(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172472
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸着方法、二酸化炭素処理装置、及び、二酸化炭素吸着システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20241205BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241205BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090211
(22)【出願日】2023-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】523205452
【氏名又は名称】株式会社徳岡テクノ
(71)【出願人】
【識別番号】517047466
【氏名又は名称】一般社団法人三郷水素研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 修身
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健治
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC04
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA01
4D002DA02
4D002DA04
4D002DA07
4D002DA12
4D002DA31
4D002EA07
4D002GA01
4D002GB20
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA08
4D020BA30
4D020BB03
4D020BC04
4D020CB01
4D020CC09
4D020DA03
4D020DB20
(57)【要約】
【課題】 産業分野、特に廃棄物処理時の燃焼排ガスを直接活用し、二酸化炭素排出量を低減させることが可能な二酸化炭素吸着方法の提供。
【解決手段】 二酸化炭素を含む第1のガスを、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、又はアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である二酸化炭素吸着化合物と、アミン化合物と、金属部材とを含む吸着材を接触させて加熱し、前記二酸化炭素を吸着させ、前記金属部材の表面上に固形物を析出させる、二酸化炭素吸着方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む第1のガスを、
アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、又はアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である二酸化炭素吸着化合物と、アミン化合物と、金属部材とを含む吸着材を接触させて加熱し、前記二酸化炭素を吸着させ、前記金属部材の表面上に固形物を析出させる、二酸化炭素吸着方法。
【請求項2】
前記金属部材は、球体、管状体、平面体、及び、螺旋体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の二酸化炭素吸着方法。
【請求項3】
前記金属部材の表面にブラスト加工が施されている、請求項2に記載の二酸化炭素吸着方法。
【請求項4】
前記金属部材は、ステンレス鋼製である、請求項3に記載の二酸化炭素吸着方法。
【請求項5】
前記金属部材は、直径1.5~2ミリメートルの略球体である請求項4に記載の二酸化炭素吸着方法。
【請求項6】
前記吸着材は、さらに水、及び無水エタノールから選択される溶媒を含む請求項5に記載の二酸化炭素吸着方法。
【請求項7】
前記二酸化炭素吸着化合物は、前記アルカリ金属の水酸化物の飽和溶液であり、前記アルカリ金属の水酸化物は、水酸化ナトリウムである請求項6に記載の二酸化炭素吸着方法。
【請求項8】
二酸化炭素を含む第1のガスを導入して、前記ガス中の二酸化炭素を吸着させる二酸化炭素処理装置であって、
アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、又はアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である二酸化炭素吸着化合物と、アミン化合物と、金属部材とを含む吸着材を気密に収容し、その外部から前記第1のガスを流入可能に構成された反応炉とを備える、二酸化炭素処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の二酸化炭素処理装置と、前記二酸化炭素処理装置に前記第1のガスを供給する焼却炉とを備える二酸化炭素吸着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸着方法、二酸化炭素処理装置、及び、二酸化炭素吸着システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備、焼却設備、及び、製鉄設備等から排出される大量の二酸化炭素は、温室効果ガスとして、地球温暖化をもたらす要因として知られており、削減することが望まれている。
【0003】
二酸化炭素排出量削減方法としては、二酸化炭素を含む排ガスを二酸化炭素吸収装置に送給し、排ガス中の二酸化炭素を吸収すると共に、更に分離して回収する二酸化炭素回収方法が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合技術開発センター,“産業分野の排熱実態調査 報告書”,2019年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素吸収装置に送給される排ガスの温度を厳密に調整する必要があった。具体的には、所定の温度(例えば90℃以下)まで冷却する必要はあった。産業分野の排ガス熱量について、温度99℃以下にて排出される排ガス熱量の割合は、全体の14%と非常に少ない。特に廃棄物処理時の排ガスについて示された清掃分野においては、99℃以下にて排出される排ガスは0%であることが報告されている。(非特許文献1)そのため、廃棄物処理時に排出された排ガスを特許文献1に記載の二酸化炭素吸収装置に送給することは現実的に厳しいという問題があった。
また、特許文献1に記載の二酸化炭素回収方法による二酸化炭素の回収率も、十分とは言えなかった。
【0007】
そこで本発明は、産業分野、特に廃棄物処理時の燃焼排ガスを直接活用し、二酸化炭素排出量を低減させることが可能な二酸化炭素吸着方法の提供を課題とする。また、本発明は、二酸化炭素処理装置、及び、二酸化炭素吸着システムの提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決することができることを見出した。
【0009】
[1]二酸化炭素を含む第1のガスを、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、又はアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である二酸化炭素吸着化合物と、アミン化合物と、金属部材とを含む吸着材を接触させて加熱し、前記二酸化炭素を吸着させ、前記金属部材の表面上に固形物を析出させる、二酸化炭素吸着方法。
[2]前記金属部材は、球体、管状体、平面体、及び、螺旋体からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]に記載の二酸化炭素吸着方法。
[3]前記金属部材の表面にブラスト加工が施されている、[2]に記載の二酸化炭素吸着方法。
[4]前記金属部材は、ステンレス鋼製である、[3]に記載の二酸化炭素吸着方法。
[5]前記金属部材は、直径1.5~2ミリメートルの略球体である[4]に記載の二酸化炭素吸着方法。
[6]前記吸着材は、さらに水、及び無水エタノールから選択される溶媒を含む[5]に記載の二酸化炭素吸着方法。
[7]前記二酸化炭素吸着化合物は、前記アルカリ金属の水酸化物の飽和溶液であり、前記アルカリ金属の水酸化物は、水酸化ナトリウムである[6]に記載の二酸化炭素吸着方法。
[8]二酸化炭素を含む第1のガスを導入して、前記ガス中の二酸化炭素を吸着させる二酸化炭素処理装置であって、
アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、又はアンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である二酸化炭素吸着化合物と、アミン化合物と、金属部材とを含む吸着材を気密に収容し、その外部から前記第1のガスを流入可能に構成された反応炉とを備える、二酸化炭素処理装置。
[9][8]に記載の二酸化炭素処理装置と、前記二酸化炭素処理装置に前記第1のガスを供給する焼却炉とを備える二酸化炭素吸着システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、産業分野、特に廃棄物処理時の燃焼排ガスを直接活用し、二酸化炭素排出量を低減させることが可能な二酸化炭素吸着方法が提供できる。また、本発明によれば、二酸化炭素処理装置、及び、二酸化炭素吸着システムも提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の二酸化炭素吸着方法の一実施形態のフロー図である。
【
図2】本発明の二酸化炭素処理装置の一実施形態の説明図である。
【
図3】本発明の二酸化炭素処理システムの一実施形態のブロック図である。
【
図4】本発明の二酸化炭素処理システムの他の実施形態のブロック図である。
【
図5】実験に使用した二酸化炭素処理装置の説明図である。
【
図6】二酸化炭素処理装置からの排出ガスの成分分析の結果を表す図である。
【
図7】二酸化炭素処理装置からの排出ガスの成分分析の結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、以下の説明では同一の機能、及び/又は、構造を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0013】
[二酸化炭素処理方法]
図1は、本発明の二酸化炭素吸着方法の一実施形態(以下、「本方法」)に係るフロー図である。
【0014】
本方法は、二酸化炭素を含む第1のガスを、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、及び、アンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である二酸化炭素吸着化合物と、アミン化合物と、金属部材とを含む吸着材を接触させて加熱し、二酸化炭素を吸着させ、金属部材の表面上に固形物を析出させる方法である。
【0015】
本方法の具体的な一形態は、以下の各工程をこの順に含む。
・第1のガスを取得する工程
・第1のガスを第1の溶液に接触させて、混合溶液を調製する工程(調製工程)
・混合溶液と金属部材とを接触させて加熱し(吸着材とし)、二酸化炭素を吸収させて、金属部材の表面上に固形物を析出させる工程(反応工程)
・得られた固形物を回収する工程(回収工程)
【0016】
本方法によれば、二酸化炭素を含む第1のガスに含まれる二酸化炭素の濃度を簡単に減少させることができる。以下では、本方法に含まれ得る各工程について、詳述する。
【0017】
・第1のガス取得工程
まず、第1のガスが取得される(ステップS1)。第1のガスは、二酸化炭素を含むガスであり、本方法における処理対象となるガスである。第1のガスには、二酸化炭素が含まれていればよく、この含有量(濃度)は特に制限されないが、一般に、10~100mass%(室温、1気圧)が好ましい。なお、第1のガスには、二酸化炭素が含まれていればよく、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、窒素、酸素、塩化水素、及び、揮発性有機化合物等が挙げられる。
【0018】
第1のガスの取得方法としては特に限定されない。二酸化炭素を所定量含むガスは、例えば、化石燃料を利用する装置(ボイラ、及び、焼却炉等)の排出ガスが利用できる。以下、本明細書では、焼却炉からの排出ガスを特に、「燃焼排ガス」ということがある。
なお、上記装置からの排出ガスを取得する場合、そのまま使用してもよいし、後工程(ステップS2)における好ましい処理条件(温度、圧力)に合致するよう、調整して使用してもよい。
【0019】
一般に大型の焼却炉からの排出ガス(燃焼排ガス)は、後工程における好ましい処理条件(反応条件)と比較すると、温度、及び/又は、圧力が高い場合がある。この場合、授記装置からの排出ガスを、冷却、及び/又は、減圧して、第1のガスとして取得してもよい。
【0020】
排出ガスを冷却等する方法が特に限定されず、公知の方法が使用できる。例えば、排出ガスについて、熱交換器等を使用して冷却してもよい。
【0021】
・調製工程
次に、第1のガス取得工程で得られた第1のガスを第1の溶液に接触させて、混合溶液が調製される(ステップS2)。
第1の溶液は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、及び、アンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である二酸化炭素吸着化合物と、アミン化合物と、溶媒とを含む。
【0022】
アミン化合物としては、特に限定されないが、モノエタノールアミン、及び、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等の第1級アミン類;ジエタノールアミン、及び、2-メチルアミノエタノール等の第2級アミン類;トリエタノールアミン、及び、N-メチルジエタノールアミン等の第3級アミン類;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、及び、ジエチレントリアミン等のポリエチレンポリアミン類;ピペラジン類、ピペリジン類、及び、ピロリジン類等の環状アミン類;キシリレンジアミン等のポリアミン類;メチルアミノカルボン等のアミノ酸類等が挙げられる。
【0023】
本発明者らは、アミン化合物は、吸着皮膜型の水溶性防錆剤として、後述する金属部材の腐食を防ぐ効果があり、反応性を高めると推測している。
【0024】
二酸化炭素吸着化合物は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、及び、アンモニアからなる群より選択される少なくとも1種である。
アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カリウム、及び、水酸化ナトリウム等が挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
二酸化炭素吸着化合物としては、より優れた本発明の効果が得られる点で、アルカリ金属の水酸化物を含むことが好ましく、水酸化ナトリウムを含むことがより好ましい。
【0025】
第1の溶液が含む溶媒は、特に限定されないが水、及び/又は、無水エタノールであることがより好ましい。
第1の溶液を調製する方法としては特に限定されず、アミン化合物、及び、二酸化炭素吸着化合物とをそれぞれ溶媒に添加して調製してもよいし、アミン化合物を含む溶液と、二酸化炭素吸着化合物とを含む溶液とを混合してもよい。
【0026】
第1の溶液は、より優れた本発明の効果が得られる点で、アルカリ金属の水酸化物の飽和溶液であることが好ましく、水酸化ナトリウムの飽和溶液であることがより好ましい。
なお、本明細書において、水酸化ナトリウム飽和溶液とは、25℃、1気圧の条件での飽和溶媒を意味する。使用される溶媒は特に限定されないが、一形態として、水(H2O)が好ましい。
【0027】
第1の溶液に第1のガスを接触させる方法は特に限定されないが、第1のガスを水酸化ナトリウム飽和溶液に拡散させる方法が好ましい。より具体的には、水酸化ナトリウム飽和溶液に対して、第1のガスをバブリングする方法が挙げられる。
【0028】
なお、
図1のフローにおいては、予め調製された第1の溶液に対して、第1のガスを接触させて混合溶液を調製しているが、本発明の二酸化炭素吸着方法においては、本工程は必須ではない。
二酸化炭素吸着化合物、アミン化合物、及び、後述する金属部材を含む吸着材(溶媒を含んでも含まなくてもよい)に対して、直接第1のガスを接触させる場合、混合溶液の調製(本工程)は不要である。
【0029】
・反応工程
次に、調製工程で得られた混合溶液と金属部材とを接触させて(結果として吸着材を調製し)、これを加熱し、二酸化炭素を吸収させて、金属部材の表面上に固形物を析出させる(ステップS3)。
【0030】
金属部材は、二酸化炭素の吸収反応を触媒し、効率的に反応を進行させる機能を有する。
金属部材の材質は特に限定されないが、材質としては、例えば、塩基性溶液中にて腐食しないステンレス鋼、金、イリジウム、ロジウム、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、ジルコニウム、及び、ニッケル合金等が好ましい。なかでも、ステンレス鋼、クロム、ニッケル、及び、モリブデン等がより好ましい。
【0031】
ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、及び、フェライト系ステンレス鋼等が挙げられる。より具体的には、SUS303、SUS304、SUS304L、及び、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼がより好ましい。
【0032】
金属部材の形状は、特に限定されないが、球体、管状体、平面体、及び、螺旋体からなる群より選択される少なくとも1種類が好ましい。
一例としては、管状体にシロッコファン状のフィンが取り付けられている構造があげられる。上記シロッコファン状のフィンは、長方形状のステンレス鋼板が筒状となるよう、長手方向が同心円柱の内側と外側となるよう配置されている。更に、長方形の短手方向側から見ると、長方形状板が放射状になるよう配置されている。加えて、上記長方形状のステンレス鋼板は、長手方向に沿って一列になるように複数箇所円形の穴が開けられている。
【0033】
また、他の形態としては、金属部材は、直径1.5~2ミリメートルの略球体であることがより好ましい。
金属部材が略球体であると、ハンドリング性がより高く、第1の溶液との接触面積がより大きくなる点で好ましい。
【0034】
また、金属部材の表面にブラスト加工が施されていると、第1の溶液との接触面積がより大きくなり、反応が進行しやすい点で、より好ましい。
【0035】
金属部材の大きさは特に限定されず、使用される反応容器に応じて適宜調整されればよい。
【0036】
金属部材と第1の溶液との接触方法は特に限定されない。混合溶液に金属部材を浸漬してもよいし、容器として構成された金属部材に混合溶液を収容してもよい。
【0037】
なお、本工程においては、二酸化炭素吸着化合物とアミン化合物とを含む第1の溶液に対して、第1のガスを接触させ得られた混合溶液に対して、金属部材を接触させているが、本方法における反応方法は上記に限定されない。
上述のとおり、二酸化炭素吸着化合物と、アミン化合物と、金属部材とを含む吸着材を予め調製し、これに対して、第1のガスを接触させる工程としてもよい。この場合、ステップS2の調製工程は省略され得る。
【0038】
吸着材に含まれる二酸化炭素吸着化合物等は、反応の進行により消費され得る。また、金属部材には、反応の進行にしたがい、その表面上に固形物(白色結晶)が析出する。このため、連続的に反応を行う場合、吸着材を適宜交換することが好ましい。
【0039】
交換時期の判断方法は特に限定されないが、第1のガス中の二酸化炭素の吸収効率の低下に応じて判断されればよい。
例えば、二酸化炭素の吸収効率の低下の有無は、反応後の排出ガス(第2のガス)の成分を測定、及び/又は、分析することで判断されてもよい。
また、他の形態として、吸着材の使用可能上限時間を決めて、数時間ごとに交換されても良い。この場合、使用可能上限時間は、3時間以内であることが好ましい。
【0040】
吸着材の交換がより容易になる点で、吸着材は、交換カセット形式とされることが好ましい。
交換カセット形式である吸着材は、二酸化炭素吸着化合物、アミン化合物、及び、金属部材を有し、これらが一体として包装された状態とされる。包装方法は特に限定されないが、例えば、メッシュ状の容器に、上記吸着材が収容される形態が挙げられる。
【0041】
本工程における反応温度としては特に限定されないが、触媒反応をより効率的に進行させる観点で、180~400℃が好ましく、200~400℃がより好ましく、300~400℃が更に好ましい。
なお、反応温度は、第1のガスを焼却炉の排出ガスから取得する場合、焼却炉の排熱を利用して調整してもよい。
【0042】
・回収工程
次に、得られた固形物を回収する(ステップS4)。固形物は、主成分として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び、これらの混合物からなり、金属部材をコーティングするように生成されるため、容易に回収できる。
本方法によれば、簡単な手順で、第1のガス中に含まれる二酸化炭素を固定して、回収することができる(第1のガス中に含まれる二酸化炭素の濃度を低減することができる)。
【0043】
次に、本方法の実施に使用可能な二酸化炭素処理装置について説明する。
図2は、二酸化炭素処理装置の模式図である。
【0044】
第1の二酸化炭素処理装置13は、気密に構成された反応炉43と、反応炉43内に収容された吸着材32を備える。吸着材32は、交換カセット形式であり、金属部材、二酸化炭素吸着化合物、及び、アミン化合物を含む。
更に、第1の二酸化炭素処理装置13は、二酸化炭素を含む第1のガス(原料ガス)の導入配管40と、第2のガス(反応後の排出ガス)の排出配管42とを有し、図示しない弁によって、ガスの出入りが制御される。
【0045】
また、反応炉43の外周を囲むように温調器33が配置され、反応炉43内の(特に溶媒46の)温度を調節できるよう、構成されている。温調器33は、面状ヒータ、マントルヒータ等の産業用、及び/又は、工業用ヒータ等が使用できる。
【0046】
反応炉43の内部には、溶媒46が収容されている。収容される溶媒としては、すでに説明した第1の溶液が含有し得る溶媒であってよい。反応炉43の内部には溶媒46が収容されなくてもよく、その場合、第1のガスは直接、吸着材32に接触する。
【0047】
導入配管40は、その一方端が、溶媒46に挿入されており、これを介して第1の二酸化炭素処理装置13内に流入した第1のガスは、溶媒46中で吸着材32と接触する。
一方、反応後のガス(第2のガス)を第1の二酸化炭素処理装置13外に排出するための排出配管42は、その一方端が、反応炉43の気相部分に設けられており、図示しない弁を適宜操作することで、反応後の(二酸化炭素の濃度の減少した)第2のガスを反応炉43外に排出する。
なお、第2のガスには、水素が含まれる場合があり、これを収集して焼却炉等で燃料として二次活用することもできる。
【0048】
次に、二酸化炭素処理装置を含む二酸化炭素吸着システムについて説明する。
図3は、第1の二酸化炭素処理装置13を組み込んだ、二酸化炭素処理システムの第1実施形態のブロック図である。
【0049】
二酸化炭素処理システム100は、焼却炉12、減圧・冷却装置37、第1の溶液調製槽19、第1のガス収集槽21、第1の二酸化炭素処理装置13、結晶化槽23、固液分離装置24、固形物回収槽25、廃液貯留槽26、中和槽27、第2の二酸化炭素処理装置22、第2のガス収集槽、残さ溶解槽29、及び、残さ中和槽30を備える。
【0050】
焼却炉12は、例えば、廃棄物、及び、バイオマス等の有機物が投入され、焼却される装置である。焼却炉12としては、例えば、ストーカ式焼却炉、ロータリーキルン型焼却炉、及び、これらを併用した焼却炉等が挙げられる。
焼却物の種類、及び、その焼却の方法は特に限定されず、公知の方法により行えばよい。焼却される廃棄物の種類、及び、量等によって、焼却温度と焼却時間は適宜調整され得る。
焼却物はコンベア、又は、クレーン等によって焼却炉12に供給され、焼却される。
焼却炉12から排出される燃焼排ガスには、二酸化炭素が含まれており、これを第1のガス(の原料)として利用できる。
【0051】
燃焼排ガスには、通常、二酸化炭素以外の成分も含まれており、これらの成分を分析してもよい。また、燃焼排ガスを直接分析せず、焼却物の成分分析を行い、これを予測してもよい。これらの分析結果は、二酸化炭素処理システム100の運転方法の決定等に使用できる。
【0052】
焼却炉12で発生した燃焼排ガスは、減圧・冷却装置37へと送られる。減圧・冷却装置37は、焼却炉12にて発生した燃焼排ガスを捕集し、冷却、及び、減圧して、第1のガスを調製するために設置される装置である。典型的には、廃熱ボイラー等が使用できる。更に、エコノマイザや空気予熱器等の節炭器を備えていても良い。
減圧・冷却装置37にて減圧されて、調製された第1のガスは、減圧・冷却装置37と気密に接続された第1のガス収集槽21に送られる。
【0053】
第1のガス収集槽21は、減圧・冷却装置37によって調整された第1のガスを収集・貯蔵する。具体的には、ガスタンクである。
第1のガス収集槽21は、ポンプを介して、第1の二酸化炭素処理装置13へと気密に接続されている。
また、第1の溶液調製槽19は、第1の溶液を生成するための反応槽である。第1の溶液の成分についてはすでに説明したとおりである。
第1のガス収集槽21、及び、第1の溶液調製槽19は、第1の二酸化炭素処理装置13と気密に接続され、それぞれ、第1のガス、及び、第1の溶液を第1の二酸化炭素処理装置13に導入する。
【0054】
第1の二酸化炭素処理装置13は、実施例1において説明したのと同様の装置であり、反応炉43と、反応炉43内に収容された吸着材32を備える。なお、実施例1においては、反応炉43内には、溶媒が収容されていたが、本実施例では、この溶媒に代えて第1の溶液が収容される。吸着材32は、反応炉43内で、第1の溶液に浸漬される。
【0055】
第1の二酸化炭素処理装置13では、第1のガス収集槽21から送られた第1のガスと第1の溶液、及び、これに浸漬された吸着材が反応し、二酸化炭素が吸着される。
なお、第1の二酸化炭素処理装置13では、反応炉43内に、溶媒を含む第1の溶液(及びこれに接触する吸着材32)が収容される。このため、第1のガスに含まれる二酸化炭素以外の成分(特に有毒ガス等)が、この溶媒によって除去される。すなわち、第1の溶液(又は混合溶液)を含む二酸化炭素処理装置は、いわゆる除害装置、及び、スクラバー等としての機能を併せ持つ。
【0056】
なお、第1の二酸化炭素処理装置13において除去される成分としては特に限定されないが、例えば、塩化水素(HCl)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、及び、ダイオキシン類等が挙げられる。
なお、第1の二酸化炭素処理装置13は、上記に加えて、更に、排出ガスから有毒物質等を除去するためのろ過式集じん器、乾式法スクラバー、湿式法スクラバー、NOx除去装置、及び、ダイオキシン類除去装置等をその下流に備えていてもよい。
【0057】
第1の二酸化炭素処理装置13にける反応後の溶液(廃液)は結晶化槽23へ送られる。結晶化槽23では、廃液は常温で所定時間静置され、上澄み層、及び、固形物(スラリー状であってよい)に分離される。分離された固形物は、固形物回収槽25に貯留される。
上澄み層は、ポンプを介して、更に固液分離装置24(遠心分離機、及び、フィルタープレス等)に送られる。固液分離装置24で分離された液状物は廃液貯留槽26へ、固形物は固形物回収槽25へ、それぞれ収集される。
【0058】
固形物回収槽25に回収された固形物は、その成分として炭酸ナトリウム水和物、炭酸水素ナトリウム、及び、その混合物を含む。
【0059】
廃液貯留槽26は、固液分離装置24からポンプを介して送られてきた液状物を貯蔵する。液状物は、廃液貯留槽26から、中和槽27へと送られる。
【0060】
中和槽27は、液状物と、塩化水素とを反応させるタンクである。発明者らは、中和槽27内では、Na2CO3+2HCl→2NaCl+CO2+H2Oの反応が促進されると考えており、中和槽27にて発生した排出ガス(二酸化炭素を含む)は第2の二酸化炭素処理装置22へと送られる。中和槽27内の反応によって生成された廃液は固液分離装置24へと送られて、固形物は固形物回収槽25へ分離され、液状物(図示せず)は排水される。
【0061】
第2の二酸化炭素処理装置22は、溶媒を含まないこと以外は、上述の第1の二酸化炭素処理装置13と同様である。
第2の二酸化炭素処理装置22には、中和槽27の排出ガス(二酸化炭素を含む)、及び、後述する残さ中和槽30の排出ガス(二酸化炭素を含む)が第1のガスとして導入される。
第2の二酸化炭素処理装置22では、第1のガス中の二酸化炭素の含有量が低減され、第2のガスが排出される。
【0062】
第2の二酸化炭素処理装置22内で発生した第2のガスは、第2のガス収集槽20へと送られる。このとき、圧縮機等により、第2のガスを圧縮してもよい。
【0063】
残さ溶解槽29では、交換カセット内にて吸着可能な量の二酸化炭素を吸着した吸着材32を洗浄し、残さと廃液とに分離する。残さの主成分は金属部材であるため、再利用できる。また、廃液は残さ中和槽30へと送られる。
【0064】
残さ中和槽30では、残さ溶解槽29にて生成された廃液と塩化水素を反応させる。残さ中和槽30内では、Na2CO3+2HCl→2NaCl+CO2+H2Oの反応が促進される推測され、残さ中和槽30にて発生した排出ガス(二酸化炭素を含む)は第2の二酸化炭素処理装置22へと送られて、第1のガスとされる。
【0065】
本実施例の二酸化炭素吸着システムは、二酸化炭素吸着装置を2台含み、更に、前段には、第1の溶液を用いる形態(ガス洗浄装置を兼ねる形態)で使用されるため、二酸化炭素の吸着と、有毒ガス等の除去とを併せて実施できる。また金属部材等をシステム内で適宜再生して利用できるため、ランニングコストも安いという利点がある。
【0066】
図4は、本発明の二酸化炭素処理装置を備える二酸化炭素処理システムの他の実施例のブロック図である。二酸化炭素処理システム200は、二酸化炭素処理装置を加熱する際に焼却炉の排熱を利用する点に特徴がある。
【0067】
二酸化炭素処理システム200は、焼却炉12、ボイラー16、混合液槽17、バイナリー発電装置18、第1の溶液調製槽19、及び、第2のガス収集槽20を有している。
【0068】
二酸化炭素処理システム200において、第3の二酸化炭素処理装置56は焼却炉52と一体として併設される。
焼却炉52から放出される燃焼排ガスは、まずボイラー16に送られる。そして、燃焼排ガスは、ボイラー16にて減圧され、第1のガスとして収集される。収集された第1のガスは、混合液槽17に送られる。ボイラー16には、バイナリー発電装置18が併設され、第1のガスを減圧する際に生ずるエネルギーも利用される。
【0069】
第1の溶液調製槽19にて生成された第1の溶液は、混合液槽17に送られ、第1の溶液の調製時に発生した融解熱は、バイナリー発電装置18に送られる。
バイナリー発電装置18は、ボイラー16、及び/又は、第1の溶液調製槽19にて発生したエネルギーを電力に変換する装置である。バイナリー発電装置18にて出力された電力は、第1の溶液調製槽19中での第1の溶液の調製の際、及び、二酸化炭素処理システムの稼働の際に必要な電力を補うことが出来る。
【0070】
混合液槽17では、ボイラー16から排出される第1のガスと、第1の溶液調製槽19にて調製される第1の溶液とが接触され、混合溶液が調製される。
調製された混合溶液は、第3の二酸化炭素処理装置56に送られ、内部に収容された吸着材と接触して、二酸化炭素が吸着される。
第3の二酸化炭素処理装置56は、焼却炉の燃焼室の熱を利用できるよう構成されること、及び、温調器を備えないことを除いては、上述の二酸化炭素処理装置と同様である。
【0071】
第3の二酸化炭素処理装置56において発生した排出ガスである第2のガスは、第2のガス収集槽20に捕集され、焼却炉52の助燃ガスとして用いられる。二酸化炭素処理システム200は、焼却炉52の排熱を利用できるよう構成されるため、エネルギー効率により優れる。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
水酸化ナトリウム(NaOH)顆粒状試薬(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation,Osaka,Japan)500g、水酸化ナトリウム試薬(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation,Osaka,Japan)500g、無水エタノール(C2H5OH)500mL、精製水500mL、及び、アミン化合物を混和し、水酸化ナトリウム飽和溶液を作成した。
【0074】
水酸化ナトリウム飽和溶液を精製水にて希釈し、14質量%水酸化ナトリウム飽和溶液とした。
作成した14質量%水酸化ナトリウム飽和溶液を、二酸化炭素処理装置の反応炉内に収容した。
【0075】
図5は、実験に使用した二酸化炭素処理装置の説明図である。二酸化炭素処理装置は、反応炉102と、これを囲むように配置された温調器109とを備える。反応炉102には、CO
2ガスボンベ103とN
2ガスボンベ107とが接続され、反応炉102内にCO
2とN
2とをそれぞれ独立に導入できるよう構成されている。
さらに、反応炉からの排出ガスは、燃焼排ガス分析計111(ホダカ株式会社製、HT-1300Z)にて成分分析が行えるよう構成した。
また、反応炉102の温度は、温度センサ112にてモニターした。
図5中、符号101は、14質量%水酸化ナトリウム飽和溶液を表す。また、符号106は、オーステナイト系ステンレス鋼を含むビーズ状金属(直径1.7mm)を表す。
【0076】
その後、CO2ガスボンベ103を接続した配管のバルブを開き、反応炉102内の14質量%水酸化ナトリウム飽和溶液101内でバブリングさせた(混合溶液)。
更に、N2ガスボンベ107を接続した配管のバルブを開き、反応炉102内に窒素ガスを流入させた。その後、温調器109にて、反応炉102内を加熱し、センサによって検出される反応炉102内の温度が380℃となったら、その状態で30分間保持した。
【0077】
その後、反応炉102内のガスを排出させ、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)により成分分析を行った。
図6(A)は、測定結果を表す表(m/zを「質量」と表記している)であり、
図6(B)は、マススペクトルを表し、
図6(C)はマスクロマトグラムを表す。この結果から、排出ガス中にはCO
2がほとんど含まれていないことがわかった。
【0078】
(実施例2)
水酸化ナトリウム飽和溶液にCO
2を注入し、混合溶液を作製し、その混合溶液に、水酸化ナトリウム、アミン化合物、及び、オーステナイト系ステンレス鋼を含むビーズ状金属球を加えたこと以外は、実施例1と同様にして二酸化炭素を吸着させた。
3時間反応を続け(CO
2を一定量流入させ続け)、排出ガス(第2のガスに相当する)の組成をガスクロマトグラフ質量分析計にて測定した。
図7(A)は、測定結果を表す表(m/zを「質量」と表記している)であり、
図7(B)は、マススペクトルを表し、
図7(C)はマスクロマトグラムを表す。
図7から、3時間反応を継続させても、CO
2は検出限界値以下であった。
図7の結果から、その際に、水素(m/z=2)も98.73%と高い割合で検出されることも示された。