(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172462
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090197
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】近藤 周
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB04
3D131BC55
3D131BC57
3D131LA20
3D131LA22
3D131LA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させる情報処理方法及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】タイヤ故障判定方法は、制御部と、ネットワークと通信可能な通信部と、記憶部と、を含む情報処理装置が実行する情報処理方法であって、制御部によって、赤外線カメラから、タイヤを撮像したサーモ画像を取得S1することと、取得したサーモ画像から、前記タイヤの損傷部分の位置を特定し、前記タイヤの損傷部分の表面温度を特定S2することと、前記タイヤの損傷部分の位置と表面温度とから、前記タイヤの損傷部分の深さを推定S3することと、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記情報処理装置は制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能であり、
前記制御部によって、
赤外線カメラから、タイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、
前記サーモ画像から、前記タイヤにおける損傷部分の位置を特定することと、
前記サーモ画像から、前記損傷部分の表面温度を特定することと、
前記位置と前記表面温度とから、前記損傷部分の深さを推定することと、
を含む情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記タイヤはカーカスプライを含み、
前記カーカスプライは折り返し部分を含み、
前記損傷部分の位置が前記折り返し部分のある領域にあるか否かを判定して、判定結果と前記表面温度とから、前記深さを推定することを含む、情報処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理方法において、
前記位置が前記折り返し部分のある領域にある場合と前記位置が前記折り返し部分の無い領域にある場合とのそれぞれにつき、前記表面温度と前記深さとの対応関係を前記記憶部に記憶することと、
前記対応関係から前記深さを推定することと、
を含む情報処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記タイヤの内腔温度を取得することと、
前記位置と前記表面温度と前記内腔温度とに基づいて、前記損傷部分の深さを推定することと、
を含む情報処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記サーモ画像から、前記タイヤにおける複数の損傷部分の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定することと、
前記相対関係の判定結果に基づいてユーザへアラートを通知することと、
を含む情報処理方法。
【請求項6】
制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能である情報処理装置であって、
前記制御部は、
赤外線カメラから、タイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、
前記サーモ画像から、前記タイヤにおける損傷部分の位置を特定することと、
前記サーモ画像から、前記損傷部分の表面温度を特定することと、
前記位置と前記表面温度とから、前記損傷部分の深さを推定することと、
を含む動作を実行する、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの故障を判定する技術が知られている。例えば特許文献1には、リムホイールに組み付けられたタイヤの画像データに基づいて、リムホイールの径を基準としたタイヤの外傷部分のサイズを検出するタイヤ外傷検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイヤの故障を判定する技術の有用性の更なる向上が求められている。例えば、鉱山サイトにおいて利用される鉱山車両では、突発的なタイヤの故障が生じると、鉱山車両の運搬及びタイヤ交換等の作業の発生により、生産性が低下する。また、突発的な故障を予防するために作業員により定期的なタイヤの検品を行うことは、コスト面で負担となっている。そのため、タイヤの故障判定を自動化することが求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記情報処理装置は制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能であり、
前記制御部によって、
赤外線カメラから、タイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、
前記サーモ画像から、前記タイヤにおける損傷部分の位置を特定することと、
前記サーモ画像から、前記損傷部分の表面温度を特定することと、
前記位置と前記表面温度とから、前記損傷部分の深さを推定することと、
を含む。
この構成により、損傷部分の深さの推定精度を向上させて、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【0007】
〔2〕本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、
上記〔1〕に記載の情報処理方法において、
前記タイヤはカーカスプライを含み、
前記カーカスプライは折り返し部分を含み、
前記損傷部分の位置が前記折り返し部分のある領域にあるか否かを判定して、判定結果と前記表面温度とから、前記深さを推定することを含むことが好ましい。
この構成により、損傷部分の位置が折り返し部分にあるか否かを考慮して深さを推定するので、推定精度を一層向上させることができる。
【0008】
〔3〕本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、
上記〔2〕に記載の情報処理方法において、
前記位置が前記折り返し部分のある領域にある場合と前記位置が前記折り返し部分の無い領域にある場合とのそれぞれにつき、前記表面温度と前記深さとの対応関係を前記記憶部に記憶することと、
前記対応関係から前記深さを推定することと、
を含むことが好ましい。
この構成により、損傷部分の位置が折り返し部分にあるか否かに応じて異なる推定方法を採用することができるので、推定精度を一層向上させることができる。
【0009】
〔4〕本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、
上記〔1〕乃至〔3〕の何れか一項に記載の情報処理方法において、
前記タイヤの内腔温度を取得することと、
前記位置と前記表面温度と前記内腔温度とに基づいて、前記損傷部分の深さを推定することと、
を含むことが好ましい。
この構成により、推定精度を一層向上させることができる。
【0010】
〔5〕本開示の一実施形態に係る情報処理方法は、
上記〔1〕乃至〔4〕の何れか一項に記載の情報処理方法において、
前記サーモ画像から、前記タイヤにおける複数の損傷部分の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定することと、
前記相対関係の判定結果に基づいてユーザへアラートを通知することと、
を含むことが好ましい。
この構成により、複数の損傷部分のうち特に表面温度が高い損傷部分についてはより入念に点検を行う動機をユーザに与えることができ、また、複数の損傷部分のうち表面温度が低い損傷部分については点検の簡素化又は省略をユーザに促すこともできる。もって、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【0011】
〔6〕本開示の一実施形態に係る情報処理装置は、
制御部と通信部と記憶部とを含み、前記通信部を介してネットワークと通信可能である情報処理装置であって、
前記制御部は、
赤外線カメラから、タイヤを撮像したサーモ画像を取得することと、
前記サーモ画像から、前記タイヤにおける損傷部分の位置を特定することと、
前記サーモ画像から、前記損傷部分の表面温度を特定することと、
前記位置と前記表面温度とから、前記損傷部分の深さを推定することと、
を含む動作を実行する。
この構成により、損傷部分の深さの推定精度を向上させて、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示される情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一実施形態に係る情報処理システムSが、図面を参照して説明される。図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0015】
図1を参照して、本実施形態に係る情報処理システムSの概要が説明される。
図1に示されるように、情報処理システムSは、互いに通信可能な情報処理装置10と赤外線カメラ20とを含む。
図1では、それぞれ1つの情報処理装置10及び赤外線カメラ20が示されている。しかしながら、情報処理システムSは、任意の数の情報処理装置10及び赤外線カメラ20を含んでもよい。
【0016】
情報処理装置10は、1つ以上のコンピュータで構成されている。本実施形態では、情報処理装置10は、1つのコンピュータで構成されているものとして説明する。しかしながら、情報処理装置10は、クラウドコンピューティングシステム等、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。本開示において情報処理装置10は、「タイヤ故障判定装置」と称されてもよい。
【0017】
赤外線カメラ20は、1つ以上のカメラを含むコンピュータで構成されている。赤外線カメラ20は、例えば、サーモ画像を撮像可能なサーモグラフィカメラであってよい。赤外線カメラ20が撮像する画像は、静止画であってもよく、動画であってもよい。赤外線カメラ20は、タイヤを撮像したサーモ画像を生成し、情報処理装置10に送信する。本実施形態において、タイヤを撮像したサーモ画像には、タイヤの少なくとも一部が写されている。サーモ画像には、タイヤの少なくとも一部に加え、タイヤを装着した車両の少なくとも一部が写されていてもよい。
【0018】
赤外線カメラ20は、例えば、鉱山サイトにおける車両の走行経路に設置された固定式のカメラであってもよい。これにより、赤外線カメラ20は、走行経路を走行中の車両を撮像することができ、車両の稼働率及び鉱山における生産性を低下させにくい。ただし、赤外線カメラ20は、固定式のカメラに限られず、ドローンに搭載されたカメラ、或いは、人間により携帯可能なタブレット端末等の、移動可能なカメラであってもよい。
【0019】
ネットワーク50は、情報処理装置10及び赤外線カメラ20と相互に通信可能な任意の通信網である。ネットワーク50は、例えばインターネット、移動体通信網、固定通信網、LAN(Local Area Network)、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0020】
本開示において、タイヤは特に限定されないが、鉱山サイト等において利用される運搬車両、建設車両、工事車両又は重機車両等の鉱山車両に装着されるOR(Off The Road)タイヤであってもよい。ただし、タイヤは、ORタイヤ以外のタイヤであってもよい。
【0021】
また、本開示において、車両は例えば、鉱山サイト等において利用される鉱山車両である。ただし車両は、上述した鉱山車両に限られず、例えば、運搬車両、建設車両、工事車両又は重機車両、バス、乗用車、バイク、自転車、又は飛行機等、タイヤを装着可能な任意の車両であってもよい。
【0022】
図2を参照して、情報処理装置10の構成が説明される。
図2は、情報処理装置10の構成を示すブロック図である。情報処理装置10は、通信部11と、出力部12と、入力部13と、記憶部14と、制御部15と、を備える。情報処理装置10において、通信部11、出力部12、入力部13、記憶部14、及び制御部15は、有線又は無線で互いに通信可能に接続されている。
【0023】
通信部11は、ネットワーク50に接続するための通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば4G(4th Generation)又は5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応した通信モジュールである。通信モジュールは、例えば有線LAN又は無線LAN等の規格に対応した通信モジュールであってもよい。通信モジュールは、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は赤外線通信等の近距離無線通信規格に対応した通信モジュールであってもよい。本実施形態において、情報処理装置10は、通信部11を介してネットワーク50に接続される。これによって情報処理装置10は、赤外線カメラ20又は他のコンピュータ等と通信することができる。
【0024】
出力部12は、1つ以上の出力装置を含む。出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ又はランプ等である。これにより出力部12は、画像、音又は光等を出力する。
【0025】
入力部13は、1つ以上の入力装置を含む。入力装置は、例えばタッチパネル、カメラ又はマイク等である。入力部13は、例えば、情報処理装置10の利用者による入力操作を受け付ける。
【0026】
記憶部14は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等である。記憶部14は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部14は、情報処理装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部14は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、組み込みソフトウェア、又はデータベース等を記憶する。記憶部14に記憶された情報は、例えば通信部11を介してネットワーク50から取得される情報により更新可能であってもよい。
【0027】
例えば記憶部14は、故障判定の対象となる1つ以上のタイヤのタイヤ識別情報を記憶してもよい。本開示において、タイヤ識別情報は、タイヤID(Identifier)ともいう。タイヤのタイヤ識別情報は、タイヤを一意に識別可能な情報である。タイヤのタイヤ識別情報は、例えば、情報処理装置10よって一意に生成されるが、これに限られず、タイヤの製造番号、或いは、タイヤを装着する車両の車両番号等であってもよい。さらに、記憶部14は、タイヤ識別情報と関連付けて、タイヤに関するタイヤ関連情報を記憶していてもよい。
【0028】
タイヤ関連情報は、タイヤに関する任意の情報を含む。タイヤ関連情報は、例えば、タイヤの表面からカーカスプライまでの距離情報、タイヤの損傷情報、タイヤの構成情報、タイヤを装着する車両の情報、或いは車両におけるタイヤが装着されている位置情報を含み得る。タイヤの損傷情報は、例えば、タイヤが過去に負った損傷の位置、形状、深さ、及び登録日時等を含む情報であってもよい。タイヤの構成情報は、例えば、タイヤの種類、型番、材料物性、トレッドパターン、ベルト角度、サイズ、又は重量等を含む。タイヤを装着する車両の情報は、車両の識別情報、種類、型番、排気量、装着タイヤ数、又はシャフト数等を含む。
【0029】
制御部15は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってもよい。制御部15は、プロセッサに限られず、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。制御部15は、上述した、通信部11、出力部12、入力部13、及び記憶部14等の構成要素の機能を含む、情報処理装置10の機能を実現させるために、それぞれの構成要素を制御する。
【0030】
情報処理装置10の制御部15は、任意の時点で通信部11及びネットワーク50を介して赤外線カメラ20からサーモ画像を取得する。
【0031】
図3はサーモ画像の一例を示す。サーモ画像はタイヤTRの撮像画像である。制御部15はサーモ画像に対して画像解析を行って、タイヤTRの表面の損傷部分31の位置とタイヤTRの損傷部分の表面温度とを特定する。特定方法は任意である。
【0032】
図4は、タイヤTRの断面図を示す。タイヤTRは内部にカーカスプライ41を含む。カーカスプライ41は折り返し部分45を含む。このためタイヤTRは、折り返し部分45のある領域42と折り返し部分45の無い領域43とを含む。
【0033】
表面44の損傷部分46の内腔側にはカーカスプライ41の折り返し部分45が存在する。損傷部分47の内腔側には折り返し部分45が存在しない。この場合、損傷部分46の表面温度と損傷部分47の表面温度とは異なる変化を生じる。損傷部分46の表面温度と、領域42におけるカーカスプライ41(ここでは折り返し部分45)から損傷部分46の先端48までの距離との関係が
図4のグラフAに示される。損傷部分47の表面温度と、領域43におけるカーカスプライ41から損傷部分47の先端49までの距離との関係が
図4のグラフBに示される。グラフA及びグラフBに示されるように、損傷部分46の表面温度の方が、損傷部分47の表面温度に比べて、先端からカーカスプライ41までの距離が小さくなるときの上昇幅(すなわち感度)が大きい。換言すれば、同じ距離でも、折り返し部分45のある領域においては損傷部分の表面温度が比較的高い。その理由は、損傷部分が、折り返し部分45の熱の影響を受けていると考えられるためである。
【0034】
カーカスプライ41から損傷部分の先端までの距離と、損傷部分の表面温度との対応関係は、損傷部分の位置が折り返し部分45のある領域にある場合(例えば
図4のグラフA)とない場合(例えば
図4のグラフB)とのそれぞれにつき、記憶部14に記憶される。
【0035】
タイヤTRの故障につながりやすい部分は、折り返し部分45のある領域である。そこで制御部15は、特定された損傷部分の位置と、記憶部14に記憶されたタイヤ関連情報等とから、損傷部分の位置が折り返し部分45のある領域にあるか否かを判定する。制御部15は、判定結果から、カーカスプライ41から損傷部分の先端までの距離と損傷部分の表面温度との対応関係を記憶部14において特定する。制御部15は、カーカスプライ41から損傷部分の先端までの距離と損傷部分の表面温度との対応関係に、サーモ画像から特定された表面温度を適用して、カーカスプライ41から損傷部分の先端までの距離を特定する。制御部15は、特定された距離を、タイヤTRの表面44からカーカスプライ41までの距離から減算することによって、損傷部分の深さを推定する。距離及び深さの単位は例えば[mm]又は[cm]であってよい。
【0036】
代替例として制御部15は、損傷部分が折り返し部分45のある領域にあるか否かと、損傷部分の表面温度とから、損傷部分の深さを推定してよい。推定は、任意の深さ推定アルゴリズム(例えば算出式)により実行されてよいし、損傷部分が折り返し部分45のある領域にあるか否かと損傷部分の表面温度との対応関係から実行されてよい。深さ推定アルゴリズムは、損傷部分の表面温度と、人間等により計測された損傷部分の深さと、を教師データとして、機械学習又はディープラーニング等の統計的手法により構築されてもよい。
【0037】
追加例として又は代替例として制御部15は、タイヤTRの内腔温度を取得してよい。内腔温度は、タイヤTRに設置されたタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)から、ネットワーク50を介して取得される。制御部15は、損傷部分の位置と、損傷部分の表面温度と、内腔温度とに基づいて損傷部分の深さを推定してよい。深さの推定には、任意の深さ推定アルゴリズムが用いられてよい。
【0038】
追加例として又は代替例として制御部15は、サーモ画像から、タイヤTRにおける複数の損傷部分の各々に対し取得された表面温度の相対関係を判定してよい。例えば制御部15は、第1閾値を超えて相対的に高い外れ値が含まれているか否かを判定してよい。制御部15は、相対関係の判定結果に基づいてユーザへアラートを通知してよい。例えば制御部15は、ネットワーク50を介して、ユーザによって操作されるユーザ端末にアラートを通知してよい。アラートは例えば、外れ値に対応する損傷部分の点検を促すこと、又は、外れ値に対応する損傷部分の位置を特定して提示することを含んでよい。
【0039】
追加例として又は代替例として制御部15は、通信部11及びネットワーク50を介して、他の任意の端末に、タイヤTRの表面の損傷に関する損傷情報を送信してよい。損傷情報は例えば、損傷部分の位置、数、又は深さ等を含む。損傷情報は、損傷の識別情報に関連付けて記憶部14に記憶される。損傷情報は、他の任意の端末において画像、音声、光等で出力される。これにより情報処理装置10は、情報処理システムSの利用者に損傷情報を通知して、損傷を容易に把握させることができる。もって情報処理装置10は、タイヤTRが故障する前に、タイヤTRの検査、補修、交換等を計画させることができる。特に、タイヤTRの交換が行われる際には、タイヤTRは、タイヤTRの損傷情報に応じて異なるタイヤTRに交換されてもよい。例えば、タイヤTRは、損傷部分の表面温度がタイヤTRに設定された耐久可能温度よりも高い場合には、より耐熱性の高い別の種類のタイヤTRに交換されてもよい。或いは、タイヤTRは、損傷部分の数が所定の数よりも多い場合には、より損傷部分が入りにくい他の種類のタイヤTRに交換されてもよい。このようにして、情報処理システムSの利用者は、タイヤTRの損傷情報に基づいて、鉱山サイトでの利用に適したタイヤTRを採用することができる。
【0040】
図5において、情報処理装置10による情報処理方法のフローチャートが示される。
【0041】
ステップS1にて情報処理装置10の制御部15は、赤外線カメラ20から、タイヤTRを撮像したサーモ画像を取得する。サーモ画像の取得は定期的又は不定期的に実行されてよい。ステップS2にて制御部15は、サーモ画像から、タイヤTRにおける損傷部分の位置と損傷部分の表面温度とを特定する。ステップS3にて制御部15は、特定された位置と表面温度とから、損傷部分の深さを推定する。
【0042】
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0043】
また例えば、汎用のコンピュータを、上述した実施形態に係る情報処理装置10として機能させる実施形態も可能である。具体的には、上述した実施形態に係る情報処理装置10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、汎用のコンピュータのメモリに格納し、プロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能なプログラム、又は当該プログラムを記憶する非一時的なコンピュータ読取可能な媒体としても実現可能である。非一時的なコンピュータ読取可能な媒体には、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリ等が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示によれば、タイヤの故障を判定する技術の有用性を向上させることができる。
【0045】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.9_産業と技術革新の基盤を作ろう」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0046】
S:情報処理システム