(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172500
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】表皮一体発泡成形品及びヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20241205BHJP
B60N 2/80 20180101ALI20241205BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20241205BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20241205BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
A47C27/14 A
B60N2/80
A47C7/38
B60N2/58
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090259
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】松田 章太郎
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084DD02
3B087DC05
3B087DE03
3B087DE10
3B096AB08
3B096AD04
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】表皮一体発泡成形品やヘッドレストに係る新規な技術を提供すること。
【解決手段】表皮一体発泡成形品は、表皮材と、前記表皮材と一体に発泡成形された第1発泡体と、を備える表皮一体発泡成形品であって、板状をなして前記表皮材の一部に重ねられかつ前記第1発泡体と前記表皮材とに挟まれる第2発泡体を有し、前記2発泡体の端部が、前記表皮材に接するとともに前記2発泡体の中央部より薄くなっている表皮一体発泡成形品である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材と、前記表皮材と一体に発泡成形された第1発泡体と、を備える表皮一体発泡成形品であって、
板状をなして前記表皮材の一部に重ねられかつ前記第1発泡体と前記表皮材とに挟まれる第2発泡体を有し、
前記第2発泡体の端部が、前記表皮材に接するとともに前記第2発泡体の中央部より薄くなっている表皮一体発泡成形品。
【請求項2】
前記第2発泡体では、端部が中央部よりも見掛け密度が高くなっている請求項1に記載の表皮一体発泡成形品。
【請求項3】
前記第2発泡体の端部は、前記表皮一体発泡成形品の外面における曲率半径が前記中央部に対応する部分より小さい部位に配置されている請求項1又は2に記載の表皮一体発泡成形品。
【請求項4】
前記第2発泡体の端部が、前記表皮材の縫製部に重なって配置されている請求項1又は2に記載の表皮一体発泡成形品。
【請求項5】
前記表皮一体発泡成形品はヘッドレストであって、
前記第2発泡体は、乗員の後頭部と対向する位置に配置される請求項1又は2に記載の表皮一体発泡成形品。
【請求項6】
第1発泡体を表皮材で覆ったヘッドレストであって、
前記表皮材の内面には部分的に板状の第2発泡体が貼着され、
前記第2発泡体の端部は、前記表皮材の内面に接するとともに前記第2発泡体の中央部より圧縮されているヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡体が表皮材で覆われた表皮一体発泡成形品及びヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上述のような表皮一体発泡成形品やヘッドレストとして、第1の発泡体と表皮材との間に、表皮材の一部に重なる板状の第2の発泡体が設けられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-69286号公報(段落[0017]、[0025]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、表皮一体発泡成形品やヘッドレストに係る新規な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の第1態様は、表皮材と、前記表皮材と一体に発泡成形された第1発泡体と、を備える表皮一体発泡成形品であって、板状をなして前記表皮材の一部に重ねられかつ前記第1発泡体と前記表皮材とに挟まれる第2発泡体を有し、前記第2発泡体の端部が、前記表皮材に接するとともに前記2発泡体の中央部より薄くなっている表皮一体発泡成形品である。
【0006】
発明の第2態様は、第1発泡体を表皮材で覆ったヘッドレストであって、前記表皮材の内面には部分的に板状の第2発泡体が貼着され、前記第2発泡体の端部は、前記表皮材の内面に接するとともに前記第2発泡体の中央部より圧縮されているヘッドレストである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る表皮一体発泡成形品の斜視図
【
図3】
図3は、表皮一体発泡成形品の第1発泡体を発泡成形する型開き状態の発泡成形型の断面図
【
図4】
図4は、発泡成形型内で第1発泡体が表皮材と一体成形されたときの第2発泡体の断面図
【
図6】
図6Aは、第2実施形態に係る表皮一体発泡成形品に用いられる第2発泡体の断面図、
図6Bは、発泡成形型にセットされた第2発泡体の断面図
【
図7】
図7は、発泡成形型内で第1発泡体が表皮材と一体成形されたときの第2発泡体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
図1及び
図2に示すように、第1実施形態に係る表皮一体発泡成形品10は、乗り物用(例えば車両用)のシート90のヘッドレストとして用いられる。
図2に示すように、表皮一体発泡成形品10は、第1発泡体11を、外側から表皮材20で覆った構成になっている。具体的には、本実施形態の例では、表皮一体発泡成形品10は、第1発泡体11が袋状の表皮材20内で発泡成形されて表皮材20と一体になったものである。
【0009】
本実施形態の例では、表皮材20は、複数の表皮片21が縫い合わされた縫製品である。なお、表皮材20には、ヘッドレストをシート90の背もたれ部91に取り付けるためのステー17の脚部17Aを突出させるための開口が形成されていると共に、第1発泡体11の成形時に第1発泡体11の原料を注入するための注入口も形成されている。
【0010】
なお、本実施形態の例では、表皮片21同士は、それら表皮片21のうち表皮一体発泡成形品10の外側に露出する表側面同士が重ね合わされるようにして縫い合わされている(具体的には、表皮材20の縁部同士が縫い合わされている)。縫い合わされた表皮材20同士は、その縫製部22(縫い目)で互いに反対側に折り曲げられ、表皮材20同士の縫い代は、表皮材20の内側に配置されている。
【0011】
なお、表皮材20は、積層構造をなしていてもよいし、単層構造であってもよい。積層構造の例としては、例えば、最外層として合皮層(例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分として含んでいるもの等)を有するものが挙げられ、例えば、最内層に、第1発泡体11と同種の樹脂(例えば、ポリウレタン系樹脂)の層を有するものであってもよい。最内層をこのようにすれば、第1発泡体11と表皮材20との接着を容易にすることが可能となる。
【0012】
第1発泡体11は、熱硬化性樹脂の発泡体であってもよいし、熱可塑性樹脂の発泡体であってもよい。本実施形態の例では、第1発泡体11は、ポリウレタン系樹脂の発泡体であるが、ゴムの発泡体であってもよいし、フェノール系樹脂の発泡体であってもよいし、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂の発泡体であってもよい。
【0013】
ここで、表皮一体発泡成形品10では、第1発泡体11と表皮材20の間に、第2発泡体12が挟まれていて、本実施形態の例では、第2発泡体12の端部12Eが表皮材20に接している。また、本実施形態の例では、第2発泡体12は、板状をなし、第1発泡体11と表皮材20との一部のみに重なっていて、それらと接着して一体になっている。本実施形態の例では、第2発泡体12は、乗員Jの後頭部と対向する位置に配置される(即ち、第1発泡体11と表皮材20とのうち乗員Jの後頭部と対向する部分に挟まれる)。
【0014】
第2発泡体12としては、第1発泡体11よりも軟質なもの(例えば、アスカーC硬度等の硬度が低いものや、弾性率が低いもの)が挙げられる。このような第2発泡体12を、例えば、乗員Jと対向する位置に配置すれば、クッション性を高めることが可能となる。第2発泡体12は、熱硬化性樹脂の発泡体であってもよいし、熱可塑性樹脂の発泡体であってもよい。本実施形態の例では、第2発泡体12は、ポリウレタン系樹脂の発泡体であり、例えば、スラブ成形(開放された連続ライン上での発泡成形)で得られるスラブウレタンである。スラブウレタンのように、第2発泡体12が連続気泡構造を有する発泡体であれば、第1発泡体11を表皮材20内で発泡成形する場合に、第2発泡体12の内部に第1発泡体11の発泡樹脂原料G(
図3参照)を含浸させることが可能となる。これにより、第1発泡体11と第2発泡体12の一体化を強化することが可能となる。
【0015】
なお、第2発泡体12が連続気泡構造を有する場合、第1発泡体11の発泡樹脂原料Gが含浸し過ぎると、第2発泡体12が硬くなってクッション性が損なわれることが考えられる。これに対し、第1発泡体11と第2発泡体12の間に、第1発泡体11の発泡樹脂原料Gの含浸を規制する含浸規制膜19を備えておいてもよい。本実施形態の例では、第1発泡体11と第2発泡体12の間に、含浸規制膜19としてポリウレタン系樹脂のフィルム(表皮材20の最内層に設けるポリウレタン系樹脂の層と同じもの)を設けている。含浸規制膜19と表皮材20との対向部分が同種の樹脂からなるものであれば、含浸規制膜19と表皮材20の接着を容易にすることが可能となる。
【0016】
なお、第2発泡体12は、ゴムの発泡体であってもよいし、フェノール系樹脂の発泡体であってもよいし、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂の発泡体であってもよい。
【0017】
ここで、
図5に示す従来の表皮一体発泡成形品100のように、第2発泡体12が均一厚みの板状になっている場合、発泡樹脂原料Gが発泡硬化した第1発泡体11により第2発泡体12が内側から押されて、表皮材20のうち第2発泡体12の外縁に重なる部分に、段差29が形成されることがある。特に、発泡成形型70(
図4参照)内において表皮材20の中で第1発泡体11の発泡成形が行われた場合、得られた表皮一体発泡成形品が発泡成形型70から取り外されると、発泡成形型70内で第1発泡体11により圧縮されていた第2発泡体12が膨らむ。これにより、表皮材20のうち第2発泡体12の外縁に重なる部分に、上記段差29が形成され易くなる(
図5参照)。そのため、段差29の付近にハイライトや影が生じて段差29が目立ち、表皮一体発泡成形品の見栄えが悪くなることがあった。
【0018】
これに対し、本実施形態の表皮一体発泡成形品10では、第2発泡体12の端部12Eが(端部12Eの少なくとも一部が)、第2発泡体12の中央部12Cよりも薄くなっている。これにより、表皮材20のうち第2発泡体12の外周部に重なる部分に段差29が生じることを抑制可能となる。また、本実施形態の例では、第2発泡体12の端部12Eが表皮材20に接しているとともに、第2発泡体12の厚さが、第2発泡体12の外縁寄り位置から外縁に向かって薄くなっている(例えば、徐々に薄くなっている)。このような構成により、上記段差29を一層抑制することが可能となる。
【0019】
また、本実施形態の表皮一体発泡成形品10では、第2発泡体12の端部12Eの方が、第2発泡体12の中央部12Cよりも見掛け密度が高くなっている。詳細には、本実施形態の例では、第2発泡体12の端部12Eが表皮材20に接しているとともに、第2発泡体12の端部12Eは、第2発泡体12の中央部12Cよりも、第2発泡体12の厚さ方向で圧縮されている。例えば、第2発泡体12の圧縮度合が、第2発泡体12の外縁に向かうに従って徐々に大きくなっているため、第2発泡体12の厚さが、第2発泡体12の外縁寄り位置から外縁に向かうに従って徐々に薄くなっている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の例では、表皮一体発泡成形品10の側断面形状が、非円形状をなし、外面における曲率半径が位置によって異なっている。例えば、表皮一体発泡成形品10の側断面形状は、略三角形状等の略多角形状をなし、角部15が湾曲している。そして、その角部15で表皮一体発泡成形品10の外面の曲率半径が小さくなっている。
【0021】
本実施形態の例では、表皮一体発泡成形品10の外面における曲率半径が、第2発泡体12の中央部12Cに対応する部分Cよりも、第2発泡体12の端部12Eに対応する部分Eで小さくなっている。ここで、表皮一体発泡成形品10の外面における曲率半径が小さい部分ほど、表皮材20にテンションがかかって表皮材20が弛み難くなると考えられ、第2発泡体12の端部12Eを表皮一体発泡成形品10の角部15に近づけるほど(外面の曲率半径が小さい部分に配置するほど)、圧縮された第2発泡体12が膨らまず、段差29の発生の抑制を図ることが可能となる。従って、第2発泡体12の端部12Eが(端部12Eの少なくとも一部が)、表皮一体発泡成形品10の外面における曲率半径が中央部12Cに対応する部分より小さい部位に配置されていることで、段差29の発生を従来よりも抑制可能となる。
【0022】
また、例えば、第2発泡体12の端部12E(端部12Eの少なくとも一部)は、表皮材20の縫製部22に沿って配置されていてもよい。ここで、表皮材20では、縫製部22に近い部分ほど、伸び難くなると考えられ、第2発泡体12の端部12Eを縫製部22に近づけるほど、段差29の発生の抑制を図ることが可能となる。従って、第2発泡体12の端部12Eが縫製部22に沿っていることで、段差29の発生を従来よりも抑制可能となる。本実施形態の例では、第2発泡体12の端部12Eが(端部12Eの少なくとも一部)が、表皮材20の縫製部22に重なって配置されているので、段差29の発生を従来よりもさらに抑制可能となる。なお、例えば、角部15に配置される縫製部22があってもよい。第2発泡体12の端部12Eは、角部15に配置されて、さらに縫製部22に沿っていたり重なっていたりしてもよい。
【0023】
本実施形態の表皮一体発泡成形品10は、例えば、以下のようにして製造される。まず、複数の表皮片21が縫い合わされてなる袋状の表皮材20が用意される。なお、表皮材20には、上述のように、第1発泡体11の発泡樹脂原料Gを注入するための注入口と、ステー17の脚部17Aを挿通するための開口と、を設けておく。
【0024】
図3には、第1発泡体11を発泡成形するための発泡成形型70が示されている。この発泡成形型70が型開きされて、表皮材20の開口にステー17が挿通された状態で、表皮材20とステー17が、発泡成形型70内にセットされる。このセットをするにあたり、表皮材20のうち乗員Jの後頭部と対向する位置に(即ち、表皮材20に部分的に)、内側から板状の第2発泡体12が貼着される。なお、本実施形態の例では、第2発泡体12としては、厚さが均一なスラブウレタンが用意される。
【0025】
次いで、ポリウレタン発泡体の発泡樹脂原料Gが、上記注入口から表皮材20の内部に供給装置Sにより注入される。そして、発泡成形型70が型閉じされ、発泡樹脂原料Gを発泡成形型70内で発泡させる。これにより、第1発泡体11が発泡成形され、第2発泡体12と一体化すると共に、表皮材20のうち第2発泡体12が貼り付けられてない部分と一体化する(
図4参照)。ここで、袋状の表皮材20内で発泡樹脂原料Gが発泡硬化する際に、第2発泡体12が第1発泡体11に押されて厚さ方向に圧縮される。これにより、表皮一体発泡成形品10が形成される。その後、表皮一体発泡成形品10が発泡成形型70から取り外される。
【0026】
なお、第2発泡体12の内側面(表皮材20とは反対側の面)に、含浸規制膜19(
図2参照)が取り付けてあれば、発泡樹脂原料Gが連続気泡構造の第2発泡体12に含浸することを抑制可能となる。
【0027】
ここで、表皮一体発泡成形品10が発泡成形型70から取り外されると、発泡成形型70から開放されることで第2発泡体12が膨らもうとする。表皮材20は、表皮一体発泡成形品10の外面の角部15に近いほど、また、縫製部22に近いほど、伸び難くなると考えられ、この角部15や縫製部22に近いほど第2発泡体12が表皮材20と第1発泡体11との間で厚さ方向に圧縮された状態が維持されることとなる。
【0028】
ここで、本実施形態の例では、上述のように、第2発泡体12が表皮材20に内側から取り付けられる際に、第2発泡体12の中央部12Cよりも端部12Eの方が、表皮一体発泡成形品10の外面の角部15(即ち、発泡成形型70のキャビティ71の内面の隅部)の近くに配置される。言い換えれば、得られる表皮一体発泡成形品10の外面(即ち、発泡成形型70のキャビティ71の内面)における曲率半径が、第2発泡体12の中央部12Cに対応する部分Cよりも、第2発泡体12の端部12Eに対応する部分Eで小さくなるように、第2発泡体12が配置される。表皮材20では、表皮一体発泡成形品10の外面の角部15の近くに配置される部分が、表皮一体発泡成形品10の外方に膨らみにくいため、このようにすることで第2発泡体12の厚さ方向において、端部12Eを中央部12Cよりも圧縮され、その状態が維持されやすい。
【0029】
また、本実施形態の例では、第2発泡体12の中央部12Cよりも端部12Eの方が、表皮材20の縫製部22の近くに配置される。表皮材20は、縫製部22の近くが表皮一体発泡成形品10の外方に膨らみにくいため、このようにすることによっても、第2発泡体12の厚さ方向において、端部12Eを中央部12Cよりも圧縮され、その状態が維持されやすい。
【0030】
以上のようにして、第2発泡体12において中央部12Cよりも端部12Eが圧縮されて薄くなった表皮一体発泡成形品10を得ることができる。本実施形態によれば、表皮一体発泡成形品やヘッドレストに係る新規な技術が提供できる。また、本実施形態によれば、上記段差29の発生を抑制可能となり、従来より見栄えがいい表皮一体発泡成形品10及びヘッドレストを提供することができる。
【0031】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、表皮一体発泡成形品10を製造するにあたり、板状の第2発泡体12として厚さが一様なものが用いられたが、第2実施形態では、板状の第2発泡体12として、予め端部12Eが中央部12Cよりも薄くなっているものが用いられる。例えば、
図6Aに示すように、第2発泡体12は、第2発泡体12の外縁寄り位置から外縁に向かって薄くなった(例えば、徐々に薄くなった)形状を有している。本実施形態の例では、第2発泡体12の表裏の一方の面(
図6Aにおける上面)が、外縁に向かうにつれて他方の面(
図6Aにおける下面)に近づくように延びる(例えば他方の面に対して傾斜している)ことで、端部12Eが中央部12Cよりも薄くなっている。一方、本実施形態の例では、第2発泡体12の表裏の他方の面は、平坦になっている。なお、このように第2発泡体12の端部12Eが中央部12Cより薄くなった形状は、発泡成形時に(即ち、成形金型により)形成されてもよいし、厚さが均一なものを成形してから、それを加工(例えばカット)することで形成してもよい。
【0032】
図6Bに示すように、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様にして、発泡成形型70に、表皮材20とステー17がセットされる。表皮材20のうち乗員Jの後頭部と対向する位置には、内側から第2発泡体12が貼着される。このとき、第2発泡体12は、上述の平坦な他方の面が表皮材20に重ね合わされ、端部12Eが表皮材20に接するように取り付けられる。
【0033】
その後、上記第1実施形態と同様にして、第1発泡体11が発泡成形され、第2発泡体12と一体化すると共に、表皮材20のうち第2発泡体12が貼り付けられてない部分と一体化する(
図7参照)。そして、これらが発泡成形型70から取り外されると、第2発泡体12の端部12Eが中央部12Cよりも薄くなった表皮一体発泡成形品10が得られる。本実施形態でも、袋状の表皮材20内で発泡樹脂原料Gが発泡硬化する際に、第2発泡体12が第1発泡体11に押されて厚さ方向に圧縮され得るが、表皮一体発泡成形品10は、第2発泡体12の端部12Eが中央部12Cより圧縮されていないものであってもよく、一様に圧縮されたものであってもよい。本実施形態では、第2発泡体12の厚さが薄い箇所は第2発泡体12の圧縮時の反発が小さいため、例えば、第2発泡体12の端部12Eを、表皮一体発泡成形品10の角部15や縫製部22から離して配置しても、段差29(
図5参照)の発生を抑制することが可能となる。本実施形態では、表皮一体発泡成形品10の製造に用いられる第2発泡体12の形状以外の点は、上記第1実施形態と同様である。
【0034】
[他の実施形態]
表皮一体発泡成形品10は、シートのヘッドレストに限定されるものではなく、例えば、シートのアームレストであってもよい。なお、シートは、乗り物用(例えば車両用)のものであってもよいし、建物用のものであってもよい。
【0035】
上記実施形態において、第2発泡体12の代わりに、非発泡体が設けられてもよい。例えば、この非発泡体としては、ゴム等の弾性体が挙げられる。また、第2発泡体12の代わりに、発泡体以外の多孔質体を設けることもできる。
【0036】
上記実施形態において、表皮材20が、複数の表皮片21が縫い合わされた縫製品でなくてもよく、複数の表皮片21が接合されてなるもの(例えば溶着やヒートシールされてなるもの等)であってもよい。また、表皮材20が、複数の表皮片21で構成されてなくてもよく、袋状に成形された樹脂成形品であってもよい。
【0037】
第2発泡体12が、第1発泡体11と表皮材20の少なくとも一方と、一体になって(例えば接着されて)いなくてもよい。
【0038】
表皮材20で第1発泡体11と第2発泡体12が覆われた物品が、上記実施形態では、第1発泡体11が表皮材20と一体に発泡成形された表皮一体発泡成形品10であったが、その代わりに、第1発泡体11と第2発泡体12を含むコア部に、表皮材20が被せられたものであってもよい。この場合、このコア部は、発泡体であってもよいし、非発泡体(例えば弾性体)を含むものであってもよい。
<付記>
【0039】
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0040】
例えば、本開示の以下の特徴群は、「発泡体が表皮材で覆われた表皮一体発泡成形品及びヘッドレストに関し、「従来から、上述のような表皮一体発泡成形品やヘッドレストとして、第1の発泡体と表皮材との間に、表皮材の一部に重なる板状の第2の発泡体が設けられているものが知られている(例えば、特開2006-69286号公報(段落[0017]等)参照)。」という背景技術について、「表皮一体発泡成形品やヘッドレストに係る新規な技術を提供する。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。
【0041】
[特徴1]
表皮材と、前記表皮材と一体に発泡成形された第1発泡体と、を備える表皮一体発泡成形品であって、
板状をなして前記表皮材の一部に重ねられかつ前記第1発泡体と前記表皮材とに挟まれる第2発泡体を有し、
前記第2発泡体の端部が、前記表皮材に接するとともに前記第2発泡体の中央部より薄くなっている表皮一体発泡成形品。
【0042】
[特徴2]
前記第2発泡体では、端部が中央部よりも見掛け密度が高くなっている特徴1に記載の表皮一体発泡成形品。
【0043】
[特徴3]
前記第2発泡体の端部は、前記表皮一体発泡成形品の外面における曲率半径が前記中央部に対応する部分より小さい部位に配置されている特徴1又は2に記載の表皮一体発泡成形品。
【0044】
[特徴4]
前記第2発泡体の端部が、前記表皮材の縫製部に重なって配置されている特徴1から3の何れか1の特徴に記載の表皮一体発泡成形品。
【0045】
[特徴5]
前記表皮一体発泡成形品はヘッドレストであって、
前記第2発泡体は、乗員の後頭部と対向する位置に配置される特徴1から4の何れか1の特徴に記載の表皮一体発泡成形品。
【0046】
[特徴6]
前記第1発泡体は、前記表皮材及び前記第2発泡体に接着している特徴1から5の何れか1の特徴に記載の表皮一体発泡成形品。
【0047】
[特徴7]
前記第2発泡体は、連続気泡構造をなし、
前記第1発泡体と前記第2発泡体の間に、前記第1発泡体の原料の含浸を規制する含浸規制膜を備えている特徴6に記載の表皮一体発泡成形品。
【0048】
[特徴8]
前記第2発泡体の厚さが、前記第2発泡体の前記外縁寄り位置から外縁に向かうに従って徐々に薄くなっている特徴1から7の何れか1の特徴に記載の表皮一体発泡成形品 。
【0049】
[特徴9]
第1発泡体を表皮材で覆ったヘッドレストであって、
前記表皮材の内面には部分的に板状の第2発泡体が貼着され、
前記第2発泡体の端部は、前記表皮材の内面に接するとともに前記第2発泡体の中央部より圧縮されているヘッドレスト。
【0050】
特徴1,9によれば、表皮一体発泡成形品やヘッドレストに係る新規な技術が提供される。ここで、従来では、第1発泡体の発泡硬化により第2発泡体が内側から押されて、表皮材のうち第2発泡体の外縁に重なる部分に、段差が形成されることがある。これに対し、第2発泡体のうち表皮材の内面に接する端部が、第2発泡体の中央部より薄くなっていることで、表皮材のうち第2発泡体の外周部に重なる部分に段差が生じることを抑制可能となる。さらに、特徴8のように、第2発泡体の厚さが、第2発泡体の外縁寄り位置から外縁に向かうに従って徐々に薄くなっていることで、上記段差を一層抑制することが可能となる。
【0051】
また、特徴3のように、第2発泡体の端部が、表皮一体発泡成形品の外面における曲率半径が第2発泡体の中央部に対応する部分より小さい部位に配置されていることによっても、上記段差を抑制可能となる。さらに、第2発泡体の端部が、表皮材の縫製部に重なって配置されていることによっても、上記段差を抑制可能となる。
【0052】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0053】
10 表皮一体発泡成形品
11 第1発泡体
12 第2発泡体
20 表皮材
22 縫製部