(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172544
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】噴出器及び噴出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B65D47/34 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090331
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA07
3E084HD03
3E084KB01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】樹脂部品を用いつつ、操作性を損なうことなく、耐久性が向上した、噴出器及び噴出容器を提供する。
【解決手段】噴出容器100は、噴出器1と、容器本体20と、を備える。噴出器1は、容器本体20に装着可能な装着キャップ2と、装着キャップ2の下側に配置されたポンプPと、ポンプPのステム8を動作させるとともに噴出口A4を備える噴出ヘッド9と、装着キャップ2の仕切壁2bの上面と噴出ヘッド9の下面とを弾性的に支持するとともに装着キャップ2から上側に延在するカバー筒2cの内側に形成された収容空間15に配置されており、さらに、ステム8が貫通する貫通空間10Sが形成された筒状のジャバラ10と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着可能な装着キャップと、前記装着キャップの下側に配置されたポンプと、前記ポンプのステムを動作させるとともに噴出口を備える噴出ヘッドと、前記装着キャップの仕切壁の上面と前記噴出ヘッドの下面とを弾性的に支持するとともに前記装着キャップから上側に延在するカバー筒の内側に形成された収容空間に配置されており、さらに、前記ステムが貫通する貫通空間が形成された筒状のジャバラと、を備える、噴出器。
【請求項2】
前記ジャバラは、0.4mm以上、0.6mm以下の肉厚を有している、請求項1に記載された噴出器。
【請求項3】
前記ジャバラは、65°以上、75°以下のジャバラ角度を有している、請求項1に記載された噴出器。
【請求項4】
前記ジャバラは、1.5mm以上、3.0mm以下のジャバラ幅を有している、請求項1に記載された噴出器。
【請求項5】
前記ジャバラは、押出しブロー成形品である、請求項1に記載された噴出器。
【請求項6】
前記ジャバラは、ポリエチレンによって形成されている、請求項1に記載された噴出器。
【請求項7】
前記ポンプは、シリンダと、吸入弁と、ピストンと、ピストンガイドと、排出弁と、前記ステムと、を備えており、前記装着キャップと、前記シリンダと、前記吸入弁と、前記ピストンと、前記ピストンガイドと、前記排出弁と、前記ステムと、前記噴出ヘッドと、前記ジャバラとは、それぞれ、オレフィン系樹脂によって形成されている、請求項1に記載された噴出器。
【請求項8】
前記噴出ヘッドは、前記ジャバラの貫通空間を当該ジャバラの外部に通じさせる連通部を備えている、請求項1に記載された噴出器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載された噴出器と、前記容器本体と、を備える、噴出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴出器及び噴出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の噴出容器には、装着キャップ(取付けキャップ)と噴出ヘッド(ノズルヘッド)との間に配設した復帰ばねとしてのコイルばねによって、噴出ヘッドを上方に付勢させた注出容器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方で、近年、環境問題を考慮して、リサイクル性に優れた樹脂を使用することによって金属の使用を削減する取り組みが進められている。さらに、こうした噴出容器に採用される噴出器の分野では近年、部品の素材を単一の樹脂に統一化させる取り組みも進められている。
【0005】
しかしながら、上記従来の噴出容器において、噴出ヘッドを装着キャップに対して弾性的に支持するのにあたって、コイルばねを金属製のコイルばね(以下、単に、「金属ばね」ともいう。)から樹脂コイルばね(以下、単に、「樹脂ばね」ともいう。)に変更した場合、樹脂ばねは、金属ばねに比べて、へたり(永久変形)を生じ易い。そのため、樹脂ばねを採用した場合、復元性を維持しつつ耐久性を持たせるために樹脂ばねを厚くする必要がある。ところが、樹脂ばねの厚さを厚くした場合、当該樹脂ばねの剛性が高くなるため、噴出ヘッドの押し込みが重くなる。したがって、樹脂ばねを用いた噴出器、ひいては、噴出容器の場合、操作性を損なうことなく、耐久性を向上させることが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、樹脂部品を用いつつ、操作性を損なうことなく、耐久性が向上した、噴出器及び噴出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る、噴出器は、容器本体の口部に装着可能な装着キャップと、前記装着キャップの下側に配置されたポンプと、前記ポンプのステムを動作させるとともに噴出口を備える噴出ヘッドと、前記装着キャップの仕切壁の上面と前記噴出ヘッドの下面とを弾性的に支持するとともに前記装着キャップから上側に延在するカバー筒の内側に形成された収容空間に配置されており、さらに、前記ステムが貫通する貫通空間が形成された筒状のジャバラと、を備える。
【0008】
(2)上記(1)の噴出器において、前記ジャバラは、0.4mm以上、0.6mm以下の肉厚を有していることが好ましい。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の噴出器において、前記ジャバラは、65°以上、75°以下のジャバラ角度を有していることが好ましい。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの噴出器において、前記ジャバラは、1.5mm以上、3.0mm以下のジャバラ幅を有していることが好ましい。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つの噴出器において、前記ジャバラは、押出しブロー成形品であることが好ましい。
【0012】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つの噴出器において、前記ジャバラは、ポリエチレンによって形成されていることが好ましい。
【0013】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つの噴出器において、前記ポンプは、シリンダと、吸入弁と、ピストンと、ピストンガイドと、排出弁と、前記ステムと、を備えており、前記装着キャップと、前記シリンダと、前記吸入弁と、前記ピストンと、前記ピストンガイドと、前記排出弁と、前記ステムと、前記噴出ヘッドと、前記ジャバラとは、それぞれ、オレフィン系樹脂によって形成されていることが好ましい。
【0014】
(8)上記(1)~(7)のいずれか1つの噴出器において、前記噴出ヘッドは、前記ジャバラの内部を当該ジャバラの外部に通じさせる連通部を備えていることが好ましい。
【0015】
(9)本発明に係る、噴出容器は、上記(1)~(8)のいずれか1つの噴出器と、前記容器本体と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂部品を用いつつ、操作性を損なうことなく、耐久性が向上した、噴出器及び噴出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る噴出容器が初期状態であるときの、当該噴出容器の要部が概略的に示された断面図であり、当該噴出容器は、本発明の例示的な一実施形態に係る噴出器を備えている。
【
図2】
図1の噴出容器に係る噴出器が押し込み状態であるときの、当該噴出容器の要部が概略的に示された断面図である。
【
図3】
図1の噴出容器に係る噴出器のジャバラが当該噴出器に組み付けられる前の状態が組み付け後の初期状態との関係で概略的に示された半断面図である。
【
図4】ジャバラの角度と当該ジャバラの角度を有したジャバラを圧縮変形させるために要した荷重との関係を解析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、噴出容器及び噴出器について説明をする。
【0019】
図1中、符号100は、本発明の一実施形態に係る、噴出容器である。噴出容器100は、本発明の一実施形態に係る、噴出器1と、容器本体20と、を備えている。
【0020】
図1中、軸線Oは、噴出器1の中心軸線である。本実施形態において、噴出容器100の中心軸線は、噴出器1の中心軸線O(以下、単に「軸線O」ともいう。)と一致している。さらに、本実施形態において、容器本体20の中心軸線もまた、軸線Oと一致している。即ち、本実施形態において、噴出容器100の中心軸線は、軸線Oであり、さらに、噴出器1と容器本体20とは、同一軸線上に配置されている。
【0021】
本開示において、軸線Оが延在する方向を「軸線方向」又は「上下方向」ともいう。噴出器1において、「上」とは、後述する噴出ヘッド9が配置されている側をいう場合も含む。また、噴出器1において、「下」とは、後述するシリンダ3が配置されている側をいう場合も含む。さらに、噴出容器100において、「上」とは、噴出器1の側をいう場合も含む。また、噴出容器100において、「下」とは、容器本体20の側をいう場合も含む。
【0022】
また、本開示において、軸線Oに対して直交する方向を「軸直方向」又は「径方向」ともいう。特に、径方向のうち、軸線Oに近い側を「径方向内側」ともいい、また、軸線Oから遠い側を「径方向外側」ともいう。また、本開示において、軸線Oの周りで周方向に延在する方向を単に「周方向」ともいう。
【0023】
図1には、噴出容器100の要部が軸線Oを含む断面で概略的に示されている。
図1の噴出容器100は、噴出器1を操作していない初期状態で示されている。また、
図2には、噴出器1が押し込み状態であるときの、噴出容器100の要部が概略的に示されている。
【0024】
図1を参照すれば、噴出器1は、容器本体20の口部21に装着可能な装着キャップ2と、装着キャップ2の下側に配置されたポンプPと、ポンプPのステム8を動作させるとともに噴出口A4を備える噴出ヘッド9と、装着キャップ2の仕切壁2bの上面と噴出ヘッド9の下面とを弾性的に支持するとともに装着キャップ2から上側に延在するカバー筒2cの内側に形成された収容空間15に配置されており、さらに、ステム8が貫通する貫通空間10Sが形成された筒状のジャバラ10と、を備える。
【0025】
本実施形態において、ポンプPは、容器本体20の収容空間S20に配置可能なシリンダ3と、シリンダ3に形成された吸入口A1を開閉可能な吸入弁4と、シリンダ3の内部に摺動可能に配置されるピストン5と、ピストン5とともに開閉可能な排出弁6を形成するピストンガイド7と、ピストン5を押し込み可能な下端8eを備えるとともにピストンガイド7に連なるステム8と、を備えている。
【0026】
本実施形態において、容器本体20は、いわゆるボトル容器である。本実施形態において、容器本体20は、オレフィン系樹脂によって一体に成形されている。容器本体20は、例えば、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレンテレフタレート(PET)によって形成することができる。
【0027】
容器本体20は、口部21と、当該口部21に連なるネック部22と、ネック部22に連なる肩部23と、当該肩部23に連なる胴部24とを備えている。さらに、本実施形態において、胴部24の下端は、底部(図示省略)によって閉じられている。容器本体20の内側には、内容液を収容可能な収容空間S20が形成されている。
図1に示すように、収容空間S20は、口部21の内側に形成された口部開口A20を通して外界に開放されている。収容空間S20には、内容液を充填させることができる。容器本体20は、例えば、ブロー成形によって形成することができる。ただし、容器本体20の製造方法は、ブロー成形に限定されるものではなく、様々な方法によって製造することができる。
【0028】
本実施形態において、装着キャップ2は、装着筒2aと、装着筒2aに連なる仕切壁2bと、仕切壁2bに連なるカバー筒2cと、を備えている。本実施形態において、装着キャップ2は、オレフィン系樹脂によって一体に成形されている。装着キャップ2は、例えば、ポリプロピレン(PP)によって形成することができる。
【0029】
本実施形態において、装着キャップ2は、装着筒2aによって容器本体20の口部21に装着されている。本実施形態において、装着キャップ2は、装着筒2aを容器本体20の口部21に螺合させることによって、当該口部21に固定されている。ただし、装着筒2aは、例えば、アンダーカット嵌合など、螺合以外の手段によって、口部21に固定することができる。仕切壁2bは、装着筒2aの上端に連なる環状の仕切壁である。仕切壁2bには、当該仕切壁2bを上下方向に貫通する貫通孔2hが形成されている。カバー筒2cは、貫通孔2hを取り囲むように周方向に全周にわたって環状に延在しているとともに仕切壁2bから上側に向かって延在している。ジャバラ10は、
図1に示すように、カバー筒2cの内側に配置されている。
【0030】
シリンダ3は、装着キャップ2から下側に延在している。本実施形態において、シリンダ3は、シリンダ本体3aと、環状縁部3bと、パイプ固定部3cと、を備えている。本実施形態において、シリンダ3もまた、オレフィン系樹脂によって一体に成形されている。シリンダ3は、例えば、ポリプロピレン(PP)によって形成することができる。
【0031】
本実施形態において、シリンダ3は、環状縁部3bによって装着キャップ2に固定されている。これによって、本実施形態において、シリンダ3は、装着キャップ2とともに、容器本体20の口部21に装着されている。環状縁部3bは、シリンダ本体3aの上端から径方向外側に向かって周方向に全周にわたって環状に延在するように連なっている。本実施形態において、環状縁部3bは、装着キャップ2の装着筒2aの内周面に篏合している。さらに、本実施形態において、シリンダ3の環状縁部3bは、環状のシール部材11を介して、容器本体20の口部21の上端に配置されている。シール部材11は、容器本体20とシリンダ3との間をシールする。シール部材11は、例えば、パッキン、ハイシート等の樹脂によって形成することができる。
【0032】
シリンダ本体3aには、ピストン5が摺動可能に配置されている。シリンダ本体3aには、通気孔3hが形成されている。また、本実施形態において、シリンダ3には、パイプ12が固定されている。パイプ12もまた、オレフィン系樹脂によって成形されている。パイプ12は、例えば、ポリエチレン(PE)によって形成することができる。本実施形態において、パイプ12は、シリンダ本体3aの下端に連なるパイプ固定部3cに固定されている。これによって、パイプ12は、装着キャップ2とともにシリンダ3を容器本体20の口部21に取り付けた状態において収容空間S20に配置される。パイプ12の内部に形成された内部通路R0は、シリンダ本体3aの下端に形成された吸入口A1を経て、シリンダ本体3aの内部に通じる。吸入口A1は、シリンダ本体3aの内部に配置された吸入弁4によって開閉される。
【0033】
本実施形態において、吸入弁4は、吸入口A1を密封可能な弁体4aと、シリンダ本体3aに固定される固定筒4bと、弁体4aと固定筒4bとを連結する連結片4cとを備えている。本実施形態において、吸入弁4もまた、オレフィン系樹脂によって一体に成形されている。吸入弁4は、例えば、ポリエチレン(PE)によって形成することができる。
【0034】
本実施形態において、弁体4aは、連結片4cによって固定筒4bに連結されており、吸入口A1を封止している。ただし、弁体4aは、シリンダ本体3aの内圧がピストン5の引上げによって減少すると、連結片4cの付勢力(弾性力)に抗して上向きに移動し、吸入口A1を開放させることができる。
【0035】
ピストン5は、シリンダ3の内周面によって摺動可能に保持されている。本実施形態において、ピストン5は、外筒5aと、内筒5bと、中間筒5cとを備えている。本実施形態において、ピストン5もまた、オレフィン系樹脂によって一体に成形されている。ピストン5は、例えば、ポリエチレン(PE)によって形成することができる。
【0036】
外筒5aは、シリンダ本体3aの内周面を上下方向に摺動させることができる。本実施形態において、外筒5aは、上下方向に間隔を置いて配置された、下端部5a1と、上端部5a2と、を備えている。本実施形態において、ピストン5は、当該ピストン5の下端部5a1及び上端部5a2のそれぞれによって、シリンダ本体3aの内周面を上下方向に摺動させることができる。内筒5bは、中間筒5cを介して外筒5aに連なっている。内筒5bは、外筒5aの上端部5a2とともに上側に延在している。内筒5bは、後述のステム8の大径筒8aの内周面を上下方向に摺動させることができる。中間筒5cは、外筒5aの下端部5a1とともに下側に延在している。中間筒5cには、後述するように、ジャバラ10の付勢力によって、ピストンガイド7に設けられた環状フランジ7bを着座させることができる。
【0037】
本実施形態において、ピストンガイド7は、ピストン5とともに開閉可能な排出弁6を形成するとともに当該排出弁6に通じる内部通路R1が形成されている。本実施形態において、ピストンガイド7は、上下方向に延在するシャフト7aと、シャフト7aから径方向外側に延在する環状フランジ7bとを備えている。本実施形態において、ピストン5もまた、オレフィン系樹脂によって一体に成形されている。ピストンガイド7は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)によって形成することができる。
【0038】
シャフト7aには、内部通路R1が形成されている。本実施形態において、内部通路R1は、
図1に示すように、下端が閉じられている一方で上端が開放されている。加えて、シャフト7aには、径方向に貫通する連通孔A3が形成されている。連通孔A3は、環状フランジ7bよりも上側の位置に配置されている。
【0039】
環状フランジ7bには、
図1に示すように、噴出器1が初期状態にあるとき、ピストン5の中間筒5cが着座している。中間筒5cは、環状フランジ7bに着座することによって、ピストン5とピストンガイド7との間を環状に封止する。これによって、シリンダ本体3aの内部には、吸入弁4と、ピストン5及びピストンガイド7との間にポンプ室S2が形成されている。その一方で、ピストンガイド7は、
図2に示すように、ピストン5に対して下側に移動させることができる。ピストンガイド7が下側に移動することによって、
図2に示すように、ピストンガイド7の環状フランジ7bがピストン5の中間筒5cから離間すると、ピストン5及びピストンガイド7との間には、環状の排出口A2が形成される。これによって、内部通路R1は、
図2に示すように、排出口A2から連通孔A3を通してシリンダ本体3aのポンプ室S2に通じる。ただし、本実施形態において、ピストンガイド7の環状フランジ7bは、
図1に示すように、噴出器1が初期状態に復帰したとき、再びピストン5の中間筒5cに着座する。これによって、排出口A2は、
図1に示すように、閉じられる。即ち、本実施形態において、排出弁6は、ピストンガイド7の環状フランジ7bと、ピストン5の中間筒5cとによって構成されている。
【0040】
本実施形態において、ステム8は、ピストン5を押し込み可能な下端8eを備えるとともにピストンガイドの内部通路R1に通じる内部通路R2が形成されている。本実施形態において、ステム8は、大径筒8aと、小径筒8bと、を備えている。本実施形態において、ステム8もまた、オレフィン系樹脂によって一体に成形されている。ステム8は、例えば、ポリプロピレン(PP)によって形成することができる。
【0041】
本実施形態において、ステム8の下端8eは、大径筒8aの下端である。本実施形態において、大径筒8aの内側には、ピストン5の内筒5bが摺動可能に収容されている。これによって、ステム8は、シリンダ3の内周面に摺動可能に保持されたピストン5によって摺動可能に保持される。その一方で、小径筒8bの内側には、大径筒8aの内側を通してピストンガイド7のシャフト7aの上端部が固定されている。これによって、ピストンガイド7は、ステム8と一体的に動作させることができる。また、小径筒8bの内側に形成された貫通孔は、ステム8に形成された内部通路R2を構成する。内部通路R2は、ピストンガイド7に形成された内部通路R1に通じている。本実施形態において、シリンダ3の上端に形成された開口(環状縁部3bの内側に形成された開口)は、ポンプカバー14によって閉じられている。本実施形態において、ポンプカバー14もまた、オレフィン系樹脂によって成形されている。ポンプカバー14は、例えば、ポリプロピレン(PP)によって形成することができる。本実施形態において、ポンプカバー14には、上下方向に延在している貫通孔が形成されている。ステム8の小径筒8bは、
図1に示すように、ポンプカバー14に形成された前記貫通孔を通して上側に突出している。ステム8の小径筒8bには、噴出ヘッド9が取り付けられている。
【0042】
本実施形態において、噴出ヘッド9は、ステム8を下側に押し込む押圧部材である。噴出ヘッド9は、ステム8を介してピストン5をシリンダ3の内部に押し込むことができる。本実施形態において、噴出ヘッド9には、ステム8に形成された内部通路R2に通じる内部通路R3が形成されており、当該内部通路R3は、噴出口A4を通して外界に通じている。本実施形態において、噴出ヘッド9は、内部通路R3及び噴出口А4とともに、外筒9aと、内筒9bと、中間筒9cと、天壁9dと、を備えている。外筒9a、内筒9b及び中間筒9cは、それぞれ、天壁9dの内面(内天面)から下側に延在している。天壁9dは、噴出ヘッド9を下向きに押し込むための押圧部を構成する。さらに、本実施形態において、噴出ヘッド9は、複数の仕切り板9fを備えている。仕切り板9fは、天壁9dの内面から下側に延在しているとともに、外筒9aと中間筒9cとを連結している。本実施形態において、複数の仕切り板9fは、それぞれ、軸線Oの中心軸線として放射状に延在している。本実施形態において、噴出ヘッド9もまた、オレフィン系樹脂によって一体に成形されている。噴出ヘッド9は、例えば、ポリプロピレン(PP)によって形成することができる。
【0043】
内筒9bには、噴出口А4に通じる内部通路R3が形成されている。本実施形態において、内筒9bは、ステム8の小径筒8bの上端内側に挿入されている。これによって、噴出口A4は、内部通路R3を介して、ステム8に形成された内部通路R2に通じている。ステム8の小径筒8bは、噴出ヘッド9に設けられた内筒9bと中間筒9cとの間に形成された環状溝に挿入されている。本実施形態において、ステム8の小径筒8bは、噴出ヘッド9の中間筒9cによって固定されている。
【0044】
外筒9aの下端部は、
図1に示すように、噴出器1が初期状態にあるとき、装着キャップ2のカバー筒2cの内側の位置に配置されている。外筒9aの内側には、外筒9aと中間筒9cとの間に、ジャバラ10が収容されている。
【0045】
本実施形態において、ジャバラ10は、軸線Oを取り込む筒状のジャバラである。ジャバラ10は、径方向外側から径方向内側に折り返される、環状の山折り部10aと、径方向内側から径方向外側に折り返される、環状の谷折り部10bと、を備えている。ジャバラ10は、山折り部10aと谷折り部10bとが上下方向に沿って繰り返される形状を有している。
【0046】
本実施形態において、ジャバラ10が収容される収容空間15は、装着キャップ2のカバー筒2cの径方向内側に形成されている。詳細には、収容空間15は、装着キャップ2のカバー筒2cと噴出ヘッド9の外筒9aとの径方向内側に形成されている。ジャバラ10の内側には、ステム8が貫通する貫通空間10Sが形成されている。本実施形態において、ジャバラ10は、貫通空間10Sの下端からステム8の小径筒8bが貫通している。その一方で、本実施形態において、貫通空間10Sの上端からは、噴出ヘッド9の内筒9b及び中間筒9cが貫通してステム8の小径筒8bに接続されている。
【0047】
本実施形態において、ジャバラ10もまた、オレフィン系樹脂によって一体に成形されている。ジャバラ10は、例えば、ポリエチレン(PE)によって形成することができる。本実施形態において、ジャバラ10は、押出しブロー成形品である。具体例としては、ジャバラ10は、加熱溶融させた樹脂材料を筒状に押し出し、次いで、当該樹脂材料を金型で挟み込んだ後、例えば、空気を吹き込むことによって成形することができる。
【0048】
ジャバラ10は、装着キャップ2と、噴出ヘッド9と、の間に配置されている。ジャバラ10は、山折り部10aと、谷折り部10bとを基点に、上下方向に伸縮させることができる。ジャバラ10は、装着キャップ2に対して噴出ヘッド9を上側に付勢するとともに弾性的に支持している。
【0049】
噴出ヘッド9は、ジャバラ10の貫通空間10Sを当該ジャバラ10の外部に通じさせる連通部R9を備えている。
【0050】
本実施形態において、ジャバラ10の下端10cは、
図1に示すように、装着キャップ2の仕切壁2bの上面2eと接触している。その一方で、本実施形態において、ジャバラ10の上端10dは、
図1に示すように、噴出ヘッド9の仕切り板9fの下端9eと接触している。本実施形態において、噴出ヘッド9の下端は、噴出ヘッド9の仕切り板9fの下端9eである。本実施形態において、ジャバラ10の上端10dは、噴出ヘッド9の仕切り板9fの下端9eを支持している。この場合、ジャバラ10の上端10dに形成された開口は、複数の仕切り板9fの間に周方向に形成された複数の隙間によって外界に開放される。したがって、複数の仕切り板9fの間に周方向に形成された複数の隙間のそれぞれが、ジャバラ10の貫通空間10Sを当該ジャバラ10の外部に通じさせる連通部R9となる。
図2を参照すれば、ジャバラ10が下側に圧縮されたとき、ジャバラ10の貫通空間10Sに存在する空気は、複数の連通部R9を通して、ジャバラ10の外部(例えば、収容空間15)に排出することができる。
【0051】
なお、本実施形態において、ジャバラ10の下端10cは、谷折り部10bによって形成されており、ジャバラ10の上端10dもまた、谷折り部10bによって形成されている。この場合、ジャバラ10を上下方向に効率的に伸縮させることができる。ただし、ジャバラ10の下端10cは、山折り部10aによって形成し、ジャバラ10の上端10dもまた、山折り部10aによって形成することも可能である。
【0052】
ここで、噴出器1を備える噴出容器100の使用方法の一例について説明をする。
【0053】
図1には、噴出容器100が噴出器1を操作する前の初期状態で示されている。容器本体20の収容空間S20には、内容液が充填されている。
【0054】
内容液を取り出すときには初めに、従来と同様に、噴出ヘッド9をジャバラ10の付勢力(弾性力)に抗してステム8とともに下側に押し込む。このとき、ピストンガイド7は、ステム8とともにピストン5に対して下側に移動する。これによって、
図2に示すように、ピストンガイド7の環状フランジ7bは、ピストン5の中間筒5cから離間する。これによって、ピストン5及びピストンガイド7との間には、環状の排出口A2が形成される。そして、噴出ヘッド9がさらに押し込まれると、ステムの大径筒8aがピストン5をシリンダ3に対して下側に向かって押し込む。これによって、ポンプ室S2の空気は、排出口A2から連通孔A3を介して内部通路R1~R3を通して、噴出ヘッド9の噴出口A4から排出される。
【0055】
次いで、噴出ヘッド9の押し込みを解除すると、噴出ヘッド9は、ジャバラ10の復元力(弾性力)によって、
図1の初期状態に復帰するように上側に向かって移動する。このとき、ピストンガイド7がステム8とともにピストン5に対して上側にスライドすることによって、ピストンガイド7の環状フランジ7bがピストン5の中間筒5cを封止する。即ち、ピストン5及びピストンガイド7との間に形成された排出口A2は、噴出ヘッド9が上側に移動することによって、再び閉じられる。そして、引き続いて、噴出ヘッド9がジャバラ10の付勢力(弾性力)によってさらに上側に移動すると、ピストンガイド7の環状フランジ7bがピストン5をシリンダ3に対して上側に引き上げる。このとき、ポンプ室S2の内部の圧力が低下することによって、吸入弁4の弁体4aを連結片の付勢力(弾性力)に抗して持ち上げる。これによって、ポンプ室S2には、噴出ヘッド9がジャバラ10の復元力(弾性力)によって
図1の初期状態に復帰するまでの間に、パイプ12の内部通路R0から吸入口A1を経て、容器本体20の収容空間S20に充填された内容液が吸入される。内容液がポンプ室S2に充填されて当該ポンプ室S2の圧力減少が解消されると、吸入弁4の弁体4aは、再び吸入口A1を閉じる。これによって、噴出ヘッド9の押し込みを解除すると、噴出器1は、
図1の初期状態に復帰する。
【0056】
その後、噴出ヘッド9を再び押し込めば、ピストン5及びピストンガイド7との間には、環状の排出口A2が再び形成され、ポンプ室S2に充填された内容液は、排出口A2から連通孔A3を介して内部通路R1~R3を通して、噴出ヘッド9の噴出口A4から噴出される。
【0057】
そして、噴出ヘッド9の押し込みを再び解除すると、ポンプ室S2には、噴出ヘッド9がジャバラ10の復元力(弾性力)によって
図1の初期状態に復帰するまでの間に、パイプ12の内部通路R0から吸入口A1を経て、容器本体20の収容空間S20に充填された内容液が吸入される。
【0058】
このように、噴出容器100は、ジャバラ10を弾性部材として用いることによって、従来の液体噴出容器と同様、
図1の初期状態から
図2に示すように噴出ヘッド9を押し込むことによって、当該噴出ヘッド9の噴出口A4を通して、容器本体20の内容液を噴出させることができる。
【0059】
その一方で、従来の噴出器は、装着キャップ2に対して噴出ヘッド9を弾性的に支持するために、ばねを用いていた。しかしながら、環境問題を考慮して、ばねを樹脂ばねに変更した場合、樹脂ばねは、金属ばねに比べて、へたり(永久変形)を生じ易い。そのため、樹脂ばねを採用した場合、復元性を維持しつつ耐久性を持たせるために樹脂ばねを厚くする必要がある。ところが、樹脂ばねの厚さを厚くした場合、当該樹脂ばねの剛性が高くなるため、噴出ヘッド9の押し込みが重くなる、という問題があった。
【0060】
これに対し、噴出器1は、上述のとおり、従来のコイルばねに代えて、装着キャップ2に対して噴出ヘッド9を弾性的に支持する筒状のジャバラ10を備えている。筒状のジャバラ10の下端10cは、軸線Oの周りを周方向に全周にわたって環状に形成され、当該ジャバラ10は、その下端10cによって装着キャップ2に接地される。筒状のジャバラ10の上端10dもまた、軸線Oの周りを周方向に全周にわたって環状に形成され、当該ジャバラ10は、その上端10dによって噴出ヘッド9を支持している。筒状のジャバラ10によれば、当該ジャバラ10の厚さを厚くすることなく、コイルばねを用いたときと同様の復元性を当該ジャバラ10に発揮させることができる。このため、筒状のジャバラ10を用いれば、噴出ヘッド9の押し込みが重くならずに済む。加えて、筒状のジャバラ10は、当該ジャバラ10の厚さを薄くした場合でも、コイルばねに比べてへたりを生じ難い。
【0061】
請求項1(効果)、請求項9(効果)
したがって、噴出器1、ひいては噴出容器100によれば、樹脂部品を用いつつ、操作性を損なうことなく、耐久性が向上する。
【0062】
加えて、本実施形態において、噴出ヘッド9は、ジャバラ10の貫通空間10Sを当該ジャバラ10の外部に通じさせる連通部R9を備えている。連通部R9は、ジャバラ10が収縮したとき、ジャバラ10の貫通空間10Sの空気を、装着キャップ2と噴出ヘッド9との間に形成された、ジャバラ10を収容するための収容空間15に逃がすことができる。これによって、ジャバラ10のスムーズな収縮(圧縮)が可能となる。また、連通部R9は、ジャバラ10が伸張したとき、ジャバラ10の内部に外部から空気を取り入れることができる。これによって、ジャバラ10のスムーズな伸長(復元)が可能となる。したがって、噴出ヘッド9に連通部R9を設ければ、ジャバラ10のスムーズな伸縮が可能となる。
【0063】
また、本実施形態において、ジャバラ10は、押出しブロー成形品である。この場合、ジャバラ10を容易に製造することが可能となり、ひいては、噴出容器100を容易に製造することができる。
【0064】
また、本実施形態において、ジャバラ10は、ポリエチレンによって形成されている。この場合、ジャバラ10が既存の樹脂によって形成されることによって、当該ジャバラ10、ひいては、噴出容器100の製造コストを抑えることができる。
【0065】
また、本実施形態において、噴出器1は、装着キャップ2と、シリンダ3と、吸入弁4と、ピストン5と、排出弁6と、ピストンガイド7と、ステム8と、噴出ヘッド9と、ジャバラ10とを、それぞれ、オレフィン系樹脂によって形成している。この場合、部品の素材を単一の樹脂に統一化させることによって、環境問題に配慮した噴出器1、ひいては、噴出容器100とすることができる。特に、本実施形態において、容器本体20もまた、オレフィン系樹脂によって形成されている。この場合、さらに環境問題に配慮した噴出器1、ひいては、噴出容器100とすることができる。
【0066】
ところで、
図3には、ジャバラ10が噴出器1の内部に組み付けられる前の状態が組み付け後の初期状態との関係で概略的に示されている。
【0067】
本実施形態において、ジャバラ10は、装着キャップ2と、噴出ヘッド9とによって区画された収容空間15に収容されている。ジャバラ10の収容空間15は、軸線Oの周りを周方向に全周にわたって環状に形成されている。
【0068】
図3中、符号W15(min)は、収容空間15の径方向幅W15のうちの最小幅(以下、「収容空間15の径方向最小幅」ともいう。)である。本実施形態において、収容空間15の径方向最小幅W15(min)は、外筒9aの内周面と中間筒9cの外周面との間の径方向幅である。また、
図3中、符号H15(max)は、収容空間15の上下方向高さH15のうちの最大高さ(以下、「収容空間15の上下方向最大高さ」ともいう。)である。本実施形態において、収容空間15の上下方向最大高さH15(max)は、噴出器1が初期状態であるときの収容空間15の上下方向高さである。また、
図2中、符号H15(min)は、収容空間15の上下方向最小高さである。収容空間15の上下方向最小高さH15(min)は、噴出ヘッド9を最大限押し込んだときの、収容空間15の上下方向高さである。ここで、収容空間15の上下方向最大高さH15(max)及び上下方向最小高さH15(min)は、装着キャップ2の仕切壁2bの上面と噴出ヘッド9の仕切り板9fの下面との間の上下方向高さである。
【0069】
噴出器1の実用性を考慮した場合、
図3を参照すれば、収容空間15の径方向最小幅W15(min)は、一般的に、3.5mm以上、4.5mm以下の範囲に設定されることが好ましい。また、収容空間15の上下方向最大高さH15(max)は、一般的に、15mm以上、25mm以下の範囲に設定されることが好ましい。また、
図2を参照すれば、収容空間15の上下方向最小高さH15(min)は、15mm以上、25mm以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0070】
その一方で、
図3中、符号T10は、ジャバラ10の肉厚である。上記収容空間15に収容されるジャバラ10の肉厚T10は、0.4mm以上、0.6mm以下の範囲に設定されることが好ましい。ジャバラ10の肉厚T10を0.4mm未満に設定した場合、ジャバラ10を押出しブロー成形によって成形することが困難である。したがって、ジャバラ10の肉厚T10を0.4mm以上とすれば、生産性に優れる。その一方で、ジャバラ10の肉厚T10を0.6mm超える値に設定した場合、ジャバラ10全体が硬くなることによって、ジャバラ10を伸縮(圧縮及び復元)させるときに、ジャバラ10を重く感じる傾向にある。即ち、ジャバラ10の肉厚T10を0.6mm超える値に設定した場合、ジャバラ10としての動きに改善の余地がある。そこで、ジャバラ10の肉厚T10を0.6mm以下とすれば、ジャバラ10の動きがスムーズとなり、使い勝手がよい。したがって、ジャバラ10の肉厚T10が、0.4mm以上、0.6mm以下の範囲を満たせば、生産性及び操作性に優れる。
【0071】
また、本実施形態において、ジャバラ10は、
図3の破線で示すように、収容空間15の内部に圧縮された状態で組み込まれている。
図3には、無負荷状態のジャバラ10が二点鎖線で示されている。符号L10(n)は、無負荷状態のジャバラ10の長さ(以下、「ジャバラ10の自然長」ともいう。)である。ジャバラ10の自然長L10(n)は、例えば、ジャバラ10を噴出器1の内部にセットしたときのセット長よりも10mm以上、15mm以下の範囲の長さ、具体例としては、30mm以上、35mm以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0072】
ここで、
図3中、符号W10は、ジャバラ幅である。ジャバラ幅W10は、ジャバラ10が自然長L10(n)であるときの、山折り部10aと谷折り部10bとの間の径方向幅である。上記収容空間15に収容されるジャバラ10のジャバラ幅W10は、1.5mm以上、3.0mm以下の範囲に設定されることが好ましい。ジャバラ幅W10を1.0mm以下とした場合、ジャバラ10は、伸縮(圧縮及び復元)することができない。また、ジャバラ幅W10が1.0mmを超えて1.4mm以下である場合、ジャバラ10は、伸縮(圧縮及び復元)するものの、当該ジャバラ10の動きは重く感じられる傾向にある。そこで、ジャバラ幅W10を1.5mm以上とすれば、ジャバラ10を伸縮(圧縮及び復元)させるときに、当該ジャバラ10を重く感じ難い。このため、ジャバラ幅W10を1.5mm以上とすれば、噴出ヘッド9の押し込みが重く感じることがなく、使い勝手がよい。その一方で、ジャバラ幅W10を3.0mm超える値に設定した場合、実用性を考慮した上記収容空間15の内部にジャバラ10を配置することが困難となる。そこで、ジャバラ幅W10を3.0mm以下とすれば、ジャバラ10を収容空間15の内部に確実に収容することができる。したがって、ジャバラ幅W10が、1.5mm以上、3.0mm以下の範囲を満たせば、ジャバラ10を収容空間15に収容することができるとともに操作性に優れる。
【0073】
また、
図3中、符号αは、ジャバラ角度である。ジャバラ角度αは、ジャバラ10が自然長L10(n)であるときの、山折り部10a又は谷折り部10bのなす角度である。上記収容空間15に収容されるジャバラ10のジャバラ角度αは、65°以上、75°以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0074】
図4には、ジャバラ角度α(°)と、当該ジャバラ角度αを有したジャバラ10を圧縮変形させるために要した荷重(N)との関係を解析した結果を示すグラフである。解析には、FEM(有限要素法)を用いた。解析モデルは、前述した設定寸法の収容空間15に圧縮状態で組み付けられるように、自然長L10(n)=35.8mm、肉厚T10=0.4mm、ジャバラ幅W10=2.2mmのジャバラを使用し、材質は、低密度ポリエチレン(LDPE)を想定した。ジャバラ10の最大圧縮寸法は、収容空間15の上下方向最小高さH15(min)を想定し、12.6mmとした。
【0075】
ジャバラ10の圧縮に10N以下の荷重Fを要する場合、当該ジャバラ10は、噴出ヘッド9を押し込んだときに初期状態に復帰するような付勢力(弾性力)を発揮させる性能を有している。しかしながら、ジャバラ10が圧縮に対して発揮する復元力(荷重F)が10N以下である場合、ジャバラ10の復元性能は、繰り返して使用するにつれてより早く低下していく傾向にある。即ち、ジャバラ10の圧縮に要する荷重Fが10N以下である場合、弾性部材として性能をより長期にわたって維持することに改善の余地がある。そこで、
図4を参照すれば、ジャバラ角度αを65°以上の角度とすれば、ジャバラ10は、その圧縮に対して10Nを超える弾性力(復元力)を発揮する。したがって、ジャバラ角度αを65°以上に設定すれば、繰り返し使用しても弾性部材として性能が低下し難く、弾性部材としての耐久性が向上する。
【0076】
その一方で、ジャバラ10の圧縮に要する荷重が20N以上となる場合、噴出ヘッド9の押し込みが重く感じられ、使い勝手が悪い。
図4を参照すれば、ジャバラ10の圧縮を20N以下の荷重で行おうとする場合、ジャバラ角度αは、75°以下であればよい。したがって、ジャバラ角度αを75°以下に設定すれば、噴出ヘッド9の押し込みを重く感じることがなく、使い勝手が良好となる。
【0077】
したがって、ジャバラ10のジャバラ角度αを、65°以上、75°以下の範囲とすれば、弾性部材としての耐久性に優れ、使い勝手も良好であって、前述した設定寸法の収容空間15に圧縮状態で組み付けること可能な、ジャバラとなる。
【0078】
以上、本発明の例示的な実施形態に係る、噴出器1及び噴出容器100について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で、様々に変更することができる。ポンプPは、ステム8を介した噴出ヘッド9の押し込みによって動作するものであれば、上記ポンプに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0079】
1:噴出器, 2:装着キャップ, 2a:装着筒, 2b:仕切壁, 2c:カバー筒, 2e:装着キャップの仕切壁の上端, 2h:貫通孔, 3:シリンダ, 3a:シリンダ本体, 3b:環状縁部, 3c:パイプ固定部, 3h:通気孔, 4:吸入弁, 4a:弁体, 4b:固定筒, 4c:連結片, 5:ピストン, 5a:ピストンの外筒, 5a1:ピストンの外筒の下端部, 5a2:ピストンの外筒の上端部, 5b:ピストンの内筒, 5c:ピストンの中間筒(排出弁), 6:排出弁, 7:ピストンガイド, 7a:ピストンガイドのシャフト, 7b:ピストンガイドの環状フランジ(排出弁), 8:ステム, 8a:ステムの大径筒, 8b:ステムの小径筒, 9:噴出ヘッド, 9a:噴出ヘッドの外筒, 9b:噴出ヘッドの内筒, 9c:噴出ヘッドの中間筒, 9d:噴出ヘッドの天壁, 9e:噴出ヘッドの仕切り板の下端(噴出ヘッドの下端), 9f:噴出ヘッドの仕切り板, 10:ジャバラ, 10a:山折り部, 10b:谷折り部, 10c:ジャバラの下端, 10d:ジャバラの上端, 11:シール部材, 12:パイプ, 13:抑え部材, 14:ポンプカバー, 15:ジャバラの収容空間, 20:容器本体, 21:容器本体の口部, 22:容器本体のネック部, 23:容器本体の肩部, 24:容器本体の胴部, 100:噴出容器, A1:吸入口, A2:排出弁, A3:連通孔, A4:噴出口, A20:容器本体の口部の内側に形成された口部開口, R0:パイプの内部に形成された内部通路, R1:プランジャのシャフトに形成された内部通路, R2:ピストンガイドに形成された内部通路, R3:噴出ヘッドに形成された内部通路, P:ポンプ, S2:ポンプ室, S20:容器本体の収容空間