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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172445
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20241205BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090169
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100120499
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 淳
(72)【発明者】
【氏名】山下 敬司
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232CC21
3D232DA15
3D232DA43
3D232DA64
3D232DA82
3D232DA88
3D232DC02
3D232DC12
3D232DC33
3D232DC34
3D232DC38
3D232DD10
3D232EC24
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】路面状態に影響を受けることなく、運転支援のためのステアリング振動をドライバに認識させることが可能な運転支援装置を提供する。
【解決手段】プロセッサ152は、車両が走行している路面の状態を判定する路面状態判定部152aと、路面の状態の判定結果に基づいて、車両のドライバの運転を支援するためのステアリング振動の振動強度を演算する振動強度演算部152bと、を備え、振動強度演算部152bは、路面状態判定部152aによって路面が荒れていると判定された場合は路面が荒れていないと判定された場合に比べて振動強度を大きくする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行している路面の状態を判定する路面状態判定部と、
路面の状態の判定結果に基づいて、車両のドライバの運転を支援するためのステアリング振動の振動強度を演算する振動強度演算部と、を備え、
前記振動強度演算部は、前記路面状態判定部によって路面が荒れていると判定された場合は路面が荒れていないと判定された場合に比べて前記振動強度を大きくする、
運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定条件が成立したときには、ステアリングを振動させるための振動トルクを設定して、アシストトルクと振動トルクとの合算値を目標トルクとしてモータを制御し、所定条件を満たさずかつ目標トルクが所定の第1制限トルク以上であるときには目標トルクの最大値を第1制限トルクに制限する一方、所定条件を満たすときには、目標トルクの最大値に対する制限を変更することが公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-146858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、路面状態が荒れていると、路面の荒れに起因する振動がステアリングに伝わり、運転支援のためのステアリングの振動をドライバが認識しにくくなる問題がある。上記特許文献に記載された技術では、路面状態に応じて運転支援のためのステアリング振動をドライバが認識しにくくなることは何ら考慮されておらず、改善の余地がある。
【0005】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、路面状態に影響を受けることなく、運転支援のためのステアリング振動をドライバに認識させることが可能な運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
(1)車両が走行している路面の状態を判定する路面状態判定部と、
路面の状態の判定結果に基づいて、車両のドライバの運転を支援するためのステアリング振動の振動強度を演算する振動強度演算部と、を備え、
前記振動強度演算部は、前記路面状態判定部によって路面が荒れていると判定された場合は路面が荒れていないと判定された場合に比べて前記振動強度を大きくする、
運転支援装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、路面状態に影響を受けることなく、運転支援のためのステアリング振動をドライバに認識させることが可能な運転支援装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両に搭載されている運転支援システムの構成を示す模式図である。
図2】ステアリング振動ECUのプロセッサの機能ブロックを示す模式図である。
図3A】路面状態判定部が路面状態を判定する手法を説明するための模式図である。
図3B】路面状態判定部が路面状態を判定する手法を説明するための模式図である。
図4】路面状態判定部が路面状態を判定する他の手法を説明するための模式図である。
図5】ステアリングを振動させるための振動指令値(電流値)の例を示す特性図である。
図6】ステアリング振動ECUのプロセッサが所定の制御周期毎に行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る幾つかの実施形態について図を参照しながら説明する。しかしながら、これらの説明は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0010】
図1は、車両100に搭載されている運転支援システムの構成を示す模式図である。この運転支援システムは、例えば車両が走行中の車線を逸脱するような場合に、ドライバの運転を支援するためステアリングを意図的に振動させる。また、この運転支援システムは、路面状態に応じて運転支援のためのステアリングの振動強度を動的に変化させる。
【0011】
運転支援システムは、トルクセンサ110と、Gセンサ120と、エアサスペンションの圧力センサ130と、先進安全機能の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit 以下、ECUと称する)140と、ステアリング振動ECU150と、EPSモータ160と、ステアリング170と、を有している。これらは、コントローラエリアネットワーク(Controller Area Network (CAN))といった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0012】
トルクセンサ110は、ステアリング170のトルク(ドライバによる操舵トルク、および路面からの反力によるトルク)を検出する。Gセンサ120は車両にかかる加速度G、特に上下方向の加速度Gを検出する。圧力センサ130は、エアサスペンションのエアが入ったシリンダの圧力を検出する。先進安全機能ECU140は、先進安全機能によりドライバの運転を支援する先進安全システムのECUであり、ドライバの運転を支援するための情報をステアリング振動ECU150へ送信する。例えば、先進安全機能ECU140は、車両が車線を逸脱するような場合に、車両のドライバの運転を支援するため(より具体的には、ドライバに警告するため)、ステアリング170を振動させる振動要求をステアリング振動ECU150へ送信する。
【0013】
ステアリング振動ECU150は、プロセッサ152と、メモリ154と、通信インターフェース156とを有する。プロセッサ152は、1個または複数個のCPU及びその周辺回路を有し、メモリ154の作業領域に実行可能に展開されたコンピュータプログラムの実行により所定の機能を提供する。メモリ154は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。通信インターフェース156は、ステアリング振動ECU150を車内ネットワークまたは外部の通信ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。
【0014】
EPSモータ160は、電動パワーステアリング(Electric Power Steering:EPS)のモータであって、トルクセンサ110が検出した操舵トルクに基づいてその駆動トルクが制御され、ドライバによるステアリング170の操作をアシストする。ステアリング170は車内のドライバによって操作され、ドライバの操作に応じて前輪を転舵させる。
【0015】
また、EPSモータ160は、ステアリング170を振動させる振動要求が先進安全機能ECU140から送信されると、車両のドライバの運転を支援するため、ステアリング170を振動させる。
【0016】
図2は、ステアリング振動ECU150のプロセッサ152の機能ブロックを示す模式図である。プロセッサ152は、本開示に係る運転支援装置の一態様であり、路面状態判定部152aと、振動強度演算部152bと、振動要否判定部152cと、振動指令部152dと、を有する。プロセッサ152が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ152上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。つまり、プロセッサ152が有するこれらの各部は、プロセッサ152とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成される。
【0017】
路面状態判定部152aは、トルクセンサ110、Gセンサ120、または圧力センサ130の検出値に基づいて車両が走行している路面の状態(路面の荒れ具合)を判定する。これらのセンサの検出値は、路面が荒れているほど高周波成分を多く含む。例えば、トルクセンサ110は路面からステアリング170への反力を検出するため、トルクセンサ110の検出値は、路面が荒れているほど高周波成分を多く含む。Gセンサ120の検出値は、路面が荒れているほど上下方向の加速度Gに高周波成分を多く含む。エアサスペンションは路面が荒れているほど小刻みに動くため、圧力センサ130の検出値は、路面が荒れているほど高周波成分を多く含む。
【0018】
図3Aおよび図3Bは、路面状態判定部152aが路面状態を判定する手法を説明するための模式図である。具体的には、図3Aおよび図3Bは、これらのいずれかのセンサの検出値(特性C1、図中に実線で示す)と、検出値をローパスフィルタ(LPF)に通した値(特性C2、図中に破線で示す)が時間の経過に伴って変化する様子を示している。また、図3Aは滑らかな路面の場合を示しており、図3Bは荒れた路面の場合を示しており、図3Bの特性C1の方が図3Aの特性C1よりも高周波成分が多くなっている。なお、Gセンサ120の検出値としては、上下方向の加速度Gの検出値を用いる。
【0019】
路面状態判定部152aは、特性C1と特性C2の差分の絶対値を所定期間において積分し、積分値が所定の閾値以上の場合は路面が荒れている判定し、積分値が所定の閾値未満の場合は路面が荒れていないと判定する。路面状態判定部152aは、特性C1にF Hz以上の高周波成分が多く含まれる場合に路面が荒れていると判定してもよい。
【0020】
また、図4は、路面状態判定部152aが路面状態を判定する他の手法を説明するための模式図である。図4は、先進安全システムに含まれる車載カメラの画像に基づいて先進安全機能ECU140が取得した、車両から道路上の車線を表す白線までの距離が時間の経過に伴って変化する様子を示している。上述したように、先進安全機能ECU140は、車両が車線を逸脱するような場合に、ステアリング170を振動させる振動要求を送信する。このため、図4に示すように、車両から白線までの距離が短くなると所定時間(T1,T2,T3,T4)の間ステアリング170が振動するようにEPSモータ160が駆動される。これにより、時間T1の後、ステアリング170の振動を感知したドライバによって修正舵が行われ、車両から白線までの距離が増加することで車線の逸脱が解消されている。
【0021】
一方、時間T2,T3,T4では、ステアリング170を振動させた後、ドライバによって修正舵が行われておらず、白線までの距離が0を下回っている。路面状態判定部152aは、ステアリング170を振動させた後、所定時間(例えば3秒)以内に白線までの距離が増加していない場合は、ドライバが修正舵を行っていないと判定する。そして、路面状態判定部152aは、所定期間内に、ステアリング170を振動させても所定回数(例えば3回)以上連続して修正舵が行われていない場合は、路面からの反力によりステアリング170が振動し、ドライバが運転支援のためのステアリング振動を判別できなくなっているため、路面が荒れていると判定する。
【0022】
振動強度演算部152bは、路面の状態の判定結果に基づいて、車両のドライバの運転を支援するためのステアリング振動の振動強度を演算する。振動強度演算部152bは、路面状態判定部152aによって路面が荒れていると判定された場合は路面が荒れていないと判定された場合に比べて振動強度を大きくする。また、振動強度演算部152bは、路面状態判定部152aが判定した路面の状態に基づいて、路面が荒れているほど振動強度を大きくする。また、振動強度演算部152bは、路面状態判定部152aによって路面が荒れていないと判定された場合は、振動強度を予め定められた初期値に維持してもよい。
【0023】
振動要否判定部152cは、先進安全機能ECU140から送信された情報に基づいて、ドライバの運転を支援するためのステアリング170の振動の要否を判定する。振動要否判定部152cは、先進安全機能ECU140から振動要求が送信されると、ドライバの運転を支援するためのステアリング170の振動が必要であると判定する。
【0024】
振動指令部152dは、ドライバの運転を支援するためのステアリング170の振動が必要な場合、振動強度演算部152bが演算した振動強度に応じた振動指令値でステアリング170を振動させるようEPSモータ160へ指令する。図5は、ステアリング170を振動させるための振動指令値(電流値)の例を示す特性図である。図5に示すように、振動指令値は、デューティー比が定められたパルス状の電流値Isであり、振動強度演算部152bが演算した振動強度が高いほど電流値Isの値は大きくなり、振動トルクの振幅が大きくなる。
【0025】
振動指令部152dが振動強度に応じた振動指令値でEPSモータ160に指令することで、EPSモータ160は路面が荒れている場合は路面が荒れていない場合に比べて大きな振動強度でステアリング170を振動させる。これにより、路面が荒れている場合であっても、ドライバは運転支援のためのステアリング振動を認識することができる。したがって、路面が荒れている場合であっても、ドライバは、車両が車線を逸脱するような場合に、修正舵を行うことによって車両を車線内に留めることができる。EPSモータ160は、路面が荒れていない場合は振動強度を増加させないため、振動の音が抑制され、ドライバが振動を煩わしく感じてしまうことが抑制される。
【0026】
次に、図6のフローチャートに基づいて、ステアリング振動ECU150のプロセッサ152が行う処理について説明する。図6は、ステアリング振動ECU150のプロセッサ152が所定の制御周期毎に行う処理を示すフローチャートである。
【0027】
先ず、路面状態判定部152aが、車両が走行している路面の状態を判定する(ステップS10)。次に、振動強度演算部152bが、路面の状態の判定結果に基づいて、車両のドライバの運転を支援するためのステアリング振動の振動強度を演算する(ステップS12)。次に、振動要否判定部152cが、先進安全機能ECU140から振動要求があったか否かを判定し(ステップS14)、振動要求があった場合、振動指令部152dが、振動強度演算部152bが演算した振動強度に応じた振動指令値でステアリング170を振動させるようEPSモータ160へ指令する(ステップS16)。一方、ステップS14で振動要求がない場合、処理はステップS10へ戻る。
【符号の説明】
【0028】
152 プロセッサ
152a 路面状態判定部
152b 振動強度演算部
152c 振動要否判定部
152d 振動指令部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6