(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172549
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】圃場作業機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A01C11/02 332
A01C11/02 313B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090337
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 喬士
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田尾 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亘樹
(72)【発明者】
【氏名】天野 遼介
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA03
2B062BA13
2B062BA26
2B062BA54
2B062CB03
(57)【要約】
【課題】必要に応じて、簡便に作業装置の駆動を停止させることを目的とする。
【解決手段】機体1と、圃場に対して作業を行う作業装置7と、走行装置と、作業者が着座する運転座席と、運転座席に作業者が着座しているか否かを検出する着座センサ21と、運転座席に作業者が着座していないことを着座センサ21が検出すると作業装置7の駆動を停止させる停止処理を行う制御部23とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
圃場に対して作業を行う作業装置と、
走行装置と、
作業者が着座する運転座席と、
前記運転座席に前記作業者が着座しているか否かを検出する着座センサと、
前記運転座席に前記作業者が着座していないことを前記着座センサが検出すると前記作業装置の駆動を停止させる停止処理を行う制御部とを備える圃場作業機。
【請求項2】
前記制御部は、前記走行装置に対する駆動を維持しながら前記停止処理を実行する請求項1に記載の圃場作業機。
【請求項3】
所定の報知を行う報知部をさらに備え、
前記制御部は前記停止処理の実行中に、前記作業者が着座していることを前記着座センサが検出すると、前記報知部に前記作業装置の駆動が再開すること、または前記作業装置の駆動が再開できる状態であることを知らせる前記報知を行わせる請求項1に記載の圃場作業機。
【請求項4】
前記制御部は前記停止処理の実行中に、前記作業者が着座していることを前記着座センサが検出すると、前記作業装置の駆動を再開させる請求項1に記載の圃場作業機。
【請求項5】
機体と、
圃場に対して作業を行う作業装置と、
前記作業装置の駆動を停止させる操作を受け付ける停止操作具と、
前記停止操作具が操作されると、所定時間だけ前記作業装置の駆動を停止させる停止処理を行う制御部とを備える圃場作業機。
【請求項6】
所定の報知を行う報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記作業装置の駆動を停止させてから前記所定時間より短い経過時間が経過すると、前記報知部に前記作業装置の駆動が再開することを知らせる前記報知を行わせる請求項5に記載の圃場作業機。
【請求項7】
機体と、
圃場に対して作業を行う作業装置と、
前記機体に設けられ、前記機体が前記圃場の畦を越える際に作業者が補助するための畦越え操作具と、
前記畦越え操作具に設けられ、前記作業装置の駆動を停止させる操作を受け付ける停止操作具と、
前記停止操作具が操作されると、前記作業装置の駆動を停止させる停止処理を行う制御部とを備える圃場作業機。
【請求項8】
前記作業装置を駆動する動力を発生する駆動源と、
前記駆動源から前記作業装置に前記動力を伝達する入状態または前記駆動源から前記作業装置への前記動力の伝達を遮断する切状態に切り替えられるクラッチとをさらに備え、
前記停止処理は、前記クラッチの前記切状態への切り替えである請求項1から7のいずれか一項に記載の圃場作業機。
【請求項9】
前記作業装置を駆動する動力を発生する駆動源と、
前記駆動源で発生された前記動力を出力するPTO軸とをさらに備え、
前記作業装置は前記PTO軸を介して前記動力が伝達され、
前記停止処理は、前記PTO軸の停止である請求項1から7のいずれか一項に記載の圃場作業機。
【請求項10】
機体と、
圃場に対して作業を行う作業装置と、
前記作業装置を駆動する動力を発生する駆動源と、
前記駆動源で発生された前記動力を前記作業装置に出力するPTO軸と、
前記機体と前記作業装置とに亘って切り離し可能に接続されるハーネスとを備え、
前記ハーネスは前記機体側の制御指令を前記作業装置に伝達するよう構成され、
前記ハーネスが切り離されると、前記PTO軸を停止させることにより前記作業装置の駆動を停止させる停止処理が実行される圃場作業機。
【請求項11】
前記作業装置は植付爪を有する苗植付装置であり、
前記停止処理は、少なくとも前記植付爪に動力が伝達されていない状態である請求項1から7および10のいずれか一項に記載の圃場作業機。
【請求項12】
前記作業装置は複数の植付爪を有する苗植付装置であり、
前記植付爪に着脱可能な保護カバーを備える請求項1から7のいずれか一項に記載の圃場作業機。
【請求項13】
前記保護カバーは、前記植付爪の駆動を確保した状態で、1または複数の前記植付爪の外周部を覆う請求項12に記載の圃場作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に対して作業を行う作業装置を備える圃場作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、田植機(圃場作業機)は、圃場に対して苗植付作業を行う植付部(作業装置)を備える。植付部は複数の植付爪を有する。植付部はクラッチ操作レバーに対する操作によりPTO(Power Take Off)軸を介して動力の伝達が操作される。例えば、植付部に伝達される動力はクラッチ操作レバーにより接続・切断可能である。また、クラッチ操作レバーとは別に運転部に駆動操作部が設けられる場合がある。駆動操作部は植付部に伝達される動力を接続・切断可能である。クラッチ操作レバーとは別に運転部に駆動操作部が設けられることにより、植付部の駆動操作を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、苗植付作業(作業)の中断時や、格納・運搬のための植付部(苗植付装置)の切り離しのとき、植付爪に泥等が詰まったときのメンテナンスの際等に、作業者が植付爪やPTO軸、植付爪を駆動する駆動軸等に近付く場合がある。作業者が近付いた状態で予期せず植付爪等が回転することを防止するために、クラッチ操作レバー(ポンパレバー)や駆動操作部により植付爪(苗植付装置)への動力の伝達を停止させることが可能であるが、より簡便かつ確実性高く植付爪(作業装置)の駆動を停止させることが求められている。
【0005】
本発明は、必要に応じて、簡便に作業装置の駆動を停止させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る圃場作業機は、機体と、圃場に対して作業を行う作業装置と、走行装置と、作業者が着座する運転座席と、前記運転座席に前記作業者が着座しているか否かを検出する着座センサと、前記運転座席に前記作業者が着座していないことを前記着座センサが検出すると前記作業装置の駆動を停止させる停止処理を行う制御部とを備える。
【0007】
このような構成により、作業者(運転者)が運転座席から離れると、作業装置の駆動(動作)が停止する。そのため、作業者が運転座席を離れて作業装置に近付いたとしても、予期せずに作業装置が動作することを精度良く抑制することができる。その結果、必要に応じて、簡便に作業装置の駆動を停止させることができる。
【0008】
また、前記制御部は、前記走行装置に対する駆動を維持しながら前記停止処理を実行してもよい。
【0009】
このような構成により、駆動源を停止させたり、走行装置に対する駆動を停止させたりすることなく、作業装置のみの駆動を停止させることができる。そのため、その後の作業走行を迅速に行うことができる状態を維持しながら、作業装置の駆動を停止させることができる。その結果、必要に応じて、効率的かつ簡便に作業装置の駆動を停止させることができる。
【0010】
また、所定の報知を行う報知部をさらに備え、前記制御部は前記停止処理の実行中に、前記作業者が着座していることを前記着座センサが検出すると、前記報知部に前記作業装置の駆動が再開すること、または前記作業装置の駆動が再開できる状態であることを知らせる前記報知を行わせてもよい。
【0011】
このような構成により、作業装置の駆動が再開することを知らせる報知が行われると、作業者は作業が再開されることを認知することができる。また、作業装置の駆動が再開できる状態であることを知らせる報知が行われると、作業者は作業が再開できる状態であることを認知することができ、必要に応じて必要な操作を行って作業を再開することができる。
【0012】
また、前記制御部は前記停止処理の実行中に、前記作業者が着座していることを前記着座センサが検出すると、前記作業装置の駆動を再開させてもよい。
【0013】
このような構成により、停止処理が実行されていたとしても、作業者が着座すると速やかに作業を再開することができる。
【0014】
さらに、本発明の一実施形態に係る圃場作業機は、機体と、圃場に対して作業を行う作業装置と、前記作業装置の駆動を停止させる操作を受け付ける停止操作具と、前記停止操作具が操作されると、所定時間だけ前記作業装置の駆動を停止させる停止処理を行う制御部とを備える。
【0015】
このような構成により、一時的な作業の中断や詰まった泥の除去等を行う場合、停止操作具を操作することにより、所定時間だけ一時的に作業装置の駆動を停止させることができる。その結果、作業への復帰を容易にしながら、簡単な操作により必要な時間だけ作業装置の駆動を停止させることができる。
【0016】
また、所定の報知を行う報知部をさらに備え、前記制御部は、前記作業装置の駆動を停止させてから前記所定時間より短い経過時間が経過すると、前記報知部に前記作業装置の駆動が再開することを知らせる前記報知を行わせてもよい。
【0017】
このような構成により、作業装置の駆動を停止させてから所定時間が経過しようとする際に、報知により作業者に作業装置が駆動し始めることを知らせることができる。そのため、作業者が作業装置の近くにいたとしても、作業装置が駆動することを認識でき、適切な対応を行うことができる。その結果、必要に応じて、簡便に作業装置の駆動を停止させることができる。
【0018】
さらに、本発明の一実施形態に係る圃場作業機は、機体と、圃場に対して作業を行う作業装置と、前記機体に設けられ、前記機体が前記圃場の畦を越える際に作業者が補助するための畦越え操作具と、前記畦越え操作具に設けられ、前記作業装置の駆動を停止させる操作を受け付ける停止操作具と、前記停止操作具が操作されると、前記作業装置の駆動を停止させる停止処理を行う制御部とを備える。
【0019】
畦越え操作具は機体を圃場から外部に出す際に作業者により用いられる。作業装置の切り離しやメンテナンスは、圃場の周囲(外部)で行われることがある。そのため、作業者は、作業装置の切り離しやメンテナンスを行う直前に、停止操作具を操作して作業装置の駆動を停止させることができる。その結果、効率的なタイミングで、簡便に作業装置の駆動を停止させることができる。
【0020】
また、前記作業装置を駆動する動力を発生する駆動源と、前記駆動源から前記作業装置に前記動力を伝達する入状態または前記駆動源から前記作業装置への前記動力の伝達を遮断する切状態に切り替えられるクラッチとをさらに備え、前記停止処理は、前記クラッチの前記切状態への切り替えであってもよい。
【0021】
このような構成により、簡単な構成で、精度良く、作業装置の駆動を停止させることができる。
【0022】
また、前記作業装置を駆動する動力を発生する駆動源と、前記駆動源で発生された前記動力を出力するPTO軸とをさらに備え、前記作業装置は前記PTO軸を介して前記動力が伝達され、前記停止処理は、前記PTO軸の停止であってもよい。
【0023】
このような構成により、簡単な構成で、精度良く、作業装置の駆動を停止させることができる。
【0024】
さらに、本発明の一実施形態に係る圃場作業機は、機体と、圃場に対して作業を行う作業装置と、前記作業装置を駆動する動力を発生する駆動源と、前記駆動源で発生された前記動力を前記作業装置に出力するPTO軸と、前記機体と前記作業装置とに亘って切り離し可能に接続されるハーネスとを備え、前記ハーネスは前記機体側の制御指令を前記作業装置に伝達するよう構成され、前記ハーネスが切り離されると、前記PTO軸を停止させることにより前記作業装置の駆動を停止させる停止処理が実行される。
【0025】
このような構成によると、ハーネスが切り離されることにより作業装置の駆動を容易に停止させることができる。例えば、作業装置を機体から切り離す際に、ハーネスの切り離しを同時に行うことにより、作業装置の切り離しに伴って作業装置の駆動を停止させることができる。また、作業装置の切り離しを行う箇所の近傍にハーネスの切り離し箇所を配置させることにより、作業装置の切り離しとハーネスの切り離しとを効率的に行うことができる。以上のことから、必要に応じて、効率的かつ簡便に作業装置の駆動を停止させることができる。
【0026】
また、前記作業装置は植付爪を有する苗植付装置であり、前記停止処理は、少なくとも前記植付爪に動力が伝達されていない状態であってもよい。
【0027】
このような構成により、苗植付装置の植付爪の駆動を、必要に応じて簡便に停止させることができる。
【0028】
また、前記作業装置は複数の植付爪を有する苗植付装置であり、前記植付爪に着脱可能な保護カバーを備えてもよい。
【0029】
このような構成により、植付爪が予期せずに回転したとしても、保護カバーにより植付爪が作業者に直接接触することを抑制することができる。
【0030】
また、前記保護カバーは、前記植付爪の駆動を確保した状態で、1または複数の前記植付爪の外周部を覆ってもよい。
【0031】
このような構成により、例え植付爪が駆動したとしても、作業者が植付爪に直接触れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】苗植付装置の駆動を停止させる構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、圃場に対して作業を行う圃場作業機の一例として、圃場に苗を受け付ける(苗植付作業)田植機を例に、図面を参照しながら説明する。
【0034】
〔全体構成〕
まず、
図1を用いて、田植機の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、田植機の走行機体(機体1)に関し、
図1に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、紙面表側の方向を「機体左方」、紙面裏側の方向を「機体右方」とする。
【0035】
図1に示すように、田植機は、乗用型で四輪駆動形式の圃場作業機である。田植機の機体1は、走行装置である車輪2、苗植付装置7、運転座席5等を備える。苗植付装置7は、苗を圃場に植え付ける(苗植付作業)作業装置である。さらに、田植機は、作業装置として、施肥装置8や薬剤散布装置9等を備えてもよい。
【0036】
機体1の前部に動力を発生する駆動源であるエンジン3が搭載される。エンジン3で発生された動力は、静油圧式の無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)4で変速され、ミッションケース6介して車輪2および苗植付装置7を駆動する。なお、駆動源はエンジン3のみとする構成に限らず、モータやモータとエンジン3とのハイブリッド等のように上記以外の構成であってもよい。
【0037】
苗植付装置7は、機体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構12を介して機体1に支持される。苗植付装置7はPTO軸11を介してミッションケース6から動力が伝達される。ミッションケース6は植付クラッチ13(クラッチに相当)を備え、植付クラッチ13は、ミッションケース6からPTO軸11に伝達される動力をポンパレバー14の操作に応じて接続・切断可能である。
【0038】
苗植付装置7は、複数条植え、例えば8条植え形式に構成される。苗植付装置7は、2条毎にロータリ式の植付機構16を備える。植付機構16は、条毎に、駆動軸17Aに沿って回転する一対の植付爪17を備える。一対の植付爪17は、交互に苗を圃場に植え付ける。植付機構16(植付爪17)はPTO軸11を介して伝達される動力により駆動する。
【0039】
苗植付装置7は、各条クラッチ18(少数条クラッチ クラッチに相当)を有する植付伝動ケース19を備える。各条クラッチ18はエンジン3(ミッションケース6)から植付機構16(植付爪17)に動力を伝達する入状態またはエンジン3(ミッションケース6)から植付機構16(植付爪17)への動力の伝達を遮断する切状態に切り替える。
【0040】
施肥装置8は肥料を圃場に供給する。薬剤散布装置9は薬剤を圃場に散布(供給)する。運転座席5は機体1の後部領域に設けられ、作業者(運転者)が着座する。
【0041】
〔停止処理〕
図1,
図2に示すように、運転座席5には、作業者(運転者)が運転座席5に着座しているか否かを検出する着座センサ21が設けられる。着座センサ21は、例えば、運転座席5の下側の近傍領域に設けられ、運転座席5に作業者(運転者)が着座すると作業者(運転者)が直接的にまたは間接的に接する接触センサまたは感圧センサである。着座センサ21は、作業者(運転者)が着座するとON状態となり、着座していないとOFF状態となる。これにより、着座センサ21は、ON状態において作業者(運転者)が運転座席5に着座していることを検出することができ、OFF状態において作業者(運転者)が運転座席5に着座していないことを検出することができる。
【0042】
田植機は、制御部23を備える。制御部23は、田植機を制御するECU(Electronic Control Unit)に内蔵されてもよく、ECUと別個に設けられてもよい。制御部23は、ECUまたは自身が備えるCPU等のプロセッサ(コンピュータ)の制御により動作する。
【0043】
制御部23は、着座センサ21の検出結果を受信可能に構成され、植付爪17(苗植付装置7)の動作を制御することができる構成である。制御部23は、着座センサ21がOFF状態を検出すると植付爪17(苗植付装置7)の駆動を停止させる停止処理を行う。具体的には、制御部23は、運転座席5に作業者(運転者)が着座していないこと(OFF状態)を着座センサ21が検出すると、停止処理として、植付爪17(苗植付装置7)の駆動を入切する所定のクラッチを切状態にして植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させる。例えば、制御部23は各条クラッチ18を切状態にして、植付爪17(苗植付装置7)の駆動を停止させる停止処理を実行する。なお、停止処理を実行するためのクラッチは、各条クラッチ18に限らず、植付クラッチ13等の、植付爪17(苗植付装置7)の駆動を入切りできる任意のクラッチとすることができる。また、停止処理は、クラッチを切状態にする構成に限らず、植付爪17(苗植付装置7)の駆動を停止させる任意の構成で行われてもよい。
【0044】
このように、作業者(運転者)が運転座席5から離れ、植付爪17や植付爪17を駆動する駆動軸17A等に近付く可能性がある際に、制御部23は停止処理を実行し、植付爪17や駆動軸17Aの駆動を停止させる。その結果、植付爪17(駆動軸17A)に作業者(運転者)が近付く可能性がある際に、簡便に植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させることができる。
【0045】
なお、制御部23は、停止処理を実行する際に、エンジン3の駆動、車輪2の駆動、および、自動走行が可能な田植機においては自動走行状態の少なくともいずれか維持した状態で停止処理が実行されてもよい。これにより、メンテナンス等が終了すると、すぐに作業走行を再開することができる。
【0046】
また、停止処理の実行中に作業者が運転座席5に着座し、作業者が運転座席5に着座していることを着座センサ21が検出すると、制御部23は植付爪17(苗植付装置7)の駆動を再開させて、作業を再開させてもよい。さらに、この際に、制御部23は植付爪17(苗植付装置7)の駆動(作業)が再開される旨の報知を行ってもよい。例えば、報知は、後述の報知部28により行われる。なお、制御部23は、作業者が運転座席5に着座していることを着座センサ21が検出することに限らず、作業者がステアリングを握っていること(ステアリングに触れていること)、または、変速操作具が操作されたことが検出された際に植付爪17(苗植付装置7)の駆動を再開させてもよい。作業者がステアリングを握っていることはステアリング等に設けられるステアリングセンサ(舵角センサ)によって検出することができ、変速操作具が操作されたこと変速操作具等に設けられる変速センサによって検出することができる。さらに、制御部23は、着座センサ21、ステアリングセンサ、変速センサ、および所定の他のセンサの検出結果のうちの任意の組み合わせを条件として、作業を再開させてもよい。
【0047】
また、作業者が運転座席5に着座していることを着座センサ21が検出した場合、あるいは上記のような所定のセンサの検出結果のうちの任意の組み合わせを条件として、制御部23は、直ちに植付爪17(苗植付装置7)の駆動を再開させることなく、植付爪17(苗植付装置7)の駆動が再開できる状態である旨の報知を行ってもよい。報知により植付爪17(苗植付装置7)の駆動が再開できる状態であることを認知した作業者は、必要に応じて所定の操作を行い、植付爪17(苗植付装置7)の駆動を再開することができる。
【0048】
〔別実施形態〕
(1)着座センサ21と共に、あるいは着座センサ21に代えて、運転座席5の近傍に、停止操作具25が設けられてもよい。停止操作具25は、各条クラッチ18を切状態にして、植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させる操作を受け付ける。制御部23は、停止操作具25が操作されると、停止処理として各条クラッチ18を切状態に切り替え、植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させる。なお、停止処理が実行された後、停止操作具25を再度操作することにより植付爪17(駆動軸17A)を再駆動させる構成としてもよいが、ポンパレバー14等の作業再開操作具を一度駆動停止位置に操作した後に駆動位置に操作することにより、植付爪17(駆動軸17A)を再駆動させる構成としてもよい。
【0049】
作業者(運転者)は、停止操作具25を操作することにより、植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させることができる。その結果、苗植付作業(作業)の中断時や、格納・運搬のための植付部の切り離しのとき、植付爪17に泥等が詰まったときのメンテナンスの際等に、作業者(運転者)は、必要に応じて、簡便に植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させることができる。
【0050】
なお、停止操作具25は、運転座席5の近傍、例えば、運転座席5の前方に設けられる運転パネル等に設けられてもよいが、機体1の任意の場所に配置されてもよい。また、停止操作具25は複数設けられてもよい。田植機は、機体1が圃場の畦を越える際に作業者が補助するための畦越え操作具27(畦越えアーム)を備える。停止操作具25は畦越え操作具27に設けられてもよい。あるいは、停止操作具25は、苗植付装置7や施肥装置8等の作業装置の近傍、あるいは、PTO軸11の近傍に設けられてもよい。さらに、田植機を遠隔操作可能なリモコンが設けられる場合、停止操作具25はリモコンに設けられてもよい。このように、停止操作具25は、植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させるのに便利な位置に配置することができる。
【0051】
また、停止操作具25は、押しボタンやレバー等の、ON/OFF操作が可能な任意の構成の操作具であってもよい。
【0052】
また、制御部23は、停止操作具25のON/OFF操作に応じて各条クラッチ18を入状態または切状態に切り替えて植付爪17(駆動軸17A)の駆動と停止を制御しもよいが、停止操作具25が操作(ON操作)された際に所定時間だけ停止処理を行ってもよい。つまり、植付爪17(駆動軸17A)の駆動中に停止操作具25が操作されると、制御部23は、各条クラッチ18を所定時間だけ切状態に切り替えて植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させてもよい。
【0053】
停止操作具25の操作に応じて所定時間だけ植付爪17(駆動軸17A)の駆動が停止されるため、必要に応じて、簡便に植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させることができる。
【0054】
さらに、制御部23は、所定時間だけ停止処理が実行されて植付爪17(駆動軸17A)の駆動が再開される際に所定の報知を行わせてもよい。例えば、制御部23は、植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させてから所定時間より短い経過時間が経過すると、植付爪17(駆動軸17A)の駆動が再開することを知らせる報知を行わせる。具体的には、田植機は所定の報知を行う報知部28を備え、制御部23は、植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させてから所定の経過時間が経過すると、植付爪17(駆動軸17A)の駆動が再開される直前に、報知部28に植付爪17(駆動軸17A)の駆動が再開することを知らせる報知を行わせる。
【0055】
これにより、メンテナンス等が終了せず作業者(運転者)が植付爪17等の近くにいる際に、予期せずに植付爪17等が駆動を再開することを抑制することができる。そして、作業者(運転者)は、メンテナンス等が終了していないときに報知が行われると、再度停止操作具25を操作して、停止処理を延長させることができる。また、停止操作具25を操作している間のみ植付爪17(駆動軸17A)の駆動が停止されるようにしてもよい。
【0056】
(2)上記各実施形態において、制御部23は、各条クラッチ18を切状態にすることにより植付爪17や駆動軸17Aの駆動を停止させて停止処理を実行する構成に限らず、苗植付装置7(植付爪17)に動力を伝達するPTO軸11等の駆動を停止させて停止処理を実行する構成としてもよい。例えば、制御部23は、停止処理として、植付クラッチ13を切状態に切り替えてPTO軸11の駆動を停止させ、これに伴い植付爪17や駆動軸17Aの駆動を停止させてもよい。
【0057】
このような構成により、植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させる構成の自由度が向上する。また、植付爪17(駆動軸17A)のみならず、PTO軸11を停止させることができるため、PTO軸11の近傍に作業者(運転者)がいる際に、予期せずにPTO軸11が駆動することを抑制することができる。
【0058】
(3)田植機は、機体1と苗植付装置7とに亘って切り離し可能に接続されるハーネス29を備えてもよい。ハーネス29は機体1側から送信される制御指令を苗植付装置7(作業装置)に伝達する。ハーネス29はリンク機構12の内側に設けられ、苗植付装置7の切り離しに伴って切断される構成である。ハーネス29が切断(切り離し)されると停止処理が実行されて植付爪17(駆動軸17A)またはPTO軸11の駆動が停止される。ハーネス29はコネクタ29Aを備え、苗植付装置7の使用時にはコネクタ29Aが手動で接続される。苗植付装置7が切り離されることに伴ってハーネス29がコネクタ29Aで切り離され、コネクタ29Aが切り離されると停止処理が実行される。例えば、コネクタ29AはPTO軸11に連動しており、ハーネス29(コネクタ29A)が切断(切り離し)されるとPTO軸11の駆動が停止されるように構成される。あるいは、制御部23はハーネス29(コネクタ29A)が切断されたことを検知できる構成とされ、ハーネス29(コネクタ29A)が切断されたことを制御部23が検知すると、制御部23は停止処理としてPTO軸11の駆動を停止させる構成であってもよい。また、制御部23は、停止処理としてPTO軸11の駆動を停止させる構成に限らず、植付爪17(駆動軸17A)の駆動を停止させる構成であってもよい。
【0059】
なお、ハーネス29は、着座センサ21および停止操作具25のうちの少なくともいずれかと共に設けられてもよく、あるいは着座センサ21および停止操作具25に代えて設けられてもよい。
【0060】
(4)上記各実施形態の停止処理と共に、あるいは上記各実施形態の停止処理に代えて、植付爪17に着脱可能な保護カバーが設けられてもよい。保護カバーは、工具を用いずに植付爪17に対して着脱可能な構成である。保護カバーは、植付作業中には取り外され、作業者(運転者)が植付爪17に近付く際に装着される。なお、保護カバーは、植付爪17の駆動を確保した状態で、それぞれの植付爪17または植付爪17の外周部分(回転部分 先端部分)を覆う構成でもよいが、複数の植付爪17をまとめて覆う構成でもよく、1または複数の植付機構16をまとめて覆う構成であってもよい。
【0061】
保護カバーを装着することにより、作業者が回転する植付爪17に直接触れることが抑制される。また、保護カバーは、地面から跳ね上がる泥から薬剤散布装置9や各種検知センサ等を保護する泥除けカバーの役割が兼用されてもよい。
【0062】
(5)上記各実施形態において、停止処理はハードウェアである制御部23により実行される構成に限らず、ソフトウェアにより実行されてもよい。ソフトウェアに係るプログラムは、機体1に設けられる任意の記憶装置に記憶され、ECUが備えるCPU等の任意のプロセッサ(コンピュータ)により実行される。
【0063】
(6)上記各実施形態において、停止処理は、作業装置である苗植付装置7の植付爪17(駆動軸17A)やPTO軸11の駆動を停止させる構成に限らず、任意の作業装置を停止させる構成であってもよい。さらに、圃場作業機は田植機に限らず、圃場に対して作業を行う任意の圃場作業機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、田植機をはじめ、作業装置を搭載し、圃場に対して作業を行う種々の圃場作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 機体
2 車輪(走行装置)
3 エンジン(駆動源)
5 運転座席
7 苗植付装置(作業装置)
11 PTO軸
13 植付クラッチ(クラッチ)
17 植付爪
18 各条クラッチ(クラッチ)
21 着座センサ
23 制御部
25 停止操作具
27 畦越え操作具
28 報知部
29 ハーネス