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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172512
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20241205BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20241205BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16H57/04 J
H02K7/116
H02K7/08 Z
F16H57/04 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090278
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】里田 大志
(72)【発明者】
【氏名】松崎 良亮
【テーマコード(参考)】
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AB02
3J063AC01
3J063XD17
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD52
3J063XD56
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE15
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE31
5H607EE34
5H607FF01
5H607GG01
5H607GG08
5H607GG25
5H607JJ06
5H607JJ10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ベアリング保持部内への流体の供給が不十分になることを抑制する駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置は、中心軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、ロータに接続されたギヤ機構と、ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングと、ベアリングを保持するベアリング保持部を有し、モータおよびギヤ機構を内部に収容するハウジングと、軸方向に延びる第1流路部と、第1流路部に繋がり、軸方向と交差する第1方向に延びる第2流路部と、カバー本体部を有するカバー部材と、を備える。第1流路部は、軸方向に見て、ベアリング保持部の外側に位置する。第2流路部は、軸方向一方側に開口する開口流路部を有し、かつ、軸方向に見てベアリング保持部の外側からベアリング保持部の内部に繋がっている。カバー本体部の少なくとも一部は、開口流路部の内面のうち軸方向他方側に位置する部分と隙間を介して軸方向に対向している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、
前記ロータに接続されたギヤ機構と、
前記ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングと、
前記ベアリングを保持するベアリング保持部を有し、前記モータおよび前記ギヤ機構を内部に収容するハウジングと、
軸方向に延びる第1流路部と、
前記第1流路部に繋がり、軸方向と交差する第1方向に延びる第2流路部と、
カバー本体部を有するカバー部材と、
を備え、
前記第1流路部は、軸方向に見て、前記ベアリング保持部の外側に位置し、
前記第2流路部は、軸方向一方側に開口する開口流路部を有し、かつ、軸方向に見て前記ベアリング保持部の外側から前記ベアリング保持部の内部に繋がり、
前記カバー本体部の少なくとも一部は、前記開口流路部の内面のうち軸方向他方側に位置する部分と隙間を介して軸方向に対向している、駆動装置。
【請求項2】
前記開口流路部は、前記第1方向に延びる溝によって構成されている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記ハウジングに対して保持された被保持部を有する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記被保持部には、前記第1流路部と前記第2流路部との少なくとも一方の一部が設けられている、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1流路部は、軸方向に延びる延伸部を有し、
前記被保持部は、前記被保持部を軸方向に貫通する貫通部を有し、
前記延伸部の軸方向他方側の端部は、前記貫通部の内部に位置する、請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記カバー本体部と前記被保持部とを繋ぐ第1リブを有する、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記被保持部における外面には、前記ハウジングと接触する第2リブが設けられている、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記ベアリング保持部は、
前記ベアリングの軸方向他方側に位置する対向壁部と、
前記対向壁部から軸方向一方側に突出し、前記ベアリングを囲む周壁部と、
を有し、
前記ベアリングと前記対向壁部との軸方向の間には、前記第2流路部が繋がる隙間が設けられ、
前記カバー本体部は、
前記被保持部に繋がり前記第1方向に延びる基部と、
前記基部のうち前記第1方向において前記ベアリング保持部に近い側の端部に繋がり、前記第1方向において前記ベアリング保持部に近づくに従って軸方向他方側に位置する傾斜部と、
を有し、
前記基部には、前記第2流路部に固定された被固定部が設けられている、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記カバー本体部は、前記第2流路部に固定された被固定部を有する、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記被固定部における外面には、前記開口流路部の内面と接触する第3リブが設けられている、請求項8に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記被固定部には、軸方向一方側に開口する穴部が設けられている、請求項8に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記ベアリング保持部は、
前記ベアリングの軸方向他方側に位置する対向壁部と、
前記対向壁部から軸方向一方側に突出し、前記ベアリングを囲む周壁部と、
を有し、
前記ベアリングと前記対向壁部との軸方向の間には、前記第2流路部が繋がる隙間が設けられ、
前記カバー本体部は、前記第1方向において前記ベアリング保持部に近づくに従って軸方向他方側に位置する傾斜部を有する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記カバー本体部の少なくとも一部は、前記開口流路部の内部に位置する、請求項1から12のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記第1方向は、上下方向と交差する方向であり、
前記開口流路部の内面は、
軸方向および前記第1方向の両方と交差する第2方向の一方側に位置する第1面と、
前記第2方向の他方側に位置する第2面と、
を有し、
前記第2面は、前記第1面よりも上下方向の下側に位置し、
前記カバー本体部のうち前記開口流路部の内部に位置する部分は、前記第1面および前記第2面と隙間を介して前記第2方向に対向する挿入部を有する、請求項13に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記挿入部は、前記第1面と第1隙間を介して前記第2方向に対向し、かつ、前記第2面と第2隙間を介して前記第2方向に対向し、
前記第2隙間の前記第2方向の寸法は、前記第1隙間の前記第2方向の寸法よりも小さい、請求項14に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記挿入部は、
前記第1面と隙間を介して対向する第1対向面と、
前記第2面と隙間を介して対向する第2対向面と、
を有し、
前記第2対向面の軸方向の寸法は、前記第1対向面の軸方向の寸法よりも大きい、請求項14に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潤滑油によって軸受部の潤滑を行う構造を有するモータ内蔵型駆動装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-106776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータ内蔵型駆動装置には、軸受部が保持された保持部の内部に潤滑油を供給する流路部が設けられる場合がある。この場合、当該流路部の少なくとも一部が溝によって構成されるときに、当該溝の開口から潤滑油が漏れる虞があった。そのため、軸受部が保持された保持部の内部に供給される潤滑油の量が不十分になる虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ベアリング保持部内への流体の供給が不十分になることを抑制できる構造を有する駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、中心軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、前記ロータに接続されたギヤ機構と、前記ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングと、前記ベアリングを保持するベアリング保持部を有し、前記モータおよび前記ギヤ機構を内部に収容するハウジングと、軸方向に延びる第1流路部と、前記第1流路部に繋がり、軸方向と交差する第1方向に延びる第2流路部と、カバー本体部を有するカバー部材と、を備える。前記第1流路部は、軸方向に見て、前記ベアリング保持部の外側に位置する。前記第2流路部は、軸方向一方側に開口する開口流路部を有し、かつ、軸方向に見て前記ベアリング保持部の外側から前記ベアリング保持部の内部に繋がっている。前記カバー本体部の少なくとも一部は、前記開口流路部の内面のうち軸方向他方側に位置する部分と隙間を介して軸方向に対向している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置において、ベアリング保持部内への流体の供給が不十分になることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態における駆動装置を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態におけるギヤカバー、延伸部、およびカバー部材を軸方向一方側から見た図である。
図3図3は、第1実施形態における駆動装置の一部を示す斜視図である。
図4図4は、第1実施形態における駆動装置の一部を軸方向一方側から見た図である。
図5図5は、第1実施形態におけるハウジングの一部を示す斜視図である。
図6図6は、第1実施形態における駆動装置の一部を示す断面図であって、図4におけるVI-VI断面図である。
図7図7は、第1実施形態における駆動装置の一部を示す断面図であって、図4におけるVII-VII断面図である。
図8図8は、第1実施形態におけるカバー部材を示す斜視図である。
図9図9は、第1実施形態における延伸部の一部およびカバー部材を示す斜視図である。
図10図10は、第1実施形態における駆動装置の一部を示す断面図であって、図4におけるX-X断面図である。
図11図11は、第2実施形態における駆動装置の一部を示す断面図である。
図12図12は、第3実施形態における駆動装置の一部を示す断面図である。
図13図13は、第4実施形態における駆動装置の一部を示す斜視図である。
図14図14は、第4実施形態におけるカバー部材を示す斜視図である。
図15図15は、第5実施形態におけるカバー部材を示す斜視図である。
図16図16は、第5実施形態における駆動装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、上下方向である。Z軸の矢印が向く側(+Z側)は、上側であり、Z軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)は、下側である。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、以下の実施形態における駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、X軸の矢印が向く側(+X側)は、車両における前側であり、X軸の矢印が向く側と逆側(-X側)は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、Y軸の矢印が向く側(+Y側)は、車両における右側であり、Y軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)は、車両における左側である。
【0010】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両における左側であり、-Y側は、車両における右側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0011】
適宜図に示す中心軸線J1は、上下方向と交差する方向に延びる仮想軸線である。より詳細には、中心軸線J1は、上下方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸線J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線J1を中心とする周方向、つまり中心軸線J1の軸回りを「周方向θ1」と呼ぶ。周方向θ1は、図において適宜、矢印θ1で示している。以下の説明においては、軸方向のうち右側(+Y側)を「軸方向一方側」と呼び、軸方向のうち左側(-Y側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。上下方向は、例えば、鉛直方向であり、前後方向および左右方向(軸方向)は、例えば、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。図1に示すように、駆動装置100は、モータ10と、ギヤ機構20と、ハウジング30と、を備える。ハウジング30は、モータ10およびギヤ機構20を内部に収容している。ハウジング30は、モータ10を内部に収容するモータハウジング31と、ギヤ機構20を内部に収容するギヤハウジング32と、を有する。
【0013】
モータ10は、中心軸線J1を中心として回転可能なロータ11と、ロータ11と隙間を介して対向するステータ12と、を有する。ロータ11は、中心軸線J1に沿って配置されたモータシャフト11aと、モータシャフト11aに固定されたロータコア11bと、を有する。モータシャフト11aは、中心軸線J1を中心として回転可能である。モータシャフト11aは、軸方向に延びている。本実施形態においてモータシャフト11aは、水平方向に延びる中空シャフトである。モータシャフト11aは、一対のベアリング13a,13bによって、中心軸線J1回りに回転可能に支持されている。一対のベアリング13a,13bは、例えば、ボールベアリングなどの転がり軸受である。モータシャフト11aは、モータシャフト11aの内部とモータシャフト11aの外部とを繋ぐ孔部11cを有する。孔部11cは、周方向θ1に間隔を空けて複数設けられている。
【0014】
ステータ12は、ロータ11の径方向外側に位置する。ステータ12は、ロータ11を囲む環状である。ステータ12は、ステータコア12aと、コイルアセンブリ12bと、を有する。ステータコア12aは、ロータコア11bの径方向外側に位置し、ロータコア11bと隙間を介して対向して配置されている。ステータコア12aは、例えば、電磁鋼板などの板部材が軸方向に複数積層されて構成されている。コイルアセンブリ12bは、ステータコア12aに取り付けられた複数のコイル12cを有する。複数のコイル12cは、ハウジング30の内部に収容されたインバータ部15にバスバー14を介して電気的に接続されている。コイルアセンブリ12bは、ステータコア12aよりも軸方向に突出するコイルエンド12d,12eを有する。
【0015】
ギヤ機構20は、ロータ11に接続されている。より詳細には、ギヤ機構20は、モータシャフト11aの軸方向他方側(-Y側)の端部に接続されている。ギヤ機構20は、ロータ11の回転を車両の車軸に伝達する。ギヤ機構20は、ロータ11に接続された減速装置21と、減速装置21に接続された差動装置22と、を有する。
【0016】
減速装置21は、第1ギヤシャフト23aと、第2ギヤシャフト23bと、第1ギヤ24aと、第2ギヤ24bと、第3ギヤ24cと、を有する。第1ギヤシャフト23aは、軸方向に延びている。第1ギヤシャフト23aは、一対のベアリング25a,25bによって中心軸線J1回りに回転可能に支持されている。一対のベアリング25a,25bは、例えば、ボールベアリングなどの転がり軸受である。第1ギヤシャフト23aは、モータシャフト11aの軸方向他方側(-Y側)に位置する。第1ギヤシャフト23aは、モータシャフト11aと軸方向に連結されている。
【0017】
第2ギヤシャフト23bは、軸方向に延びる中間軸線J2回りに回転可能である。本実施形態において中間軸線J2は、中心軸線J1と平行に延びる仮想軸線である。図2に示すように、中間軸線J2は、例えば、中心軸線J1よりも上側に位置し、かつ、中心軸線J1よりも後側(-X側)に位置する。以下の説明においては、中間軸線J2を中心とする周方向、すなわち中間軸線J2の軸回りを「周方向θ2」と呼ぶ。周方向θ2は、図において適宜、矢印θ2で示している。図1に示すように、第2ギヤシャフト23bは、軸方向に延びている。第2ギヤシャフト23bは、一対のベアリング25c,25dによって中間軸線J2回りに回転可能に支持されている。一対のベアリング25c,25dは、例えば、ボールベアリングなどの転がり軸受である。
【0018】
第1ギヤ24aは、第1ギヤシャフト23aの外周面に設けられている。第2ギヤ24bおよび第3ギヤ24cは、第2ギヤシャフト23bの外周面に設けられている。第2ギヤ24bは、第1ギヤ24aと噛み合っている。第3ギヤ24cは、第1ギヤ24aおよび第2ギヤ24bよりも軸方向一方側(+Y側)に位置する。
【0019】
差動装置22は、リングギヤ22aと、デフケース22bと、差動機構部22cと、を有する。リングギヤ22aは、軸方向に延びる差動軸線J3回りに回転可能である。本実施形態において差動軸線J3は、中心軸線J1と平行に延びる仮想軸線である。図2に示すように、差動軸線J3は、例えば、中心軸線J1よりも上側に位置し、かつ、中間軸線J2よりも下側に位置する。差動軸線J3は、例えば、中心軸線J1および中間軸線J2よりも後側(-X側)に位置する。図1に示すように、リングギヤ22aは、第3ギヤ24cと噛み合っている。リングギヤ22aは、デフケース22bに固定されている。リングギヤ22aの下側の端部は、ギヤハウジング32内に貯留されたオイルOに浸漬している。リングギヤ22aが回転することで、オイルOがかき上げられる。かき上げられたオイルOは、例えば、減速装置21および差動装置22に潤滑油として供給される。
【0020】
デフケース22bは、内部に差動機構部22cを収容するケース部22dと、ケース部22dから軸方向に延びる一対のデフケースシャフト22e,22fと、を有する。デフケースシャフト22eは、ケース部22dから軸方向他方側(-Y側)に延びている。デフケースシャフト22fは、ケース部22dから軸方向一方側(+Y側)に延びている。一対のデフケースシャフト22e,22fは、差動軸線J3を中心とする筒状である。デフケースシャフト22eは、ベアリング25eによって差動軸線J3回りに回転可能に支持されている。ベアリング25eは、例えば、ボールベアリングなどの転がり軸受である。図示は省略するが、デフケースシャフト22fも、デフケースシャフト22eと同様にベアリングによって差動軸線J3回りに回転可能に支持されている。
【0021】
差動機構部22cは、デフケース22bの内部に位置する。差動機構部22cには、デフケース22bを介してリングギヤ22aの回転が伝わる。差動機構部22cには、一対の出力シャフト22gが接続されている。一対の出力シャフト22gは、一対のデフケースシャフト22e,22fの内部にそれぞれ通されている。一対の出力シャフト22gには、それぞれ図示しない車輪が接続される。差動機構部22cは、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の出力シャフト22gにトルクを伝える。
【0022】
モータ10から出力されるトルクは、モータシャフト11a、第1ギヤシャフト23a、第1ギヤ24a、第2ギヤ24b、第2ギヤシャフト23b、および第3ギヤ24cを介して差動装置22のリングギヤ22aへ伝達される。リングギヤ22aに伝達されたモータ10のトルクは、差動機構部22cおよび出力シャフト22gを介して車輪に伝わる。このように、ギヤ機構20は、車両の車輪にモータ10のトルクを伝達する。
【0023】
本実施形態のハウジング30において、モータハウジング31とギヤハウジング32とは軸方向に並んで配置されている。ギヤハウジング32は、モータハウジング31の軸方向他方側(-Y側)に位置する。ギヤハウジング32は、モータハウジング31の軸方向他方側に繋がっている。本実施形態においてハウジング30は、ハウジング本体30aと、モータカバー30bと、ギヤカバー30cと、を有する。ハウジング本体30aとモータカバー30bとギヤカバー30cとは、互いに別体である。ハウジング本体30aは、第1周壁部30dと、第2周壁部30eと、隔壁部33と、を有する。本実施形態においてギヤハウジング32は、隔壁部33と第2周壁部30eとギヤカバー30cとによって構成されている。本実施形態においてモータハウジング31は、隔壁部33と第1周壁部30dとモータカバー30bとによって構成されている。
【0024】
第1周壁部30dは、軸方向一方側(+Y側)に開口する筒状である。第1周壁部30dの軸方向他方側(-Y側)の端部には、隔壁部33が設けられている。第1周壁部30dの軸方向一方側の開口は、第1周壁部30dの軸方向一方側の端部に固定されたモータカバー30bによって塞がれている。モータカバー30bには、ベアリング13aが保持されたベアリング保持部34aが設けられている。第2周壁部30eは、軸方向他方側に開口する筒状である。第2周壁部30eの軸方向一方側の端部には、隔壁部33が設けられている。第2周壁部30eの軸方向他方側の開口は、第2周壁部30eの軸方向他方側の端部に固定されたギヤカバー30cによって塞がれている。ギヤカバー30cは、ギヤ機構20を軸方向一方側から覆う蓋部30fと、蓋部30fの径方向外縁部から軸方向一方側に突出する第3周壁部30gと、を有する。第3周壁部30gの軸方向一方側の端部は、第2周壁部30eの軸方向他方側の端部と繋がっている。蓋部30fの軸方向一方側の面には、ベアリング25aを保持するベアリング保持部35aと、ベアリング25cを保持するベアリング保持部35cと、ベアリング25eを保持するベアリング保持部35eと、が設けられている。各ベアリング保持部35a,35c,35eは、各ベアリング25a,25c,25eを囲む略円環状である。
【0025】
隔壁部33は、モータハウジング31の内部とギヤハウジング32の内部とを区画している。隔壁部33は、モータハウジング31の内部とギヤハウジング32の内部とを軸方向に隔てる壁部である。隔壁部33は、モータハウジング31の内部とギヤハウジング32の内部とを繋ぐ隔壁開口33aを有する。
【0026】
隔壁部33のうちモータハウジング31の内面の一部を構成する部分、すなわち隔壁部33の軸方向一方側(+Y側)の面には、ベアリング13bを保持するベアリング保持部34bが設けられている。隔壁部33のうちギヤハウジング32の内面の一部を構成する部分、すなわち隔壁部33の軸方向他方側(-Y側)の面には、ベアリング25bを保持するベアリング保持部35bと、ベアリング25dを保持するベアリング保持部35dと、が設けられている。各ベアリング保持部34b,35b,35dは、各ベアリング13b,25b,25dを囲む略円環状である。ベアリング保持部34bの内部とベアリング保持部35bの内部とは、互いに軸方向に繋がっており、隔壁部33を軸方向に貫通する孔33bを構成している。
【0027】
本実施形態においてハウジング30は、流体としてのオイルOが貯留される貯留部Pを有する。オイルOは、モータ10を冷却する冷媒として使用される。また、オイルOは、減速装置21および差動装置22に対して潤滑油として使用される。オイルOとしては、例えば、冷媒および潤滑油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。貯留部Pは、ハウジング30の下側の部分によって構成されている。貯留部Pは、モータハウジング31に設けられた第1貯留部P1と、ギヤハウジング32に設けられた第2貯留部P2と、を有する。第1貯留部P1の内部は、モータハウジング31の内部における下部領域によって構成されている。第2貯留部P2の内部は、ギヤハウジング32の内部における下部領域によって構成されている。第1貯留部P1の内部と第2貯留部P2の内部とは、隔壁開口33aを介して互いに繋がっている。
【0028】
上述したように、駆動装置100は、ギヤ機構20少なくとも一部を回転可能に支持するベアリング25a,25b,25c,25d,25eと、各ベアリング25a,25b,25c,25d,25eを保持するベアリング保持部35a,35b,35c,35d,35eと、を備える。本実施形態において各ベアリング25a,25b,25c,25d,25eは、それぞれギヤ機構20の一部を回転可能に支持している。本実施形態において、ベアリング25cを保持するベアリング保持部35cは、後述する第2流路部50が内部に繋がるベアリング保持部である。なお、ベアリング保持部35a,35b,35d,35eの構造としては、第2流路部50が内部に繋がっていない点を除いて、以下に説明するベアリング保持部35cと同様の構造を採用できる。
【0029】
図3から図5に示すように、ベアリング保持部35cは、対向壁部35jと、周壁部35fと、支持部35gと、を有する。対向壁部35jは、蓋部30fのうちベアリング25cと軸方向に対向する部分である。対向壁部35jは、ベアリング25cの軸方向他方側(-Y側)に位置する。
【0030】
周壁部35fは、対向壁部35jから軸方向一方側(+Y側)に突出している。図2に示すように、周壁部35fは、ベアリング25cを囲んでいる。本実施形態において周壁部35fは、中間軸線J2を中心とする略円環状である。周壁部35fは、軸方向一方側に開口している。図4に示すように、周壁部35fには、周壁部35fの一部を周壁部35fの内側面から外側面まで貫通する貫通部35hが設けられている。本実施形態において貫通部35hは、軸方向一方側に開口する溝である。なお、貫通部35hは、周壁部35fの一部を内側面から外側面まで貫通する孔であってもよい。貫通部35hは、軸方向と交差する第1方向D1に周壁部35fの一部を貫通している。
【0031】
本実施形態において第1方向D1は、上下方向と交差する方向である。より詳細には、第1方向D1は、軸方向と直交する方向であり、かつ、上下方向および前後方向(X軸方向)の両方と交差する方向である。第1方向D1は、後側(-X側)に向かうに従って下側に位置する方向である。前後方向に対する第1方向D1の傾きは、上下方向に対する第1方向D1の傾きよりも小さい。以下の説明においては、第1方向D1のうち図に示すD1軸の矢印が向く側(+D1側)を「第1方向一方側」と呼び、D1軸の矢印が向く側と逆側(-D1側)を「第1方向他方側」と呼ぶ。第1方向一方側は後側かつ下側であり、第1方向他方側は前側(+X側)かつ上側である。
【0032】
図5に示すように、支持部35gは、周壁部35fの内側において、対向壁部35jから軸方向一方側(+Y側)に突出している。支持部35gは、周壁部35fの内縁部に繋がっている。支持部35gの軸方向一方側の端部は、周壁部35fの軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側(-Y側)に位置する。図2に示すように、本実施形態において支持部35gは、中間軸線J2を中心とする略円環状である。支持部35gは、ベアリング25cの外周縁部を軸方向他方側から支持している。図6に示すように、ベアリング25cを軸方向他方側から支持する支持部35gが設けられることによって、ベアリング25cと対向壁部35jとの軸方向の間には、隙間Gが設けられている。
【0033】
図5に示すように、支持部35gには、支持部35gの一部を支持部35gの内側面から外側面まで貫通する貫通部35iが設けられている。貫通部35iは、第1方向D1に支持部35gの一部を貫通している。本実施形態において貫通部35iは、軸方向一方側(+Y側)に開口する溝である。なお、貫通部35iは、支持部35gの一部を内側面から外側面まで貫通する孔であってもよい。貫通部35iは、貫通部35hのうち周壁部35fの内側面に開口する端部に繋がっている。貫通部35iを介して、貫通部35hと隙間Gとが互いに繋がっている。
【0034】
ハウジング30は、蓋部30fの軸方向一方側(+Y側)の面から軸方向一方側に突出する保持筒部36を有する。保持筒部36は、軸方向一方側に開口する筒状である。保持筒部36は、軸方向に見てベアリング保持部35cの外側に位置する。本実施形態において保持筒部36は、ベアリング保持部35cよりも前側(+X側)に位置する。保持筒部36は、中間軸線J2よりも上側に位置する。保持筒部36は、第1方向一方側(+D1側)に開口する開口部36aを有する。開口部36aは、周壁部35fに設けられた貫通部35hに向かって開口している。開口部36aが設けられることによって、保持筒部36は、軸方向に見て、第1方向一方側に開口する略C字形状である。保持筒部36は、軸方向他方側(-Y側)に底部36bを有する。
【0035】
ハウジング30は、ベアリング保持部35cと保持筒部36とを繋ぐ一対の接続リブ37a,37bを有する。一対の接続リブ37a,37bは、第1方向D1に延びている。一対の接続リブ37a,37bは、軸方向および第1方向D1の両方と交差する第2方向D2に互いに間隔を空けて配置されている。本実施形態において第2方向D2は、軸方向および第1方向D1の両方と直交する方向である。第2方向D2は、上側に向かうに従って後側(-X側)に位置する方向である。以下の説明においては、第2方向D2のうち図に示すD2軸の矢印が向く側(+D2側)を「第2方向一方側」と呼び、D2軸の矢印が向く側と逆側(-D2側)を「第2方向他方側」と呼ぶ。第2方向一方側は上側かつ後側であり、第2方向他方側は下側かつ前側(+X側)である。接続リブ37aは、接続リブ37bの第2方向一方側に離れて位置する。
【0036】
図4に示すように、一対の接続リブ37a,37bの第1方向一方側(+D1側)の端部は、ベアリング保持部35cの外側面のうち貫通部35hの周方向θ2の両縁部にそれぞれ繋がっている。一対の接続リブ37a,37bの第1方向他方側(-D1側)の端部は、保持筒部36の外側面のうち開口部36aの周方向θ2の両縁部にそれぞれ繋がっている。図5に示すように、一対の接続リブ37a,37bの軸方向一方側(+Y側)の端部は、ベアリング保持部35cの軸方向一方側の端部および保持筒部36の軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側(-Y側)に位置する。
【0037】
ハウジング30は、一対の接続リブ37a,37b同士の第2方向D2の間に位置する溝37cを有する。溝37cは、軸方向一方側(+Y側)に開口し、第1方向D1に延びている。溝37cの第1方向一方側(+D1側)の端部は、貫通部35hに繋がっている。溝37cの第1方向他方側(-D1側)の端部は、保持筒部36の底部36bに設けられ、保持筒部36内に開口している。
【0038】
図7に示すように、溝37cの内面には、第2方向D2に窪み、第2方向D2に互いに対向する一対の凹部38a,38bが設けられている。凹部38aは、溝37cの内面のうち第2方向一方側(+D2側)に位置する部分に設けられている。凹部38bは、溝37cの内面のうち第2方向他方側(-D2側)に位置する部分に設けられている。一対の凹部38a,38bの内部は、軸方向一方側(+Y側)に開口している。
【0039】
一対の凹部38a,38bの軸方向他方側(-Y側)の端部は、溝37cの軸方向他方側の端部よりも軸方向一方側(+Y側)に離れて位置する。凹部38aの内面のうち軸方向他方側に位置する面は、軸方向一方側を向く段差面38cである。凹部38bの内面のうち軸方向他方側に位置する面は、軸方向一方側を向く段差面38dである。段差面38cと段差面38dとは、例えば、軸方向において互いに同じ位置に位置する。本実施形態において段差面38c,38dは、軸方向と直交する平坦面である。本実施形態において凹部38bの第2方向D2の寸法は、凹部38aの第2方向D2の寸法よりも大きい。つまり、凹部38bの第2方向D2に窪む深さは、凹部38aの第2方向D2に窪む深さよりも大きい。これにより、段差面38dの第2方向D2の寸法は、段差面38cの第2方向D2の寸法よりも大きい。
【0040】
図1に示すように、駆動装置100は、軸方向に延びる第1流路部40を備える。第1流路部40は、後述する流路90の一部を構成する流路部である。第1流路部40の内部には、オイルOが流れる。第1流路部40は、ギヤハウジング32の内部に位置する。図2に示すように、第1流路部40は、軸方向に見て、ベアリング保持部35cの外側に位置する。本実施形態において第1流路部40は、ベアリング保持部35cよりも前側(+X側)に位置する。本実施形態において第1流路部40は、中間軸線J2よりも上側に位置する。
【0041】
図1に示すように、第1流路部40は、軸方向に延びる延伸部41を有する。本実施形態において延伸部41は、軸方向に延びる管状の部材である。延伸部41は、略円筒状のパイプである。延伸部41は、ギヤハウジング32の内部に位置する。延伸部41の軸方向一方側(+Y側)の端部は、隔壁部33に支持されている。図6に示すように、延伸部41は、本体部41aと、接続部41bと、フランジ部41cと、を有する。
【0042】
本体部41aは、軸方向に延びる略円筒状である。本体部41aには、供給孔41dが設けられている。供給孔41dは、本体部41aを構成する壁部を本体部41aの内面から外面まで貫通する孔である。供給孔41dは、ギヤハウジング32の内部に開口している。図3に示すように、本実施形態において供給孔41dは、後側(-X側)に開口している。供給孔41dは、軸方向に間隔を空けて複数設けられている。供給孔41dの数は、特に限定されない。供給孔41dは、1つのみ設けられてもよい。
【0043】
図6に示すように、接続部41bは、本体部41aの軸方向他方側(-Y側)の端部に繋がっている。接続部41bの軸方向他方側の端部は、延伸部41の軸方向他方側の端部である。接続部41bは、軸方向他方側に開口する略円筒状である。接続部41bの外径は、本体部41aの外径よりも小さい。接続部41bの内径は、本体部41aの内径よりも小さい。接続部41bは、保持筒部36の内部に軸方向一方側(+Y側)から挿入されている。
【0044】
フランジ部41cは、本体部41aの軸方向他方側(-Y側)の端部における外周面に設けられている。フランジ部41cは、略円筒状の本体部41aの中心軸を中心とする径方向の外側に突出している。フランジ部41cは、本体部41aを囲む環状である。フランジ部41cは、板面が軸方向を向く板状である。フランジ部41cは、保持筒部36の軸方向一方側(+Y側)の端部と対向している。本実施形態においてフランジ部41cは、保持筒部36の軸方向一方側の端部から軸方向一方側に離れている。これにより、外部から衝撃を受けた場合などであっても延伸部41がハウジング30から力を受けにくくできる。したがって、延伸部41に生じる応力を低減でき、延伸部41が変形することなどを抑制できる。
【0045】
なお、フランジ部41cは、保持筒部36の軸方向一方側(+Y側)の端部に接触していてもよい。この場合、フランジ部41cと保持筒部36との軸方向の間からオイルOが漏れることを好適に抑制できる。また、この場合、フランジ部41cと保持筒部36との間には、Oリングなどのシール部材が設けられていてもよい。これにより、フランジ部41cと保持筒部36との軸方向の間からオイルOが漏れることをより好適に抑制できる。
【0046】
図6に示すように、第1流路部40は、後述するカバー部材60の被保持部62によって構成される流路部42を有する。流路部42は、延伸部41の軸方向他方側(-Y側)に繋がっている。流路部42の内部は、延伸部41の軸方向他方側の端部における内部と繋がっている。流路部42は、底部36bに開口する溝37cの第1方向他方側(-D1側)の端部に繋がっている。
【0047】
本実施形態において駆動装置100は、第1方向D1に延びる第2流路部50を備える。第2流路部50は、後述する流路90の一部を構成する流路部である。第2流路部50は、ギヤカバー30cの蓋部30fに設けられている。第2流路部50は、第1流路部40に繋がっている。第2流路部50の内部には、第1流路部40の軸方向他方側(-Y側)の端部から流入したオイルOが流れる。
【0048】
本実施形態において第2流路部50は、第1流路部40の軸方向他方側(-Y側)の端部から第1方向一方側(+D1側)に延びて、ベアリング保持部35cの内部に繋がっている。つまり、第2流路部50は、軸方向に見てベアリング保持部35cの外側からベアリング保持部35cの内部に繋がっている。図3に示すように、第2流路部50は、第1流路部40からベアリング保持部35cの内部に向かうに従って下側に位置する。そのため、第1流路部40内から第2流路部50内に流入したオイルOを、重力を利用して第2流路部50内に流しやすくでき、第2流路部50内からベアリング保持部35c内にオイルOを送りやすくできる。第2流路部50は、後側(-X側)に向かうに従って下側に位置する。
【0049】
図5に示すように、第2流路部50は、軸方向一方側(+Y側)に開口する開口流路部51を有する。本実施形態において開口流路部51は、溝37cと貫通部35hとが第1方向D1に繋がることで構成される第1方向D1に延びる溝によって構成されている。開口流路部51の第1方向一方側(+D1側)の端部は、貫通部35hの第1方向一方側の端部であり、貫通部35iに繋がっている。これにより、第2流路部50は、貫通部35iを介して隙間Gと繋がっている。開口流路部51の第1方向他方側(-D1側)の端部は、溝37cの第1方向他方側の端部であり、保持筒部36の内部に開口している。開口流路部51の内面のうち第2方向D2の両側に位置する部分には、それぞれ上述した凹部38a,38bが設けられている。
【0050】
本実施形態において第2流路部50は、開口流路部51のみからなる。開口流路部51の第1方向一方側(+D1側)の端部は、第2流路部50の第1方向一方側の端部である。開口流路部51の第1方向他方側(-D1側)の端部は、第2流路部50の第1方向他方側の端部である。開口流路部51の内面のうち軸方向他方側(-Y側)に位置する部分は、底面51cである。図6に示すように、底面51cの第1方向他方側の部分は、第1方向一方側に向かうに従って軸方向他方側に位置する。
【0051】
図4に示すように、開口流路部51の内面は、第1面51aと、第2面51bと、を有する。第1面51aは、開口流路部51の内面のうち第2方向D2の一方側(+D2側)に位置する面である。第2面51bは、開口流路部51の内面のうち第2方向D2の他方側(-D2側)に位置する面である。第1面51aと第2面51bとは、第2方向D2に間隔を空けて互いに対向している。第1面51aは、下側かつ前側(+X側)を向く面である。第2面51bは、上側かつ後側(-X側)を向く面である。第2面51bは、第1面51aよりも上下方向の下側に位置する。
【0052】
図1に示すように、第1流路部40内には、第1流路部40の軸方向一方側(+Y側)の端部からオイルOが流入する。図6に示すように、第1流路部40内に流入したオイルOは、軸方向他方側(-Y側)に流れて、第2流路部50内に流入する。第2流路部50内に流入したオイルOは、第1方向一方側(+D1側)に流れて、ベアリング保持部35cの内部に流入する。ベアリング保持部35c内に流入したオイルOの少なくとも一部は、貫通部35iを介して、対向壁部35jとベアリング25cとの軸方向の隙間Gに流入する。これにより、ベアリング25cにオイルOが供給される。
【0053】
駆動装置100は、カバー部材60を備える。カバー部材60は、開口流路部51に対して設けられている。本実施形態においてカバー部材60は、樹脂製である。なお、カバー部材60を構成する材料は、特に限定されない。カバー部材60は、金属製であってもよい。カバー部材60は、カバー本体部61と、ハウジング30に対して保持された被保持部62と、第1リブ63と、を有する。被保持部62が設けられることによって、カバー部材60を開口流路部51に対して安定して配置できる。
【0054】
カバー本体部61の少なくとも一部は、開口流路部51の内面のうち軸方向他方側(-Y側)に位置する部分、すなわち底面51cと隙間を介して軸方向に対向している。そのため、第2流路部50内に流入したオイルOが開口流路部51の軸方向一方側(+Y側)の開口から漏れることを、カバー本体部61によって堰き止めやすくできる。これにより、第2流路部50内を流れるオイルOが漏れることを抑制できる。したがって、第2流路部50内からベアリング保持部35c内へのオイルOの供給が不十分になることを抑制できる。そのため、ベアリング保持部35cに保持されたベアリング25cの潤滑が不十分になることを抑制できる。
【0055】
例えば、オイルOの温度が低くオイルOの粘度が低いほど、第2流路部50内を流れるオイルOの流速が小さくなり、第2流路部50内のオイルOが軸方向一方側(+Y側)に広がって開口流路部51の開口から漏れやすくなる虞がある。このような場合であっても、オイルOが開口流路部51の軸方向一方側の開口に到達することをカバー本体部61によって抑制できるため、第2流路部50内のオイルOが漏れることを抑制できる。
【0056】
また、開口流路部51が第1方向D1に延びる溝によって構成され、開口流路部51における軸方向一方側(+Y側)の開口が第1方向D1に長くなると、オイルOがより開口流路部51内から漏れやすくなる虞がある。これに対して、本実施形態では、上述したように、開口流路部51の開口の少なくとも一部がカバー本体部61によって覆われるため、開口流路部51の開口からオイルOが漏れることをカバー本体部61によって抑制できる。このように、第2流路部50内のオイルOが漏れることを抑制できる効果は、開口流路部51が第1方向D1に延びる溝によって構成されている場合に、より有用に得られる。また、開口流路部51を溝によって構成することで、第2流路部50の構造を簡易な構造としやすい。これにより、第2流路部50を作りやすくできる。本実施形態では、カバー本体部61の全体が、底面51cと隙間を介して軸方向に対向している。そのため、開口流路部51の軸方向一方側(+Y側)の開口からオイルOが漏れることをより抑制できる。カバー本体部61は、開口流路部51の一部における開口を塞いでいる。
【0057】
カバー本体部61の少なくとも一部は、開口流路部51の内部に位置する。そのため、カバー本体部61の全体が開口流路部51の外部に位置する場合に比べて、開口流路部51からオイルOが漏れることをより抑制しやすい。また、カバー本体部61を底面51cに対して軸方向他方側(-Y側)に近づけやすい。これにより、開口流路部51内を流れるオイルOを開口流路部51内において軸方向他方側へと導きやすい。したがって、第2流路部50内からベアリング保持部35c内へと流れるオイルOを軸方向他方側へと導きやすく、ベアリング保持部35c内のうちベアリング25cと対向壁部35jとの軸方向の隙間GにオイルOを供給しやすい。そのため、ベアリング25cにオイルOを好適に供給しやすい。本実施形態では、カバー本体部61の全体が開口流路部51の内部に位置する。そのため、開口流路部51内からオイルOが漏れることをより抑制しつつ、ベアリング25cと対向壁部35jとの隙間GにオイルOをより供給しやすい。
【0058】
カバー本体部61は、軸方向に見て、第1方向D1に延びている。カバー本体部61の第1方向他方側(-D1側)の端部は、被保持部62に繋がっている。図8および図9に示すように、カバー本体部61は、基部64と、傾斜部65と、被固定部66と、を有する。基部64は、被保持部62に繋がり第1方向D1に延びている。本実施形態では、基部64の第1方向他方側(-D1側)の端部が被保持部62に繋がっている。基部64の第2方向D2の寸法は、基部64の軸方向の寸法よりも大きい。
【0059】
傾斜部65は、基部64のうち第1方向D1においてベアリング保持部35cに近い側、すなわち第1方向一方側(+D1側)の端部に繋がっている。傾斜部65は、基部64の第1方向一方側の端部から軸方向他方側(-Y側)に屈曲して延びている。傾斜部65の第2方向D2の寸法は、傾斜部65が延びる方向および第2方向D2の両方と直交する方向における傾斜部65の寸法よりも大きい。図10に示すように、第1方向D1と直交する断面における傾斜部65の断面形状は、第2方向D2に長く、第2方向他方側(-D2側)に向かうに従って軸方向の寸法が大きくなる角丸の略台形状である。図示は省略するが、第1方向D1と直交する断面における基部64の断面形状は、傾斜部65と同様である。なお、図示は省略するが、傾斜部65が延びる方向と直交する断面における傾斜部65の断面形状も、図10に示す第1方向D1と直交する断面における傾斜部65の断面形状と同様である。
【0060】
図6に示すように、傾斜部65は、第1方向一方側(+D1側)に向かうに従って軸方向他方側(-Y側)に位置する。つまり、傾斜部65は、第1方向D1においてベアリング保持部35cに近づくに従って軸方向他方側に位置する。そのため、底面51cと傾斜部65との間の軸方向の距離をベアリング保持部35cに近づくに従って小さくすることができる。これにより、開口流路部51内を流れるオイルOを、傾斜部65に沿って、ベアリング保持部35cに近づくに従って軸方向他方側へと導きやすい。したがって、ベアリング保持部35c内のうちベアリング25cと対向壁部35jとの軸方向の隙間GにオイルOをより好適に供給しやすい。そのため、ベアリング25cにオイルOをより好適に供給しやすい。
【0061】
本実施形態において傾斜部65は、第1方向D1および軸方向の両方に対して傾いた方向にまっすぐに延びている。なお、傾斜部65は、第2方向D2に見て湾曲して延びつつ、第1方向D1においてベアリング保持部35cに近づくに従って軸方向他方側(-Y側)に位置する構成であってもよい。傾斜部65の第1方向一方側(+D1側)の端部は、貫通部35h内に位置する。
【0062】
被固定部66は、第2流路部50に固定されている。そのため、カバー本体部61が開口流路部51内を流れるオイルOから力を受けても、カバー本体部61の位置がずれることを抑制できる。これにより、カバー本体部61を開口流路部51に対して安定して配置することができる。本実施形態において被固定部66は、開口流路部51の内部に圧入されている。より詳細には、図7に示すように、被固定部66は、凹部38aと凹部38bとの第2方向D2の間に圧入されている。
【0063】
図8に示すように、本実施形態において被固定部66は、基部64に設けられている。そのため、被固定部66を被保持部62に近い位置に設けることができる。これにより、被固定部66を第2流路部50に固定する際に被固定部66に力が加えられても、当該力を被保持部62によって受けやすい。したがって、カバー本体部61に生じる応力を低減できる。また、被固定部66が傾斜部65に設けられる場合に比べて、被固定部66の軸方向の位置を軸方向一方側(+Y側)にすることができる。そのため、被固定部66を開口流路部51内に圧入によって固定する場合に、被固定部66を開口流路部51内に押し込む軸方向の距離を短くでき、被固定部66を第2流路部50に固定しやすくできる。
【0064】
被固定部66は、基部64における第1方向一方側(+D1側)の部分に設けられている。被固定部66は、軸方向に見て、略四角形状である。なお、被固定部66の形状は、特に限定されない。被固定部66は、例えば、軸方向に見て円形状であってもよい。被固定部66は、本体部66aと、第3リブ66bと、を有する。本体部66aは、略直方体状である。本体部66aの軸方向の寸法は、基部64の軸方向の寸法よりも大きい。本体部66aは、基部64よりも軸方向の両側に突出している。本体部66aの第2方向D2の寸法は、基部64の第2方向D2の寸法よりも大きい。本体部66aは、基部64よりも第2方向D2の両側に突出している。
【0065】
第3リブ66bは、被固定部66の外面に設けられている。第3リブ66bは、本体部66aの第2方向D2の側面から第2方向D2に突出している。第3リブ66bは、軸方向に延びている。第3リブ66bの軸方向の寸法は、例えば、本体部66aの軸方向の寸法と同じである。本実施形態において第3リブ66bは、本体部66aの第2方向D2の両側面にそれぞれ複数ずつ設けられている。本実施形態では、本体部66aの第2方向D2の両側面にそれぞれ3つずつ第3リブ66bが設けられている。本体部66aの第2方向D2の各面において複数の第3リブ66bは、第1方向D1に間隔を空けて配置されている。図7に示すように、各第3リブ66bは、開口流路部51の内面と接触している。開口流路部51の内面と接触する第3リブ66bを被固定部66の外面に設けることで、被固定部66を開口流路部51内に圧入する際に、被固定部66と開口流路部51との接触面積を小さくできる。これにより、第3リブ66bを第2方向D2に押し潰す向きに変形させて、被固定部66を開口流路部51内に圧入しやすくできる。本実施形態において第3リブ66bは、いわゆるクラッシュリブである。また、被固定部66を圧入により固定できるのであれば、第3リブ66bは、第1方向D1に延びるリブであってもよく、第3リブ66bの形状も特に限定されない。
【0066】
本体部66aの第2方向一方側(+D2側)の面に設けられた第3リブ66bは、凹部38aの内面のうち第2方向他方側(-D2側)を向く面に接触している。本体部66aの第2方向他方側の面に設けられた第3リブ66bは、凹部38bの内面のうち第2方向一方側を向く面に接触している。第3リブ66bを凹部38a,38bの内面に接触させる構成とすることで、被固定部66を開口流路部51に圧入する際に、第3リブ66bの一部が削れても、当該削れた部分を凹部38a,38b内に保持しやすい。これにより、削れた第3リブ66bの一部がオイルOとともにベアリング25cなどに流れることを抑制できる。また、各凹部38a,38bは軸方向他方側(-Y側)に段差面38c,38dを有するため、開口流路部51内において被固定部66を段差面38c,38dよりも軸方向他方側に押し込もうとしても、第3リブ66bが段差面38c,38dに当たり、被固定部66が押し込まれることを抑制できる。これにより、被固定部66を開口流路部51内に押し込み過ぎることを抑制できる。したがって、カバー部材60を開口流路部51に対して、より好適に固定しやすい。また、凹部38a,38bに対して被固定部66を固定することによって、カバー部材60を第1方向D1に位置決めしやすい。
【0067】
本実施形態において被固定部66は、段差面38c,38dから軸方向一方側(+Y側)に離れている。被固定部66は、段差面38c,38dに接触していてもよい。被固定部66の軸方向一方側の面は、開口流路部51の軸方向一方側の開口端よりも軸方向他方側(-Y側)に位置する。なお、被固定部66の軸方向一方側の面は、開口流路部51の軸方向一方側の開口端と軸方向において同じ位置に配置されてもよい。この場合、被固定部66は、軸方向一方側の面が一対の接続リブ37a,37bの軸方向一方側の端部と同じ軸方向の位置になるまで開口流路部51内に圧入される。
【0068】
図3に示すように、本実施形態において基部64の全体および傾斜部65の全体は、カバー本体部61のうち開口流路部51の内部に位置する部分であり、第1面51aおよび第2面51bと隙間を介して第2方向D2に対向する挿入部67である。つまり、カバー本体部61のうち開口流路部51の内部に位置する部分は、挿入部67として基部64および傾斜部65を有する。このように、カバー本体部61のうち開口流路部51の内部に位置する部分の少なくとも一部を挿入部67として、開口流路部51の第2方向D2の面から離して配置することで、カバー本体部61が振動した場合であっても、カバー本体部61が開口流路部51の内面と接触することを抑制できる。そのため、カバー本体部61が振動しても、騒音が生じることを抑制できる。また、カバー本体部61が開口流路部51の内面と擦れて摩耗することを抑制できる。
【0069】
図10に示すように、挿入部67は、第1面51aと第1隙間G1を介して第2方向D2に対向し、かつ、第2面51bと第2隙間G2を介して第2方向D2に対向している。なお、図10では、挿入部67のうち傾斜部65における第1方向D1と直交する断面を示している。第2隙間G2の第2方向D2の寸法L2は、第1隙間G1の第2方向D2の寸法L1よりも小さい。ここで、第2面51bは第1面51aよりも上下方向の下側に位置するため、開口流路部51内を流れるオイルOは、重力によって第2面51b上を流れやすい。これに対して、第2面51bと挿入部67との隙間である第2隙間G2を第1隙間G1よりも狭くすることで、第2面51b上を流れるオイルOが第2隙間G2を通りにくくできる。したがって、開口流路部51内を流れるオイルOが第2隙間G2を介して開口流路部51の軸方向一方側(+Y側)の開口端まで到達することを抑制できる。そのため、開口流路部51内からオイルOが漏れることをより好適に抑制できる。
【0070】
本実施形態では、上述したように、被固定部66が固定される一対の凹部38a,凹部38bのうち第2方向他方側(-D2側)に位置する凹部38bの第2方向D2の寸法が、第2方向一方側(+D2側)に位置する凹部38aの第2方向D2の寸法よりも大きくなっている。そのため、被固定部66を第2方向他方側に寄せて配置できる。これにより、第2隙間G2の第2方向D2の寸法L2を、第1隙間G1の第2方向D2の寸法L1よりも小さくできる。
【0071】
挿入部67は、第1面51aと第1隙間G1を介して対向する第1対向面67aと、第2面51bと第2隙間G2を介して対向する第2対向面67bと、を有する。第1対向面67aは、挿入部67の第2方向一方側(+D2側)の面である。第2対向面67bは、挿入部67の第2方向他方側(-D2側)の面である。第2対向面67bの軸方向の寸法L4は、第1対向面67aの軸方向の寸法L3よりも大きい。そのため、第2隙間G2を第1隙間G1よりも軸方向に大きくできる。これにより、オイルOが第2隙間G2を通過しようとする際にオイルOに生じる摩擦力を大きくできる。したがって、オイルOが第2隙間G2を通過することをより抑制でき、オイルOが開口流路部51の軸方向一方側(+Y側)の開口端に到達することをより好適に抑制できる。そのため、開口流路部51内からオイルOが漏れることをより好適に抑制できる。
【0072】
挿入部67は、底面51cと軸方向に対向する傾斜面67cを有する。傾斜面67cは、挿入部67の軸方向他方側(-Y側)の面である。傾斜面67cは、第2方向他方側(-D2側)に向かうに従って軸方向他方側に位置する。そのため、挿入部67に沿って流れるオイルOを、重力を利用して、傾斜面67cに沿って第2方向他方側かつ軸方向他方側へと流しやすくできる。これにより、開口流路部51内を流れるオイルOをより軸方向他方側へと導きやすく、対向壁部35jとベアリング25cとの軸方向の間にオイルOをより供給しやすくできる。挿入部67の軸方向一方側(+Y側)の面は、例えば、第2方向D2と平行な面である。
【0073】
図9に示すように、本実施形態において被保持部62は、軸方向両側に開口する筒状である。被保持部62は、略円筒状である。図6に示すように、被保持部62は、保持筒部36の内部に位置する。本実施形態において被保持部62は、保持筒部36内に圧入されている。これにより、被保持部62は、ギヤハウジング32に固定されている。被保持部62の軸方向他方側(-Y側)の端部は、保持筒部36の底部36bに接触している。これにより、被保持部62は、ハウジング30に対して軸方向に位置決めされている。
【0074】
被保持部62には、第1流路部40の一部が設けられている。そのため、ハウジング30のうち被保持部62が保持される部分を第1流路部40とは異なる部分とする場合に比べて、被保持部62が保持される箇所をハウジング30に別途設ける必要がない。これにより、ハウジング30の構造が複雑化することを抑制できる。また、被保持部62を利用して第1流路部40の一部を構成することができる。これにより、第1流路部40を構成するための部材をカバー部材60の他に別途設ける必要がない。したがって、駆動装置100の部品点数が増加することを抑制できる。本実施形態では、被保持部62の軸方向他方側(-Y側)の部分によって上述した流路部42が構成されている。
【0075】
本実施形態において被保持部62は、軸方向両側に開口する筒状であるため、被保持部62を軸方向に貫通する貫通部62cを有する。貫通部62cの内部は、筒状である被保持部62の内部によって構成されている。図6に示すように、貫通部62cの内部には、延伸部41の軸方向他方側(-Y側)の端部が位置する。そのため、第1流路部40の一部を被保持部62に容易に設けることができる。また、延伸部41から吐出されたオイルOを、貫通部62cを介してカバー部材60よりも軸方向他方側へと流すことができる。これにより、第1流路部40内から第2流路部50内に流入したオイルOを底面51cとカバー本体部61との間に好適に流すことができる。したがって、第2流路部50内を流れるオイルOが開口流路部51の軸方向一方側(+Y側)の開口から漏れることを、カバー本体部61によって、より好適に抑制しやすい。
【0076】
本実施形態では、延伸部41のうち接続部41bの軸方向他方側(-Y側)の部分が貫通部62cの内部に挿入されている。本実施形態において延伸部41は、貫通部62cの内面から離れて配置されている。延伸部41と貫通部62cの内面との間には、延伸部41を囲む環状の隙間が設けられている。なお、延伸部41のうち貫通部62cの内部に位置する部分は、貫通部62cの内面と接触していてもよい。延伸部41の軸方向他方側の端部は、貫通部62cの内部に圧入されてもよい。延伸部41のうち貫通部62cの内部に位置する部分、すなわち接続部41bにおける外周面と貫通部62cの内面との間には、Oリングなどのシール部材が設けられていてもよい。
【0077】
図8に示すように、被保持部62は、本体部62aと、第2リブ62bと、を有する。本体部62aは、軸方向両側に開口する略円筒状である。本体部62aには、貫通部62cが設けられている。第2リブ62bは、被保持部62における外面に設けられている。第2リブ62bは、本体部62aの外周面から、筒状の被保持部62の中心軸を中心とする径方向の外側に突出している。第2リブ62bは、軸方向に延びている。第2リブ62bの軸方向の寸法は、例えば、本体部62aの軸方向の寸法と同じである。第2リブ62bは、筒状の被保持部62の中心軸を中心とする周方向に間隔を空けて複数設けられている。複数の第2リブ62bは、例えば、被保持部62の中心軸を中心とする周方向に等間隔に配置されている。本実施形態において第2リブ62bは、4つ設けられている。なお、複数の第2リブ62bは、被保持部62の中心軸を中心とする周方向に不等配であってもよい。また、被保持部62を圧入により固定できるのであれば、第2リブ62bは、例えば被保持部62の中心軸を中心とする周方向などの軸方向以外の方向に延びるリブであってもよく、第2リブ62bの形状も特に限定されない。
【0078】
図4に示すように、第2リブ62bは、保持筒部36の内周面に接触している。これにより、第2リブ62bは、ハウジング30と接触している。ハウジング30と接触する第2リブ62bを被保持部62の外面に設けることで、被保持部62をハウジング30に対して圧入によって固定する場合に、被保持部62とハウジング30との接触面積を小さくできる。これにより、第2リブ62bを押し潰す向きに変形させて、被保持部62をハウジング30に対して圧入によって固定しやすくできる。本実施形態において第2リブ62bは、いわゆるクラッシュリブである。
【0079】
図8に示すように、第1リブ63は、カバー本体部61と被保持部62とを繋いでいる。そのため、カバー本体部61の剛性を向上させることができる。これにより、カバー本体部61が開口流路部51内を流れるオイルOから力を受けても、カバー本体部61が軸方向に変形することを抑制できる。第1リブ63は、基部64のうち被固定部66よりも第1方向他方側(-D1側)に位置する部分における軸方向一方側(+Y側)の面と本体部62aの外周面とを繋いでいる。第1リブ63は、第2方向D2に見て、略三角形状である。
【0080】
図1に示すように、駆動装置100は、流体としてのオイルOが流れる流路90を備える。流路90は、第2貯留部P2内からオイルOをモータ10およびギヤ機構20に供給する経路である。流路90の途中には、ポンプ81と、クーラ82と、が設けられている。ポンプ81およびクーラ82は、ハウジング30の外面に取り付けられている。流路90は、吸入流路部91と、第1接続流路部92と、第2接続流路部93と、供給流路部94と、第1流路部40と、第2流路部50と、第3接続流路部97と、吐出流路部99と、を有する。
【0081】
吸入流路部91は、第2貯留部P2の内部とポンプ81とを繋いでいる。第1接続流路部92は、ポンプ81とクーラ82とを繋いでいる。第2接続流路部93は、クーラ82と供給流路部94とを繋いでいる。第2接続流路部93は、モータカバー30bに設けられている。第2接続流路部93は、ベアリング保持部34aの内部を介して、モータシャフト11aの内部に繋がっている。
【0082】
供給流路部94は、モータハウジング31の内部に位置する。本実施形態において供給流路部94は、軸方向に延びる管状の部材によって構成されている。供給流路部94は、例えば、軸方向に延びる略円筒状のパイプである。供給流路部94は、モータハウジング31の内部に開口する供給孔94aを有する。供給孔94aは、軸方向に間隔を空けて複数設けられている。供給流路部94の軸方向他方側(-Y側)の端部は、隔壁部33に設けられた孔を介して第1流路部40の軸方向一方側(+Y側)の端部に繋がっている。第1流路部40の軸方向一方側の端部は、延伸部41の軸方向一方側の端部である。
【0083】
第3接続流路部97は、ベアリング保持部35cの内部とベアリング保持部35aの内部とを繋いでいる。吐出流路部99は、ベアリング保持部35aの内部と第2貯留部P2の内部とを繋いでいる。図2に示すように、本実施形態において第3接続流路部97および吐出流路部99は、軸方向に見て、上下方向および前後方向の両方に対して傾いた方向に延びている。第3接続流路部97は、ベアリング保持部35cの内部から下側かつ前側(+X側)に延びて、ベアリング保持部35aの内部に繋がっている。吐出流路部99は、ベアリング保持部35aの内部から後側(-X側)かつ下側に延びて、第2貯留部P2の内部に繋がっている。
【0084】
図1に示すように、ポンプ81が駆動されると、第2貯留部P2内に貯留されたオイルOが吸入流路部91内に吸入され、第1接続流路部92を通ってクーラ82内に流入する。クーラ82内に流入したオイルOは、クーラ82内で冷却された後、第2接続流路部93内に流入する。第2接続流路部93内に流入したオイルOの一部は、ベアリング保持部34aの内部を介してモータシャフト11aの内部に流入する。モータシャフト11aの内部に流入したオイルOは、孔部11cからロータコア11bの内部を通ってステータ12へと供給される。第2接続流路部93内に流入したオイルOの残りは、供給流路部94内に流入する。供給流路部94内に流入したオイルOの一部は、供給孔94aからステータ12に向かって供給される。モータシャフト11aの内部からステータ12に供給されたオイルOおよび供給孔94aからステータ12に供給されたオイルOは、下側に落下して、第1貯留部P1の内部に溜まる。第1貯留部P1の内部に溜まったオイルOの一部は、隔壁部33に設けられた隔壁開口33aを介して、第2貯留部P2の内部に戻る。
【0085】
供給流路部94内に流入したオイルOの残りは、第1流路部40内に流入する。第1流路部40内に流入したオイルOは、第1流路部40内を軸方向他方側(-Y側)に流れる。第1流路部40内に流入したオイルOの一部は、供給孔41dからギヤ機構20に供給される。これにより、ギヤ機構20に好適にオイルOを供給できる。第1流路部40内に流入したオイルOの残りは、第2流路部50内に流入する。図6に示すように、第2流路部50内に流入したオイルOは、底面51cおよびカバー本体部61に沿って第2流路部50内を第1方向一方側(+D1側)へと流れ、ベアリング保持部35c内に流入する。これにより、ベアリング25cにオイルOが供給される。図1に示すように、ベアリング保持部35c内に流入したオイルOの少なくとも一部は、第3接続流路部97を通ってベアリング保持部35a内に流入する。これにより、ベアリング25aにオイルOが供給される。ベアリング保持部35a内に流入したオイルOの少なくとも一部は、吐出流路部99を通って、第2貯留部P2の内部に戻る。
【0086】
以下、上述した実施形態と異なる実施形態について説明する。以下の各実施形態の説明においては、各実施形態の説明よりも上段において説明した構成と同様の構成については、適宜同一の符号を付すなどにより説明を省略する場合がある。また、各実施形態の説明よりも上段において説明した構成の各部に対応する部分については、同一の名称を付すとともに異なる符号を付して、上述した構成とは異なる点を説明し、上述した構成と同様の点については説明を省略する場合がある。なお、以下の各実施形態において説明を省略した構成としては、矛盾しない範囲内において、各実施形態よりも上段において説明した構成と同様の構成を採用できる。
【0087】
<第2実施形態>
図11に示すように、本実施形態の駆動装置200において、カバー部材260のカバー本体部261は、第1壁部261aと、第2壁部261bと、第3壁部261cと、を有する。第1壁部261aは、開口流路部51よりも軸方向一方側(+Y側)に位置する。第1壁部261aは、開口流路部51の軸方向一方側の開口を開口流路部51の外部から覆っている。第1壁部261aは、開口流路部51の開口から僅かに軸方向一方側に離れて配置されている。第1壁部261aは、一対の接続リブ37a,37bと隙間を介して軸方向に対向している。なお、第1壁部261aは、一対の接続リブ37a,37bと接触していてもよい。
【0088】
第1壁部261aの第2方向D2の寸法は、開口流路部51の軸方向一方側(+Y側)の開口端における第2方向D2の寸法よりも大きい。第1壁部261aの第2方向一方側(+D2側)の端部は、接続リブ37aよりも第2方向一方側に位置する。第1壁部261aの第2方向他方側(-D2側)の端部は、接続リブ37bよりも第2方向他方側に位置する。本実施形態においては、第1壁部261aのうち第2方向D2の中央部が、開口流路部51の内面のうち軸方向他方側(-Y側)に位置する部分、すなわち底面51cと隙間を介して軸方向に対向している。
【0089】
第2壁部261bは、第1壁部261aの第2方向一方側(+D2側)の端部から軸方向他方側(-Y側)に突出している。第2壁部261bは、接続リブ37aの第2方向一方側に位置し、接続リブ37aと隙間を介して第2方向D2に対向している。第3壁部261cは、第1壁部261aの第2方向他方側(-D2側)の端部から軸方向他方側に突出している。第3壁部261cは、接続リブ37bの第2方向他方側に位置し、接続リブ37bと隙間を介して第2方向D2に対向している。第2壁部261bと第3壁部261cとは、一対の接続リブ37a,37bを第2方向D2に挟んでいる。
【0090】
本実施形態のように、カバー本体部261が開口流路部51の内部に位置しない場合であっても、カバー本体部261の一部が底面51cと軸方向に対向することで、第2流路部50内を流れるオイルOが開口流路部51の軸方向一方側(+Y側)の開口から漏れることを、カバー本体部261によって抑制できる。カバー部材260におけるその他の構成は、第1実施形態におけるカバー部材60のその他の構成と同様である。駆動装置200におけるその他の構成は、第1実施形態における駆動装置100のその他の構成と同様である。
【0091】
なお、第2壁部261b、第3壁部261c、接続リブ37a,37bなどに、第1実施形態で述べた第2リブ62bおよび第3リブ66bのようなクラッシュリブを設けて、カバー部材260を圧入により固定してもよい。また、第1壁部261aと接続リブ37a,37bとの間の隙間、第2壁部261bと接続リブ37aとの間の隙間、および第3壁部261cと接続リブ37bとの間の隙間の、少なくともいずれか1つの隙間に接着剤を介在させ、カバー部材260を固定してもよい。
【0092】
<第3実施形態>
図12に示すように、本実施形態の駆動装置300において、カバー部材360は、第1壁部361aと、第2壁部361bと、第3壁部361cと、を有する。第1壁部361aは、第2方向D2の寸法が開口流路部51の軸方向一方側(+Y側)の開口端における第2方向D2の寸法と同じである点を除いて、第2実施形態における第1壁部261aと同様である。
【0093】
第2壁部361bは、第1壁部361aの第2方向一方側(+D2側)の端部から軸方向他方側(-Y側)に突出している。第3壁部361cは、第1壁部361aの第2方向他方側(-D2側)の端部から軸方向他方側に突出している。第2壁部361bおよび第3壁部361cは、第2方向D2に間隔を空けて互いに対向している。第2壁部361bおよび第3壁部361cは、開口流路部51内に軸方向一方側(+Y側)から挿入されている。第2壁部361bは、第1面51aと接触している。第3壁部361cは、第2面51bと接触している。
【0094】
本実施形態においてカバー本体部361は、第2方向D2に間隔を空けて配置された一対の壁部である第2壁部361bおよび第3壁部361cが開口流路部51内に嵌め合わされることで、開口流路部51の軸方向一方側(+Y側)の開口を塞いでいる。これにより、開口流路部51内を流れるオイルOが開口流路部51の軸方向一方側の開口から漏れることをより好適に抑制できる。カバー部材360におけるその他の構成は、第1実施形態におけるカバー部材60のその他の構成と同様である。駆動装置300におけるその他の構成は、第1実施形態における駆動装置100のその他の構成と同様である。なお、カバー部材360は、開口流路部51内に圧入により固定されてもよいし、開口流路部51内に接着により固定されてもよい。
【0095】
<第4実施形態>
図13に示すように、本実施形態の駆動装置400において、カバー部材460の被保持部462は、第1方向D1の両側に開口する筒状である。被保持部462は、例えば、円筒状である。被保持部462は、開口流路部451内に軸方向一方側(+Y側)から嵌め合わされている。被保持部462は、例えば、開口流路部451の第1方向他方側(-D1側)の端部内に位置する。
【0096】
本実施形態において被保持部462には、第2流路部450の一部が設けられている。そのため、ハウジング30のうち被保持部462が保持される部分を第2流路部450と異なる部分とする場合に比べて、被保持部462が保持される箇所をハウジング30に別途設ける必要がない。これにより、ハウジング30の構造が複雑化することを抑制できる。また、被保持部462を利用して第2流路部450の一部を構成することができる。本実施形態の第2流路部450は、一部が被保持部462によって構成されている点を除いて、第1実施形態の第2流路部50と同様の構成である。本実施形態の開口流路部451は、第1実施形態において第2流路部50を構成する溝のうち被保持部462が嵌め合わされた部分以外によって構成されている点を除いて、第1実施形態における開口流路部51と同様である。
【0097】
本実施形態においてカバー本体部461は、被保持部462の第1方向一方側(+D1側)の端部における軸方向一方側(+Y側)の縁部から第1方向一方側に延びている。カバー本体部461は、板面が軸方向を向き第1方向D1に長い略長方形板状である。図14に示すように、本実施形態において第1リブ463は、被保持部462の第1方向一方側の端部における軸方向一方側の縁部とカバー本体部461の軸方向他方側(-Y側)の面とを繋いでいる。カバー部材460のその他の構成は、第1実施形態におけるカバー部材60のその他の構成と同様である。駆動装置400のその他の構成は、第1実施形態における駆動装置100のその他の構成と同様である。
【0098】
<第5実施形態>
図15に示すように、本実施形態の駆動装置500において、カバー部材560の被保持部562には、第2リブ62bが設けられていない。本実施形態において被保持部562は、本体部62aからなる。図示は省略するが、被保持部562は、保持筒部36内に挿入されている。被保持部562は、例えば、保持筒部36内に隙間嵌めされている。
【0099】
本実施形態において被固定部566は、本体部66aから軸方向一方側(+Y側)に突出する筒状部566cを有する。本実施形態において筒状部566cは、軸方向一方側に開口する略円筒状である。筒状部566cが設けられることによって、被固定部566には、軸方向一方側に開口する穴部566dが設けられている。穴部566dの内部は、筒状部566cの内部によって構成されている。本実施形態において穴部566dは、軸方向他方側(-Y側)に窪み、軸方向他方側に底部を有する穴である。本実施形態において穴部566dの底部は、本体部66aによって構成されている。本実施形態において穴部566dは、軸方向に見て、円形状である。穴部566dの内径は、被保持部562の内径よりも小さい。
【0100】
被固定部566に穴部566dが設けられることで、カバー部材560を開口流路部51に固定する際、穴部566d内に治具JGの一部を挿入することができる。これにより、治具JGを動かすことによって、被固定部566の第2方向D2の位置を開口流路部51の開口端に合わせやすくできる。したがって、カバー部材560を第2流路部50に固定する作業を容易にできる。また、本実施形態のように保持筒部36内に被保持部562が固定されない構成の場合、被固定部566を第2流路部50に固定する前の状態において、保持筒部36内に被保持部562を挿入しても、カバー部材560がハウジング30に対して動きやすくなる虞がある。このような場合であっても、被固定部566に穴部566dを設けることで、穴部566d内に挿入した治具JGの一部を介して、被固定部566を第2流路部50に対して好適に位置決めしやすくできる。
【0101】
本実施形態においてカバー部材560を固定するための治具JGは、第1嵌合部JG1と、第2嵌合部JG2と、基部JG3と、を有する。第1嵌合部JG1および第2嵌合部JG2は、基部JG3から軸方向他方側(-Y側)に延びる円柱状である。第1嵌合部JG1は、被保持部562の本体部62a内に軸方向一方側(+Y側)から嵌め合わされる。第2嵌合部JG2は、被固定部566の穴部566d内に軸方向一方側から嵌め合わされる。第2嵌合部JG2の外径は、第1嵌合部JG1の外径よりも小さい。
【0102】
カバー部材560を固定する作業者等は、第1嵌合部JG1を被保持部562内に嵌め合わせ、第2嵌合部JG2を穴部566d内に嵌め合わせた状態で、被保持部562の軸方向他方側(-Y側)の端部を保持筒部36内に挿入する。この状態で作業者等は、被保持部562を通り軸方向に延びる軸線J4回りに治具JGを回転させて、カバー部材560を回転させる。軸線J4は、被保持部562の中心および保持筒部36の中心を通り軸方向に延びる仮想軸線である。作業者等は、治具JGによってカバー部材560を軸線J4回りに回転させて、軸線J4回りの周方向において、被固定部566の位置を開口流路部51の位置に合わせる。被固定部566の位置を開口流路部51に合わせた状態で、作業者等は、治具JGを軸方向他方側に移動させて、被固定部566を開口流路部51内に押し込み、被固定部566を開口流路部51内に圧入する。このとき、被固定部566は、穴部566dの底部に接触する第2嵌合部JG2によって軸方向他方側に押される。作業者等は、図16に示すように、本体部66aの軸方向一方側(+Y側)の面が軸方向において開口流路部51の軸方向一方側の開口端と同じ位置になるまでカバー部材560を開口流路部51内に押し込む。これにより、第2流路部50に対するカバー部材560の固定が完了する。
【0103】
本実施形態においてカバー本体部561における挿入部567は、第1方向D1と直交する断面の形状が、第1実施形態の挿入部67と異なる。本実施形態において第1方向D1と直交する断面において挿入部567の断面形状は、第2方向D2に長い略長方形状である。挿入部567のうち軸方向他方側(-Y側)の面567cは、第1実施形態の傾斜面67cと異なり、第2方向D2の位置によらず軸方向の位置が変化しない面である。面567cは、例えば、第2方向D2と平行な面である。本実施形態の挿入部567において、第1対向面567aの軸方向の寸法と第2対向面567bの軸方向の寸法とは、互いに同じである。挿入部567のうち基部564は、第1方向D1と直交する断面の形状が異なる点を除いて、第1実施形態の基部64と同様の構成である。挿入部567のうち傾斜部565は、第1方向D1と直交する断面の形状が異なる点を除いて、第1実施形態の傾斜部65と同様の構成である。カバー部材560のその他の構成は、第1実施形態におけるカバー部材60のその他の構成と同様である。駆動装置500のその他の構成は、第1実施形態における駆動装置100のその他の構成と同様である。
【0104】
なお、穴部566dは、治具JGの一部が挿入可能であれば、どのような形状であってもよい。例えば、上述した筒状部566cが軸方向に見てC字形状の場合、穴部566dの内縁は、軸方向に見てC字形状となる。穴部566dは、本体部66aに設けられていてもよい。この場合、被固定部566には筒状部566cが設けられずに、穴部566dは、本体部66aの軸方向一方側(+Y側)の面から軸方向他方側(-Y側)に窪んでもよい。穴部566dは、被固定部566を軸方向に貫通する孔であってもよい。この場合、治具JGは、被固定部566のうち穴部566d以外の部分に軸方向一方側から接触可能な部分を有してもよい。
【0105】
本明細書において「作業者等」とは、各作業を行う作業者および組立装置等を含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、組立装置のみによって行われてもよいし、作業者と組立装置とによって行われてもよい。
【0106】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。カバー部材は、ハウジングに固定されてもよいし、ハウジングに固定された他の部材に固定されてもよい。カバー部材を固定する方法は、特に限定されない。カバー部材は、接着によって固定されてもよいし、ねじ止めによって固定されてもよい。カバー部材と第1流路部の少なくとも一部とは、同一の単一部材の一部であってもよい。上述した第1実施形態において、カバー部材60と延伸部41とは、同一の単一部材の一部であってもよい。カバー部材は、複数設けられてもよい。カバー本体部の一部は、開口流路部の内面のうち軸方向他方側に位置する部分と隙間を介して軸方向に対向していなくてもよい。カバー本体部の形状は、特に限定されない。カバー本体部は、一部が開口流路部の外部に位置してもよいし、全体が開口流路部の外部に位置してもよい。
【0107】
カバー本体部が延びる方向と直交する断面におけるカバー本体部の断面形状は、特に限定されない。カバー本体部が延びる方向と直交する断面におけるカバー本体部の断面形状は、三角形状であってもよいし、四角形状であってもよいし、半円形状であってもよいし、C字形状であってもよい。カバー本体部は、板状であってもよい。カバー本体部は、傾斜部を有しなくてもよい。
【0108】
カバー部材における被保持部は、ハウジングに保持されるならば、ハウジングのいずれの箇所に保持されてもよい。被保持部における外面には、第2リブが設けられなくてもよい。被保持部の形状は、特に限定されない。上述した第1実施形態において被保持部62は、軸方向に見て、C字形状であってもよい。上述した第4実施形態において被保持部462は、第1方向D1に見て、C字形状であってもよい。
【0109】
被保持部に第1流路部の一部が設けられるとは、被保持部が第1流路部の一部を構成してもよいし、被保持部の内部に第1流路部の一部が設けられていてもよい。上述した第1実施形態において、延伸部41の軸方向他方側の端部は、被保持部62の軸方向他方側の端部と軸方向において同じ位置に位置してもよいし、被保持部62の軸方向他方側の端部よりも軸方向他方側に位置してもよい。延伸部41の軸方向他方側の端部が被保持部62の軸方向他方側の端部よりも軸方向他方側に位置する場合、延伸部41の吐出口は、延伸部41の軸方向他方側の端部ではなく、延伸部41の外周面に開口してもよい。被保持部に第2流路部の一部が設けられるとは、被保持部が第2流路部の一部を構成してもよいし、被保持部の内部に第2流路部の一部が設けられていてもよい。被保持部には、第1流路部の一部と第2流路部の一部とが設けられていてもよい。
【0110】
カバー本体部の被固定部は、第2流路部に固定されているならば、第2流路部のいずれの箇所にどのように固定されてもよい。被固定部における外面には、第3リブが設けられなくてもよい。被固定部は、カバー本体部のうちの傾斜部に設けられてもよい。カバー本体部には、被固定部が設けられなくてもよい。
【0111】
第1流路部は、軸方向に延びるならば、どのような構成であってもよい。第1流路部は、ハウジングに設けられた孔などによって構成されてもよい。第2流路部が延びる第1方向は、軸方向と交差する方向であれば、どのような方向であってもよい。第2流路部は、開口流路部以外の部分を有してもよい。開口流路部は、溝によって構成されなくてもよい。開口流路部は、第2流路部のうち軸方向一方側に開口する孔が設けられた部分であってもよい。開口流路部は、第1方向に間隔を空けて複数設けられてもよい。第2流路部は、複数設けられてもよい。この場合、カバー部材は、第2流路部ごとに設けられてもよいし、2つ以上の第2流路部に跨って設けられてもよい。第2流路部が複数設けられる場合、第1流路部は、第2流路部ごとに設けられてもよいし、2つ以上の第2流路部に繋がってもよい。第1流路部内および第2流路部内を流れる流体は、特に限定されず、オイル以外の流体であってもよい。第2流路部内からベアリング保持部内に供給される流体は、例えば、ベアリング保持部内から駆動装置の他の部品へと流れて当該他の部品を冷却する冷媒であってもよい。
【0112】
第2流路部が繋がるベアリング保持部は、ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングが保持されるベアリング保持部であれば、どのようなベアリング保持部であってもよい。第2流路部が繋がるベアリング保持部は、例えば、上述した第1実施形態におけるベアリング保持部35a,35b,35d,35eのいずれかであってもよい。
【0113】
本発明が適用される駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。モータの中心軸線は、どのような方向に延びていてもよい。
【0114】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、前記ロータに接続されたギヤ機構と、前記ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングと、前記ベアリングを保持するベアリング保持部を有し、前記モータおよび前記ギヤ機構を内部に収容するハウジングと、軸方向に延びる第1流路部と、前記第1流路部に繋がり、軸方向と交差する第1方向に延びる第2流路部と、カバー本体部を有するカバー部材と、を備え、前記第1流路部は、軸方向に見て、前記ベアリング保持部の外側に位置し、前記第2流路部は、軸方向一方側に開口する開口流路部を有し、かつ、軸方向に見て前記ベアリング保持部の外側から前記ベアリング保持部の内部に繋がり、前記カバー本体部の少なくとも一部は、前記開口流路部の内面のうち軸方向他方側に位置する部分と隙間を介して軸方向に対向している、駆動装置。
(2) 前記開口流路部は、前記第1方向に延びる溝によって構成されている、(1)に記載の駆動装置。
(3) 前記カバー部材は、前記ハウジングに対して保持された被保持部を有する、(1)または(2)に記載の駆動装置。
(4) 前記被保持部には、前記第1流路部と前記第2流路部との少なくとも一方の一部が設けられている、(3)に記載の駆動装置。
(5) 前記第1流路部は、軸方向に延びる延伸部を有し、前記被保持部は、前記被保持部を軸方向に貫通する貫通部を有し、前記延伸部の軸方向他方側の端部は、前記貫通部の内部に位置する、(4)に記載の駆動装置。
(6) 前記カバー部材は、前記カバー本体部と前記被保持部とを繋ぐ第1リブを有する、(3)から(5)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(7) 前記被保持部における外面には、前記ハウジングと接触する第2リブが設けられている、(3)から(6)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(8) 前記ベアリング保持部は、前記ベアリングの軸方向他方側に位置する対向壁部と、前記対向壁部から軸方向一方側に突出し、前記ベアリングを囲む周壁部と、を有し、前記ベアリングと前記対向壁部との軸方向の間には、前記第2流路部が繋がる隙間が設けられ、前記カバー本体部は、前記被保持部に繋がり前記第1方向に延びる基部と、前記基部のうち前記第1方向において前記ベアリング保持部に近い側の端部に繋がり、前記第1方向において前記ベアリング保持部に近づくに従って軸方向他方側に位置する傾斜部と、を有し、前記基部には、前記第2流路部に固定された被固定部が設けられている、(3)から(7)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(9) 前記カバー本体部は、前記第2流路部に固定された被固定部を有する、(3)から(7)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(10) 前記被固定部における外面には、前記開口流路部の内面と接触する第3リブが設けられている、(8)または(9)に記載の駆動装置。
(11) 前記被固定部には、軸方向一方側に開口する穴部が設けられている、(8)から(10)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(12) 前記ベアリング保持部は、前記ベアリングの軸方向他方側に位置する対向壁部と、前記対向壁部から軸方向一方側に突出し、前記ベアリングを囲む周壁部と、を有し、前記ベアリングと前記対向壁部との軸方向の間には、前記第2流路部が繋がる隙間が設けられ、前記カバー本体部は、前記第1方向において前記ベアリング保持部に近づくに従って軸方向他方側に位置する傾斜部を有する、(1)から(7)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(13) 前記カバー本体部の少なくとも一部は、前記開口流路部の内部に位置する、(1)から(12)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(14) 前記第1方向は、上下方向と交差する方向であり、前記開口流路部の内面は、軸方向および前記第1方向の両方と交差する第2方向の一方側に位置する第1面と、前記第2方向の他方側に位置する第2面と、を有し、前記第2面は、前記第1面よりも上下方向の下側に位置し、前記カバー本体部のうち前記開口流路部の内部に位置する部分は、前記第1面および前記第2面と隙間を介して前記第2方向に対向する挿入部を有する、(13)に記載の駆動装置。
(15) 前記挿入部は、前記第1面と第1隙間を介して前記第2方向に対向し、かつ、前記第2面と第2隙間を介して前記第2方向に対向し、前記第2隙間の前記第2方向の寸法は、前記第1隙間の前記第2方向の寸法よりも小さい、(14)に記載の駆動装置。
(16) 前記挿入部は、前記第1面と隙間を介して対向する第1対向面と、前記第2面と隙間を介して対向する第2対向面と、を有し、前記第2対向面の軸方向の寸法は、前記第1対向面の軸方向の寸法よりも大きい、(14)または(15)に記載の駆動装置。
【0115】
以上、本明細書において説明した構成および方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0116】
10…モータ、11…ロータ、20…ギヤ機構、25c…ベアリング、30…ハウジング、35c…ベアリング保持部、35f…周壁部、35j…対向壁部、40…第1流路部、41…延伸部、50,60,450…第2流路部、51,451…開口流路部、51a…第1面、51b…第2面、60,260,360,460,560…カバー部材、61,261,361,461,561…カバー本体部、62,462,562…被保持部、62b…第2リブ、62c…貫通部、63,463…第1リブ、64,564…基部、65,565…傾斜部、66,566…被固定部、66b…第3リブ、67,567…挿入部、67a,567a…第1対向面、67b,567b…第2対向面、100,200,300,400,500…駆動装置、566d…穴部、D1…第1方向、D2…第2方向、G1…第1隙間、G2…第2隙間、J1…中心軸線
図1
図2
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図10
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