(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172457
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090186
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺町 知峰
(72)【発明者】
【氏名】小西 達也
(72)【発明者】
【氏名】石井 健太
(72)【発明者】
【氏名】奥西 晋一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】外界センサによる物体の検出精度が他の領域と比べて相対的に低い特定領域が発生しても、車線変更制御の実行可否の判断が困難である状態が長時間継続することを抑制できる移動体の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置100は、車線変更機能が有効である場合、外界センサ11による物体の検出精度が他の領域に比べて相対的に低い検出困難領域420に他の車両が存在すると推定されたとき、車線変更制御の実行を制限する。制御装置100は、車線変更制御の実行を制限した後、検出困難領域420に他の車両が存在すると推定された状態が所定の時間継続したとき、車線変更機能を無効にする。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が走行する車線を変更する車線変更制御を実行可能な車線変更機能を有する制御装置であって、
前記移動体は、前記移動体の周辺の物体を検出可能な外界センサを備え、
前記制御装置は、
前記外界センサの検出結果に基づいて、前記移動体の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部によって認識された前記周辺状況に基づいて、前記外界センサによる前記物体の検出精度が他の領域に比べて相対的に低い特定領域に、他の移動体が存在するか否かを推定する推定部と、
前記認識部によって認識された前記周辺状況及び前記推定部による推定結果に基づいて、前記車線変更制御を実行可能な走行制御部と、
を備え、
前記車線変更機能は、前記移動体の乗員からの指示に応じて有効又は無効に切り替え可能であり、有効である場合に前記車線変更制御を実行可能とし、無効である場合に前記車線変更制御を実行不能とし、
前記走行制御部は、前記車線変更機能が有効である場合に、
前記推定部によって前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定されたとき、前記車線変更制御の実行を制限し、
前記車線変更制御の実行を制限した後、前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定された状態が解消したとき、前記車線変更制御の制限を解除し、
前記車線変更制御の実行を制限した後、前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定された状態が所定の時間継続したとき、前記車線変更機能を無効にする、
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記乗員から前記車線変更機能を有効にする指示を受け付ける受付部をさらに備え、
前記走行制御部は、
前記車線変更機能を無効にした後、前記受付部が前記乗員から前記車線変更機能を有効にする指示を受け付けたとき、前記車線変更機能を有効にし、前記車線変更制御を実行可能にする、
制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置であって、
前記走行制御部は、前記車線変更機能が有効である場合に、
前記推定部によって、左右方向のうち一方側の前記特定領域に前記他の移動体が存在しないと推定され、且つ、前記左右方向のうち他方側の前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定されたとき、前記一方側に車線変更を行う前記車線変更制御を実行可能である、
制御装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の制御装置であって、
前記認識部は、前記外界センサによる前記検出精度が前記特定領域よりも高い検出領域で検出された前記他の移動体を認識し、
前記推定部は、前記移動体の周辺において前記検出領域で検出された前記他の移動体の検出精度が低下したとき又は前記他の移動体が検出されなくなったとき、前記他の移動体が前記特定領域に存在すると推定する、
制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、
前記走行制御部は、前記車線変更機能が有効である場合に、
前記車線変更制御の実行を制限した後、前記特定領域に存在すると推定した前記他の移動体が前記検出領域で再び検出されたとき、前記車線変更制御の制限を解除する、
制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置であって、
前記認識部は、
前記検出領域で検出された物体を識別するための識別情報を認識し、
前記特定領域に存在すると推定した前記他の移動体の識別情報と、前記他の移動体が前記特定領域に存在すると推定した後に前記検出領域で検出された物体の識別情報とが一致するとき、前記検出領域で検出された前記物体が前記他の移動体であると認識する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の車線変更制御を実行可能な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて運転支援技術や自動運転技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
運転支援技術の一例として、特許文献1には、車線変更を支援する制御を実行可能な走行支援装置が開示されている。特許文献1の走行支援装置は、カメラやレーザレーダ、ミリ波レーダ等のセンサを備え、外界を認識して走行支援を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両等の移動体の周辺には、外界センサによる物体の検出精度が他の領域と比べて相対的に低い特定領域が発生することがある。このような特定領域が存在する場合、制御装置による車線変更制御の実行可否の判断が困難な状態が継続することがあり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、外界センサによる物体の検出精度が他の領域と比べて相対的に低い特定領域が発生しても、車線変更制御の実行可否の判断が困難である状態が長時間継続することを抑制できる移動体の制御装置を提供する。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
移動体が走行する車線を変更する車線変更制御を実行可能な車線変更機能を有する制御装置であって、
前記移動体は、前記移動体の周辺の物体を検出可能な外界センサを備え、
前記制御装置は、
前記外界センサの検出結果に基づいて、前記移動体の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部によって認識された前記周辺状況に基づいて、前記外界センサによる前記物体の検出精度が他の領域に比べて相対的に低い特定領域に、他の移動体が存在するか否かを推定する推定部と、
前記認識部によって認識された前記周辺状況及び前記推定部による推定結果に基づいて、前記車線変更制御を実行可能な走行制御部と、
を備え、
前記車線変更機能は、前記移動体の乗員からの指示に応じて有効又は無効に切り替え可能であり、有効である場合に前記車線変更制御を実行可能とし、無効である場合に前記車線変更制御を実行不能とし、
前記走行制御部は、前記車線変更機能が有効である場合に、
前記推定部によって前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定されたとき、前記車線変更制御の実行を制限し、
前記車線変更制御の実行を制限した後、前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定された状態が解消したとき、前記車線変更制御の制限を解除し、
前記車線変更制御の実行を制限した後、前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定された状態が所定の時間継続したとき、前記車線変更機能を無効にする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定領域が発生しても、車線変更制御の実行可否の判断が困難である状態が長時間継続することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両1に搭載される車両システム10の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】制御装置100の構成の一例を示す図である。
【
図3】車線変更制御による車両1の車線変更動作の一例を示す図である。
【
図4】車両1の周囲における検出領域410と検出困難領域420とを模式的に示した図である。
【
図5】他の車両M2が車両1の検出領域410に存在する様子を示す図である。
【
図6】他の車両M2が車両1の検出困難領域420に進入した様子を示す図である。
【
図7】検出困難領域420に存在していた他の車両M2が検出領域410に移動した様子を示す図である。
【
図8】検出困難領域420に存在していた他の車両M2が外界センサ11により検出されることなく検出困難領域420の外側に移動した様子を示す図である。
【
図9】制御装置100による検出困難領域420に他の車両が存在するか否かを推定する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】右側検出困難領域420R及び左側検出困難領域420Lのうち少なくとも一方における他の車両の存在フラグがONとなったときに制御装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】制御装置100が車線変更制御を実行するときの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】検出困難領域420における他の車両の存在フラグがONとなったときに制御装置100が実行する処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態の移動体の制御装置を、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
<車両システムの全体構成>
図1は、車両1(
図3参照)に搭載される車両システム10の全体構成を示すブロック図である。車両1は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、あるいはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、あるいは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0012】
車両システム10は、例えば、外界センサ11と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ドライバモニタカメラ50と、ナビゲーション装置60と、MPU(Map Positioning Unit)70と、運転操作子80と、制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220と、を備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続されている。
【0013】
外界センサ11は、車両1の周辺に存在する物体を検出する。外界センサ11は、カメラ12と、レーダ装置13と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、を備える。
【0014】
カメラ12は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ12は、車両1の任意の箇所に取り付けられる。
【0015】
レーダ装置13は、車両1の周辺にミリ波等の電波を放射するとともに、物体で反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離及び方位)を検出する。レーダ装置13は、車両1の任意の箇所に取り付けられる。
【0016】
LIDAR14は、車両1の周辺に光(あるいは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、車両1の任意の箇所に取り付けられる。
【0017】
物体認識装置16は、カメラ12、レーダ装置13、及びLIDAR14のうち一部又は全部の検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度等を認識する。物体認識装置16は、認識結果を制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ12、レーダ装置13、及びLIDAR14の検出結果をそのまま制御装置100に出力してもよい。
【0018】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi(登録商標)網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)等を利用して、車両1の周辺に存在する他の車両と通信し、あるいは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0019】
HMI30は、車両1の乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キー等を含む。HMI30は、本発明の受付部の一例である。
【0020】
車両センサ40は、車両1の走行速度(以下、単に「速度」とも称す)を検出する速度センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両1の向きを検出する方位センサ等を含む。
【0021】
ドライバモニタカメラ50は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ50は、車両1の運転席に着座した乗員(以下、「運転者」とも称す)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置及び向きで、車両1における任意の箇所に取り付けられる。
【0022】
ナビゲーション装置60は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機61と、ナビHMI62と、経路決定部63とを備える。ナビゲーション装置60は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置に第1地図情報64を保持している。
【0023】
GNSS受信機61は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両1の位置を特定する。車両1の位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定又は補完されてもよい。
【0024】
ナビHMI62は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キー等を含む。ナビHMI62は、前述したHMI30と一部又は全部が共通化されてもよい。
【0025】
経路決定部63は、例えば、GNSS受信機61により特定された車両1の位置(あるいは入力された任意の位置)から、ナビHMI62を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、「地図上経路」とも称す)を、第1地図情報64を参照して決定する。第1地図情報64は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報64は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。地図上経路は、MPU70に出力される。
【0026】
ナビゲーション装置60は、地図上経路に基づいて、ナビHMI62を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置60は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0027】
MPU70は、例えば、推奨車線決定部71を含み、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置に第2地図情報72を保持している。推奨車線決定部71は、ナビゲーション装置60から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報72を参照してブロック毎に推奨車線を決定する。推奨車線決定部71は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部71は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、車両1が、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0028】
第2地図情報72は、第1地図情報64よりも高精度な地図情報である。第2地図情報72は、例えば、車線の中央の情報、あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報72には、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報等が含まれてよい。第2地図情報72は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0029】
運転操作子80は、例えば、ウインカーレバー81及びステアリングホイール82の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、及びステアリング装置220のうち一部又は全部に出力される。
【0030】
ウインカーレバー81は、ウインカー5を点灯(点滅を含む)又は消灯させるための操作子である。制御装置100は、ウインカーレバー81に対する操作に応じて、ウインカー5を点灯又は消灯させる。
【0031】
ステアリングホイール82は、操舵操作を受け付ける操作子である。なお、ステアリングホイール82は、必ずしも環状である必要はなく、異形ステアやジョイスティック、ボタン等の形態であってもよい。また、ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサ等により実現され、運転者がステアリングホイール82を把持しているか否かを検知可能な信号を制御装置100に出力する。
【0032】
制御装置100は、車両1の全体を統括制御するコンピュータであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部:circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、制御装置100のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置に予め格納されていてもよい。制御装置100の詳細については後述する。
【0033】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、及び変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、制御装置100から入力される情報、あるいは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0034】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、制御装置100から入力される情報、あるいは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。
【0035】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、制御装置100から入力される情報、あるいは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0036】
<制御装置>
図2は、制御装置100の構成の一例を示す図である。制御装置100は、例えば、第1制御部110と、第2制御部120と、を備える。
【0037】
第1制御部110は、例えば、認識部111と、行動計画生成部112と、推定部115と、を備える。第1制御部110は、例えば、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。
【0038】
認識部111は、カメラ12、レーダ装置13、及びLIDAR14から物体認識装置16を介して入力される情報に基づいて、車両1の周辺状況を認識する。具体的には、認識部111は、車両1の周辺にある物体(後述する他の車両を含む)の位置情報、及び物体の速度、加速度等の走行状態、及び物体の識別情報を認識する。
【0039】
物体の位置は、例えば、車両1の代表点(重心や駆動軸中心等)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。
【0040】
物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、又はしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0041】
認識部111は、例えば、車両1が走行している走行環境を認識する。例えば、認識部111は、第2地図情報72から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ12によって撮像された画像から認識される車両1の周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、車両1の走行車線を認識する。なお、認識部111は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレール等を含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置60から取得される車両1の位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部111は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識してもよい。
【0042】
認識部111は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する車両1の位置や姿勢を認識する。認識部111は、例えば、車両1の基準点の車線中央からの乖離、及び車両1の進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する車両1の相対位置及び姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部111は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線又は道路境界)に対する車両1の基準点の位置等を、走行車線に対する車両1の相対位置として認識してもよい。
【0043】
認識部111は、物体の識別情報を認識する。ここで、物体の識別情報は、認識部111により認識された各物体をそれぞれ識別する情報であり、例えば、各物体の外形や色彩といった外観的な特徴を示す情報を含む。また、認識部111により認識された物体が、いわゆるナンバープレートを備える車両である場合、当該物体の識別情報には、ナンバープレートに記載されたナンバーを示す情報が含まれていてもよい。例えば、認識部111は、前回認識した物体の識別情報と、今回認識した物体の識別情報が一致するとき、今回認識した物体と前回認識した物体とが同一であると判定する。
【0044】
行動計画生成部112は、原則的には推奨車線決定部71により決定された推奨車線を走行し、且つ、車両1の周辺状況に対応できるように、車両1が自動的に(すなわち、運転者の操作によらずに)将来走行する目標軌道を生成する。
【0045】
目標軌道は、例えば、速度要素を含む。例えば、目標軌道は、車両1の到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)毎の車両1の到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)毎の目標速度及び目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間毎の、そのサンプリング時刻における車両1の到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0046】
行動計画生成部112は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してもよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベント等がある。行動計画生成部112は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0047】
例えば車線変更イベントを設定する機能として、行動計画生成部112は、車線変更判定部113を備える。
【0048】
車線変更判定部113は、認識部111が認識した車両1の走行環境に基づいて、車両1が走行する車線を変更する制御(以下、車線変更制御とも称す)の実行可否を判定する。車線変更判定部113は、例えば、運転者の操作(例えばウインカーレバー81の操作)によらず、車両1の走行環境に基づいて、車線変更制御の実行可否を判定する。
【0049】
車線変更判定部113は、例えば、車両1と車両1の走行車線を前走する他の車両(前走車両とも称す)との車間距離が所定の閾値以下となったときに、車線変更制御を行うと判定する。また、車両1の走行車線に隣接する隣接車線を走行する他の車両が検出された場合には、車線変更判定部113は、例えば、車両1と検出された他の車両との相対速度及び車間距離に基づき、車線変更制御の実行可否を判定する。
【0050】
行動計画生成部112は、車線変更判定部113によって車線変更制御の実行が可能と判定された場合に、車線変更イベントを設定したり、当該車線変更イベントに応じた目標軌道を生成したりする。
【0051】
推定部115は、認識部111によって認識された周辺状況に基づいて、後述する検出困難領域に物体が存在するか否かを推定する。推定部115については、後述する。
【0052】
第2制御部120は、行動計画生成部112によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに車両1が通過するように制御する。第2制御部120は、例えば、取得部121と、速度制御部122と、操舵制御部123と、通知制御部124とを備える。
【0053】
取得部121は、行動計画生成部112により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。
【0054】
速度制御部122は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200又はブレーキ装置210を制御する。
【0055】
操舵制御部123は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。
【0056】
速度制御部122及び操舵制御部123の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。
【0057】
通知制御部124は、HMI30やナビHMI62等を制御して、車両1の乗員(例えば運転者)に対する各種通知(各種情報を提示)を実行する。例えば、通知制御部124は、車線変更制御の開始を乗員に通知したり、車線変更制御を途中で中止する場合にはその旨を乗員に通知したりする。車線変更制御の開始通知や、車線変更制御を中止する旨の通知は、例えば、HMI30やナビHMI62等の表示装置に表示させたり、スピーカから音声を流したりして行われる。
【0058】
制御装置100において、例えば、第1制御部110の行動計画生成部112と、第2制御部120の取得部121、速度制御部122及び操舵制御部123と、を合わせたものが走行制御部130を構成する。走行制御部130は、例えば、車線変更判定部113によって車線変更制御の実行が可能と判定された場合に、車線変更制御を実行する。
【0059】
<車線変更制御>
制御装置100による車線変更制御について詳述する。
【0060】
車両1は、複数の運転モードにより走行可能に構成されている。複数の運転モードは、例えば、運転操作子80に対する運転者の操作によらず車両Mが自律的に走行する自動運転モードや、一部の運転操作が運転者により行われる運転支援モード等を含み、制御装置100は各モードに応じた運転制御を実行する。前述した車線変更制御を実行可能な車線変更機能は、自動運転モードや運転支援モードに含まれる各種機能のうちの一つである。
【0061】
車線変更機能は、例えば運転者からの指示(例えばHMI30のスイッチの押下)に応じてON/OFF、すなわち有効/無効が切り替わる。車線変更機能が有効である場合、車線変更制御が実行可能になる。具体的には、車線変更機能が有効である場合、車両1の走行時、車線変更判定部113は車線変更制御の実行可否を判定し、車線変更制御が実行可能であると判定すると、走行制御部130は車線変更制御を実行する。一方、車線変更機能が無効である場合、車線変更制御が実行不能になる。具体的には、車線変更機能が無効である場合、車両1の走行時、車線変更判定部113は車線変更制御の実行可否を判定せず、走行制御部130は車線変更制御を実行しない。
【0062】
図3は、車線変更制御による車両1の車線変更動作の一例を示す。ここでは、車線変更機能が有効であり、運転者の操作によらず、制御装置100による制御に従って車両1が自律走行している場合を一例に説明する。このとき、制御装置100は、認識部111によって認識された車両1の周辺状況等に応じて、車両1が走行する車線を変更する車線変更制御を適宜実行し得る。
【0063】
道路300は、左車線310と、右車線320と、左車線310と右車線320との境界に設けられ、道路区画線としての区画線330と、を有する。左車線310及び右車線320の進行方向は、
図3の下方から上方へ向かう方向である。ここで、車両1の走行車線を、以下「自車線L1」とも称する。また、自車線L1に隣接する車線を、以下「隣接車線L2」とも称する。
【0064】
制御装置100は、車両1が道路300の左車線310を走行中、車両1よりも遅い速度で自車線L1を走行する前走車両M1を追い越すために、車線変更制御を実行する。
【0065】
具体的には、制御装置100は、認識部111によって認識された周辺状況に基づいて、車線変更制御の実行可否を判定する。
【0066】
車線変更制御の実行が可能と判定された場合に、制御装置100は、HMI30を介して、車両1の運転者に車線変更制御を開始することを通知する。車線変更制御を開始することの通知(以下、車線変更制御の開始通知とも称す)は、例えば、車両1に取り付けられた表示装置による表示や、スピーカからの音声による通知である。
【0067】
また、制御装置100は、車線変更制御の開始通知と併せて、運転者に車両1の周辺の確認を促す通知を行う。これにより、運転者は、車線変更の方向(右方向)における車両1の周辺を確認する。具体的には、運転者は、右側のサイドミラーを確認したり、車両1の側方(右方)を直接確認したりする。
【0068】
車線変更制御の開始通知が開始されたときから所定の時間の経過後、制御装置100は、右側のウインカー5を点灯開始させる。これにより、車両1の外部に対して車両1の車線変更が通知される。
【0069】
ウインカー5の点灯開始から所定の時間の経過後、制御装置100は、右側へ車線変更制御を開始する。これにより、制御装置100は、車両1の操舵を開始し、車両1は横移動を開始する。車両1が隣接車線L2まで横移動すると、車線変更制御が完了する。
【0070】
<検出領域、検出困難領域>
ところで、車両1の安全性を確保した適切な車線変更を行うためには、車両1と衝突し得る物体(例えば他の移動体)が車両1の周辺に存在していない状況で車線変更を行う必要がある。その一方で、車両1に搭載される外界センサ11の数や配置、性能等が原因で、車両1の周辺において外界センサ11による物体の検出精度が他の領域よりも相対的に低い領域(以下、検出困難領域とも称する)が発生し、これにより、制御装置100が車両1の周辺状況をくまなく正確に認識することが難しい場合も発生し得る。
【0071】
検出困難領域が発生し得る車両1において、車線変更機能が有効である場合に、例えば、外界センサ11によって事前に得られた情報に基づき、物体が検出困難領域に進入したと推定されるときには、車線変更制御の実行を制限することが考えられる。具体的には、制御装置100は、車線変更機能が有効である状態で車線変更制御の実行を制限することが考えられる。このようにすれば、車両1と衝突し得る物体が検出困難領域に存在している状況で、車線変更制御が実行されてしまうのを抑制することが可能となり、また、当該物体が検出困難領域からいなくなったときに車線変更制御の制限を解除することで、再び車線変更制御が実行可能になる。
【0072】
しかしながら、物体が検出困難領域に進入したと推定される状態が継続すると、制御装置100による車線変更制御の実行可否の判断が困難な状態となり得る。具体的に説明すると、物体が検出困難領域から出たことを外界センサ11によって検出できなかったとき、実際には物体が検出困難領域から出たのにもかかわらず、物体が検出困難領域に進入したと推定される状態が継続することになる。このとき、制御装置100は、車線変更制御が実行可能であるにもかかわらず車線変更制御の制限を継続することとなり、すなわち、車線変更制御の実行可否の判断を正しく行うことが困難な状態となる。
【0073】
そこで、本実施形態では、制御装置100は、以下に説明する処理を行うことにより、車線変更制御の実行可否の判断が困難な状態が長時間継続することを抑制する。
【0074】
まず、検出困難領域、及び外界センサ11による物体の検出精度が検出困難領域よりも高い検出領域の一例について説明する。
図4は、車両1の周囲において、検出領域410と、検出困難領域420(斜線領域)とを示した図である。なお、
図4に示す検出領域410及び検出困難領域420はあくまで模式的に示したものであり、これらの領域の位置や大きさは実際の領域と必ずしも一致するものではない。
【0075】
検出領域410は、外界センサ11による物体(例えば、他の車両)の検出精度の高い領域であり、車両1の周辺において広域に存在する。
【0076】
制御装置100は、外界センサ11により検出された検出領域410の物体の位置情報、走行状態、及び識別情報を周辺状況として認識する。
【0077】
検出困難領域420は、外界センサ11の検出精度が検出領域410に比べて相対的に低い領域である。検出困難領域420は、例えば車両1に搭載される外界センサ11の数や配置、性能等が原因で発生する。また、検出困難領域420は、本来は検出領域410であったが看板やガードレール等の遮蔽物の存在により外界センサ11の検出精度が低下した領域も含む。
【0078】
本実施形態では、検出困難領域420が車両1の近傍において、主に車両1の右側及び左側に存在する場合を一例に説明する。検出困難領域420のうち右側の領域を右側検出困難領域420Rとし、左側の領域を左側検出困難領域420Lとする。
【0079】
図5に示すように、車両1が自車線L1を走行中、隣接車線L2を走行する他の車両M2が車両1の検出領域410に入ると、車両1の外界センサ11は他の車両M2を検出する。このとき、制御装置100は、検出領域410内の他の車両M2の位置情報、走行状態情報、及び識別情報を所定の時間間隔で認識し、これらを対応付けて制御装置100の記憶装置に記憶する。
【0080】
図6に示すように、車両1及び/又は他の車両M2の加減速により、他の車両M2が車両1の近傍に相対的に近づくと、他の車両M2は検出困難領域420(ここでは右側検出困難領域420R)に進入する。このとき、外界センサ11による他の車両M2の検出精度が低下し又は他の車両M2が検出されなくなり、他の車両M2の検出が困難となる。
【0081】
制御装置100の推定部115は、事前に記憶した他の車両M2の周辺状況に基づいて、他の車両M2が検出困難領域420に存在すると推定する。具体的には、推定部115は、外界センサ11による他の車両M2の検出精度が低下したとき又は他の車両M2が検出されなくなったとき、他の車両M2が検出困難領域420に存在すると推定する。これにより、他の車両M2が検出困難領域420に進入して外界センサ11により検出されなくなった場合でも、制御装置100は、検出困難領域420を含む車両1の周辺状況を推定により認識できる。
【0082】
車線変更機能が有効である状態で車両1が走行している場合、他の車両M2が検出困難領域420に存在すると推定するとき、制御装置100は、車線変更機能を有効に維持しつつも、車線変更制御の実行を制限する。これにより、車両1と他の車両M2とが衝突し得る状況で、車線変更制御が実行されることを抑制できる。
【0083】
図7に示すように、検出困難領域420に存在すると推定した他の車両M2が検出領域410において再び検出されたとき、制御装置100は、他の車両M2が検出困難領域420から出て検出困難領域420には存在しないと判定し、車線変更制御の制限を解除する。
【0084】
詳細に説明すると、検出困難領域420に存在すると推定した他の車両M2の識別情報と、他の車両M2が検出困難領域420に存在すると推定した後に検出領域410で検出された物体の識別情報とが一致するとき、制御装置100は、検出領域410で検出された物体が他の車両M2であると認識する。換言すると、制御装置100は、他の車両M2が検出困難領域420から出た、すなわち他の車両M2が検出困難領域420に存在しないと判定する。そして、制御装置100は車線変更制御の制限を解除する。このとき、車線変更機能は有効のままであるので、制御装置100は周辺状況に基づいて車線変更制御の実行を行うことができる。
【0085】
一方で、
図8に示すように、検出困難領域420に存在していた他の車両M2が、外界センサ11により検出されることなく検出困難領域420から他の検出困難領域に、例えば車線変更により移動する場合がある。他の検出困難領域とは、外界センサ11により検出されない検出領域410及び検出困難領域420の外側領域であり、車両1の車線変更の妨げとならない領域である。この場合、制御装置100の推定部115は、検出困難領域420に他の車両M2が存在しないにもかかわらず、検出困難領域420に他の車両M2が存在すると推定し続ける状態をとる。
【0086】
このような状態では、制御装置100による車線変更制御が実行可能であるにもかかわらず車線変更制御の制限が継続される。すなわち、前述のとおり、制御装置100は、車線変更制御の実行可否を正しく判断することが困難な状態となる。また、この状態は、車線変更機能が有効であるにもかかわらず車線変更制御が実行されない状態であるので、運転者に違和感を与え得る。
【0087】
そこで、検出困難領域420に他の車両M2が存在すると推定した状態が所定の時間継続したとき、制御装置100は、車線変更機能を無効にする。これにより、制御装置100による車線変更制御の実行可否の判断が困難な状態が長時間継続することを抑制できる。また、制御装置100は、車線変更機能を無効にするので、他の車両M2が実際に検出困難領域420に所定の時間存在していた場合に車線変更制御を実行してしまうことを回避できる。
【0088】
車線変更機能を無効にした後、制御装置100は、HMI30等が運転者から車線変更機能を有効にする指示を受け付けたとき、車線変更機能を有効にし、車線変更制御を実行可能にする。前述のとおり、車線変更機能が有効であるにもかかわらず車線変更制御が実行されない状態が速やかに解消されるので、運転者からの指示に応じて車線変更機能を有効とすることにより、車線変更制御の実行機会が減少することを抑制できる。
【0089】
<推定処理の制御フロー>
続いて、制御装置100による検出困難領域420に他の車両が存在するか否かを推定する処理の一例について、
図9に示すフローチャートを参照して説明する。制御装置100による制御に従って車両1が自律走行している状態において、制御装置100は、例えば、
図9のフローチャートを所定周期で繰り返し実行する。
【0090】
制御装置100は、先ず、検出領域410で検出された他の車両の位置情報、走行状態、及び識別情報を含む周辺状況を認識し、記憶装置に記憶する(ステップS100)。
【0091】
制御装置100は、認識部111によって認識された周辺状況に基づいて、検出困難領域420に他の車両が存在するか否かを推定する(ステップS102)。
【0092】
検出困難領域420に他の車両が存在すると推定した場合(ステップS104:YES)、制御装置100は、検出困難領域420に他の車両が存在するか否かを示す存在フラグをONとし(ステップS106)、本フローチャートを終了する。存在フラグがONであるとき、検出困難領域420に他の車両が存在すると推定される状態となるので、車線変更機能が有効であったとしても、車線変更制御の実行が制限される。
【0093】
より詳細に説明すると、右側検出困難領域420Rに他の車両が存在すると推定した場合、制御装置100は、右側検出困難領域420Rにおける他の車両の存在フラグをONにする。これにより、右側の隣接車線への車線変更制御の実行が制限される。また、左側検出困難領域420Lに他の車両が存在すると推定した場合、制御装置100は、左側検出困難領域420Lにおける他の車両の存在フラグをONにする。これにより、左側の隣接車線への車線変更制御の実行が制限される。
【0094】
一方で、検出困難領域420に他の車両が存在しないと判定した場合(ステップS104:NO)、制御装置100は、存在フラグをOFFとし(ステップS108)、本フローチャートを終了する。存在フラグがOFFであるとき、車線変更制御の実行が可能である。また、存在フラグをONからOFFに切り替えた場合には、制御装置100は、車線変更制御の制限を解除し、車線変更制御の実行を可能にする。
【0095】
<車線変更機能の切り替え制御フロー>
続いて、ステップS106において、右側検出困難領域420R及び左側検出困難領域420Lのうち少なくとも一方における他の車両の存在フラグがONとなったときに制御装置100が実行する処理の一例について、
図10に示すフローチャートを参照して説明する。制御装置100は、例えば、
図10のフローチャートを所定周期で繰り返し実行する。
【0096】
制御装置100は、先ず、存在フラグがONであるか否かを判定する(ステップS200)。具体的には、前述したステップS106において存在フラグがONとなったとき、制御装置100は、ステップS200において存在フラグがONであると判定する。一方、存在フラグがOFFであると判定する場合(ステップS200:NO)、制御装置100は、そのまま本フローチャートを終了する。
【0097】
存在フラグがONであると判定した場合(ステップS200:YES)、制御装置100は、存在フラグがONである状態が所定の時間経過したか否かを判定する(ステップS201)。
【0098】
存在フラグがONである状態が所定の時間経過していないと判定する場合(ステップS201:NO)、制御装置100は、そのまま今回の制御フローを終了する。
【0099】
ここで、存在フラグがONである状態が所定の時間経過する前、制御装置100は、
図9の処理を繰り返し実行しており、例えば
図7のように右側検出困難領域420Rにおいて存在すると推定されていた他の車両M2が検出領域410で再び検出された場合、ステップS104において右側検出困難領域420Rに他の車両M2が存在しないと判定する(ステップS104:NO)。このとき、右側検出困難領域420Rにおける他の車両の存在フラグはOFFとなり(ステップS108)、制御装置100は、
図10のステップS200で存在フラグがOFFであると判定し、本フローチャートを終了する。
【0100】
図10に戻り、存在フラグがONである状態が所定の時間経過したと判定する場合(ステップS201:YES)、制御装置100は、車線変更機能を無効にする(ステップS202)。車線変更機能が無効となることにより、車線変更機能が有効であり且つ車線変更制御の実行が制限された状態が解消する。すなわち、制御装置100による車線変更制御の実行可否の判断が困難な状態を解消することができる。
【0101】
また、制御装置100は、車線変更機能が無効になったことに応じて存在フラグをOFFに切り替える(ステップS204)。
【0102】
より詳細には、右側検出困難領域420Rに他の車両が存在すると推定していた場合、制御装置100は、右側検出困難領域420Rにおける他の車両の存在フラグをONからOFFに切り替える。左側検出困難領域420Lに他の車両が存在すると推定していた場合、制御装置100は、左側検出困難領域420Lにおける他の車両の存在フラグをONからOFFに切り替える。
【0103】
次に、制御装置100は、運転者により車線変更機能を有効にする入力があったか否かを判定する(ステップS206)。例えば、運転者がHMI30等を介して車線変更機能を有効にする指示を入力したとき、制御装置100は、運転者により車線変更機能を有効にする入力があったと判定する。
【0104】
なお、例えば、ステップS202及びステップS204の後、制御装置100は、車線変更機能を無効にしたことをHMI30等の表示装置に表示したり、スピーカで運転者に通知したりしてもよい。これにより、運転者は、当該通知に応じて車線変更機能が無効になったことを把握でき、速やかにHMI30等を介して車線変更機能を有効にする指示を入力できる。
【0105】
車線変更機能を有効にする入力があったと判定するとき(ステップS206:YES)、制御装置100は、車線変更機能を有効にする(ステップS208)。なお、制御装置100は、存在フラグをOFFに切り替えるステップS204を、ステップS206の前ではなくステップS206の後、例えばステップS208と同時に実行してもよい。
【0106】
車線変更機能を有効にする入力がないと判定するとき(ステップS206:NO)、制御装置100は、車線変更機能を無効に維持する(ステップS210)。
【0107】
<車線変更制御の制御フロー>
続いて、制御装置100が車線変更制御を実行するときの処理の一例について、
図11及び
図12に示すフローチャートを参照して説明する。制御装置100による制御に従って車両1が自律走行している状態において、制御装置100は、例えば、
図11及び
図12のフローチャートを所定周期で繰り返し実行する。
【0108】
制御装置100は、先ず、車線変更制御の実行中であることを示す車線変更フラグがONであるか否かを判定する(ステップS300)。車線変更フラグがONであると判定する場合(ステップS300:YES)、制御装置100は、後述のステップS314の処理に進む。
【0109】
車線変更フラグがOFFであると判定した場合(ステップS300:NO)、制御装置100は、車線変更機能が有効であるか否か、及び車線変更先における他の車両の存在フラグがOFFであるか否かを判定する(ステップS302)。
【0110】
より詳細には、車線変更先が右側方向である場合、制御装置100は、車線変更機能が有効であり、且つ右側検出困難領域420Rにおける存在フラグがOFFであるか否かを判定する。また、車線変更先が左側方向である場合、制御装置100は、車線変更機能が有効であり、且つ左側検出困難領域420Lにおける存在フラグがOFFであるか否かを判定する。
【0111】
ここで、車線変更先が右側方向である場合、左側検出困難領域420Lにおける他の車両の存在フラグはONであってもよく、車線変更先が左側方向である場合、右側検出困難領域420Rにおける他の車両の存在フラグはONであってもよい。このような構成により、左右方向のうち他方側の検出困難領域420に他の車両が存在すると推定された場合であっても、一方側に車線変更を行う機会を確保できる。
【0112】
車線変更機能が無効、又は車線変更先における他の車両の存在フラグがONであると判定した場合(ステップS302:NO)、制御装置100は、車線変更制御を実行しないと判定し(ステップS304)、そのまま今回の制御フローを終了する。
【0113】
車線変更機能が有効、且つ車線変更先における他の車両の存在フラグがOFFであると判定した場合(ステップS302:YES)、制御装置100は、認識部111によって認識された周辺状況に基づき、車線変更制御の実行可否を判定する(ステップS306)。
【0114】
車線変更制御の実行が不可と判定した場合(ステップS306:NO)、制御装置100は、車線変更制御を実行しないと判定し(ステップS304)、そのまま今回の制御フローを終了する。
【0115】
車線変更制御の実行が可能と判定した場合(ステップS306:YES)、制御装置100は、車線変更フラグをONにする(ステップS308)。
【0116】
車線変更フラグがONとなると、制御装置100は、HMI30を介して車線変更制御が実行されることを運転者に通知する(ステップS310)。また、制御装置100は、運転者に周辺状況の確認を促す通知を行う。
【0117】
車線変更制御の開始通知から所定の時間の経過後、制御装置100は、ウインカー5を点灯させる(ステップS312)。
【0118】
次に、ウインカー5の点灯開始から車線変更制御が開始されるまで(すなわち操舵制御が開始されるまで)の間に、制御装置100は、再び車線変更機能が有効であるか否か、及び車線変更先における他の車両の存在フラグがOFFであるか否かを判定する(ステップS314)。
【0119】
車線変更機能が無効であり、又は車線変更先における他の車両の存在フラグがONであると判定した場合(ステップS314:NO)、制御装置100は、ウインカー5を消灯するとともに(ステップS326)、車線変更フラグをOFFにして車線変更制御を実行しない(ステップS328)。そして、制御装置100は、そのまま今回の制御フローを終了する。このように、操舵開始までに検出困難領域420に他の車両が進入したと推定される場合に車線変更制御を実行しないので、車線変更の安全性を向上させることができる。
【0120】
車線変更機能が有効であり、且つ車線変更先における他の車両の存在フラグがOFFであると判定した場合(ステップS314:YES)、制御装置100は、認識部111によって認識された周辺状況に基づき、再び車線変更制御の実行可否を判定する(ステップS316)。
【0121】
車線変更制御の実行が不可と判定した場合(ステップS316:NO)、制御装置100は、ウインカー5を消灯するとともに(ステップS326)、車線変更フラグをOFFにして車線変更制御を実行しない(ステップS328)。そして、制御装置100は、そのまま今回の制御フローを終了する。例えば、制御装置100は、ステップS306で車線変更制御の実行が可能と判定した後からステップS316までの間に、車線変更制御の実行が不可となる状況になった場合(例えばウインカー5の点灯後に前走車両が隣接車線に車線変更した場合)、車線変更制御の実行が不可と判定する。
【0122】
車線変更制御の実行が可能と判定した場合(ステップS316:YES)、制御装置100は、車線変更制御を実行する(ステップS318)。これにより、制御装置100は、操舵制御を開始し、車両1は、自車線L1から隣接車線L2まで横移動を開始する。
【0123】
車線変更制御の開始後、制御装置100は、車線変更が完了したか否かを判定する(ステップS320)。
【0124】
車線変更が完了していないと判定するとき(ステップS320:NO)、制御装置100は、そのまま今回の制御フローを終了する。
【0125】
車線変更が完了したとき(ステップS320:YES)、制御装置100は、ウインカー5を消灯させるとともに(ステップS322)、車線変更フラグをOFFにして(ステップS324)、今回の制御フローを終了する。
【0126】
(変形例)
続いて、他の車両の存在フラグがONとなったときに制御装置100が実行する処理の変形例について、
図13を参照して説明する。なお、
図10に示すステップと同様のステップについては、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0127】
変形例では、ステップS201において存在フラグがONである状態が所定の時間経過した後、制御装置100は、運転者に対して検出困難領域420を含む車両1の周辺の確認を促す通知を実行する(ステップS205a)。車両1の周辺確認を促す通知は、例えば、HMI30等の表示装置に表示させたり、スピーカから音声を流したりして行われる。
【0128】
車両1の周辺確認を促す通知の後、制御装置100は、運転者が車両1の周辺を確認したか否かを判定してもよい(ステップS205b)。具体的には、ドライバモニタカメラ50による検出結果に基づき、運転者が車両1の周辺を確認したか否かを判定してもよい。
【0129】
運転者が車両1の周辺を確認したと判定した場合(ステップS205b:YES)、制御装置100は、前述したステップS206に進み、運転者により車線変更機能を有効にする入力があったか否かを判定する。すなわち、ステップS202で車線変更機能が無効になった場合において、車線変更機能を再び有効とするために、運転者が周辺を確認したことを条件としてもよい。これにより、車線変更制御の実行をより安全に行うことができる。
【0130】
一方、運転者が車両1の周辺を確認したと判定しない場合(ステップS205b:NO)、前述したステップS210に進み、制御装置100は、車線変更機能を無効に維持する。
【0131】
なお、例えばステップS205bにおいて運転者が車両1の周辺を確認しない場合(ステップS205b:NO)、運転者に身体的なトラブルが発生(例えば容態の悪化や居眠り)している可能性がある。そこで、制御装置100は、運転者が所定の期間内に車両1の周辺を確認しない場合、車線変更機能を無効に維持しつつ、さらに車両1を所定の位置に停止させる走行制御を実行したり、医療機関や消防、警察、家族等へ通報を実行したりしてもよい。
【0132】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0133】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0134】
(1) 移動体(車両1)が走行する車線を変更する車線変更制御を実行可能な車線変更機能を有する制御装置(制御装置100)であって、
前記移動体は、前記移動体の周辺の物体を検出可能な外界センサ(外界センサ11)を備え、
前記制御装置は、
前記外界センサの検出結果に基づいて、前記移動体の周辺状況を認識する認識部(認識部111)と、
前記認識部によって認識された前記周辺状況に基づいて、前記外界センサによる前記物体の検出精度が他の領域に比べて相対的に低い特定領域(検出困難領域420)に、他の移動体(他の車両M2)が存在するか否かを推定する推定部(推定部115)と、
前記認識部によって認識された前記周辺状況及び前記推定部による推定結果に基づいて、前記車線変更制御を実行可能な走行制御部(走行制御部130)と、
を備え、
前記車線変更機能は、前記移動体の乗員からの指示に応じて有効又は無効に切り替え可能であり、有効である場合に前記車線変更制御を実行可能とし、無効である場合に前記車線変更制御を実行不能とし、
前記走行制御部は、前記車線変更機能が有効である場合に、
前記推定部によって前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定されたとき、前記車線変更制御の実行を制限し、
前記車線変更制御の実行を制限した後、前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定された状態が解消したとき、前記車線変更制御の制限を解除し、
前記車線変更制御の実行を制限した後、前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定された状態が所定の時間継続したとき、前記車線変更機能を無効にする、
制御装置。
【0135】
(1)によれば、特定領域に他の移動体が存在すると推定された状態が所定の時間継続するとき車線変更機能を無効にするので、制御装置による車線変更制御の実行可否の判断が困難な状態が長時間継続することを抑制できる。
【0136】
(2) (1)に記載の制御装置であって、
前記乗員から前記車線変更機能を有効にする指示を受け付ける受付部(HMI30)をさらに備え、
前記走行制御部は、
前記車線変更機能を無効にした後、前記受付部が前記乗員から前記車線変更機能を有効にする指示を受け付けたとき、前記車線変更機能を有効にし、前記車線変更制御を実行可能にする、
制御装置。
【0137】
(2)によれば、車線変更機能を無効にした後、乗員の監視下において適切に車線変更機能を有効にし、車線変更制御の実行を可能にできる。これにより、車線変更機能が有効であるにもかかわらず車線変更制御が実行されない状態から車線変更制御の実行可能な状態になり、車線変更制御の実行機会が減少することを抑制できる。
【0138】
(3) (1)又は(2)に記載の制御装置であって、
前記走行制御部は、前記車線変更機能が有効である場合に、
前記推定部によって、左右方向のうち一方側の前記特定領域に前記他の移動体が存在しないと推定され、且つ、前記左右方向のうち他方側の前記特定領域に前記他の移動体が存在すると推定されたとき、前記一方側に車線変更を行う前記車線変更制御を実行可能である、
制御装置。
【0139】
(3)によれば、左右方向の一方側の特定領域に他の移動体が存在しないと推定された場合、他方側の特定領域に他の移動体が存在すると推定された場合であっても、一方側へは車線変更制御が実行可能である。
【0140】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記認識部は、前記外界センサによる前記検出精度が前記特定領域よりも高い検出領域(検出領域410)で検出された前記他の移動体を認識し、
前記推定部は、前記移動体の周辺において前記検出領域で検出された前記他の移動体の検出精度が低下したとき又は前記他の移動体が検出されなくなったとき、前記他の移動体が前記特定領域に存在すると推定する、
制御装置。
【0141】
(4)によれば、事前に検出された外界センサによる検出結果に基づいて、特定領域に他の移動体が存在するか否かを適切に推定でき、車線変更制御を適切に制限できる。
【0142】
(5) (4)に記載の制御装置であって、
前記走行制御部は、前記車線変更機能が有効である場合に、
前記車線変更制御の実行を制限した後、前記特定領域に存在すると推定した前記他の移動体が前記検出領域で再び検出されたとき、前記車線変更制御の制限を解除する、
制御装置。
【0143】
(5)によれば、特定領域に存在すると推定した他の移動体が検出領域で再び検出されたときに速やかに車線変更制御の制限を解除するので、車線変更制御の実行機会を増加させることが可能である。
【0144】
(6) (5)に記載の制御装置であって、
前記認識部は、
前記検出領域で検出された物体を識別するための識別情報を認識し、
前記特定領域に存在すると推定した前記他の移動体の識別情報と、前記他の移動体が前記特定領域に存在すると推定した後に前記検出領域で検出された物体の識別情報とが一致するとき、前記検出領域で検出された前記物体が前記他の移動体であると認識する、
制御装置。
【0145】
(6)によれば、特定領域に存在すると推定した他の移動体が検出領域に移動したか否かを、他の移動体の識別情報に基づいて適切に認識することができる。
【符号の説明】
【0146】
1 車両(移動体)
11 外界センサ
30 HMI(受付部)
100 制御装置
111 認識部
115 推定部
130 走行制御部
410 検出領域
420 検出困難領域(特定領域)
M2 他の車両(他の移動体)