(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172506
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】露光装置、露光方法、情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241205BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090271
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小杉 祐司
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197BA11
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(57)【要約】
【課題】 ステージの制御に用いる補正情報の通信に有利な露光装置を提供する。
【解決手段】 基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光装置であって、前記基板に転写するためのパターンが形成された原版又は前記基板を保持しつつ駆動可能なステージと、前記ステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理部と、前記情報処理部から送信された前記補正情報を用いて前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、前記ショット領域は、第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域を含み、前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量は、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少ない。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光装置であって、
前記基板に転写するためのパターンが形成された原版又は前記基板を保持しつつ駆動可能なステージと、
前記ステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理部と、
前記情報処理部から送信された前記補正情報を用いて前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記ショット領域は、第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域を含み、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量は、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少ない、ことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記補正情報は走査方向における前記ステージの位置に対して補正量をもつ離散的な情報であり、
前記第2領域における複数の前記補正量をもつ前記走査方向における前記ステージの位置の互いの間隔は、前記第1領域における複数の前記補正量をもつ前記走査方向における前記ステージの位置の互いの間隔より広い、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報は補正式である、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報は、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正式よりも高次の補正式である、ことを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記ショット領域のうちの複数の領域に対して同一の前記補正情報を用いる、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項6】
前記補正情報は、前記ステージが駆動可能な6軸方向それぞれに対して生成される、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項7】
前記情報処理部は前記ショット領域毎に前記補正情報を送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項8】
前記第1領域と前記第2領域の配置は、前記原版の情報に基づくことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項9】
前記第1領域と前記第2領域の配置は、前記基板に形成されているパターンのずれ量に基づくことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項10】
前記情報処理部は、前記第1領域と前記第2領域の配置の情報を、ユーザによる入力、又は、外部の装置からの送信により取得する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項11】
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光装置であって、
前記基板に転写するためのパターンが形成された原版又は前記基板を保持しつつ駆動可能なステージと、
前記ショット領域に含まれる領域に対して、第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域とをユーザがそれぞれ設定可能な入力画面を有するユーザインターフェースと、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域である、ことを特徴とする露光装置。
【請求項12】
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光方法であって、
前記ショット領域に含まれる第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域との配置の情報と、露光に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成するために用いる情報と、を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した情報に基づいて、前記補正情報を生成する生成工程と、
前記生成工程で生成した前記補正情報を、前記ステージを制御する制御部に送信する通信工程と、
前記通信工程で送信された前記補正情報に基づいて、前記ステージを制御しながら前記基板を露光する露光工程と、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記生成工程では、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量が、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少なくなるよう、前記補正情報を生成する、
ことを特徴とする露光方法。
【請求項13】
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光処理に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理装置であって、
前記ステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理部を有し、
前記ショット領域は、第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域を含み、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量は、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少ない、ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項14】
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光処理に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理方法であって、
前記ショット領域に含まれる第1領域と、前記第1領域とは異なる第2領域との配置の情報と、前記補正情報を生成するために用いる情報と、を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した情報に基づいて、前記補正情報を生成する生成工程と、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記生成工程では、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量が、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少なくなるよう、前記補正情報を生成する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光処理に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成するプログラムであって、
前記ショット領域に含まれる第1領域と、前記第1領域とは異なる第2領域との配置の情報と、前記補正情報を生成するために用いる情報と、を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した情報に基づいて、前記補正情報を生成する生成工程と、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記生成工程では、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量が、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少なくなるよう、前記補正情報を生成する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項16】
基板上の複数のショット領域のうちの前記ショット領域に含まれる第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域との配置の情報と、露光に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成するために用いる情報と、を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した情報に基づいて、前記補正情報を生成する生成工程と、
前記生成工程で生成した前記補正情報を、前記ステージを制御する制御部に送信する通信工程と、
前記通信工程で送信された前記補正情報に基づいて、前記ステージを制御しながら前記基板を露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された前記基板から物品を製造する製造工程と、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記生成工程では、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量が、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少なくなるよう、前記補正情報を生成する、
ことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、露光方法、情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示デバイスなどの製造工程において、ステージに保持された基板を露光処理する露光装置が用いられることがある。特許文献1には、補正テーブルに基づいてステージの目標位置を補正して露光処理を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ステージの制御の精度を高くするために、より多くのステージの位置それぞれに対して、ステージの位置に応じた補正情報を適用することで露光処理の精度を高くすることができる。しかし、より多くのステージの位置それぞれに対してステージの位置に応じた補正情報を適用する場合、補正情報の情報量が多くなる。
【0005】
一般的に、ステージを制御するステージ制御部は、ステージの制御の処理を行いながら、補正情報を生成する情報処理部から補正情報を受信する。よって、補正情報の情報量が多いと、情報処理部からステージ制御部に補正情報を送信するための通信において、ステージ制御部の処理を圧迫し、ステージ制御部が行う通信以外の処理に影響を及ぼすことがある。
【0006】
そこで、本発明は、ステージの制御に用いる補正情報の通信に有利な露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての露光装置は、基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光装置であって、前記基板に転写するためのパターンが形成された原版又は前記基板を保持しつつ駆動可能なステージと、前記ステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理部と、前記情報処理部から送信された前記補正情報を用いて前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、前記ショット領域は、第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域を含み、前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量は、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少ない、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステージの制御に用いる補正情報の通信に有利な露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態における露光装置の構成を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態におけるステージの位置の制御に関するブロック図である。
【
図3】基板上の複数のショット領域のうちの1つのショット領域を示した図である。
【
図4】第1実施形態における補正情報の生成に関するブロック図である。
【
図5】第1実施形態における露光方法のフローチャートである。
【
図6】第1実施形態における情報処理部からステージを制御する制御部に送信する補正情報の例である。
【
図7】基板上の複数のショット領域のうちの1つのショット領域を示した図である。
【
図8】第2実施形態における情報処理部からステージを制御する制御部に送信する補正情報の例である。
【
図9】第3実施形態における物品の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
また、本明細書および図面では、基本的に、鉛直方向をZ軸とし、鉛直方向に対し垂直な水平面をXY平面とする、各軸が相互に直交するXYZ座標系によって方向が示されている。また、X軸まわりの回転方向、Y軸まわりの回転方向、Z軸まわりの回転方向をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向とする。ただし、各図面にXYZ座標系を記載している場合はその座標系を優先する。
【0013】
以下、各実施形態において、具体的な構成を説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態における露光装置100の構成を示す概略図である。本実施形態の露光装置100は、原版(マスク、レチクル)のパターンを、投影光学系を介して基板に露光するステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置である。露光装置100は、原版と基板との相対位置を制御しつつ走査(スキャン)することで基板を露光する。
【0015】
露光装置100は、光を照射する照明光学系11と、投影光学系14と、原版12を保持する原版ステージ13と、基板15を保持しつつ移動可能な基板ステージ16と、メイン制御部20と、情報処理部50と、を有する。さらに露光装置100は原版ステージ13の位置を計測可能な第1計測部17と、基板ステージ16の位置を計測可能な第2計測部18と、第3計測部19と、を有する。また、露光装置100は、ユーザが情報を入力(設定)可能な入力画面を有するユーザインターフェース120を有していてもよい。なお、本実施形態では、基板ステージ16と原版ステージ13とを露光に用いられるステージと記載することがある。
【0016】
制御部20及び情報処理部50は、例えば、FPGAなどのPLD、又は、ASIC、又は、プログラムが組み込まれたコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合せによって構成されうる。制御部20及び情報処理部50は、CPUと、バスと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を含み、各構成要素はプログラムに従って機能する。CPUは、プログラムに従って制御のための演算を行い、バスに接続された各構成要素を制御する処理装置である。ROMは、データ読出し専用のメモリであり、プログラムやデータが格納されている。RAMは、データ読み書き用のメモリであり、プログラムやデータの保存用に用いられ、CPUの演算の結果等のデータの一時保存用に用いられる。記憶装置も、プログラムやデータの保存用に用いられる。記憶装置は、制御部20や情報処理部50のオペレーティングシステム(OS)のプログラム、およびデータの一時保存領域としても用いられる。記憶装置は、RAMに比べてデータの入出力は遅いが、大容量のデータを保存することが可能である。記憶装置は、保存するデータを長期間にわたり参照できるように、永続的なデータとして保存できる不揮発性記憶装置であることが望ましい。記憶装置は、主に磁気記憶装置(HDD)で構成されるが、CD、DVD、メモリカードといった外部メディアを装填してデータの読み込みや書き込みを行う装置であっても良い。
【0017】
原版12は、例えば、基板15に転写するためのパターン(例えば回路パターン)がクロムで石英ガラスの表面に形成されている。また、基板15は、例えば単結晶シリコンであり、表面上に感光材料(レジスト)が塗布されている。メイン制御部20は露光装置100内の各部分を制御する。
【0018】
露光装置100において、光源(不図示)からの露光光は、照明光学系11を介して、原版ステージ13に保持された原版12を照明する。原版12を透過した光は、投影光学系14を介して、基板15に照射される。この時、原版12に形成されたパターンからの光が基板15表面に結像し、基板15(感光材料)がパターン像により露光される。露光装置100はこのように基板15上のショット領域を露光し、複数のショット領域のそれぞれについて同様に露光を行う。
【0019】
第1計測部17は、例えば干渉計システムであり、第1干渉計171と第1ミラー172とを有し、原版ステージ13の位置を計測する。そして、第2計測部18は、例えば干渉計システムであり、第2干渉計181と第2ミラー182とを有し、基板ステージ16の位置を計測する。なお、本実施形態では第1計測部17及び第2計測部18は干渉計システムである例を示したが、第1計測部17及び第2計測部18はエンコーダなどの計測システムであってもよい。
【0020】
第3計測部19は、例えばオフアクシススコープであり、基板15に形成されたアライメントマーク(不図示)と基板ステージ16上の基準マーク(不図示)との相対位置及び姿勢関係を計測する。
【0021】
原版ステージ13は、原版12を保持しつつ原版12を6軸方向(X方向、Y方向、Z方向、θx方向、θy方向、θz方向)に移動させることが可能である。基板ステージ16は、基板15を保持しつつ基板15を6軸方向(X方向、Y方向、Z方向、θx方向、θy方向、θz方向)に移動させることが可能である。原版ステージ13は各計測部の計測結果に基づいて原版ステージ制御部21により駆動を制御され、基板ステージ16は各計測部の計測結果に基づいて基板ステージ制御部22により駆動を制御される。そして、基板ステージ16と原版ステージ13との相対位置が制御された状態、つまり基板15と原版12との相対位置が制御された状態で露光が行われる。なお、本実施形態では原版ステージ制御部21は原版ステージ13の内部に、基板ステージ制御部22は基板ステージ16の内部に配置されている例を示すが、これらはそれぞれのステージの外部に配置されていてもよい。また、本実施形態では原版ステージ制御部21と基板ステージ制御部22とを別個に有する例を示したが、原版ステージ13と基板ステージ16の両方を制御するステージ制御部としてもよい。
【0022】
基板15にすでにパターンが形成されている下地層がある場合に、この下地層とこれから露光するパターンの位置を合わせることで重ね合わせ精度が向上する。ここで、下地層に形成されたパターンは、倍率収差などの収差などに起因して所望の形状からずれ(例えば、歪や位置ずれ)が生じている場合がある。よって、重ね合わせ精度を低下させないために、下地層に形成されたパターンにずれが生じている場合は、下地層に形成されたパターンのずれに応じてこれから露光するパターンを補正して露光する必要がある。これから露光するパターンを補正する方法の1つとして、露光に用いられるステージの駆動を、補正情報を用いて補正する方法がある。
【0023】
図2は本実施形態におけるステージの位置の制御に関するブロック図である。情報処理部50は、基板ステージ16の位置(基板ステージ16の駆動、基板15の位置)を補正するための補正情報を生成(算出)する。この補正情報は、例えば、ステージを駆動可能な6軸方向(X方向、Y方向、Z方向、θx方向、θy方向、θz方向)それぞれに対して生成されてもよいし、特定の方向に対してのみ生成されてもよい。
【0024】
情報処理部50は、例えば、ショット領域単位で補正情報を基板ステージ制御部22に送信する。そして、基板ステージ制御部22は、基板ステージ16の目標位置情報と情報処理部50で生成された補正情報とを加算した結果と、現在の基板ステージ16の位置である各計測部の計測結果と、のずれ量を適宜算出する。その後、算出したずれ量に対して、PID制御やフィルタ(例えばローパスフィルタ)を適用して、基板ステージ16の駆動指令値(駆動量、駆動軌跡)を算出し、基板ステージ16を駆動する。
【0025】
ここで、補正情報は原版ステージ13と基板ステージ16との相対位置を補正するための情報であるため、原版ステージ13と基板ステージ16に対して補正情報(補正量)を分配してもよい。なお、
図2では基板ステージ16の位置の制御の例を説明したが、原版ステージ13の位置の制御についても同様である。そして、本実施形態では露光装置100の内部の情報処理部50が補正情報を生成する例を示したが、メイン制御部20が補正情報を生成してもよく、露光装置100の外部の情報処理部(情報処理装置、生成部)により補正情報が生成されてもよい。
【0026】
図3は基板15上の複数のショット領域のうちの1つのショット領域200を示した図である。ショット領域200は、1つ以上のチップ領域201を有する。
図3の例では、ショット領域200は6個のチップ領域201を有している。本実施形態のショット領域200は、高精度な位置合わせ精度が必要な第1領域202(斜線部)と、第1領域202よりも必要な位置合わせの精度が低い第2領域203と、を含む。換言すれば、ショット領域200は、露光の際に高い精度で露光に用いられるステージの位置の補正を行う必要のある第1領域202(斜線部)と、第1領域202よりも低い精度で露光に用いられるステージの位置の補正を行ってもよい第2領域203と、を含む。
【0027】
図3(a)は1つのチップ領域201が第1領域202と第2領域203とを含む例である。
図3(a)のような例の場合、第1領域202は基本回路、第2領域203は周辺回路と呼ばれることがある。なお、
図3(a)では+Y方向側のチップ領域201にのみ符号を記載しているが、ほかのチップ領域においても同様の構成である。
図3(b)は1つのチップ領域201が第1領域202と第2領域203とを含む別の例である。なお、
図3(b)では+Y方向側のチップ領域201にのみ符号を記載しているが、ほかのチップ領域においても同様の構成である。
図3(c)は、チップ領域201毎に第1領域202と第2領域203とがある例である。なお、
図3(c)では+Y方向側のチップ領域201にのみ符号を記載しているが、ほかのチップ領域においても同様の構成である。
【0028】
第1領域202と第2領域203の配置の情報(レイアウト)は、製品や仕様によって異なる。露光装置100(情報処理部50)は、この第1領域202と第2領域203の配置の情報を、原版12の情報(レチクルデザイン、回路デザイン、回路情報)に基づいて取得(設定)する。露光装置100(情報処理部50)はこの原版12の情報を、ユーザインターフェース120を用いたユーザからの入力、又は、外部の情報処理装置から露光装置100(情報処理部50)への情報の送信などにより取得する。ここで、露光装置100(情報処理部50)は、第1領域202と第2領域203の配置の情報を、ユーザインターフェース120を用いたユーザからの入力により直接取得してもよい。或いは、露光装置100(情報処理部50)は、第1領域202と第2領域203の配置の情報を、外部の情報処理装置から露光装置100(情報処理部50)への情報の送信などにより直接取得してもよい。ユーザインターフェース120を用いたユーザからの入力とは、ユーザインターフェース120を用いてユーザが第1領域202と第2領域203とをそれぞれ入力画面から設定することである。なお、第1領域202の配置と第2領域203の配置や個数は
図3の例に限定されない。
【0029】
露光装置100の露光処理において、基板ステージ16や原版ステージ13の相対位置を精度よく制御する(露光に用いられるステージの制御の精度を高くする)ことが露光精度を向上させるために重要である。露光に用いられるステージの制御の精度を高くするためには、より多くのステージの位置それぞれに対して、ステージの位置に応じた補正情報を適用することが有効である。しかし、より多くのステージの位置それぞれに対してステージの位置に応じた補正情報を適用する場合、補正情報の情報量が多くなる。
【0030】
一般的に、ステージの制御を行う原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22は、ステージの制御の処理を行いながら、補正情報を生成する情報処理部50から補正情報を受信する。よって、補正情報の情報量が多いと情報処理部50から原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22などのステージ制御部に補正情報を送信するための通信において、ステージ制御部の処理を圧迫する。そして、ステージ制御部が行う通信以外の処理に影響を及ぼすことがある。ステージ制御部の処理の圧迫とは、ステージ制御部が制御の際に用いる内部メモリの使用量が上限に近くなること又は上限を超えることをいう。さらに、補正情報の情報量が多いと、情報処理部50が原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22などのステージ制御部へ補正情報を送信する際に遅延が生じる可能性がある。ここで、補正情報の情報量の単位は、例えば、バイト(Byte)、キロバイト(KB)、メガバイト(MB)、ギガバイト(GB)などである。
【0031】
本実施形態では、情報処理部50がステージ制御部に送信する補正情報の情報量を、高精度な位置合わせ精度が必要な第1領域202と、第1領域202よりも必要な位置合わせの精度が低い第2領域203とで互いに異ならせる。つまり、第1領域202よりも必要な位置合わせの精度が低い第2領域203を露光する際に適用する補正情報の情報量は、高精度な位置合わせ精度が必要な第1領域202を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少ない。換言すれば第1領域202よりも低い精度でステージの位置の補正を行ってもよい第2領域203を露光する際に適用する補正情報の情報量は高い精度でステージの位置の補正を行う必要のある第1領域202を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少ない。
【0032】
具体的には、情報処理部50がステージ制御部に送信する補正情報において、第2領域203を露光する際に適用する補正情報のデータの間隔(補正間隔)を、第1領域202を露光する際に適用する補正情報のデータの間隔(補正間隔)よりも広くする。補正情報のデータの間隔とは、補正情報を有する走査方向における複数のステージの位置の互いの間隔である。或いは、第2領域203を露光する際に適用する補正情報を簡易補正式(低次補正式)とする。低次補正式とは、例えば、1次又は2次の補正式である。或いは、第2領域203を露光する際に適用する補正情報を簡易補正式(低次補正式)とし、第1領域202を露光する際に適用する補正情報を、第2領域203を露光する際に適用する簡易補正式(低次補正式)よりも高次の補正式とする。高次の補正式とは、例えば3次以上の補正式であり、簡易補正式(低次補正式)よりも項数が多いものとする。高次の補正式は項数が多いため、簡易補正式(低次補正式)よりも情報量が多い。
【0033】
これにより、高精度な位置合わせ精度が必要な第1領域202では露光の際にステージの位置を高い精度で補正して制御することができると共に、第2領域203を露光する際に適用する補正情報の情報量を少なくすることができる。よって、情報処理部50からステージの制御を行う原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22に補正情報を送信するための通信における、原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22の処理を圧迫する可能性を低くすることができる。さらに、情報処理部50がステージを制御する制御部(原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22)へ補正情報を送信する際に遅延が生じる可能性を低減できる。
【0034】
次に、情報処理部50が補正情報を生成する方法について説明する。なお、本実施形態では補正情報を補正情報テーブルと呼ぶことがある。
図4は、本実施形態における補正情報の生成に関するブロック図である。まず、情報処理部50は複数の補正情報テーブルのうちから、対象のショット領域200の走査方向や、基板15上における対象のショット領域200の位置に基づいて、ショット領域200に対応する1以上の補正情報テーブルを選択する。なお、補正情報テーブルの選択は、外部の計測器による計測又は露光装置100において露光光を基板15に照射しない状態における計測によって得た下地層のパターンのずれに関する情報に基づいてもよい。この複数の補正情報テーブルは情報処理部50が保有していてもよく、情報処理部50の内部又は外部の記憶部(不図示)が記憶していてもよく、ユーザにより入力されてもよい。
【0035】
複数の補正情報テーブルには、基板15上における位置に対応した補正情報テーブルや、ステージの走査方向(例えば+Y方向、-Y方向)に応じた補正情報テーブルなどが含まれている。情報処理部50が複数の補正情報テーブルを選択した場合は、複数の補正情報テーブルを組み合わせて1つの補正情報テーブルを生成する。複数の補正情報テーブルが選択される例としては、ショット領域200内の位置に応じた補正情報テーブルを組み合わせる例などがある。ショット領域200内の位置に応じた補正情報テーブルとは、例えば、ショット領域200のうち最初に走査(スキャン)される領域、2番目に走査(スキャン)される領域、最後に走査(スキャン)される領域それぞれに対応した補正情報テーブルある。複数の補正情報テーブルは、例えば、線形補間(一次補間)されることで組み合わせられてもよい。なお、補正情報テーブルの選択方法、選択例、組み合わせ方法は上記例に限定されない。ここで、補正情報(補正情報テーブル)はステージの制御特性や原版ステージ13と基板ステージ16との同期誤差を補正する情報を含んでいてもよい。また、補正情報(補正情報テーブル)の生成は、露光動作中に行われてもよいし、露光動作前に行われてもよい。
【0036】
本実施形態では、情報処理部50が補正情報を生成する際に、高精度な位置合わせ精度が必要な第1領域202と、第1領域202よりも必要な位置合わせの精度が低い第2領域203とで補正情報(補正情報の情報量)を互いに異ならせる。情報処理部50は第1領域202よりも必要な位置合わせの精度が低い第2領域203を露光する際に適用する補正情報の情報量が高精度な位置合わせ精度が必要な第1領域202を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少なくなるよう補正情報を生成する。
【0037】
図5は、本実施形態における露光方法のフローチャートである。まず、情報処理部50が情報を取得する取得工程(S110)を行う。ここで、ステップS110の取得工程では、補正情報の情報量が互いに異なる第1領域202と第2領域203の配置の情報を取得する。なお、ステップS110では、補正情報を生成するために用いる、補正情報を生成する対象のショット領域200の走査方向の情報や、基板15上における対象のショット領域200の位置の情報も取得してもよい。また、補正情報を生成する際に、下地層のパターンのずれに関する情報を用いる場合は、この取得工程で下地層のパターンのずれに関する情報も取得する。
【0038】
次に、情報処理部50は複数の補正情報(補正情報テーブル)のうちから、取得工程で取得した情報に基づいて、露光に用いられるステージの制御に用いる補正情報を生成するための補正情報を選択する選択工程(S120)を行う。このステップS120では、1又は複数の補正情報を選択する。なお、用いる補正情報が決定している場合はこの選択工程は行わなくともよい。
【0039】
次に、情報処理部50は選択工程で選択した補正情報に基づいて露光に用いられるステージの制御に用いる補正情報を生成する生成工程(S130)を行う。選択工程を行わなかった場合は、この生成工程では、取得工程で取得した情報に基づいて露光に用いられるステージの制御に用いる補正情報を生成する。生成工程では、第1領域202と第2領域203とで補正情報の情報量が互いに異なるように、具体的には第2領域203の補正情報の情報量が第1領域202の補正情報の情報量よりも少なくなるように、対象のショット領域200の補正情報を生成する。ここで、選択工程において複数の補正情報を選択した場合は、前述したように補正情報を組み合わせることで用いる補正情報を生成し、上述のように第1領域202と第2領域203とで補正情報の情報量が互いに異なるように補正情報を生成する。このように情報処理部50は補正情報を生成する。なお、ステップS110~ステップS130は情報処理部50が内部に格納されたプログラムに従うことにより行われる情報処理方法である。
【0040】
次に、情報処理部50は生成した情報を、露光に用いられるステージを制御する制御部に送信する通信を行う通信工程(S140)を行う。
【0041】
次に、露光に用いられるステージを制御する制御部が通信工程で送信された補正情報に基づいて、ステージを制御しながら基板15を露光する露光工程(S150)を行う。
【0042】
図6は、本実施形態における情報処理部50からステージを制御する制御部に送信する補正情報の例である。
図6は、
図3(b)のショット領域200のうちの1つのチップ領域201における、第1領域202と第2領域203を露光する際に適用するY方向における補正情報(補正情報テーブル)を示している。なお、
図3(b)のショット領域200は-Y方向に走査(スキャン)されるものとする。
【0043】
図6(a)は、補正情報を走査方向におけるステージの位置に対して離散的にもつ例である。補正情報は、走査方向におけるステージの位置に対して補正量をもっている。この補正情報の数が多いほど補正情報の情報量は多い。本実施形態では、第2領域203を露光する際に適用する補正情報の情報量を、第1領域202を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少なくする。
【0044】
図6(b)は、第2領域203の補正情報を簡易補正式(低次補正式)とする例である。
図6(b)の例では、第2領域203において補正情報を近似して、第2領域203の補正情報を簡易補正式(低次補正式)としている。このように簡易補正式(低次補正式)として補正情報をもつことで、第2領域203を露光する際に適用する補正情報の情報量を、第1領域202を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少なくする。なお、近似方法や近似に用いる数値の数は特に限定されない。
【0045】
図6(c)は、第2領域203を簡易補正式(低次補正式)とし、第1領域202を第2領域203の簡易補正式(低次補正式)よりも高次の補正式とする例である。
図6(c)の例では、第2領域203において補正情報を近似して、第2領域203の補正情報を簡易補正式(低次補正式)としている。そして、第1領域202において補正情報を近似して、第1領域202の補正式を第2領域203よりも高次の補正式としている。このように第1領域202を高次の補正式として、第2領域203を簡易補正式(低次補正式)として補正情報をもつことで、第2領域203を露光する際に適用する補正情報の情報量を、第1領域202を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少なくする。さらに、
図6(c)の例では、第1領域202を露光する際に適用する補正情報の情報量を、
図6(a)や
図6(b)よりも少なくすることができる。なお、近似方法や近似に用いる数値の数は特に限定されない。
【0046】
ここで、
図6の例では、Y方向における補正情報を示すがほかの方向においても同様である。
【0047】
また、ショット領域200内に同様のパターン形状がある場合に、補正情報を共通化して用いることで情報処理部50が補正情報を送信する際における、原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22の処理を圧迫する可能性を低くすることができる。補正情報を共通化して用いることは、換言すれば、ショット領域200のうちの複数の領域に対して同一の補正情報を用いる、ことである。
【0048】
本実施形態の補正情報を適用した駆動は、露光装置100における原版ステージ13と基板ステージ16の少なくとも一方に適用される。ここで、本実施形態では原版ステージ13と基板ステージ16を例に説明したが、搬送システムなどほかの駆動装置に適用されてもよい。
【0049】
本実施形態では、露光装置100を例に説明したが、複数の露光装置100を含んでいる、或いは、露光装置100とほかの装置とが一体となっている露光システムであってもよい。また、情報処理部50は、複数の露光装置100又は露光システムそれぞれから情報を取得し、複数の露光装置100又は露光システムそれぞれに対して補正情報を送信してもよい。そして、本実施形態では1つの情報処理部50が情報処理を行う例を示したが、複数の情報処理部により処理を分散して行ってもよい。
【0050】
以上のように、本実施形態により露光の際に高い精度でステージの位置の補正を行う必要のある第1領域202と、第1領域202よりも低い精度でステージの位置の補正を行ってもよい第2領域203とで補正情報の情報量を互いに異ならせる。具体的には、第2領域203を露光する際に適用する補正情報の情報量を、第1領域202を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少なくする。これにより、情報処理部50が補正情報を、ステージを制御する制御部に送信する際における、ステージを制御する制御部の処理を圧迫する可能性を低くすることができ、さらに補正情報を送信する際に遅延が生じる可能性を低減できる。
【0051】
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態と、第1領域と第2領域とが設定される基準が異なる。本実施形態では、情報処理部50は、基板15に形成された下地層のパターンのずれ(例えば、倍率収差によるパターンの歪、パターンの位置ずれ)の計測結果に基づいて第1領域と第2領域の配置の情報を取得(設定)する。下地層のパターンのずれは、外部の計測器による計測又は露光装置100において露光光を基板15に照射しない状態における計測によって得ることができる。
【0052】
図7は基板15上の複数のショット領域のうちの1つのショット領域200を示した図である。本実施形態のショット領域200は、下地層のパターンのずれ量が大きい領域である第1領域204と、下地層のパターンのずれ量が小さい領域である第2領域205と、を含む。
【0053】
露光装置100の露光処理において、下地層に形成されたパターンとこれから露光するパターンとの重ね合わせ精度を向上させるためには、より多くのステージの位置それぞれに対して、ステージの位置に応じた補正情報を適用することが有効である。しかし、より多くのステージの位置それぞれに対してステージの位置に応じた補正情報を適用する場合、補正情報の情報量が多くなる。
【0054】
一般的に、ステージの制御を行う原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22は、ステージの制御の処理を行いながら、補正情報を生成する情報処理部50から補正情報を受信する。よって、補正情報の情報量が多いと、情報処理部50から原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22などのステージ制御部に補正情報を送信するための通信において、ステージ制御部の処理を圧迫する。そして、ステージ制御部が行う通信以外の処理に影響を及ぼすことがある。ステージ制御部の処理の圧迫とは、ステージ制御部が制御の際に用いる内部メモリの使用量が上限に近くなること又は上限を超えることをいう。さらに、補正情報の情報量が多いと、情報処理部50が原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22などのステージ制御部へ補正情報を送信する際に遅延が生じる可能性がある。
【0055】
よって、本実施形態では、情報処理部50がステージ制御部に送信する補正情報の情報量を、下地層のパターンのずれ量が大きい第1領域204と、第1領域204よりも下地層のパターンのずれ量が小さい第2領域205とで互いに異ならせる。つまり、第1領域204よりも下地層のパターンのずれ量が小さい第2領域205を露光する際に適用する補正情報の情報量は、下地層のパターンのずれ量が大きい第1領域204を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少ない。具体的には第2領域205を露光する際に適用する補正情報のデータの間隔(補正間隔)を、第1領域204を露光する際に適用する補正情報のデータの間隔(補正間隔)よりも広くすることで第2領域205を露光する際に適用する補正情報の情報量を少なくする。或いは、第2領域205を露光する際に適用する補正情報を簡易補正式(低次補正式)とする。或いは、第2領域205を露光する際に適用する補正情報を簡易補正式(低次補正式)とし、第1領域204を露光する際に適用する補正情報を、第2領域205を露光する際に適用する簡易補正式(低次補正式)よりも高次の補正式とする。
【0056】
これにより、下地層のパターンのずれ量が大きい第1領域204では露光の際に高い精度で下地層に応じてステージを制御することができると共に、第2領域205を露光する際に適用する補正情報の情報量を少なくすることができる。よって、情報処理部50からステージの制御を行う原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22に補正情報を送信するための通信における、原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22の処理が圧迫する可能性を低くすることができる。さらに、情報処理部50がステージを制御する制御部(原版ステージ制御部21や基板ステージ制御部22)へ補正情報を送信する際に遅延が生じる可能性を低減できる。
【0057】
図8は、本実施形態における情報処理部50からステージを制御する制御部に送信する補正情報の例である。
図8は、
図7のショット領域200のうちの第1領域204と第2領域205を露光する際に適用するY方向における補正情報(補正情報テーブル)の一部を示している。なお、
図7のショット領域200は-Y方向に走査(スキャン)されるものとする。
【0058】
図8(a)は、補正情報を走査方向におけるステージの位置に対して離散的にもつ例である。この補正情報の数が多いほど補正情報の情報量は多い。本実施形態では、第2領域205を露光する際に適用する補正情報の情報量を、第1領域204を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少なくする。
【0059】
図8(b)は、第2領域205の補正情報を簡易補正式(低次補正式)とする例である。
図8(b)の例では、第2領域205において補正情報を近似して、第2領域205の補正情報を簡易補正式(低次補正式)としている。このように簡易補正式(低次補正式)として補正情報をもつことで、第2領域205を露光する際に適用する補正情報の情報量を、第1領域204を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少なくする。なお、近似方法や近似に用いる数値の数は特に限定されない。
【0060】
図8(c)は、第2領域205を簡易補正式(低次補正式)とし、第1領域204を第2領域205の簡易補正式(低次補正式)よりも高次の補正式とする例である。
図8(c)の例では、第2領域205において補正情報を近似して、第2領域205の補正情報を簡易補正式(低次補正式)としている。そして、第1領域204において補正情報を近似して、第1領域204の補正式を第2領域205よりも高次の補正式としている。このように第1領域204を高次の補正式として、第2領域205を簡易補正式(低次補正式)として補正情報をもつことで、第2領域205を露光する際に適用する補正情報の情報量を、第1領域204を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少なくする。さらに、
図8(c)の例では、第1領域204を露光する際に適用する補正情報の情報量を、
図8(a)や
図8(b)よりも少なくすることができる。なお、近似方法や近似に用いる数値の数は特に限定されない。
【0061】
ここで、
図8の例では、Y方向における補正情報を示すがほかの方向においても同様である。
【0062】
また、ショット領域200内に同様の下地層に形成されたパターンのずれをもつ領域がある場合に、補正情報を共通化して用いることで情報処理部50が補正情報を送信する際における、ステージ制御部の処理が圧迫する可能性を低くすることができる。補正情報を共通化して用いることは、換言すれば、ショット領域200のうちの複数の領域に対して同一の補正情報を用いる、ことである。
【0063】
本実施形態の補正情報を適用した駆動は、露光装置100における原版ステージ13と基板ステージ16の少なくとも一方に適用される。ここで、本実施形態では原版ステージ13と基板ステージ16を例に説明したが、搬送システムなどほかの駆動装置に適用されてもよい。
【0064】
以上のように、本実施形態により下地層のパターンのずれ量が大きい第1領域204と、第1領域204よりも下地層のパターンのずれ量が小さい第2領域205とで補正情報の情報量を互いに異ならせる。具体的には、第2領域205を露光する際に適用する補正情報の情報量を、第1領域204を露光する際に適用する補正情報の情報量よりも少なくする。これにより、情報処理部50が補正情報を、ステージを制御する制御部に送信する際における、ステージを制御する制御部の処理が圧迫する可能性を低くすることができ、さらに補正情報を送信する際に遅延が生じる可能性を低減できる。
【0065】
また、第1実施形態と本実施形態を組み合わせて補正情報を生成することで、位置合わせ精度と下地層のパターンのずれ量との両方を考慮した補正情報を生成することができる。これにより、露光装置100の露光精度向上と補正情報の通信の際におけるステージを制御するステージ制御部の処理を圧迫する可能性の低減を両立することができる。
【0066】
<第3実施形態>
本実施形態は、前述した情報処理方法を用いて物品を製造することを特徴とする。
【0067】
図9は本実施形態における物品の製造方法のフローチャートである。まず、情報処理部50が情報を取得する取得工程(S210)を行う。ここで、ステップS210の取得工程では、補正情報の情報量が互いに異なる第1領域と第2領域の配置の情報を取得する。なお、ステップS210では、補正情報を生成するために用いる、補正情報を生成する対象のショット領域200の走査方向の情報や、基板15上における対象のショット領域200の位置の情報も取得してもよい。また、補正情報を生成する際に、下地層のパターンのずれに関する情報を用いる場合は、この取得工程で下地層のパターンのずれに関する情報も取得する。
【0068】
次に、情報処理部50は複数の補正情報(補正情報テーブル)のうちから、取得工程で取得した情報に基づいて、ステージの制御に用いる補正情報を生成するための補正情報を選択する選択工程(S220)を行う。このステップS220では、1又は複数の補正情報を選択する。なお、用いる補正情報が決定している場合はこの選択工程は行わなくともよい。
【0069】
次に、情報処理部50は選択工程で選択した補正情報に基づいてステージの制御に用いる補正情報を生成する生成工程(S230)を行う。選択工程を行わなかった場合は、この生成工程では、取得工程で取得した情報に基づいてステージの制御に用いる補正情報を生成する。生成工程では、第1領域と第2領域とで補正情報の情報量が互いに異なるように、具体的には第2領域の補正情報の情報量が第1領域の補正情報の情報量よりも少なくなるように、対象のショット領域200の補正情報を生成する。ここで、選択工程において複数の補正情報を選択した場合は、前述したように補正情報を組み合わせることで用いる補正情報を生成し、上述のように第1領域と第2領域とで補正情報の情報量が互いに異なるように補正情報を生成する。このように情報処理部50は補正情報を生成する。
【0070】
次に、情報処理部50は生成した情報を、ステージを制御する制御部に送信する通信を行う通信工程(S240)を行う。
【0071】
次に、露光に用いられるステージを制御する制御部が通信工程で送信された補正情報に基づいて、ステージを制御しながら基板15を露光する露光工程(S250)を行う。
【0072】
次に、露光工程で露光された基板15から物品を製造する製造工程(S260)を行う。
【0073】
この製造方法で製造する物品は、例えば、半導体IC素子、液晶表示素子、カラーフィルタ、MEMS等である。
【0074】
製造工程は、例えば、パターンが形成された基板(感光材料)の現像、現像された基板に対するエッチング及びレジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングの実施が含まれる。本製造方法によれば、従来よりもステージを制御するステージ制御部の処理が圧迫する可能性を低くした状態で物品を製造することができる。
【0075】
本明細書の開示は、以下の露光装置、露光方法、情報処理装置、情報処理方法、プログラム及び物品の製造方法を含む。
【0076】
〔項目1〕
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光装置であって、
前記基板に転写するためのパターンが形成された原版又は前記基板を保持しつつ駆動可能なステージと、
前記ステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理部と、
前記情報処理部から送信された前記補正情報を用いて前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記ショット領域は、第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域を含み、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量は、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少ない、ことを特徴とする露光装置。
【0077】
〔項目2〕
前記補正情報は走査方向における前記ステージの位置に対して補正量をもつ離散的な情報であり、
前記第2領域における複数の前記補正量をもつ前記走査方向における前記ステージの位置の互いの間隔は、前記第1領域における複数の前記補正量をもつ前記走査方向における前記ステージの位置の互いの間隔より広い、ことを特徴とする項目1に記載の露光装置。
【0078】
〔項目3〕
前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報は補正式である、ことを特徴とする項目1に記載の露光装置。
【0079】
〔項目4〕
前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報は、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正式よりも高次の補正式である、ことを特徴とする項目3に記載の露光装置。
【0080】
〔項目5〕
前記ショット領域のうちの複数の領域に対して同一の前記補正情報を用いる、ことを特徴とする項目1~4のうちいずれか1項に記載の露光装置。
【0081】
〔項目6〕
前記補正情報は、前記ステージが駆動可能な6軸方向それぞれに対して生成される、ことを特徴とする項目1~5のうちいずれか1項に記載の露光装置。
【0082】
〔項目7〕
前記情報処理部は前記ショット領域毎に前記補正情報を送信する、ことを特徴とする項目1~6のうちいずれか1項に記載の露光装置。
【0083】
〔項目8〕
前記第1領域と前記第2領域の配置は、前記原版の情報に基づくことを特徴とする項目1~7のうちいずれか1項に記載の露光装置。
【0084】
〔項目9〕
前記第1領域と前記第2領域の配置は、前記基板に形成されているパターンのずれ量に基づくことを特徴とする項目1~8のうちいずれか1項に記載の露光装置。
【0085】
〔項目10〕
前記情報処理部は、前記第1領域と前記第2領域の配置の情報を、ユーザによる入力、又は、外部の装置からの送信により取得する、ことを特徴とする項目1~9のうちいずれか1項に記載の露光装置。
【0086】
〔項目11〕
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光装置であって、
前記基板に転写するためのパターンが形成された原版又は前記基板を保持しつつ駆動可能なステージと、
前記ショット領域に含まれる領域に対して、第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域とをユーザがそれぞれ設定可能な入力画面を有するユーザインターフェースと、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域である、ことを特徴とする露光装置。
【0087】
〔項目12〕
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光方法であって、
前記ショット領域に含まれる第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域との配置の情報と、露光に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成するために用いる情報と、を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した情報に基づいて、前記補正情報を生成する生成工程と、
前記生成工程で生成した前記補正情報を、前記ステージを制御する制御部に送信する通信工程と、
前記通信工程で送信された前記補正情報に基づいて、前記ステージを制御しながら前記基板を露光する露光工程と、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記生成工程では、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量が、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少なくなるよう、前記補正情報を生成する、
ことを特徴とする露光方法。
【0088】
〔項目13〕
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光処理に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理装置であって、
前記ステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理部を有し、
前記ショット領域は、第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域を含み、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量は、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少ない、ことを特徴とする情報処理装置。
【0089】
〔項目14〕
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光処理に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成する情報処理方法であって、
前記ショット領域に含まれる第1領域と、前記第1領域とは異なる第2領域との配置の情報と、前記補正情報を生成するために用いる情報と、を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した情報に基づいて、前記補正情報を生成する生成工程と、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記生成工程では、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量が、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少なくなるよう、前記補正情報を生成する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【0090】
〔項目15〕
基板上の複数のショット領域それぞれを走査しながら露光する露光処理に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成するプログラムであって、
前記ショット領域に含まれる第1領域と、前記第1領域とは異なる第2領域との配置の情報と、前記補正情報を生成するために用いる情報と、を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した情報に基づいて、前記補正情報を生成する生成工程と、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記生成工程では、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量が、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少なくなるよう、前記補正情報を生成する、
ことを特徴とするプログラム。
【0091】
〔項目16〕
基板上の複数のショット領域のうちの前記ショット領域に含まれる第1領域と前記第1領域とは異なる第2領域との配置の情報と、露光に用いられるステージの位置を補正するための補正情報を生成するために用いる情報と、を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した情報に基づいて、前記補正情報を生成する生成工程と、
前記生成工程で生成した前記補正情報を、前記ステージを制御する制御部に送信する通信工程と、
前記通信工程で送信された前記補正情報に基づいて、前記ステージを制御しながら前記基板を露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された前記基板から物品を製造する製造工程と、を有し、
前記第1領域は、露光の際に前記第2領域より高い精度で前記ステージの位置の補正を行う必要のある領域、又は、形成されているパターンのずれ量が前記第2領域より多い領域であり、
前記生成工程では、前記第2領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量が、前記第1領域を露光する際に適用する前記補正情報の情報量よりも少なくなるよう、前記補正情報を生成する、
ことを特徴とする物品の製造方法。
【0092】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。