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特開2024-172460タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172460
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20241205BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20241205BHJP
【FI】
B60C19/00 H
G01J5/48 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090193
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】近藤 周
【テーマコード(参考)】
2G066
3D131
【Fターム(参考)】
2G066AC16
2G066BC15
2G066CA01
2G066CA02
3D131BB04
3D131BC55
3D131LA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる、タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置を提供することにある。
【解決手段】本開示に係るタイヤ故障判定方法は、コンピュータが実行するタイヤ故障判定方法であって、サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、前記タイヤの内腔温度を取得することと、前記サーモ画像における前記タイヤの損傷部分の表面温度と、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度とに基づいて、前記損傷部分の深さを推定することと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行するタイヤ故障判定方法であって、
サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、
前記タイヤの内腔温度を取得することと、
前記サーモ画像における前記タイヤの損傷部分の表面温度と、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度とに基づいて、前記損傷部分の深さを推定することと、
を含む、タイヤ故障判定方法。
【請求項2】
前記サーモ画像内に写された前記タイヤの外表面において、周囲の部分よりも閾値温度以上高い部分を前記損傷部分として検出することを更に含み、
前記閾値温度は、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度に応じて変更される、請求項1に記載のタイヤ故障判定方法。
【請求項3】
前記損傷部分の前記深さを推定することは、前記損傷部分の前記深さを、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度に応じて補正することを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ故障判定方法。
【請求項4】
前記損傷部分の前記深さを推定することは、前記損傷部分の前記深さを、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度が高いほど、前記損傷部分の前記深さの補正量が大きくなるように補正することを含む、請求項3に記載のタイヤ故障判定方法。
【請求項5】
前記損傷部分の前記深さを推定することは、前記損傷部分の前記深さを、前記タイヤにおける前記損傷部分の位置に応じて補正することを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ故障判定方法。
【請求項6】
前記損傷部分の前記深さが前記タイヤの耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定することを更に含む、請求項1又は2に記載のタイヤ故障判定方法。
【請求項7】
前記判定することは、前記タイヤに複数の損傷部分が検出された場合に、前記複数の損傷部分の相対的な深さに基づいて、前記複数の損傷部分の深さが前記許容範囲内にあるか否かを判定することを含む、請求項6に記載のタイヤ故障判定方法。
【請求項8】
前記タイヤを装着した車両の走行距離又は走行時間を取得することを更に含み、
前記判定することは、前記損傷部分の前記深さと、前記車両の前記走行距離又は前記走行時間とに基づいて、前記損傷部分の前記深さが前記許容範囲内にあるか否かを判定することを含み、
前記許容範囲は、前記損傷部分の前記深さが深く、且つ、前記車両の前記走行距離又は前記走行時間が少ないほど、前記損傷部分の前記深さが前記許容範囲から外れやすいように設定されている、請求項6に記載のタイヤ故障判定方法。
【請求項9】
タイヤ故障判定装置であって、
サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得し、
前記タイヤの内腔温度を取得し、
前記サーモ画像における前記タイヤの損傷部分の表面温度と、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度とに基づいて、前記損傷部分の深さを推定するように構成された、制御部を備える、タイヤ故障判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの故障を判定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、リムホイールに組み付けられたタイヤの画像データに基づいて、リムホイールの径を基準としたタイヤの外傷部分のサイズを検出するタイヤ外傷検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-202729
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイヤの故障を判定する技術の有用性の更なる向上が求められている。例えば、鉱山サイトにおいて利用される鉱山車両では、突発的なタイヤの故障が生じると、鉱山車両の運搬及びタイヤ交換等の作業の発生により、生産性が低下してしまう。また、突発的な故障を予防するために作業員により定期的なタイヤの検品を行うことは、コスト面で負担となっている。そのため、タイヤの故障判定を自動化することが求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させる、タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、コンピュータが実行するタイヤ故障判定方法であって、サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、前記タイヤの内腔温度を取得することと、前記サーモ画像における前記タイヤの損傷部分の表面温度と、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度とに基づいて、前記損傷部分の深さを推定することと、を含む。
本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法によれば、タイヤの内腔温度を用いることで、タイヤの損傷部分の表面温度に基づき損傷部分の深さを推定する精度を向上させることができる。このため、当該タイヤ故障判定方法によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【0007】
〔2〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔1〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記サーモ画像内に写された前記タイヤの外表面において、周囲の部分よりも閾値温度以上高い部分を前記損傷部分として検出することを更に含み、前記閾値温度は、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度に応じて変更されることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、損傷部分の検出精度を更に向上させることができる。
【0008】
〔3〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔1〕又は〔2〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記損傷部分の前記深さを推定することは、前記損傷部分の前記深さを、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度に応じて補正することを含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、損傷部分の表面温度とタイヤの内腔温度との相対的な関係を利用して、損傷部分の深さを推定する精度を更に向上させることができる。
【0009】
〔4〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔3〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記損傷部分の前記深さを推定することは、前記損傷部分の前記深さを、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度が高いほど、前記損傷部分の前記深さの補正量が大きくなるように補正することを含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、損傷部分の表面温度とタイヤの内腔温度との相対的な関係を利用して、損傷部分の深さを推定する精度を更に向上させることができる。
【0010】
〔5〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記損傷部分の前記深さを推定することは、前記損傷部分の前記深さを、前記タイヤにおける前記損傷部分の位置に応じて補正することを含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、タイヤ内部の構造的特徴を加味することで、損傷部分の深さを推定する精度を更に向上させることができる。
【0011】
〔6〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記損傷部分が前記タイヤの耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定することを更に含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、タイヤの損傷部分の深さに基づいて、タイヤが耐久性の許容範囲内にあるか否かを自動で判定することができる。
【0012】
〔7〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔6〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記判定することは、前記タイヤに複数の損傷部分が検出された場合に、前記複数の損傷部分の相対的な深さに基づいて、前記複数の損傷部分の深さが前記許容範囲内にあるか否かを判定することを含むことが好ましい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、タイヤの損傷部分の深さに基づいて、タイヤが耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定する精度を更に向上させることができる。
【0013】
〔8〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定方法は、上記〔6〕又は〔7〕に記載のタイヤ故障判定方法であって、前記タイヤを装着した車両の走行距離又は走行時間を取得することを更に含み、前記判定することは、前記損傷部分の前記深さと、前記車両の前記走行距離又は前記走行時間とに基づいて、前記損傷部分の前記深さが前記許容範囲内にあるか否かを判定することを含み、前記許容範囲は、前記損傷部分の前記深さが深く、且つ、前記車両の前記走行距離又は前記走行時間が少ないほど、前記損傷部分の前記深さが前記許容範囲から外れやすいように設定されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ故障判定方法によれば、タイヤの損傷部分の深さに基づいて、タイヤが耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定する精度を更に向上させることができる。
【0014】
〔9〕本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定装置は、サーモグラフィカメラでタイヤを撮像したサーモ画像を取得し、前記タイヤの内腔温度を取得し、前記サーモ画像における前記タイヤの損傷部分の表面温度と、前記サーモ画像が撮像されたときの前記内腔温度とに基づいて、前記損傷部分の深さを推定するように構成された、制御部を備える。
本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定装置によれば、タイヤの内腔温度を用いることで、タイヤの損傷部分の表面温度に基づき損傷部分の深さを推定する精度を向上させることができる。このため、当該タイヤ故障判定装置によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる、タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定システムの概略構成を示す図である。
図2図1に示されるサーバの構成を示すブロック図である。
図3図1に示されるタイヤ故障判定システムの動作を示すシーケンス図である。
図4】タイヤを撮像したサーモ画像の一例を示す図である。
図5】タイヤの内腔温度に応じたタイヤの損傷部分の温度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一実施形態に係るタイヤ故障判定システムについて、図面を参照して説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0018】
(タイヤ故障判定システムの構成)
はじめに、図1を参照して、本実施形態に係るタイヤ故障判定システム1の概要について説明する。図1は、タイヤ故障判定システム1の概略構成を示す図である。図1に示されるように、タイヤ故障判定システム1は、サーバ10と、撮像装置20と、計測装置30と、端末装置40とを含む。なお、図1では、それぞれ1つのサーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40が示されている。しかしながら、タイヤ故障判定システム1は、任意の数のサーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40を含んでいてもよい。
【0019】
サーバ10は、1つ以上のコンピュータで構成されている。本実施形態では、サーバ10は、1つのコンピュータで構成されているものとして説明する。しかしながら、サーバ10は、クラウドコンピューティングシステム等、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。本開示において、サーバ10は、「タイヤ故障判定装置」とも称される。
【0020】
撮像装置20は、1つ以上のカメラを含むコンピュータで構成されている。撮像装置20は、例えば、サーモ画像を撮像可能なサーモグラフィカメラを備えている。ただし、撮像装置20は、サーモグラフィカメラに限られず、可視光カメラ、赤外線カメラ等、任意の画像を撮像可能なカメラを備えていてもよい。撮像装置20が撮像する画像は、写真等の静止画であってもよく、動画であってもよい。撮像装置20は、タイヤ2を撮像したサーモ画像を生成し、サーバ10に送信する。本実施形態において、タイヤ2を撮像したサーモ画像には、タイヤ2の少なくとも一部が写されている。なお、タイヤ2を撮像したサーモ画像には、タイヤ2の少なくとも一部に加え、タイヤ2を装着した車両3の少なくとも一部が写されていてもよい。
【0021】
撮像装置20は、例えば、鉱山サイトにおける車両3の走行経路に設置された固定式の撮像装置20であってもよい。これにより、撮像装置20は、走行経路を走行中の車両3を撮像することができ、車両3の稼働率及び鉱山における生産性を低下させにくい。ただし、撮像装置20は、固定式の撮像装置20に限られず、ドローンに搭載された撮像装置20、或いは、人間により携帯可能なタブレット端末等の、移動可能な撮像装置20であってもよい。
【0022】
計測装置30は、1つ以上のセンサを含むコンピュータで構成されている。センサは、デジタルタコグラフ、タイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、ECU(Electronic Control Unit)、又はカーナビゲーション装置等であるが、これらに限られない。計測装置30は、車両3に装着されたタイヤ2に関する時系列データを取得し、サーバ10に送信する。そのため、計測装置30は、車両3又はタイヤ2に設置されていてもよい。
【0023】
車両3に装着されたタイヤ2に関する時系列データは、タイヤ2に関する計測値とその計測日時等を含む。例えば計測装置30がタイヤ2に設置されたTPMSを含む場合、タイヤ2に関する計測値は、タイヤ2の内圧(空気圧)、内腔温度、又は熱履歴等の、タイヤ2のタイヤ状態情報を含み得る。タイヤ2の熱履歴は、タイヤ2の使用に伴いタイヤ2に加えられた熱の履歴である。タイヤ2の熱履歴は、タイヤ2の使い始めからのタイヤ2にどのくらいのエネルギーが加えられたかを評価するために用いられる。一般的に、熱履歴が大きくなるほど、タイヤ2の劣化が進む。熱履歴は、例えば、タイヤ2の内腔温度をアレニウスの式に適用することで算出され得る。また例えば計測装置30が車両3に設置されたデジタルタコグラフを含む場合、タイヤ2に関する計測値は、車両3の走行時間、走行距離、速度、加速度、又はタイヤ2の回転数等の、車両3の走行情報を含み得る。
【0024】
端末装置40は、例えばスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の、コンピュータである。
【0025】
ネットワーク50は、サーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40が相互に通信可能な、任意の通信網である。本実施形態におけるネットワーク50は、例えばインターネット、移動体通信網、LAN(Local Area Network)、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0026】
タイヤ故障判定システム1は、1つ以上のタイヤ2の故障を判定するために用いられる。タイヤ故障判定システム1において、サーバ10は、例えば撮像装置20から、サーモグラフィカメラでタイヤ2を撮像したサーモ画像を取得する。そして、サーバ10は、計測装置30から、タイヤ2の内腔温度を取得する。サーバ10は、サーモ画像におけるタイヤの損傷部分の表面温度と、サーモ画像が撮像されたときの内腔温度とに基づいて、損傷部分の深さを推定する。このように、タイヤ故障判定システム1によれば、サーモ画像におけるタイヤ2の損傷部分の表面温度に加えて、タイヤ2の内腔温度を用いることで、より精度よく損傷部分の深さを推定することができる。
【0027】
本開示において、タイヤ2は、特に限定されないが、鉱山サイト等において利用される運搬車両、建設車両、工事車両又は重機車両等の鉱山車両に装着されるOR(Off The Road)タイヤであってもよい。ただし、タイヤ2は、ORタイヤ以外のタイヤであってもよい。
【0028】
また、本開示において、車両3は、例えば、鉱山サイト等において利用される鉱山車両である。ただし、車両3は、上述した鉱山車両に限られず、例えば、運搬車両、建設車両、工事車両又は重機車両、バス、乗用車、バイク、自転車、又は飛行機等、タイヤ2を装着可能な任意の車両であってもよい。
【0029】
次に、図2を参照して、タイヤ故障判定装置であるサーバ10の構成について、詳細に説明する。図2は、サーバ10の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、サーバ10は、通信部11と、出力部12と、入力部13と、記憶部14と、制御部15と、を備える。サーバ10において、通信部11、出力部12、入力部13、記憶部14、及び制御部15は、有線又は無線で互いに通信可能に接続されている。
【0030】
通信部11は、ネットワーク50に接続するための通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば4G(4th Generation)又は5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応した通信モジュールである。通信モジュールは、例えば有線LAN又は無線LAN等の規格に対応した通信モジュールであってもよい。通信モジュールは、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は赤外線通信等の近距離無線通信規格に対応した通信モジュールであってもよい。本実施形態において、サーバ10は、通信部11を介してネットワーク50に接続される。これによって、サーバ10は、撮像装置20、計測装置30、端末装置40、又は他のコンピュータ等と通信することができる。
【0031】
出力部12は、1つ以上の出力装置を含む。出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ又はランプ等である。これにより、出力部12は、画像、音又は光等を出力する。
【0032】
入力部13は、1つ以上の入力装置を含む。入力装置は、例えばタッチパネル、カメラ又はマイク等である。入力部13は、例えば、サーバ10の利用者による入力操作を受け付ける。
【0033】
記憶部14は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等である。記憶部14は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部14は、サーバ10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部14は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、組み込みソフトウェア、又はデータベース等を記憶する。記憶部14に記憶された情報は、例えば通信部11を介してネットワーク50から取得される情報で更新可能であってもよい。
【0034】
例えば、記憶部14は、故障判定の対象となる1つ以上のタイヤ2のタイヤ識別情報を記憶していてもよい。本開示において、タイヤ識別情報は、タイヤID(Identifier)ともいう。タイヤ2のタイヤ識別情報は、タイヤ2を一意に識別可能な情報である。タイヤ2のタイヤ識別情報は、例えば、サーバ10によって一意に払い出されるが、これに限られず、タイヤ2の製造番号、或いは、タイヤ2を装着する車両3の車両番号等であってもよい。さらに、記憶部14は、タイヤ2のタイヤ識別情報と関連付けて、タイヤ2に関する情報を記憶していてもよい。
【0035】
タイヤ2に関する情報は、タイヤ2に関する任意の情報を含む。タイヤ2に関する情報は、例えば、上述したタイヤ2に関する時系列データ、タイヤ2の損傷情報、タイヤ2の構成情報、タイヤ2を装着する車両3の情報、或いは車両3におけるタイヤ2が装着されている位置情報を含み得る。タイヤ2の損傷情報は、例えば、タイヤ2が過去に負った損傷の位置、形状、深さ、及び登録日時等を含む情報であってもよい。タイヤ2の構成情報は、例えば、タイヤ2の種類、型番、材料物性、トレッドパターン、ベルト角度、サイズ、又は重量等を含む。タイヤ2を装着する車両3の情報は、車両3の識別情報、種類、型番、排気量、装着タイヤ数、又はシャフト数等を含む。
【0036】
制御部15は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってもよい。制御部15は、プロセッサに限られず、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。制御部15は、上述した、通信部11、出力部12、入力部13、及び記憶部14等の構成要素の機能を含む、サーバ10の機能を実現させるために、それぞれの構成要素を制御する。
【0037】
(タイヤ故障判定システムの動作)
図3図4及び図5を参照して、タイヤ故障判定システム1の動作を説明する。図3は、タイヤ故障判定システム1の動作を示すシーケンス図である。図4は、タイヤ2を撮像したサーモ画像60の一例を示す図である。図5は、タイヤ2の内腔温度に応じたタイヤ2の損傷部分70の温度の変化を示すグラフである。図3に示されるシーケンス図には、タイヤ故障判定システム1に含まれる、サーバ10、撮像装置20、計測装置30、及び端末装置40の動作が示されている。そのため、本動作の説明は、タイヤ故障判定システム1が実行するタイヤ故障判定方法に相当するとともに、タイヤ故障判定システム1に含まれる、サーバ10、撮像装置20、計測装置30、又は端末装置40のそれぞれが実行するタイヤ故障判定方法に相当する。
【0038】
本動作の説明にあたり、サーバ10の制御部15は、記憶部14に、タイヤ2のタイヤ識別情報と、タイヤ2のタイヤ識別情報に関連付けられた、タイヤ2に関する情報と、を記憶しているものとする。
【0039】
また、本動作例では、一例として、図4に示されるサーモ画像60に基づいて、サーバ10が、タイヤ2のサイド部の外表面上の損傷部分70を検出する動作を説明する。かかる場合、撮像装置20は、鉱山サイトにおける車両3の走行経路において、車両3の側面のサーモ画像60を撮像可能な位置に設置されていてもよい。
【0040】
図3を参照すると、ステップS101において、計測装置30は、車両3に装着されたタイヤ2に関する時系列データを取得し、サーバ10に送信する。
【0041】
具体的には、計測装置30は、センサを用いて、タイヤ2に関する時系列データを所定のタイミングで取得する。計測装置30は、取得したタイヤ2に関する時系列データを、タイヤ2の識別情報と関連付けて、サーバ10に送信してもよい。例えば、計測装置30は、タイヤ2に関する時系列データを取得するたびに、当該時系列データをサーバ10に送信してもよい。或いは、計測装置30は、所定の期間に計測された時系列データをまとめてサーバ10に送信してもよい。本動作例では、計測装置30は、デジタルタコグラフ及びTPMSを備えている。そのため、タイヤ2に関する時系列データは、タイヤ2の内圧(空気圧)、内腔温度、及び熱履歴等のタイヤ2のタイヤ状態情報と、車両3の走行時間及び走行距離等の車両3の走行情報とを含み得る。ただし、計測装置30から送信される時系列データは、上述した情報に限られない。
【0042】
ステップS102において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の内腔温度等を含む、タイヤ2に関する時系列データを取得する。
【0043】
具体的には、サーバ10の制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2に関する時系列データを計測装置30から受信する。ただし、制御部15は、計測装置30以外のコンピュータを介して、計測装置30によって取得されたタイヤ2に関する時系列データを受信してもよい。制御部15は、受信したタイヤ2に関する時系列データを、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に記憶してもよい。
【0044】
ステップS103において、撮像装置20は、サーモグラフィカメラにより、タイヤ2を撮像したサーモ画像60をサーバ10に送信する。
【0045】
具体的には、撮像装置20は、サーモグラフィカメラを用いて、タイヤ2を撮像し、タイヤ2を撮像したサーモ画像60を生成する。本動作例では、図4に示されるように、サーモ画像60は、1枚の静止画であるものとして説明するが、連続的に撮像された複数の静止画又は動画であってもよい。撮像装置20は、撮像したサーモ画像60を、サーモ画像60の撮像時刻の情報とともに、サーバ10に送信する。ただし、撮像装置20から送信される画像は、サーモ画像60に限られない。例えば、撮像装置20は、サーモ画像60とともに、可視光カメラで撮影された写真をサーバ10に送信してもよい。また、タイヤ2を撮像したサーモ画像60には、タイヤ2の少なくとも一部に加え、タイヤ2を装着した車両3の少なくとも一部も写されていてもよい。図4に示されるサーモ画像60には、タイヤ2及びタイヤ2を装着した車両3の一部が写されている。
【0046】
再び図3を参照すると、ステップS104において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2を撮像したサーモ画像60を取得する。
【0047】
具体的には、サーバ10の制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2を撮像したサーモ画像60を、サーモ画像60の撮像時刻の情報とともに、撮像装置20から受信する。ただし、制御部15は、撮像装置20以外のコンピュータを介して、撮像装置20によって撮像されたサーモ画像60を受信してもよい。制御部15は、受信したサーモ画像60とその撮像時刻を、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に記憶してもよい。
【0048】
ステップS104において、更に、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60から、サーモ画像60内に写された、タイヤ2の識別情報を特定してもよい。これにより、サーモ画像60内に写されたタイヤ2が予め特定されていない場合でも、制御部15がサーモ画像60からタイヤ2を特定することができる。具体的には、制御部15は、画像処理により、サーモ画像60内のタイヤ2の識別情報を示す表示部分を抽出する。表示部分は、例えば、タイヤ2又は車両3に貼り付けられたQR(Quick Response)コード(登録商標)等の二次元コードであってもよい。かかる場合、制御部15は、二次元コードである表示部分からタイヤ2の識別情報を読み取ることができる。ただし、表示部分は、二次元コードに限られず、文字列、記号、図形、色、模様、又は一次元コード等任意の表示情報とされてもよい。
【0049】
タイヤ2の識別情報を示す表示部分は、任意の位置に表示されていてもよい。例えば、表示部分は、タイヤ2のサイド部等、タイヤ2の外表面に設けられていてもよい。かかる場合、タイヤローテーション等により、タイヤ2がある車両3から他の車両3に装着し直された場合でも、同じ表示部分に基づいてタイヤ2の識別情報を継続して特定することができる。ただし、表示部分は、タイヤ2を装着した車両3の車体に設けられていてもよい。かかる場合、表示部分が車両3の車体に設けられていることで、タイヤ2の外表面が泥で汚れた場合、或いは傷付いた場合であっても、表示部分の視認性が低下しにくい。本動作例では、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60から、サーモ画像60内に写された、タイヤ2の識別情報を特定するものとして説明するが、この限りではない。例えば、撮像装置20からサーモ画像60とともに可視光カメラで撮影された写真を受信した場合、制御部15は、この写真からタイヤ2の識別情報を特定してもよい。
【0050】
ステップS105において、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の外表面上の損傷部分70を検出する。
【0051】
損傷部分70の検出には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の損傷部分70を特定するための画像解析アルゴリズムを記憶部14に予め記憶していてもよい。
【0052】
具体的には、サーバ10の制御部15は、画像解析アルゴリズムを用いて、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の外表面において、周囲の部分よりも閾値温度以上高い部分を、カット又は亀裂等の損傷部分70として検出する。一般に、車両3の走行に伴い、タイヤ2の内腔温度が上昇する。そして、タイヤ2の外表面上の損傷部分70は、他の部分に比べてタイヤ2の内腔に近いため表面温度が高くなる。このため、サーモ画像60を、タイヤ2の外表面上の損傷部分70の位置及び深さ等の検出に使用することができる。サーモ画像60を用いることで、撮像されたタイヤ2の外表面が汚れている場合、或いは夜間にタイヤ2が撮影された場合など、可視光カメラで撮影された写真では損傷の検出精度が低下する場合であっても、損傷の検出精度が低下しにくくなる。本動作例では、図4に示されるサーモ画像60において、制御部15が、周囲の部分よりも温度が高い部分を損傷部分70として検出するものとして説明する。ただし、制御部15は、タイヤ2に複数の損傷部分70が存在する場合、複数の損傷部分70の全てを検出してもよい。制御部15は、検出された損傷部分70の位置及び数等の情報を、タイヤ2の損傷情報として、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に記憶してもよい。なお、図4に示されるサーモ画像60において、検出された損傷部分70は、四角い枠で囲まれて強調して表示されているが、この限りではない。
【0053】
損傷部分70の検出に用いられる閾値温度は、例えば、固定値とされてもよい。閾値温度は、例えば、3σ法等の統計的手法により導出された外れ値を用いて定められ得る。かかる場合、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の外表面において、周囲の部分よりも閾値温度以上高い部分を損傷部分70として検出することができる。ただし、当該閾値温度は、固定値に限られず、制御部15により、サーモ画像60が撮像されたときのタイヤ2の内腔温度(又は内腔温度から算出される熱履歴)に応じて変更されてもよい。このために、制御部15は、閾値温度とタイヤ2の内腔温度との対応付け情報を予め記憶部14に記憶していてもよい。ここで図5を参照すると、タイヤ2における位置及び深さの異なる複数の損傷部分70の温度(表面温度)が、タイヤ2の内腔温度の変化に伴い、変化する様子が示されている。図5において、複数の損傷部分70の温度が点で表され、タイヤ2の内腔温度が線で表されている。図5に示されるように、タイヤ2の損傷部分70の温度は、タイヤ2の内腔温度に応じて変化する。そのため、損傷部分70の検出に用いられる閾値温度を、タイヤ2の内腔温度に応じて変更することで、損傷部分70の検出精度を向上させることができる。
【0054】
具体的には、図5に矢印で示されるように、時間の経過に対して、タイヤ2の内腔温度と損傷部分70の温度とが非線形な挙動をとる。図示例では、時間が経過してタイヤ2の内腔温度が高くなるにつれて、内腔温度と損傷部分70の温度との乖離が大きくなっている。そのため、閾値温度は、タイヤ2の内腔温度が高くなるほど、閾値温度の上昇量が少なくなるように設定されていてもよい。これにより、タイヤ2の損傷部分70の検出精度を更に向上させることができる。本開示において「サーモ画像60が撮像されたとき」のタイヤ2の内腔温度は、時系列データにおいて、サーモ画像60の撮像時刻又は撮像時刻に最も近い1時点のタイヤ2の内腔温度であってもよく、或いは、サーモ画像60の撮像時刻を基準とした所定期間(例えば、撮像時刻の直前1時間)における複数のタイヤ2の内腔温度であってもよい。所定期間における複数のタイヤ2の内腔温度は、所定期間内に計測された内腔温度の全ての時系列データであってもよく、当該時系列データから特異点となるデータを除去したものであってもよい。
【0055】
本実施形態では、画像解析アルゴリズム及び閾値温度の算出アルゴリズムは、機械学習又はディープラーニング等の統計的手法により構築されていてもよい。例えば、これらのアルゴリズムは、タイヤ2を撮像したサーモ画像60と、人間等により特定されたタイヤ2における損傷部分70と、を教師データとして、統計的手法により構築されてもよい。これにより、教師データの蓄積により、タイヤ2の外表面上の損傷部分70の検出精度を向上させることができる。ただし、画像解析アルゴリズム及び算出アルゴリズムは、統計的手法によらない、所定の演算処理を含んでいてもよい。
【0056】
再び図3を参照すると、ステップS106において、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60内に写されたタイヤ2の外表面上の損傷部分70の深さを推定する。
【0057】
損傷部分70の深さの推定には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、ステップS105で検出されたタイヤ2の損傷部分70の表面温度から、損傷部分70の深さを推定してもよい。制御部15は、タイヤ2の外表面上の損傷部分70の表面温度から損傷部分70の深さを推定するための深さ推定アルゴリズムを記憶部14に予め記憶していてもよい。制御部15は、深さ推定アルゴリズムを用いて、損傷部分70の表面温度から損傷部分70の深さを推定する。損傷部分70の深さは、例えば、タイヤ2の損傷部分70の表面温度のうち最も高温である部分に相当する深さとされ得る。
【0058】
このとき、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60におけるタイヤ2の損傷部分70の表面温度に加えて、計測装置30から取得したタイヤ2に関する時系列データに含まれる、タイヤ2の内腔温度を用いて、損傷部分70の深さを推定してもよい。より具体的には、サーモ画像60に写る損傷部分70の深さの推定において、損傷部分70の深さは、サーモ画像60が撮像されたときの内腔温度に応じて異なる値となるように補正される。すなわち、ステップS106における損傷部分70の深さを推定することは、損傷部分70の深さを、サーモ画像60が撮像されたときの内腔温度に応じて補正することを含む。図5に示されるように、タイヤ2の損傷部分70の表面温度は、タイヤ2の内腔温度の影響を受けて変化する。そのため、損傷部分70の表面温度を、タイヤ2の内腔温度との相対的な関係を用いて補正することで、損傷部分70の深さを推定する精度を向上させることができる。
【0059】
上述のとおり、タイヤ2の外表面上の損傷部分70の表面温度から推定する損傷部分70の深さを、タイヤ2の内腔温度により補正するために、サーバ10の制御部15は、損傷部分70の表面温度及びその深さと、タイヤ2の内腔温度との対応付け情報を予め記憶部14に記憶していてもよい。図5に示される例では、矢印で示されるように、車両3の走行が進み、タイヤ2の内腔温度が高くなるにつれて、損傷部分70の温度とタイヤ2の内腔温度との乖離が大きくなっている。そのため、損傷部分70の深さの推定において、制御部15は、損傷部分70の深さを、サーモ画像60が撮像されたときのタイヤ2の内腔温度が高いほど、損傷部分70の深さの補正量が大きくなるように補正してもよい。このように、損傷部分70の表面温度とタイヤ2の内腔温度との相対的な関係を用いて補正することで、損傷部分70の深さを推定する精度を向上させることができる。
【0060】
本実施形態では、深さ推定アルゴリズムは、機械学習又はディープラーニング等の統計的手法により構築されていてもよい。例えば、深さ推定アルゴリズムは、タイヤ2の損傷部分70の特徴と、人間等により計測された損傷部分70の深さと、を教師データとして、統計的手法により構築されてもよい。これにより、教師データの蓄積により、タイヤ2の損傷部分70の深さを推定する精度を向上させることができる。ただし、深さ推定アルゴリズムは、統計的手法によらない、所定の演算処理を含んでいてもよい。
【0061】
さらに、ステップS106における損傷部分70の深さを推定することは、損傷部分70の深さを、タイヤ2における損傷部分70の位置に応じて補正することを含んでもよい。タイヤ2における損傷部分70の位置は、例えば、図4に示されるように、タイヤ径方向におけるタイヤ2の回転軸Rからの距離で表わされ得る。ここで、「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸Rと直交する方向をいう。同じ深さの損傷部分70であっても、タイヤ2における損傷部分70の位置によっては、損傷部分70の温度(表面温度)が異なり得る。例えば、損傷部分70の内腔側に、タイヤ2のカーカスプライの折り返し部分が存在する場合、存在しない場合に比べて、損傷部分70の表面温度が高くなる。これは、タイヤ2の内腔の熱が、カーカスプライの折り返し部分により吸収され、損傷部分70まで伝わりやすくなるためである。このように、例えば、損傷部分70におけるゴムの厚さ、カーカスプライの有無などの内部構造の違い、或いは、熱伝導率などの、損傷部分70の内腔側に位置する構成要素の物性の違いにより、損傷部分70の表面へのタイヤ2の内腔温度の伝わり方が異なる。そのため、タイヤ径方向におけるタイヤ2の回転軸Rからの距離に応じて異なるタイヤ2内部の構造的特徴を加味することで、損傷部分70の深さを推定する精度を更に向上させることができる。
【0062】
制御部15は、推定された損傷部分70の深さを、タイヤ2の損傷情報として、タイヤ2の識別情報と関連付けて記憶部14に記憶してもよい。なお、制御部15は、サーモ画像60に写るタイヤ2に複数の損傷部分70が検出された場合、本ステップにおいて、複数の損傷部分70のぞれぞれの深さを推定してもよい。
【0063】
再び図3を参照して、ステップS107において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の損傷部分70の深さがタイヤ2の耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定する。
【0064】
ステップS107における判定において、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、任意に定められてもよい。例えば、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、タイヤ2の損傷部分70の深さの範囲として定められていてもよい。サーバ10の制御部15は、例えば、損傷部分70の深さが、タイヤ2の耐久性の許容範囲として定められた値よりも深い場合に、タイヤ2の損傷部分70の深さがタイヤ2の耐久性の許容範囲から外れたと判定することができる。これにより、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の損傷部分70の深さに基づいて、タイヤ2が耐久性の許容範囲内にあるか否かを自動で判定することができる。サーモ画像60に写るタイヤ2に複数の損傷部分70が検出された場合に、制御部15は、複数の損傷部分70のうち最も深いと推定された損傷部分70に基づいて、本判定を行ってもよく、或いは、複数の損傷部分70の深さの合計値又は平均値等に基づいて、本判定を行ってもよい。
【0065】
さらに、サーバ10の制御部15は、サーモ画像60に写るタイヤ2に複数の損傷部分70が検出された場合に、複数の損傷部分70の相対的な深さに基づいて、複数の損傷部分70の深さが許容範囲内にあるか否かを判定してもよい。具体的には、タイヤ2において検出された複数の損傷部分70のうち、いずれかの損傷部分70の深さが他の損傷部分70に比べて相対的に深い場合には、その損傷部分70の進行は早いと考えられる。そのため、他の損傷部分70に比べて相対的な深さが深い損傷部分70がタイヤ2に存在する場合には、損傷部分70の深さが許容範囲を超えやすいように設定されていてもよい。例えば、制御部15は、タイヤ2の耐久性の許容範囲として定められるタイヤ2の損傷部分70の深さの範囲を、複数の損傷部分70の深さの平均値又は標準偏差に応じて変更してもよい。これにより、タイヤ2の損傷部分70の深さに基づいて、タイヤ2が耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定する精度を更に向上させることができる。
【0066】
或いは、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の耐久性の許容範囲として定められるタイヤ2の損傷部分70の深さの範囲を、タイヤ2における損傷部分70の位置に応じて変更してもよい。上述のとおり、タイヤ2における損傷部分70の位置は、例えば、タイヤ径方向におけるタイヤ2の回転軸Rからの距離で表わされてもよい。例えば、損傷部分70におけるゴムの厚さ、カーカスプライの有無などの内部構造に応じて、その部分の耐久性も異なってくる。そのため、タイヤ径方向におけるタイヤ2の回転軸Rからの距離に応じて異なるタイヤ2内部の構造的特徴を加味することで、タイヤ2が耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定する精度を更に向上させることができる。
【0067】
さらに、ステップS107における判定において、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、タイヤ2の損傷部分70の深さに加えて、他の要素を用いて複合的に定められていてもよい。他の要素は、例えば、計測装置30から取得したタイヤ2に関する時系列データに含まれる情報である。一例として、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の損傷部分70の深さと、タイヤ2を装着した車両3の走行距離又は走行時間とに基づいて、損傷部分70の深さがタイヤ2の耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定してもよい。具体的には、車両3の走行距離又は走行時間が少ないにも関わらず、タイヤ2の損傷部分70の深さが深い場合には、その損傷部分70の進行は早いと考えられる。そのため、許容範囲は、タイヤ2の損傷部分70の深さが深く、且つ、タイヤ2を装着した車両3の走行距離又は走行時間が少ないほど、損傷部分70の深さが許容範囲から外れやすいように設定されていてもよい。これにより、タイヤ2の損傷部分70の深さに基づいて、タイヤ2が耐久性の許容範囲内にあるか否かを判定する精度を更に向上させることができる。
【0068】
他の例として、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の損傷部分70の深さと、タイヤ2の熱履歴とに基づいて、損傷部分70の深さがタイヤ2の耐久性の許容範囲から外れているか否かを判定してもよい。具体的には、タイヤ2の熱履歴が大きい場合、既にタイヤ2が劣化しており、タイヤ2の損傷部分70の進行は早いと考えられる。そのため、許容範囲は、タイヤ2の損傷部分70の深さが深く、且つ、タイヤ2の熱履歴が大きいほど、損傷部分70の深さが許容範囲を外れやすいように設定されていてもよい。これにより、タイヤ2の損傷部分70がタイヤ2の耐久性の許容範囲を超えているか否かの判定精度を向上させることができる。
【0069】
タイヤ2の耐久性の許容範囲は、複数段階設定されていてもよい。例えば、タイヤ2の耐久性の許容範囲は、直ちにタイヤ2の交換を行う必要があるレベル、1ヶ月以内にタイヤ2の交換を行う必要があるレベル、2か月以内にタイヤ2の交換を行う必要があるレベル等、段階的に設定されていてもよい。これにより、タイヤ故障判定システム1は、耐久性の許容範囲の段階に応じて、異なる警告メッセージを送信する等、異なる処理を実施することができる。
【0070】
ステップS108において、サーバ10の制御部15は、タイヤ2の損傷部分70が許容範囲から外れていると判定された場合に、損傷部分70の位置、数、又は深さ等を含む、タイヤ2の損傷情報を出力する。
【0071】
タイヤ2の損傷情報の出力には、任意の手法が採用可能である。例えば、サーバ10の制御部15は、ディスプレイ等の出力部12を介して、タイヤ2の損傷情報を表示させてもよい。或いは、制御部15は、通信部11を介して、タイヤ2の損傷情報を表示させる要求を、端末装置40に送信してもよい。かかる場合、端末装置40は、ステップS109において、サーバ10から受信した要求に基づいて、ディスプレイ等を介して、タイヤ2の損傷情報を表示することができる。タイヤ2の損傷情報は、例えば、タイヤ2の損傷部分70の深さを含む。ただし、タイヤ2の損傷情報は、タイヤ2の損傷部分70の深さに限られず、損傷部分70の位置、数、警告メッセージ等、任意の情報が含まれていてもよい。その結果、タイヤ故障判定システム1の利用者は、タイヤ2の外表面上における損傷部分70の深さの程度を容易に把握することができ、タイヤ2が故障する前に、タイヤ2の検査、補修、交換等を計画することができる。特に、タイヤ2の交換が行われる際には、タイヤ2は、タイヤ2の損傷情報に応じて異なるタイヤ2に交換されてもよい。例えば、タイヤ2は、損傷部分70の表面温度がタイヤ2に設定された耐久可能温度よりも高い場合には、より耐熱性の高い別の種類のタイヤ2に交換されてもよい。或いは、タイヤ2は、損傷部分70の数が所定の数よりも多い場合には、より損傷部分70が入りにくい他の種類のタイヤ2に交換されてもよい。このようにして、タイヤ故障判定システム1の利用者は、タイヤ2の損傷情報に基づいて、鉱山サイトでの利用に適したタイヤ2を採用することができる。
【0072】
以上述べたように、本実施形態において、タイヤ故障判定装置であるサーバ10は、サーモグラフィカメラでタイヤ2を撮像したサーモ画像60を取得するとともに、タイヤ2の内腔温度を取得する。サーバ10は、サーモ画像60におけるタイヤ2の損傷部分70の表面温度と、サーモ画像60が撮像されたときの内腔温度とに基づいて、損傷部分70の深さを推定する。
【0073】
かかる構成によれば、サーバ10は、サーモ画像60におけるタイヤ2の損傷部分70の表面温度に加えて、タイヤ2の内腔温度を用いることで、より精度よく損傷部分70の深さを推定することができる。したがって、本実施形態によれば、タイヤ2の故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【0074】
なお、上述の本動作例では、タイヤ故障判定システム1において、タイヤ2のサイド部の外表面上の損傷部分70を検出する動作を説明したが、この限りではない。タイヤ故障判定システム1の処理対象となるタイヤ2の外表面は、タイヤ2のサイド部の外表面又はトレッド部の外表面の少なくとも一方を含んでいてもよい。すなわち、タイヤ故障判定システム1は、タイヤ2のサイド部に加えて/代えて、タイヤ2のトレッド部の外表面上の損傷部分70を検出するために用いられてもよい。かかる場合、撮像装置20は、タイヤ2のトレッド部を撮像するために、車両3の正面又は背面を撮像可能な位置に設置されていてもよい。そして、上述した動作例と同様に、サーバ10は、撮像装置20からタイヤ2のトレッド部を撮像したサーモ画像60を取得するとともに、タイヤ2の内腔温度を取得する。そして、サーバ10は、サーモ画像60におけるタイヤ2の損傷部分70の表面温度と、サーモ画像60が撮像されたときの内腔温度とに基づいて、損傷部分70の深さを推定する。これにより、サーバ10は、タイヤ2のサイド部に加えて/代えて、タイヤ2のトレッド部の外表面上の損傷部分70の深さを判定することができる。
【0075】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0076】
また例えば、汎用のコンピュータを、上述した実施形態に係るサーバ10として機能させる実施形態も可能である。具体的には、上述した実施形態に係るサーバ10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、汎用のコンピュータのメモリに格納し、プロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能なプログラム、又は当該プログラムを記憶する非一時的なコンピュータ読取可能な媒体としても実現可能である。非一時的なコンピュータ読取可能な媒体には、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリ等が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる、タイヤ故障判定方法及びタイヤ故障判定装置を提供することができる。
【0078】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.9_産業と技術革新の基盤を作ろう」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0079】
1:タイヤ故障判定システム、 2:タイヤ、 3:車両、 10:サーバ(タイヤ故障判定装置)、 11:通信部、 12:出力部、 13:入力部、 14:記憶部、 15:制御部、 20:撮像装置、 30:計測装置、 40:端末装置、 50:ネットワーク、 60:サーモ画像、 70:損傷部分、 R:回転軸
図1
図2
図3
図4
図5