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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172540
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】液体噴出器
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20230101AFI20241205BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20241205BHJP
   F16K 15/14 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
B05B11/00 101H
B65D47/34 100
F16K15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090323
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
【テーマコード(参考)】
3E084
3H058
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084DA01
3E084DB12
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB11
3E084HA03
3E084KA05
3E084KB01
3E084LC06
3E084LD22
3E084LD26
3H058AA13
3H058BB29
(57)【要約】
【課題】シリンダ内への内容物の逆流を抑制しつつ、組立性を高めた液体噴出器を提供する。
【解決手段】本開示に係る液体噴出器100は、容器本体Cに装着する装着部材3と、装着部材3より下方に垂下するシリンダ1と、シリンダ1内で上下動可能に設けられたプランジャ体11と、プランジャ体11の上方に向けて立設され上下動可能に設けられるステム6dと、ステム6dの上部に押下可能に取り付けられ、内容物を吐出するノズルを有するヘッド部30とを備え、シリンダ1には、容器本体C内の負圧により上端開口から取り入れた外気を容器本体C内に供給する外気導入孔1dが設けられており、外気導入孔1dは外気導入弁5により開閉可能であり、外気導入弁5におけるシリンダ1との当接部5cが径方向外側に変位することで開放され、当接部5cよりも上方において、シリンダ1の外面における他の部位よりも粗面化された粗面化領域1rが設けられることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着する装着部材と、
前記装着部材より下方に垂下する有底筒状のシリンダと、
前記シリンダに対して上方付勢されるとともに前記シリンダ内で上下動可能に設けられたプランジャ体と、
前記プランジャ体の上方に向けて立設されるとともに上下動可能に設けられるステムと、
前記ステムの上部に押下可能に取り付けられ、内容物を吐出するノズルを有するヘッド部と
を備え、
前記シリンダには、前記容器本体内の負圧により上端開口から取り入れた外気を前記容器本体内に供給する外気導入孔が設けられており、前記外気導入孔は外気導入弁により開閉可能であり、
前記外気導入弁は前記シリンダを径方向外側から囲む筒状部材であり、前記外気導入弁における前記シリンダとの当接部が径方向外側に変位することで開放され、
前記シリンダの外面における前記当接部よりも上方において、前記シリンダの外面における他の部位よりも粗面化された粗面化領域が設けられている、液体噴出器。
【請求項2】
前記外気導入弁は、前記シリンダとの間に隙間を設けて前記シリンダの中心軸線方向に延びる筒状の弁体と、前記弁体の下端部に前記弁体と一体に設けられた前記当接部とを有する、請求項1に記載の液体噴出器。
【請求項3】
前記粗面化領域は、前記外気導入孔の上方において前記シリンダの外面に形成された上方に向かって径方向外側に傾斜する傾斜部の下端部から上方に設けられている、請求項1又は2に記載の液体噴出器。
【請求項4】
前記外気導入弁は、前記シリンダの上端部から径方向外側に延びるフランジと前記容器本体の前記口部との間で挟持され前記弁体とは別部材であるパッキンを更に備え、前記弁体の上部が前記パッキンの内縁部に嵌合している、請求項2に記載の液体噴出器。
【請求項5】
前記シリンダにおける前記外気導入弁と対向する部位には、周方向の2箇所において径方向外側に突出する突部が設けられており、2箇所の前記突部は、平断面視で直線又は径方向外側に凸の曲線となる面で連結されており、
前記直線又は前記径方向外側に凸の曲線は、2箇所の前記突部のうち前記シリンダの中心軸線から遠い突部よりも径方向内側に配置されている、請求項1又は2に記載の液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器本体の口部に装着され、容器本体内の内容物を外界に噴出させるための液体噴出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体噴出器としては、例えば、特許文献1に示すように、容器体の口部へ装着する装着筒部と、この装着筒部より下方へ垂下されたシリンダを含み、このシリンダに装着された2方向流路アダプタの上部に逆流防止弁付きの通気孔を設け、容器本体内の負圧により2方向流路アダプタの上端開口から取り入れた外気を上記通気孔を通じて容器本体内に供給することが可能な液体噴出器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017- 47354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の液体噴出器では、逆流防止弁として機能する筒状の弁部材の材質は、内容物に触れたことによる膨潤の度合いなど内容物との相性によって選定される。ここで、例えばポリプロピレン(PP)製のシリンダに対して弁部材の材質として滑り性が悪いものが選定されると、組み立ての際に筒状の弁部材をシリンダの上方まで滑らせて装着することができない。この場合、例えばシリンダ内の内圧を開放するための圧力開放孔が弁部材により隠れてしまう等の不具合が発生する可能性があったため、この点において改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的は、シリンダ内への内容物の逆流を抑制しつつ、組立性を高めた液体噴出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本開示の液体噴出器は、
[1]
容器本体の口部に装着する装着部材と、
前記装着部材より下方に垂下する有底筒状のシリンダと、
前記シリンダに対して上方付勢されるとともに前記シリンダ内で上下動可能に設けられたプランジャ体と、
前記プランジャ体の上方に向けて立設されるとともに上下動可能に設けられるステムと、
前記ステムの上部に押下可能に取り付けられ、内容物を吐出するノズルを有するヘッド部と
を備え、
前記シリンダには、前記容器本体内の負圧により上端開口から取り入れた外気を前記容器本体内に供給する外気導入孔が設けられており、前記外気導入孔は外気導入弁により開閉可能であり、
前記外気導入弁は前記シリンダを径方向外側から囲む筒状部材であり、前記外気導入弁における前記シリンダとの当接部が径方向外側に変位することで開放され、
前記シリンダの外面における前記当接部よりも上方において、前記シリンダの外面における他の部位よりも粗面化された粗面化領域が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の液体噴出器は、
[2]
上記[1]に記載の構成において、前記外気導入弁は、前記シリンダとの間に隙間を設けて前記シリンダの中心軸線方向に延びる筒状の弁体と、前記弁体の下端部に前記弁体と一体に設けられた前記当接部とを有することが好ましい。
【0008】
また、本発明の液体噴出器は、
[3]
上記[1]又は[2]に記載の構成において、前記粗面化領域は、前記外気導入孔の上方において前記シリンダの外面に形成された上方に向かって径方向外側に傾斜する傾斜部の下端部から上方に設けられていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の液体噴出器は、
[4]
上記[2]に記載の構成において、前記外気導入弁は、前記シリンダの上端部から径方向外側に延びるフランジと前記容器本体の前記口部との間で挟持され前記弁体とは別部材であるパッキンを更に備え、前記弁体の上部が前記パッキンの内縁部に嵌合していることが好ましい。
【0010】
また、本発明の液体噴出器は、
[5]
上記[1]から[4]のいずれかに記載の構成において、前記シリンダにおける前記外気導入弁と対向する部位には、周方向の2箇所において径方向外側に突出する突部が設けられており、2箇所の前記突部は、平断面視で直線又は径方向外側に凸の曲線となる面で連結されており、前記直線又は前記径方向外側に凸の曲線は、2箇所の前記突部のうち前記シリンダの中心軸線から遠い突部よりも径方向内側に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、シリンダ内への内容物の逆流を抑制しつつ、組立性を高めた液体噴出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態である液体噴出器の正面断面図である。
図2図1における外気導入弁の領域の正面拡大断面図である。
図3A】本開示の一実施形態である液体噴出器に用いられるシリンダの正面半断面図である。
図3B図3Aにおける粗面化領域部分の拡大図である。
図4図2のA-A断面による断面図である。
図5図4における2箇所の突部部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面(図1から図5)を参照して、本開示の一実施形態に係る液体噴出器100を詳細に説明する。
【0014】
図1において、符号1は、容器本体Cにおける口部C2の上端部にパッキンPKを介して配置されるフランジ2を有し、後述する装着部材3より容器本体Cの口部C2の内側を通って下方に垂下するシリンダである。シリンダ1は、有底筒状のシリンダ本体1aと、シリンダ本体1aの中央高さよりも下方の高さ位置において内面が径方向外側に拡径する圧力逃し部1bと、下方に向けて縮径する円錐台側面形状を有し、吸入弁10が着座する弁座1eと、シリンダ本体1aの上下2箇所に並んで設けられる外気導入孔1d及び圧力開放孔1cとを備えている。圧力逃し部1bは、周方向の複数箇所に形成されており、シリンダ1内の液圧を圧力逃し部1b及び圧力開放孔1c経由で逃がすことで、内容物の噴出が終了したときにノズルにおける液切れを改善するために設けられている。また、圧力逃し部1bを設けることにより、プライミング時にシリンダ1内の空気を容器本体C内に回収可能となり、適切にプライミングを行うことができる。外気導入孔1dは、容器本体C内に外気を取り込むために設けられている。すなわち、容器本体C内が負圧状態になると、シリンダ1の上端開口から取り入れた外気が外気導入孔1d経由で容器本体C内に取り込まれる。
【0015】
なお、本明細書、特許請求の範囲、及び図面においては、上下方向は、図1に示すように液体噴出器100を容器本体Cに装着し正立姿勢とした状態における上方、下方を意味するものとする。従って、液体噴出器100が倒立姿勢にある場合であっても、シリンダ1からヘッド部30に向かう方向が上方、ヘッド部30からシリンダ1に向かう方向が下方となる。また、径方向外側とは、図1における液体噴出器100及びシリンダ1の中心軸線Oを通り中心軸線Oに垂直な直線に沿って中心軸線Oから離れる方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線Oに向かう方向を意味するものとする。
【0016】
また、図1における中心軸線Oより左側は、利用者が押圧部材8を押圧する前の状態を示しており、中心軸線Oより右側は、利用者が押圧部材8を押圧したときの状態を示している。
【0017】
本実施形態において容器本体Cは、合成樹脂素材の押出しブロー成形を行うことによって形作っている。また、容器本体Cにはガラス容器などを用いることもできる。
【0018】
符号5は、上述の外気導入孔1dを径方向外側から覆う外気導入弁である。外気導入弁5は、図1及び図2に示すように筒状形状を有する部材であり、シリンダ本体1aに沿って上下方向に延びる弁体5aと、弁体5aと一体形成され弁体5aの上端部から径方向外側に突出するフランジ部5bとを備えている。また、弁体5aの下端部には、外気導入弁5の閉塞時においてシリンダ1の外周面に当接する当接部5cが設けられている。外気導入弁5は、後述する弁体5aとは別部材であるパッキンPKを更に備えている。
【0019】
また、弁体5aの外周面には、径方向外側に僅かに突出する環状突起5a1が設けられている。図1に示すように、フランジ部5bがシリンダ1のフランジ2とパッキンPKとの間で挟持されるとともにパッキンPKの内縁部がこの環状突起5a1にアンダーカット係合されている。そして、弁体5aはパッキンPKの内縁部に嵌合している。外気導入弁5の弁体5aは、フランジ部5bの内側部分がシリンダ1に係合し、フランジ部5bがフランジ2とパッキンPKとの間で挟持されることによって、シリンダ1の外周面に固定されている。
【0020】
外気導入弁5の弁体5aの材料には、弾性係数などの観点から例えば硬度50-70度のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などのゴムを用いることが好適である。ただし、弁体5aにEPDMなどのゴム系の材料を利用した場合には、シリンダ1の材質(例えばポリプロピレン(PP)など)によっては弁体5aとの間の滑り性が悪く、弁体5aをシリンダ1に対して図1の下方から滑らせて装着する際に弁体5aを所定の高さまで嵌め込むことができない場合があった。本実施形態では、図2及び図3Bに示すように、弁体5aとシリンダ1の外面との間に隙間を確保するためにシリンダ1の外面に上方に向けて径方向外側に傾斜する傾斜部1sを設けている。弁体5aをシリンダ1に装着するためには、弁体5aを徐々に拡径する傾斜部1sを通過させて上方まで嵌め込むことが必要であり、弁体5aとシリンダ1の外面との間に作用する摩擦力が問題となっていた。弁体5aをシリンダ1の所定高さまで嵌め込むことができない場合、弁体5aの当接部5cが外気導入孔1dよりも下方に設けた圧力開放孔1cを意図せず覆ってしまうなどの不具合を生じてしまうことがあった。
【0021】
本実施形態では、図2図3A及び図3Bに示すように、当接部5cより上方に設けた外気導入孔1dよりも更に上方に、シリンダ1の外面の他の部位よりも粗面化された粗面化領域1rが設けられている(粗面化領域1rを図3Aの中心軸線Oの左側に網掛け領域として表示し、中心軸線Oの右側の断面図に太線で表示した)。粗面化領域1rは、図3Bにおいて外気導入孔1dの直上に形成された、上方に向かって径方向外側に傾斜する傾斜部1sの下端部から上方に設けられている。なお、粗面化領域1rは、傾斜部1sの下端部から上方の領域のうち一部領域にのみ設けられていてもよい。粗面化領域1rは、少なくとも弁体5aの内面が係合する高さ位置に設けられていることが好ましいが、弁体5aの内面が係合する高さ位置よりも下方にも設けられていることが好ましい。粗面化領域1rは、図3Bにおけるフランジ2を除く領域に設けられているが、フランジ2にわたって設けられていてもよい。なお、本実施形態において、フランジ2は、シリンダ1の上端部から径方向外側に延びる部位を指すものとする。
【0022】
粗面化領域1rは、例えば、図3Aにおける圧力開放孔1cと外気導入孔1dとの間の高さ位置におけるシリンダ1の外面よりも粗面化されていてもよい(ただし、後述する突部1fが設けられた周方向位置を除く。)。粗面化領域1rは、図3Aに示すシリンダ1において圧力開放孔1c及び外気導入孔1dが設けられた高さ位置を含む大径部1h(ただし、フランジ2を除く)における外面のうち粗面化領域1r以外の部位よりも粗面化されていてもよい。粗面化領域1rは、例えば、図3Aにおける圧力開放孔1cより下方の中径部1jにおけるシリンダ1の外面よりも粗面化されていてもよい。粗面化領域1rは、例えば、図3Aにおける中径部1jより下方の小径部1kにおけるシリンダ1の外面よりも粗面化されていてもよい。粗面化領域1rは、図3Aにおけるシリンダ1の大径部1h、中径部1j及び小径部1kのうち、粗面化領域1r以外の全ての部位よりも粗面化されていてもよい。
【0023】
粗面化領域1rは、例えばシリンダ1の外面の所定領域に対してブラスト処理などの機械的処理、プラズマやレーザー処理などの物理的処理、湿式エッチングなどの化学的処理等を行うことにより形成することができる。また、シリンダ1を形成する金型における粗面化領域1rに対応するキャビティの壁面に対して上述のブラスト処理等を行うことによって粗面化し、粗面化された金型の壁面をシリンダ1側に転写することによって粗面化領域1rを形成してもよい。
【0024】
粗面化領域1rを所定の表面粗さとすることによって、弁体5aとシリンダ1の外面との間の摩擦力を低減して弁体5aをシリンダ1の所定の高さ位置に装着し易くすることができる。
【0025】
この粗面化領域1rは、例えば粗面化領域1r又は金型における粗面化領域1rに対応するキャビティの壁面を所定の粒度の研削材を用いてブラスト処理を行うことによって形成することができる。
【0026】
また、内容物の性状によっては弁体5aに内容物が触れて弁体5aが収縮してしまい、外気導入孔1dを通じた外気の導入が円滑に行われないことがある。
【0027】
本実施形態では、図2及び図4から図5に示すように、シリンダ1における外気導入弁5の当接部5cに対向する高さ位置において、シリンダ本体1aの外面から径方向外側に突出する突部1fが設けられている。本実施形態では、突部1fは、上下方向に延在するとともに周方向の2箇所に設けられており、シリンダ1の中心軸線Oから径方向に等しい距離に配置されている。すなわち、シリンダ1の中心軸線Oから2箇所の突部1fの径方向最外縁までの距離が等しく構成されている。
【0028】
また、2箇所の突部1fは平断面視で直線となる連結面1gで連結されている(図4及び図5参照)。この構成によって、突部1fの径方向最外端よりもこの連結面1gの方が径方向内側に位置する。すなわち、図5に示すように、中心軸線Oから突部1fの径方向最外端までの距離D1よりも、中心軸線Oから連結面1gまでの距離D2の方が短くなるように構成されている。なお、中心軸線Oから連結面1gまでの距離D2は、連結面1gにおける突部1fに隣接する位置において最も長くなるが、その周方向位置においても中心軸線Oから突部1fの径方向最外端までの距離D1よりも短くなっている。したがって、この連結面1gが設けられた周方向位置においてシリンダ1の外面と外気導入弁5との間に隙間が生じ易くなっている。この構成によって、外気導入弁5が意図せず収縮してしまった場合でも、この連結面1gが設けられた周方向位置においてシリンダ1と外気導入弁5との隙間から外気を容器本体C内に導入し易くすることができる。なお、図5には、外気導入弁5がこの突部1fに当接することで外気導入弁5の外面が径方向外側に弾性変形して突出部5fを形成している。
【0029】
なお、本実施形態では、2箇所の突部1fは平断面視で直線となる連結面1gで連結されるように構成したが、この態様には限定されない。連結面1gは、例えば平断面視で径方向外側に凸となる曲線となる面であってもよい。この場合にも、突部1fの径方向最外端よりもこの連結面1gの方が径方向内側に位置するように構成すればよく、例えば、連結面1gが、突部1fの径方向最外端の半径位置よりも大きな曲率半径を有する円筒面であってもよい。
【0030】
また、2箇所の突部1fの径方向最外端は、異なる半径位置に設けられていてもよく、その場合、連結面1gは、平面視においてシリンダ1の中心軸線Oから遠い方の突部1fの最外縁よりも径方向内側に位置していればよい。
【0031】
2箇所の突部1fは、外気導入孔1dと周方向に隣接して配置され、外気導入孔1dの中心軸線に関して周方向の対称位置に配置されている。この構成によって、外気導入孔1dの周方向両側においてシリンダ1の外面と外気導入弁5との間に隙間を均等に設けることができる。そのため、当該隙間を通じて外気を容器本体C内に導入し易くすることができる。
【0032】
なお、本願明細書、特許請求の範囲において「外気導入孔1dと周方向に隣接して配置され」るとは、外気導入孔1dの中心軸線に対して周方向になす角度が90度以内であることを意味するものとする。例えば突部1fを外気導入孔1dに対して周方向に対向する位置に配置した場合、突部1fを設けても外気導入孔1dを通じた外気を取り込み易くする効果が得られにくいからである。また、本実施形態のように、弁体5aがシリンダ1との間に隙間を形成している場合、外気導入孔1dは2箇所の突部1fとは周方向に位置をずらせて設けることもでき、例えば外気導入孔1dが2箇所の突部1fの間の周方向位置に位置しない構成であってもよい。この場合であっても2箇所の突部1fが外気導入孔1dの中心軸線に対して周方向になす角度を90度以内にすることが好ましい。
【0033】
また、本実施形態では、外気導入弁5は、シリンダ1との間に隙間を設けてシリンダ1の中心軸線O方向に延びる筒状の弁体5aと、弁体5aの下方に連なり径方向内側に傾斜する当接部5cとを有し、2箇所の突部1fは、外気導入弁5におけるシリンダ1の当接部5cの高さ位置に設けられている(図2参照)。この構成によって、シリンダ1の外面と外気導入弁5の当接部5cとの間に隙間が生じ易くなるため、当該隙間を通じて外気を容器本体C内に導入し易くすることができる。
【0034】
更に、2箇所の突部1fは、外気導入孔1dの高さ位置から当接部5cまで下方に延びている(図2参照)。この構成によって、例えば外気導入弁5が収縮し、当接部5cが上方に移動してしまっても、確実に突部1fの高さ位置に当接部5cを位置させることができる。更に突部1fが外気導入孔1dの高さ位置に形成されることで、例えば外気導入弁5の収縮によって外気導入孔1dが塞がれてしまったとしても、外気を容器本体C内に導入し易くすることができる。
【0035】
なお、本実施形態では、2箇所の突部1fは、当接部5cの高さ位置及び外気導入孔1dの高さ位置の両方に設けられるように構成しているが、いずれか一方の高さ位置にのみ設けてもよいし、いずれとも異なる高さ位置に設けてもよい。また、2箇所の突部1fは、外気導入孔1dの中心軸線に関して周方向の対称位置に配置されていなくてもよい。
【0036】
なお、本実施形態では、シリンダ1の外面の周方向に並ぶ2箇所に突部1fを設けるように構成したが、この態様には限定されない。突部1fは、シリンダ1の外面の3箇所以上に設けるように構成してもよい。例えば、図5に示す2箇所の突部1fに対して周方向の対向位置に更なる2箇所の突部1fを設け、更なる2箇所の突部1fについても同様の連結面1gで連結されるように構成してもよい。また、周方向の隣接する3箇所以上に突部1fを配置し、隣り合う突部1fの間に同様の連結面1gを設けてもよい。本開示は、シリンダ1の外面の少なくとも周方向の2箇所に突部1fが設けられていればよい。
【0037】
符号3は、口部C2との間でフランジ2を固定する天壁4を有し当該天壁4の上面から起立する周壁4aが一体に設けられた装着部材である。装着部材3は、その内側にねじ部3Sを有し、容器本体Cの口部C2に着脱可能に装着されている。なお、ねじ部3Sに代えて周壁から径方向内側に突出する係合突部を設けて打栓により容器本体Cに装着可能に構成してもよい。
【0038】
本実施形態に係る液体噴出器100のヘッド部30は、押圧部材8及びノズルチップ12を備えており、押圧部材8の押下によって、シリンダ1内に蓄えられた内容物がヘッド部30に圧送される。
【0039】
押圧部材8は、外周壁8dと、外周壁8dの径方向内側に設けられ凹部8aを形成する内周壁8eと、ノズルチップ12を内部に収容するノズル収容部8cと、ステム6dを嵌合させる嵌合凹所8fとを備えている。押圧部材8には、凹部8aを通して内容物が圧送される。
【0040】
符号6は、サブシリンダ6aと、サブシリンダ6aから径方向内側に延びる水平壁6bと、水平壁6bの内周側から起立するステム6dとを一体化したヘッド基部である。サブシリンダ6aは、図1に示すように、第1ピストン11dが摺動する領域におけるシリンダ本体1aの内径よりも大きい内径を有している。ヘッド基部6における水平壁6bの内周端には、径方向内側に突出し後述するプランジャ体11が当接して排出口A2を閉塞する突部6cが形成されている。
【0041】
後述するように、押圧部材8の押し下げによるステム6d及びこれに続くプランジャ体11の下降によってシリンダ1内の圧力が上昇し、プランジャ体11の第1ピストン11dよりも第2ピストン11gの方が圧力を受ける面積が大きく、この受圧面積の差によってプランジャ体11がステム6dに対してさらに下方に移動する。これによってヘッド基部6の突部6cとプランジャ体11の傾斜部11b(弁座)からなる排出弁15が開放される。
【0042】
ヘッド基部6は、プランジャ体11の径方向外側に配置されるとともに上下動可能に設けられ、プランジャ体11との間に上述の排出弁15を形成する筒状の部材である。排出弁15は、ヘッド基部6に対するプランジャ体11の下方への相対変位によりシリンダ1内とノズルとの連通を許容する。
【0043】
図1に示すように、プランジャ体11の上方に向けてステム6dが立設されている。ステム6dの上端部は、その内周面が押圧部材8の嵌合凹所8fに嵌合し押圧部材8に固定されている。
【0044】
プランジャ体11における傾斜部11bの下方には、液体流路Lが形成されている。液体流路Lは、傾斜部11bの下方において径方向外側に突出する流路リブ11e同士の間の周方向位置に形成されている。後述するように、圧縮されたシリンダ1内の内容物が液体流路L経由で上方に圧送され、排出口A2に送られる。
【0045】
プランジャ体11の下部には、シリンダ1のシリンダ本体1aの内面に摺動する第1ピストン11dが設けられている。本実施形態では、第1ピストン11dと第2ピストン11gは、一体形成されている。
【0046】
なお、第2ピストン11gの上方の空間と第1ピストン11dの下方の空間とは、図1に示すように液体流路Lにより連通している。これによって、シリンダ1内の圧力は概ね等しく維持されるとともに、シリンダ1内で圧縮された内容物は、この液体流路L及び排出口A2経由で吐出孔12aから吐出される。
【0047】
符号10は、プランジャ体11の上下動に応動してシリンダ1の下端に形成した吸入口A1を開閉する吸入弁である。本形態では、吸入弁10をボール弁で構成している。
【0048】
プランジャ体11は、スプリングSPによりシリンダ1に対して上方付勢されている。また、プランジャ体11は、シリンダ1に対して上下動可能とされている。プランジャ体11の上方に取り付けられたヘッド部30の押圧部材8を押下することで、ステム6d及びプランジャ体11が下方に移動し、次にプランジャ体11が上述の第1ピストン11dと第2ピストン11gの受圧面積の差に起因して下方に移動する。プランジャ体11が下方に移動すると、シリンダ1内における第1ピストン11dより下方の空間を圧縮してシリンダ1内の圧力を高める。
【0049】
押圧部材8には、ノズルチップ12が嵌合している。ノズルチップ12には、内容物を噴出させる吐出孔12aが形成されている。この吐出孔12aは、大径部と小径部からなり、圧送された内容物の流速を高めて外部に噴出させることができる。
【0050】
液体噴出器100は、ヘッド部30を上方及び径方向外側から囲むカバー部材50を備えている(図1において仮想線(二点鎖線)で表示)。カバー部材50は、筒状の周壁51と、周壁51の上端部を閉塞する頂壁53とを備えており、有頂筒状に形成されている。周壁51の下端部内面に装着部材3の周壁4aの外面が嵌合することによってカバー部材50は、装着部材3に対して着脱可能に装着されている。
【0051】
なお、液体噴出器100を構成する各部材は、例えば合成樹脂材や金属などで形成することができる。
【0052】
図1の構成を有する液体噴出器100において、利用者が内容物を利用するに際しては、まず、図1において容器本体Cの胴部を一方の手で把持し、カバー部材50の周壁51をもう一方の手で把持してカバー部材50を上方に引き上げる。これによって、ヘッド部30が露出し、内容物の吐出が可能な状態となる。
【0053】
次に利用者は、カバー部材50を取り外した状態からヘッド部30の押圧部材8を下方に押下する。押圧部材8が押下されると、押圧部材8の嵌合凹所8fに嵌合しているステム6dが押し下げられ、プランジャ体11も下方に押し下げられて、シリンダ1内の圧力が高められる。すると第1ピストン11d及び第2ピストン11gの受圧面積の差によりプランジャ体11に作用する下からの押圧力と上からの押圧力の差によってプランジャ体11がヘッド基部6に対してさらに下方に移動し、突部6cと傾斜部11bからなる排出弁15が開放される(図1の右半分参照)。これによって、第1ピストン11dより下方の空間が圧縮されて圧力が高められたシリンダ1内の内容物は、液体流路L及び排出口A2を通過して、吐出孔12aから吐出される。
【0054】
利用者が更に押圧部材8を押下すると、排出弁15が開いたままでプランジャ体11は、ヘッド基部6に対して下がり続ける。やがてプランジャ体11に一体に設けた第2ピストン11gが、嵌合部9cにより押圧部材8及びヘッド基部6に固定されたシール部材9の段部9bに当接する(図1の右半分参照)。これによって、シール部材9に固定されたヘッド基部6に対するプランジャ体11の更なる下方への相対移動が規制される。したがって、押圧部材8の押圧によってプランジャ体11に下向きの押し下げ力が作用しても、図1の右半分に示すようにプランジャ体11の第2ピストン11gがシール部材9の段部9bに当接してプランジャ体11が過度に下方に変位することがない。このため、押圧部材8を勢いよく押し下げた場合であっても、通常の速度で押し下げた場合と比べてプランジャ体11が圧力逃し部1bに早く到達して噴出量が大きく減少するという不都合を抑制することができる。
【0055】
押圧部材8を可動範囲の下限まで押し下げると(図1の右半分参照)、プランジャ体11の第1ピストン11dがシリンダ1の圧力逃し部1bを覆う位置まで到達する。これによって、シリンダ1の内部の液圧は圧力逃し部1b及び圧力開放孔1cを経由して解放される。シリンダ1の内部の液圧の解放によって、プランジャ体11に作用していた下向きの押し下げ力も解放され、プランジャ体11はスプリングSPの付勢力により上方に変位して突部6cの角部が傾斜部11bに着座し排出弁15は閉塞される。これによって、ノズルチップ12の吐出孔12aからの内容物の噴出は停止される。また、シリンダ1内の液圧が急激に開放されるため、液切れよく内容物の噴出を終了させることができる。
【0056】
利用者が内容物の利用を終了し、押圧部材8の押圧を停止すると、シリンダ1内において下方まで変位していたプランジャ体11は、スプリングSPの復元力によって上方に付勢され、図1の左半分に示す位置まで上昇する。プランジャ体11の上昇によって、シリンダ1内は体積が増加して負圧となり、弁座1eに着座していた吸入弁10が上昇して弁開放されるとともにパイプ213から容器本体C内の内容物が中継口205a、連通路R3及び吸入口A1経由でシリンダ1内に導入される。この導入された内容物は、次回の押圧部材8の押圧によりシリンダ1内で加圧され、液体流路L、排出口A2及びノズルを経由して吐出孔12aから吐出される。
【0057】
利用者が、押圧部材8の押圧によって容器本体C内の内容物を使用すると、収容空間S内の内容物の残量が減少するため、容器本体C内に負圧がかかるようになる。この負圧によって、外気導入弁5の弁体5aの下端部の当接部5cがシリンダ本体1aから離隔し、外気導入孔1dが開放される。
【0058】
外気導入孔1dが開放されると、押圧部材8の外周壁8dと装着部材3の周壁4aとの間の隙間から導入された外気が、負圧により開放されたシール部材9の摺動部9aとシリンダ1との隙間を通じて外気導入孔1dから容器本体C内に導入される。本実施形態では、シリンダ1における当接部5cに対向する高さ位置に、径方向外側に突出する突部1fが周方向の2箇所に設けられており、2箇所の突部1fは平断面視で直線となる連結面1gで周方向に連結されている。この構成によって、突部1fの径方向最外端よりもこの連結面1gの方が径方向内側に位置する。したがって、外気導入弁5が意図しない収縮を起こしても、この連結面1gが設けられた周方向位置においてシリンダ1と外気導入弁5との間に隙間が生じ易くなっている。この構成によって、外気導入弁5の弁体5aの内径が寸法公差に起因してシリンダ本体1aの外径に対して小さ過ぎたり、内容物に触れて弁体5aが収縮してしまった場合にも、連結面1gが設けられた周方向位置においてシリンダ1と外気導入弁5との隙間から外気を容器本体C内に導入し易くすることができる。
【0059】
また、内容物の性状によっては外気導入弁5が膨潤し、当接部5cの周方向長さがシリンダ本体1aの外径よりも長くなり過ぎる場合がある。この場合には、外気導入弁5の閉塞時における膨潤した弁体5aとシリンダ本体1aとの間の締め代が小さくなったり隙間が形成されたりして、内容物が外気導入孔1dを通じて外部に漏れる場合がある。このような問題の発生を抑制するために、初期(膨潤前)の締め代を大きくし、当接部5cをシリンダ本体1aに強く当接させることで、膨潤した後でも適切にシールさせることで内容物の漏れを防止することができる。ただし、初期の締め代を大きくし、当接部5cをシリンダ本体1aに強く当接させることで、初期段階で外気が取り込みにくくなることが考えられる。このような場合でも本実施形態を採用することで、外気導入弁5が膨潤した後も適切なシール(密閉性)と外気の取り込みを両立させることができる。
【0060】
本実施形態では、図1に示すように、シリンダ1の下部に、液体噴出器100及び容器本体Cの倒立姿勢においても内容物を噴出可能とするための正倒立両用アダプタ201が設けられている。正倒立両用アダプタ201は、円筒状のアダプタ筒201a及び本体筒部210を備え、液体噴出器100が正立姿勢にあるときは、切替弁225が弁座部材205の正立時弁座205bに着座して倒立時導入孔221と連通路R3との連通を遮断する。そして、シリンダ1内が負圧に転じると、連通路R3及び中継口205aを通じて切替弁227の上方の空間も負圧となるため、切替弁227が弁体支持部201bから上方に離隔して開放される。これによって、容器本体C内の内容物は、装着筒部201cに装着されたパイプ213及び正倒立両用アダプタ201内の中継口205a及び連通路R3を通ってシリンダ1内に流入する。本実施形態では、中継口205aを周方向の1箇所のみに設けている。この構成によって、中継口205aを複数設ける場合と比較して中継口205aにおける流路の断面積を小さくすることができる。
【0061】
他方、液体噴出器100が倒立姿勢にあるときは、パイプ213の下端部が内容物の液面から突出するが、倒立時導入孔221が内容物中に位置するとともに切替弁225が自重により上方に移動して開放される。また、切替弁227が自重により上方に移動して倒立時弁座205cに着座するため、パイプ213を通じて空気がシリンダ1内に流入するのを抑制する。これによって、倒立時導入孔221と連通路R3とが正倒立両用アダプタ201内で連通し、容器本体C内の内容物は、倒立時導入孔221から正倒立両用アダプタ201内の中継口205a及び連通路R3を通ってシリンダ1内に流入する。
【0062】
本実施形態では、上述のように、外気導入孔1dの径方向外側に筒状の外気導入弁5が装着されている。これによって、液体噴出器100を倒立姿勢にして内容物を使用する場合においても、内容物が外気導入孔1dを逆流してシリンダ1内に侵入してしまうことを抑制することができる。
【0063】
なお、正倒立両用アダプタ201を装着していない液体噴出器100であっても、一時的に液体噴出器100を倒立姿勢としたり、外気導入孔1dを越えて内容物を充填するなどの際に外気導入孔1dを通じて内容物が逆流してしまう可能性がある。そのため、本実施形態の外気導入弁5は、正倒立両用アダプタ201を装着していない液体噴出器100であっても採用可能である。
【0064】
以上述べたように、本実施形態は、容器本体Cの口部C2に装着する装着部材3と、装着部材3より下方に垂下する有底筒状のシリンダ1と、シリンダ1に対して上方付勢されるとともにシリンダ1内で上下動可能に設けられたプランジャ体11と、プランジャ体11の上方に向けて立設されるとともに上下動可能に設けられるステム6dと、ステム6dの上部に押下可能に取り付けられ、内容物を吐出するノズル(ノズルチップ12)を有するヘッド部30とを備え、シリンダ1には、容器本体C内の負圧により上端開口から取り入れた外気を容器本体C内に供給する外気導入孔1dが設けられており、外気導入孔1dは外気導入弁5により開閉可能であり、外気導入弁5はシリンダ1を径方向外側から囲む筒状部材であり、外気導入弁5におけるシリンダ1との当接部5cが径方向外側に変位することで開放され、シリンダ1の外面における当接部5cよりも上方において、シリンダ1の外面における他の部位よりも粗面化された粗面化領域1rが設けられるように構成した。このような構成の採用によって、シリンダ1と弁体5aとの間の滑り性が悪い場合であっても、弁体5aをシリンダ1に対して図1の下方から滑らせて装着する際に、シリンダ1側に設けた粗面化領域1rにより弁体5aとシリンダ1との間の接触面積を減らすことができる。従って、弁体5aをシリンダ1に対して下方から滑らせて装着する際に、弁体5aとシリンダ1の外面との間の摩擦力を低減することができる。よって、弁体5aをシリンダ1における所定の高さまで容易に嵌め込むことができる。
【0065】
また、本実施形態では、外気導入弁5は、シリンダ1との間に隙間を設けてシリンダ1の中心軸線O方向に延びる筒状の弁体5aと、弁体5aの下端部に弁体5aと一体に設けられた当接部5cとを有するように構成した。このような構成の採用によって、筒状の弁体5aの下端部に当接部5cを設けたので、当接部5cが比較的小さな圧力差でシリンダ1から離隔して外気導入孔1dが開放される。従って、シリンダ1内への内容物の逆流を抑制しつつ、外気導入孔1dにより容器本体C内に外気を取り込み易い液体噴出器100を提供することができる。
【0066】
また、本実施形態では、粗面化領域1rは、外気導入孔1dの上方においてシリンダ1の外面に形成された上方に向かって径方向外側に傾斜する傾斜部1sの下端部から上方に設けられるように構成した。従来は、弁体5aをシリンダ1に対して図1の下方から滑らせて装着する際に、弁体5aの上方に向かって径方向外側に傾斜する傾斜部1sを通過する際にシリンダ1の直径が拡大するため、弁体5aとシリンダ1との摩擦力が大きくなっていた。本実施形態では、傾斜部1sの下端部から上方に粗面化領域1rを設けたので、弁体5aが傾斜部1sを通過する際の摩擦力を低減することができる。従って、弁体5aをシリンダ1における所定の高さまで容易に嵌め込むことができる。
【0067】
また、本実施形態では、外気導入弁5は、シリンダ1の上端部から径方向外側に延びるフランジ2と容器本体Cの口部C2との間で挟持され弁体5aとは別部材であるパッキンPKを更に備え、弁体5aの上部がパッキンPKの内縁部に嵌合するように構成した。このような構成の採用によって、フランジ2と容器本体Cの口部C2との間で強固に挟持されるパッキンPKの内縁部に弁体5aの上部が嵌合するので、弁体5aの上部をシリンダ1とパッキンPKとの間で強固に固定することができる。
【0068】
また、本実施形態では、シリンダ1における外気導入弁5と対向する部位には、周方向の2箇所において径方向外側に突出する突部1fが設けられており、2箇所の突部1fは、平断面視で直線又は径方向外側に凸の曲線となる面(連結面1g)で連結されており、直線又は径方向外側に凸の曲線は、2箇所の突部1fのうちシリンダ1の中心軸線Oから遠い突部1fよりも径方向内側に配置されるように構成した。このような構成の採用によって、突部1fの径方向最外端よりも連結面1gの方が径方向内側に位置するため、この連結面1gが設けられた周方向位置においてシリンダ1の外面と外気導入弁5との間に隙間が生じ易くなっている。そのため、外気導入弁5が意図せず収縮してしまった場合でも、この連結面1gが設けられた周方向位置においてシリンダ1と外気導入弁5との隙間から外気を容器本体C内に導入し易くすることができる。従って、外気導入孔1d経由で容器本体C内に外気が導入されるための容器本体C側の減圧条件が緩和される。よって、シリンダ1内への内容物の逆流を抑制しつつ、外気導入孔1dにより容器本体C内に外気を取り込み易い液体噴出器100を提供することができる。この構成により、内容物の吐出量が減少するという不具合を抑制することができる。
【0069】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0070】
例えば、本実施形態では、予め液体噴出器100がユニット化されているが、本開示に従えば、ユニット化することなく、容器本体Cに対して個々のパーツを組み付けるものとすることもできる。
【0071】
また、本実施形態では、第1ピストン11dと第2ピストン11gとは、一体形成されるように構成したが、この態様に限定されず、第1ピストン11dと第2ピストン11gとが別部品に含まれるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示は、例えば、化粧水、整髪料等の化粧品、虫除け等の医薬品及び、美容・健康用品の分野に係る液体噴出器100として採用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 シリンダ
1a シリンダ本体
1b 圧力逃し部
1c 圧力開放孔
1d 外気導入孔
1e 弁座
1f 突部
1g 連結面
1h 大径部
1j 中径部
1k 小径部
1r 粗面化領域
1s 傾斜部
2 フランジ
3 装着部材
3S ねじ部
4 天壁
4a 周壁
5 外気導入弁
5a 弁体
5a1 環状突起
5b フランジ部
5c 当接部
5f 突出部
6 ヘッド基部
6a サブシリンダ
6b 水平壁
6c 突部
6d ステム
8 押圧部材
8a 凹部
8c ノズル収容部
8d 外周壁
8e 内周壁
8f 嵌合凹所
9 シール部材
9a 摺動部
9b 段部
9c 嵌合部
10 吸入弁
11 プランジャ体
11b 傾斜部(弁座)
11d 第1ピストン
11e 流路リブ
11g 第2ピストン
12 ノズルチップ(ノズル)
12a 吐出孔
15 排出弁
30 ヘッド部
50 カバー部材
51 周壁
53 頂壁
100 液体噴出器
201 正倒立両用アダプタ
201a アダプタ筒
201b 弁体支持部
201c 装着筒部
205 弁座部材
205a 中継口
205b 正立時弁座
205c 倒立時弁座
210 本体筒部
213 パイプ
221 導入孔
225 切替弁
227 切替弁
A1 吸入口
A2 排出口
C 容器本体
C2 口部
L 液体流路
O 中心軸線
PK パッキン
R3 連通路
S 収容空間
SP スプリング
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5