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特開2024-172474蓄電デバイスおよび蓄電デバイス用外装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172474
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】蓄電デバイスおよび蓄電デバイス用外装材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/141 20210101AFI20241205BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M50/141
H01M50/105
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/131
H01M50/129
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090217
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 大介
(72)【発明者】
【氏名】熊木 輝利
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA10
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011KK00
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性に優れ、シール強度も十分確保できる蓄電デバイス用外装材を提供する。
【解決手段】本発明の蓄電デバイス用外装材1は、樹脂製の基材層11と、基材層11の内面側に積層された金属箔層12と、金属箔層12の内面側に、接着層22を介して積層されたシーラント層13とを備える。シーラント層13は、水蒸気および/または酸素に対するガスバリア性を有し、かつ耐熱シール性を有するとともに、ポリプロピレン系フィルムを除く熱融着性樹脂フィルムによって構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材層と、
前記基材層の内面側に積層された金属箔層と、
前記金属箔層の内面側に、接着層を介して積層されたシーラント層とを備え、
前記シーラント層は、水蒸気および/または酸素に対するガスバリア性を有し、かつ耐熱シール性を有するとともに、ポリプロピレン系フィルムを除く熱融着性樹脂フィルムによって構成されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記シーラント層は、40℃、90%RHの水蒸気透過度が5g/m・24hr/15μm以下である請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記シーラント層は、20℃、90%RHの酸素透過度が5cm/m・24hr・atm/15μm以下である請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記シーラント層は、80℃におけるシール強度が30N/15mm以上である請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記シーラント層を構成する樹脂は、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、高密度ポリエチレン樹脂の中から選択される少なくとも1種以上の樹脂によって構成されている請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
前記シーラント層は、前記基材層を構成する樹脂に対し熱融着可能な樹脂によって構成されている請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材と、
前記蓄電デバイス用外装材によって外装される蓄電デバイス本体とを備えた蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載用電池等のハイパワーバッテリー、モバイル電子機器等のポータブル機器用電池、回生エネルギーの蓄電用電池等として用いられる全固体電池等の蓄電デバイスおよび蓄電デバイス用外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食品や医薬品、電子部材等の包装分野では、内容物の長期保存や品質維持の観点、またディスプレイ分野では、水蒸気および酸素に感受性のある表示素子の劣化を抑えるために、水蒸気および酸素の透過を防ぐガスバリア性を有する外装材が用いられている。
【0003】
一方、今後有望な電子部材のひとつとして全固体電池の開発が進められている。全固体電池は、固体電解質を使用した電池であるため、液漏れやデンドライトが発生せずセパレータが破壊されることもない。従ってセパレータの破壊による発火等も懸念されることがなく、安全性の面等から大いに注目されている。この全固体電池用の外装材は、基本構造として金属箔層と、金属箔層の外側に接着層を介して積層された基材層と、金属箔層の内側に接着層を介して積層されたシーラント層(熱融着層)とを含み、例えばシーラント層側を対向させた一対の外装材によって全固体電池本体を上下から挟み込んで、シーラント層の外周縁部同士を熱融着することによって全固体電池本体を封入するようにしている。
【0004】
しかしながら、全固体電池本体として、硫化物系全固体電池を封入した場合、外部から侵入した水分と硫化物系全固体電池とが反応して硫化水素ガスが発生するという問題が生じる。
【0005】
そこで下記特許文献1~5に示すように、ガスバリア性を有する全固体電池外装材が提案されている。特許文献1に示す全固体電池用外装材は、透明なガスバリア性フィルムにフッ素系接着性樹脂層を介してシーラント層が積層されて構成されている。さらに特許文献2に示す全固体電池用外装材は、硫化水素ガス透過度が高いシーラント層を用いて、電池内部で発生した硫化水素ガスを積極的に外部に排出して内圧上昇を抑制するものである。また特許文献3に示す全固体電池用外装材は、硫化水素ガス透過度が低いシーラント層を用いて硫化水素ガスの漏洩を抑制するものである。また、特許文献4に示す全固体電池用外装材は、シーラント層に吸湿剤、ガス吸収剤を含ませるものである。さらに特許文献5に示す全固体電池用外装材は、シーラント層の内面にガスバリア性蒸着膜層が積層されており、外部からの酸素や水分の侵入に対する対策がされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-230454号
【特許文献2】特許第6777276号
【特許文献3】特許第6747636号
【特許文献4】特開2020-187855号
【特許文献5】特開2020-187835号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1~4に示す全固体電池用外装材においては、シーラント層が無延伸ポリプロピン(CPP)等のオレフィン系フィルムによって構成されているため特に、融着されたシーラント層間の外周端面から、シーラント層間の融着部に沿って水蒸気や酸素の侵入に対するガスバリア性が不十分であるという問題が発生する。
【0008】
また特許文献5に示す全固体電池用外装材においては、シーラント表面にガスバリア性蒸着膜を設けているため、外周端面からの水蒸気等に対するガスバリア性は良好であるが、高温でのシール強度が不十分という問題を抱えている。
【0009】
以上は、全固体電池における課題について説明したが、他の蓄電デバイスにおいても同様な課題が生じる可能性はある。
【0010】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、水蒸気や酸素に対するガスバリア性に優れるとともに、シーラント層間のシール強度を十分に確保ができる蓄電デバイスおよび蓄電デバイス用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0012】
[1]樹脂製の基材層と、
前記基材層の内面側に積層された金属箔層と、
前記金属箔層の内面側に、接着層を介して積層されたシーラント層とを備え、
前記シーラント層は、水蒸気および/または酸素に対するガスバリア性を有し、かつ耐熱シール性を有するとともに、ポリプロピレン系フィルムを除く熱融着性樹脂フィルムによって構成されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0013】
[2]前記シーラント層は、40℃、90%RHの水蒸気透過度が5g/m・24hr/15μm以下である前項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[3]前記シーラント層は、20℃、90%RHの酸素透過度が5cm/m・24hr・atm/15μm以下である前項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0015】
[4]前記シーラント層は、80℃におけるシール強度が30N/15mm以上である前項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0016】
[5]前記シーラント層を構成する樹脂は、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、高密度ポリエチレン樹脂の中から選択される少なくとも1種以上の樹脂によって構成されている前項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0017】
[6]前記シーラント層は、前記基材層を構成する樹脂に対し熱融着可能な樹脂によって構成されている前項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0018】
[7]前項1~6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材と、
前記蓄電デバイス用外装材によって外装される蓄電デバイス本体とを備えた蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0019】
発明[1]の蓄電デバイス用外装材によれば、シーラント層が、水蒸気や酸素に対するガスバリア性を有し、さらに耐熱シール性を有するものであるため、水蒸気や酸素の侵入による不具合を防止できるとともに、シーラント層同士のシール強度を十分に確保することができる。特にシーラント層は、ポリプロピレン系フィルムを除く熱融着性樹脂フィルムによって構成されているため、融着されたシーラント層の外周端面から、融着部に沿って侵入する水蒸気や酸素に対するガスバリア性も確実に得ることができる。
【0020】
発明[2]の蓄電デバイス用外装材によれば、水蒸気に対するガスバリア性をより確実に得ることができる。
【0021】
発明[3]の蓄電デバイス用外装材によれば、酸素に対するガスバリア性をより確実に得ることができる。
【0022】
発明[4]の蓄電デバイス用外装材によれば、シーラント層同士のシール強度をより確実に確保することができる。
【0023】
発明[5]の蓄電デバイス用外装材によれば、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0024】
発明[6]の蓄電デバイス用外装材によれば、様々な形態の蓄電デバイス用ケースを作製することができる。
【0025】
発明[7]の蓄電デバイスによれば、上記と同様に、ガスバリア性に優れる上さらに、シール強度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1はこの発明の実施形態である蓄電デバイス用外装材としての全固体電池用外装材を示す模式断面図である。
図2図2は実施形態の外装材を用いて作製された全固体電池を示す模式断面図である。
図3図3は実施形態の外装材を用いて作製された全固体電池用ケースを示す図であって、同図(a)は第1例のケースを示す模式断面図、同図(b)は第2例のケースを示す模式断面図、同図(c)は第3例のケースを示す模式断面図である。
図4図4は実施形態における第4例の全固体電池用ケースを示す図であって、同図(a)は模式斜視図、同図(b)は同図(a)のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1はこの発明の実施形態である蓄電デバイス用外装材としての全固体電池用外装材1を示す模式断面図である。同図に示すように、本実施形態の外装材1は、積層体(ラミネート材)によって構成されており、最外側に配置される基材層11と、基材層11の内面側に、第1接着層21を介して積層接着される金属箔層12と、金属箔層12の内面側に、第2接着層22を介して積層接着されるシーラント層(熱融着樹脂層)13とを備えている。なお、本発明において、外装材1を構成する各層の位置を方向で説明する場合に、基材層11の方向(図1の上側)を外側、シーラント層13の方向(図1の下側)を内側と称する。
【0028】
基材層11は、厚さが3μm~50μmに設定され、耐熱性樹脂のコーティングや耐熱性樹脂のフィルムによって構成されている。
【0029】
基材層11を構成する樹脂としては、延伸ポリアミド、延伸ポリエステル(PET、PBT、PEN等)、延伸ポリオレフィン(PE、PP等)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を好適に用いることができる。
【0030】
金属箔層12は、厚さが9μm~40μmに設定されており、表面(外面)側から酸素や水分の浸入をブロックする機能(バリア性)を有している。この金属箔層12を構成する金属としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)や、これらの合金を好適に用いることができる。
【0031】
シーラント層13は、厚さが12μm~50μmに設定された樹脂のフィルムによって構成されている。
【0032】
本実施形態において、シーラント層13を構成する樹脂としては、水蒸気および酸素の少なくともいずれか一方のガスに対し、好ましくは双方のガスに対しガスバリア性を有するものが用いられる。換言するとシーラント層13として、水蒸気透過度、酸素透過度に優れたものが用いられる。具体的にはシーラント層13として、水蒸気透過度が5g/m・24hr/15μm(40℃、90%RH)以下のものを用いるのが好ましく、酸素透過度が5cm/m・24hr・atm/15μm(20℃、90%RH)以下のものを用いるのが好ましい。
【0033】
さらにシーラント層13としては、耐熱シール性を有するものが用いられる。具体的にはシーラント層13として、常態でのシール強度が40N/15mm以上のもの、好ましくは80℃におけるシール強度が30N/15mm以上のものを用いるのが良い。
【0034】
また本実施形態においては、シーラント層13を構成する樹脂フィルムは、ポリプロピレン系フィルムを除く熱融着性樹脂フィルムによって構成されている。
【0035】
具体的には、シーラント層13用の樹脂フィルムとしては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合(EVOH)フィルム、HDPEフィルムを好適に用いることができる。
【0036】
PVDCフィルムとしては、塩化ビニル(PVC)またはアクリロニトリル等との共重合体を好適に使用することができる。この共重合体は、共重合比によって融点が変化するが、融点が140℃~180℃の範囲のものを好適に使用することができる。
【0037】
EVOHフィルムは、エチレン含有率(25mol%~50mol%)によって、融点が変化するが、融点が155℃~190℃の範囲のものを好適に使用することができる。
【0038】
HDPEフィルムは、密度(0.94~0.965)によって、融点が変化するが、融点が120℃~140℃の範囲のものを好適に使用することができる。
【0039】
本実施形態においては特に、二酸化炭素および窒素のいずれのガスに対してもガスバリア性を示すPVDCフィルムを用いるのが好ましい。
【0040】
また本実施形態においては、シーラント層13として絶縁性を有するものを用いるのが好ましい。具体的には体積抵抗率が1×1014Ωcm以上の樹脂フィルムを用いるのが好ましい。
【0041】
また本実施形態において、シーラント層13を構成する樹脂が、基材層11を構成する樹脂に対し熱融着可能な樹脂によって構成しても良い。例えばシーラント層13用の樹脂と、基材層11用の樹脂とは、同種の樹脂や同一の樹脂によって構成しても良い。この場合には後述するように外装材1によって製作される全固体電池用ケースの形態を多様化することができる。
【0042】
基材層11および金属箔層12間を接着する第1接着層21、金属箔層12およびシーラント層13間を接着する第2接着層21としては、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、変性ポリプロピレン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などの二液硬化型ドライラミネート用接着剤を好適に用いることができる。この第1および第2接着層21,22の厚さは、1μm~6μmに設定するのが良い。
【0043】
以上の構成の全固体電池用外装材1を用いて全固体電池(全固体電池用ケース)を製作する。例えば図2に示すように、一対(2枚)の外装材1を互いのシーラント層13側を対向させるように配置して、その一対の外装材1によって全固体電池本体3を上下から挟み込んで、シーラント層13の外周縁部同士を熱融着(熱接着)することによって、全固体電池本体3を外装材1によって外装して封入し、全固体電池を製作するものである。図2の全固体電池においては、熱融着された2枚の外装材1によって全固体電池用ケース10が構成されるものである。
【0044】
なお本実施形態においては、外装材1に対し型成形等の成形加工を施して成形シートを成形し、その成形シートを用いて全固体電池用ケース10を製作するようにしても良い。
【0045】
また本実施形態においては、1枚の外装材1によって全固体電池用ケース製作することも可能である。例えば図3(a)に示すように、外装材1を円筒状に丸めて、対向する端縁同士を外側に折り曲げて、シーラント層13同士を対向させ、その対向するシーラント層13同士を熱融着することによって、円筒状の全固体電池用ケース10を製作するようにしても良い。
【0046】
さらに図3(b)に示すように、1枚の外装材1を円筒状に丸めて、一方側の端縁を外側に折り返すとともに、他方側の端縁を一方側の端縁の折返し部に重ね合わせて、一方側端縁および他方側端縁の互いのシーラント層13同士を対向させて、その対向するシーラント層13同士を熱融着することによって、円筒状の全固体電池用ケース10を製作するようにしても良い。
【0047】
また本実施形態において、既述したようにシーラント層13用の樹脂と、基材層11用の樹脂とが熱融着可能に構成する場合には、図3(c)に示すように1枚の外装材1を円筒状に丸めて、一方側の端縁の基材層11上に、他方側の端縁のシーラント層13を重ね合わせて、その重ね合わされた端縁の基材層1およびシーラント層13同士を熱融着することによって、円筒状の全固体電池用ケース10を製作するようにしても良い。
【0048】
さらに図4(a)(b)に示すように、長いサイズのテープ状(帯状)の外装材1を用いて全固体電池用ケース10を製作することも可能である。すなわちテープ状の外装材1を一方向(上方)に向けて螺旋状に巻回していき、1周毎に上下に隣り合う外装材1において、下側の外装材1における上側縁の基材層11上に、上側の外装材1における下側縁のシーラント層13を重ね合わせて、その重ね合わされた縁部の基材層1およびシーラント層13同士を熱融着することによって、角筒状の全固体電池用ケース10を製作するようにしても良い。なお筒軸方向の両端の開口部は、必要に応じて他の外装材1を熱融着して閉塞するようにすれば良い(図3の全固体電池用ケース10においても同じである)。
【0049】
なお上記の例では、1枚または2枚の外装材1を用いて全固体電池用ケース10を作製する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、3枚以上の外装材を用いて全固体電池用ケースを作製するようにしても良い。
【0050】
以上説明したように本実施形態の全固体電池においては、外装材1のシーラント層13が、水蒸気や酸素に対するガスバリア性を有し、かつ耐熱シール性を有するものであるため、水蒸気や酸素の侵入を防止できるとともに、シーラント層13同士のシール強度を十分に確保することができる。特に本実施形態においてシーラント層13は、ポリプロピレン系フィルムを除く熱融着性樹脂フィルムによって構成されているため、融着されたシーラント層13の外周端面から、融着部に沿って侵入する水蒸気や酸素に対するガスバリア性も確実に得ることができる。このように水蒸気や酸素の侵入を防止できるため、外部から侵入した水分と、硫化物系全固体電池等の全固体電池本体3とが反応して、有害な硫化水素ガスが発生するのを防止することができる。
【実施例0051】
【表1】
【0052】
<実施例1>
外装材を作製するに際し、金属箔層として、厚さ35μmのJIS H4160で規定されたA8021-Oよりなるアルミニウム箔の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水およびアルコールからなる化成処理液を塗布し、180℃で乾燥を行って、クロム付着量が片面当り10mg/mとなるように化成処理を施した金属箔層部材を準備した。
【0053】
表1に示すように上記金属箔層部材の一方の面(外面)に、外側接着剤層として2μmの厚みで塗布した2液硬化型のポリエステル―ポリウレタン接着剤を介して、基材層としての厚さ12μmの2軸延伸PETフィルム(基材層用フィルム)を貼り合わせた。上記基材層付きの金属箔層の他方の面(内面)に、内側接着剤層としての2μmの厚みで塗布した2液硬化型のポリエステル―ポリウレタン接着剤を介して、シーラント層(熱融着層)としての厚さ15μmのポリ塩化ビニリデンフィルム(シーラント層用フィルム:融点180℃)を貼り合わせて、外装材用の積層体を作製した。
【0054】
上記外装材用の積層体に対し40℃で10日間ヒートエージング処理を行って実施例1の外装材(積層体)を作製した。
【0055】
<実施例2>
シーラント層として、厚さ25μmの塩化ビニリデンフィルム(融点180℃)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2の外装材を作製した。
【0056】
<実施例3>
シーラント層として、厚さ15μmのエチレンービニルアルコール共重合フィルム(融点161.5℃)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、実施例3の外装材を作製した。
【0057】
<実施例4>
基材層として、厚さ15μmの塩化ビニリデンフィルム(融点180℃)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、実施例4の外装材を作製した。
【0058】
<実施例5>
シーラント層として、厚さ30μmのエチレンービニルアルコール共重合フィルム(融点161.5℃)を用い、基材層として、厚さ15μmのエチレンービニルアルコール共重合フィルム(融点161.5℃)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、実施例5の外装材を作製した。
【0059】
<実施例6>
シーラント層として、厚さ30μmの高密度ポリエチレンフィルム(融点140℃)を用い、基材層として、厚さ20μmの高密度ポリエチレンフィルム(融点140℃)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、実施例6の外装材を作製した。
【0060】
<比較例1>
シーラント層として、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムの片面(内面)に、シリコンモノオキサイドをエレクトロンビーム加熱することによりシリカ(酸化シリコン:SiO)の蒸着膜(厚さ0.1μm)を積層し、ガスバリア層(蒸着膜)が積層されたシーラント層(CPP/SiOバリア膜)を準備し、この無延伸ポリプロピレンフィルムの他方(外面)と金属箔層を2液硬化型のポリエステル―ポリウレタン接着剤を介して接着した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の外装材を作製した。
【0061】
<比較例2>
シーラント層として、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の外装材を作製した。
【0062】
<外装材サンプルの準備>
実施例1の外装材を用いて、一対(2枚)の外装材サンプル(100mm×100mm)を重ね合わせて周囲4辺のうち、3辺をヒートシールによって封止して、1辺を開放したままの3方袋を2つ準備した。
【0063】
ヒートシールは、テスター産業株式会社製のヒートシール装置(TP-701-A)とシール幅5mmのAL製シールバーを用いて、ヒートシール温度:200℃、シール圧:0.2MPa(ゲージ表示圧)、シール時間:2秒の条件にて両面加熱によりヒートシールを行い、3辺をヒートシールした。
【0064】
続いてドライ窒素で置換したグローブボックス内の環境下において、2枚の3方袋のうち、一方の3方袋内に酸素検知剤を収容して、開放された1辺(1方の口)を減圧下で同一ヒートシール条件によって封止して、実施例1の酸素評価用サンプルをそれぞれ準備した。
【0065】
酸素検知剤は、酸素濃度が少ない場合にピンクに多く変色し、酸素濃度が多い場合にブルーに多く変色するタイプのものである。
【0066】
また他方の3方袋内に塩化コバルト紙(水分検知剤)を収容して同様に1方の口を封止して、実施例1の水分評価用サンプルを準備した。
【0067】
塩化コバルト紙(水分検知剤)は、水や湿気等の水分に触れて感知した場合にブルーからピンクに変色するものである。
【0068】
実施例2~6および比較例1,2においても上記と同様に、酸素評価用サンプルおよび水分評価用サンプルをそれぞれ準備した。
【0069】
<水分侵入に対する評価>
【0070】
【表2】
【0071】
上記水分評価用サンプルを、40℃、90RH(相対湿度)の環境下で60日間静置した。その後、水分評価剤の変色具合を目視で観察して、サンプル内に水分(湿気)が侵入したか否かの評価を行った。その結果を表2に示す。表2において、塩化コバルト紙(水分検知剤)の色がブルーの場合、水分(水蒸気)に対するガスバリア性が「○(合格)」であり、ピンクの場合、「×(不合格)」である。
【0072】
<酸素侵入に対する評価>
上記酸素評価用サンプルを、30日間常温で静置した。その後、酸素検知剤を取り出し、酸素検知剤の変色具合を目視で観察して、サンプル内に酸素が侵入したか否かの評価を行った。その結果を表2に示す。表2において、酸素検知剤の色がピンクの場合、酸素に対するガスバリア性が「○(合格)」であり、ブルーの場合、「×(不合格)」である。
【0073】
<シール強度の評価>
実施例1の外装材から、幅15mm×長さ150mmの一対(2枚)の外装材サンプルを切り出し、これら一対の外装材サンプルを互いの内面同士(シーラント層同士)を接触するように重ね合わせた状態で、テスター産業株式会社製のヒートシール装置(TP-701-A)を用いて、ヒートシール温度:200℃、シール圧:0.2MPa(ゲージ表示圧)、シール時間:2秒の条件にて両面加熱によりヒートシールを行って、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。
【0074】
実施例2~6および比較例1,2においても上記と同様に、ヒートシール強度測定用サンプルをそれぞれ作製した。
【0075】
次に、上記のヒートシール強度測定用サンプルに対し、JIS Z0238-1998に準拠して、島津アクセス社製ストログラフ(AGS-5kNX)を使用して、ヒートシール強度測定用サンプルにおいて一対の外装材サンプルのシール部であるシーラント層部において、引張強度100mm/分で180度剥離させた時の剥離強度を測定し、これをシール強度(N/15mm幅)とした。その結果を表2に示す。
【0076】
なお、80℃における熱間シール強度測定に際しては、同じ島津製作所製ストログラフの恒温槽に、ヒートシール強度測定用サンプルをセットした後、80℃環境で1分間保持後に、引張強度100mm/分で、自然剥離させた時の剥離強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0077】
表2において、常温シール強度の評価基準において、40N/15mm以上のものは「〇(合格)」であり、40N/15mm未満のものは「×(不合格)」である。
【0078】
80℃シール強度の評価基準において、30N/15mm以上のものは「〇(合格)」であり、30N/15mm未満のものは「×(不合格)」である。
【0079】
<熱融着性確認:基材層とシーラント層の熱融着性の有無>
実施例1で用いた基材層用フィルムとシーラント用フィルムを、幅15mm×長さ150mmの大きさにそれぞれ切り出した。切り出した基材層用フィルムとシーラント層フィルムを重ね合わせて、重ね合わせた樹脂フィルムの上下に、さらに厚さ80μmのアルミニウム箔を重ねて、ヒートシール用サンプルを準備した。
【0080】
上記のヒートシール用サンプルを、ヒートシール装置(テスター産業株式会社製:TP-701-A)を用いて、ヒートシール温度:200℃、シール圧:0.2MPa(ゲージ表示圧)、シール時間:2秒の条件で、両面加熱によりヒートシールし、熱融着性確認用のシール強度評価用サンプルを得た。
【0081】
実施例2~6および比較例1,2においても上記と同様に、熱融着性確認用のシール強度評価用サンプルをそれぞれ作製した。
【0082】
上記シール強度評価用サンプルについて、JIS Z0238-1998に準拠して島津アクセス社製ストログラフ(AGS-5kNX)を使用して、引張速度100mm/分で180°剥離させたときの剥離強度を測定してシール強度(N/15mm幅)とした。評価基準は以下の通りである。この評価基準の「○」はシール強度が2N/15mm以上のものであり、「×」はシール強度が2N/15mm未満のものである。
【0083】
表2から明らかなように、実施例のサンプルは、シール強度において全て高い評価を得ることができ、水蒸気バリア性および酸素バリア性においてもほぼ高い評価を得ることができた。これに対し比較例のサンプルは、シール強度およびガスバリア性(水蒸気バリア性、酸素バリア性)のいずれかにおいて、高い評価を得ることができなかった。
【0084】
また熱融着性に関して、実施例のサンプルは評価が分かれているが、基材層およびシーラント層の材質の選択によって、所望の評価が得られることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
この発明の蓄電デバイス用外装材は、全固体電池等の全固体電池本体を収容するための電池ケース(ケーシング)の材料として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1:外装材
11:基材層
12:金属箔層
13:シーラント層
3:全固体電池本体
図1
図2
図3
図4