(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017251
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】鉄筋籠の建て込み方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/30 20060101AFI20240201BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240201BHJP
E04C 5/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E02D5/30 Z
E04G21/12 105
E04C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119769
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 慎一
(72)【発明者】
【氏名】山口 健一
(72)【発明者】
【氏名】小河 宗之
(72)【発明者】
【氏名】島村 淳
【テーマコード(参考)】
2D041
2E164
【Fターム(参考)】
2D041DA03
2D041EB10
2E164AA01
2E164CA00
(57)【要約】
【課題】空頭等の制限があっても好適に適用できる鉄筋籠の建て込み方法等を提供する。
【解決手段】鉄筋籠1a、1bは、帯筋と、可撓性を有するストランドとを、交差角が可変となるように結合した籠体2を有する伸縮式のものである。この鉄筋籠1a、1bを掘削孔100に建て込む際は、籠体2の軸方向を鉛直方向として掘削孔100内に挿入された鉄筋籠1aの上方に、籠体2の上端部を含む少なくとも一部が収縮した状態の鉄筋籠1bを、籠体2の軸方向を鉛直方向として配置する。その後、上方の鉄筋籠1bのストランドの下端と、下方の鉄筋籠1aのストランドの上端とを連結し、ストランド同士を連結した2つの鉄筋籠1a、1bを、掘削孔100内に吊り降ろす。この際、少なくとも上方の鉄筋籠1bの籠体2が伸展される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯筋と、可撓性を有するストランドとを、交差角が可変となるように結合した籠体を有する伸縮式の鉄筋籠の掘削孔への建て込み方法であって、
籠体の軸方向を鉛直方向として掘削孔内に挿入された鉄筋籠の上方に、籠体の上端部を含む少なくとも一部が収縮した状態の鉄筋籠を、籠体の軸方向を鉛直方向として配置する工程(a)と、
上方の鉄筋籠のストランドの下端と、下方の鉄筋籠のストランドの上端とを連結する工程(b)と、
ストランド同士を連結した2つの鉄筋籠を、掘削孔内に吊り降ろす工程(c)と、
を有し、前記工程(c)において、少なくとも上方の鉄筋籠の籠体が伸展されることを特徴とする鉄筋籠の建て込み方法。
【請求項2】
工程(b)においてストランド同士の連結を行う前に、下方の鉄筋籠の籠体の下端部を含む少なくとも一部が収縮状態とされており、
工程(c)において、下方の鉄筋籠の籠体の下端部を掘削孔内で下降させ、上下の鉄筋籠の籠体を伸展させることを特徴とする請求項1記載の鉄筋籠の建て込み方法。
【請求項3】
工程(b)においてストランド同士の連結を行う前に、下方の鉄筋籠の籠体の全長と、上方の鉄筋籠の籠体の下端部とが伸展状態とされており、上方の鉄筋籠のストランドの下端と、下方の鉄筋籠のストランドの上端が鉛直方向に配置されていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋籠の建て込み方法。
【請求項4】
上方の鉄筋籠の籠体には、当該籠体の周方向に沿った補強リングが、上下に間隔を空けて3段以上に設けられ、上下に隣り合う補強リング同士が連結材で連結され、
工程(b)においてストランド同士の連結を行う前に、最も下に位置する連結材を取り外し、当該連結材で連結されていた補強リングの間の区間の籠体を伸展させることを特徴とする請求項3記載の鉄筋籠の建て込み方法。
【請求項5】
工程(c)において、上方の鉄筋籠の最も下に位置する連結材を取り外し、当該連結材で連結されていた補強リングの間の区間の籠体を伸展させ、ストランド同士を連結した2つの鉄筋籠を吊り降ろす作業を繰り返すことを特徴とする請求項4記載の鉄筋籠の建て込み方法。
【請求項6】
工程(c)において、
上方の鉄筋籠の最も下に位置する連結材を取り外し、当該連結材で連結されていた、地上に位置する補強リングの間の区間の籠体を伸展させる際に、当該区間の下方に位置する掘削孔内の鉄筋籠の回転を拘束し、
当該区間の籠体を伸展させた後、ストランド同士を連結した2つの鉄筋籠を回転させずに鉛直降下させることを特徴とする請求項5記載の鉄筋籠の建て込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋籠の建て込み方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
低空頭の施工条件で場所打ちコンクリート杭や円形深礎基礎を施工する場合の工法として、伸縮式の鉄筋籠を用いるものがある。特許文献1~3には、このような伸縮式の鉄筋籠の例が記載されている。
【0003】
図17は伸縮式の鉄筋籠1について説明する図である。
図17(a)に示すように、伸縮式の鉄筋籠1は、籠体2を構成する軸方向鋼材に、通常の異形鉄筋に代わって可撓性を有するPC鋼より線(以下、ストランドという)21を用いたものである。
【0004】
籠体2では、ストランド21と帯筋22の鉛直面内の交差角が可変となるように、ストランド21と帯筋22とがその交差箇所で結合部材により結合されており、矢印Aに示すように籠体2の上端を捩じることで、
図17(b)、(c)に示すように籠体2が収縮する。一方、
図17(c)の矢印Bで示すように、矢印Aと逆方向に籠体2の上端を回転させると籠体2は伸展する。上記の結合部材については特許文献1~3に記載されており、ここでは説明を省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-048519号公報
【特許文献2】特開2006-132190号公報
【特許文献3】特開2008-214990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
伸縮式の鉄筋籠を用いて長尺の場所打ちコンクリート杭等を地中に構築する際は、鉄筋籠同士を接合しつつ掘削孔内に建て込む必要がある。その方法としては、例えば孔口近傍の地上で籠体の上端をクレーンで吊り上げ、籠体全長を伸展させた後、掘削孔内への鉄筋籠の挿入や鉄筋籠同士の接合を行うことが考えられる。
【0007】
しかしながら、地上で籠体を伸展させる上記の方法は、籠体を地上で完全に伸展できるだけの空頭やクレーンの地上揚程があれば良いが、これらに制限があると、上記の方法で建て込みを行うことが難しい場合もある。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、空頭等の制限があっても好適に適用できる鉄筋籠の建て込み方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための本発明は、帯筋と、可撓性を有するストランドとを、交差角が可変となるように結合した籠体を有する伸縮式の鉄筋籠の掘削孔への建て込み方法であって、籠体の軸方向を鉛直方向として掘削孔内に挿入された鉄筋籠の上方に、籠体の上端部を含む少なくとも一部が収縮した状態の鉄筋籠を、籠体の軸方向を鉛直方向として配置する工程(a)と、上方の鉄筋籠のストランドの下端と、下方の鉄筋籠のストランドの上端とを連結する工程(b)と、ストランド同士を連結した2つの鉄筋籠を、掘削孔内に吊り降ろす工程(c)と、を有し、前記工程(c)において、少なくとも上方の鉄筋籠の籠体が伸展されることを特徴とする鉄筋籠の建て込み方法である。
【0010】
本実施形態では、伸縮式の鉄筋籠を上下に接合して建て込む際に、クレーン等を用いて上方の鉄筋籠を収縮状態で運搬、配置し、掘削孔内に位置する下方の鉄筋籠と掘削孔の直上等で接合する。そのため、低空頭の施工条件であったり、クレーンの地上揚程に制限があったりする場合でも、鉄筋籠を接合して長尺化でき、地下深くまで場所打ちコンクリート杭等の構造物を構築することができる。
【0011】
工程(b)においてストランド同士の連結を行う前に、下方の鉄筋籠の籠体の下端部を含む少なくとも一部が収縮状態とされており、工程(c)において、下方の鉄筋籠の籠体の下端部を掘削孔内で下降させ、上下の鉄筋籠の籠体を伸展させることが望ましい。
この場合、鉄筋籠の伸展作業を一度で行うことができ、作業が短時間ですむ。
【0012】
工程(b)においてストランド同士の連結を行う前に、下方の鉄筋籠の籠体の全長と、上方の鉄筋籠の籠体の下端部とが伸展状態とされており、上方の鉄筋籠のストランドの下端と、下方の鉄筋籠のストランドの上端が鉛直方向に配置されていることも望ましい。
これにより、ストランドの連結作業を容易に行うことができる。
【0013】
上方の鉄筋籠の籠体には、当該籠体の周方向に沿った補強リングが、上下に間隔を空けて3段以上に設けられ、上下に隣り合う補強リング同士が連結材で連結され、工程(b)においてストランド同士の連結を行う前に、最も下に位置する連結材を取り外し、当該連結材で連結されていた補強リングの間の区間の籠体を伸展させることも望ましい。
これにより、上方の鉄筋籠の籠体の下端部を部分的に伸展させることができ、低空頭の施工条件下でも鉄筋籠の連結作業を容易に行うことができる。
【0014】
工程(c)において、上方の鉄筋籠の最も下に位置する連結材を取り外し、当該連結材で連結されていた補強リングの間の区間の籠体を伸展させ、ストランド同士を連結した2つの鉄筋籠を吊り降ろす作業を繰り返すことも望ましい。
上記の手順により、上方の鉄筋籠の籠体の部分的な伸展と、鉄筋籠の掘削孔内への挿入を繰り返すことで、鉄筋籠の建て込みを、低空頭の施工条件下でも行うことができる。
【0015】
工程(c)において、上方の鉄筋籠の最も下に位置する連結材を取り外し、当該連結材で連結されていた、地上に位置する補強リングの間の区間の籠体を伸展させる際に、当該区間の下方に位置する掘削孔内の鉄筋籠の回転を拘束し、当該区間の籠体を伸展させた後、ストランド同士を連結した2つの鉄筋籠を回転させずに鉛直降下させることが望ましい。
これにより、鉄筋籠が掘削孔内で回転して孔壁を削り落とすことがなくなり、上方の鉄筋籠のスペーサを簡易なものとできる等の利点がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、空頭等の制限があっても好適に適用できる鉄筋籠の建て込み方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】補強リング4bとセンタリング機構43を示す図。
【
図5】ストランド21同士の連結について説明する図。
【
図10】鉄筋籠1c、1dの建て込み方法を示す図。
【
図11】鉄筋籠1c、1dの建て込み方法を示す図。
【
図13】鉄筋籠1d、1eの建て込み方法を示す図。
【
図14】鉄筋籠1d、1eの建て込み方法を示す図。
【
図15】鉄筋籠1d、1eの建て込み方法を示す図。
【
図16】鉄筋籠1d、1eの建て込み方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
(1.鉄筋籠1a、1b)
図1(a)、(b)は本実施形態で用いる鉄筋籠1a、1bを示す図であり、それぞれ、収縮状態の籠体2の内部と外部を見たものである。鉄筋籠1a、1bは、前記の鉄筋籠1と同様、可撓性を有する軸方向鋼材であるストランド21と、帯筋22とを、交差角が可変となるように結合した籠体2を有し、且つ、籠体2の内外のそれぞれに、補強リング4(4a、4b)が設けられる。
【0020】
補強リング4(4a、4b)は、籠体2の軸方向の両端部および両端部の間の中間部において、籠体2の軸方向に間隔を空けて複数段設けられる。上下に隣り合う補強リング4(4a、4b)は、鉄筋籠1a、1bの籠体2を
図17(a)、(c)の矢印A、Bのように捩じると、籠体2の伸縮に合わせて相対回転する。
【0021】
図2(a)は、籠体2の内側に配置される補強リング4bを示す図である。補強リング4bは、鉛直部分41と水平部分42とでL字状に形成された断面を有するリング状の鋼材である。補強リング4bは、例えばアングル材をリング状に加工して形成できる。
【0022】
籠体2の内側の補強リング4bは、鉛直部分41を外側(籠体2側)として籠体2の周方向に沿って配置され、当該鉛直部分41には孔411が形成される。孔411は、補強リング4bとストランド21とを鉛直面内で回転可能に結合する回転結合部材(不図示)を取り付けるために用いられる。鉛直部分41には、ストランド21の本数に応じた数の孔411が周方向に等間隔で設けられる。
【0023】
回転結合部材の一例については特許文献3に記載されているが、簡単に説明すると、ストランド21が挿通されるスリーブの外面に、スタッドボルトなどの軸部材を設けたものであり、当該軸部材を上記の孔411に通し、その先端にナットを締め付けることで、回転結合部材を補強リング4bに取り付けることができる。
【0024】
なお、籠体2の外側の補強リング4aは、籠体2の内側の補強リング4bの鉛直部分41と水平部分42の内外を入れ替えた構成を有し、鉛直部分が内側(籠体2側)に配置される。その他の構成は補強リング4bと略同様である。
【0025】
図1(a)の鉄筋籠1aは、鉄筋籠1bの下方に接合される鉄筋籠であり、2段目(上から数えた場合の段数をいう。以下同様)の補強リング4a、4bが、籠体2の上端寄りの同じ高さで配置される。籠体2のストランド21の上端は、最上段の帯筋22から一定長さ上方に突出させておく。
【0026】
また、籠体2の上から出る程度の長さを有する吊材L1が、最下段の補強リング4bに取り付けられる。吊材L1には例えばワイヤやチェーンが用いられ、コラムロック(登録商標)などの吊り治具hを介して補強リング4bへの取り付けが行われる。
【0027】
最上段の補強リング4bには吊材L1のセンタリング機構43が設けられており、これにより、吊材L1の平面位置が、鉄筋籠1aの平面中央部に固定される。
【0028】
図2(b)は、センタリング機構43の一例を示す図である。センタリング機構43は、例えば補強リング4bから内側に延ばしたアーム431によって鉄筋籠1aの平面中央部に配置した筒体432を支持するものである。吊材L1をこの筒体432に通すことで、吊材L1の平面位置を鉄筋籠1aの平面中央部に固定できる。
【0029】
図1(b)の鉄筋籠1bは、鉄筋籠1aの上方に接合する鉄筋籠であり、2段目の補強リング4aと3段目の補強リング4bが、籠体2の下端寄りの同じ高さで配置される。籠体2のストランド21の下端は、最下段の帯筋22から一定長さ下方に突出させておく。
【0030】
また、籠体2の上下から出る程度の長さを有するワイヤなどの吊材L2が、籠体2の内部に配置される。最上段の補強リング4bには前記と同様のセンタリング機構43が設けられており、これにより、吊材L2の平面位置が鉄筋籠1bの平面中央部に固定される。
【0031】
(2.鉄筋籠1a、1bの建て込み方法)
鉄筋籠1a、1bは、籠体2を収縮した状態で工場等において予め製作される。本実施形態では、工場等で製作した鉄筋籠1a、1bをトラック等の陸送手段で施工現場あるいはその近辺の荷卸し地点まで搬送し、その後、鉄筋籠1a、1bをクレーン等で吊った状態で、場所打ちコンクリート杭を構築する掘削孔まで運搬する。
【0032】
本実施形態では、まず、鉄筋籠1aを、
図3(a)に示すように先に掘削孔100内に建て込む。鉄筋籠1aは、吊材L1の上端をクレーンに取り付け、籠体2が収縮した状態でクレーンから吊り支持され、2段目の補強リング4a、4bが孔口レベルに達するまで掘削孔100内に挿入される。
【0033】
鉄筋籠1aは、籠体2の軸方向を鉛直方向とし、2段目と最下段の補強リング4aをレバーホイスト等の固縛材Laによって固縛した状態で、クレーンによる運搬および建て込みが行われる。吊材L1の平面位置はセンタリング機構43により鉄筋籠1aの平面中央部に固定されており、これにより籠体2の転倒が防止される。
【0034】
次に、
図3(b)に示すように、最上段の補強リング4a、4bを人力で引き上げ、2段目の補強リング4a、4bの上にかんざし200として用いる鋼材を挿通して孔口に架け渡し、2段目の補強リング4a、4bとかんざし200をボルト等の接合手段(不図示)で接合する。
【0035】
ここで、2段目と最下段の補強リング4aは固縛材Laにより固縛されているため、最上段の補強リング4a、4bを持ち上げることで、最上段と2段目の補強リング4aの間の区間の籠体2(籠体2の上端部)のみが上方に若干伸展し、2段目と最下段の補強リング4aの間の区間の籠体2(籠体2の下端部を含む一部)は収縮状態のままとなる。
【0036】
その後、
図3(c)に示すように、吊材L1の上端をクレーンから取り外してセンタリング機構43を撤去し、鉄筋籠1aの全重量をかんざし200から支持させる。
【0037】
そして、
図4(a)に示すように、鉄筋籠1bを、最上段の補強リング4aに取り付けた吊材L3によってクレーンの主巻から吊り下げて運搬し、鉄筋籠1aの上方に配置して、吊材L2の下端を吊材L1の上端に取り付ける。
【0038】
鉄筋籠1bは、籠体2の軸方向を鉛直方向とし、最上段と2段目の補強リング4aをレバーホイスト等の固縛材Laによって固縛した状態で運搬され、両補強リング4aの間の区間の籠体2(籠体2の上端部を含む一部)は収縮状態となっている。一方、最下段の補強リング4aは固縛材Laで固縛されていないので、2段目の補強リング4a以下の区間の籠体2(籠体2の下端部)は、自重によって下方に若干伸展している。
【0039】
次に、鉄筋籠1bを吊り降ろし、鉄筋籠1a、1b同士を接合する。本実施形態では、
図5(a)に示すように、鉄筋籠1a、1bのストランド21の先端にマンション(雄ねじ)221が形成されており、両ストランド21のマンション211同士を連結することで、鉄筋籠1a、1b同士が接合される。ストランド21(マンション211)の連結には、雌ねじを有するカプラ212が用いられる。カプラ212は、予め鉄筋籠1bのストランド21の下端のマンション211に螺合して取り付けられている。
【0040】
両鉄筋籠1a、1bのストランド21の先端のマンション211同士を突き合わせ、専用のマンション把持治具(不図示)でマンション211同士を引き寄せて軸線を合わせ、マンション211の捩じれを矯正し、カプラ212を回転させて前進させることで、
図5(b)に示すように、鉄筋籠1aのストランド21の上端のマンション211をカプラ212の内部にねじ込む。適切な長さだけマンション211をカプラ212にねじ込んだ後、止めネジ(不図示)等の固定手段を用い、両マンション211をカプラ212に対して固定する。これにより、
図4(b)に示すように鉄筋籠1a、1b同士が接合される。
【0041】
この後、吊材L2の上端をクレーンの補巻に取り付け、
図4(c)に示すように、吊材L2を巻き上げるとともにかんざし200を撤去して鉄筋籠1aを下端部から吊り上げ、鉄筋籠1aの固縛材Laを取り外して籠体2の固縛を開放する。なお吊材L2の平面位置は鉄筋籠1bのセンタリング機構43により鉄筋籠1bの平面中央部に固定されており、これにより鉄筋籠1a、1bの籠体2の転倒が防止される。
【0042】
次に、鉄筋籠1bの固縛材Laを取り外して籠体2の固縛を開放し、吊材L2、L3を同時に巻き下げ、
図6(a)に示すように、鉄筋籠1a、1bを掘削孔100内に吊り降ろす。本実施形態では、鉄筋籠1a、1bを掘削孔100の所定の深さまで吊り降ろした時点で、かんざし200を孔口に架け渡し、鉄筋籠1bの最上段の補強リング4bとかんざし200とを吊り鉄筋201で連結する。
【0043】
その後、吊材L3を鉄筋籠1bの最上段の補強リング4aから取り外し、吊材L2を巻き下げて鉄筋籠1aの下端部を下降させ、鉄筋籠1a、1bの籠体2の伸展を開始する。これらの籠体2は上から下へと順に伸展を開始し、回転しながら降下してゆく。
図6(b)に示すように、鉄筋籠1a、1bの籠体2全長が伸展するまで鉄筋籠1aの下端部を下降させると、これらの鉄筋籠1a、1bがかんざし200から支持される。
【0044】
図6(c)に示すように吊材L1、L2を回収すると、鉄筋籠1a、1bの建て込みが完了する。この後、鉄筋籠1bのセンタリング機構43を取り外し、掘削孔100内にコンクリートを打設することで、場所打ちコンクリート杭が構築される。なお、鉄筋籠1a、1bを用いて構築される構造物はこれに限らず、例えば円形深礎基礎などであってもよい。センタリング機構43を取り外すのはコンクリートの打設を円滑に行うためであり、取り外したセンタリング機構43は転用して利用することができる。
【0045】
また、必要に応じて、鉄筋籠1bの最上段の補強リング4aに吊材L3を取り付け、吊材L3をクレーンから巻き上げて緊張させた後、吊り鉄筋201をかんざし200から取り外し、吊材L3を巻き下げることで、鉄筋籠1a、1bを再度吊り降ろして建て込み高さの調節を行うことも可能である。高さを調節した後は、再び吊り鉄筋201をかんざし200に結合し、吊材L3を取り外す。
【0046】
このように、本実施形態では、伸縮式の鉄筋籠1a、1bを上下に接合して建て込む際に、クレーンを用いて上方の鉄筋籠1bを収縮状態で運搬、配置し、掘削孔100内に位置する下方の鉄筋籠1aと掘削孔100の直上で接合する。そのため、低空頭の施工条件であったり、クレーンの地上揚程に制限があったりする場合でも、鉄筋籠1a、1bを接合して長尺化でき、地下深くまで場所打ちコンクリート杭等の構造物を構築することができる。
【0047】
また本実施形態では、下方の鉄筋籠1aも収縮状態で運搬、配置されるので、空頭等の制限がある場合に有効であり、且つ、鉄筋籠1a、1bの籠体2の伸展作業(
図6(b)参照)を1回の吊材L2の巻き下げにより一度で行うことができ、極めて短時間ですむ。
【0048】
なお、鉄筋籠1a、1bには掘削孔100の孔壁との間隔を保持するためのスペーサ(不図示)が設けられるが、鉄筋籠1a、1bは、上記の伸展時に掘削孔100内で回転する。そのため、鉄筋籠1a、1bのスペーサが孔壁の土砂を削り落さないよう、スペーサには回転方向のスキッドが必要になる。
【0049】
スキッドはスペーサの傾斜形状のことであり、回転時にスペーサが孔壁の土砂を削り落とすのを防止するために、特開2006-274726号公報の
図4などで示されるように、上下方向だけでなく水平方向にも丸みを持たせたり、板材を折曲げたりしてスキッドを回転方向(水平方向)にも形成する必要がある。
【0050】
また、鉄筋籠1a、1bの工場での組立時には、ストランド21の先端の突出長を確保する目的から、鉄筋籠1aの籠体2の上端付近の帯筋22は、ストランド21の上端から所定長(例えば、数10cm程度)下方にずらしておき、鉄筋籠1bの籠体2の下端付近の帯筋22も、ストランド21の下端から所定長上方にずらしておく。これらの帯筋22は、ストランド21同士の連結後、適切な位置に戻される。あるいは、これらの帯筋22を、ストランド21同士の連結後に取り付ける半割の帯筋22としてもよい。また、ストランド21同士の連結時にストランド21の先端の向きを調整するため、鉄筋籠1aの最上段の補強リング4a、4bや、鉄筋籠1bの最下段の補強リング4a、4bを分解、撤去してもよい。以上は後述の例においても同様である。
【0051】
以下、本発明の別の例を、第2、第3の実施形態として説明する。各実施形態は、第1の実施形態と異なる点について主に説明し、同様の点については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また第1の実施形態も含め、各実施形態で説明する構成は必要に応じて組み合わせることができる。
【0052】
[第2の実施形態]
(1.鉄筋籠1c、1d)
図7(a)、(b)は、第2の実施形態で用いる鉄筋籠1c、1dを示す図であり、それぞれ、収縮状態の籠体2の内部と外部を見たものである。
【0053】
図7(a)の鉄筋籠1cは、第1の実施形態で用いた鉄筋籠1aに対し、外側の補強リング4aが籠体2の両端部で上下2段に設けられる点で主に異なる。
【0054】
一方、
図7(b)の鉄筋籠1dは、補強リング4a、4bを、籠体2の軸方向の両端部および両端部の間の中間部において、籠体2の軸方向に間隔を空けて3段以上(図の例では4段)に設け、上下に隣り合う補強リング4a同士を連結材5によって連結したものである。
【0055】
(2.鉄筋籠1c、1dの建て込み方法)
鉄筋籠1c、1dも、籠体2を収縮した状態で工場等において予め製作され、荷卸し地点まで搬送して荷卸しを行った後、クレーン等で吊った状態で、場所打ちコンクリート杭を構築する掘削孔まで運搬する。
【0056】
本実施形態では、まず、鉄筋籠1cを、
図8(a)に示すように先に掘削孔100内に建て込む。鉄筋籠1cは、吊材L1の上端をクレーンに取り付け、籠体2が収縮した状態でクレーンから吊り支持され、最上段の補強リング4が孔口レベルに達するまで掘削孔100内に挿入される。
【0057】
鉄筋籠1cは、籠体2の軸方向を鉛直方向とし、最上段と最下段の補強リング4aをレバーホイスト等の固縛材Laで固縛した状態であり、この固縛材Laは、鉄筋籠1cの吊り降ろしを行った後、取り外す。また第1の実施形態と同様、吊材L1の平面位置はセンタリング機構43により鉄筋籠1cの平面中央部に固定されており、鉄筋籠1cが転倒することはない。
【0058】
次に、
図8(b)に示すように最上段の補強リング4a、4bを人力で引き上げ、最上段の補強リング4a、4bの下にかんざし200として用いる鋼材を挿通し、孔口に架け渡す。そして、当該補強リング4a、4bとかんざし200をボルト等の接合手段(不図示)で接合する。
【0059】
その後、
図8(c)に示すように吊材L1を巻き下げ、鉄筋籠1cの籠体2を掘削孔100内で下方に伸展させる。籠体2は回転しながら伸展し、籠体2の全長が伸展すると、ストランド21の上端は鉛直方向に沿って配置され、かんざし200から鉄筋籠1cが支持される。その後、吊材L1を回収する。なお、ここでセンタリング機構43を撤去してもよい。
【0060】
本実施形態では、この鉄筋籠1cの上に、鉄筋籠1dを接合する。この際、
図9(a)に示すように、掘削孔100の孔口で事前に門型のフレーム8を組み立て、籠体2の軸方向を鉛直方向とし、且つ籠体2の全長が収縮した状態の鉄筋籠1dをクレーンで吊り下げて運搬し、鉄筋籠1cの上方に配置する。そして、フレーム8の最上部の梁から垂下したレバーホイスト等の吊材L3を鉄筋籠1dの最上段の補強リング4aに取り付け、これにより鉄筋籠1dを吊り支持する。
【0061】
その後、鉄筋籠1dの3段目と最下段の補強リング4aを連結していた連結材5(最も下に位置する連結材)を取り外し、
図9(b)に示すように、これらの補強リング4a間の区間の籠体2を伸展させる。この時、鉄筋籠1dのストランド21の下端は鉛直方向に配置される。
【0062】
籠体2の伸展方法としては、例えば掘削孔100の孔口に蓋(不図示)を設け、吊材L3を巻き下げて鉄筋籠1dを蓋の上に仮置きすると、上記の連結材5が荷重を負担しない状態となるので、当該連結材5を取り外した後、吊材L3によって鉄筋籠1dを吊り上げるとよい。あるいは、最上段の補強リング4aからレバーホイスト等の固縛材(不図示)で最下段の補強リング4aを固縛した状態で鉄筋籠1dを運搬し、
図9(a)に示すように配置した後、固縛材を巻き上げることで上記の連結材5が荷重を負担しない状態となるので、当該連結材5を取り外した後、固縛材を緩めることで、3段目と最下段の補強リング4aの間の区間の籠体2を下方に伸展させることもできる。
【0063】
この後、
図9(c)に示すように鉄筋籠1dを吊り降ろし、
図5の例と同様、鉄筋籠1dのストランド21の下端のマンション211と、鉄筋籠1cのストランド21の上端のマンション211とをカプラ212によって連結する。これにより、鉄筋籠1c、1d同士が接合される。本実施形態では、これらのストランド21の先端が鉛直方向となっているので、マンション211同士の連結作業は第1の実施形態と比較して容易となり、特殊な工具も必要としない。
【0064】
鉄筋籠1c、1d同士の接合を行った後、吊材L3を若干巻上げてかんざし200を撤去する。そして、
図10(a)に示すように吊材L3を巻き下げ、鉄筋籠1dの
図9(b)で伸展させた区間の籠体2を掘削孔100内に挿入する。
【0065】
また、上記区間の上側に位置する、鉄筋籠1dの3段目の補強リング4aに、フレーム8の最上部の梁から垂下したレバーホイスト等の吊材L4を取り付け、3段目の補強リング4aを吊材L4によって吊り支持させる。この状態で、地上に位置する2段目と3段目の補強リング4aの間の連結材5(この時点で、最も下に位置する連結材5)を取り外し、
図10(b)に示すように吊材L3を巻き上げると、当該連結材5を取り外した2段目と3段目の補強リング4aの間の区間の籠体2が回転しながら上方に伸展する。
【0066】
ここで、鉄筋籠1dの3段目の補強リング4aを平面において回転しないように固定しておくと、鉄筋籠1dの上記区間の下方に位置する、掘削孔100内の鉄筋籠1c、1dの回転が拘束され、孔壁を削り落とすことはない。3段目の補強リング4aの固定は、例えば掘削孔100の孔口に架け渡したかんざし(不図示)に補強リング4aをボルト等で仮接合することで行うことができるが、補強リング4aの固定手段はこれに限らない。またかんざし等の固定手段は、
図10(b)で鉄筋籠1dの上記区間の籠体2を完全に伸展させた後、撤去する。
【0067】
鉄筋籠1dの上記区間の籠体2の伸展が完了したら、吊材L4を3段目の補強リング4aから取り外し、
図10(c)に示すように吊材L3を巻き下げて、鉄筋籠1c、1dを回転させずに鉛直降下させ、上記伸展させた区間の籠体2を掘削孔100内に挿入する。以下、
図10(a)~(c)の作業を繰り返すことで、鉄筋籠1dの籠体2全長が伸展する。さらに吊材L3を巻き下げると、籠体2全長が伸展した状態の鉄筋籠1c、1dが、
図11に示すように掘削孔100内に吊り降ろされる。
【0068】
本実施形態では、鉄筋籠1c、1dを吊り降ろす途中で鉄筋籠1dの最上段の補強リング4bに吊り鉄筋201を取り付け、鉄筋籠1c、1dを掘削孔100の所定の深さまで吊り降ろした時点で、かんざし200を孔口に設置し、かんざし200と吊り鉄筋201とを結合する。この後、吊材L3を鉄筋籠1dの最上段の補強リング4aから取り外し、撤去することで、建込みが完了する。第1の実施形態と同様の方法で、建て込み高さの調整を行うことも可能である。
【0069】
このように、本実施形態では、鉄筋籠1cの籠体2全長を掘削孔100内で先行して伸展した後、鉄筋籠1c、1d同士を接合し、掘削孔100の直上で、収縮状態の鉄筋籠1dを区間ごとに伸展しながら建て込む。これによっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
また、上方の鉄筋籠1dだけでなく下方の鉄筋籠1cも収縮状態で運搬、配置されるので、空頭等の制限がある場合に有効であり、且つ、鉄筋籠1c、1dのストランド21同士の連結前に、これらのストランド21の先端が鉛直に立った状態となっているので、ストランド21の連結作業は容易となる。そのため、ストランド21の連結部分を同じ高さに揃えず千鳥配置とする構造にも容易に対応できる。
【0071】
また上方の鉄筋籠1dに関しては、ストランド21の連結前に籠体2を部分的に伸展させることができ(
図9(b)等参照)、低空頭の施工条件下でも鉄筋籠1c、1dの連結作業を容易に行うことができる。ただし、第1の実施形態に比べれば若干空頭が必要であり、鉄筋籠1dの長さにより、施工可能な空頭が決定される。そのため、鉄筋籠1dを鉄筋籠1cより短くすることも望ましい。
【0072】
また鉄筋籠1c、1dの建て込み時には、上方の鉄筋籠1dの籠体2の部分的な伸展と、伸展させた区間の籠体2の掘削孔100内への挿入を繰り返すことで、鉄筋籠1c、1dの建て込みを、低空頭の施工条件下でも行うことができる。また本実施形態では、掘削孔100の孔口のフレーム8を利用して鉄筋籠1c、1dの吊り降ろしを行っており、これにより、建て込み作業を容易に行うことができる。またフレーム8を補助的に用いることで、クレーンの吊り能力が比較的低くて済む。
【0073】
また本実施形態では、掘削孔100内で鉄筋籠1dが回転することはない。そのため、鉄筋籠1dのスペーサについては、前記した回転方向のスキッドが不要であり、簡易且つ安価なもので済む。また籠体2を区間ごとに伸展しながらスペーサを地上で取り付けることも可能である。なお、鉄筋籠1cについては、
図8(c)に示す工程において掘削孔100内で回転しながら伸展するので、スペーサに回転方向のスキッドが必要である。
【0074】
なお、第1、第2の実施形態では、上下2つの鉄筋籠を接合する例を説明したが、上下3つ以上に鉄筋籠を接合する場合も、同様の方法を実施可能である。
【0075】
例えば第1の実施形態では、
図4(b)で鉄筋籠1a、1bを接合した後、上下の鉄筋籠1a、1bの全重量を吊材L1、L2によって吊り支持し、鉄筋籠1bの2段目の補強リング4aと鉄筋籠1aの最下段の補強リング4aを固縛材Laで固縛し直した後、鉄筋籠1bの2段目の補強リング4a、4bをかんざし200によって孔口レベルで支持し、その鉄筋籠1bの上に新たな鉄筋籠1bを接合すればよい。一方、第2の実施形態においては、
図11に示す工程において鉄筋籠1dの最上段の補強リング4a、4bをかんざし200によって孔口レベルで支持し、その上に新たな鉄筋籠1dを接合すればよい。
【0076】
また本実施形態では、施工途中でフレーム8を組み立ててレバーホイスト等の吊材L3を垂下させたが、最初からフレーム8を組み立てておき、フレーム8からレバーホイスト等の吊材を垂下させ、前記の吊材L1に連結し、
図8(a)~(c)の工程において鉄筋籠1cの吊り支持を行ってもよい。また連結材5は籠体2の外側の補強リング4a同士を連結しているが、籠体2の内側の補強リング4b同士を連結するものであってもよい。ただしこの場合、連結材5の取り外しに多少の手間が掛かる。
【0077】
[第3の実施形態]
(1.鉄筋籠1e)
図12は、第3の実施形態で用いる鉄筋籠1eを示す図であり、収縮状態の籠体2の内部を見たものである。本実施形態では、この鉄筋籠1eと、前記した鉄筋籠1d(
図7(b)参照)とを接合して掘削孔100内に建て込む。
【0078】
鉄筋籠1eは、第1の実施形態で用いた鉄筋籠1aに対し、籠体2から上方に突出する吊り鉄筋44が最上段の補強リング4bに取り付けられ、当該吊り鉄筋44の上端に、仮受用の鋼製リング(以下、仮受リングという)6が取り付けられる点で異なる。
【0079】
(2.鉄筋籠1e、1dの建て込み方法)
鉄筋籠1e、1dは、籠体2を収縮した状態で工場等において予め製作され、荷卸し地点まで搬送して荷卸しを行った後、クレーン等で吊った状態で、場所打ちコンクリート杭を構築する掘削孔まで運搬する。
【0080】
本実施形態では、まず、鉄筋籠1eを、
図13(a)に示すように先に掘削孔100内に建て込む。鉄筋籠1eは、吊材L1の上端をクレーンに取り付け、籠体2の軸方向を鉛直方向とし、且つ籠体2が収縮した状態でクレーンから吊り支持され、仮受リング6が孔口の若干上に位置するまで掘削孔100内に挿入される。
【0081】
そして、かんざし200を仮受リング6の下に挿通して掘削孔100の孔口に架け渡し、かんざし200と仮受リング6をボルト等の接合手段(不図示)で接合する。第2の実施形態と同様、鉄筋籠1eは、最上段と最下段の補強リング4aをレバーホイスト等の固縛材Laで固縛した状態であり、固縛材Laは、鉄筋籠1eの吊り降ろしを行った後、取り外す。
【0082】
その後、
図13(b)に示すように吊材L1を巻き下げ、鉄筋籠1eの籠体2を掘削孔100内で下方に伸展させる。籠体2は回転しながら伸展し、籠体2の全長が伸展すると、第2の実施形態と同様、ストランド21の上端は鉛直方向に沿って配置される。仮受リング6と鉄筋籠1eの最上段の補強リング4a、4bの間隔は、この時に、ストランド21の上端のマンション211が仮受リング6やかんざし200に干渉しない程度の間隔とする。
【0083】
その後、吊材L1を仮受リング6に付け替え、かんざし200を取り外して
図13(c)に示すように吊材L1により鉄筋籠1eを吊り上げ、かんざし200を最上段の補強リング4a、4bの下に挿入し直す。その後、吊材L1は回収し、仮受リング6やセンタリング機構43、吊り鉄筋44なども撤去する。
【0084】
本実施形態では、この鉄筋籠1eの上に、鉄筋籠1dを接合する。この際も、
図14(a)に示すように、掘削孔100の孔口で事前に門型のフレーム8を組み立て、籠体2の軸方向を鉛直方向とし、且つ籠体2の全長が収縮した状態の鉄筋籠1dをクレーンで吊り上げて運搬し、鉄筋籠1eの上方に配置する。そして、フレーム8の最上部の梁から垂下したレバーホイスト等の吊材L3を鉄筋籠1dの最上段の補強リング4aに取り付け、これにより鉄筋籠1dを吊り支持する。
【0085】
その後、
図14(b)に示すように、第2の実施形態と同様の方法で、3段目と最下段の補強リング4aの間の連結材5(最も下に位置する連結材5)を取り外し、これらの補強リング4aの間の区間の籠体2を伸展させる。これにより、鉄筋籠1dのストランド21の下端が鉛直方向に配置される。
【0086】
この後、鉄筋籠1dを吊り降ろして、第2の実施形態と同様、鉄筋籠1d、1e同士を接合し、その後、
図14(c)に示すように吊材L3を巻き上げる。鉄筋籠1dの上端がフレーム8の最上部の梁に近づいたら、当該梁と鉄筋籠1dの最上段の補強リング4aとを吊り鉄筋44で連結する。本実施形態でも、鉄筋籠1d、1e同士の接合は、鉄筋籠1dのストランド21の下端のマンション211と、鉄筋籠1eのストランド21の上端のマンション211とをカプラ212によって連結することで行われ、鉛直に立ったマンション211同士を連結するので作業が容易であり、特殊な工具も必要としない。
【0087】
その後、
図15(a)に示すように、吊材L3を鉄筋籠1eの最上段の補強リング4bに付け替える。またフレーム8の最上部の梁から垂下させたレバーホイスト等の吊材L4を、鉄筋籠1dの3段目の補強リング4aに取り付ける。
【0088】
次に、
図15(b)に示すように、吊材L3により鉄筋籠1eを吊り支持してかんざし200を撤去し、鉄筋籠1dの3段目の補強リング4を吊材L4によって吊り支持した状態で、鉄筋籠1dの2段目と3段目の補強リング4aの間の連結材5(この時点で、最も下に位置する連結材5)を取り外す。
【0089】
その後、
図15(c)に示すように、吊材L4を緩めると同時に吊材L3を巻き下げると、鉄筋籠1dの上記連結材5を取り外した2段目と3段目の補強リング4aの間の区間の籠体2が回転しつつ下方に伸展し、鉄筋籠1d、1eが掘削孔100内に吊り降ろされる。この際、吊材L4を取り付けている鉄筋籠1dの3段目の補強リング4aより下の部分は、回転しながら掘削孔100内に吊り降ろされる。鉄筋籠1d、1eの吊り降ろしを行った後、吊材L4を鉄筋籠1dの3段目の補強リング4aから取り外す。
【0090】
その後、
図16(a)に示すように、上記伸展させた区間の上側に位置する、鉄筋籠1dの2段目の補強リング4aに吊材L4を取り付け、当該補強リング4aを吊材L4によって吊り支持した状態で、最上段と2段目の補強リング4aの間の連結材5を取り外す。また、吊材L3を鉄筋籠1dの3段目の補強リング4bに付け替える。
【0091】
そして、
図16(b)に示すように、吊材L4を緩めると同時に吊材L3を巻き下げると、
図15(c)と同様、鉄筋籠1dの上記連結材5を取り外した最上段と2段目の補強リング4aの間の区間の籠体2が回転しつつ伸展し、鉄筋籠1d、1eが掘削孔100内に吊り降ろされる。この際、吊材L4を取り付けている鉄筋籠1dの2段目の補強リング4aより下の部分は、回転しながら掘削孔100内に吊り降ろされる。鉄筋籠1d、1eの吊り降ろしを行った後、吊材L4を鉄筋籠1dの2段目の補強リング4aから取り外す。
【0092】
本実施形態では、以上の工程により鉄筋籠1dの籠体2全長が伸展する。鉄筋籠1dの補強リング4aの段数が多い場合は、
図16(a)、(b)の工程を、補強リング4aの段数に応じて繰り返せばよい。こうして鉄筋籠1dの籠体2全長を伸展させた後、吊材L3を鉄筋籠1dの最上段の補強リング4aに付け替え、鉄筋籠1d、1eを吊材L3によって吊り支持した状態で、吊り鉄筋44を撤去する。
【0093】
その後、吊材L3を巻き下げ、鉄筋籠1d、1eを
図16(c)に示すように、掘削孔100内に吊り降ろす。本実施形態では、鉄筋籠1d、1eを吊り降ろす途中で鉄筋籠1dの最上段の補強リング4bに吊り鉄筋44を取り付け、鉄筋籠1d、1eを掘削孔100の所定の深さまで吊り降ろした時点で、かんざし200を孔口に設置し、かんざし200と吊り鉄筋44とを結合する。この後、吊材L3を取り外し、撤去することで、建込みが完了する。
【0094】
このように、本実施形態でも、鉄筋籠1eの籠体2全長を掘削孔100内で先行して伸展した後、鉄筋籠1e、1dを接合し、掘削孔100の直上で、収縮状態の鉄筋籠1dの籠体2を区間ごとに伸展し、鉄筋籠1d、1eの建て込みを行う。これにより、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0095】
また本実施形態では、
図16(b)等に示す工程で、鉄筋籠1dの籠体2の伸展と掘削孔100内への挿入を同時に行うので、これらを別々に行う第2の実施形態よりも施工時間は短縮できる。ただし、鉄筋籠1dの籠体2は回転しながら掘削孔100内に挿入されるので、スペーサに前記したスキッドが必要である。
【0096】
なお、本実施形態では
図13(c)で一旦鉄筋籠1eを吊り上げているが、これは、ストランド21の連結後に、鉄筋籠1eの最上段の帯筋22と鉄筋籠1dの最下段の帯筋22を適切な位置に戻す第1の実施形態で説明した作業を、地上で行うためである。
図13(b)のように籠体2の上端が掘削孔100内に位置する状態で鉄筋籠1e、1dの接合を行うことも可能であるが、上記の作業を掘削孔100内で行うのは若干手間が掛かる。
【0097】
また、第2、第3の実施形態ではフレーム8から鉄筋籠を吊り支持しているが、フレーム8の代わりにクレーンなど別の吊り装置で鉄筋籠を吊り支持することも可能である。また、レバーホイスト等の吊材L4は少なくとも2台必要であるが、吊っている補強リング4aの水平を保持できるように、好ましくは3台以上がよい。さらに、第3の実施形態においては、吊材L4を緩めると同時に吊材L3を巻き下げる際、籠体2が回転するため、諸元によっては吊材L4と籠体2が接触する。そのような場合には、吊材L4を4台以上とし、同じ補強リング4aでの周方向の取り付け位置を2台ずつ、盛り替えて、接触を回避するのがよい。また、吊り鉄筋44も少なくとも2本必要であるが、吊っている補強リング4aの水平を保持できるように、好ましくは3本以上で、ネジ節鉄筋が好適である。
【0098】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0099】
1、1a、1b、1c、1d、1e:鉄筋籠
2:籠体
4、4a、4b:補強リング
5:連結材
8:フレーム
21:ストランド
22:帯筋
100:掘削孔