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特開2024-172547超音波センサアレイ駆動制御装置、超音波センサアレイ駆動制御方法、及び移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172547
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】超音波センサアレイ駆動制御装置、超音波センサアレイ駆動制御方法、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/52 20060101AFI20241205BHJP
   G01S 7/537 20060101ALI20241205BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
G01S7/52 E
G01S7/537
G01S15/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090335
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 直希
(72)【発明者】
【氏名】青木 大輔
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB13
5J083AB14
5J083AC06
5J083AC17
5J083AD04
5J083BA11
5J083CA01
5J083CA12
5J083CB01
(57)【要約】
【課題】互いの音波が相殺されることによる障害物がないとの誤判定を回避することができる超音波センサアレイ駆動制御装置、超音波センサアレイ駆動制御方法、及び移動体を得る。
【解決手段】超音波センサ駆動制御装置30は、各々独立に制御可能な超音波センサ22を複数備える超音波センサアレイ20を駆動制御する。超音波センサ駆動制御装置30は、1つの超音波センサ22を駆動制御する単個制御と、少なくとも2つ以上の超音波センサ22を駆動制御するアレイ制御とを行う駆動制御部32を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々独立に制御可能な超音波センサを複数備える超音波センサアレイを駆動制御する駆動制御装置であって、
1つの前記超音波センサを駆動制御する単個制御と、少なくとも2つ以上の前記超音波センサを駆動制御するアレイ制御とを行う駆動制御部を含む超音波センサアレイ駆動制御装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、前記アレイ制御を行う際に、全ての前記超音波センサを駆動制御する請求項1に記載の超音波センサアレイ駆動制御装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記単個制御を行った後に前記アレイ制御を行う請求項1に記載の超音波センサアレイ駆動制御装置。
【請求項4】
前記アレイ制御は、前記超音波センサアレイの指向可能範囲内において、所定角度で掃引を行う請求項1に記載の超音波センサアレイ駆動制御装置。
【請求項5】
前記超音波センサアレイは移動体に搭載されており、
前記駆動制御部は、前記移動体の動作中に、前記単個制御及び前記アレイ制御を行う請求項1に記載の超音波センサアレイ駆動制御装置。
【請求項6】
前記超音波センサアレイは移動体に搭載されており、
前記駆動制御部は、前記超音波センサアレイによる障害物の検出結果に基づいて前記移動体の進行方向を決定する請求項1に記載の超音波センサアレイ駆動制御装置。
【請求項7】
各々独立に制御可能な超音波センサを複数備える超音波センサアレイを駆動制御する駆動制御方法であって、
1つの前記超音波センサを駆動制御する単個制御と、少なくとも2つ以上の前記超音波センサを駆動制御するアレイ制御とを行う超音波センサアレイ駆動制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波センサアレイ駆動制御方法によって駆動制御される超音波センサアレイが搭載された移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサアレイ駆動制御装置、超音波センサアレイ駆動制御方法、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動体の動作を妨げる物体を検出する処理において誤検出を抑制する制御方法が開示されている。特許文献1に記載の発明は、複数のセンサが互いに異なる方向を向くように取り付けられた移動体において、移動体の動作種別や周辺環境に応じて、複数のセンサから稼働対象となるセンサを決定している。すなわち、稼働センサ以外の超音波センサは超音波を送信しないので、稼動していない超音波センサによる妨害波の発生を抑止し、稼働センサ、または他の移動体の備える超音波センサによる測距結果に基づく物体の検出精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-113198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、図9に示されるように、例えば同じ超音波センサ222を用いて障害物を検知する2台のロボット200A、200Bがあり、これら2台のロボット200A、200Bが正面で向かい合わせとなった場合、互いの発する音波Uは同一方向に発射される。すると、図10に示されるように、互いの発する音波U同士で打ち消されて反射波がなくなり障害物を検知できなくなる場合がある。上記特許文献1に記載の制御方法は、このような互いの音波Uが相殺される場合における制御方法については開示していない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、互いの音波が相殺されることによる障害物がないとの誤判定を回避することができる超音波センサアレイ駆動制御装置、超音波センサアレイ駆動制御方法、及び移動体を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置は、各々独立に制御可能な超音波センサを複数備える超音波センサアレイを駆動制御する駆動制御装置であって、1つの前記超音波センサを駆動制御する単個制御と、少なくとも2つ以上の前記超音波センサを駆動制御するアレイ制御とを行う駆動制御部を含む。
【0007】
本発明の第1の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置では、各々独立に制御可能な超音波センサを複数備える超音波センサアレイにおいて、1つの超音波センサを駆動制御する単個制御と、少なくとも2つ以上の超音波センサを駆動制御するアレイ制御とを行っている。そのため、障害物が存在する場合に、複数の超音波センサが互いに発する音波同士で打ち消されて反射波がなくなった場合でも、単個制御又はアレイ制御の何れかで反射波を検知することができる。これにより、互いの音波が相殺されることによる障害物がないとの誤判定を回避することができるので、障害物への衝突を回避することができる。
【0008】
本発明の第2の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置は、第1の態様の構成において、前記駆動制御部は、前記アレイ制御を行う際に、全ての前記超音波センサを駆動制御する。
【0009】
本発明の第2の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置では、アレイ制御を行う際に、全ての超音波センサを駆動制御しているので、超音波センサアレイの検出性能をより適切に活用することができる。
【0010】
本発明の第3の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置は、第1の態様又は第2の態様の構成において、前記駆動制御部は、前記単個制御を行った後に前記アレイ制御を行う。
【0011】
本発明の第3の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置では、単個制御を行った後でアレイ制御が行われるので、アレイ制御と比較して障害物の検出速度が速い単個制御が先に行われることとなる。そのため、障害物をより速く検出することができる。また、単個制御と比較して指向性の鋭いアレイ制御を単個制御の後に行うことにより、単個制御で障害物が検出されなかった場合に、方向を変えて障害物を検出することができるので、障害物の検出精度を向上させることができる。
【0012】
本発明の第4の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置は、第1の態様~第3の態様の何れかの構成において、前記アレイ制御は、前記超音波センサアレイの指向可能範囲内において、所定角度で掃引を行う。
【0013】
本発明の第4の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置では、アレイ制御を行う際に、超音波センサアレイの指向可能範囲内において所定角度で掃引を行っているので、複数の方向の障害物を検出することができる。これにより、障害物の検出精度をより向上させることができる。
【0014】
本発明の第5の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置は、第1の態様~第4の態様の何れかの構成において、前記超音波センサアレイは移動体に搭載されており、前記駆動制御部は、前記移動体の動作中に、前記単個制御及び前記アレイ制御を行う。
【0015】
本発明の第5の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置では、超音波センサアレイは移動体に搭載されており、移動体の動作中に単個制御及びアレイ制御が行われるので、移動体の動作中に、互いの音波が相殺されることによる障害物がないとの誤判定を回避することができ、障害物への衝突を回避することができる。
【0016】
本発明の第6の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置は、第1の態様~第5の態様の何れかの構成において、前記超音波センサアレイは移動体に搭載されており、前記駆動制御部は、前記超音波センサアレイによる障害物の検出結果に基づいて前記移動体の進行方向を決定する。
【0017】
本発明の第6の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置は、超音波センサアレイは移動体に搭載されており、超音波センサアレイによる障害物の検出結果に基づいて移動体の進行方向が決定されるので、障害物への衝突を回避することができる。
【0018】
本発明の第7の態様の超音波センサアレイ駆動制御方法は、各々独立に制御可能な超音波センサを複数備える超音波センサアレイを駆動制御する駆動制御方法であって、1つの前記超音波センサを駆動制御する単個制御と、少なくとも2つ以上の前記超音波センサを駆動制御するアレイ制御とを行う。
【0019】
本発明の第7の態様の超音波センサアレイ駆動制御方法によれば、上記第1の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置と同様の効果を得ることができる。
【0020】
本発明の第8の態様の移動体は、上記第7の態様の超音波センサアレイ駆動制御方法によって駆動制御される超音波センサアレイが搭載されている。
【0021】
本発明の第8の態様の移動体によれば、上記第7の態様の超音波センサアレイ駆動制御方法と同様に、上記第1の態様の超音波センサアレイ駆動制御装置と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の超音波センサアレイ駆動制御装置、超音波センサアレイ駆動制御方法、及び移動体によれば、互いの音波が相殺されることによる障害物がないとの誤判定を回避することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る移動体の構成を模式的に示す構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る超音波センサアレイ駆動制御装置を含む超音波センサシステムの構成を模式的に示す構成図である。
図3】単個制御時における超音波センサによる音波の発生を模式的に示す模式図である。
図4】アレイ制御時における超音波センサによる音波の発生を模式的に示す模式図である。
図5】駆動制御装置の駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】駆動制御装置の衝突回避処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】単個制御時に障害物が検出された際の移動体の動きを説明する説明図である。
図8】アレイ制御時に障害物が検出された際の移動体の動きを説明する説明図である。
図9】2台の移動体が正面で向き合った場合の従来の音波の発生状態を説明する説明図である。
図10】2台の移動体が正面で向き合った場合の従来の受信波の状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図4を用いて本発明の一実施形態に係る超音波センサアレイ駆動制御装置としての駆動制御装置30を含む超音波センサシステム10について説明する。本実施形態の超音波センサシステム10は、超音波からなる送信波と、送信波が物体に反射して返ってくる反射波との時間間隔に基づいて音速から距離を測距するToF(Time of Flight)の技術を利用している。本実施形態の超音波センサシステム10の超音波センサアレイ20に搭載される超音波センサ22は、一例として、シリコン等を加工して微細な素子を形成する微細加工技術(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)を使用して形成される。
【0025】
図1は本発明の一実施形態に係る移動体100の構成を模式的に示す構成図、図2は本発明の一実施形態に係る駆動制御装置30を含む超音波センサシステム10の構成を模式的に示す構成図である。図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る駆動制御装置30を含む超音波センサシステム10は、移動体100に搭載されている。移動体100は、例えば自立走行可能に構成されており、一例としてお掃除ロボット、配膳を行う人型ロボット、及びペット型ロボット等とすることができる。移動体100は、駆動部(図示省略)を備えており、この駆動部は、後述する駆動制御部32によって駆動制御される。
【0026】
図2に示されるように、本実施形態の超音波センサシステム10は、超音波センサアレイ20と駆動制御装置30とを備えている。超音波センサアレイ20は、複数の超音波センサ22を備えており、複数の超音波センサ22は、一次元アレイまたは二次元アレイを形成するように配列されている。複数の超音波センサ22は、各々入力される制御信号に基づいて超音波としての送信波40を発生する振動体(図示省略)を備えており、各々独立に制御可能な構成を有している。
【0027】
振動体は、一例として基板(図示省略)、ダイアフラム(図示省略)、及び圧電膜(図示省略)等を含んで構成されており、圧電膜に電圧が印加されることにより圧電膜が伸縮され、この伸縮に伴ってダイアフラムが振動されることにより振動体が振動される。この振動体の振動により送信波40が発生される。また、複数の超音波センサ22は、一例として各々、昇圧回路、及びアンプ等を備えた駆動回路(図示省略)を有しており、駆動回路は、後述する駆動制御部32から出力される制御信号に基づいて振動体に電圧を印加する。
【0028】
また、振動体は、送信波40が障害物OBで反射された反射波50を受信する際に、反射波50によってダイアフラムが振動し、この振動によって圧電膜が変形して電圧が発生される。複数の超音波センサ22は、一例として各々、反射波50を受信して電気信号に変換する超音波マイクロフォン(図示省略)、アンプ(図示省略)、及びA/D変換器等を備えた受信回路(図示省略)を備えている。そして、反射波50によって振動体の圧電膜が変形することにより発生される電圧の出力信号は、受信回路によって増幅され、アナログ信号からデジタル信号へ変換されて、後述する障害物検出部34へ出力される。
【0029】
駆動制御装置30は、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリと、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性のストレージ、と通信インタフェース(通信I/F)と、入出力インタフェース(入出力I/F)とを含んで構成されている。各構成は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。また、入出力I/Fには、上述した駆動回路と受信回路とが、配線を介して接続されている。
【0030】
駆動制御装置30は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。具体的には、駆動制御装置30は、機能構成として、駆動制御部32と障害物検出部34とを含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPUがROM又はストレージに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0031】
駆動制御部32は、1つの超音波センサ22を駆動制御する単個制御と、少なくとも2つ以上の超音波センサ22を駆動制御するアレイ制御とを行う。本実施形態において駆動制御部32は、一例として、アレイ制御を行う際に、全ての超音波センサ22を駆動制御している。
【0032】
図3は単個制御時における超音波センサによる音波の発生を模式的に示す模式図である。図3に示されるように、駆動制御部32は、複数の超音波センサ22のうちの1つの超音波センサ22に対して、波形を入力することにより当該超音波センサ22の振動体を駆動させる。駆動制御部32は、共振周波数で連続して矩形波を入力する。なお、駆動制御部32により入力される波形は、矩形波に限られず、正弦波等、何れの形状の波形であってもよい。また、本実施形態においては、一例として、駆動制御部32は、複数の超音波センサ22のうち略中央に配列された超音波センサ22を単個制御する。
【0033】
図4はアレイ制御時における超音波センサによる音波の発生を模式的に示す模式図である。図4に示されるように、駆動制御部32は、複数の超音波センサ22に対して、波形を入力することにより当該超音波センサ22の振動体を駆動させる。この際に、駆動制御部32は、一例として、紙面上下方向において上側に向かうにつれて、波形を入力するタイミングを遅らせている。これにより、複数の超音波センサ22により送信される送信波40の波面24の傾きを、図3で示される1つの超音波センサ22により送信される送信波40の波面26の傾きと異ならせている。単個制御の波面26に対してアレイ制御における波面24を異ならせることにより、送信波40の進行方向を単個制御とは異なる方向にすることができる。
【0034】
なお、駆動制御部32は、一例として、紙面上下方向において下側に向かうにつれて、波形を入力するタイミングを遅らせることにより、波面24の傾きを図4とは紙面上下方向の反対、すなわち紙面下方に向かうほど超音波センサ22から離れる形状とすることができる。駆動制御部32は、アレイ制御時において、送信波40の波面24の傾きと振幅と適宜に変化させることにより、超音波センサ22の指向性範囲を変化させることができる。なお、送信波40の波面24は、指向可能範囲内において傾き角度を変化させることができる。
【0035】
駆動制御部32は、アレイ制御においても、共振周波数で連続して矩形波を入力する。なお、駆動制御部32により入力される波形は、矩形波に限られず、正弦波等、何れの形状の波形であってもよい。
【0036】
また、駆動制御部32は、障害物検出部34により障害物OBが検出された場合に、移動体100に対して衝突を回避するように衝突回避処理を行う。衝突回避処理としては、具体的には、一例として、移動体100の進行方向を変更する、移動体100を停止させる、移動体100の速度を落とす、及び、移動体100の速度を落とし、かつ進行方向を変える等がある。なお、衝突回避処理については、後で詳細に説明する。
【0037】
駆動制御部32は、障害物検出部34による障害物OBの検出結果に基づいて、移動体100の進行方向を決定し、決定した進行方向に沿って移動体100が走行するように移動体100を駆動制御する。
【0038】
障害物検出部34は、障害物OBの有無を検出する。具体的には、障害物検出部34は、複数の超音波センサ22からの出力に基づいて、受信は50を受信したか否かを検出する。障害物検出部34は、反射波50の受信を検出した場合に、障害物OBが存在することを検出する。
【0039】
なお、本実施形態において、障害物検出部34は、障害物OBの有無を検出しているが、本発明はこれに限られない。例えば、障害物検出部34は、送信波40を送信してから反射波50を受信するまでの時間TRに基づいて障害物OBまでの距離Lを検出してもよい。超音波は音であるため、空気中を音速Cで伝播する。従って、障害物OBまでの距離Lは下記式(1)で導出することができる。
L=1/2×TR×C・・・(1)
【0040】
次に本実施形態の駆動制御装置30による超音波センサアレイ20の駆動制御方法について説明する。駆動制御部32は、移動体100の動作中に、上述した単個制御及びアレイ制御を行う。図5は駆動制御装置30の駆動制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0041】
図4に示されるように、ステップS11にて、駆動制御部32は、超音波センサアレイ20に対して単個制御を行う。すなわち、駆動制御部32は、1つの超音波センサ22に対して波形信号を入力する。次に、ステップS12にて、波形信号が入力された超音波センサ22が送信波(音波)40を発射する。
【0042】
ステップS13にて、障害物検出部34は、反射波50が検出された否かを判断する。ここで、障害物検出部34は、超音波センサ22が送信波40を発射してから一例として12msの間、反射波50が検出されるまで待機する。本実施形態においては、一例として、障害物検出部34は、移動体100から2m以内に障害物OBが侵入した際に、当該障害物OBを検出したい。すなわち、上述した式(1)に基づいて、送信波40を送信してから反射波50を受信するまでの時間TRを求めると、距離Lが2mとなるので、下記式(2)となる。なお、音速Cは340m/sとする。
【0043】
TR=2×L/C=2×2/340=11.76(ms)・・・(2)
【0044】
本実施形態においては、上記式(2)から待機する時間を12msとする。障害物検出部34は、12ms以内に反射波50が検出されない場合に障害物OBが2m以内に存在しないと判断する。
【0045】
ステップS13にて、障害物検出部34が12ms以内に反射波50を検出した場合(ステップS13;YES)、ステップS14にて、駆動制御部32は衝突回避処理を行う。一方、ステップS13にて、障害物検出部34が12ms以内に反射波50を検出しなかった場合(ステップS13;NO)、ステップS15にて、駆動制御部32は、アレイ制御を行う。すなわち、駆動制御部32は、複数の超音波センサ22の全てに対してタイミングをずらして波形信号を入力する。
【0046】
次に、ステップS16にて、波形信号が入力された順に超音波センサ22が送信波(音波)40を発射する。すなわち、ステップS16において、ステップS12の送信波40とは異なる方向に送信波40が発射されるので、指向性範囲が異なるものとなる。
【0047】
ステップS17にて、障害物検出部34は、反射波50が検出された否かを判断する。障害物検出部34が12ms以内に反射波50を検出した場合(ステップS17;YES)、ステップS14にて駆動制御部32は衝突回避処理を行う。一方、ステップS17にて、障害物検出部34が12ms以内に反射波50を検出しなかった場合(ステップS17;NO)、ステップS18にて、駆動制御部32は、超音波センサアレイ20の指向可能範囲内において所定角度で掃引を行う。
【0048】
具体的には、ステップ16にて超音波センサアレイ20が送信波40を発生した波面24から所定角度波面24の角度を変更し、駆動制御部32は、複数の超音波センサ22の全てに対してタイミングをずらして波形信号を入力する。なお、本実施形態においては、一例として上記所定角度は±2度とする。
【0049】
ステップS19にて、波形信号が入力された順に超音波センサ22が送信波(音波)40を発射する。すなわち、ステップS19において、ステップS16の送信波40とは異なる方向に送信波40が発射されるので、指向性範囲が異なるものとなる。
【0050】
ステップS20にて、障害物検出部34は、反射波50が検出された否かを判断する。障害物検出部34が12ms以内に反射波50を検出した場合(ステップS20;YES)、ステップS14にて駆動制御部32は衝突回避処理を行う。一方、ステップS20にて、障害物検出部34が12ms以内に反射波50を検出しなかった場合(ステップS20;NO)、ステップS21にて、駆動制御部32は、障害物検出部34が反射波50を検出するまで、超音波センサアレイ20の指向可能範囲内において所定角度で掃引を行う。すなわち、ステップS18以降の処理を繰り返し行う。
【0051】
他方、ステップS21にて、駆動制御部32が超音波センサアレイ20の指向可能範囲内における掃引が完了したと判断した場合(ステップS21;NO)、駆動制御部32は、ステップS11へ処理を移行して、ステップS11以降の処理を引き続き行う。
【0052】
図6は駆動制御部32による衝突回避処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここで、衝突回避処理としては、移動体100が2台動作されている場合を一例として以下説明する。2台の移動体100は、それぞれ第1の移動体100A及び第2の移動体100Bとする(図7図8参照)。図6に示されるように、ステップS31にてN=1とする。ここで、Nは自然数を示す。次に、ステップS32にて、駆動制御部32は、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bの進行速度を減速させる。
【0053】
ステップS33にて、駆動制御部32は、障害物検出部34の検出状態を判断する。図7は単個制御時に障害物OBが検出された際の移動体100(第1の移動体100A及び第2の移動体100B)の動きを説明する説明図、図8はアレイ制御時に障害物OBが検出された際の移動体100(第1の移動体100A及び第2の移動体100B)の動きを説明する説明図である。図7及び図8において、白色の移動体は第1の移動体100Aを示し、色付きの移動体は第2の移動体100Bを示す。また、白色及び色付きの点線矢印D1は、各々進行方向を示し、白色及び色付きの矢印D2、D3は、各々進路変更後の進行方向を示す。細線で示される矢印D4は、音波(送信波40、受信波50)方向を示す。
【0054】
ステップS33にて、障害物検出部34が単個制御により障害物OBを検出した場合(ステップS33;単個制御)、駆動制御部32は、移動体100の進行方向を一例として左に45度変更させる。図7に示されるように、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bは、矢印D1で示されるように、各々紙面左右方向が進行方向とされている。この状態で、単個制御により障害物OBが検出されると、駆動制御部32は、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bを、各々の進行方向(矢印D1)に対して左方向へ45度、すなわち反時計回りに45度進路を変更させる。すなわち、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bは、矢印D2で示される方向へ進行方向を変更する。
【0055】
次に、ステップS35にて、駆動制御部32は、超音波センサアレイ20に対して単個制御を行う。すなわち、駆動制御部32は、1つの超音波センサ22に対して波形信号を入力する。次に、ステップS36にて、波形信号が入力された超音波センサ22が送信波(音波)40を発射する。
【0056】
ステップS37にて、障害物検出部34は、反射波50が検出された否かを判断する。反射波50が検出されなかった場合(ステップS37;NO)、駆動制御部32は、移動体100の進行方向を一例として右に45度変更させる。図7に示されるように、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bは、ステップS34により現在、矢印D2で示される方向を進行方向としている。この現在の進行方向(矢印D2)に対して右方向へ45度、すなわち時計回りに45度進路を変更させる。すなわち、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bは、矢印D3で示される方向へ進行方向を変更することにより、元の進行方向(矢印D1)に進行方向が戻される。
【0057】
次に、ステップS40にて、駆動制御部32は、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bの進行速度を元の進行速度に復帰させて衝突回避処理を終了し、図5のS22へ処理を移行する。
【0058】
一方、ステップS37にて、障害物検出部34により反射波50が検出された場合(ステップS37;YES)、ステップS38にて駆動制御部32は、Nに「1」をプラスして、ステップS34以降の処理を行う。なお、ステップS38の処理を行った後でステップS34以降の処理を行う場合には、ステップS39において第1の移動体100A及び第2の移動体100Bの進行方向を変更する際に、45×N度右方向へ進路を変更させる。
【0059】
他方、ステップS33にて、障害物検出部34がアレイ制御により障害物OBを検出した場合(ステップS33;アレイ制御)、ステップS41にて、駆動制御部32は、移動体100の進行方向を一例として障害物OBの検出方向と反対側にθ度変更させる。図8に示されるように、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bは、矢印D1で示されるように、各々紙面左右方向が進行方向とされている。なお、アレイ制御においては、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bの各々の進行方向(矢印D1)と、矢印D4で示される音波方向とは異なっている。具体的には、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bの各々の進行方向(矢印D1)は、音波方向に対して反時計回りにθ度回転されている。
【0060】
この状態で、アレイ制御により障害物OBが検出されると、駆動制御部32は、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bを、各々の進行方向(矢印D1)に対して矢印D4で示される音波方向すなわち障害物OBの検出方向とは反対側にθ度、すなわち反時計回りにθ度進路を変更させる。すなわち、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bは、矢印D2で示される方向へ進行方向を変更する。
【0061】
次に、ステップS42にて、駆動制御部32は、超音波センサアレイ20に対して単個制御を行う。すなわち、駆動制御部32は、1つの超音波センサ22に対して波形信号を入力する。次に、ステップS43にて、波形信号が入力された超音波センサ22が送信波(音波)40を発射する。
【0062】
ステップS44にて、障害物検出部34は、反射波50が検出された否かを判断する。反射波50が検出されなかった場合(ステップS44;NO)、駆動制御部32は、移動体100の進行方向を一例として右にθ度変更させる。図8に示されるように、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bは、ステップS41により現在、矢印D2で示される方向を進行方向としている。この現在の進行方向(矢印D2)に対して右方向へθ度、すなわち時計回りにθ度進路を変更させる。すなわち、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bは、矢印D3で示される方向へ進行方向を変更することにより、元の進行方向(矢印D1)に進行方向が戻される。
【0063】
次に、ステップS40にて、駆動制御部32は、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bの進行速度を元の進行速度に復帰させて衝突回避処理を終了し、図5のS22へ処理を移行する。
【0064】
一方、ステップS44にて、障害物検出部34により反射波50が検出された場合(ステップS44;YES)、ステップS46にて駆動制御部32は、Nに「1」をプラスして、ステップS41以降の処理を行う。なお、ステップS46の処理を行った後でステップS41以降の処理を行う場合には、ステップS45において第1の移動体100A及び第2の移動体100Bの進行方向を変更する際に、反時計回りにθ×N度進路を変更させる。
【0065】
次に、ステップS40にて、駆動制御部32は、第1の移動体100A及び第2の移動体100Bの進行速度を元の進行速度に復帰させて衝突回避処理を終了し、図5のS22へ処理を移行する。
【0066】
図5に戻り、ステップS22にて、駆動制御部32は移動体100が停止されたか否かを検出し、停止されていない場合(ステップS22;NO)、駆動制御装置30は、ステップS11へ処理を移行して、ステップS11以降の処理を繰り返し行う。一方、ステップS22にて、移動体100が停止された場合(ステップS22;YES)、駆動制御装置30は駆動制御処理を終了する。
【0067】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0068】
本実施形態の駆動制御装置30、超音波センサアレイ20の駆動制御方法、及び移動体100によれば、各々独立に制御可能な超音波センサ22を複数備える超音波センサアレイ20において、1つの超音波センサ22を駆動制御する単個制御と、複数の超音波センサ22の全てを駆動制御するアレイ制御とを繰り返し行っている。そのため、障害物OBが存在する場合に、複数の超音波センサ22が互いに発する音波(送信波40)同士で打ち消されて反射波50がなくなった場合でも、繰り返し行われる単個制御又はアレイ制御の何れかで反射波50を検知することができる。これにより、互いの音波(送信波40)が相殺されることによる障害物OBがないとの誤判定を回避することができるので、障害物OBへの衝突を回避することができる。
【0069】
また、本実施形態の駆動制御装置30、超音波センサアレイ20の駆動制御方法、及び移動体100によれば、アレイ制御を行う際に、全ての超音波セン22サを駆動制御しているので、超音波センサアレイ20の検出性能をより適切に活用することができる。
【0070】
また、本実施形態の駆動制御装置30、超音波センサアレイ20の駆動制御方法、及び移動体100によれば、単個制御を行った後でアレイ制御が行われるので、アレイ制御と比較して障害物OBの検出速度が速い単個制御が先に行われることとなる。そのため、障害物OBをより速く検出することができる。また、単個制御と比較して指向性の鋭いアレイ制御を単個制御の後に行うことにより、単個制御で障害物OBが検出されなかった場合に、方向を変えて障害物OBを検出することができるので、障害物OBの検出精度を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態の駆動制御装置30、超音波センサアレイ20の駆動制御方法、及び移動体100によれば、アレイ制御を行う際に、超音波センサアレイ20の指向可能範囲内において所定角度で掃引を行っているので、複数の方向の障害物OBを検出することができる。これにより、障害物OBの検出精度をより向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態の駆動制御装置30、超音波センサアレイ20の駆動制御方法、及び移動体100によれば、超音波センサアレイ20は移動体100に搭載されており、移動体100の動作中に単個制御及びアレイ制御が行われるので、移動体100の動作中に、互いの音波(送信波40)が相殺されることによる障害物OBがないとの誤判定を回避することができ、障害物OBへの衝突を回避することができる。
【0073】
また、本実施形態の駆動制御装置30、超音波センサアレイ20の駆動制御方法、及び移動体100によれば、超音波センサアレイ20は移動体100に搭載されており、超音波センサアレイ20による障害物OBの検出結果に基づいて移動体100の進行方向が決定されるので、障害物OBへの衝突を回避することができる。
【0074】
[実施形態の補足説明]
上述した実施形態においては、駆動制御部32は、アレイ制御を行う際に、全ての超音波センサ22を駆動制御しているが、本発明はこれに限られない。例えば、複数の超音波センサ22を中央で2分割して一端側の超音波センサ22のみを駆動制御してもよいし、複数の超音波センサ22をその他の分割方法で分割して一部の超音波センサ22のみを駆動制御してもよい。また、複数の超音波センサ22が分割された複数の領域に位置する複数の超音波センサ22を領域毎に掃引するようにしてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態においては、駆動制御部32は、単個制御を行った後にアレイ制御を行っているが本発明はこれに限られない。例えば、駆動制御部32は、アレイ制御を行った後に単個制御を行ってもよいし、単個制御とアレイ制御とを交互に行うようにしてもよいし、適宜変更することができる。
【0076】
また、上述した実施形態においては、障害物検出部34は、移動体100から2m以内に障害物OBが侵入した際に、当該障害物OBを検出する構成としたが、本発明はこれに限られない。移動体100の種類及び大きさ等の仕様や、移動体100に設けられた超音波センサアレイ20の仕様等に応じて検出範囲は変更される。この場合、上述した式(2)に基づいて、送信波40を送信してから反射波50を受信するまでの時間TRを求めればよい。
【0077】
また、上述した実施形態においては、駆動制御部32は、移動体100の動作中に単個制御及びアレイ制御を行っているが、本発明はこれに限られない駆動制御部32は、移動体100が静止している際にも、単個制御及びアレイ制御を行ってもよい。
【0078】
また、上述した実施形態においては、駆動制御部32による衝突回避処理は、図6図8に示されるように行っているが、本発明はこれに限られない。例えば、進行方向の変更方法や、具体的な値等は適宜変更可能である。また、進行方向を変更させずに停止させるだけでもよい。
【0079】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10・・・超音波センサシステム、20・・・超音波センサアレイ、
22・・・超音波センサ、30・・・駆動制御装置(超音波センサアレイ駆動制御装置)、32・・・駆動制御部、34・・・障害物検出部、40・・・送信波(音波)、
50・・・反射波(音波)、OB・・・障害物
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