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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172521
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20241205BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241205BHJP
   G06F 1/26 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B25F5/00 C
H02J7/00 301B
H02J7/00 A
B25F5/00 H
G06F1/26 306
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090297
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 悟史
(72)【発明者】
【氏名】多田 健一
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一彦
(72)【発明者】
【氏名】安富 俊徳
(72)【発明者】
【氏名】松岡 清人
(72)【発明者】
【氏名】黄 祥宇
【テーマコード(参考)】
3C064
5B011
5G503
【Fターム(参考)】
3C064AA02
3C064AB02
3C064AC02
3C064AC04
3C064BA01
3C064BA12
3C064BA15
3C064BA24
3C064BA32
3C064BA33
3C064BB04
3C064BB08
3C064BB14
3C064BB89
3C064CA29
3C064CA53
3C064CA80
3C064CA81
3C064CB17
3C064CB62
3C064DA02
3C064DA03
3C064DA12
3C064DA35
3C064DA43
3C064DA89
3C064DA91
3C064EA01
5B011DA02
5B011DA13
5B011DB05
5B011DB19
5B011EA10
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA07
5G503DA13
5G503FA03
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】USBを利用した利便性の高い電気機器を提供する。
【解決手段】電気機器1は、バッテリ51と電気的に接続されかつ外部機器に接続可能なUSB PD対応のUSBタイプCポート52と、USBタイプCポート52及びバッテリ51に電気的に接続されるUSBPDコントローラIC54と、を備える。電気機器1は昇降圧回路53を備え、昇降圧回路53は、バッテリ51の出力電圧を昇圧又は降圧してUSBタイプCポート52に出力する機能、並びに、USBタイプCポート52からの入力電圧を昇圧又は降圧してバッテリ51及び/又はモータ駆動回路58に出力する機能を有する。モータ66は、バッテリ51から出力される第1電力と、USBタイプCポート52から入力され昇降圧回路53を介して出力される第2電力と、のいずれの電力でも駆動可能に構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと
前記ハウジングに収容される負荷部と、
前記ハウジングに収容又は装着される電源部と、
前記電源部から前記負荷部への電力供給を制御する制御部と、
前記電源部と電気的に接続され、かつ外部機器に接続可能な、USBパワーデリバリー対応のUSBコネクタと、
前記USBコネクタ及び前記電源部に電気的に接続されるUSBパワーデリバリーコントローラと、を備える、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器であって、
前記USBコネクタからの入力電圧を昇圧又は降圧して前記電源部又は前記負荷部に出力する昇圧又は降圧回路を備える、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機器であって、
前記USBコネクタから入力された電力で前記電源部を充電する充電制御回路を備え、
前記制御部は、前記充電制御回路を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機器であって、
前記電源部の出力電圧を昇圧又は降圧して前記USBコネクタに出力する昇圧又は降圧回路を備える、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電気機器であって、
前記電源部の電力を前記USBコネクタに放電する放電制御回路を備え、
前記制御部は、前記放電制御回路を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項6】
請求項4に記載の電気機器であって、
前記制御部は、前記USBコネクタを介した外部機器との通信に基づいて前記昇圧又は降圧回路を制御するよう構成される、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項7】
ハウジングと
前記ハウジングに収容される負荷部と、
前記ハウジングに収容又は装着される電源部と、
前記電源部から前記負荷部への電力供給を制御する制御部と、
外部機器に接続可能なUSBコネクタと、
前記USBコネクタからの入力電圧を昇圧又は降圧して前記電源部又は前記負荷部に出力する昇圧又は降圧回路と、を備える、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電気機器であって、
前記電源部の出力電圧を昇圧又は降圧して前記USBコネクタに出力する昇圧又は降圧回路を備える、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項9】
請求項7に記載の電気機器であって、
前記負荷部は、前記電源部から出力される第1電力と、前記USBコネクタから入力され前記昇圧又は降圧回路を介して出力される第2電力と、のいずれの電力でも駆動可能に構成される、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載の電気機器であって、
前記負荷部は、前記電源部から出力される第1電力と、前記USBコネクタから入力され前記昇圧又は降圧回路を介して出力される第2電力と、を合成した電力で駆動可能に構成される、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項11】
ハウジングと
前記ハウジングに収容される負荷部と、
前記ハウジングに収容又は装着される電源部と、
前記電源部から前記負荷部への電力供給を制御する制御部と、
外部機器に接続可能なUSBコネクタと、
前記電源部の出力電圧を昇圧して前記USBコネクタに出力する昇圧回路を備える、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項12】
請求項1から3、7から9、11のいずれか一項に記載の電気機器であって、
前記電源部は電池である、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項13】
ハウジングと
前記ハウジングに収容される負荷部と、
前記ハウジングに収容又は装着される電源部と、
前記電源部から前記負荷部への電力供給を制御する制御部と、
前記電源部と電気的に接続され、かつ外部機器に接続可能な、USBパワーデリバリー対応のUSBコネクタと、
前記USBコネクタ及び前記電源部に電気的に接続されるUSBパワーデリバリーコントローラと、
前記制御部によって制御され、前記USBコネクタからの入力電圧を昇圧又は降圧して前記電源部又は前記負荷部に出力する昇圧又は降圧回路と、
を備える、
ことを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気機器本体にUSB(Universal Serial Bus)コネクタを設け、USBケーブルを介して外部機器としての携帯電話やスマートフォンに電力供給することを開示する。特許文献2は、電気機器本体にUSBコネクタを設け、外部電源からUSBコネクタを介して内蔵電池を充電することを開示する。一方、さまざまな電気機器で電力供給のために利用されているUSBデバイスは、電源供給規格USBパワーデリバリー(USB power delivery(USB PD))でUSBタイプCの電力機能が拡大され、最大240W(48V/5A)の供給が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-051598号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0008093号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、USBを利用した利便性の高い電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、電気機器である。この電気機器は、
ハウジングと
前記ハウジングに収容される負荷部と、
前記ハウジングに収容又は装着される電源部と、
前記電源部から前記負荷部への電力供給を制御する制御部と、
前記電源部と電気的に接続され、かつ外部機器に接続可能な、USBパワーデリバリー対応のUSBコネクタと、
前記USBコネクタ及び前記電源部に電気的に接続されるUSBパワーデリバリーコントローラと、を備える、
ことを特徴とする。
【0006】
本発明の別の態様は、電気機器である。この電気機器は、
ハウジングと
前記ハウジングに収容される負荷部と、
前記ハウジングに収容又は装着される電源部と、
前記電源部から前記負荷部への電力供給を制御する制御部と、
外部機器に接続可能なUSBコネクタと、
前記USBコネクタからの入力電圧を昇圧又は降圧して前記電源部又は前記負荷部に出力する昇圧又は降圧回路と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
本発明の別の態様は、電気機器である。この電気機器は、
ハウジングと
前記ハウジングに収容される負荷部と、
前記ハウジングに収容又は装着される電源部と、
前記電源部から前記負荷部への電力供給を制御する制御部と、
外部機器に接続可能なUSBコネクタと、
前記電源部の出力電圧を昇圧して前記USBコネクタに出力する昇圧回路を備える、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の別の態様は、電気機器である。この電気機器は、
ハウジングと
前記ハウジングに収容される負荷部と、
前記ハウジングに収容又は装着される電源部と、
前記電源部から前記負荷部への電力供給を制御する制御部と、
前記電源部と電気的に接続され、かつ外部機器に接続可能な、USBパワーデリバリー対応のUSBコネクタと、
前記USBコネクタ及び前記電源部に電気的に接続されるUSBパワーデリバリーコントローラと、
前記制御部によって制御され、前記USBコネクタからの入力電圧を昇圧又は降圧して前記電源部又は前記負荷部に出力する昇圧又は降圧回路と、
を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、USBを利用した利便性の高い電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る電気機器1の構成を簡易的に示した模式図。
図2】電気機器1とACアダプタ70とを接続したシステムの概念図。
図3】電気機器1と電気機器1Aとを接続したシステムの概念図。
図4】(A)は、電気機器1の回路ブロック図。(B)は、図4(A)に通常運転モードでのモータ電流の流れを追加した図。
図5】(A)は、図4(A)にUSB運転モードでのモータ電流の流れを追加した図。(B)は、図4(A)にブーストモードでのモータ電流の流れを追加した図。
図6】(A)は、図4(A)に充電モードでの充電電流の流れを追加した図。(B)は、図4(A)に放電モードでの放電電流の流れを追加した図。
図7】電気機器1とACアダプタ70とを接続したシステムの回路ブロック図。
図8】電気機器1と電気機器1Aとを接続したシステムの回路ブロック図。
図9】電気機器1の受電モードの制御フローチャート。
図10】電気機器1の放電モードの制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、電気機器1、電気機器1とACアダプタ70を接続したシステム、並びに電気機器1と電気機器1Aとを接続したシステムに関する。
【0012】
図1に示すように、電気機器1は、インパクトドライバであり、ハウジング10内に、第1制御基板15、第2制御基板17、モータ66を有する。ハウジング10には、電気機器1の電源部としてバッテリ51(電池パック)が着脱可能に装着される。第1制御基板15には、USBタイプCポート52が設けられ、ハウジング10から外部に臨む。ハウジング10には、ユーザがモータ66の駆動、停止を指示する操作部としてのトリガスイッチ61が設けられる。
【0013】
図2に示すシステムでは、電気機器1とACアダプタ70とがUSBタイプCケーブル71によって互いに電気的に接続される。ACアダプタ70は、USB PDに対応した充電器である。USBタイプCケーブル71の一端側のプラグ(USBタイプCプラグ72)がACアダプタ70のUSBタイプCポート77に接続され、USBタイプCケーブル71の他端側のプラグ(USBタイプCプラグ73)が電気機器1のUSBタイプCポート52に接続される。
【0014】
図3に示すシステムでは、電気機器1と電気機器1AとがUSBタイプCケーブル71によって互いに電気的に接続される。USBタイプCケーブル71の一端側のプラグ(USBタイプCプラグ72)が電気機器1AのUSBタイプCポート52Aに接続され、USBタイプCケーブル71の他端側のプラグ(USBタイプCプラグ73)が電気機器1のUSBタイプCポート52に接続される。
【0015】
図4(A)は、電気機器1の回路ブロック図である。
【0016】
電気機器1は、バッテリ51、USBタイプCポート52、昇圧又は降圧回路としての昇降圧回路53、USBPDコントローラIC54(USBパワーデリバリーコントローラ)、電流検出回路55、充電制御回路56、放電制御回路57、モータ駆動回路58、MCU(制御部)59、トリガスイッチ検出回路60、トリガスイッチ61、モード切替スイッチ検出回路62、モード切替スイッチ63、ホールIC64、ロータ位置検出回路65、モータ駆動回路66を有する。
【0017】
バッテリ51は、図示しない単一の二次電池セルからなる電源部又は複数の二次電池セルを互いに接続した電源部である。バッテリ51は、電気機器1に着脱可能であってもよいし、電気機器1に内蔵されてもよい。電気機器1に着脱可能なバッテリ51の定格電圧は、一種類に限定されず、二種類以上であるとよい。
【0018】
USBタイプCポート52は、外部機器に接続可能かつUSB PD対応のUSBコネクタの例示である。USBタイプCポート52は、昇降圧回路53を介してバッテリ51と電気的に接続される。
【0019】
昇降圧回路53は、第1制御基板15に設けられた双方向DCDCコンバータ回路であり、バッテリ51の出力電圧(以下「バッテリ電圧」)を昇圧又は降圧してUSBタイプCポート52に出力する機能、並びに、USBタイプCポート52からの入力電圧(以下「USB入力電圧」)を昇圧又は降圧してバッテリ51及び/又はモータ駆動回路58に出力する機能を有する。
【0020】
USBPDコントローラIC54は、第1制御基板15に設けられ、USB PDによる電力受給電を制御するコントローラである。USBPDコントローラIC54は、USBタイプCポート52に接続した外部機器と通信し、外部機器からUSBタイプCポート52に受電する電力(以下「USB受電予定電力」)、あるいはバッテリ51から外部機器にUSBタイプCポート52を経由して給電する電力(以下「USB放電予定電力」)を決定し、MCU59に送信する。
【0021】
以下、上述の通信により決定するUSB受電予定電力及びUSB放電予定電力に対し、実際に外部機器からUSBタイプCポート52に受電する電力を「USB受電電力」、バッテリ51から外部機器にUSBタイプCポート52を経由して給電する電力を「USB放電電力」と表記する。
【0022】
電流検出回路55は、モータ66に流れる電流(以下「モータ電流」)の経路に設けられた抵抗Rの電圧によりモータ電流を検出し、MCU59に送信する。
【0023】
充電制御回路56は、第1制御基板15に設けられ、MCU59の制御に従って昇降圧回路53を制御し、USB受電電力によるバッテリ51の充電を制御する。また、充電制御回路56は、MCU59の制御に従って昇降圧回路53を制御し、モータ駆動回路58へのUSB受電電力の供給を制御する供給制御回路としても機能する。なお、充電制御回路56の機能をMCU59に持たせ、MCU59が昇降圧回路53を直接制御するようにしてもよい。
【0024】
放電制御回路57は、第1制御基板15に設けられ、MCU59の制御に従って昇降圧回路53を制御し、USB放電電力を制御する。なお、放電制御回路57の機能をMCU59に持たせ、MCU59が昇降圧回路53を直接制御するようにしてもよい。
【0025】
モータ駆動回路58は、第2制御基板17に設けられ、例えば三相ブリッジ接続されたFETやIGBT等のスイッチング素子からなるインバータ回路である。モータ駆動回路58は、MCU59の制御に従い、バッテリ51及び/又は昇降圧回路53から供給される直流を交流に変換してモータ66に供給する。モータ駆動回路58の入力端子間には平滑用のコンデンサCが設けられる。
【0026】
モータ66は、電気機器1の負荷部の例示である。ホールIC64は、モータ66の回転に応じた信号を出力する。ロータ位置検出回路65は、ホールIC64の出力信号によりモータ66のロータの回転位置を検出し、MCU59に送信する。
【0027】
トリガスイッチ検出回路60は、ユーザによるトリガスイッチ61の操作を検出し、MCU59に送信する。
【0028】
モード切替スイッチ検出回路62は、ユーザによるモード切替スイッチ63の操作を検出し、MCU59に送信する。モード切替スイッチ63は、電気機器1の動作モードを、USBタイプCポート52から放電する放電モードと、USBタイプCポート52から受電する受電モードと、の間で切り替える。
【0029】
MCU59は、マイクロコントローラ等を含み、電気機器1の全体の動作を制御する制御部である。MCU59は、トリガスイッチ61の操作に応じてモータ駆動回路58を制御し、モータ66の駆動を制御する。MCU59はUSBPDコントローラIC54と通信する。MCU59は、モード切替スイッチ63の操作に応じた動作モードをUSBPDコントローラIC54に送信する。MCU59は、USBPDコントローラIC54により決定されたUSB受電予定電力あるいはUSB放電予定電力に応じて、充電制御回路56あるいは放電制御回路57を介して昇降圧回路53を制御する。昇降圧回路53の制御はUSBPDコントローラIC54が行ってもよい。MCU59とUSBPDコントローラIC54は、図示のように別体であることに限定されず、一体であって制御部を成してもよい。
【0030】
図4(B)は、図4(A)に通常運転モードでのモータ電流の流れを追加した図である。通常運転モードは、トリガスイッチ61がオンの場合のモードであって、バッテリ51の電力(以下「バッテリ電力」)のみをモータ66に供給してモータ66を駆動するモードである。バッテリ電力は第1電力に対応する。MCU59は、受電モードにおいてUSBタイプCポート52に外部機器が接続されていない場合、又は、受電モードにおいてUSBタイプCポート52に外部機器が接続されているもののUSB受電予定電力が所定電力値以下の場合、通常運転モードとなる。USB受電予定電力が所定電力値以下であることは、USB受電予定電力がモータ66の駆動もしくは駆動補助に不足することに対応する。通常運転モードでは、バッテリ51、モータ駆動回路58、モータ66という経路で電流が流れる。
【0031】
図5(A)は、図4(A)にUSB運転モードでのモータ電流の流れを追加した図である。USB運転モードは、トリガスイッチ61がオンの場合のモードであって、USB受電電力のみをモータ66に供給してモータ66を駆動するモードである。MCU59は、受電モードにおいてUSB受電予定電力が所定電力値を超えている場合であってバッテリ電圧が所定電圧値以下の場合、USB運転モードとなる。USB受電予定電力が所定電力値を超えていることは、USB受電予定電力がモータ66の駆動に足りることに対応する。バッテリ電圧が所定電圧値以下であることは、バッテリ51が充電が必要な状態あるいは過放電状態であることに対応する。USB運転モードでは、USBタイプCポート52、昇降圧回路53、モータ駆動回路58、モータ66という経路で電流が流れる。USBタイプCポート52から入力され昇降圧回路53を介して出力される電力は、第2電力に対応する。MCU59は、充電制御回路56を介して昇降圧回路53を制御し、昇降圧回路53からモータ駆動回路58への入力電圧を制御する。
【0032】
図5(B)は、図4(A)にブーストモードでのモータ電流の流れを追加した図である。ブーストモードは、トリガスイッチ61がオンの場合のモードであって、バッテリ電力(第1電力)と、USBタイプCポート52から入力され昇降圧回路53を介して出力される電力(第2電力)と、を合成してモータ66に供給し、モータ66を駆動するモードである。MCU59は、受電モードにおいてUSB受電予定電力が所定電力値を超えている場合であってバッテリ電圧が所定電圧値を越えている場合、ブーストモードとなる。ブーストモードでは、バッテリ51、モータ駆動回路58、モータ66という経路で電流が流れると共に、USBタイプCポート52、昇降圧回路53、モータ駆動回路58、モータ66という経路で電流が流れる。ブーストモードにおいてモータ66に係る負荷が小さくUSB受電電力のみでモータ66の駆動が可能な場合、USB運転モードに遷移してもよい。この場合において、モータ66に係る負荷が増大してUSB受電電力のみでモータ66の駆動ができなくなった場合、ブーストモードに遷移してもよい。同様に、負荷が小さい場合は通常運転モードに遷移し、負荷が増大した場合にブーストモードに遷移してもよい。
【0033】
図6(A)は、図4(A)に充電モードでの充電電流の流れを追加した図である。充電モードは、トリガスイッチ61がオフの場合のモードであって、USB受電電力によりバッテリ51の充電を行うモードである。MCU59は、受電モードにおいてトリガスイッチ61がオフの場合に充電モードになる。充電モードでは、USBタイプCポート52、昇降圧回路53、バッテリ51という経路で電流が流れる。
【0034】
図6(B)は、図4(A)に放電モードでの放電電流の流れを追加した図である。放電モードは、昇降圧回路53を介してバッテリ電力をUSBタイプCポート52に出力し、USBタイプCポート52に接続された外部機器に給電するモードである。放電モードでは、バッテリ51、昇降圧回路53、USBタイプCポート52という経路で電流が流れる。放電モードにおいてトリガスイッチ61がオンになった場合、受電モードに遷移してもよい。
【0035】
図7は、電気機器1とACアダプタ70とを接続したシステム(図2)の回路ブロック図である。ACアダプタ70は、商用電源等の交流電源74からの供給電力を、電気機器1との通信による決定に応じた直流電力に変換し、電気機器1に供給する。
【0036】
ACアダプタ70は、ラインフィルタ平滑回路75、絶縁トランスDCDCコンバータ76、USBタイプCポート77、USBPDコントローラIC78を有する。交流電源74からの供給電力は、ラインフィルタ平滑回路75を介して絶縁トランスDCDCコンバータ76に入力される。絶縁トランスDCDCコンバータ回路76の出力端子にUSBタイプCポート77が接続される。USBPDコントローラIC78は、USB PDによる電力給電を制御するコントローラである。
【0037】
図7の構成では、電気機器1のUSBPDコントローラIC54とACアダプタ70のUSBPDコントローラIC78が、USBタイプCポート52、77を経由して互いに通信し、ACアダプタ70から電気機器1に供給する電力(以下「ACアダプタ出力予定電力」)を決定する。USBPDコントローラIC78は、決定したACアダプタ出力予定電力に応じて絶縁トランスDCDCコンバータ回路76を制御する。ACアダプタ出力予定電力は、電気機器1におけるUSB受電予定電力に対応する。
【0038】
図8は、電気機器1と電気機器1Aとを接続したシステム(図3)の回路ブロック図である。電気機器1と電気機器1Aは、ここでは互いに同一構成である。電気機器1Aの各構成要素と電気機器1の各構成要素とを区別するために、電気機器1Aの各構成要素の符号の末尾に「A」を付している。なお、バッテリ51、51Aの定格電圧は互いに異なってもよい。
【0039】
図8の構成では、USBPDコントローラIC54、54Aが、USBタイプCポート52、52Aを経由して互いに通信し、電気機器1が電気機器1Aに給電する電力(電気機器1のUSB放電予定電力、電気機器1AのUSB受電予定電力)、あるいは電気機器1が電気機器1Aから受電する電力(電気機器1のUSB受電予定電力、電気機器1AのUSB放電予定電力)を決定する。この決定に基づいてMCU59、59Aが昇降圧回路53、53Aをそれぞれ制御する。
【0040】
図9は、電気機器1の受電モードの制御フローチャートである。
【0041】
MCU59は、バッテリ51の種類を判別する処理を行う(S1)。バッテリ51の種類は、バッテリ51の定格電圧及び定格容量を含む。電気機器1に接続可能なバッテリ51の種類が1種類に限定されている場合や電気機器1に内蔵されている場合、S1の処理は省略してもよい。MCU59は、バッテリ51の種類に応じて昇降圧回路53の出力を設定する(S3)。
【0042】
MCU59は、USB受電予定電力Wが所定電力値W1より大きく(S5のYES)、かつバッテリ電圧Vが所定電圧値V1より大きい場合(S7のYES)において、トリガスイッチ61がオンの場合(S9のYES)、ブーストモードに設定し(S11)、バッテリ電力とUSB受電電力とを合成した合成電力でモータ66を駆動する。所定電圧値V1は、過放電閾値であり、バッテリ51の定格電圧によって異なる。MCU59は、トリガスイッチ61がオフの場合(S9のNO)、充電モードに設定し(S13)、USB受電電力でバッテリ51を充電する。
【0043】
MCU59は、USB受電予定電力Wが所定電力値W1より大きく(S5のYes)、かつバッテリ電圧Vが所定電圧値V1以下の場合(S7のNo)において、トリガスイッチ61がオンの場合(S15のYES)、USB運転モードに設定し(S17)、USB受電電力でモータ66を駆動する。MCU59は、トリガスイッチ61がオフの場合(S15のNO)、充電モードに設定し(S19)、USB受電電力でバッテリ51を充電する。
【0044】
MCU59は、USB受電予定電力Wが所定電力値W1以下(S5のNO)かつバッテリ電圧Vが所定電圧値V1より大きい場合(S20のYES)において、トリガスイッチ61がオンの場合(S21のYES)、通常運転モードに設定し(S23)、バッテリ電力でモータ66を駆動する。MCU59は、トリガスイッチ61がオフの場合(S21のNO)、充電モードに設定し(S25)、USB受電電力でバッテリ51を充電する。
【0045】
MCU59は、USB受電予定電力Wが所定電力値W1以下(S5のNO)かつバッテリ電圧Vが所定電圧値V1以下の場合(S20のNO)、トリガスイッチ61のオンオフにかかわらず充電モードに設定し(S27)、USB受電電力でバッテリ51を充電する。この場合、MCU59は、トリガスイッチ61がオンになってもモータ66を駆動しない。
【0046】
図10は、電気機器1の放電モードの制御フローチャートである。
【0047】
MCU59は、USBタイプCポート52に接続された外部機器のバッテリの種類を判別する処理を行う(S31)。例えば外部機器が電気機器1Aの場合、S31ではバッテリ51Aの種類を判別する。判別は、USBPDコントローラIC54、54Aの通信に基づく。MCU59は、S31での判別結果に応じて昇降圧回路53の出力を設定する(S33)。
【0048】
MCU59は、外部機器が給電対象機器であり(S35のYES)、自身(電気機器1)のバッテリ電圧Vが所定電圧値V1より大きく(S37のYES)、かつ自身(電気機器1)が運転中でない場合(S39のNO)、外部機器に給電する(S41)。
【0049】
MCU59は、外部機器が給電対象機器であり(S35のYES)、自身(電気機器1)のバッテリ電圧Vが所定電圧値V1より大きく(S37のYES)、かつ自身(電気機器1)が運転中の場合(S39のYES)、外部機器に給電する電力を低減又は停止する(S43)。自身(電気機器1)が運転中の場合、自身(電気機器1)が必要とする電力に余裕がない(外部機器に供給できるほど電力に余裕がない)ことも考えられるためである。なお、「低減」は、「変更」としてもよい。
【0050】
MCU59は、外部機器が給電対象機器であり(S35のYES)、自身(電気機器1)のバッテリ電圧Vが所定電圧値V1以下の場合(S37のNO)、外部機器への給電を停止する(S43)。
【0051】
MCU59は、外部機器が給電対象機器でない場合(S35のNO)、外部機器への給電を停止する(S43)。
【0052】
本実施形態は、下記の作用効果を奏する。
【0053】
(1) 電気機器1は、バッテリ51と電気的に接続されかつ外部機器に接続可能なUSB PD対応のUSBタイプCポート52と、USBタイプCポート52及びバッテリ51に電気的に接続されるUSBPDコントローラIC54と、を備える。このため、USB PDで供給できる大電力(例えば240W(48V/5A))を外部機器から受電して、バッテリ51を充電したりモータ66を駆動したりすることができ、利便性が高められる。また、USB PDで供給できる大電力を外部機器に給電可能となり、利便性が高められる。
【0054】
(2) 電気機器1は、USB入力電圧を昇圧又は降圧してバッテリ51又はモータ66に出力する昇降圧回路53を備える。このため、USB入力電圧がバッテリ51の充電やモータ66の駆動に適した電圧でなくても、昇降圧回路53により適切な電圧に調節してバッテリ51の充電やモータ66の駆動に利用できる。よって、USB PDの電力がバッテリ51を充電したりモータ66を駆動したりする場合に、電気機器1とは別に電圧調節用のアダプタを設ける必要がなく、利便性が高められる。また、例えば図8に示すシステムにおいて電気機器1Aのバッテリ51Aから電気機器1のバッテリ51を充電する場合に、バッテリ51、51Aの定格電圧が互いに異なっていても充電が可能であり、利便性が高められる。
【0055】
(3) 電気機器1は、バッテリ51の出力電圧を昇圧又は降圧してUSBタイプCポート52に出力する昇降圧回路53を備える。このため、バッテリ電圧がUSB PDでの電力伝送に適した電圧でなくても、昇降圧回路53により適切な電圧に調節してUSB PDでの電力伝送に利用でき、利便性が高められる。
【0056】
(4) 昇降圧回路53は、双方向DCDCコンバータ回路であり、バッテリ電圧を昇圧又は降圧してUSBタイプCポート52に出力する機能、並びに、USB入力電圧を昇圧又は降圧してバッテリ51及び/又はモータ駆動回路58に出力する機能を有する。このため、双方の機能を別々のDCDCコンバータ回路で実現する場合と比較して、部品点数を削減して回路を小型化できる。
【0057】
(5) モータ66は、バッテリ51から出力される第1電力(バッテリ電力)と、USBタイプCポート52から入力され昇降圧回路53を介して出力される第2電力と、のいずれの電力でも駆動可能に構成される。このため、バッテリ51の残量が不足している状態であっても、USB受電電力を基にした第2電力でモータ66を駆動して作業が可能となり、利便性が高められる。また、トリガスイッチ61のオフ時には第2電力でバッテリ51を充電するため、バッテリ51の残量を回復させながらの作業が可能となり、利便性が高められる。
【0058】
(6) モータ66は、バッテリ51から出力される第1電力(バッテリ電力)と、USBタイプCポート52から入力され昇降圧回路53を介して出力される第2電力と、を合成した電力で駆動可能に構成される。このため、第1電力と第2電力の一方のみでの駆動しかできない構成と比較して電気機器1の最大出力向上が可能となり、利便性が高められる。
【0059】
(7) USBPDコントローラIC54は、USBタイプCポート52に接続した外部機器と通信し、USB受電予定電力あるいはUSB放電予定電力を決定する。よって、外部機器の構成や状態に応じた適切なUSB受電予定電力あるいはUSB放電予定電力を決定でき、利便性が高められる。また、通信により外部機器のメーカ等を認識し、他社製の外部機器には給電しない、あるいは他社製の外部機器からは受電しない等の差別化も可能となる。
【0060】
(8) 図10のS39での分岐のように、MCU59は放電モードにおいて、給電対象機器が運転中か否かにより給電電力を変更する。このため、給電対象機器の運転状況に合わせた適切な放電が可能となり、利便性が高められる。ここで、MCU59は、給電対象機器が運転中(動作中)の場合において、運転強度(例えば図8のシステムにおけるトリガスイッチ61Aの操作量やモータ66Aに係る負荷)に応じて給電電力を変更してもよい。
【0061】
以上、実施形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されない。実施形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0062】
実施形態で具体的な数値として例示した電力値や電圧値、電流値等は、発明の範囲を何ら限定するものではなく、要求される仕様に合わせて任意に変更できる。電気機器1は、インパクトドライバに限定されず、インパクトドライバ以外の電動工具や作業機であってもよいし、電動工具や作業機以外の電気機器であってもよい。第1制御基板15及び第2制御基板17は、単一の制御基板に替えてもよい。
【0063】
図3図8では互いに同一構成の電気機器1、1Aでシステムを構成する例を説明したが、互いに異なる構成あるいは互いに異なる種類の2つの電気機器(例えば作業機とノートパソコンの組合せ等)でシステムを構成してもよい。図10に示す放電モードの制御は、外部機器との通信に応じた電力ないし電圧(電気機器1から出力可能な電力ないし電圧であって外部機器から要求された電力ないし電圧)をUSBタイプCポート52に出力するというシンプルな制御であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…電気機器、10…ハウジング、15…第1制御基板、17…第2制御基板、51…バッテリ、52…USBタイプCポート、53…昇降圧回路、54…USBPDコントローラIC、55…電流検出回路、56…充電制御回路、57…放電制御回路、58…モータ駆動回路、59…MCU(制御部)、60…トリガスイッチ検出回路、61…トリガスイッチ、62…モード切替スイッチ検出回路、63…モード切替スイッチ、64…ホールIC、65…ロータ位置検出回路、66…モータ駆動回路、70…ACアダプタ、71…USBタイプCケーブル、72、73…USBタイプCプラグ、74…交流電源、75…ラインフィルタ平滑回路、76…絶縁トランスDCDCコンバータ、77…USBタイプCポート、78…USBPDコントローラIC。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10