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特開2024-172449複合材料処方条件生成システム、及び学習済みモデル生成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172449
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】複合材料処方条件生成システム、及び学習済みモデル生成システム
(51)【国際特許分類】
   B29B 11/14 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B29B11/14 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090173
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 英也
(72)【発明者】
【氏名】中澤 幸仁
(72)【発明者】
【氏名】永井 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 公亮
(72)【発明者】
【氏名】大久保 康
(72)【発明者】
【氏名】齊田 靖治
【テーマコード(参考)】
4F201
【Fターム(参考)】
4F201AA50
4F201AJ08
4F201AM23
4F201AP05
4F201AP16
4F201AP19
4F201AP20
4F201AQ01
4F201AQ03
4F201AR06
4F201AR17
4F201AR20
4F201BA03
4F201BC02
4F201BC12
4F201BC25
4F201BM12
4F201BM14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原料である廃プラスチックの材質や物性に変動があっても、品質が安定した複合材料を製造できる最適な処方条件を速やかに生成できる複合材料処方条件生成システム、及びこれに用いる学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成システムを提供することである。
【解決手段】本発明の複合材料処方条件生成システムは、廃プラスチックを原料に含む複合材料の処方条件を生成する複合材料処方条件生成システムであって、前記複合材料の品質パラメータの目標情報と、前記廃プラスチックの材料特性情報と、が入力されると、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、前記複合材料の処方条件を生成して出力する生成部を備え、前記複合材料の処方条件は、前記廃プラスチックを含む原料の配合比と、前記複合材料の製造条件と、を含む、ことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを原料に含む複合材料の処方条件を生成する複合材料処方条件生成システムであって、
前記複合材料の品質パラメータの目標情報と、前記廃プラスチックの材料特性情報と、が入力されると、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、前記複合材料の処方条件を生成して出力する生成部を備え、
前記複合材料の処方条件は、前記廃プラスチックを含む原料の配合比と、前記複合材料の製造条件と、を含む、
ことを特徴とする複合材料処方条件生成システム。
【請求項2】
前記材料特性情報が、電磁波を前記廃プラスチックに照射したときに前記廃プラスチックから発生する電磁波を検出して得られる情報を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項3】
前記材料特性情報が、前記廃プラスチックの熱特性から得られる情報を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項4】
前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、X線領域、紫外線領域、可視光線領域、近赤外線領域、中遠赤外線領域、テラヘルツ波領域のうち少なくとも二つの領域の組み合わせである、
ことを特徴とする請求項2に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項5】
前記電磁波を検出して得られる情報が、前記廃プラスチックの2次元座標情報と対応付けて前記電磁波を検出して得られる情報である、
ことを特徴とする請求項2に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項6】
前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、少なくとも、近赤外線領域と、中遠赤外線領域と、の組み合わせである、
ことを特徴とする請求項2に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項7】
前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、少なくとも、可視光線領域と、近赤外線領域と、中遠赤外線領域と、の組み合わせである、
ことを特徴とする請求項2に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項8】
前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、可視光線領域、近赤外線領域、及び中遠赤外線領域の三つの領域と、X線領域、紫外線領域、及びテラヘルツ波領域のうち少なくとも一つの領域と、の組み合わせである、
ことを特徴とする請求項2に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項9】
前記電磁波を検出して得られる情報が、前記電磁波の分光情報である、
ことを特徴とする請求項2に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項10】
前記電磁波を検出して得られる情報が、前記電磁波の反射、吸収、透過、回折、屈折、発光、散乱、及びラマン散乱の少なくとも一つを含む情報である、
ことを特徴とする請求項2に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項11】
前記電磁波を検出して得られる情報が、前記電磁波の分光画像情報である、
ことを特徴とする請求項2に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項12】
前記熱特性が、融点、ガラス転移点、軟化点、熱分解温度、熱膨張率、結晶化温度、熱伝導率、融解エントロピー、及び融解エンタルピーの少なくとも一つである、
ことを特徴とする請求項3に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項13】
前記熱特性が、熱重量・示差熱同時分析(TG-DTA)法、示差走査熱量分析(DSC)法、熱機械分析(TMA)法、熱分解GC-MS法、動的粘弾性法、メルトフローレート法、及びスパイラルフロー法の少なくとも一つの測定方法から得られる熱特性である、
ことを特徴とする請求項3に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項14】
前記品質パラメータの目標情報が、前記複合材料の難燃性、剛性、耐衝撃性、及び耐熱性の少なくともいずれか一つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項15】
前記品質パラメータの目標情報が、前記複合材料の難燃性と、それに加えて、前記複合材料の剛性、耐衝撃性、及び耐熱性の少なくともいずれか一つと、の複数である、
ことを特徴とする請求項1に記載の複合材料処方条件生成システム。
【請求項16】
廃プラスチックを原料に含む複合材料の処方条件を生成する学習済みモデルを生成する、学習済みモデル生成システムであって、
前記廃プラスチックの材料特性情報と、前記複合材料の処方条件と、前記複合材料の品質パラメータの目標情報と、を含むデータセットを取得するデータ取得部と、
前記廃プラスチックの材料特性情報と、前記複合材料の処方条件と、を説明変数として、及び前記複合材料の品質パラメータの目標情報を目的変数として学習する機械学習部と、を備え、
前記複合材料の処方条件は、前記廃プラスチックを含む原料の配合比と、前記複合材料の製造条件と、を含む、
ことを特徴とする学習済みモデル生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料処方条件生成システム、及び学習済みモデル生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、バージン材と比較して、材料特性のばらつきが非常に大きい。これは、廃プラスチックの使用状況、混錬や成形時の熱履歴、市場使用時環境による劣化、異物混入等のばらつきが大きいことによるものである。現在は、廃プラスチックのうち、リサイクルし易い、材質や物性の変動が少ないもののみが選りすぐられ、再生材として使われている。
【0003】
しかし、今後は、より地球環境負荷低減が求められる社会となり、プラスチックのリサイクル需要が増える。これに伴い、様々な出元からの廃プラスチックを入手して質及び量を確保する必要がある。その際には、繰り返しリサイクルされ劣化が大きいもの、添加剤を複数種含むもの、夾雑物を含むものなど、質が低い廃プラスチックの混入も見込まれる。
【0004】
このように様々な出元から入手した廃プラスチックの材質や物性を判別して、再生材化のための処方条件を見出すことは非常に困難である。従来、再生材化の処方条件は、熟練作業者の勘と経験に頼って複数の処方条件や試作を繰り返すことで決められていた。この方法では、材質や物性に変動がある廃プラスチックから品質が安定した複合材料を製造できる最適な処方条件を速やかに生成することはできなかった。そこで、特許文献1では、樹脂流動性から難燃剤の劣化を推定し、追加すべき難燃剤量を推定する方法が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法は、再資源化できる材料が変性ポリフェニレンエーテル樹脂の廃プラスチックという特定の材料に限定される方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-256486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものである。本発明が解決しようとする課題は、原料である廃プラスチックの材質や物性に変動があっても、品質が安定した複合材料を製造できる最適な処方条件を速やかに生成できる複合材料処方条件生成システム、及びこれに用いる学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記課題の原因等について検討した。その結果、本発明者は、前記複合材料の品質パラメータの目標情報と、前記廃プラスチックの材料特性情報と、が入力されると、前記複合材料の処方条件を生成して出力する学習済みモデルを用いることによって、上記課題を解決できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.廃プラスチックを原料に含む複合材料の処方条件を生成する複合材料処方条件生成システムであって、
前記複合材料の品質パラメータの目標情報と、前記廃プラスチックの材料特性情報と、が入力されると、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、前記複合材料の処方条件を生成して出力する生成部を備え、
前記複合材料の処方条件は、前記廃プラスチックを含む原料の配合比と、前記複合材料の製造条件と、を含む、
ことを特徴とする複合材料処方条件生成システム。
【0009】
2.前記材料特性情報が、電磁波を前記廃プラスチックに照射したときに前記廃プラスチックから発生する電磁波を検出して得られる情報を含む、
ことを特徴とする第1項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0010】
3.前記材料特性情報が、前記廃プラスチックの熱特性から得られる情報を含む、
ことを特徴とする第1項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0011】
4.前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、X線領域、紫外線領域、可視光線領域、近赤外線領域、中遠赤外線領域、テラヘルツ波領域のうち少なくとも二つの領域の組み合わせである、
ことを特徴とする第2項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0012】
5.前記電磁波を検出して得られる情報が、前記廃プラスチックの2次元座標情報と対応付けて前記電磁波を検出して得られる情報である、
ことを特徴とする第2項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0013】
6.前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、少なくとも、近赤外線領域と、中遠赤外線領域と、の組み合わせである、
ことを特徴とする第2項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0014】
7.前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、少なくとも、可視光線領域と、近赤外線領域と、中遠赤外線領域と、の組み合わせである、
ことを特徴とする第2項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0015】
8.前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、可視光線領域、近赤外線領域、及び中遠赤外線領域の三つの領域と、X線領域、紫外線領域、及びテラヘルツ波領域のうち少なくとも一つの領域と、の組み合わせである、
ことを特徴とする第2項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0016】
9.前記電磁波を検出して得られる情報が、前記電磁波の分光情報である、
ことを特徴とする第2項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0017】
10.前記電磁波を検出して得られる情報が、前記電磁波の反射、吸収、透過、回折、屈折、発光、散乱、及びラマン散乱の少なくとも一つを含む情報である、
ことを特徴とする第2項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0018】
11.前記電磁波を検出して得られる情報が、前記電磁波の分光画像情報である、
ことを特徴とする第2項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0019】
12.前記熱特性が、融点、ガラス転移点、軟化点、熱分解温度、熱膨張率、結晶化温度、熱伝導率、融解エントロピー、及び融解エンタルピーの少なくとも一つである、
ことを特徴とする第3項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0020】
13.前記熱特性が、熱重量・示差熱同時分析(TG-DTA)法、示差走査熱量分析(DSC)法、熱機械分析(TMA)法、熱分解GC-MS法、動的粘弾性法、メルトフローレート法、及びスパイラルフロー法の少なくとも一つの測定方法から得られる熱特性である、
ことを特徴とする第3項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0021】
14.前記品質パラメータの目標情報が、前記複合材料の難燃性、剛性、耐衝撃性、及び耐熱性の少なくともいずれか一つである、
ことを特徴とする第1項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0022】
15.前記品質パラメータの目標情報が、前記複合材料の難燃性と、それに加えて、前記複合材料の剛性、耐衝撃性、及び耐熱性の少なくともいずれか一つと、の複数である、
ことを特徴とする第1項に記載の複合材料処方条件生成システム。
【0023】
16.廃プラスチックを原料に含む複合材料の処方条件を生成する学習済みモデルを生成する、学習済みモデル生成システムであって、
前記廃プラスチックの材料特性情報と、前記複合材料の処方条件と、前記複合材料の品質パラメータの目標情報と、を含むデータセットを取得するデータ取得部と、
前記廃プラスチックの材料特性情報と、前記複合材料の処方条件と、を説明変数として、及び前記複合材料の品質パラメータの目標情報を目的変数として学習する機械学習部と、を備え、
前記複合材料の処方条件は、前記廃プラスチックを含む原料の配合比と、前記複合材料の製造条件と、を含む、
ことを特徴とする学習済みモデル生成システム。
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記手段により、原料である廃プラスチックの材質や物性に変動があっても、品質が安定した複合材料を製造できる最適な処方条件を速やかに生成できる複合材料処方条件生成システム、及びこれに用いる学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】複合材料処方条件生成システムの構成例を示す図
図2】廃プラスチックの再生材化のフローチャート
図3】廃プラスチックの再生材化のイメージ図
図4】学習済みモデル生成システムの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の複合材料処方条件生成システムは、廃プラスチックを原料に含む複合材料の処方条件を生成する。当該複合材料処方条件生成システムは、複合材料の処方条件を生成して出力する生成部を備える。当該生成部は、複合材料の品質パラメータの目標情報と、廃プラスチックの材料特性情報と、が入力されると、複合材料の処方条件を生成して出力する。この際、生成部は、機械学習により生成された学習済みモデルを用いる。複合材料の処方条件は、廃プラスチックを含む原料の配合比と、複合材料の製造条件と、を含む。この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0027】
材料特性情報は、電磁波を廃プラスチックに照射したときに廃プラスチックから発生する電磁波を検出して得られる情報を含むことが好ましい。廃プラスチックから発生する電磁波からは、様々な化学的又は物理的状態の情報が得られる。当該情報は、例えば元素、結合、官能基、電子状態、励起状態、振動状態、回転状態、結晶状態、分子内相互作用、分子間相互作用、分子集合状態、相分離状態、分散状態、表面粗さ、空隙等である。また、電磁波を検出することで、計測される現象が関わる空間スケールが、ナノメートルオーダーのミクロな領域からミリメートルオーダー以上のマクロな領域までおよぶ。これにより、様々な材料特性情報を非破壊で得られる。
【0028】
材料特性情報は、廃プラスチックの熱特性から得られる情報を含むことが好ましい。熱特性から得られる情報からは、廃プラスチックの高次構造が分かる。このような情報を生成部に入力することによって、より最適な処方条件を速やかに生成できるようになる。
【0029】
廃プラスチックに照射する電磁波の領域は、X線領域、紫外線領域、可視光線領域、近赤外線領域、中遠赤外線領域、テラヘルツ波領域のうち少なくとも二つの領域の組み合わせであることが好ましい。これによって、より様々な情報を得ることができる。複数の領域を組み合わせることで、情報の種類及び幅が広がり、特定の領域だけでは得られない情報を得ることができる。
【0030】
電磁波を検出して得られる情報は、廃プラスチックの2次元座標情報と対応付けて電磁波を検出して得られる情報であることが好ましい。これによって、より詳細な情報が得られる。
【0031】
廃プラスチックに照射する電磁波の領域は、少なくとも、近赤外線領域と、中遠赤外線領域と、の組み合わせであることが好ましい。これによって、複合材料の処方条件の生成ためにより適した情報を得ることができる。
【0032】
廃プラスチックに照射する電磁波の領域は、少なくとも、可視光線領域と、近赤外線領域と、中遠赤外線領域と、の組み合わせであることが好ましい。これによって、複合材料の処方条件の生成ためにより適した情報を得ることができる。
【0033】
廃プラスチックに照射する電磁波の領域は、可視光線領域、近赤外線領域、及び中遠赤外線領域の三つの領域と、X線領域、紫外線領域、及びテラヘルツ波領域のうち少なくとも一つの領域と、の組み合わせであることが好ましい。これによって、複合材料の処方条件の生成ためにより適した情報を得ることができる。
【0034】
電磁波を検出して得られる情報は、電磁波の分光情報であることが好ましい。これによって、より最適な処方条件を速やかに生成できるようになる。
【0035】
電磁波を検出して得られる情報は、電磁波の反射、吸収、透過、回折、屈折、発光、散乱、及びラマン散乱の少なくとも一つを含む情報であることが好ましい。これによって、より最適な処方条件を速やかに生成できるようになる。
【0036】
電磁波を検出して得られる情報は、電磁波の分光画像情報であることが好ましい。これによって、より最適な処方条件を速やかに生成できるようになる。
【0037】
熱特性は、融点、ガラス転移点、軟化点、熱分解温度、熱膨張率、結晶化温度、熱伝導率、融解エントロピー、及び融解エンタルピーの少なくとも一つであることが好ましい。これによって、より詳細な廃プラスチックの高次構造が分かる。
【0038】
熱特性は、以下の測定方法の少なくとも一つから得られる熱特性であることが好ましい。これによって、より詳細な廃プラスチックの高次構造が分かる。
・熱重量・示差熱同時分析(TG-DTA)法
・示差走査熱量分析(DSC)法
・熱機械分析(TMA)法
・熱分解GC-MS法
・動的粘弾性法
・メルトフローレート法
・スパイラルフロー法
【0039】
品質パラメータの目標情報は、複合材料の難燃性、剛性、耐衝撃性、及び耐熱性の少なくともいずれか一つであることが好ましい。これによって、より品質が安定した複合材料を製造できる処方条件を生成できる。
【0040】
品質パラメータの目標情報は、複合材料の難燃性と、それに加えて、複合材料の剛性、耐衝撃性、及び耐熱性の少なくともいずれか一つと、の複数であることが好ましい。これによって、より品質が安定した複合材料を製造できる処方条件を生成できる。
【0041】
本発明の学習済みモデル生成システムは、廃プラスチックを原料に含む複合材料の処方条件を生成する学習済みモデルを生成する。当該学習済みモデル生成システムは、データ取得部と、機械学習部と、を備える。データ取得部は、廃プラスチックの材料特性情報と、複合材料の処方条件と、複合材料の品質パラメータの目標情報と、を含むデータセットを取得する。機械学習部は、廃プラスチックの材料特性情報と、複合材料の処方条件と、を説明変数として学習する。また、機械学習部は、複合材料の品質パラメータの目標情報を目的変数として学習する。複合材料の処方条件は、廃プラスチックを含む原料の配合比と、複合材料の製造条件と、を含む。
【0042】
以下、本発明の詳細について説明する。本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0043】
[複合材料処方条件生成システム]
本発明の複合材料処方条件生成システムは、廃プラスチックを原料に含む複合材料の処方条件を生成する。当該複合材料処方条件生成システムは、複合材料の処方条件を生成して出力する生成部を備える。当該生成部は、複合材料の品質パラメータの目標情報と、廃プラスチックの材料特性情報と、が入力されると、複合材料の処方条件を生成して出力する。この際、生成部は、機械学習により生成された学習済みモデルを用いる。複合材料の処方条件は、廃プラスチックを含む原料の配合比と、複合材料の製造条件と、を含む。
【0044】
本発明の複合材料処方条件生成システムは、生成部の他に、制御部、記憶部、表示部等を備えていてもよい。
【0045】
図1は、本発明の複合材料処方条件生成システムの構成例を示す図である。図1に示す複合材料処方条件生成システム10は、生成部11、制御部12、記憶部13、及び表示部14を備える。
【0046】
複合材料の品質には、原料の配合比が大きく影響する。また当該品質には、原料の混錬条件、添加剤の使用量、成形条件などからなる複合材料の製造条件も大きく影響する。このように品質に影響する要素が多いことから、複合材料の処方条件として最適なものを見つけることは困難である。また、これは、材質や物性に変動がある廃プラスチックを原料に含む場合において、特に困難である。本発明の複合材料処方条件生成システムは、機械学習により生成された学習済みモデルを用いる。これによって、本発明の複合材料処方条件生成システムは、作業者のスキルによらず、最適な処方条件を速やかに生成できる。
【0047】
「廃プラスチック」は、プレコンシューマー材であってもポストコンシューマー材であってもよい。プレコンシューマー材とは、製品の製造工程における端材、不良品、在庫の処分など、市場で製品として使用されていない材料のことをいう。ポストコンシューマー材とは、製品として市場に出荷された材料のことをいう。ポストコンシューマー材には、使用されたもの及び使用されていないものの両方が含まれる。
【0048】
「複合材料」とは、複数種の原料が複合されてなる材料のことをいう。本発明に係る複合材料は、少なくとも廃プラスチックを原料に含む。複数種の原料は、複数種の廃プラスチックでもよく、一種の廃プラスチックと他の材料でもよく、複数種の廃プラスチックと他の材料でもよい。複合材料の原料となる他の材料は、例えば難燃剤等の添加剤である。
【0049】
(複合材料の処方条件)
複合材料の処方条件には、廃プラスチックを含む原料の配合比と、複合材料の製造条件と、が含まれる。すなわち、本発明の複合材料処方条件生成システムは、複合材料の処方条件として、廃プラスチックを含む原料の配合比と、複合材料の製造条件と、を生成する。
【0050】
複合材料の製造条件は、例えば廃プラスチックを含む各原料の混錬時の条件や、複合材料の成形時の条件である。混錬時の条件とは、例えば加熱温度や剪断速度である。再生材の品質には、複合材料の配合比が大きく影響する。また、これとともに、複数の材料を調合する混錬条件による、破砕、分散混合、分配混合等の状態が大きく影響する。
【0051】
(複合材料の品質パラメータの目標情報)
複合材料の品質パラメータの目標情報は、製造したい複合材料の品質パラメータである。複合材料の品質パラメータの目標情報は、複合材料の難燃性、剛性、耐衝撃性、及び耐熱性の少なくともいずれか一つであることが好ましい。また、当該目標情報は、難燃性と、それに加えて、剛性、耐衝撃性、及び耐熱性の少なくともいずれか一つと、の複数であることがより好ましい。これによって、より品質が安定した複合材料を製造できる処方条件を生成できる。
【0052】
(廃プラスチックの材料特性情報)
「廃プラスチックの材料特性情報」とは、廃プラスチックの材料としての特性に関する情報のことをいう。廃プラスチックの材料特性情報のうち、ポリマーの一次構造に関係するものの例としては、分極率、双極子モーメント、誘電率等が挙げられる。廃プラスチックの材料特性情報のうち、ポリマーの高次構造に関係するものの例としては、レオロジー的物性、熱的性質、光学的性質等が挙げられる。ポリマーの高次構造とは、絡み合い、結晶、及び相分解である。レオロジー的物性の例としては、弾性率(固さ)、粘度、密度、ヒステリシス、破壊挙動等が挙げられる。熱的性質の例としては、ガラス転移点、融点、流動性等が挙げられる。光学的性質の例としては、屈折率、構造色、透明性、色相等が挙げられる。
【0053】
廃プラスチックの材料特性情報は、電磁波を前記廃プラスチックに照射したときに前記廃プラスチックから発生する電磁波を検出して得られる情報を含むことが好ましい。廃プラスチックから発生する電磁波からは、様々な化学的又は物理的状態の情報が得られる。当該情報は、例えば元素、結合、官能基、電子状態、励起状態、振動状態、回転状態、結晶状態、分子内相互作用、分子間相互作用、分子集合状態、相分離状態、分散状態、表面粗さ、空隙等である。また、電磁波を検出することで、計測される現象が関わる空間スケールが、ナノメートルオーダーのミクロな領域からミリメートルオーダー以上のマクロな領域までおよぶ。これにより、様々な材料特性情報を非破壊で得られる。
【0054】
廃プラスチックに照射する電磁波の領域は、X線領域、紫外線領域、可視光線領域、近赤外線領域、中遠赤外線領域、テラヘルツ波領域のうち少なくとも二つの領域の組み合わせであることが好ましい。これによって、より様々な情報を得ることができる。複数の領域を組み合わせることで、情報の種類及び幅が広がり、特定の領域だけでは得られない情報を得ることができる。
【0055】
廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、少なくとも、近赤外線領域と、中遠赤外線領域と、の組み合わせであることが好ましい。これによって、複合材料の処方条件の生成ためにより適した情報を得ることができる。
【0056】
前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、少なくとも、可視光線領域と、近赤外線領域と、中遠赤外線領域と、の組み合わせであることが好ましい。これによって、複合材料の処方条件の生成ためにより適した情報を得ることができる。
【0057】
前記廃プラスチックに照射する前記電磁波の領域が、可視光線領域、近赤外線領域、及び中遠赤外線領域の三つの領域と、X線領域、紫外線領域、及びテラヘルツ波領域のうち少なくとも一つの領域と、の組み合わせであることが好ましい。これによって、複合材料の処方条件の生成ためにより適した情報を得ることができる。
【0058】
本発明における各電磁波の領域は、以下の波長の範囲で定義される。
本発明におけるX線領域 :1pm以上10nm未満
本発明における紫外線領域 :10nm以上400nm未満
本発明における可視光線領域 :400nm以上800nm未満
本発明における近赤外線領域 :800nm以上2.5μm未満
本発明における中遠赤外線領域 :2.5μm以上30μm未満
本発明におけるテラヘルツ波領域:30μm以上3mm以下
【0059】
なお、一般的には、中赤外線領域、遠赤外線領域、及びテラヘルツ波領域は、以下の波長領域を示す場合もある。この場合では、遠赤外線領域とテラヘルツ波領域は一部重なっている。これらの領域は、電波と光の境界領域であることから、計測に用いる装置によって区別されることがある。
一般的な中赤外線領域 :2.5~25μm
一般的な遠赤外線領域 :25~1000μm
一般的なテラヘルツ波領域:30~3000μm
【0060】
電磁波を検出して得られる情報は、廃プラスチックの2次元座標情報と対応付けて電磁波を検出して得られる情報であることが好ましい。これによって、より詳細な情報が得られる。
【0061】
電磁波を検出して得られる情報は、電磁波の分光情報であることが好ましく、分光画像情報であることがより好ましい。分光画像情報の例としては、モノクロカメラ、カラーカメラ、マルチスペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラ、顕微鏡、ラマンイメージング、X線タルボ・ロー、X線CT等で取得された分光画像情報が挙げられる。また、当該情報は、電磁波の反射、吸収、透過、回折、屈折、発光、散乱、及びラマン散乱の少なくとも一つを含む情報であることが好ましい。これらの詳細な情報を生成部に入力することによって、より最適な処方条件を速やかに生成できるようになる。
【0062】
電磁波照射源は、例えば、廃プラスチックに対して所定の波長の光を照射可能なものである。電磁波照射源としては、広範囲の波長域の光源が適用可能である。電磁波照射源は、例えば、X線、紫外線、可視光線、近赤外線、中遠赤外線、テラヘルツ波等を照射できるものである。X線を用いた計測の例としては、X線透過、X線回折、蛍光X線、小角X線散乱、X線タルボ・ロー、X線CT等が挙げられる。電磁波検出部は、例えば、電磁波照射源からの電磁波を受けて廃プラスチックが反射、透過又は放出する電磁波の状態を検出可能なものである。電磁波の放出の例としては、蛍光、燐光、ラマン散乱光等が挙げられる。電磁波検出部の例としては、モノクロカメラ、カラーカメラ、近赤外カメラ、赤外カメラ、マルチスペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラ等が挙げられる。電磁波照射源及び電磁波検出部は、取得するデータの種類に合わせて適宜選択される。
【0063】
廃プラスチックの材料特性情報は、廃プラスチックの熱特性から得られる情報を含むことが好ましい。熱特性から得られる情報からは、廃プラスチックの高次構造が分かる。このような情報を生成部に入力することによって、より最適な処方条件を速やかに生成できるようになる。
【0064】
廃プラスチックの熱特性は、融点、ガラス転移点、軟化点、熱分解温度、熱膨張率、結晶化温度、熱伝導率、融解エントロピー、及び融解エンタルピーの少なくとも一つであることが好ましい。また、廃プラスチックの熱特性は、以下の測定方法の少なくとも一つから得られる熱特性であることが好ましい。これによって、より詳細な廃プラスチックの高次構造が分かる。
・熱重量・示差熱同時分析(TG-DTA)法
・示差走査熱量分析(DSC)法
・熱機械分析(TMA)法
・熱分解GC-MS法
・動的粘弾性法
・メルトフローレート法
・スパイラルフロー法
【0065】
廃プラスチックの材料特性情報は、電磁波を廃プラスチックに照射したときに廃プラスチックから発生する電磁波を検出して得られる情報と、廃プラスチックの熱特性から得られる情報と、の両方を含むことが好ましい。このような情報を生成部に入力することによって、より最適な処方条件を速やかに生成できるようになる。
【0066】
図2は、本発明の複合材料処方条件生成システムを用いる工程を含む、廃プラスチックの再生材化のフローチャートの例である。
【0067】
S1-1では、廃プラスチックの材料特性情報を取得する。この工程で取得する材料特性情報は、一種でも複数種でもよいが、より最適な処方条件を速やかに生成する観点から複数種であることが好ましい。
【0068】
S1-2では、複合材料の品質パラメータの目標情報と廃プラスチックの材料特性情報を、複合材料処方条件生成システムが備える生成部に入力する。
【0069】
S1-3では、生成部が、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、複合材料の処方条件を生成して出力する。
【0070】
S1-4では、生成部が出力した複合材料の処方条件に基づいて、複合材料の製造テストを行う。製造テストの結果が良かった場合は、S1-5で製品化する。製造テストの結果が悪かった場合は、S1-6で、製造テストの結果に基づいて、学習済みモデルを更新する。なお、製造テストの結果が良かった場合にも、製造テストの結果に基づいて、学習済みモデルを更新してもよい。
【0071】
S1-6で学習済みモデルを更新した後は、S1-3に戻り、再び生成部が複合材料の処方条件を生成して出力する。
【0072】
このようなフローチャートに従って各工程が行われることによって、廃プラスチックの再生材化ができる。
【0073】
図3は、本発明の複合材料処方条件生成システムを用いた廃プラスチックの再生材化の一実施形態のイメージ図である。以下、図3で例示する廃プラスチックの再生材化について説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0074】
S2-1では、材料特性情報として、廃プラスチックのNIR(近赤外線)領域の分光情報を取得する。NIR領域の分光情報に基づき、廃プラスチックの母材樹脂を判別する。この判別結果に基づき、廃プラスチックを選別する。また、PVC(ポリ塩化ビニル)及び臭素系難燃剤を含有する材を除去する。NIR領域の分光情報は、例えばNIR領域の分光画像情報である。NIR領域の分光画像情報は、例えばハイパースペクトルカメラであるSPECIM FX17(コニカミノルタ社製)を用いて取得できる。NIR領域の分光情報では、濃色材(特に黒色材)や金属の判別は難しいことがある。
【0075】
S2-2では、材料特性情報として、廃プラスチックのMIR(中赤外線)領域の分光情報を取得する。MIR領域の分光情報に基づき、廃プラスチックの母材樹脂を判別する。MIR領域の分光情報に基づくことで、濃色材の判別も可能である。この判別結果に基づき、廃プラスチックを選別する。また、金属等のゴミを除去する。MIR領域の分光情報は、例えばMIR領域の分光画像情報である。MIR領域の分光画像情報は、例えばハイパースペクトルカメラであるSPECIM FX50(コニカミノルタ社製)を用いて取得できる。
【0076】
S2-3では、材料特性情報として、廃プラスチックの可視光領域の分光情報を、各樹脂種でそれぞれ取得する。可視光領域の分光情報に基づき、廃プラスチックの色を判別する。この判別結果に基づき、廃プラスチックを選別する。可視光領域の分光情報は、例えば可視光領域の分光画像情報である。可視光領域の分光画像情報は、例えばハイパースペクトルカメラであるSPECIM FX10(コニカミノルタ社製)を用いて取得できる。S2-3では、分析装置の光源を紫外線にして、蛍光を検出してもよい。
【0077】
S2-4では、材料特性情報として、廃プラスチックの分光情報を、テラヘルツ波、ラマン散乱光、蛍光、X線等を用いて、各樹脂種及び各色でそれぞれ取得する。取得した分光情報に基づき、廃プラスチックが含有する添加物(タルク、ガラスファイバー、添加剤等)や廃プラスチックの使用環境の履歴に伴う酸化分解物の混入などを判別する。この判別結果に基づき、廃プラスチックを選別する。
【0078】
S2-5では、材料特性情報として、廃プラスチックの熱特性から得られる情報を取得する。熱特性から得られる情報に基づいては、廃プラスチックの選別は行わない。
【0079】
S2-6では、S2-1からS2-5で取得した廃プラスチックの材料特性情報を集約して解析する。
【0080】
S2-7では、解析したデータに基づいて、選別した廃プラスチックを仕分けする。また、仕分けした各ロットの品質(難燃性、剛性、耐衝撃性、耐熱性等)を判断する。ここでの品質判断には、廃プラスチックの材料特性情報が入力されると当該廃プラスチックの品質を出力する学習済みモデルを使用してもよい。
【0081】
S2-8では、仕分けしたロットごとに廃プラスチックを混錬及びペレタイズする。これにより、複合材料に用いる再生樹脂原料を得る。
【0082】
S2-9では、本発明の複合材料処方条件生成システムを用いて、複合材料の処方条件を生成する。具体的には、まず、複合材料の品質パラメータの目標情報と、廃プラスチックの材料特性情報と、がシステムの生成部に入力される。当該生成部が、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、複合材料の処方条件を生成して出力する。複合材料の処方条件は、廃プラスチックを含む原料の配合比と、複合材料の製造条件と、を含む。
【0083】
S2-10では、S2-9で生成された複合材料の処方条件に基づいて、混錬及びペレタイズする。この際、S2-9で生成された複合材料の処方条件に基づいて、適宜添加物を添加する。
【0084】
S2-11では、S2-10で得たペレットに対して、S2-1からS2-5と同様の材料特性情報を取得する。この材料特性情報を学習済みモデルに入力することで、当該ペレットを用いた成形物の物性(S2-9で入力した複合材料の品質パラメータの目標情報)の予測もできる。この予測値を確認することで、成形せずにペレットの段階で成形物の物性が問題ないか判断できる。
【0085】
S2-11における予測値がOKであった場合は、S2-12において成形する。S2-11における予測値がNGであった場合は、S-14において、S2-11における予測値に基づいて処方条件の生成に用いる学習済みモデルを更新する。S-14の後、再びS2-9において、本発明の複合材料処方条件生成システムを用いて、複合材料の処方条件を生成する。
【0086】
S-13では、成形物の品質(難燃性、剛性、耐衝撃性、耐熱性等)を試験により確認する。
【0087】
S2-13で確認した品質がOKであった場合は、再生材化は完了する。S2-13で確認した品質がNGであった場合は、S-14において、S2-13における試験結果に基づいて処方条件の生成に用いる学習済みモデルを更新する。S-14の後、再びS2-9において、本発明の複合材料処方条件生成システムを用いて、複合材料の処方条件を生成する。
【0088】
[学習済みモデル生成システム]
本発明の学習済みモデル生成システムは、廃プラスチックを原料に含む複合材料の処方条件を生成する学習済みモデルを生成する。
【0089】
「学習済みモデル」とは、学習済みパラメータが組み込まれた推論プログラムのことをいう。
【0090】
「学習済みパラメータ」とは、学習用データセットを用いた学習の結果得られたパラメータ(係数)のことをいう。学習済みパラメータは、学習用データセットを学習用プログラムに対して入力することで、一定の目的のために機械的に調整されることで、生成される。
【0091】
「学習用プログラム」とは、学習用データセットの中から一定の規則を見出し、その規則を表現するモデルを生成するためのアルゴリズムを実行するプログラムのことをいう。採用する学習手法による学習を実現するために、コンピュータに実行させる手順を規定するプログラムが、学習用プログラムに該当する。
【0092】
「学習用データセット」とは、対象とする学習の手法による解析を容易にするために生成された二次的な加工データのことをいう。学習用データセットは、生データに対して、変換及び/又は加工処理を施すことによって生成される。変換及び/又は加工処理は、欠測値及び外れ値の除去等の前処理、ラベル情報(正解データ)等の別個のデータの付加等によって行われる。学習用データセットは、データの集合体である。「学習用データセット」を単に「データセット」ともいう。本発明に係るデータセットは、廃プラスチックの材料特性情報と、複合材料の処方条件と、複合材料の品質パラメータの目標情報と、を含む。
【0093】
「推論プログラム」とは、組み込まれた学習済みパラメータを適用することで、入力に対して一定の結果を出力することを可能にするプログラムのことをいう。
【0094】
本発明の学習済みモデル生成システムは、データ取得部と、機械学習部と、を備える。当該学習済みモデル生成システムは、データ取得部及び機械学習部の他に、制御部、記憶部、表示部等を備えていてもよい。
【0095】
図4は、本発明の学習済みモデル生成システムの構成例を示す図である。図4に示す学習済みモデル生成システム20は、データ取得部21、機械学習部22、制御部23、記憶部24、及び表示部25を備える。
【0096】
データ取得部は、廃プラスチックの材料特性情報と、複合材料の処方条件と、複合材料の品質パラメータの目標情報と、を含むデータセットを取得する。各データの詳細は上述のとおりである。
【0097】
複合材料の処方条件は、上述のとおり、廃プラスチックを含む原料の配合比と、複合材料の製造条件と、を含む。
【0098】
一般的に、材料設計に用いる機械学習においては、説明変数x(材料の特徴を表す記述子やプロセス条件など)と目的変数y(材料として望ましい品質特性など)の間で数理モデルy=f(x)を構築する。この構築されたモデルに基づいて、望ましい材料やプロセスを設計することになる。xの値からyの値を予測することをモデルの順解析と呼ぶ。yの値からxの値を予測することをモデルの逆解析と呼ぶ。一般的には、所望の目的物性を達成するために材料設計やプロセス設計を行うことが多い。この材料設計やプロセス設計は、モデルの逆解析に該当する。
【0099】
機械学習部は、廃プラスチックの材料特性情報(X1)と、複合材料の処方条件(X2)と、を説明変数として学習する。また、機械学習部は、複合材料の品質パラメータの目標情報(Y)を目的変数として学習する。
【0100】
機械学習部は、「プラスチック製品としての目的物性に該当する品質パラメータの目標情報(Y)が、ある材料特性情報(X1)と処方条件(X2)で成立する」という関係をデータセットから学習する。このように学習されたX1、X2及びYの関係に基づき、学習済みモデルが生成される。
【0101】
生成された学習済みモデルを用いて、順解析及び逆解析ができる。順解析により、廃プラスチックの材料特性情報(X1)と複合材料の処方条件(X2)から、複合材料の品質パラメータの目標情報(Y)が得られる。逆解析により、複合材料の品質パラメータの目標情報(Y)を満たすXの候補を算出することになるが、さらに廃プラスチックの材料特性情報(X1)もあれば、残りの未知変数である複合材料の処方条件(X2)の候補が得られる。
【符号の説明】
【0102】
10 複合材料処方条件生成システム
11 生成部
12 制御部
13 記憶部
14 表示部
20 学習済みモデル生成システム
21 データ取得部
22 機械学習部
23 制御部
24 記憶部
25 表示部

図1
図2
図3
図4