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特開2024-172458タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172458
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20241205BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20241205BHJP
   B60C 19/00 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
G01N25/18 A
G01J5/48 C
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090188
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】近藤 周
【テーマコード(参考)】
2G040
2G066
3D131
【Fターム(参考)】
2G040AA06
2G040BA14
2G040BA25
2G040CA02
2G040DA06
2G040GA01
2G040GA07
2G040HA01
2G040HA03
2G040HA08
2G066BC15
2G066CA02
2G066CA04
3D131BB04
3D131BC55
3D131LA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる、タイヤ故障判定方法を提供することにある。
【解決手段】本開示に係るタイヤ故障判定方法は、コンピュータが実行するタイヤ故障判定方法であって、サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、サーモ画像に基づいてタイヤの複数の損傷部分の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定することと、相対関係の判定結果に基づいてユーザへ第1アラートを通知することと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行するタイヤ故障判定方法であって、
サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、
前記サーモ画像に基づいて前記タイヤの複数の損傷部分の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定することと、
前記相対関係の判定結果に基づいてユーザへ第1アラートを通知することと、
を含む、
タイヤ故障判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ故障判定方法であって、
前記相対関係を判定することは、前記複数の損傷部分の同一時刻での前記表面温度のうち、第1閾値を超えて相対的に高い外れ値が含まれているか否かを判定することを含む、
タイヤ故障判定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のタイヤ故障判定方法であって、
前記第1アラートを通知することは、前記外れ値が含まれていると判定すると、前記外れ値に対応する前記損傷部分の点検を促すことを含む、
タイヤ故障判定方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタイヤ故障判定方法であって、
前記相対関係を判定することは、前記複数の損傷部分の前記表面温度の経時的な変化量のうち、第2閾値を超えて相対的に高い外れ値が含まれているか否かを判定することを含む、
タイヤ故障判定方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタイヤ故障判定方法であって、
前記タイヤの内腔温度を取得することと、
前記サーモ画像における前記表面温度と、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度とに基づいて、前記複数の損傷部分の各々に対し深さを推定することと、
をさらに含む、
タイヤ故障判定方法。
【請求項6】
請求項5に記載のタイヤ故障判定方法であって、
前記深さを推定することは、前記深さを、前記タイヤにおける前記損傷部分の位置に応じて補正することを含む、
タイヤ故障判定方法。
【請求項7】
請求項5に記載のタイヤ故障判定方法であって、
前記深さの推定結果に基づいて前記ユーザへ第2アラートを通知することをさらに含む、
タイヤ故障判定方法。
【請求項8】
請求項7に記載のタイヤ故障判定方法であって、
前記第2アラートを通知することは、推定された前記深さが前記タイヤの耐久性の許容範囲内にないと判定すると、対応する前記損傷部分により前記タイヤが故障していることを通知することを含む、
タイヤ故障判定方法。
【請求項9】
タイヤ故障判定装置であって、
制御部を備え、前記制御部は、
サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得し、
前記サーモ画像に基づいて前記タイヤの複数の損傷部分の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定し、
前記相対関係の判定結果に基づいてユーザへ第1アラートを通知する、
タイヤ故障判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの故障を判定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、リムホイールに組み付けられたタイヤの画像データに基づいて、リムホイールの径を基準としたタイヤの外傷部分のサイズを検出するタイヤ外傷検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-202729
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイヤの故障を判定する技術の有用性の更なる向上が求められている。例えば、鉱山サイトにおいて利用される鉱山車両では、突発的なタイヤの故障が生じると、鉱山車両の運搬及びタイヤ交換等の作業の発生により、生産性が低下してしまう。また、突発的な故障を予防するために作業員により定期的なタイヤの検品を行うことは、コスト面で負担となっている。そのため、タイヤの故障判定を自動化することが求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させる、タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、コンピュータが実行するタイヤ故障判定方法であって、サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、前記サーモ画像に基づいて前記タイヤの複数の損傷部分の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定することと、前記相対関係の判定結果に基づいてユーザへ第1アラートを通知することと、を含む。
本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法によれば、サーモ画像におけるタイヤの複数の損傷部分のうち特に表面温度が高い損傷部分についてはより入念に点検を行う動機をユーザに与えることができる。逆に、当該タイヤ故障判定方法によれば、サーモ画像におけるタイヤの複数の損傷部分のうち表面温度が低い損傷部分については点検の簡素化又は省略をユーザに促すこともできる。このため、当該タイヤ故障判定方法によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【0007】
〔2〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔1〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記相対関係を判定することは、前記複数の損傷部分の同一時刻での前記表面温度のうち、第1閾値を超えて相対的に高い外れ値が含まれているか否かを判定することを含んでもよい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、複数の損傷部分のうち、相対的に高い表面温度を有する損傷部分を特定することが可能である。
【0008】
〔3〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔2〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記第1アラートを通知することは、前記外れ値が含まれていると判定すると、前記外れ値に対応する前記損傷部分の点検を促すことを含んでもよい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、タイヤにおける複数の損傷部分のうち、特定された損傷部分の位置をユーザに把握させて、当該損傷部分を点検する動機をユーザに与えることが可能である。
【0009】
〔4〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔1〕乃至〔3〕のいずれか1つに記載のタイヤ故障判定方法であって、前記相対関係を判定することは、前記複数の損傷部分の前記表面温度の経時的な変化量のうち、第2閾値を超えて相対的に高い外れ値が含まれているか否かを判定することを含んでもよい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、複数の損傷部分のうち、表面温度の経時的な変化が著しい損傷部分を特定することが可能である。
【0010】
〔5〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔1〕乃至〔4〕のいずれか1つに記載のタイヤ故障判定方法であって、前記タイヤの内腔温度を取得することと、前記サーモ画像における前記表面温度と、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度とに基づいて、前記複数の損傷部分の各々に対し深さを推定することと、をさらに含んでもよい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、タイヤの内腔温度を用いることで、タイヤの損傷部分の表面温度に基づき損傷部分の深さを推定する精度を向上させることができる。このため、当該タイヤ故障判定方法によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【0011】
〔6〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔5〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記深さを推定することは、前記深さを、前記タイヤにおける前記損傷部分の位置に応じて補正することを含んでもよい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、タイヤ内部の構造的特徴を加味することで、損傷部分の深さを推定する精度を更に向上させることができる。
【0012】
〔7〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔5〕又は〔6〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記深さの推定結果に基づいて前記ユーザへ第2アラートを通知することをさらに含んでもよい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、故障に伴うタイヤの交換時期の目安をユーザに知らせることも可能となる。
【0013】
〔8〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔7〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記第2アラートを通知することは、推定された前記深さが前記タイヤの耐久性の許容範囲内にないと判定すると、対応する前記損傷部分により前記タイヤが故障していることを通知することを含んでもよい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、故障により直ちにタイヤを交換した方がよいことをユーザに知らせることが可能となる。
【0014】
〔9〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定装置は、制御部を備え、前記制御部は、サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得し、前記サーモ画像に基づいて前記タイヤの複数の損傷部分の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定し、前記相対関係の判定結果に基づいてユーザへ第1アラートを通知する。
本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定装置によれば、サーモ画像におけるタイヤの複数の損傷部分のうち特に表面温度が高い損傷部分についてはより入念に点検を行う動機をユーザに与えることができる。逆に、当該タイヤ故障判定装置によれば、サーモ画像におけるタイヤの複数の損傷部分のうち表面温度が低い損傷部分については点検の簡素化又は省略をユーザに促すこともできる。このため、当該タイヤ故障判定装置によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる、タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】タイヤ故障判定システムの概略構成を示す図である。
図2】サーバの構成を示すブロック図である。
図3】タイヤ故障判定システムの第1動作を示すシーケンス図である。
図4】タイヤ故障判定システムの第2動作を示すシーケンス図である。
図5】タイヤを撮像したサーモ画像の一例を示す図である。
図6】タイヤの複数の損傷部分の表面温度が時間に応じて変化する様子を示すグラフ図である。
図7図6に対応する別のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定システムについて、図面を参照して説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0018】
(タイヤ故障判定システムの構成)
はじめに、図1を参照して、本実施形態に係るタイヤ故障判定システム1の概要について説明する。図1は、タイヤ故障判定システム1の概略構成を示す図である。図1に示されるように、タイヤ故障判定システム1は、サーバ10と、撮像装置20と、計測装置30と、端末装置40とを含む。なお、図1では、それぞれ1つのサーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40が示されている。しかしながら、タイヤ故障判定システム1は、任意の数のサーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40を含んでいてもよい。
【0019】
サーバ10は、1つ以上のコンピュータで構成されている。本実施形態では、サーバ10は、1つのコンピュータで構成されているものとして説明する。しかしながら、サーバ10は、クラウドコンピューティングシステム等、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。本開示において、サーバ10は、「タイヤ故障判定装置」とも称される。
【0020】
撮像装置20は、1つ以上のカメラを含むコンピュータで構成されている。撮像装置20は、例えば、サーモ画像を撮像可能なサーモグラフィカメラを備えている。ただし、撮像装置20は、サーモグラフィカメラに限られず、可視光カメラ、赤外線カメラ等、任意の画像を撮像可能なカメラを備えていてもよい。撮像装置20が撮像する画像は、写真等の静止画であってもよく、動画であってもよい。撮像装置20は、後述する図5に示されるように、タイヤ2を撮像したサーモ画像60を生成し、サーバ10に送信する。本実施形態において、タイヤ2を撮像したサーモ画像60には、タイヤ2の少なくとも一部が写されている。なお、タイヤ2を撮像したサーモ画像60には、タイヤ2の少なくとも一部に加え、タイヤ2を装着した車両3の少なくとも一部が写されていてもよい。
【0021】
再び図1を参照して、撮像装置20は、例えば、鉱山サイトにおける車両3の走行経路に設置された固定式の撮像装置20であってもよい。これにより、撮像装置20は、走行経路を走行中の車両3を撮像することができ、車両3の稼働率及び鉱山における生産性を低下させにくい。ただし、撮像装置20は、固定式の撮像装置20に限られず、ドローンに搭載された撮像装置20、或いは、人間により携帯可能なタブレット端末等の、移動可能な撮像装置20であってもよい。
【0022】
計測装置30は、1つ以上のセンサを含むコンピュータで構成されている。センサは、デジタルタコグラフ、タイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、ECU(Electronic Control Unit)、又はカーナビゲーション装置等であるが、これらに限られない。計測装置30は、車両3に装着されたタイヤ2に関する時系列データを取得し、サーバ10に送信する。そのため、計測装置30は、車両3又はタイヤ2に設置されていてもよい。
【0023】
車両3に装着されたタイヤ2に関する時系列データは、タイヤ2に関する計測値とその計測日時等を含む。例えば計測装置30がタイヤ2に設置されたTPMSを含む場合、タイヤ2に関する計測値は、タイヤ2の内圧(空気圧)、内腔温度、又は熱履歴等の、タイヤ2のタイヤ状態情報を含み得る。タイヤ2の熱履歴は、タイヤ2の使用に伴いタイヤ2に加えられた熱の履歴である。タイヤ2の熱履歴は、タイヤ2の使い始めからのタイヤ2にどのくらいのエネルギーが加えられたかを評価するために用いられる。一般的に、熱履歴が大きくなるほど、タイヤ2の劣化が進む。熱履歴は、例えば、タイヤ2の内腔温度をアレニウスの式に適用することで算出され得る。また例えば計測装置30が車両3に設置されたデジタルタコグラフを含む場合、タイヤ2に関する計測値は、車両3の走行時間、走行距離、速度、加速度、又はタイヤ2の回転数等の、車両3の走行情報を含み得る。
【0024】
端末装置40は、例えばスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の、コンピュータである。
【0025】
ネットワーク50は、サーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40が相互に通信可能な、任意の通信網である。本実施形態におけるネットワーク50は、例えばインターネット、移動体通信網、LAN(Local Area Network)、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0026】
タイヤ故障判定システム1は、1つ以上のタイヤ2の故障を判定するために用いられる。タイヤ故障判定システム1において、サーバ10は、例えば撮像装置20から、サーモグラフィカメラでタイヤ2を撮像したサーモ画像60を取得する。サーバ10は、サーモ画像60に基づいてタイヤ2の複数の損傷部分の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定する。
【0027】
そして、サーバ10は、計測装置30から、タイヤ2の内腔温度の時系列データを取得する。サーバ10は、サーモ画像60におけるタイヤ2の複数の損傷部分の表面温度と、サーモ画像60が撮像されたときの内腔温度とに基づいて、複数の損傷部分の各々に対し深さを推定する。このように、タイヤ故障判定システム1によれば、サーモ画像60におけるタイヤ2の複数の損傷部分の表面温度に加えて、タイヤ2の内腔温度を用いることで、より精度よく損傷部分の深さを推定することができる。
【0028】
本開示において、タイヤ2は、特に限定されないが、鉱山サイト等において利用される運搬車両、建設車両、工事車両又は重機車両等の鉱山車両に装着されるOR(Off The Road)タイヤであってもよい。ただし、タイヤ2は、ORタイヤ以外のタイヤであってもよい。
【0029】
また、本開示において、車両3は、例えば、鉱山サイト等において利用される鉱山車両である。ただし、車両3は、上述した鉱山車両に限られず、例えば、運搬車両、建設車両、工事車両又は重機車両、バス、乗用車、バイク、自転車、又は飛行機等、タイヤ2を装着可能な任意の車両であってもよい。
【0030】
次に、図2を参照して、タイヤ故障判定装置であるサーバ10の構成について、詳細に説明する。図2は、サーバ10の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、サーバ10は、通信部11と、出力部12と、入力部13と、記憶部14と、制御部15と、を備える。サーバ10において、通信部11、出力部12、入力部13、記憶部14、及び制御部15は、有線又は無線で互いに通信可能に接続されている。
【0031】
通信部11は、ネットワーク50に接続するための通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば4G(4th Generation)又は5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応した通信モジュールである。通信モジュールは、例えば有線LAN又は無線LAN等の規格に対応した通信モジュールであってもよい。通信モジュールは、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は赤外線通信等の近距離無線通信規格に対応した通信モジュールであってもよい。本実施形態において、サーバ10は、通信部11を介してネットワーク50に接続される。これによって、サーバ10は、撮像装置20、計測装置30、端末装置40、又は他のコンピュータ等と通信することができる。
【0032】
出力部12は、1つ以上の出力装置を含む。出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ又はランプ等である。これにより、出力部12は、画像、音又は光等を出力する。
【0033】
入力部13は、1つ以上の入力装置を含む。入力装置は、例えばタッチパネル、カメラ又はマイク等である。入力部13は、例えば、サーバ10のユーザによる入力操作を受け付ける。
【0034】
記憶部14は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等である。記憶部14は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部14は、サーバ10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部14は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、組み込みソフトウェア、又はデータベース等を記憶する。記憶部14に記憶された情報は、例えば通信部11を介してネットワーク50から取得される情報で更新可能であってもよい。
【0035】
例えば、記憶部14は、故障判定の対象となる1つ以上のタイヤ2のタイヤ識別情報を記憶していてもよい。本開示において、タイヤ識別情報は、タイヤID(Identifier)ともいう。タイヤ2のタイヤ識別情報は、タイヤ2を一意に識別可能な情報である。タイヤ2のタイヤ識別情報は、例えば、サーバ10によって一意に払い出されるが、これに限られず、タイヤ2の製造番号、或いは、タイヤ2を装着する車両3の車両番号等であってもよい。さらに、記憶部14は、タイヤ2のタイヤ識別情報と関連付けて、タイヤ2に関する情報を記憶していてもよい。
【0036】
タイヤ2に関する情報は、タイヤ2に関する任意の情報を含む。タイヤ2に関する情報は、例えば、上述したタイヤ2に関する時系列データ、タイヤ2の損傷情報、タイヤ2の構成情報、タイヤ2を装着する車両3の情報、或いは車両3におけるタイヤ2が装着されている位置情報を含み得る。タイヤ2の損傷情報は、例えば、タイヤ2が過去に負った損傷の位置、形状、深さ、及び登録日時等を含む情報であってもよい。タイヤ2の構成情報は、例えば、タイヤ2の種類、型番、材料物性、トレッドパターン、ベルト角度、サイズ、又は重量等を含む。タイヤ2を装着する車両3の情報は、車両3の識別情報、種類、型番、排気量、装着タイヤ数、又はシャフト数等を含む。
【0037】
制御部15は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってもよい。制御部15は、プロセッサに限られず、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。制御部15は、上述した、通信部11、出力部12、入力部13、及び記憶部14等の構成要素の機能を含む、サーバ10の機能を実現させるために、それぞれの構成要素を制御する。
【0038】
(タイヤ故障判定システムの動作)
図3図4図5図6、及び図7を参照して、タイヤ故障判定システム1の動作を説明する。図3は、タイヤ故障判定システム1の第1動作を示すシーケンス図である。図4は、タイヤ故障判定システム1の第2動作を示すシーケンス図である。図5は、タイヤ2を撮像したサーモ画像60の一例を示す図である。図6は、タイヤ2の複数の損傷部分70の表面温度が時間に応じて変化する様子を示すグラフ図である。図7は、図6に対応する別のグラフ図である。
【0039】
図3に示されるシーケンス図には、タイヤ故障判定システム1に含まれる、サーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40の動作が示されている。そのため、本動作の説明は、タイヤ故障判定システム1が実行するタイヤ故障判定方法に相当するとともに、タイヤ故障判定システム1に含まれる、サーバ10、撮像装置20、計測装置30、又は端末装置40のそれぞれが実行するタイヤ故障判定方法に相当する。
【0040】
本動作の説明にあたり、サーバ10の制御部15は、記憶部14に、タイヤ2のタイヤ識別情報と、タイヤ2のタイヤ識別情報に関連付けられた、タイヤ2に関する情報と、を格納しているものとする。
【0041】
また、本動作例では、一例として、図5に示されるサーモ画像60に基づいて、サーバ10が、タイヤ2のサイド部の外表面上の複数の損傷部分70を検出する動作を説明する。かかる場合、撮像装置20は、鉱山サイトにおける車両3の走行経路において、車両3の側面のサーモ画像60を撮像可能な位置に設置されていてもよい。
【0042】
図3を参照すると、ステップS101において、計測装置30は、車両3に装着されたタイヤ2に関する時系列データを取得し、サーバ10に送信する。
【0043】
具体的には、計測装置30は、センサを用いて、タイヤ2に関する時系列データを所定のタイミングで取得する。計測装置30は、取得したタイヤ2に関する時系列データを、タイヤ2の識別情報と関連付けて、サーバ10に送信してもよい。例えば、計測装置30は、タイヤ2に関する時系列データを取得するたびに、当該時系列データをサーバ10に送信してもよい。或いは、計測装置30は、所定の期間に計測された時系列データをまとめてサーバ10に送信してもよい。本動作例では、計測装置30は、デジタルタコグラフ及びTPMSを備えている。そのため、タイヤ2に関する時系列データは、タイヤ2の内圧(空気圧)、内腔温度、及び熱履歴等のタイヤ2のタイヤ状態情報と、車両3の走行時間及び走行距離等の車両3の走行情報とを含み得る。ただし、計測装置30から送信される時系列データは、上述した情報に限られない。
【0044】
ステップS102において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の内腔温度等を含む、タイヤ2に関する時系列データを取得する。
【0045】
具体的には、サーバ10の制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2に関する時系列データを計測装置30から受信する。ただし、制御部15は、計測装置30以外のコンピュータを介して、計測装置30によって取得されたタイヤ2に関する時系列データを受信してもよい。制御部15は、受信したタイヤ2に関する時系列データを、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に格納してもよい。
【0046】
ステップS103において、撮像装置20は、サーモグラフィカメラにより、タイヤ2を撮像したサーモ画像60をサーバ10に送信する。
【0047】
具体的には、撮像装置20は、サーモグラフィカメラを用いて、タイヤ2を撮像し、タイヤ2を撮像したサーモ画像60を生成する。本動作例では、図5に示されるように、サーモ画像60は、1枚の静止画であるものとして説明するが、連続的に撮像された複数の静止画又は動画であってもよい。撮像装置20は、撮像したサーモ画像60を、サーモ画像60の撮像時刻の情報とともに、サーバ10に送信する。ただし、撮像装置20から送信される画像は、サーモ画像60に限られない。例えば、撮像装置20は、サーモ画像60とともに、可視光カメラで撮影された写真をサーバ10に送信してもよい。また、タイヤ2を撮像したサーモ画像60には、タイヤ2の少なくとも一部に加え、タイヤ2を装着した車両3の少なくとも一部も写されていてもよい。図5に示されるサーモ画像60には、タイヤ2及びタイヤ2を装着した車両3の一部が写されている。
【0048】
再び図3を参照すると、ステップS104において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2を撮像したサーモ画像60を取得する。
【0049】
具体的には、サーバ10の制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2を撮像したサーモ画像60を、サーモ画像60の撮像時刻の情報とともに、撮像装置20から受信する。ただし、制御部15は、撮像装置20以外のコンピュータを介して、撮像装置20によって撮像されたサーモ画像60を受信してもよい。制御部15は、受信したサーモ画像60とその撮像時刻を、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に格納してもよい。
【0050】
ステップS104において、更に、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60から、サーモ画像60内に写された、タイヤ2の識別情報を特定してもよい。これにより、サーモ画像60内に写されたタイヤ2が予め特定されていない場合でも、制御部15がサーモ画像60からタイヤ2を特定することができる。具体的には、制御部15は、画像処理により、サーモ画像60内のタイヤ2の識別情報を示す表示部分を抽出する。表示部分は、例えば、タイヤ2又は車両3に貼り付けられたQR(Quick Response)コード(登録商標)等の二次元コードであってもよい。かかる場合、制御部15は、二次元コードである表示部分からタイヤ2の識別情報を読み取ることができる。ただし、表示部分は、二次元コードに限られず、文字列、記号、図形、色、模様、又は一次元コード等任意の表示情報とされてもよい。
【0051】
タイヤ2の識別情報を示す表示部分は、任意の位置に表示されていてもよい。例えば、表示部分は、タイヤ2のサイド部等、タイヤ2の外表面に設けられていてもよい。かかる場合、タイヤローテーション等により、タイヤ2がある車両3から他の車両3に装着し直された場合でも、同じ表示部分に基づいてタイヤ2の識別情報を継続して特定することができる。ただし、表示部分は、タイヤ2を装着した車両3の車体に設けられていてもよい。かかる場合、表示部分が車両3の車体に設けられていることで、タイヤ2の外表面が泥で汚れた場合、或いは傷付いた場合であっても、表示部分の視認性が低下しにくい。本動作例では、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60から、サーモ画像60内に写された、タイヤ2の識別情報を特定するものとして説明するが、この限りではない。例えば、撮像装置20からサーモ画像60とともに可視光カメラで撮影された写真を受信した場合、制御部15は、この写真からタイヤ2の識別情報を特定してもよい。
【0052】
再び図3を参照すると、ステップS105において、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の外表面上の複数の損傷部分70を検出する。
【0053】
複数の損傷部分70の検出には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の複数の損傷部分70を特定するための画像解析アルゴリズムを記憶部14に予め格納していてもよい。
【0054】
具体的には、サーバ10の制御部15は、画像解析アルゴリズムを用いて、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の外表面において、周囲の部分よりも閾値温度以上高い部分を、カット又は亀裂等の損傷部分70として検出する。一般に、車両3の走行に伴い、タイヤ2の内腔温度が上昇する。そして、タイヤ2の外表面上の損傷部分70は、他の部分に比べてタイヤ2の内腔に近いため表面温度が高くなる。このため、サーモ画像60を、タイヤ2の外表面上の損傷部分70の位置及び深さ等の検出に使用することができる。
【0055】
サーモ画像60を用いることで、撮像されたタイヤ2の外表面が汚れている場合、或いは夜間にタイヤ2が撮影された場合など、可視光カメラで撮影された写真では損傷の検出精度が低下する場合であっても、損傷の検出精度が低下しにくくなる。本動作例では、図5に示されるサーモ画像60において、制御部15が、周囲の部分よりも温度が高い部分を損傷部分70として検出するものとして説明する。ただし、制御部15は、タイヤ2に複数の損傷部分70が存在する場合、複数の損傷部分70の全てを検出してもよい。制御部15は、検出された損傷部分70の位置及び数等の情報を、タイヤ2の損傷情報として、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に格納してもよい。
【0056】
損傷部分70の検出に用いられる閾値温度は、例えば5度等、固定値とされてもよい。かかる場合、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の外表面において、周囲の部分よりも5度以上高い部分を損傷部分70として検出することができる。当該閾値温度は、制御部15により、サーモ画像60が撮像されたときのタイヤ2の内腔温度(又は内腔温度から算出される熱履歴)に応じて変更されてもよい。このために、制御部15は、閾値温度とタイヤ2の内腔温度との対応付け情報を予め記憶部14に格納していてもよい。
【0057】
本実施形態では、画像解析アルゴリズム及び閾値温度の算出アルゴリズムは、機械学習又はディープラーニング等の統計的手法により構築されていてもよい。例えば、これらのアルゴリズムは、タイヤ2を撮像したサーモ画像60と、人間等により特定されたタイヤ2における損傷部分70と、を教師データとして、統計的手法により構築されてもよい。これにより、教師データの蓄積により、タイヤ2の外表面上の損傷部分70の検出精度を向上させることができる。ただし、画像解析アルゴリズム及び算出アルゴリズムは、統計的手法によらない、所定の演算処理を含んでいてもよい。
【0058】
ステップS106において、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60に基づいてタイヤ2の複数の損傷部分70の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定する。
【0059】
ステップS106における相対関係を判定することは、タイヤ2における複数の損傷部分70の同一時刻での表面温度のうち、第1閾値を超えて相対的に高い外れ値が含まれているか否かを判定することを含んでもよい。本開示において、「第1閾値」は、タイヤ2における複数の損傷部分70の表面温度の標準偏差に基づいて定められる。例えば、第1閾値は、標準偏差そのものであってもよいし、統計的手法により外れ値を定めるときに標準的とされる標準偏差の2倍から3倍以上の値であってもよい。
【0060】
ここで図6を参照すると、タイヤ2における位置及び深さの異なる複数の損傷部分70の表面温度が時間に応じて変化する様子を試験的に調べた結果が示されている。図6では、タイヤ2における複数の損傷部分70の表面温度が経過時間に関する1つのブロックごとに点群で表され、当該点群に対するフィッティングのグラフが曲線で表されている。図6において、経過時間のブロック番号1から数字が大きくなるにつれて時間が経過していることを意味する。例えば、ブロックごとに1時間という固定された時間間隔で時間が経過していてもよいし、互いに異なる時間間隔で時間が経過していてもよい。
【0061】
図6に示すグラフの横軸は、タイヤ2の損傷部分70における深さ方向の内側の先端からタイヤ2を構成するカーカスプライなどの構成部材までの距離を表す。例えば、経過時間のブロック番号1において、複数の損傷部分70の表面温度をそれぞれ示す11個の点が、当該距離ごとにプロットされている。すなわち、11個の点によりそれぞれ示される複数の損傷部分70において、当該距離は、互いに異なっている。ブロック番号1において横軸の所定位置にプロットされている点の当該距離は、ブロック番号2以降の各ブロックにおいても同一であり、各ブロックにおいて当該所定位置に対応する位置に点でプロットされている。
【0062】
時間が経過すると、複数の損傷部分70の表面温度は、全体的に上昇している。時間が経過するにつれて、複数の損傷部分70の表面温度のばらつき範囲は、広がる傾向にある。すなわち、複数の損傷部分70の表面温度のうちの最小値と最大値との間の差分が、時間が経過するにつれて大きくなる傾向にある。しかしながら、そのような場合であっても、各ブロックにおいて、複数の損傷部分70の表面温度に関するプロットの相対的な位置関係は、互いに類似している。複数の損傷部分70の表面温度の上記距離に対する依存性を示すプロファイルは、各ブロックで互いに類似している。各ブロックにおいて、上記の距離が小さいほど損傷部分70の表面温度が上昇する傾向にある。
【0063】
サーバ10の制御部15は、タイヤ2における複数の損傷部分70の同一時刻、すなわち同一ブロックでの表面温度のうち、第1閾値を超えて相対的に高い外れ値が含まれているか否かを判定する。例えば、制御部15は、図6において一例で示すとおり、各ブロックにおいてプロットされている複数の点の一部が相対的に高い温度領域Sに含まれていると、複数の損傷部分70の表面温度の外れ値が含まれていると判定する。
【0064】
以上のような処理に限定されず、ステップS106における相対関係を判定することは、タイヤ2における複数の損傷部分70の表面温度の経時的な変化量のうち、第2閾値を超えて相対的に高い外れ値が含まれているか否かを判定することを含んでもよい。本開示において、「第2閾値」は、タイヤ2における複数の損傷部分70の表面温度の経時的な変化量の標準偏差に基づいて定められる。例えば、第2閾値は、標準偏差そのものであってもよいし、統計的手法により外れ値を定めるときに標準的とされる標準偏差の2倍から3倍以上の値であってもよい。
【0065】
ここで図7を参照すると、図6に示される経過時間の一のブロックにおけるグラフと、一のブロックから所定の時間が経過した後の図6とは異なる他の例のグラフとが示されている。図7では、図6と同様に、タイヤ2における複数の損傷部分70の表面温度が2つの異なる時間において点群で表され、当該点群に対するフィッティングのグラフが曲線で表されている。
【0066】
図6では、時間が経過しても、複数の損傷部分70の表面温度に関するプロットの相対的な位置関係は互いに類似していたが、このような場合に限定されず、例えば図7に示されるように、所定の点Pのみが特異的に大きく経時変化するような場合も想定される。
【0067】
サーバ10の制御部15は、タイヤ2における複数の損傷部分70の2つの時刻における表面温度のグラフを比較して、第2閾値を超えて相対的に高い外れ値が含まれているか否かを判定する。例えば、制御部15は、図7において一例で示すとおり、横軸の所定の位置にプロットされている点Pにおける表面温度の経時的な変化量が相対的に大きいと、複数の損傷部分70の表面温度についてその経時的な変化量の外れ値が含まれていると判定する。
【0068】
再び図3を参照すると、ステップS107において、サーバ10の制御部15は、ステップS106における相対関係の判定結果に基づいてユーザへ第1アラートを通知する。具体的には、サーバ10の制御部15は、第1アラートに関する情報を生成し、通信部11を介して、端末装置40に送信する。
【0069】
ステップS107における第1アラートを通知することは、複数の損傷部分70の表面温度の外れ値が含まれていると判定すると、当該外れ値に対応する損傷部分70の点検を促すことを含んでもよい。第1アラートを通知することは、当該外れ値に対応する損傷部分70のタイヤ2における位置を特定して提示することをさらに含んでもよい。タイヤ2における損傷部分70の位置は、例えば、図5に示されるように、タイヤ径方向におけるタイヤ2の回転軸Rからの距離で表わされ得る。ここで、「タイヤ径方向」とは、タイヤ2の回転軸Rと直交する方向をいう。
【0070】
再び図3を参照すると、ステップS108において、端末装置40は、ステップS107における第1アラートの通知に基づいて第1アラートの内容を表示する。ユーザは、端末装置40に表示された第1アラートの内容を確認することで、タイヤ2における複数の損傷部分70のうち、サーバ10により特定された損傷部分70の位置を把握し、当該損傷部分70を点検する動機を得る。
【0071】
図4を参照すると、ステップS201において、計測装置30は、車両3に装着されたタイヤ2に関する時系列データを取得し、サーバ10に送信する。具体的な処理内容については、図3のステップS101と同様である。
【0072】
ステップS202において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の内腔温度等を含む、タイヤ2に関する時系列データを取得する。具体的な処理内容については、図3のステップS102と同様である。
【0073】
ステップS203において、撮像装置20は、サーモグラフィカメラにより、タイヤ2を撮像したサーモ画像60をサーバ10に送信する。具体的な処理内容については、図3のステップS103と同様である。
【0074】
ステップS204において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2を撮像したサーモ画像60を取得する。具体的な処理内容については、図3のステップS104と同様である。
【0075】
ステップS205において、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の外表面上の複数の損傷部分70を検出する。具体的な処理内容については、図3のステップS105と同様である。
【0076】
ステップS206において、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の外表面上における複数の損傷部分70の各々に対し深さを推定する。
【0077】
損傷部分70の深さの推定には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、ステップS205で検出されたタイヤ2の損傷部分70の表面温度から、損傷部分70の深さを推定してもよい。制御部15は、タイヤ2の外表面上の損傷部分70の表面温度から損傷部分70の深さを推定するための深さ推定アルゴリズムを記憶部14に予め格納していてもよい。制御部15は、深さ推定アルゴリズムを用いて、損傷部分70の表面温度から損傷部分70の深さを推定する。損傷部分70の深さは、例えば、タイヤ2の損傷部分70の表面温度のうち最も高温である部分に相当する深さである。
【0078】
このとき、制御部15は、サーモ画像60におけるタイヤ2の損傷部分70の表面温度に加えて、計測装置30から取得したタイヤ2に関する時系列データに含まれる、タイヤ2の内腔温度を用いて、損傷部分70の深さを推定してもよい。より具体的には、サーモ画像60に写る損傷部分70の深さの推定において、損傷部分70の深さは、サーモ画像60が撮像されたときの内腔温度に応じて異なる値となるように補正される。すなわち、ステップS206における損傷部分70の深さを推定することは、損傷部分70の深さを、サーモ画像60が撮像されたときの内腔温度に応じて補正することを含む。タイヤ2の損傷部分70の表面温度は、タイヤ2の内腔温度の影響を受けて変化する。そのため、損傷部分70の表面温度を、タイヤ2の内腔温度との相対的な関係を用いて補正することで、損傷部分70の深さを推定する精度を向上させることができる。
【0079】
上述のとおり、タイヤ2の外表面上の損傷部分70の表面温度から推定する損傷部分70の深さを、タイヤ2の内腔温度により補正するために、サーバ10の制御部15は、損傷部分70の表面温度及びその深さと、タイヤ2の内腔温度との対応付け情報を予め記憶部14に格納していてもよい。車両3の走行が進み、タイヤ2の内腔温度が高くなるにつれて、損傷部分70の温度とタイヤ2の内腔温度との乖離が大きくなる。そのため、損傷部分70の深さの推定において、制御部15は、損傷部分70の深さを、サーモ画像60が撮像されたときのタイヤ2の内腔温度が高いほど、損傷部分70の深さの補正量が大きくなるように補正してもよい。このように、損傷部分70の表面温度とタイヤ2の内腔温度との相対的な関係を用いて補正することで、損傷部分70の深さを推定する精度を向上させることができる。
【0080】
本実施形態では、深さ推定アルゴリズムは、機械学習又はディープラーニング等の統計的手法により構築されていてもよい。例えば、深さ推定アルゴリズムは、タイヤ2の損傷部分70の特徴と、人間等により計測された損傷部分70の深さと、を教師データとして、統計的手法により構築されてもよい。これにより、教師データの蓄積により、タイヤ2の損傷部分70の深さを推定する精度を向上させることができる。ただし、深さ推定アルゴリズムは、統計的手法によらない、所定の演算処理を含んでいてもよい。
【0081】
さらに、ステップS206における損傷部分70の深さを推定することは、損傷部分70の深さを、タイヤ2における損傷部分70の位置に応じて補正することを含んでもよい。同じ深さの損傷部分70であっても、タイヤ2における損傷部分70の位置によっては、損傷部分70の温度(表面温度)が異なり得る。例えば、損傷部分70の内腔側に、タイヤ2のカーカスプライの折り返し部分が存在する場合、存在しない場合に比べて、損傷部分70の表面温度が高くなる。これは、カーカスプライの折り返し部分の熱が損傷部分70に伝わるためである。このように、例えば、損傷部分70におけるゴムの厚さ、カーカスプライの有無などの内部構造の違いにより、損傷部分70の表面へのタイヤ2の内腔温度の伝わり方が異なる。そのため、タイヤ径方向におけるタイヤ2の回転軸Rからの距離に応じて異なるタイヤ2内部の構造的特徴を加味することで、損傷部分70の深さを推定する精度を更に向上させることができる。
【0082】
制御部15は、推定された損傷部分70の深さを、タイヤ2の損傷情報として、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に格納してもよい。なお、制御部15は、サーモ画像60に写るタイヤ2に1つの損傷部分70のみが検出された場合、本ステップにおいて、1つの損傷部分70の深さのみを推定してもよい。
【0083】
ステップS207において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の損傷部分70の深さがタイヤ2の耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定する。
【0084】
ステップS207における判定において、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、任意に定められてもよい。例えば、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、タイヤ2の損傷部分70の深さに応じて定められていてもよい。サーバ10の制御部15は、例えば、損傷部分70の深さが、タイヤ2の耐久性の許容範囲として定められた値よりも大きい場合に、タイヤ2の損傷部分70の深さがタイヤ2の耐久性の許容範囲から外れたと判定することができる。これにより、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の損傷部分70の深さに基づいて、タイヤ2が耐久性の許容範囲内にあるか否かを自動で判定することができる。サーモ画像60に写るタイヤ2に複数の損傷部分70が検出された場合に、制御部15は、複数の損傷部分70のうち最も深いと推定された損傷部分70に基づいて、本判定を行ってもよく、或いは、複数の損傷部分70の深さの合計値又は平均値等に基づいて、本判定を行ってもよい。
【0085】
さらに、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60に写るタイヤ2に複数の損傷部分70が検出された場合に、複数の損傷部分70の相対的な深さに基づいて、複数の損傷部分70の深さが許容範囲内にあるか否かを判定してもよい。具体的には、タイヤ2において検出された複数の損傷部分70のうち、いずれかの損傷部分70の深さが他の損傷部分70に比べて深い場合には、その損傷部分70の進行は早いと考えられる。そのため、他の損傷部分70に比べて相対的な深さが深い損傷部分70がタイヤ2に存在する場合には、損傷部分70の深さが許容範囲を超えやすいように設定されていてもよい。これにより、タイヤ2の損傷部分70の深さに基づいて、タイヤ2が耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定する精度を更に向上させることができる。
【0086】
タイヤ2の耐久性の許容範囲は、複数段階設定されていてもよい。例えば、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、直ちにタイヤ2の交換を行う必要があるレベル、1ヶ月以内にタイヤ2の交換を行う必要があるレベル、2か月以内にタイヤ2の交換を行う必要があるレベル等、段階的に設定されていてもよい。これにより、タイヤ故障判定システム1は、耐久性の許容範囲の段階に応じて、異なる警告メッセージを後述の第2アラートとして送信する等、異なる処理を実施することができる。
【0087】
ステップS208において、サーバ10の制御部15は、損傷部分70の深さの推定結果に基づいてユーザへ第2アラートを通知する。具体的には、サーバ10の制御部15は、第2アラートに関する情報を生成し、通信部11を介して、端末装置40に送信する。
【0088】
ステップS208における第2アラートを通知することは、損傷部分70について推定された深さがタイヤ2の耐久性の許容範囲内にないと判定すると、対応する損傷部分70によりタイヤ2が故障していることを通知することを含んでもよい。例えば、第2アラートを通知することは、直ちにタイヤ2の交換を行う必要があることを警告するメッセージを通知することを含んでもよい。
【0089】
ステップS209において、端末装置40は、ステップS208における第2アラートの通知に基づいて第2アラートの内容を表示する。ユーザは、端末装置40に表示された第2アラートの内容を確認することで、タイヤ2が故障していることを把握する。
【0090】
以上に限定されず、ステップS208における第2アラートを通知することは、タイヤ2の損傷部分70が許容範囲から外れていると判定された場合に、損傷部分70の位置、数、又は深さ等を含む、タイヤ2の損傷情報を出力することを含んでもよい。
【0091】
タイヤ2の損傷情報の出力には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、ディスプレイ等の出力部12を介して、タイヤ2の損傷情報を表示させてもよい。或いは、制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2の損傷情報を表示させる要求を、端末装置40に送信してもよい。かかる場合、端末装置40は、ステップS209において、サーバ10から受信した要求に基づいて、ディスプレイ等を介して、タイヤ2の損傷情報を表示することができる。
【0092】
タイヤ2の損傷情報は、例えば、タイヤ2の損傷部分70の深さを含む。ただし、タイヤ2の損傷情報は、タイヤ2の損傷部分70の深さに限られず、損傷部分70の位置、数、警告メッセージ等、任意の情報が含まれていてもよい。その結果、タイヤ故障判定システム1のユーザは、タイヤ2の外表面上における損傷部分70の深さの程度を容易に把握することができ、タイヤ2が故障する前に、タイヤ2の検査、補修、交換等を計画することもできる。
【0093】
特に、タイヤ2の交換が行われる際には、タイヤ2は、タイヤ2の損傷情報に応じて異なるタイヤ2に交換されてもよい。例えば、タイヤ2は、損傷部分70の表面温度がタイヤ2に設定された耐久可能温度よりも高い場合には、より耐熱性の高い別の種類のタイヤ2に交換されてもよい。或いは、タイヤ2は、損傷部分70の数が所定の数よりも多い場合には、より損傷部分70が入りにくい他の種類のタイヤ2に交換されてもよい。このようにして、タイヤ故障判定システム1のユーザは、タイヤ2の損傷情報に基づいて、鉱山サイトでの利用に適したタイヤ2を採用することができる。
【0094】
以上述べたように、本実施形態において、タイヤ故障判定装置であるサーバ10は、サーモグラフィカメラでタイヤ2を撮像したサーモ画像60を取得するとともに、複数の損傷部分70の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定する。サーバ10は、相対関係の判定結果に基づいてユーザへ第1アラートを通知する。
【0095】
かかる構成によれば、サーバ10は、サーモ画像60におけるタイヤ2の複数の損傷部分70のうち特に表面温度が高い損傷部分70についてはより入念に点検を行う動機をユーザに与えることができる。逆に、サーバ10は、サーモ画像60におけるタイヤ2の複数の損傷部分70のうち表面温度が低い損傷部分70については点検の簡素化又は省略をユーザに促すこともできる。したがって、本実施形態によれば、タイヤ2の故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【0096】
なお、上述の本動作例では、タイヤ故障判定システム1において、タイヤ2のサイド部の外表面上の損傷部分70を検出する動作を説明したが、この限りではない。タイヤ故障判定システム1の処理対象となるタイヤ2の外表面は、タイヤ2のサイド部の外表面又はトレッド部の外表面の少なくとも一方を含んでいてもよい。すなわち、タイヤ故障判定システム1は、タイヤ2のサイド部に加えて/代えて、タイヤ2のトレッド部の外表面上の損傷部分70を検出するために用いられてもよい。
【0097】
かかる場合、撮像装置20は、タイヤ2のトレッド部を撮像するために、車両3の正面又は背面を撮像可能な位置に設置されていてもよい。そして、上述した動作例と同様に、サーバ10は、撮像装置20からタイヤ2のトレッド部を撮像したサーモ画像60を取得するとともに、タイヤ2の内腔温度を取得する。そして、サーバ10は、サーモ画像60におけるタイヤ2の損傷部分70の表面温度と、サーモ画像60が撮像されたときの内腔温度とに基づいて、損傷部分70の深さを推定する。これにより、サーバ10は、タイヤ2のサイド部に加えて/代えて、タイヤ2のトレッド部の外表面上の損傷部分70の深さを判定することができる。
【0098】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0099】
また例えば、汎用のコンピュータを、上述した実施形態に係るサーバ10として機能させる実施形態も可能である。具体的には、上述した実施形態に係るサーバ10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、汎用のコンピュータのメモリに格納し、プロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能なプログラム、又は当該プログラムを記憶する非一時的なコンピュータ読取可能な媒体としても実現可能である。非一時的なコンピュータ読取可能な媒体には、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリ等が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示によれば、タイヤ2の故障を判定する技術の有用性を向上させることができる、タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置を提供することができる。
【0101】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.9_産業と技術革新の基盤を作ろう」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0102】
1:タイヤ故障判定システム、 2:タイヤ、 3:車両、 10:サーバ(タイヤ故障判定装置)、 11:通信部、 12:出力部、 13:入力部、 14:記憶部、 15:制御部、 20:撮像装置、 30:計測装置、 40:端末装置、 50:ネットワーク、 60:サーモ画像、 70:損傷部分、 P:点 R:回転軸 S:温度領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7