状に加工したもの、短繊維状のものを有機溶媒等と混合して抄造法により厚さ0.1mm~3mm程度のシート状に加工したものが好ましい。こうした無機系繊維は、基材の一部、あるいは、全体に適用して補強することが好ましい。また、内部に含めるようにしてもかまわない。
【0046】
繊維の使用量は、特に限定されるものではないが、30~350g/m2が好ましく、50~200g/m2がより好ましい。上記範囲内であると、十分な収縮抑制効果が得られやすく、経済的である。
【0047】
耐火断熱ボードの形状は、特に限定されるものではないが、縦500~1,200mm、横800~2,000mm、厚さ10~100mmの範囲が好ましい。サイズがこの範囲であれば、重くなり過ぎず設置時の作業性が良好である。
【0048】
耐火断熱ボードの密度は、200~600kg/m3であることが好ましく、300~600kg/m3であることがより好ましい。上記範囲内であると、十分な耐火性及び断熱性を確保しやすい。
【0049】
本実施形態の一態様として、本発明の耐火断熱ボードを用いて、建築物に使用可能な耐火断熱構造体を得ることができる。そうした耐火断熱構造体としては、例えば外壁側からの層構成で示せば、サイディングボード、透湿防水シート、耐火断熱ボード、構造用合板、耐火断熱ボードの順の層からなり、構造用合板と基材との間は間柱で100mm程度の空間(グラスウール等の断熱材が収まる空間)を設けた構造が挙げられる。サイディングボードと透湿防水シートとの間は胴縁を設けてもよい。耐火断熱構造体を構築する際には、必要とする耐火仕様に応じて、耐火断熱ボードを複数重ねて貼り付けてもよい。また、強化石膏ボードやケイ酸カルシウム板等と併用して使用してもよい。
【実施例0050】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実験例1]
<耐火断熱ボードの製造>
下記に示す使用材料を用い、連続空隙を有する発泡樹脂成形体(サイズ:縦1,000mm×横1,000mm×厚み25mm)を振動含浸装置にセットし、粉体原料100質量部に対して水(水道水)100質量部を加え、5分間攪拌して調製したスラリー(水和物を生成するスラリー)を、樹脂成形体空隙量に対して1.1倍となるように当該樹脂成形体の上表面に流し込み、60ヘルツの振動を1分間与え空隙内にスラリーを充填させた。スラリー充填後7日間常温で養生した後、発泡樹脂成形体の表面を金属層含有被覆材で被覆して、耐火断熱ボードを作製した。作製した耐火断熱ボードの密度を測定し、下記に記載の方法で、含水量(結晶水・自由水)、耐火性、形状保持性、形状保持率、及び熱伝導率を測定した。結果を下記表1に示す。なお、水和物としたときの組成は、X線回折により求めた。
【0052】
<使用材料>
・発泡樹脂成形体A:市販されているポリスチレン樹脂発泡ビーズ(直径1~5mm)を成形機(株式会社ダイセン工業製:VS-500)に充填し、スチームにより加熱して、発泡粒子間に空隙を有する状態で発泡粒子同士を融着させることにより、連続気泡を有する発泡樹脂成形体を製造した。連続空隙率は加圧度合いを調整することで制御した。スラリーを充填する前の発泡樹脂成形体は、連続空隙率36.8体積%であった。
・粉体原料1(RM1):カルシウムアルミネート(CaO43質量%、Al2O353質量%となるように電気炉で溶融・急冷した非晶質カルシウムアルミネート、ブレーン比表面積値6,100cm2/g、ガラス化率95%)100質量部と石膏(天然無水石膏粉砕品、ブレーン比表面積値4,600cm2/g、pH8以下)120質量部との混合物。水和物としたときの組成はエトリンガイト100%であった。
・粉体原料2(RM2):カルシウムアルミネート(CaO34質量%、ブレーン比表面積値4,500cm2/g、ガラス化率15%)100質量部と石膏(天然無水石膏粉砕品、ブレーン比表面積値4,600cm2/g、pH8以下)100質量部との混合物。水和物としたときの組成はエトリンガイト82%、水酸化アルミニウム8%、その他10%であった。
・粉体原料3(RM3):アウインビーライトセメント(BUZZI社製:BUZZI NEXT BASE)。水和物としたときの組成はエトリンガイト90%、その他10%であった。
・粉体原料4(RM4):β型半水石膏(ノリタケカンパニー社製:FT-2、平均粒子径15μm)。水和物としたときの組成は二水石膏100%であった。
・粉体原料5(RM5):β型半水石膏(ノリタケカンパニー社製:FT-2、平均粒子径15μm)100質量部と石膏(天然無水石膏粉砕品、ブレーン比表面積値4600cm2/g、pH8以下)100質量部との混合物。水和物としたときの組成は二水石膏40%、その他60%であった。
・粉体原料6(RM6):普通ポルトランドセメント(デンカ社製)。水和物としたときの組成はエトリンガイト1%、その他99%であった。
・粉体原料7(RM7):アルミナセメント(デンカ社製アルミナセメント1号)。水和物としたときの組成はCAH1040%、その他60%であった。
・粉体原料8(RM8):水酸化アルミニウム粉末(富士フイルム和光純薬製試薬、純度95%以上)。
・金属層含有被覆材(M1):クラフト紙を基材としたアルミクラフトテープ、厚さ0.2mm、アルミ箔層10μm、市販品。
【0053】
<発泡樹脂成形体の連続空隙率>
・連続空隙率:温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡樹脂成形体からサンプルを切り出し、該サンプルの外形寸法(縦10cm×横10cm×厚さ5cm)より見かけ体積(Va)を求め、該サンプルを温度23℃のエタノールの入ったメスシリンダー内に金網を使用して沈め、メスシリンダーを軽い力で叩くことにより軽い振動を加えることにより成形体中の空隙に存在している空気を脱気し、サンプルの体積が一定に達するまで続けた。そして、金網の体積を考慮して水位上昇分を読み取り、該サンプルの真の体積(Vb)を測定する。求められたサンプルの見かけ体積(Va)と真の体積(Vb)とから、次式により連続空隙率を求めた。
連続空隙率V(%)=〔(Va-Vb)/Va〕×100
【0054】
<含水量(結晶水・自由水)>
耐火断熱ボードから金属層含有被覆層を除去した後、20gサンプリングし、アセトンで自由水を溶解し、ろ過後、残渣物をよくアセトンで洗浄し、25℃の環境下、デシケータ中で48時間真空乾燥した。乾燥した硬化物について熱分析装置(昇温速度:10℃/分、空気中)を用い、50~200℃の範囲の質量減少量を測定することにより、結晶水量を算出した。なお、ここでいう結晶水は、アセトン等の乾燥によって除去できる自由水を除く、該耐火材中に含まれる化学的あるいは物理的に結合された水のことをいう。
また、耐火断熱ボードから金属層含有被覆層を除去した後、20gサンプリングし、40℃の乾燥オーブンで72時間加熱乾燥させ、乾燥前後の質量減少量を測定することにより、自由水量を算出した。
【0055】
<耐火性>
小型ガスバーナーと熱電対を用いて、耐火断熱ボードの表面温度が900℃となるようにガスバーナーの距離を調整して、裏面の温度を熱電対によって測定し、100℃に到達するまでの時間を計測した。すなわち100℃に到達する時間が長いほど耐火性に優れる。
【0056】
<熱伝導率>
迅速熱伝導率計(ボックス式プローブ法)により熱伝導率を測定した。
【0057】
<形状保持性>
耐火性試験後の試験体に亀裂、割れ、崩壊、欠損箇所がない場合をGood(良好)、亀裂、割れ、崩壊、欠損箇所が確認された場合をNG(不適)とした。
【0058】
<形状保持率>
試験体を電気炉の中に入れ900℃まで加熱し、1時間経過した後の試験体の体積を測定し、加熱前の試験体の体積と比較して形状保持率を算出した。
【0059】
【0060】
[実験例2]
実験例1の耐火断熱ボードと、金属層含有被覆材を用いなかったこと以外は実験例1と同様の方法で製造した耐火断熱ボードとを、それぞれ、「防耐火性能試験・評価業務方法書」(一般財団法人建材試験センター、2021)の「4.1.1 耐火性能試験」に記載の乾燥条件で、1日当たりの質量変化率が0.5%未満になるまで乾燥させ、実験例1と同様の方法で各試験を行った。結果を下記表2に示す。
【0061】
【0062】
[実験例3]
発泡樹脂成形体として表3に示す発泡樹脂成形体を用いたこと以外は、実験例1と同様の方法で耐火断熱ボードを製造し、各試験を行った。結果を下記表3に示す。
【0063】
<使用材料>
・発泡樹脂成形体B:市販されている発泡硬質ポリウレタン樹脂成形体を砕き、粒径1~5mmの粒状物に調整した。得られた粒状物を成形機(株式会社ダイセン工業製:VS-500)に充填し、スチームにより加熱して、発泡粒子間に空隙を有する状態で発泡粒子同士を融着させることにより、連続気泡を有する発泡樹脂成形体を製造した。連続空隙率は加圧度合いを調整することで制御した。スラリーを充填する前の発泡樹脂成形体は、連続空隙率49.9体積%であった。
・発泡樹脂成形体C:市販されているポリエチレンフォームを砕き、粒径1~5mmの粒状物に調整した。得られた粒状物を成形機(株式会社ダイセン工業製:VS-500)に充填し、スチームにより加熱して、発泡粒子間に空隙を有する状態で発泡粒子同士を融着させることにより、連続気泡を有する発泡樹脂成形体を製造した。連続空隙率は加圧度合いを調整することで制御した。スラリーを充填する前の発泡樹脂成形体は、連続空隙率27.0体積%であった。
・発泡樹脂成形体D:市販されているフェノール樹脂フォームを砕き、粒径1~5mmの粒状物に調整した。得られた粒状物を成形機(株式会社ダイセン工業製:VS-500)に充填し、スチームにより加熱して、発泡粒子間に空隙を有する状態で発泡粒子同士を融着させることにより、連続気泡を有する発泡樹脂成形体を製造した。連続空隙率は加圧度合いを調整することで制御した。スラリーを充填する前の発泡樹脂成形体は、連続空隙率67.9体積%であった。
【0064】
【0065】
[実験例4]
金属層含有被覆材として表4に示す金属層含有被覆材を用いたこと以外は、実験例1と同様の方法で耐火断熱ボードを製造し、各試験を行った。結果を下記表4に示す。
【0066】
<使用材料>
・銅層含有被覆材(M2):クラフト紙を基材とした銅箔積層被覆紙、厚さ0.2mm、銅箔層10μm。
・ステンレス層含有被覆材(M3):クラフト紙を基材としたステンレス箔積層被覆紙、厚さ0.2mm、ステンレス箔層10μm。
・ニッケル層含有被覆材(M4):クラフト紙を基材としたニッケル箔積層被覆紙、厚さ0.2mm、ニッケル箔層10μm。
【0067】
【0068】
[実験例5]
<耐火断熱構造体の製造>
図1及び2に示すように、実験例1及び2と同様の方法で製造した耐火断熱ボード(2)、(3)(厚み10mm)を用いて、
図2に示すような耐火断熱構造体(1)を作製した。耐火断熱構造体(1)のサイズは、縦1,200mm×横2,200mmとした。試験は、耐火断熱ボードの材料及び厚みを変えて試験終了後の耐火断熱構造体(1)の燃焼状態を確認した。なお、厚みを変える場合は、設置する枚数を変えることで行った。
【0069】
<耐火試験方法>
図1の側面図及び
図2の上面図に示すように、耐火断熱構造体(1)を耐火炉に設置し、加熱は外壁を模擬した窯業系サイディングボード(4)側で行い、ガスバーナー(トータル5基)から加炎し、ISO 834に準拠した標準加熱曲線で耐火断熱構造体(1)を1時間加熱した。その後、加熱を止めて耐火炉に設置した状態を3時間維持した。耐火炉から耐火断熱構造体(1)を取り外し、炉外側に配置されていた耐火断熱ボード(3)を剥がして柱(間柱)(8)の燃焼状態を確認した。結果を下記表5に示す。
【0070】
(使用材)
・窯業系サイディングボード:ニチハ社製、モエンサイディング、厚さ16mm。
・透湿防水シート:フクビ化学社製、スーパーエアテックスKD。
・構造用合板:ポリエチレン系、JAS規格品、特類、厚さ9mm。
・柱(間柱):木材(杉)、長さ15mm。
・胴縁:木材(杉)、長さ105mm。
【0071】