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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172513
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20241205BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20241205BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16H57/04 J
H02K7/116
H02K7/08 Z
F16H57/04 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090279
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】松崎 良亮
(72)【発明者】
【氏名】里田 大志
【テーマコード(参考)】
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AB02
3J063AC01
3J063BB01
3J063XD17
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD42
3J063XD47
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE15
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE31
5H607EE34
5H607FF01
5H607GG01
5H607GG08
5H607JJ06
5H607JJ10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ベアリング保持部内への流体の供給が不十分になることを抑制できる構造を有する駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置は、中心軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、ロータに接続されたギヤ機構と、ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングと、ベアリングを保持するベアリング保持部を有し、モータおよびギヤ機構を内部に収容するハウジングと、軸方向に延びる第1流路部と、第1流路部に繋がり、軸方向と交差する交差方向に延びる第2流路部と、シール部材と、を備える。ハウジングは、ハウジングの外面からベアリング保持部の内部まで延びる孔部を有する。第2流路部は、孔部の少なくとも一部によって構成され、かつ、ベアリング保持部の内部に繋がっている。孔部のうちハウジングの外面に開口する開口端部は、シール部材によって塞がれている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、
前記ロータに接続されたギヤ機構と、
前記ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングと、
前記ベアリングを保持するベアリング保持部を有し、前記モータおよび前記ギヤ機構を内部に収容するハウジングと、
軸方向に延びる第1流路部と、
前記第1流路部に繋がり、軸方向と交差する交差方向に延びる第2流路部と、
シール部材と、
を備え、
前記ハウジングは、前記ハウジングの外面から前記ベアリング保持部の内部まで延びる孔部を有し、
前記第2流路部は、前記孔部の少なくとも一部によって構成され、かつ、前記ベアリング保持部の内部に繋がり、
前記孔部のうち前記ハウジングの外面に開口する開口端部は、前記シール部材によって塞がれている、駆動装置。
【請求項2】
前記ギヤ機構のうち前記ベアリングに支持される部分は、軸方向に延びる軸線回りに回転可能であり、
前記開口端部は、前記軸線よりも上下方向の上側に位置する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記ギヤ機構は、
前記ロータに接続された減速装置と、
前記減速装置に接続された差動装置と、
を有し、
前記減速装置は、軸方向に延び前記ベアリング保持部を通る軸線回りに回転可能なギヤを有し、
前記差動装置は、軸方向に延びる差動軸線回りに回転可能なギヤを有し、
前記差動軸線は、前記軸線よりも、軸方向および上下方向の両方と直交する直交方向の一方側に位置し、
前記開口端部は、前記軸線よりも前記直交方向の他方側に位置する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記ギヤ機構は、
前記ロータに接続された減速装置と、
前記減速装置に接続された差動装置と、
を有し、
前記減速装置は、軸方向に延び前記ベアリング保持部を通る軸線回りに回転可能なギヤを有し、
前記差動装置は、軸方向に延びる差動軸線回りに回転可能なギヤを有し、
前記差動軸線および前記開口端部は、前記軸線よりも、軸方向および上下方向の両方と直交する直交方向の一方側に位置する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ベアリング保持部は、複数設けられ、
前記第2流路部は、複数設けられ、
前記複数の第2流路部は、互いに異なる前記ベアリング保持部の内部に繋がっている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第2流路部は、複数設けられ、
前記ベアリング保持部の内部には、2つ以上の前記第2流路部が繋がっている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記複数の第2流路部は、互いに繋がる2つ以上の前記第2流路部を含み、
前記第1流路部は、前記2つ以上の第2流路部同士が互いに繋がる部分に繋がっている、請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第1流路部のうち前記第2流路部に繋がる部分における流路断面積と、前記第2流路部のうち前記ベアリング保持部の内部に繋がる部分における流路断面積とは、互いに同じである、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記第1流路部には、前記ハウジングの内部に開口する供給孔が設けられ、
前記第1流路部のうち前記第2流路部に繋がる部分における流路断面積は、前記第1流路部のうち前記供給孔が設けられた部分における流路断面積よりも小さい、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記孔部は、
前記ハウジングの外面に開口する第1孔部と、
前記ベアリング保持部の内部に繋がる第2孔部と、
を有し、
前記交差方向と直交する断面において、前記第1孔部の断面積は、前記第2孔部の断面積よりも大きく、
前記第1流路部は、前記第2流路部のうち前記第1孔部によって構成された部分に繋がっている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記ハウジングは、軸方向に窪み前記交差方向に延びる溝を有し、
前記溝は、前記ハウジングの内部に開口し、前記ベアリング保持部の内部に繋がり、かつ、前記第2流路部と軸方向に重なっている、請求項1から10のいずれか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潤滑油によって軸受部の潤滑を行う構造を有するモータ内蔵型駆動装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-106776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータ内蔵型駆動装置には、軸受部が保持された保持部の内部に潤滑油を供給する流路部が設けられる場合がある。この場合、当該流路部の少なくとも一部が溝によって構成されるときに、当該溝の開口から潤滑油が漏れる虞があった。そのため、軸受部が保持された保持部の内部に供給される潤滑油の量が不十分になる虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ベアリング保持部内への流体の供給が不十分になることを抑制できる構造を有する駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、中心軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、前記ロータに接続されたギヤ機構と、前記ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングと、前記ベアリングを保持するベアリング保持部を有し、前記モータおよび前記ギヤ機構を内部に収容するハウジングと、軸方向に延びる第1流路部と、前記第1流路部に繋がり、軸方向と交差する交差方向に延びる第2流路部と、シール部材と、を備える。前記ハウジングは、前記ハウジングの外面から前記ベアリング保持部の内部まで延びる孔部を有する。前記第2流路部は、前記孔部の少なくとも一部によって構成され、かつ、前記ベアリング保持部の内部に繋がっている。前記孔部のうち前記ハウジングの外面に開口する開口端部は、前記シール部材によって塞がれている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、駆動装置において、ベアリング保持部内への流体の供給が不十分になることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態における駆動装置を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態におけるギヤカバーおよび延伸部を軸方向一方側から見た図である。
図3図3は、第1実施形態におけるギヤカバーの一部を示す斜視図である。
図4図4は、第1実施形態における駆動装置の一部を示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態におけるギヤカバーの一部を示す斜視図であって、図3とは異なる角度からギヤカバーの一部を見た図である。
図6図6は、第2実施形態における駆動装置の一部を示す断面図である。
図7図7は、第3実施形態における駆動装置の一部を示す図である。
図8図8は、第4実施形態における駆動装置の一部を示す図である。
図9図9は、第5実施形態における駆動装置の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、上下方向である。Z軸の矢印が向く側(+Z側)は、上側であり、Z軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)は、下側である。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、以下の実施形態における駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、X軸の矢印が向く側(+X側)は、車両における前側であり、X軸の矢印が向く側と逆側(-X側)は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、Y軸の矢印が向く側(+Y側)は、車両における右側であり、Y軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)は、車両における左側である。
【0010】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両における左側であり、-Y側は、車両における右側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0011】
適宜図に示す中心軸線J1は、上下方向と交差する方向に延びる仮想軸線である。より詳細には、中心軸線J1は、上下方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸線J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線J1を中心とする周方向、つまり中心軸線J1の軸回りを「周方向θ1」と呼ぶ。周方向θ1は、図において適宜、矢印θ1で示している。以下の説明においては、軸方向のうち右側(+Y側)を「軸方向一方側」と呼び、軸方向のうち左側(-Y側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。上下方向は、例えば、鉛直方向であり、前後方向および左右方向(軸方向)は、例えば、鉛直方向と直交する水平方向である。以下の実施形態において、前後方向(X軸方向)は、軸方向および上下方向の両方と直交する「直交方向」に相当する。後側(-X側)は、「直交方向の一方側」に相当し、前側(+X側)は、「直交方向の他方側」に相当する。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。図1に示すように、駆動装置100は、モータ10と、ギヤ機構20と、ハウジング30と、を備える。ハウジング30は、モータ10およびギヤ機構20を内部に収容している。ハウジング30は、モータ10を内部に収容するモータハウジング31と、ギヤ機構20を内部に収容するギヤハウジング32と、を有する。
【0013】
モータ10は、中心軸線J1を中心として回転可能なロータ11と、ロータ11と隙間を介して対向するステータ12と、を有する。ロータ11は、中心軸線J1に沿って配置されたモータシャフト11aと、モータシャフト11aに固定されたロータコア11bと、を有する。モータシャフト11aは、中心軸線J1を中心として回転可能である。モータシャフト11aは、軸方向に延びている。本実施形態においてモータシャフト11aは、水平方向に延びる中空シャフトである。モータシャフト11aは、一対のベアリング13a,13bによって、中心軸線J1回りに回転可能に支持されている。一対のベアリング13a,13bは、例えば、ボールベアリングなどの転がり軸受である。モータシャフト11aは、モータシャフト11aの内部とモータシャフト11aの外部とを繋ぐ孔部11cを有する。孔部11cは、周方向θ1に間隔を空けて複数設けられている。
【0014】
ステータ12は、ロータ11の径方向外側に位置する。ステータ12は、ロータ11を囲む環状である。ステータ12は、ステータコア12aと、コイルアセンブリ12bと、を有する。ステータコア12aは、ロータコア11bの径方向外側に位置し、ロータコア11bと隙間を介して対向して配置されている。ステータコア12aは、例えば、電磁鋼板などの板部材が軸方向に複数積層されて構成されている。コイルアセンブリ12bは、ステータコア12aに取り付けられた複数のコイル12cを有する。複数のコイル12cは、ハウジング30の内部に収容されたインバータ部15にバスバー14を介して電気的に接続されている。コイルアセンブリ12bは、ステータコア12aよりも軸方向に突出するコイルエンド12d,12eを有する。
【0015】
ギヤ機構20は、ロータ11に接続されている。より詳細には、ギヤ機構20は、モータシャフト11aの軸方向他方側(-Y側)の端部に接続されている。ギヤ機構20は、ロータ11の回転を車両の車軸に伝達する。ギヤ機構20は、ロータ11に接続された減速装置21と、減速装置21に接続された差動装置22と、を有する。
【0016】
減速装置21は、第1ギヤシャフト23aと、第2ギヤシャフト23bと、第1ギヤ24aと、第2ギヤ24bと、第3ギヤ24cと、を有する。第1ギヤシャフト23aは、軸方向に延びている。第1ギヤシャフト23aは、一対のベアリング25a,25bによって中心軸線J1回りに回転可能に支持されている。一対のベアリング25a,25bは、例えば、ボールベアリングなどの転がり軸受である。第1ギヤシャフト23aは、モータシャフト11aの軸方向他方側(-Y側)に位置する。第1ギヤシャフト23aは、モータシャフト11aと軸方向に連結されている。
【0017】
第2ギヤシャフト23bは、軸方向に延びる中間軸線J2回りに回転可能である。本実施形態において中間軸線J2は、中心軸線J1と平行に延びる仮想軸線である。図2に示すように、中間軸線J2は、例えば、中心軸線J1よりも上側に位置し、かつ、中心軸線J1よりも後側(-X側)に位置する。本実施形態において中間軸線J2は、軸方向に延び後述するベアリング保持部35cを通る軸線に相当する。以下の説明においては、中間軸線J2を中心とする周方向、すなわち中間軸線J2の軸回りを「周方向θ2」と呼ぶ。周方向θ2は、図において適宜、矢印θ2で示している。図1に示すように、第2ギヤシャフト23bは、軸方向に延びている。第2ギヤシャフト23bは、一対のベアリング25c,25dによって中間軸線J2回りに回転可能に支持されている。つまり、ギヤ機構20のうち後述するベアリング保持部35cに保持されたベアリング25cに支持される部分、すなわち第2ギヤシャフト23bは、軸方向に延びる軸線としての中間軸線J2回りに回転可能である。一対のベアリング25c,25dは、例えば、ボールベアリングなどの転がり軸受である。
【0018】
第1ギヤ24aは、第1ギヤシャフト23aの外周面に設けられている。第2ギヤ24bおよび第3ギヤ24cは、第2ギヤシャフト23bの外周面に設けられている。第2ギヤ24bは、第1ギヤ24aと噛み合っている。第3ギヤ24cは、第1ギヤ24aおよび第2ギヤ24bよりも軸方向一方側(+Y側)に位置する。本実施形態において減速装置21は、中間軸線J2回りに回転可能なギヤとして、第2ギヤ24bおよび第3ギヤ24cを有する。
【0019】
差動装置22は、リングギヤ22aと、デフケース22bと、差動機構部22cと、を有する。リングギヤ22aは、軸方向に延びる差動軸線J3回りに回転可能である。本実施形態において差動軸線J3は、中心軸線J1と平行に延びる仮想軸線である。図2に示すように、差動軸線J3は、例えば、中心軸線J1よりも上側に位置し、かつ、中間軸線J2よりも下側に位置する。差動軸線J3は、例えば、中心軸線J1および中間軸線J2よりも後側(-X側)に位置する。図1に示すように、リングギヤ22aは、第3ギヤ24cと噛み合っている。リングギヤ22aは、デフケース22bに固定されている。リングギヤ22aの下側の端部は、ギヤハウジング32内に貯留されたオイルOに浸漬している。リングギヤ22aが回転することで、オイルOがかき上げられる。かき上げられたオイルOは、例えば、減速装置21および差動装置22に潤滑油として供給される。
【0020】
デフケース22bは、内部に差動機構部22cを収容するケース部22dと、ケース部22dから軸方向に延びる一対のデフケースシャフト22e,22fと、を有する。デフケースシャフト22eは、ケース部22dから軸方向他方側(-Y側)に延びている。デフケースシャフト22fは、ケース部22dから軸方向一方側(+Y側)に延びている。一対のデフケースシャフト22e,22fは、差動軸線J3を中心とする筒状である。デフケースシャフト22eは、ベアリング25eによって差動軸線J3回りに回転可能に支持されている。ベアリング25eは、例えば、ボールベアリングなどの転がり軸受である。図示は省略するが、デフケースシャフト22fも、デフケースシャフト22eと同様にベアリングによって差動軸線J3回りに回転可能に支持されている。
【0021】
差動機構部22cは、デフケース22bの内部に位置する。差動機構部22cには、デフケース22bを介してリングギヤ22aの回転が伝わる。差動機構部22cには、一対の出力シャフト22gが接続されている。一対の出力シャフト22gは、一対のデフケースシャフト22e,22fの内部にそれぞれ通されている。一対の出力シャフト22gには、それぞれ図示しない車輪が接続される。差動機構部22cは、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の出力シャフト22gにトルクを伝える。
【0022】
モータ10から出力されるトルクは、モータシャフト11a、第1ギヤシャフト23a、第1ギヤ24a、第2ギヤ24b、第2ギヤシャフト23b、および第3ギヤ24cを介して差動装置22のリングギヤ22aへ伝達される。リングギヤ22aに伝達されたモータ10のトルクは、差動機構部22cおよび出力シャフト22gを介して車輪に伝わる。このように、ギヤ機構20は、車両の車輪にモータ10のトルクを伝達する。
【0023】
本実施形態のハウジング30において、モータハウジング31とギヤハウジング32とは軸方向に並んで配置されている。ギヤハウジング32は、モータハウジング31の軸方向他方側(-Y側)に位置する。ギヤハウジング32は、モータハウジング31の軸方向他方側に繋がっている。本実施形態においてハウジング30は、ハウジング本体30aと、モータカバー30bと、ギヤカバー30cと、を有する。ハウジング本体30aとモータカバー30bとギヤカバー30cとは、互いに別体である。ハウジング本体30aは、第1周壁部30dと、第2周壁部30eと、隔壁部33と、を有する。本実施形態においてギヤハウジング32は、隔壁部33と第2周壁部30eとギヤカバー30cとによって構成されている。本実施形態においてモータハウジング31は、隔壁部33と第1周壁部30dとモータカバー30bとによって構成されている。
【0024】
第1周壁部30dは、軸方向一方側(+Y側)に開口する筒状である。第1周壁部30dの軸方向他方側(-Y側)の端部には、隔壁部33が設けられている。第1周壁部30dの軸方向一方側の開口は、第1周壁部30dの軸方向一方側の端部に固定されたモータカバー30bによって塞がれている。モータカバー30bには、ベアリング13aが保持されたベアリング保持部34aが設けられている。第2周壁部30eは、軸方向他方側に開口する筒状である。第2周壁部30eの軸方向一方側の端部には、隔壁部33が設けられている。第2周壁部30eの軸方向他方側の開口は、第2周壁部30eの軸方向他方側の端部に固定されたギヤカバー30cによって塞がれている。ギヤカバー30cは、ギヤ機構20を軸方向一方側から覆う蓋部30fと、蓋部30fの径方向外縁部から軸方向一方側に突出する第3周壁部30gと、を有する。第3周壁部30gの軸方向一方側の端部は、第2周壁部30eの軸方向他方側の端部と繋がっている。蓋部30fの軸方向一方側の面には、ベアリング25aを保持するベアリング保持部35aと、ベアリング25cを保持するベアリング保持部35cと、ベアリング25eを保持するベアリング保持部35eと、が設けられている。各ベアリング保持部35a,35c,35eは、各ベアリング25a,25c,25eを囲む略円環状である。
【0025】
隔壁部33は、モータハウジング31の内部とギヤハウジング32の内部とを区画している。隔壁部33は、モータハウジング31の内部とギヤハウジング32の内部とを軸方向に隔てる壁部である。隔壁部33は、モータハウジング31の内部とギヤハウジング32の内部とを繋ぐ隔壁開口33aを有する。
【0026】
隔壁部33のうちモータハウジング31の内面の一部を構成する部分、すなわち隔壁部33の軸方向一方側(+Y側)の面には、ベアリング13bを保持するベアリング保持部34bが設けられている。隔壁部33のうちギヤハウジング32の内面の一部を構成する部分、すなわち隔壁部33の軸方向他方側(-Y側)の面には、ベアリング25bを保持するベアリング保持部35bと、ベアリング25dを保持するベアリング保持部35dと、が設けられている。各ベアリング保持部34b,35b,35dは、各ベアリング13b,25b,25dを囲む略円環状である。ベアリング保持部34bの内部とベアリング保持部35bの内部とは、互いに軸方向に繋がっており、隔壁部33を軸方向に貫通する孔33bを構成している。
【0027】
本実施形態においてハウジング30は、流体としてのオイルOが貯留される貯留部Pを有する。オイルOは、モータ10を冷却する冷媒として使用される。また、オイルOは、減速装置21および差動装置22に対して潤滑油として使用される。オイルOとしては、例えば、冷媒および潤滑油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。貯留部Pは、ハウジング30の下側の部分によって構成されている。貯留部Pは、モータハウジング31に設けられた第1貯留部P1と、ギヤハウジング32に設けられた第2貯留部P2と、を有する。第1貯留部P1の内部は、モータハウジング31の内部における下部領域によって構成されている。第2貯留部P2の内部は、ギヤハウジング32の内部における下部領域によって構成されている。第1貯留部P1の内部と第2貯留部P2の内部とは、隔壁開口33aを介して互いに繋がっている。
【0028】
上述したように、駆動装置100は、ギヤ機構20少なくとも一部を回転可能に支持するベアリング25a,25b,25c,25d,25eと、各ベアリング25a,25b,25c,25d,25eを保持するベアリング保持部35a,35b,35c,35d,35eと、を備える。本実施形態において各ベアリング25a,25b,25c,25d,25eは、それぞれギヤ機構20の一部を回転可能に支持している。本実施形態において、ベアリング25cを保持するベアリング保持部35cは、後述する第2流路部50が内部に繋がるベアリング保持部である。なお、ベアリング保持部35a,35b,35d,35eの構造としては、第2流路部50が内部に繋がっていない点を除いて、以下に説明するベアリング保持部35cと同様の構造を採用できる。
【0029】
図3に示すように、ベアリング保持部35cは、対向壁部35jと、周壁部35fと、支持部35gと、を有する。対向壁部35jは、蓋部30fのうちベアリング25cと軸方向に対向する部分である。対向壁部35jは、ベアリング25cの軸方向他方側(-Y側)に位置する。
【0030】
周壁部35fは、対向壁部35jから軸方向一方側(+Y側)に突出している。図2に示すように、周壁部35fは、ベアリング25cを囲んでいる。本実施形態において周壁部35fは、中間軸線J2を中心とする略円環状である。周壁部35fは、軸方向一方側に開口している。図3に示すように、周壁部35fには、周壁部35fの一部を周壁部35fの内側面から外側面まで貫通する貫通部35hが設けられている。本実施形態において貫通部35hは、軸方向一方側に開口する溝である。なお、貫通部35hは、周壁部35fの一部を内側面から外側面まで貫通する孔であってもよい。貫通部35hは、軸方向と交差する第1方向D1に周壁部35fの一部を貫通している。本実施形態において第1方向D1は、「交差方向」に相当する。
【0031】
本実施形態において第1方向D1は、上下方向と交差する方向である。より詳細には、第1方向D1は、軸方向と直交する方向であり、かつ、上下方向および前後方向(X軸方向)の両方と交差する方向である。第1方向D1は、後側(-X側)に向かうに従って下側に位置する方向である。前後方向に対する第1方向D1の傾きは、上下方向に対する第1方向D1の傾きよりも小さい。以下の説明においては、第1方向D1のうち図に示すD1軸の矢印が向く側(+D1側)を「第1方向一方側」と呼び、D1軸の矢印が向く側と逆側(-D1側)を「第1方向他方側」と呼ぶ。第1方向一方側は後側かつ下側であり、第1方向他方側は前側(+X側)かつ上側である。
【0032】
図3に示すように、支持部35gは、周壁部35fの内側において、対向壁部35jから軸方向一方側(+Y側)に突出している。支持部35gは、周壁部35fの内縁部に繋がっている。支持部35gの軸方向一方側の端部は、周壁部35fの軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側(-Y側)に位置する。図2に示すように、本実施形態において支持部35gは、中間軸線J2を中心とする略円環状である。支持部35gは、ベアリング25cの外周縁部を軸方向他方側から支持している。図4に示すように、ベアリング25cを軸方向他方側から支持する支持部35gが設けられることによって、ベアリング25cと対向壁部35jとの軸方向の間には、隙間Gが設けられている。
【0033】
図3に示すように、支持部35gには、支持部35gの一部を支持部35gの内側面から外側面まで貫通する貫通部35iが設けられている。貫通部35iは、第1方向D1に支持部35gの一部を貫通している。本実施形態において貫通部35iは、軸方向一方側(+Y側)に開口する溝である。なお、貫通部35iは、支持部35gの一部を内側面から外側面まで貫通する孔であってもよい。
【0034】
ハウジング30は、蓋部30fの軸方向一方側(+Y側)の面から軸方向一方側に突出する保持筒部36を有する。保持筒部36は、軸方向一方側に開口する略円筒状である。保持筒部36は、軸方向に見てベアリング保持部35cの外側に位置する。本実施形態において保持筒部36は、ベアリング保持部35cよりも前側(+X側)に位置する。保持筒部36は、中間軸線J2よりも上側に位置する。保持筒部36は、保持筒部36を軸方向に貫通する貫通部36aを有する。貫通部36aの内部は、筒状である保持筒部36の内部によって構成されている。
【0035】
ハウジング30は、ベアリング保持部35cと保持筒部36とを繋ぐ一対の接続リブ37a,37bを有する。一対の接続リブ37a,37bは、第1方向D1に延びている。一対の接続リブ37a,37bは、軸方向および第1方向D1の両方と交差する第2方向D2に互いに間隔を空けて配置されている。本実施形態において第2方向D2は、軸方向および第1方向D1の両方と直交する方向である。第2方向D2は、上側に向かうに従って後側(-X側)に位置する方向である。以下の説明においては、第2方向D2のうち図に示すD2軸の矢印が向く側(+D2側)を「第2方向一方側」と呼び、D2軸の矢印が向く側と逆側(-D2側)を「第2方向他方側」と呼ぶ。第2方向一方側は上側かつ後側であり、第2方向他方側は下側かつ前側(+X側)である。接続リブ37aは、接続リブ37bの第2方向一方側に離れて位置する。
【0036】
一対の接続リブ37a,37bの第1方向一方側(+D1側)の端部は、ベアリング保持部35cの外側面のうち貫通部35hの周方向θ2の両縁部にそれぞれ繋がっている。一対の接続リブ37a,37bの第1方向他方側(-D1側)の端部は、保持筒部36の外側面にそれぞれ繋がっている。一対の接続リブ37a,37bの軸方向一方側(+Y側)の端部は、ベアリング保持部35cの軸方向一方側の端部および保持筒部36の軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側(-Y側)に位置する。
【0037】
本実施形態においてハウジング30は、軸方向に窪み第1方向D1に延びる溝39を有する。本実施形態において溝39は、ギヤハウジング32のうち蓋部30fにおける軸方向一方側(+Y側)の面に設けられている。溝39は、軸方向他方側(-Y側)に窪み、軸方向一方側に開口している。溝39は、ハウジング30の内部に開口している。より詳細には、溝39は、ギヤハウジング32の内部に開口している。溝39は、ベアリング保持部35cの内部に繋がっている。より詳細には、溝39の第1方向一方側(+D1側)の端部が、ベアリング保持部35cの内部に繋がっている。
【0038】
本実施形態において溝39は、一対の接続リブ37a,37b同士の第2方向D2の間に位置する溝37cと、溝である貫通部35hと、によって構成されている。溝37cは、軸方向一方側(+Y側)に開口し、第1方向D1に延びている。溝37cの第1方向一方側(+D1側)の端部は、貫通部35hに繋がっている。
【0039】
溝39は、軸方向一方側(+Y側)を向く溝底面39aを有する。溝底面39aは、溝39の内面のうち軸方向他方側(-Y側)に位置する部分である。溝底面39aは、第1方向D1に延びている。溝底面39aは、支持部35gの軸方向一方側の面よりも軸方向一方側に位置する。溝底面39aの第1方向一方側(+D1側)の端部には、段差面39bが繋がっている。段差面39bは、第1方向一方側を向いている。段差面39bは、溝底面39aの第1方向一方側の端部から軸方向他方側に延びている。段差面39bの軸方向他方側の端部は、貫通部35iの内面のうち軸方向他方側に位置する部分と繋がっている。これにより、溝底面39aと貫通部35iの内面のうち軸方向他方側に位置する部分との第1方向D1の間には、段差面39bを有する段差部39cが設けられている。本実施形態において貫通部35iの内面のうち軸方向他方側に位置する部分は、対向壁部35jの軸方向一方側の面である。段差面39bは、貫通部35iの内部と第1方向D1に対向している。段差面39bのうち軸方向他方側の部分は、貫通部35iの内部を介して、隙間Gと第1方向D1に対向している。
【0040】
図1に示すように、駆動装置100は、軸方向に延びる第1流路部40を備える。第1流路部40は、後述する流路90の一部を構成する流路部である。第1流路部40の内部には、オイルOが流れる。第1流路部40は、ギヤハウジング32の内部に位置する。図2に示すように、第1流路部40は、軸方向に見て、ベアリング保持部35cの外側に位置する。本実施形態において第1流路部40は、ベアリング保持部35cよりも前側(+X側)に位置する。本実施形態において第1流路部40は、中間軸線J2よりも上側に位置する。
【0041】
図1に示すように、第1流路部40は、軸方向に延びる延伸部41を有する。本実施形態において延伸部41は、軸方向に延びる管状の部材である。延伸部41は、略円筒状のパイプである。延伸部41は、ギヤハウジング32の内部に位置する。延伸部41の軸方向一方側(+Y側)の端部は、隔壁部33に支持されている。本実施形態において第1流路部40は、延伸部41のみからなる。図4に示すように、延伸部41は、本体部41aと、接続部41bと、フランジ部41cと、を有する。
【0042】
本体部41aは、軸方向に延びる略円筒状である。本体部41aには、供給孔41dが設けられている。供給孔41dは、本体部41aを構成する壁部を本体部41aの内面から外面まで貫通する孔である。供給孔41dは、ギヤハウジング32の内部に開口している。つまり、第1流路部40には、ハウジング30の内部に開口する供給孔41dが設けられている。図4に示すように、本実施形態において供給孔41dは、後側(-X側)に開口している。供給孔41dは、軸方向に間隔を空けて複数設けられている。供給孔41dの数は、特に限定されない。供給孔41dは、1つのみ設けられてもよい。
【0043】
図4に示すように、接続部41bは、本体部41aの軸方向他方側(-Y側)の端部に繋がっている。接続部41bの軸方向他方側の端部は、延伸部41の軸方向他方側の端部である。接続部41bは、軸方向他方側に開口する略円筒状である。接続部41bの外径は、本体部41aの外径よりも小さい。接続部41bの内径は、本体部41aの内径よりも小さい。接続部41bは、保持筒部36の内部に軸方向一方側(+Y側)から挿入されている。本実施形態において接続部41bは、保持筒部36の内部、すなわち貫通部36a内に嵌め合わされている。接続部41bは、例えば、貫通部36a内に圧入されている。
【0044】
フランジ部41cは、本体部41aの軸方向他方側(-Y側)の端部における外周面に設けられている。フランジ部41cは、略円筒状の本体部41aの中心軸を中心とする径方向の外側に突出している。フランジ部41cは、本体部41aを囲む環状である。フランジ部41cは、板面が軸方向を向く板状である。フランジ部41cは、保持筒部36の軸方向一方側(+Y側)の端部と対向している。本実施形態においてフランジ部41cは、保持筒部36の軸方向一方側の端部と接触している。そのため、フランジ部41cと保持筒部36との軸方向の間からオイルOが漏れることを好適に抑制できる。なお、フランジ部41cと保持筒部36との間には、Oリングなどのシール部材が設けられていてもよい。これにより、フランジ部41cと保持筒部36との軸方向の間からオイルOが漏れることをより好適に抑制できる。
【0045】
なお、フランジ部41cは、保持筒部36の軸方向一方側(+Y側)の端部から軸方向一方側に離れていてもよい。この場合、外部から衝撃を受けた場合などであっても延伸部41がハウジング30から力を受けにくくできる。したがって、延伸部41に生じる応力を低減でき、延伸部41が変形することなどを抑制できる。
【0046】
第1流路部40のうち後述する第2流路部50に繋がる部分における流路断面積は、第1流路部40のうち供給孔41dが設けられた部分における流路断面積よりも小さい。そのため、第1流路部40のうち供給孔41dが設けられた部分の内部におけるオイルOの圧力を大きくしやすい。これにより、供給孔41dからオイルOを勢いよく噴射させやすくできる。したがって、供給孔41dからギヤ機構20へとオイルOを供給させやすくできる。本実施形態において第1流路部40のうち後述する第2流路部50に繋がる部分は、接続部41bの軸方向他方側(-Y側)の端部であり、軸方向他方側に開口する開口部41eである。開口部41eは、第1流路部40の軸方向他方側の端部である。第1流路部40のうち供給孔41dが設けられた部分は、本体部41aである。
【0047】
本実施形態では、接続部41bが保持筒部36内に圧入されているため、接続部41bと保持筒部36との間からオイルOが漏れにくく、接続部41bが繋がる後述する第2流路部50内を流れるオイルOの流速が低下しにくい。これにより、本体部41aの内部におけるオイルOの流速もより好適に保たれやすく、供給孔41dからオイルOをより好適に勢いよく噴射させやすくできる。
【0048】
本実施形態において駆動装置100は、第1方向D1に延びる第2流路部50を備える。第2流路部50は、後述する流路90の一部を構成する流路部である。第2流路部50は、ギヤカバー30cの蓋部30fに設けられている。第2流路部50は、第1流路部40に繋がっている。第2流路部50の内部には、第1流路部40の軸方向他方側(-Y側)の端部から流入したオイルOが流れる。
【0049】
本実施形態において第2流路部50は、第1流路部40の軸方向他方側(-Y側)の端部から第1方向一方側(+D1側)に延びて、ベアリング保持部35cの内部に繋がっている。つまり、第2流路部50は、軸方向に見てベアリング保持部35cの外側からベアリング保持部35cの内部に繋がっている。図3に示すように、第2流路部50は、第1流路部40からベアリング保持部35cの内部に向かうに従って下側に位置する。そのため、第1流路部40内から第2流路部50内に流入したオイルOを、重力を利用して第2流路部50内に流しやすくでき、第2流路部50内からベアリング保持部35c内にオイルOを送りやすくできる。第2流路部50は、後側(-X側)に向かうに従って下側に位置する。
【0050】
第2流路部50は、孔部70の少なくとも一部によって構成されている。孔部70は、第1方向D1に延びている。孔部70は、ハウジング30の外面に開口し、ハウジング30の内部とベアリング保持部35cの内部とを繋いでいる。つまり、ハウジング30は、ハウジング30の外面からベアリング保持部35cの内部まで延びる孔部70を有する。このように、第1流路部40の内部とベアリング保持部35cの内部とを繋ぐ第2流路部50を、例えば溝39のような軸方向一方側(+Y側)に開口する溝ではなく、孔部70の少なくとも一部によって構成することで、第2流路部50内から軸方向一方側にオイルOが漏れることを好適に抑制できる。これにより、第2流路部50内からベアリング保持部35c内へのオイルOの供給が不十分になることを抑制できる。したがって、ベアリング保持部35cに保持されたベアリング25cの潤滑が不十分になることを抑制できる。
【0051】
図4に示すように、孔部70は、第1孔部71と、第2孔部72と、を有する。第1孔部71は、ハウジング30の外面に開口している。より詳細には、第1孔部71の第1方向他方側(-D1側)の端部は、第1方向他方側に開口している。つまり、第1孔部71の第1方向他方側の端部は、ハウジング30の外面に開口する開口端部70dである。本実施形態において開口端部70dは、第3周壁部30gにおける径方向外側面に開口している。
【0052】
図2に示すように、本実施形態において開口端部70dは、中間軸線J2よりも上下方向の上側に位置する。そのため、第2流路部50を、ベアリング保持部35cに向かうに従って下側に位置する構成としやすい。これにより、重力を利用して第2流路部50内にオイルOを流しやすく、第2流路部50内からベアリング保持部35c内にオイルOを好適に送りやすくできる。図5に示すように、本実施形態では、第1孔部71は、第1方向D1に見て、円形状である。なお、第1孔部71は、第1方向D1に見て、例えば多角形状などの円形状以外の形状であってもよい。第3周壁部30gのうち第1孔部71の開口端部70dが設けられた部分における周縁部は、第1方向他方側(-D1側)に突出する環状壁部30hとなっている。環状壁部30hは、略円環状である。
【0053】
図2に示すように、開口端部70dは、中間軸線J2よりも、前後方向(X軸方向)の前側(+X側)に位置する。これにより、開口端部70dは、中間軸線J2に対して、前後方向において差動軸線J3が位置する側と逆側に位置する。したがって、ハウジング30を構成する壁部のうちベアリング保持部35cに前後方向に近い壁部に開口端部70dを開口させやすくできる。本実施形態では、開口端部70dを第3周壁部30gの外面のうち前側の部分に開口させることができる。これにより、孔部70の長さを短くしやすく、孔部70を作りやすくできる。また、孔部70の一部によって構成された第2流路部50に繋がる第1流路部40を、軸方向に見て差動装置22と重ならない位置に配置しやすくできる。そのため、第1流路部40が差動装置22と接触することなどを抑制でき、第1流路部40を設けやすくできる。
【0054】
図5に示すように、第1孔部71には、保持筒部36の内部、すなわち貫通部36aが繋がっている。貫通部36aにおける軸方向他方側(-Y側)の端部は、第1孔部71の内面のうち軸方向一方側(+Y側)に位置する部分に開口している。第1孔部71の内面は、第1方向一方側(+D1側)に位置する底面71aを有する。底面71aは、第1方向他方側(-D1側)を向いている。図4に示すように、底面71aは、第1方向一方側に向かうに従って外径が小さくなる略円錐状の面である。第1孔部71は、例えば、ハウジング30の外部からドリルを用いて孔加工が施されることによって作られている。なお、第1孔部71は、他の機械加工によって作られていてもよいし、鋳造などの機械加工以外の加工方法によって作られていてもよい。また、底面71aは、略円錐状でなくてもよい。底面71aは、例えば、第1方向D1と直交する面であってもよい。
【0055】
第1孔部71の第1方向他方側(-D1側)の端部、すなわち孔部70のうちハウジング30の外面に開口する開口端部70dは、シール部材60によって塞がれている。つまり、駆動装置100は、孔部70のうちハウジング30の外面に開口する開口端部70dを塞ぐシール部材60を備える。そのため、孔部70のうちハウジング30の外面に開口する開口端部70dからオイルOが漏れることを抑制できる。これにより、第2流路部50を加工が容易な孔部70で構成しつつ、第2流路部50内のオイルOがハウジング30の外部に漏れることを抑制できる。したがって、第2流路部50内を流れるオイルOが漏れることをより抑制できる。
【0056】
本実施形態においてシール部材60は、第1孔部71内に締め込まれたプラグ部材である。シール部材60は、第1孔部71内に位置する本体部61と、本体部61の第1方向他方側(-D1側)の端部に繋がる頭部62と、を有する。本体部61は、第1孔部71内に締め込まれている。本体部61は、第1方向D1に延びる軸を中心とする略円柱状である。本体部61の外周面には、第1孔部71の内周面に設けられたねじ部71bと噛み合うねじ部61aが設けられている。頭部62は、本体部61の第1方向他方側の端部よりも、本体部61の中心軸を中心とする径方向の外側に突出している。頭部62は、環状壁部30hの第1方向他方側の面と接触している。
【0057】
第2孔部72は、第1孔部71の第1方向一方側(+D1側)に繋がっている。第2孔部72は、第1方向D1に延びている。第2孔部72は、第1孔部71の底面71aから第1方向一方側に延びて、ベアリング保持部35cの内部に繋がっている。本実施形態において第2孔部72の第1方向一方側の端部は、貫通部35iに繋がっている。第2孔部72は、貫通部35iを介してベアリング25cと対向壁部35jとの軸方向の隙間Gに繋がっている。第2孔部72の第1方向D1の寸法は、第1孔部71の第1方向D1の寸法よりも大きい。第2孔部72は、第1方向D1に見て、円形状である。なお、第2孔部72は、第1方向D1に見て、例えば多角形状などの円形状以外の形状であってもよい。第2孔部72の内径は、第1孔部71の内径よりも小さい。
【0058】
第1方向D1と直交する断面において、第2孔部72の断面積は、第1孔部71の断面積よりも小さい。言い換えれば、第1方向D1と直交する断面において、第1孔部71の断面積は、第2孔部72の断面積よりも大きい。そのため、ハウジング30の外面に開口する第1孔部71を第2孔部72よりも大きくできる。これにより、開口端部70dの開口面積が小さくなり過ぎることを抑制でき、開口端部70dをシール部材60によって塞ぎにくくなることを抑制できる。また、ベアリング保持部35c内に繋がる第2孔部72の断面積を小さくしやすくでき、第2流路部50のうちベアリング保持部35cに繋がる部分における流路断面積を小さくしやすい。これにより、第2流路部50内に供給される際のオイルOの流速を大きくしやすく、ベアリング保持部35cの内部において広範囲にオイルOを好適に供給しやすい。
【0059】
本実施形態において、円形状の第2孔部72の中心は、円形状の第1孔部71の中心に対して軸方向にずれている。第2孔部72の中心は、第1孔部71の中心よりも軸方向他方側(-Y側)に位置する。第2孔部72の第1方向他方側(-D1側)の端部は、底面71aのうち軸方向他方側に位置する部分に開口している。第2孔部72は、例えば、ハウジング30の外部から、第1孔部71の内部を介して、ドリルを用いて孔加工が施されることによって作られている。第2孔部72は、他の機械加工によって作られていてもよいし、鋳造などの機械加工以外の加工方法によって作られていてもよい。
【0060】
第2流路部50は、第1孔部71の一部によって構成された第3流路部51と、第2孔部72によって構成された第4流路部52と、を有する。第3流路部51は、第1孔部71のうちシール部材60よりも第1方向一方側(+D1側)に位置する部分によって構成されている。第4流路部52は、第2孔部72の全体によって構成されている。第1方向D1と直交する断面において、第3流路部51の断面積は、第4流路部52の断面積よりも大きい。第3流路部51の内部には、保持筒部36の内部が繋がっている。
【0061】
第3流路部51の内部には、保持筒部36内に嵌め合わされた接続部41bの軸方向他方側(-Y側)の端部、すなわち開口部41eが繋がっている。これにより、第1流路部40は、第2流路部50のうち第1孔部71によって構成された部分に繋がっている。第1方向D1と直交する断面において第1孔部71の断面積は第2孔部72の断面積よりも大きいため、第2流路部50のうち第2孔部72によって構成された部分に第1流路部40を繋げる場合に比べて、第1流路部40を第2流路部50に繋げやすくできる。なお、第1流路部40は、第2流路部50のうち第2孔部72によって構成された部分、すなわち第4流路部52に繋がっていてもよい。
【0062】
第4流路部52は、第3流路部51の内部に開口する第1開口部52aと、ベアリング保持部35cの内部に開口する第2開口部52bと、を有する。第1開口部52aは、底面71aのうち軸方向他方側(-Y側)の部分に開口している。第2開口部52bは、段差部39cの段差面39bに開口している。第2開口部52bは、第1方向一方側(+D1側)に開口している。第2開口部52bは、貫通部35iに繋がっている。第4流路部52の流路断面積は、第3流路部51の流路断面積よりも小さい。
【0063】
本実施形態において第2流路部50は、蓋部30fのうち溝39の軸方向他方側(-Y側)に位置する壁部に設けられている。これにより、本実施形態において溝39は、第2流路部50と軸方向に重なっている。ここで、溝39はハウジング30の内部に開口しているため、溝39の内部には、ハウジング30の内部におけるオイルOの一部が入る場合がある。具体的には、延伸部41の供給孔41dからギヤハウジング32の内部に供給されたオイルOの一部、およびギヤ機構20によって第2貯留部P2内からかき上げられるオイルOの一部などが溝39の内部に入る場合がある。溝39はベアリング保持部35cの内部に繋がっているため、溝39内に入ったオイルOの少なくとも一部は、ベアリング保持部35c内へと供給されやすい。このように、本実施形態では、第2流路部50内からベアリング保持部35c内へとオイルOを供給できることに加えて、溝39内からもオイルOをベアリング保持部35c内へと供給できる。したがって、ベアリング保持部35c内へのオイルOの供給が不十分になることをより抑制でき、ベアリング保持部35cに保持されたベアリング25cの潤滑が不十分になることをより抑制できる。なお、例えば、接続部41bの外側面に接続部41bの内部と繋がる孔などが設けられ、かつ、当該孔と溝39と繋ぐ貫通部が保持筒部36に設けられる場合には、接続部41bの内部から溝39内にオイルOを流入させることができる。この場合、溝39内にオイルOをより好適に供給することができる。
【0064】
本実施形態では、第2流路部50のうち第4流路部52が溝39と軸方向に重なっている。図3に示すように、軸方向に見て、第2流路部50のうち溝39と重なる部分、すなわち第4流路部52における第2方向D2の寸法は、溝39の第2方向D2の寸法よりも小さい。本実施形態では、第4流路部52のうち第1方向他方側(-D1側)の端部を除いた全体が、溝39と軸方向に重なっている。
【0065】
図4に示すように、第1流路部40のうち第2流路部50に繋がる部分、すなわち開口部41eにおける流路断面積と、第2流路部50のうちベアリング保持部35cの内部に繋がる部分、すなわち第2開口部52bにおける流路断面積とは、互いに同じである。そのため、第1流路部40内から第2流路部50内へと流入する際のオイルOの流速と、第2流路部50内からベアリング保持部35c内へと流入する際のオイルOの流速を互いに同じにしやすい。これにより、第1流路部40内から第2流路部50内に供給されてからベアリング保持部35c内まで流れるまでにおいて、オイルOの流速が大きく変化することを抑制しやすくできる。したがって、ベアリング保持部35c内へと安定してオイルOを供給しやすくできる。また、開口部41eと第2開口部52bとを、互いに同じ大きさ、かつ、互いに同じ形状にしやすい。これにより、開口部41eと第2開口部52bとで互いに大きさおよび形状が異なる場合に比べて、開口部41eおよび第2開口部52bを作りやすい。
【0066】
図1に示すように、駆動装置100は、流体としてのオイルOが流れる流路90を備える。流路90は、第2貯留部P2内からオイルOをモータ10およびギヤ機構20に供給する経路である。流路90の途中には、ポンプ81と、クーラ82と、が設けられている。ポンプ81およびクーラ82は、ハウジング30の外面に取り付けられている。流路90は、吸入流路部91と、第1接続流路部92と、第2接続流路部93と、供給流路部94と、第1流路部40と、第2流路部50と、第3接続流路部97と、吐出流路部99と、を有する。
【0067】
吸入流路部91は、第2貯留部P2の内部とポンプ81とを繋いでいる。第1接続流路部92は、ポンプ81とクーラ82とを繋いでいる。第2接続流路部93は、クーラ82と供給流路部94とを繋いでいる。第2接続流路部93は、モータカバー30bに設けられている。第2接続流路部93は、ベアリング保持部34aの内部を介して、モータシャフト11aの内部に繋がっている。
【0068】
供給流路部94は、モータハウジング31の内部に位置する。本実施形態において供給流路部94は、軸方向に延びる管状の部材によって構成されている。供給流路部94は、例えば、軸方向に延びる略円筒状のパイプである。供給流路部94は、モータハウジング31の内部に開口する供給孔94aを有する。供給孔94aは、軸方向に間隔を空けて複数設けられている。供給流路部94の軸方向他方側(-Y側)の端部は、隔壁部33に設けられた孔を介して第1流路部40の軸方向一方側(+Y側)の端部に繋がっている。第1流路部40の軸方向一方側の端部は、延伸部41の軸方向一方側の端部である。
【0069】
第3接続流路部97は、ベアリング保持部35cの内部とベアリング保持部35aの内部とを繋いでいる。吐出流路部99は、ベアリング保持部35aの内部と第2貯留部P2の内部とを繋いでいる。図2に示すように、本実施形態において第3接続流路部97および吐出流路部99は、軸方向に見て、上下方向および前後方向の両方に対して傾いた方向に延びている。第3接続流路部97は、ベアリング保持部35cの内部から下側かつ前側(+X側)に延びて、ベアリング保持部35aの内部に繋がっている。吐出流路部99は、ベアリング保持部35aの内部から後側(-X側)かつ下側に延びて、第2貯留部P2の内部に繋がっている。
【0070】
図1に示すように、ポンプ81が駆動されると、第2貯留部P2内に貯留されたオイルOが吸入流路部91内に吸入され、第1接続流路部92を通ってクーラ82内に流入する。クーラ82内に流入したオイルOは、クーラ82内で冷却された後、第2接続流路部93内に流入する。第2接続流路部93内に流入したオイルOの一部は、ベアリング保持部34aの内部を介してモータシャフト11aの内部に流入する。モータシャフト11aの内部に流入したオイルOは、孔部11cからロータコア11bの内部を通ってステータ12へと供給される。第2接続流路部93内に流入したオイルOの残りは、供給流路部94内に流入する。供給流路部94内に流入したオイルOの一部は、供給孔94aからステータ12に向かって供給される。モータシャフト11aの内部からステータ12に供給されたオイルOおよび供給孔94aからステータ12に供給されたオイルOは、下側に落下して、第1貯留部P1の内部に溜まる。第1貯留部P1の内部に溜まったオイルOの一部は、隔壁部33に設けられた隔壁開口33aを介して、第2貯留部P2の内部に戻る。
【0071】
供給流路部94内に流入したオイルOの残りは、第1流路部40の軸方向一方側(+Y側)の端部から第1流路部40内に流入する。第1流路部40内に流入したオイルOは、第1流路部40内を軸方向他方側(-Y側)に流れる。第1流路部40内に流入したオイルOの一部は、供給孔41dからギヤ機構20に供給される。これにより、ギヤ機構20に好適にオイルOを供給できる。第1流路部40内に流入したオイルOの残りは、第2流路部50内に流入する。図4に示すように、第2流路部50内に流入したオイルOは、第3流路部51内から、第1開口部52aを介して第4流路部52内に流入する。第4流路部52内に流入したオイルOは、第1方向一方側(+D1側)に流れて、ベアリング保持部35cの内部に流入する。ベアリング保持部35c内に流入したオイルOの少なくとも一部は、貫通部35iを介して、対向壁部35jとベアリング25cとの軸方向の隙間Gに流入する。これにより、ベアリング25cにオイルOが供給される。図1に示すように、ベアリング保持部35c内に流入したオイルOの少なくとも一部は、第3接続流路部97を通ってベアリング保持部35a内に流入する。これにより、ベアリング25aにオイルOが供給される。ベアリング保持部35a内に流入したオイルOの少なくとも一部は、吐出流路部99を通って、第2貯留部P2の内部に戻る。
【0072】
以下、上述した実施形態と異なる実施形態について説明する。以下の各実施形態の説明においては、各実施形態の説明よりも上段において説明した構成と同様の構成については、適宜同一の符号を付すなどにより説明を省略する場合がある。また、各実施形態の説明よりも上段において説明した構成の各部に対応する部分については、同一の名称を付すとともに異なる符号を付して、上述した構成とは異なる点を説明し、上述した構成と同様の点については説明を省略する場合がある。なお、以下の各実施形態において説明を省略した構成としては、矛盾しない範囲内において、各実施形態よりも上段において説明した構成と同様の構成を採用できる。
【0073】
<第2実施形態>
図6に示すように、本実施形態の駆動装置200のハウジング230において、孔部270は、第1方向D1と直交する断面における断面積が第1方向D1の全体に亘って同じである。孔部270のうちハウジング230の外面に開口する開口端部270dは、シール部材260によって塞がれている。開口端部270dは、ギヤハウジング232の外面のうち第1方向他方側(-D1側)を向く面に開口している。シール部材260は、第1実施形態のシール部材60に比べて外径が小さい点を除いて、第1実施形態のシール部材60と同様の構成である。本実施形態において保持筒部36に設けられた貫通部236aは、保持筒部36よりも軸方向他方側(-Y側)に延びて、孔部270に繋がっている。第2流路部250は、孔部270のうちシール部材260によって塞がれた部分以外の部分によって構成されている。本実施形態において第2流路部250における流路断面積は、第1方向D1の全体に亘って同じである。
【0074】
第1流路部240の延伸部241における接続部241bは、第1実施形態の接続部41bよりも軸方向の寸法が大きい。接続部241bの軸方向他方側(-Y側)の端部、すなわち延伸部241の軸方向他方側の端部である開口部241eは、第1流路部240のうち第2流路部250に繋がる部分である。開口部241eは、第2流路部250のうち第1方向他方側(-D1側)の端部よりも第1方向一方側(+D1側)に位置する部分に繋がっている。本実施形態において接続部241bにおける流路断面積は、第2流路部250における流路断面積と同じである。
【0075】
本実施形態において第1流路部240のうち第2流路部250に繋がる部分、すなわち開口部241eから第2流路部250のうちベアリング保持部35cの内部に繋がる部分までの流路断面積は、一定である。そのため、第1流路部240内から第2流路部250内に流入してからベアリング保持部35c内に流入するまでのオイルOの流速を一定にしやすい。これにより、ベアリング保持部35c内に安定してオイルOを供給できる。駆動装置200のその他の構成は、第1実施形態における駆動装置100のその他の構成と同様である。
【0076】
<第3実施形態>
図7に示すように、本実施形態の駆動装置300において、第2流路部350は、複数設けられている。本実施形態において第2流路部350は、第2流路部350aと、第1実施形態における第2流路部50との2つが設けられている。第2流路部350aは、第2流路部50と異なる方向に延びている。第2流路部350aが延びる方向は、軸方向と直交する方向であり、かつ、上下方向および前後方向(X軸方向)の両方と交差する方向である。第2流路部350aが延びる方向は、後側(-X側)に向かうに従って下側に位置する方向である。上下方向に対する第2流路部350aが延びる方向の傾きは、上下方向に対する第2流路部50が延びる方向の傾きよりも小さい。
【0077】
第2流路部350aは、第2流路部50と繋がっている。つまり、本実施形態において複数の第2流路部350は、互いに繋がる2つの第2流路部350a,50を含む。第2流路部350aは、第2流路部50のうち第1流路部40が繋がる部分と繋がっている。つまり、第1流路部40は、2つの第2流路部350a,50同士が互いに繋がる部分に繋がっている。そのため、1つの第1流路部40内から、2つの第2流路部350a,50内へとオイルOを供給することができる。これにより、第1流路部40を複数設ける場合に比べて、駆動装置300における流路の構造が複雑化することを抑制できる。
【0078】
第2流路部350aは、ベアリング保持部35aの内部に繋がっている。つまり、本実施形態において複数の第2流路部350a,50は、互いに異なるベアリング保持部35a,35cの内部に繋がっている。そのため、異なるベアリング保持部35a,35c内にそれぞれ好適にオイルOを供給することができる。このように本実施形態では、第2流路部350が繋がるベアリング保持部が複数設けられている。
【0079】
第2流路部350aは、孔部370の少なくとも一部によって構成されている。孔部370のうちハウジング330の外面に開口する開口端部370dは、シール部材360によって塞がれている。シール部材360は、塞ぐ開口端部が異なる点を除いて、シール部材60と同様の構成である。開口端部370dは、孔部70の開口端部70dよりも上側かつ後側(-X側)に位置する。開口端部370dは、第2流路部350aが繋がるベアリング保持部35aを通る軸線である中心軸線J1よりも前側(+X側)に位置する。そのため、本実施形態においては、複数の孔部370,70における開口端部370d,70dは、各孔部370,70によってそれぞれ構成される第2流路部350a,50が繋がるベアリング保持部35a,35cを通る軸線、すなわち中心軸線J1および中間軸線J2に対して、前後方向において差動軸線J3が位置する側とは反対側に位置する。したがって、ハウジング330を構成する壁部のうち各ベアリング保持部35a,35cに前後方向に近い壁部に各開口端部370d,70dを開口させやすくできる。これにより、各孔部370,70の長さを短くしやすく、各孔部370,70を作りやすくできる。また、各孔部370,70の一部によってそれぞれ構成された複数の第2流路部350a,50に繋がる第1流路部40を、軸方向に見て差動装置22と重ならない位置に配置しやすくできる。そのため、第2流路部350を複数設けても、第1流路部40が差動装置22と接触することなどを抑制でき、第1流路部40を設けやすくできる。
【0080】
本実施形態において第3接続流路部397は、第1実施形態の第3接続流路部97と異なり、ベアリング保持部35aの内部とベアリング保持部35eの内部とを繋いでいる。第3接続流路部397は、前後方向に対して僅かに上下方向に傾いて延びている。第3接続流路部397は、ベアリング保持部35aの内部からベアリング保持部35eの内部に向かうに従って下側に位置する。第2流路部350a内からベアリング保持部35a内に流入したオイルOの少なくとも一部は、ベアリング保持部35e内に供給される。これにより、ベアリング保持部35eに保持されたベアリング25eに潤滑油としてオイルOを供給できる。図示は省略するが、本実施形態において吐出流路部99は、例えば、ベアリング保持部35eの内部と第2貯留部P2の内部とを繋いでいる。駆動装置300のその他の構成は、第1実施形態における駆動装置100のその他の構成と同様である。
【0081】
<第4実施形態>
図8に示すように、本実施形態の駆動装置400において、第2流路部450は、複数設けられている。本実施形態において第2流路部450は、第2流路部450aと第2流路部450bとの2つが設けられている。第2流路部450aは、ベアリング保持部35eの内部に繋がっている。第2流路部450bは、ベアリング保持部35cの内部に繋がっている。第2流路部450aは、ベアリング保持部35eの内部から上側かつ前側(+X側)に延びている。第2流路部450bは、ベアリング保持部35cの内部から上側かつ後側(-X側)に延びている。第2流路部450aと第2流路部450bとは、互いに繋がっている。第2流路部450aと第2流路部450bとが互いに繋がる部分における前後方向(X軸方向)の位置は、中間軸線J2の前後方向の位置と差動軸線J3の前後方向の位置との間である。第2流路部450aと第2流路部450bとが互いに繋がる部分は、中間軸線J2および差動軸線J3よりも上側に位置する。第2流路部450aと第2流路部450bとが互いに繋がる部分には、第1流路部440が繋がっている。第1流路部440は、リングギヤ22aよりも上側に位置する。第1流路部440は、前後方向の位置および上下方向の位置が異なる点を除いて、第1実施形態の第1流路部40と同様の構成である。
【0082】
第2流路部450aは、孔部470aの少なくとも一部によって構成されている。孔部470aのうちハウジング430の外面に開口する開口端部470cは、シール部材460aによって塞がれている。第2流路部450bは、孔部470bの少なくとも一部によって構成されている。孔部470bのうちハウジング430の外面に開口する開口端部470dは、シール部材460bによって塞がれている。シール部材460a,460bは、塞ぐ開口端部が異なる点を除いて、第1実施形態のシール部材60と同様の構成である。
【0083】
本実施形態において各孔部470a,470bの各開口端部470c,470dは、ギヤハウジング432の外面のうち上側に位置する面に開口している。各開口端部470c,470dは、中間軸線J2よりも後側(-X側)で、差動軸線J3よりも前側(+X側)に位置する。孔部470bの開口端部470dは、孔部470aの開口端部470cよりも後側かつ下側に位置する。
【0084】
本実施形態において差動軸線J3および開口端部470c,470dは、中間軸線J2よりも後側(-X側)に位置する。そのため、第2流路部450a,450bに繋がる第1流路部440を、前後方向において中間軸線J2と差動軸線J3との間に配置しやすい。したがって、第1流路部440が中間軸線J2よりも前側(+X側)に設けられる場合に比べて、駆動装置400が前後方向に大型化することを抑制しやすい。駆動装置400のその他の構成は、第1実施形態における駆動装置100のその他の構成と同様である。
【0085】
<第5実施形態>
図9に示すように、本実施形態の駆動装置500において、ベアリング保持部35cの内部には、2つの第2流路部50,550が繋がっている。そのため、2つの第2流路部50,550からベアリング保持部35c内にオイルOを好適に供給できる。第2流路部550は、第2流路部50と異なる方向に延びている。第2流路部550が延びる方向は、軸方向と直交する方向であり、かつ、上下方向および前後方向(X軸方向)の両方と交差する方向である。第2流路部550が延びる方向は、後側(-X側)に向かうに従って下側に位置する方向である。上下方向に対する第2流路部550が延びる方向の傾きは、上下方向に対する第2流路部50が延びる方向の傾きよりも小さい。第2流路部550は、第2流路部50よりも上側に位置する。
【0086】
第2流路部550は、孔部570の少なくとも一部によって構成されている。孔部570のうちハウジング530の外面に開口する開口端部570dは、シール部材560によって塞がれている。開口端部570dは、ギヤハウジング532の外面のうち上側に位置する部分に開口している。シール部材560は、塞ぐ開口端部が異なる点を除いて、第1実施形態のシール部材60と同様の構成である。
【0087】
駆動装置500は、第1流路部40の他に、第1流路部540を備える。第1流路部540の軸方向他方側(-Y側)の端部は、第2流路部550に繋がっている。第1流路部540は、第1流路部40よりも後側(-X側)かつ上側に位置する。第1流路部540は、前後方向の位置および上下方向の位置が異なる点を除いて、第1流路部40と同様の構成である。駆動装置500のその他の構成は、第1実施形態における駆動装置100のその他の構成と同様である。
【0088】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。第1流路部は、軸方向に延びるならば、どのような構成であってもよい。第1流路部は、ハウジングに設けられた孔などによって構成されてもよい。第1流路部の数は、1つ以上であれば、特に限定されない。
【0089】
第2流路部が延びる交差方向は、軸方向と交差する方向であれば、どのような方向であってもよい。第2流路部が複数設けられる場合、複数の第2流路部は、互いに繋がる2つ以上の第2流路部を含んでもよい。この場合、第1流路部は、当該2つ以上の第2流路部同士が互いに繋がる部分に繋がっていてもよい。また、この場合、第1流路部は、1つの第2流路部のうち当該2つ以上の第2流路部同士が互いに繋がる部分とは異なる部分に繋がっていてもよい。この場合、複数の第2流路部は、他の第2流路部を介して第1流路部と繋がる第2流路部を含んでもよい。第2流路部の数は、1つ以上であれば、特に限定されない。
【0090】
第1流路部内および第2流路部内を流れる流体は、特に限定されず、オイル以外の流体であってもよい。第2流路部内からベアリング保持部内に供給される流体は、例えば、ベアリング保持部内から駆動装置の他の部品へと流れて当該他の部品を冷却する冷媒であってもよい。
【0091】
第2流路部が繋がるベアリング保持部は、ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングが保持されるベアリング保持部であれば、どのようなベアリング保持部であってもよい。第2流路部が繋がるベアリング保持部は、例えば、上述した第1実施形態におけるベアリング保持部35a,35b,35c,35d,35eのうちの1つ以上を含んでもよい。第2流路部を構成する孔部のうちハウジングの外面に開口する開口端部を塞ぐシール部材は、開口端部を塞げるならば、どのような構成であってもよい。
【0092】
第2流路部を構成する孔部は、ハウジングの外面に開口していなくてもよい。この場合、当該孔部は、ベアリング保持部の内部から軸方向と交差する方向に延び、先端部に底部が設けられた孔である。この場合、ハウジングの外面に開口する開口端部が設けられないため、シール部材が不要となる。この場合、当該孔部は、例えば、ベアリング保持部の内部から孔加工が施されることによって作られる。
【0093】
本発明が適用される駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。モータの中心軸線は、どのような方向に延びていてもよい。
【0094】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸線を中心として回転可能なロータを有するモータと、前記ロータに接続されたギヤ機構と、前記ギヤ機構の少なくとも一部を回転可能に支持するベアリングと、前記ベアリングを保持するベアリング保持部を有し、前記モータおよび前記ギヤ機構を内部に収容するハウジングと、軸方向に延びる第1流路部と、前記第1流路部に繋がり、軸方向と交差する交差方向に延びる第2流路部と、シール部材と、を備え、前記ハウジングは、前記ハウジングの外面から前記ベアリング保持部の内部まで延びる孔部を有し、前記第2流路部は、前記孔部の少なくとも一部によって構成され、かつ、前記ベアリング保持部の内部に繋がり、前記孔部のうち前記ハウジングの外面に開口する開口端部は、前記シール部材によって塞がれている、駆動装置。
(2) 前記ギヤ機構のうち前記ベアリングに支持される部分は、軸方向に延びる軸線回りに回転可能であり、前記開口端部は、前記軸線よりも上下方向の上側に位置する、(1)に記載の駆動装置。
(3) 前記ギヤ機構は、前記ロータに接続された減速装置と、前記減速装置に接続された差動装置と、を有し、前記減速装置は、軸方向に延び前記ベアリング保持部を通る軸線回りに回転可能なギヤを有し、前記差動装置は、軸方向に延びる差動軸線回りに回転可能なギヤを有し、前記差動軸線は、前記軸線よりも、軸方向および上下方向の両方と直交する直交方向の一方側に位置し、前記開口端部は、前記軸線よりも前記直交方向の他方側に位置する、(1)または(2)に記載の駆動装置。
(4) 前記ギヤ機構は、前記ロータに接続された減速装置と、前記減速装置に接続された差動装置と、を有し、前記減速装置は、軸方向に延び前記ベアリング保持部を通る軸線回りに回転可能なギヤを有し、
前記差動装置は、軸方向に延びる差動軸線回りに回転可能なギヤを有し、
前記差動軸線および前記開口端部は、前記軸線よりも、軸方向および上下方向の両方と直交する直交方向の一方側に位置する、(1)または(2)に記載の駆動装置。
(5) 前記ベアリング保持部は、複数設けられ、前記第2流路部は、複数設けられ、前記複数の第2流路部は、互いに異なる前記ベアリング保持部の内部に繋がっている、(1)から(4)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(6) 前記第2流路部は、複数設けられ、前記ベアリング保持部の内部には、2つ以上の前記第2流路部が繋がっている、(1)から(4)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(7) 前記複数の第2流路部は、互いに繋がる2つ以上の前記第2流路部を含み、前記第1流路部は、前記2つ以上の第2流路部同士が互いに繋がる部分に繋がっている、(6)に記載の駆動装置。
(8) 前記第1流路部のうち前記第2流路部に繋がる部分における流路断面積と、前記第2流路部のうち前記ベアリング保持部の内部に繋がる部分における流路断面積とは、互いに同じである、(1)から(7)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(9) 前記第1流路部には、前記ハウジングの内部に開口する供給孔が設けられ、前記第1流路部のうち前記第2流路部に繋がる部分における流路断面積は、前記第1流路部のうち前記供給孔が設けられた部分における流路断面積よりも小さい、(1)から(8)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(10) 前記孔部は、前記ハウジングの外面に開口する第1孔部と、前記ベアリング保持部の内部に繋がる第2孔部と、を有し、前記交差方向と直交する断面において、前記第1孔部の断面積は、前記第2孔部の断面積よりも大きく、前記第1流路部は、前記第2流路部のうち前記第1孔部によって構成された部分に繋がっている、(1)から(9)のいずれか一項に記載の駆動装置。
(11) 前記ハウジングは、軸方向に窪み前記交差方向に延びる溝を有し、前記溝は、前記ハウジングの内部に開口し、前記ベアリング保持部の内部に繋がり、かつ、前記第2流路部と軸方向に重なっている、(1)から(10)のいずれか一項に記載の駆動装置。
【0095】
以上、本明細書において説明した構成および方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0096】
10…モータ、11…ロータ、25a,25b,25c,25d,25e…ベアリング、20…ギヤ機構、21…減速装置、22…差動装置、22a…リングギヤ(ギヤ)、24b…第2ギヤ(ギヤ)、24c…第3ギヤ(ギヤ)、30,230,330,430,530…ハウジング、35a,35b,35c,35d,35e…ベアリング保持部、39…溝、40,240,440,540…第1流路部、41d…供給孔、50,250,350,350a,450,450a,450b,550…第2流路部、60,260,360,460a,460b,560…シール部材、70,270,370,470a,470b,570…孔部、70d,270d,370d,470c,470d,570d…開口端部、71…第1孔部、72…第2孔部、90…流路、100,200,300,400,500…駆動装置、D1…第1方向(交差方向)、J1…中心軸線、J3…差動軸線
図1
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図7
図8
図9