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特開2024-172561焼却灰捕集システム及び焼却灰捕集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172561
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】焼却灰捕集システム及び焼却灰捕集方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20241205BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20241205BHJP
   F23G 5/46 20060101ALI20241205BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F23G5/50 E
F23L15/00 A
F23G5/46 A
F23J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090351
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 均
(72)【発明者】
【氏名】藤森 和博
【テーマコード(参考)】
3K023
3K062
3K065
3K070
【Fターム(参考)】
3K023QA11
3K023QA14
3K023QC08
3K062AA11
3K062AB01
3K062AC01
3K062AC02
3K062CA01
3K062DA01
3K062DB11
3K065JA05
3K065JA15
3K070DA07
3K070DA30
3K070DA52
3K070DA58
(57)【要約】
【課題】流動焼却炉から排出され集塵機に流入する排ガスの温度を適正温度に維持しながら、重金属の含有量を低下させるとともに適量の焼却灰を捕集することができる技術を提供する。
【解決手段】焼却灰捕集システム1は、集塵機4の排ガス流入口の排ガス温度及び集塵機の排ガス流出口の排ガス温度の少なくとも一方の対象排ガス温度を取得する。そして、焼却灰捕集システム1は、第1排ガスの温度を上昇または降下させるように第1熱交換器3に流入する空気の流量を調節する第1調整弁21と、第1排ガスの温度を降下させるように冷媒装置(第1送風機5または冷却水ポンプ6)から第1熱交換器3の排ガス流出口3Eと集塵機4の排ガス流入口4Aとの間の第2ダクト62に供給する冷媒の流量を調節する第2調整弁(第2調整弁22Aまたは第2調整弁22B)とを開閉制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却対象物を流動焼却炉で焼却して排出された排ガスから焼却灰を集塵機で捕集する焼却灰捕集システムであって、
空気を供給する第1送風機と、
前記流動焼却炉と前記集塵機との間に設けられ、前記第1送風機により給気される前記空気と前記排ガスとの熱交換により前記空気の温度を上昇させるとともに前記排ガスの温度を降下させ、前記空気の温度よりも高い温度の予熱空気を前記流動焼却炉に供給するとともに前記排ガスの温度よりも低い温度の第1排ガスを排出する第1熱交換器と、
一端が前記第1送風機に接続され他端が前記第1熱交換器の並流側空気流入口に接続された第1配管と、
一端が前記第1配管に接続され他端が前記第1熱交換器の向流側空気流入口に接続された第1分岐配管と、
前記第1分岐配管に設けられ、前記流動焼却炉に流入する前記予熱空気の温度を上昇または降下させて前記第1排ガスの温度を降下または上昇させるように前記第1分岐配管に流れる前記空気の流量を調節する第1調整弁と、
冷媒を供給する冷媒装置と、
一端が前記冷媒装置に接続され他端が前記第1熱交換器の排ガス流出口と前記集塵機の排ガス流入口との間のダクトに接続された第2配管と、
前記第2配管に設けられ、前記第1排ガスの温度を降下させるように前記第2配管に流れる前記冷媒の流量を調節する第2調整弁と、
前記第1調整弁と前記第2調整弁のそれぞれに接続され、前記集塵機に流入する前記第1排ガスの温度及び前記集塵機から流出する第2排ガスの温度の少なくとも一方の対象排ガス温度に基づいて、前記第1調整弁または前記第2調整弁を開閉制御する制御装置と、
を備える
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項2】
請求項1に記載の焼却灰捕集システムであって、
前記制御装置は、前記開閉制御において、
前記対象排ガス温度が適正温度よりも低い場合、前記対象排ガス温度を前記適正温度に上昇させるまで前記第1分岐配管に流れる前記空気の流量を減らすように前記第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に変更し、
前記対象排ガス温度が前記適正温度よりも高い場合、前記対象排ガス温度を前記適正温度に降下させるまで前記第2配管に流れる前記冷媒の流量を増やすように前記第2調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更するように構成された
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項3】
請求項1に記載の焼却灰捕集システムであって、
前記制御装置は、前記開閉制御において、
前記対象排ガス温度が適正温度よりも低く且つ前記対象排ガス温度と前記適正温度の温度差が所定温度未満の場合、前記対象排ガス温度を前記適正温度に上昇させるまで前記第1分岐配管に流れる前記空気の流量を減らすように前記第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に変更し、
前記対象排ガス温度が前記適正温度よりも高く且つ前記温度差が前記所定温度未満の場合、前記対象排ガス温度を前記適正温度に降下させるまで前記第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更するように構成された
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項4】
請求項1に記載の焼却灰捕集システムであって、
一端が前記ダクトに接続され他端が前記第1熱交換器の予熱空気流出口と前記流動焼却炉の予熱空気流入口との間の配管に接続された第3配管から分岐した第3分岐配管と、
前記第3分岐配管に設けられ、前記第1排ガスの温度を上昇させるように前記第3分岐配管に流れる前記予熱空気の流量を調節する第3調整弁と、
を更に備え、
前記制御装置は、
更に、前記第3調整弁に接続され、
更に、前記対象排ガス温度が適正温度よりも低く且つ前記対象排ガス温度と前記適正温度との温度差が所定温度以上の場合において、
前記予熱空気の温度が前記対象排ガス温度よりも高い場合であって、
前記流動焼却炉の燃焼に必要な空気量が所定風量以上のとき、前記対象排ガス温度を前記適正温度に上昇させるまで前記第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に変更するとともに前記第3調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更し、
前記空気量が前記所定風量未満のとき、前記空気量が前記所定風量以上となるように前記第1送風機のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更するように構成された
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項5】
請求項4に記載の焼却灰捕集システムであって、
前記制御装置は、前記対象排ガス温度が前記適正温度よりも低く且つ前記温度差が前記所定温度以上の場合において、更に、
前記予熱空気の温度が前記対象排ガス温度よりも低い場合、前記予熱空気の温度が前記対象排ガス温度よりも高くなるように、前記第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更するように構成された
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項6】
請求項1に記載の焼却灰捕集システムであって、
前記第1送風機とは別に設けられた第2送風機と、
前記第2送風機により給気される第2空気と前記集塵機から排出される第2排ガスとの熱交換により前記第2空気の温度を上昇させるとともに前記第2排ガスの温度を降下させ、前記第2空気の温度よりも高い温度の高温空気を前記ダクトに供給するとともに前記第1排ガスの温度よりも低い温度の第2排ガスを排出する第2熱交換器と、
一端が前記ダクトに接続され他端が前記第2熱交換器の空気流出口に接続された第4配管に設けられ、前記第1排ガスの温度を降下させるように前記第4配管に流れる前記高温空気の流量を調節する第4調整弁と、
一端が前記ダクトに接続され他端が前記第2送風機に接続された第5配管に設けられ、前記第1排ガスの温度を降下させるように前記第5配管に流れる前記第2送風機により給気される第2空気の流量を調節する第5調整弁と、
一端が前記流動焼却炉と前記第1熱交換器との間のダクトに接続され他端が前記冷媒装置に接続された第6配管に設けられ、前記流動焼却炉から排出された前記排ガスの温度を降下させて前記第1排ガスの温度を降下させるように前記第6配管に流れる前記冷媒装置により供給される前記冷媒の流量を調節する第6調整弁と、
を更に備え、
前記制御装置は、
更に、前記第4調整弁と、前記第5調整弁と、前記第6調整弁とに接続され、
更に、前記対象排ガス温度が適正温度よりも高く且つ前記対象排ガス温度と前記適正温度との温度差が所定温度以上の場合において、
前記第2調整弁と、前記第4調整弁と、前記第5調整弁と、前記第6調整弁とのうち、前記温度差に応じて前記対象排ガス温度を降下させるのに適した対象調整弁を決定し、
前記対象排ガス温度を前記適正温度に降下させるまで前記第1調整弁及び前記対象調整弁の開度値の設定値をともに現在値よりも大きい値に変更するように構成された
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項7】
請求項1に記載の焼却灰捕集システムであって、
前記制御装置は、更に、前記対象排ガス温度が適正温度よりも高く且つ前記対象排ガス温度と前記適正温度との温度差が所定温度以上の場合において、
前記流動焼却炉の燃焼に必要な空気量が所定風量以上のとき、前記対象排ガス温度を前記適正温度に降下させるまで前記第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更するとともに前記第2調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更し、
前記空気量が前記所定風量未満のとき、前記空気量が前記所定風量以上となるように前記第1送風機のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更するように構成された
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項8】
請求項1に記載の焼却灰捕集システムであって、
一端が前記ダクトに接続され他端が前記第1熱交換器の予熱空気流出口と前記流動焼却炉の予熱空気流入口との間の配管に接続された第3配管から分岐した第3分岐配管と、
前記第3分岐配管に設けられ、前記第1排ガスの温度を上昇させるように前記第3分岐配管に流れる前記予熱空気の流量を調節する第3調整弁と、
を更に備え、
前記制御装置は、
更に、前記第3調整弁に接続され、
更に、前記対象排ガス温度が適正温度よりも高く且つ前記対象排ガス温度と前記適正温度との温度差が所定温度以上の場合において、
前記予熱空気の温度が前記対象排ガス温度よりも低い場合であって、
前記流動焼却炉の燃焼に必要な空気量が所定風量以上のとき、前記対象排ガス温度を前記適正温度に降下させるまで前記第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更するとともに前記第3調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更し、
前記空気量が前記所定風量未満のとき、前記空気量が前記所定風量以上となるように前記第1送風機のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更するように構成された
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の焼却灰捕集システムであって、
前記第2配管は温度が異なる冷媒が流れる複数の配管の集合であり、
前記第2調整弁は前記複数の配管のそれぞれに設けられた複数の調整弁の集合であり、
前記冷媒装置は、前記第1送風機及び冷却水ポンプの少なくとも一方を含み、
前記冷媒は、前記第1送風機により給気される前記空気と前記冷却水ポンプにより供給される冷却水の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の焼却灰捕集システムであって、
前記第1熱交換器は、
前記第1熱交換器の前記並流側空気流入口に流入される第1の空気と前記第1熱交換器の排ガス流入口に流入される前記排ガスが同じ方向に流れる並流ラインと、
前記第1熱交換器の前記向流側空気流入口に流入される第2の空気と前記排ガス流入口に流入される前記排ガスが逆方向に流れる向流ラインと、
を有し、
前記予熱空気は、前記並流ラインに流れる前記第1の空気を前記排ガスの熱を回収して熱交換した第1予熱空気と、前記向流ラインに流れる前記第2の空気を前記排ガスの熱を回収して熱交換した第2予熱空気とを混合した空気である
ことを特徴とする焼却灰捕集システム。
【請求項11】
焼却対象物を流動焼却炉で焼却して排出された排ガスから焼却灰を集塵機で捕集する焼却灰捕集方法であって、
前記流動焼却炉と前記集塵機との間に設けられた第1熱交換器により、第1送風機により給気される空気と前記排ガスとの熱交換により前記空気の温度を上昇させるとともに前記排ガスの温度を降下させ、前記空気の温度よりも高い温度の予熱空気を前記流動焼却炉に供給するとともに前記排ガスの温度よりも低い温度の第1排ガスを排出することと、
前記集塵機の排ガス流入口に流入する前記第1排ガスの温度及び前記集塵機の排ガス流出口から排出する第2排ガスの温度の少なくとも一方の対象排ガス温度を取得することと、
前記対象排ガス温度に基づいて、前記流動焼却炉に流入する前記予熱空気の温度を上昇または降下させて前記第1排ガスの温度を降下または上昇させるように前記第1熱交換器の向流側空気流入口に流れる前記空気の流量を調節する第1調整弁と、前記第1排ガスの温度を降下させるように冷媒装置から前記第1熱交換器の排ガス流出口と前記集塵機の排ガス流入口との間のダクトに供給される冷媒の流量を調節する第2調整弁とを開閉制御することと、
を含む
ことを特徴とする焼却灰捕集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼却対象物を流動焼却炉で焼却して排出された排ガスから焼却灰を集塵機で捕集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、資源として再利用されるリンを含有し、有害な成分である重金属の含有量を低下させた焼却灰を生成する汚泥の焼却システムを開示する。この従来技術では、汚泥を熱分解して生成された熱分解ガスと焼却灰とがサイクロン(集塵機)により分離される。そして、分離した焼却灰を加熱炉で加熱することで、焼却灰中の未燃物が燃焼され、リンを含み重金属が除去された処理焼却灰及び重金属を含む排ガスが生成される。尚、分離時における集塵機内の温度は500℃以上850℃以下となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6612629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流動焼却炉で焼却対象物を焼却して排出される排ガスから重金属の一例であるヒ素と二酸化セレンを除去して焼却灰を集塵機で捕集する場合、ヒ素と二酸化セレンのそれぞれの昇華点は、典型的には、613℃付近及び315℃付近とされている。従って、集塵機内の温度がこれらの昇華点よりも高い温度であれば、重金属の含有量を低下させつつ焼却灰を捕集することができる。
【0005】
しかしながら、集塵機に流入する排ガスの温度が当該昇華点よりも所定温度以上高い場合、焼却灰が溶解して系内に滞留することで十分な量の焼却灰を捕集できない。逆に、集塵機に流入する排ガスの温度が当該昇華点よりも所定温度以上低い場合、十分な量の焼却灰を捕集できたとしても、重金属(特に、ヒ素)の含有量を低下させることができない。
【0006】
本開示の一つの目的は、流動焼却炉から排出され集塵機に流入する排ガスの温度を適正温度に維持しながら、重金属の含有量を低下させるとともに適量の焼却灰を捕集することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点は、焼却対象物を流動焼却炉で焼却して排出された排ガスから焼却灰を集塵機で捕集する焼却灰捕集システムに関連する。焼却灰捕集システムは、空気を供給する第1送風機と、流動焼却炉と集塵機との間に設けられ第1送風機により給気される空気と排ガスとの熱交換により空気の温度を上昇させるとともに排ガスの温度を降下させて第1送風機により給気される空気の温度よりも高い温度の予熱空気を流動焼却炉に供給するとともに流動焼却炉から排出された排ガスの温度よりも低い温度の第1排ガスを排出する熱交換器と、一端が送風機に接続され他端が熱交換器の並流側空気流入口に接続された第1配管と、一端が第1配管に接続され他端が熱交換器の向流側空気流入口に接続された第1分岐配管と、第1分岐配管に設けられ、流動焼却炉に流入する予熱空気の温度を上昇または降下させて第1排ガスの温度を降下または上昇させるように第1分岐配管に流れる空気の流量を調節する第1調整弁と、冷媒を供給する冷媒装置と、一端が冷媒装置に接続され他端が熱交換器の排ガス流出口と集塵機の排ガス流入口との間のダクトに接続された第2配管と、第2配管に設けられ第1排ガスの温度を降下させるように第2配管に流れる冷媒の流量を調節する第2調整弁と、第1調整弁と第2調整弁のそれぞれに接続され集塵機に流入する第1排ガスの温度及び集塵機から流出する第2排ガスの温度の少なくとも一方の対象排ガス温度に基づいて、第1調整弁または第2調整弁を開閉制御する制御装置と、を備える。
【0008】
本開示の第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する焼却灰捕集システムに関連する。制御装置は、開閉制御において、対象排ガス温度が適正温度よりも低い場合、対象排ガス温度を適正温度に上昇させるまで第1分岐配管に流れる空気の流量を減らすように第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に変更する。また、制御装置は、開閉制御において、対象排ガス温度が適正温度よりも高い場合、対象排ガス温度を適正温度に降下させるまで第2配管に流れる冷媒の流量を増やすように第2調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0009】
本開示の第3の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する焼却灰捕集システムに関連する。制御装置は、開閉制御において、対象排ガス温度が適正温度よりも低く且つ対象排ガス温度と適正温度の温度差が所定温度未満の場合、対象排ガス温度を適正温度に上昇させるまで第1分岐配管に流れる空気の流量を減らすように第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に変更する。また、制御装置は、開閉制御において、対象排ガス温度が適正温度よりも高く且つ温度差が所定温度未満の場合、対象排ガス温度を適正温度に降下させるまで第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0010】
本開示の第4の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する焼却灰捕集システムに関連する。焼却灰捕集システムは、一端がダクトに接続され他端が第1熱交換器の予熱空気流出口と流動焼却炉の予熱空気流入口との間の配管に接続された第3配管から分岐した第3分岐配管と、第3分岐配管に設けられ、第1排ガスの温度を上昇させるように第3分岐配管に流れる予熱空気の流量を調節する第3調整弁と、を更に備える。制御装置は、更に、第3調整弁に接続される。また、制御装置は、更に、対象排ガス温度が適正温度よりも低く且つ温度差が所定温度以上の場合において、予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも高い場合であって、流動焼却炉の燃焼に必要な空気量が所定風量以上のとき、対象排ガス温度を適正温度に上昇させるまで第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に変更するとともに第3調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。また更に、制御装置は、流動焼却炉の燃焼に必要な空気量が所定風量未満のとき、当該空気量が所定風量以上となるように第1送風機のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0011】
本開示の第5の観点は、第4の観点に加えて、次の特徴を更に有する焼却灰捕集システムに関連する。制御装置は、対象排ガス温度が適正温度よりも低く且つ対象排ガス温度と適正温度との温度差が所定温度以上の場合において、更に、予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも低い場合、予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも高くなるように、第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0012】
本開示の第6の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する焼却灰捕集システムに関連する。焼却灰捕集システムは、第1送風機とは別に設けられた第2送風機と、第2送風機により給気される第2空気と集塵機から排出される第2排ガスとの熱交換により第2空気の温度を上昇させるとともに第2排ガスの温度を降下させ、第2空気の温度よりも高い温度の高温空気をダクトに供給するとともに第1排ガスの温度よりも低い温度の第2排ガスを排出する第2熱交換器と、一端がダクトに接続され他端が第2熱交換器の空気流出口に接続された第4配管に設けられ、第1排ガスの温度を降下させるように第4配管に流れる高温空気の流量を調節する第4調整弁と、一端がダクトに接続され他端が第2送風機に接続された第5配管に設けられ、第1排ガスの温度を降下させるように第5配管に流れる第2送風機により給気される第2空気の流量を調節する第5調整弁と、一端が流動焼却炉と第1熱交換器との間のダクトに接続され他端が冷媒装置に接続された第6配管に設けられ、流動焼却炉から排出された排ガスの温度を降下させて第1排ガスの温度を降下させるように第6配管に流れる冷媒装置により供給される冷媒の流量を調節する第6調整弁と、を更に備える。制御装置は、更に、第4調整弁と、第5調整弁と、第6調整弁とに接続されている。また、制御装置は、更に、対象排ガス温度が適正温度よりも高く且つ対象排ガス温度と適正温度との温度差が所定温度以上の場合において、第2調整弁と、第4調整弁と、第5調整弁と、第6調整弁とのうち、当該温度差に応じて対象排ガス温度を降下させるのに適した対象調整弁を決定する。また更に、制御装置は、対象排ガス温度を適正温度に降下させるまで第1調整弁及び対象調整弁の開度値の設定値をともに現在値よりも大きい値に変更する。
【0013】
本開示の第7の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する焼却灰捕集システムに関連する。制御装置は、更に、対象排ガス温度が適正温度よりも高く且つ対象排ガス温度と適正温度との温度差が所定温度以上の場合において、流動焼却炉の燃焼に必要な空気量が所定風量以上のとき、対象排ガス温度を適正温度に降下させるまで第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更するとともに第2調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。また更に、制御装置は、当該空気量が所定風量未満のとき、当該空気量が所定風量以上となるように第1送風機のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0014】
本開示の第8の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する焼却灰捕集システムに関連する。焼却灰捕集システムは、一端がダクトに接続され他端が第1熱交換器の予熱空気流出口と流動焼却炉の予熱空気流入口との間の配管に接続された第3配管から分岐した第3分岐配管と、第3分岐配管に設けられ、第1排ガスの温度を上昇させるように第3分岐配管に流れる予熱空気の流量を調節する第3調整弁と、を更に備える。制御装置は、更に、第3調整弁に接続されている。また、制御装置は、更に、対象排ガス温度が適正温度よりも高く且つ対象排ガス温度と適正温度との温度差が所定温度以上の場合において、予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも低い場合であって、流動焼却炉の燃焼に必要な空気量が所定風量以上のとき、対象排ガス温度を適正温度に降下させるまで第1調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更するとともに第3調整弁の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。また更に、制御装置は、当該空気量が所定風量未満のとき、空気量が所定風量以上となるように第1送風機のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0015】
本開示の第9の観点は、第1の観点乃至第8の観点のいずれか一つの観点に加えて、次の特徴を更に有する焼却灰捕集システムに関連する。第2配管は温度が異なる冷媒が流れる複数の配管の集合である。また、第2調整弁は複数の配管のそれぞれに設けられた複数の調整弁の集合である。また更に、冷媒装置は、第1送風機及び冷却水ポンプの少なくとも一方を含んでいる。また更に、冷媒は、第1送風機により給気される空気と冷却水ポンプにより供給される冷却水の少なくとも一方を含んでいる。
【0016】
本開示の第10の観点は、第1の観点乃至第8の観点のいずれか一つの観点に加えて、次の特徴を更に有する焼却灰捕集システムに関連する。第1熱交換器は、第1熱交換器の並流側空気流入口に流入される第1の空気と第1熱交換器の排ガス流入口に流入される排ガスが同じ方向に流れる並流ラインと、第1熱交換器の向流側空気流入口に流入される第2の空気と排ガス流入口に流入される排ガスが逆方向に流れる向流ラインと、を有している。予熱空気は、並流ラインに流れる第1の空気を排ガスの熱を回収して熱交換した第1予熱空気と、向流ラインに流れる第2の空気を排ガスの熱を回収して熱交換した第2予熱空気とを混合した空気である。
【0017】
本開示の第11の観点は、焼却対象物を流動焼却炉で焼却して排出された排ガスから焼却灰を集塵機で捕集する焼却灰捕集方法に関連する。焼却灰捕集方法は、流動焼却炉と集塵機との間に設けられた第1熱交換器により、第1送風機により給気される空気と排ガスとの熱交換により空気の温度を上昇させるとともに排ガスの温度を降下させ、空気の温度よりも高い温度の予熱空気を流動焼却炉に供給するとともに排ガスの温度よりも低い温度の第1排ガスを排出することと、集塵機の排ガス流入口に流入する第1排ガスの温度及び集塵機の排ガス流出口から排出する第2排ガスの温度の少なくとも一方の対象排ガス温度を取得することと、対象排ガス温度に基づいて、流動焼却炉に流入する予熱空気の温度を上昇または降下させて第1排ガスの温度を降下または上昇させるように第1熱交換器の向流側空気流入口に流れる空気の流量を調節する第1調整弁と第1排ガスの温度を降下させるように冷媒装置から第1熱交換器の排ガス流出口と集塵機の排ガス流入口との間のダクトに供給される冷媒の流量を調節する第2調整弁とを開閉制御することと、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本開示の技術によれば、流動焼却炉から排出され集塵機に流入する排ガスの温度が適正温度に維持される。これにより、重金属の含有量を低下させるとともに適量の焼却灰を捕集することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係る焼却灰捕集システムの構成例を示す概略図である。
図2】実施の形態に係る焼却灰捕集システムの熱交換器の特性を説明するための図である。
図3】実施の形態に係る焼却灰捕集システムの熱交換器の特性を説明するための図である。
図4】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に制御するための説明図である。
図5】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に上昇させるときに用いられる調整弁を説明するための図である。
図6】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に上昇させるときに用いられる調整弁を説明するための図である。
図7】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に降下させるときに用いられる調整弁を説明するための図である。
図8】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に上昇させる第1の処理例を示すフローチャートである。
図9】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に上昇させる第2の処理例を示すフローチャートである。
図10】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に降下させる第1の処理例を示すフローチャートである。
図11】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に降下させる第2の処理例を示すフローチャートである。
図12】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に降下させる第3の処理例を示すフローチャートである。
図13】実施の形態に係る焼却灰捕集システムにおける対象排ガス温度を適正温度に降下させる第4の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態に係る焼却灰捕集システム及び焼却灰捕集方法について説明する。また、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
1.焼却灰捕集システムの構成例
1-1.概要
図1は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1の構成例を示す概略図である。焼却灰捕集システム1は、流動焼却炉2と、第1熱交換器3と、集塵機4と、第1送風機5と、第2熱交換器7と、第2送風機8と、排ガス処理装置9と、排気ファン10と、煙突11とを含んで構成されている。流動焼却炉2(以降、単に焼却炉2と称す)は、炉に流入した砂等の流動媒体を炉の下部から送り込まれる空気により流動させて流動層(流動床)を生成し、熱せられた流動層内に投入された下水汚泥やゴミ等の焼却対象物を流動媒体とともに撹拌させて焼却する焼却炉である。焼却炉2は、空気を流入させる空気流入口2Aと、焼却対象物の焼却時に生じる排ガスを排出する排ガス流出口2Bとを備えている。
【0022】
第1熱交換器3は、焼却炉2と集塵機4との間に設けられている。第1熱交換器3は、第1配管51を介して、第1送風機5により給気される第1空気を流入する並流側空気流入口3Aと、第1配管51から分岐した第1分岐配管51Aを介して、第1送風機5により給気される第1空気を流入する向流側空気流入口3Bとを備えている。並流側空気流入口3Aは、例えば、図1に示すように、第1熱交換器3の上部に設けられている。向流側空気流入口3Bは、例えば、図1に示すように、第1熱交換器3の下部に設けられている。尚、第1配管51は一端が第1送風機5に接続され他端が第1熱交換器3の並流側空気流入口3Aに接続された配管であり、第1分岐配管51Aは一端が第1配管51に接続され他端が第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに接続された配管である。また、第1送風機5により給気される第1空気は単に空気とも称される。
【0023】
更に、第1熱交換器3は、第1ダクト61を介して、焼却炉2の排ガス流出口2Bから排出された排ガスを流入する排ガス流入口3Cを備えている。第1ダクト61は一端が焼却炉2の排ガス流出口2Bに接続され他端が第1熱交換器3の排ガス流入口3Cに接続された配管である。
【0024】
また更に、第1熱交換器3は、並流側空気流入口3Aと向流側空気流入口3Bに流入する第1空気と排ガス流入口3Cに流入する排ガスとの熱交換により第1空気の温度を上昇させるとともに第1空気の温度よりも高い温度の予熱空気を流出させる空気流出口3Dを備えている。また更に、第1熱交換器3は、並流側空気流入口3Aと向流側空気流入口3Bに流入する第1空気と、排ガス流入口3Cに流入する排ガスとの熱交換により排ガスの温度を降下させるとともに排ガスの温度よりも低い温度の第1排ガスを排出する排ガス流出口3Eを備えている。尚、空気流出口3Dから流出した予熱空気は第3配管53を介して焼却炉2の空気流入口2Aに供給される。第3配管53は、一端が第1熱交換器3の空気流出口3Dに接続され他端が焼却炉2の空気流入口2Aに接続された配管である。また、空気流入口2Aは予熱空気流入口2Aとも称され、空気流出口3Dは予熱空気流出口3Dとも称される。
【0025】
このように、第1熱交換器3は、第1送風機5により給気される第1空気と排ガスとの熱交換により第1空気の温度を上昇させるとともに排ガスの温度を降下させて第1空気の温度よりも高い温度の予熱空気を焼却炉2に供給するとともに排ガスの温度よりも低い温度の第1排ガスを排出する。第1熱交換器3により流出された予熱空気を焼却炉2に供給することにより、焼却炉2の燃焼効率を向上させることができる。
【0026】
集塵機4は、第2ダクト62を介して、第1熱交換器3の排ガス流出口3Eから排出された第1排ガスを流入する排ガス流入口4Aと、第1排ガスに含まれる焼却灰を分離して取り除いた第2排ガスを排出する排ガス流出口4Bとを備えている。つまり、集塵機4は、第1排ガス中に含まれる灰等の固形成分を分離して回収し、灰等の固形成分が取り除かれた第2排ガスを排出する。従って、集塵機4には、第1排ガスに含まれる焼却灰を分離して回収する灰排出機4Cが設けられている。第2ダクト62は、一端が第1熱交換器3の排ガス流出口3Eに接続され他端が集塵機4の排ガス流入口4Aに接続された配管である。尚、第2ダクト62は単にダクトとも称される。
【0027】
第1送風機5は、第1空気を供給する送風機である。第1送風機5は、第1空気の風量を増減できるようにファンの回転数を制御するモータ5Aを有している。モータ5Aによるファンの回転数は、後述する制御装置100により制御される。第1送風機5としては、例えば、流動ブロワが挙げられる。尚、第1送風機5の風量の増減方法は、ファンの回転数を制御するモータ5Aに限らず、第1送風機5の入口もしくは出口に設けられた調整弁を用いて調節してもよい。
【0028】
第2熱交換器7は、集塵機4の排ガス流出口4B側に設けられている。また、第2熱交換器7は、第7配管58を介して、第2送風機8により給気される第2空気を流入する空気流入口7Aを備えている。第7配管58は、一端が第2送風機8に接続され他端が第2熱交換器7の空気流入口7Aに接続された配管である。また、第2熱交換器7は、第3ダクト63を介して、集塵機4の排ガス流出口4Bから排出された第2排ガスを流入する排ガス流入口7Cを備えている。第3ダクト63は、一端が集塵機4の排ガス流出口4Bに接続され他端が第2熱交換器7の排ガス流入口7Cに接続された配管である。
【0029】
更に、第2熱交換器7は、空気流入口7Aに流入する第2空気と排ガス流入口7Cに流入する第2排ガスとの熱交換により第2空気の温度を上昇させるとともに第2空気の温度よりも高い温度の高温空気を流出する空気流出口7Bと、空気流入口7Aに流入する第2空気と排ガス流入口7Cに流入する第2排ガスとの熱交換により第2排ガスの温度を降下させるとともに第2排ガスの温度よりも低い温度の第3排ガスを排出する排ガス流出口7Dと、を備えている。
【0030】
このように、第2熱交換器7は、第2送風機8により給気される第2空気と第2排ガスとの熱交換により第2空気の温度を上昇させるともに第2排ガスの温度を降下させて第2空気の温度よりも高い温度の高温空気を加熱を必要とする機器や配管に供給するとともに第2排ガスの温度よりも低い温度の第3排ガスを排出する。
【0031】
第2送風機8は、第2空気を供給する送風機である。第2送風機8は、第2空気の風量を増減できるようにファンの回転数を制御するモータ8Aを有している。モータ8Aによるファンの回転数は、後述する制御装置100により制御される。第2送風機8としては、例えば、送気ファンが挙げられる。尚、第2送風機8の風量の増減方法は、ファンの回転数を制御するモータ8Aに限らず、第2送風機8の入口もしくは出口に設けられた調整弁を用いて調節してもよい。
【0032】
排ガス処理装置9は、第3排ガスに含まれる硫黄酸化物や煤塵等の大気汚染物質を除去する装置である。排ガス処理装置9により第3排ガスに含まれる大気汚染物質を除去した第4排ガスは、排気ファン10により煙突11を通って外部に排気される。第7調整弁28は、一端が排気ファン10と煙突11との間の配管に接続され他端が第2熱交換器7の空気流出口7Bに接続された配管に設けられている。第8調整弁29は、排ガス処理装置9と排気ファン10との間の配管に設けられている。尚、第4排ガスを外部に排気する排気量は、例えば、第7調整弁28と第8調整弁29とにより調節される。より具体的には、第7調整弁28は、第2熱交換器7の空気流出口7Bから流出する高温空気の総流量のうち、第2ダクト62に供給する高温空気の流量を除いた高温空気の余剰流量の排出を調節する。第8調整弁29は、焼却炉2の圧力の変動量に基づいて、第4排ガスを外部に排気する排気量を調節する。また、外部に排気される第4排ガスの排気量を更に増やしたい場合、第8調整弁29を調節する代わりに、排気ファン10の回転数を増やす設定がなされてもよい。
【0033】
1-2.具体例
ここでは、焼却炉2から排出され集塵機に流入する第1排ガスの温度を適正温度に維持するための構成例の詳細について説明する。尚、適正温度とは、重金属の一例であるヒ素の昇華点である613℃付近を含む温度を意味する。
【0034】
具体的には、焼却灰捕集システム1は、複数の計測器と、複数の調整弁とを備えている。複数の計測器は、温度を計測する複数の温度計と、風量を測定する複数の風量計(流量計とも称す)とを含んでいる。複数の温度計には、第1温度計31と、第2温度計32と、第3温度計33と、第4温度計34とが含まれている。複数の風量計には、第1風量計41と、第2風量計42と、第3風量計43と、第4風量計44と、第5風量計45とが含まれている。
【0035】
第1温度計31は、集塵機4の排ガス流入口4A付近の第2ダクト62に取り付けられ、集塵機4の排ガス流入口4Aに流入する第1排ガスの温度を計測する。第2温度計32は、集塵機4の排ガス流出口4B付近の第3ダクト63に取り付けられ、集塵機4の排ガス流出口4Bから排出された第2排ガスの温度を計測する。第3温度計33は、第3配管53に取り付けられ、第1熱交換器3の予熱空気流出口3Dから流出された予熱空気の温度を計測する。第4温度計34は、第1熱交換器3の排ガス流入口3C付近の第1ダクト61に取り付けられ、第1熱交換器3の排ガス流入口3Cに流入する排ガスの温度を計測する。
【0036】
第1風量計41は、第1配管51に取り付けられ、第1送風機5により給気される第1空気のうち第1配管51及び第1分岐配管51Aに流入する第1空気(第1分割空気とも称す)の風量を計測する。第2風量計42は、第3配管53から分岐した第3分岐配管53Aに取り付けられ、第1熱交換器3により流出される予熱空気のうち第3分岐配管53Aに流入する予熱空気の一部である予熱空気(予熱分割空気とも称す)の風量を計測する。第3分岐配管53Aとは、一端が第3配管53に接続され他端が第2ダクト62に接続された配管を意味する。第3風量計43は、第1送風機5と焼却炉2との間に設けられた空気配管55に取り付けられ、第1送風機5により給気される第1空気のうち空気配管55に流入する第1空気(第2分割空気とも称す)の風量を計測する。第4風量計44は、第2配管52Aに取り付けられ、第1送風機5により給気される第1空気のうち第2配管52Aに流入する第1空気(第3分割空気とも称す)の風量を計測する。第2配管52Aとは、一端が第1送風機5に接続され他端が第2ダクト62に接続された配管を意味する。第5風量計45は、第7配管58に取り付けられ、第2送風機8により給気される第2空気の風量を計測する。
【0037】
上述した内容を踏まえると、第1送風機5により給気される第1空気の風量は、第1分割空気の風量と、第2分割空気の風量と、第3分割空気の風量との総和で表される。また、第1熱交換器3に流入する第1分割空気の風量と第1熱交換器3から流出する予熱空気の風量は等しい。第3配管53を介して焼却炉2に流入する予熱空気の風量は、第1分割空気の風量から予熱分割空気の風量を差し引いた風量となる。
【0038】
ここで、焼却炉2に流入する空気量を考える。焼却炉2に流入する空気量をF、第1分割空気の風量をF1、第2分割空気の風量をF2、第3分割空気の風量をF3、予熱分割空気の風量をF4とした場合、焼却炉2に流入する空気量Fは、F=F1+F2-F3-F4の式で表される。焼却炉2に流入する空気量Fは、焼却炉2に投入される焼却対象物の燃焼に必要な風量(基準風量)以上でなければならない。従って、第1送風機5により給気される第1空気の風量は、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量以上となるように調節される。
【0039】
尚、第2配管52Aは複数の第2配管の一部であり、複数の第2配管(第2配管52A、第2配管52B)は温度が異なる冷媒が流れる複数の配管の集合である。冷媒は、第1送風機5により給気される第1空気と、冷却水ポンプ6により供給される冷却水とを含んでいる。尚、第1送風機5及び冷却水ポンプ6は、冷媒装置の一例である。
【0040】
複数の調整弁は、第1調整弁21と、複数の第2調整弁22(第2調整弁22A、第2調整弁22B)と、第3調整弁23と、第4調整弁24と、空気調整弁25と、第5調整弁26と、第6調整弁27とを含んでいる。
【0041】
第1調整弁21は、第1分岐配管51Aに設けられ、第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに流入する第1分割空気を分岐した第1分割分岐空気の流量を調節する。具体的には、第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに流入する第1分割分岐空気の流量を増やす場合、第1調整弁21の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に設定する調節がなされる。一方、第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに流入する第1分割分岐空気の流量を減らす場合、第1調整弁21の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に設定する調節がなされる。尚、第1調整弁21は、第1排ガスの温度を上昇または降下させるための用途として用いられる。
【0042】
第2調整弁22Aは、第4風量計44と第2ダクト62との間の第2配管52Aに設けられている。第2調整弁22Aは、第2ダクト62に流入する第3分割空気の流量を調節する。具体的には、第2ダクト62に流入する第3分割空気の流量を増やす場合、第2調整弁22Aの開度値の設定値を現在値よりも大きい値に設定する調節がなされる。一方、第2ダクト62に流入する第3分割空気の流量を減らす場合、第2調整弁22Aの開度値の設定値を現在値よりも小さい値に設定する調節がなされる。尚、第2調整弁22Aは、第1排ガスの温度を降下させるための用途として用いられる。
【0043】
第2調整弁22Bは、冷却水ポンプ6と第2ダクト62との間の第2配管52Bに設けられている。第2調整弁22Bは、第2ダクト62に流入する冷却水の噴霧量を調節する。具体的には、第2ダクト62に流入する冷却水の流量を増やす場合、第2調整弁22Bの開度値の設定値を現在値よりも大きい値に設定する調節がなされる。一方、第2ダクト62に流入する冷却水の流量を減らす場合、第2調整弁22Bの開度値の設定値を現在値よりも小さい値に設定する調節がなされる。尚、第2調整弁22Bは、第1排ガスの温度を降下させるための用途として用いられる。
【0044】
第3調整弁23は、第2風量計42と第2ダクト62との間の第3分岐配管53Aに設けられ、第2ダクト62に流入する予熱分割空気の流量を調節する。具体的には、第2ダクト62に流入する予熱分割空気の流量を増やす場合、第3調整弁23の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に設定する調節がなされる。一方、第2ダクト62に流入する予熱分割空気の流量を減らす場合、第3調整弁23の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に設定する調節がなされる。尚、第3調整弁23は、第1排ガスの温度を上昇または降下させるための用途として用いられる。
【0045】
第4調整弁24は、第2熱交換器7の空気流出口7Bと第2ダクト62との間の第4配管54に設けられている。第4調整弁24は、第2ダクト62に流入する高温空気の流量を調節する。高温空気は、上述したように、第1排ガスの温度よりも低い温度の空気である。具体的には、第2ダクト62に流入する高温空気の流量を増やす場合、第4調整弁24の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に設定する調節がなされる。一方、第2ダクト62に流入する高温空気の流量を減らす場合、第4調整弁24の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に設定する調節がなされる。尚、第4調整弁24は、第1排ガスの温度を降下させるための用途として用いられる。
【0046】
空気調整弁25は、第3風量計43と第1送風機5との間の空気配管55に設けられている。空気配管55は、一端が焼却炉2に接続され他端が第1送風機5に接続された配管である。空気調整弁25は、焼却炉2の予熱空気流入口2Aに流入する第1空気の一部である第2分割空気の流量を調節する。具体的には、焼却炉2の予熱空気流入口2Aに流入する第2分割空気の流量を増やす場合、空気調整弁25の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に設定する調節がなされる。一方、焼却炉2の予熱空気流入口2Aに流入する第2分割空気の流量を減らす場合、空気調整弁25の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に設定する調節がなされる。
【0047】
尚、空気調整弁25は、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量以上となるように維持するための用途として用いられる。例えば、第2調整弁22Aあるいは第3調整弁23の開度値の設定値を現在値よりも大きい値にした場合を考える。この場合、焼却炉2に流入する空気量Fの不足分を補うために空気調整弁25の調節がなされる。具体的には、第2ダクト62に流れる第1排ガスの温度を上昇させるために第3調整弁23の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に設定した場合、第2ダクト62に流入する第1排ガスの温度より高い温度の予熱空気の一部である予熱分割空気の流量が増える。この場合、焼却炉2に流入する空気量Fが減少して焼却対象物の燃焼に必要な基準風量を満たさないケースが発生しうる。従って、空気調整弁25は、この場合において、第1送風機5により給気される第1空気のうち空気配管55に流入する第2分割空気の空気量を増やすように調節する。これにより、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量以上となるように維持される。
【0048】
第5調整弁26は、第2ダクト62と第2送風機8との間の第5配管56に設けられている。第5調整弁26は、第2ダクト62に流入する第2送風機8により給気される第2空気の流量を調節する。具体的には、第2ダクト62に流入する第2空気の流量を増やす場合、第5調整弁26の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に設定する調節がなされる。一方、第2ダクト62に流入する第2空気の流量を減らす場合、第5調整弁26の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に設定する調節がなされる。尚、第5調整弁26は、第1排ガスの温度を降下させるための用途として用いられる。
【0049】
第6調整弁27は、一端が第4温度計34と焼却炉2との間の第1ダクト61に接続され他端が冷却水ポンプ6に接続された第6配管57に設けられている。第6調整弁27は、第1ダクト61に流入する冷却水の噴霧量を調節する。具体的には、第1ダクト61に流入する冷却水の噴霧量を増やす場合、第6調整弁27の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に設定する調節がなされる。一方、第1ダクト61に流入する冷却水の噴霧量を減らす場合、第6調整弁27の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に設定する調節がなされる。
【0050】
このように、第2ダクト62に流れる第1排ガスの温度を上昇あるいは降下させる場合、第1調整弁21、第2調整弁22A、第2調整弁22B、第3調整弁23、第4調整弁24、空気調整弁25、第5調整弁26、及び第6調整弁27が用いられる。具体的には、第2ダクト62に流れる第1排ガスの温度を上昇させるために用いられる調整弁には、第1調整弁21と、第3調整弁23と、空気調整弁25とが含まれる。一方、第2ダクト62に流れる第1排ガスの温度を降下させるために用いられる調整弁には、第1調整弁21と、第2調整弁22Aと、第2調整弁22Bと、第3調整弁23、第4調整弁24と、空気調整弁25と、第5調整弁26と、第6調整弁27とが含まれる。第2ダクト62に流れる第1排ガスの温度を上昇あるいは降下させる場合における調整弁の開度値の設定値を変更する処理例の詳細については後述する。
【0051】
更に、焼却灰捕集システム1は、制御装置100を含んで構成されている。制御装置100は、複数の温度計(第1温度計31-第4温度計34)、複数の風量計(第1風量計41-第5風量計45)、複数の調整弁(第1調整弁21-第8調整弁29)、第1送風機5のモータ5A、及び第2送風機8のモータ8Aのそれぞれに接続されている。制御装置100は、電気的に通信可能な配線等を用いて、前述した複数の機器のそれぞれと接続される。尚、制御装置100としては、コンピュータ等の計算機が例示される。
【0052】
制御装置100は、複数の温度計から取得した複数の温度情報と、複数の風量計から取得した複数の風量情報とに基づいて、焼却炉2から排出され集塵機4に流入する排ガスの温度を適正温度に維持するように調整弁を開閉制御する。以下、制御装置100における調整弁の開閉制御例についての詳細を説明する。
【0053】
2.調整弁の開閉制御例
制御装置100による調整弁の開閉制御は、第1熱交換器3の特性に基づいて行われる。以下、第1熱交換器3の特性についての説明を行い、その後、調整弁の開閉制御の詳細について述べる。
【0054】
2-1.第1熱交換器の特性例
図2は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1における第1熱交換器3の特性を説明するための図である。具体的には、図2は、第1熱交換器3の構造の一例を示す断面図である。第1熱交換器3は、円筒の筐体30aから構成されており、筐体30aの内部に設けられた仕切り板30cにより上部の並流式の熱交換室30d(単に熱交換室30dとも称す)と下部の向流式の熱交換室30e(単に熱交換室30eとも称す)とを備えている。30fは高温側管板、30gは低温側管板、30hは伝熱管、30iはバッフルプレート、30jは排ガス排出室、30kは上部の並流式の熱交換室30dに空気を送る上部空気導入ヘッダー、30mは下部の向流式の熱交換室30eに空気を送る下部空気導入ヘッダー、30nは並流側予熱空気と向流側予熱空気を混合する排出ヘッダーである。
【0055】
第1熱交換器3の排ガス流入口3Cに流入する排ガスと、上部の並流式の熱交換室30dとは高温側管板30fにより隔てられるとともに、排ガス排出室30j及び上部の並流式の熱交換室30dと排ガス排出室30j及び下部の向流式の熱交換室30eはともに低温側管板30gにより隔てられる。熱交換室(熱交換室30d及び熱交換室30e)内には多数本の伝熱管30hが配管され、その上下端は、高温側管板30fと低温側管板30gにそれぞれ接続されている。伝熱管30hを通じて熱交換室(熱交換室30d及び熱交換室30e)内に流入する排ガスは、焼却炉2から第1ダクト61を介して送り込まれる。
【0056】
また、熱交換室の中間部には、仕切り板30cが取り付けられており、熱交換室を上部の並流式の熱交換室30dと下部の向流式の熱交換室30eとに二分する。熱交換室30dと熱交換室30eのそれぞれの内部には、複数のバッフルプレート30iが設置されている。
【0057】
上部の並流式の熱交換室30dは、並流側空気流入口3Aに流入する第1分割空気と排ガス流入口3Cに流入する排ガスが同じ方向に流れる並流ラインを有する。第1分割空気と排ガスの流れが同じ方向となることで、熱交換量を減らせるので第1熱交換器3の予熱空気流出口3Dから流出する予熱空気が暖まり難くなる。一方、下部の向流式の熱交換室30eは、第1分割分岐空気と排ガスが逆方向に流れる向流ラインを有する。第1分割分岐空気と排ガスの流れが逆方向となることで、熱交換量を増やせるので第1熱交換器3の予熱空気流出口3Dから流出する予熱空気が暖まりやすくなる。尚、並流側空気流入口3Aに流入する第1分割空気は第1の空気とも称される。また、向流側空気流入口3Bに流入する第1分割分岐空気は第2の空気とも称される。
【0058】
尚、第1熱交換器3の予熱空気流出口3Dから流出する予熱空気は、並流ラインに流れる第1分割空気を排ガスの熱を回収して熱交換した第1予熱空気と、向流ラインに流れる第1分割分岐空気を排ガスの熱を回収して熱交換した第2予熱空気とを混合した空気である。従って、第2予熱空気の割合を増やすことで第1熱交換器3に流入する第1分割空気(第1分割空気の一部である第1分割分岐空気を含む)と第1排ガスの熱交換量を増やすことができる。一方、第2予熱空気の割合を減らすことで第1熱交換器3に流入する第1分割空気(第1分割空気の一部である第1分割分岐空気を含む)と第1排ガスの熱交換量を減らすことができる。
【0059】
上述した第1熱交換器3の特性を踏まえ、以下第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度と、第1熱交換器3から排出する第1排ガスの温度との関係性についての詳細を説明する。
【0060】
図3は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1の第1熱交換器3における予熱空気の温度と第1排ガスの温度の関係性を説明するための図である。具体的には、図3(A)は、第1熱交換器3の空気流入口(並流側空気流入口3A及び向流側空気流入口3B)に流入する第1分割空気の総流量を第1送風機5により増減させたときの予熱空気の温度と第1排ガスの温度の関係を示している。第1熱交換器3に流入する第1分割空気の総流量を減らす操作をした場合(図3(A)に示すケース1の場合)、第1熱交換器3の熱交換量は減ることになる。従って、第1熱交換器3の熱交換量が減少することにより第1排ガスの温度は上昇し、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度は第1分割空気の総流量が減少することにより流量あたりの熱交換量が多くなって上昇する。
【0061】
一方、第1熱交換器3に流入する第1分割空気の総流量を増やす操作をした場合(図3(A)に示すケース2の場合)、第1熱交換器3の熱交換量は増えることになる。従って、第1熱交換器3の熱交換量が増加することにより第1排ガスの温度は降下し、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度は第1分割空気の総流量が増加することにより流量あたりの熱交換量が少なくなって降下する。尚、第1熱交換器3に流入する第1分割空気の総流量が一定の場合(図3(A)に示すケース3の場合)、第1熱交換器3の並流側空気流入口3Aに流入する第1分割空気の流量と、第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに流入する第1分割空気の一部である第1分割分岐空気の流量の割合を変化させることで、第1熱交換器3における予熱空気の温度と第1排ガスの温度の関係も変化する。以下、図3(A)に示すケース3の場合における予熱空気の温度と第1排ガスの温度の関係についての詳細を説明する。
【0062】
図3(B)は、第1熱交換器3に流入する第1分割空気の総流量が一定の場合において、第1熱交換器3の並流側空気流入口3Aに流入する第1分割空気の流量と、第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに流入する第1分割分岐空気の流量を第1調整弁21により増減させたときの予熱空気の温度と第1排ガスの温度の関係を示している。具体的には、第1熱交換器3の並流側空気流入口3Aに流入する第1分割空気の流量を増やす操作をして第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに流入する第1分割分岐空気の流量を減らす操作をした場合(図3(B)に示すケース3-1の場合)、上述したとおり、第1熱交換器3の熱交換量は減ることになる。従って、第1熱交換器3から流出する予熱空気は降下するとともに第1熱交換器3から排出する第1排ガスの温度は上昇する。
【0063】
一方、第1熱交換器3の並流側空気流入口3Aに流入する第1分割空気の流量を減らす操作をして第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに流入する第1分割分岐空気の流量を増やす操作をした場合(図3(B)に示すケース3-2の場合)、上述したとおり、第1熱交換器3の熱交換量は増えることになる。従って、第1熱交換器3から流出する予熱空気は上昇するとともに第1熱交換器3から排出する第1排ガスの温度は降下する。
【0064】
このように、第1熱交換器3の特性を利用して、第1熱交換器3に流入する第1分割空気(第1分割空気の一部である第1分割分岐空気を含む)の流量を増減させることで、第1排ガスの温度を上昇あるいは降下させることが可能となる。
【0065】
2-2.調整弁の開閉制御の具体例
2-2-1.集塵機の温度制御例
ここで、制御装置100により集塵機4に流入する排ガスの温度を適正温度に制御する方法について考える。集塵機4に流入する排ガスの温度は、第1温度計31で取得した集塵機4に流入する第1排ガスの温度と、第2温度計32で取得した集塵機4から排出する第2排ガスの温度とを含んでいる。つまり、制御装置100は、第1排ガスの温度と第2排ガスの温度の少なくとも一方の対象排ガス温度が適正温度かどうかを判定する。これにより、制御装置100は、第2ダクト62に流れる第1排ガスの温度を調節する必要があるかどうかを把握することができる。
【0066】
具体的には、図4は、対象排ガス温度が推移する様子を示した波形を示している。対象排ガス温度が適正温度よりも高い場合、対象排ガス温度を適正温度に降下させる制御が必要とされる。一方、対象排ガス温度が適正温度よりも低い場合、対象排ガス温度を適正温度に上昇させる制御が必要とされる。対象排ガス温度を適正温度に降下あるいは上昇させる制御を行う場合、当該制御の開始タイミングとしては、対象排ガス温度が適正温度を満たさなくなったときであってもよいし(第1開始条件)、対象排ガス温度が適正温度を満たさなくなったとき且つ対象排ガス温度が所定の基準温度に達したときであってもよいし(第2開始条件)、対象排ガス温度が適正温度を満たさなくなってから所定の時間を経過したときであってもよいし(第3開始条件)、対象排ガス温度が上昇するときの単位時間あたりの勾配、あるいは対象排ガス温度が降下するときの単位時間あたりの勾配が所定値以上となった場合であってもよい(第4開始条件)。
【0067】
図4(A)には、当該制御の開始タイミングの開始条件が第2開始条件の場合の例が示されている。この場合、対象排ガス温度が適正温度を満たさなくなったとき且つ対象排ガス温度が所定の基準温度に達したときに、対象排ガス温度を適正温度に降下あるいは上昇させる制御が開始される。具体的には、制御装置100は、対象排ガス温度が適正温度よりも高いかどうかを判定する。対象排ガス温度が適正温度よりも高い場合であって、対象排ガス温度が当該適正温度よりも高い温度の第1基準温度以上のとき、制御装置100は、制御モードを対象排ガス温度を適正温度に降下させるモード(温度降下モード)に設定する。一方、対象排ガスの温度が適正温度よりも低い場合であって、対象排ガス温度が当該適正温度よりも低い温度の第2基準温度未満のとき、制御装置100は、制御モードを対象排ガス温度を適正温度に上昇させるモード(温度上昇モード)に設定する。
【0068】
また、図4(B)には、当該制御の開始タイミングの開始条件が第4開始条件の場合の例が示されている。この場合、対象排ガス温度が適正温度を満たさなくなったとき且つ対象排ガス温度が上昇するときの単位時間あたりの勾配、あるいは対象排ガス温度が適正温度を満たさなくなったとき且つ対象排ガス温度が降下するときの単位時間あたりの勾配が所定値以上となったときに、対象排ガス温度を適正温度に降下あるいは上昇させる制御が開始される。その後、上述した第1開始条件と同じ処理が行われる。尚、後述する処理例では、当該制御の開始タイミングの開始条件を上述した第1開始条件としている。
【0069】
そして、制御装置100は、温度降下モードあるいは温度上昇モードに対応する調整弁を選択する。以下、各モードにおいて用いられる調整弁についての詳細を説明する。
【0070】
2-2-2.対象排ガス温度を上昇させる時に用いられる調整弁の例
図5は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1の制御装置100の制御モードが温度上昇モードの場合において用いられる調整弁を説明するための図である。第1送風機5のファンの回転数が一定であることを条件とした場合、対象排ガス温度を上昇させる時に用いられる調整弁は、第1調整弁21と第3調整弁23の2つを含んでいる。図5のケース1に示すように、制御装置100により第1調整弁21を閉方向に操作した場合、第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに流入する第1分割分岐空気の流量が減ることに伴い熱交換量も減ることとなる。従って、上述した図3(B)に示すケース3-1と同様のケースとなる。これにより、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度を降下させるとともに第1熱交換器3から排出する第1排ガスの温度、すなわち、対象排ガス温度を上昇させることできる。
【0071】
また、図5のケース2に示すように、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも高い状態において、制御装置100により第3調整弁23を開方向に操作した場合を考える。この場合、第1熱交換器3に流入する第1分割空気(第1分割空気の一部である第1分割分岐空気を含む)の総流量は一定である。従って、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度を一定温度に維持させつつ、対象排ガス温度よりも高い温度の予熱空気の一部である予熱分割空気を第3分岐配管53Aを介して第2ダクト62に流入させることにより、対象排ガス温度を上昇させることができる。
【0072】
尚、当該予熱分割空気を第3分岐配管53Aを介して第2ダクト62に流入させた場合、図6(A)に示すように、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量未満となるおそれがある。このため、図6(B)に示すように、第3調整弁23を開方向に操作したときの焼却炉2に流入する空気量Fの不足風量を考慮して、制御装置100は、第1送風機5により給気される第1空気の流量を予め増やすように第1送風機5のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に設定する。つまり、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量よりも大きい所定風量以上となるように、第1送風機5のファンの回転数が設定される。所定風量は、例えば、焼却炉2に投入される焼却対象物の燃焼に必要な基準風量に第3調整弁23の開度値を現在値よりも大きい値に変更した場合に第2ダクト62に流れ込む予熱分割空気の推定風量(例えば、基準風量に対する不足風量)を足し込んだ風量で表される。これにより、第3調整弁23を開方向に操作した場合であっても、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量以上に維持される。
【0073】
2-2-3.対象排ガス温度を降下させる時に用いられる調整弁の例
図7は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1の制御装置100の制御モードが温度降下モードの場合において用いられる調整弁を説明するための図である。対象排ガス温度を降下させる時に用いられる調整弁は、図7(A)に示すように、第1調整弁21と第2調整弁22Aと第2調整弁22Bと第3調整弁23と第4調整弁24と第5調整弁26と第6調整弁27の7つを含んでいる。図7(A)のケース1に示すように、制御装置100により第1調整弁21を開方向に操作した場合、第1熱交換器3の向流側空気流入口3Bに流入する第1分割分岐空気の流量が増えることに伴い熱交換量も増えることとなる。従って、上述した図3(B)に示すケース3-2と同様のケースとなる。これにより、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度を上昇させるとともに対象排ガス温度を降下させることできる。
【0074】
また、図7(A)のケース2に示すように、制御装置100により第2調整弁22Aを開方向に操作するとともに、第1送風機5のファンの回転数を増やす場合を考える。この場合、第1熱交換器3の熱交換量は一定となり、予熱空気の温度を一定温度に維持させつつ対象排ガス温度を降下させることができる。更に、第1送風機5のファンの回転数を増やして第2調整弁22Aを開方向に操作することにより、焼却炉2に流入する空気量Fを基準風量以上に維持させつつ、すなわち、第1熱交換器3に流入する第1分割空気(第1分割空気の一部である第1分割分岐空気を含む)の総流量を一定に維持させつつ、第1送風機5により給気される第1空気のうち第2配管52Aに流入する第3分割空気を第2ダクト62に流入させることができる。ゆえに、対象排ガス温度を更に降下させることができる。
【0075】
続いて、図7(A)のケース3に示すように、制御装置100により第2調整弁22Bを開方向に操作する場合を考える。この場合、第1熱交換器3に流入する第1分割空気の流量は一定である。第1調整弁21の開閉方向の操作が行われない限り、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度は一定温度に維持される。従って、制御装置100により第2調整弁22Bを開方向に操作した場合、冷却水ポンプ6により供給される冷却水を第2配管52Bを介して第2ダクト62に噴霧することにより、対象排ガス温度を降下させることができる。
【0076】
続いて、図7(A)のケース4に示すように、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度が第1熱交換器3から排出する第1排ガスの温度よりも低い状態において、制御装置100により第3調整弁23を開方向に操作する場合を考える。この場合、第1熱交換器3に流入する第1分割空気(第1分割空気の一部である第1分割分岐空気を含む)の総流量は一定である。従って、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度を一定温度に維持させつつ、対象排ガス温度よりも低い温度の予熱空気の一部である予熱分割空気を第3分岐配管53Aを介して第2ダクト62に流入させる。これにより、対象排ガスの温度を降下させることができる。
【0077】
尚、当該予熱分割空気を第3分岐配管53Aを介して第2ダクト62に流入させた場合、上述したように、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量未満となるおそれがある。このため、第3調整弁23を開方向に操作したときの焼却炉2に流入する空気量Fの不足風量を考慮して、制御装置100は、第1送風機5により給気される第1空気の流量を予め増やすように第1送風機5のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に設定する。これにより、第3調整弁23を開方向に操作した場合であっても、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量以上に維持される。また、この場合、上述した図3(A)に示すケース2と同様のケースとなり、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度及び対象排ガス温度をともに降下させることできる。
【0078】
続いて、図7(A)のケース5に示すように、制御装置100により第4調整弁24を開方向に操作する場合を考える。この場合、第1熱交換器3に流入する第1分割空気の流量は一定であり、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度は一定温度に維持される。従って、第4調整弁24を開方向に操作することにより、第2送風機8により給気された第2空気に基づいて生成された対象排ガス温度よりも低い温度の高温空気を第4配管54を介して第2ダクト62に流入させる。ゆえに、対象排ガス温度を降下させることができる。
【0079】
続いて、図7(A)のケース6に示すように、制御装置100により第5調整弁26を開方向に操作する場合を考える。この場合、第1熱交換器3に流入する第1分割空気の流量は一定であり、第1熱交換器3から流出する予熱空気の温度は一定温度に維持される。従って、第5調整弁26を開方向に操作することにより、第2送風機8により給気され、対象排ガス温度よりも低い温度の第2空気を第5配管56を介して第2ダクト62に流入させる。ゆえに、対象排ガス温度を降下させることができる。
【0080】
最後に、図7(A)のケース7に示すように、制御装置100により第6調整弁27を開方向に操作する場合を考える。この場合、冷却水ポンプ6により供給される冷却水を第6配管57を介して第1ダクト61に流入させることにより、第1熱交換器3に流入する排ガスの温度が降下される。ゆえに、予熱空気の温度と対象排ガス温度をともに降下させることができる。
【0081】
上述した図7(A)では、対象排ガス温度を降下させるときに用いられる調整弁を単体で開閉操作したときの対象排ガス温度の変化例についての詳細を説明した。ここで、対象排ガス温度を降下させることが可能な複数の調整弁のうち適用する対象の調整弁について考える。対象排ガス温度を降下させる場合、上述した複数の調整弁のうちいずれかの調整弁を用いて、対象排ガス温度を降下させるように当該調整弁の開閉操作を行ってもよい。
【0082】
ここで、対象排ガス温度を単に降下させるだけでなく、焼却炉2の燃焼効率を考慮した場合を考える。この場合、焼却炉2に流入する予熱空気の温度は高い方が望ましい。従って、対象排ガス温度を降下させるとともに予熱空気の温度を上昇させることが可能な第1調整弁21を用いて、制御装置100により弁の開閉方向を操作することが期待される。
【0083】
しかし、制御装置100により第1調整弁21の開閉方向を操作しても、対象排ガス温度と適正温度の温度差が大きい場合、対象排ガス温度を適正温度に降下させることができない事象が発生しうる。実施の形態に係る焼却灰捕集システム1によれば、対象排ガス温度と適正温度の温度差が大きい場合、少なくとも第1調整弁21に加え他の複数の調整弁を組み合わせて対象排ガス温度を降下させるように複数の調整弁の開閉制御がなされる。
【0084】
図7(B)では、対象排ガス温度を降下させるときに用いられる複数の調整弁を組み合わせたときの一例が示されている。具体的には、対象排ガス温度と適正温度の温度差を示す度合いに基づいて、第1調整弁21との組み合わせに適した対象調整弁の選択例が示されている。対象排ガス温度と適正温度との温度差を示す度合いが最も高い場合、冷却能力の高い冷媒を用いることが必要とされる。この場合、冷却能力の最も高い冷却水の噴霧量を調節することが可能な第2調整弁22Bが対象調整弁として決定される。一方、対象排ガス温度と適正温度との温度差を示す度合いが最も低い場合、冷却能力の高い冷媒を用いる必要はない。この場合、冷却能力の最も低い第2熱交換器7から流出する高温空気の流量を調節する第4調整弁24が対象調整弁として決定される。尚、図7(B)に示す例では、予熱空気の温度と対象排ガス温度の比較を考慮していないため第3調整弁23を除くものとしている。
【0085】
このように、対象排ガス温度と適正温度との温度差に応じて、第1調整弁21との組み合わせに適した対象調整弁が決定される。図7(B)に示す例では、対象調整弁は、当該温度差の度合いが小さい順に、第4調整弁24、第5調整弁26、第2調整弁22A、第6調整弁27、第2調整弁22Bが決定される。
【0086】
2-2-4.調整弁の開度値の計算例
ここでは、制御装置100における調整弁の開閉制御を行うのにあたり調整弁の開度値の計算例について説明する。尚、ここでの調整弁とは、対象排ガス温度を適正温度に上昇または降下させるために用いられる調整弁を意味する。
【0087】
制御装置100は、当該調整弁の開度値の最適値を計算する。そして、制御装置100は、当該調整弁の開度値の設定値を現在値から最適値に変更する。当該調整弁の開度値の最適値の計算には、温度情報と風量情報が用いられる。図1に示す例では、対象排ガス温度を適正温度に上昇させるために用いられる第1調整弁21の開度値の最適値は、第1温度計31と第2温度計32の少なくとも一方と、第3温度計33とで取得した複数の温度情報に基づいて制御装置100により計算される。また、図1に示す例では、対象排ガス温度を適正温度に降下させるために用いられる第2調整弁22Aの開度値の最適値は、第1温度計31、及び第2温度計32で取得した複数の温度情報と、第1風量計41、第2風量計42、第3風量計43、及び第4風量計44で取得した複数の風量情報とに基づいて制御装置100により計算される。
【0088】
3.処理例
3-1.対象排ガス温度を適正温度に上昇させる第1の例
図8は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1における対象排ガス温度を適正温度に上昇させる第1の処理例を示すフローチャートである。
【0089】
ステップS100において、制御装置100は、対象排ガス温度が適正温度よりも低いか否かを判定する。対象排ガス温度が適正温度よりも低いと判定された場合(ステップS100;Yes)、処理はステップS110に進む。それ以外と判定された場合(ステップS100;No)、処理は後述するステップS310またはステップS410またはステップS510またはステップS610に進む。
【0090】
ステップS110において、制御装置100は、対象排ガス温度と適正温度の温度差が所定温度未満か否かを判定する。当該温度差が所定温度未満と判定された場合(ステップS110;Yes)、処理はステップS120に進む。それ以外の場合(ステップS110;No)、処理は後述するステップS220に進む。
【0091】
ステップS120において、制御装置100は、対象排ガス温度を適正温度に上昇させるまで第1調整弁21の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に変更する。
【0092】
3-2.対象排ガス温度を適正温度に上昇させる第2の処理例
図9は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1における対象排ガス温度を適正温度に上昇させる第2の処理例を示すフローチャートである。
【0093】
ステップS200において、制御装置100は、対象排ガス温度が適正温度よりも低いか否かを判定する。対象排ガス温度が適正温度よりも低いと判定された場合(ステップS200;Yes)、処理はステップS210に進む。それ以外と判定された場合(ステップS200;No)、処理は後述するステップS310またはステップS410またはステップS510またはステップS610に進む。
【0094】
ステップS210において、制御装置100は、対象排ガス温度と適正温度の温度差が所定温度以上か否かを判定する。当該温度差が所定温度以上と判定された場合(ステップS210;Yes)、処理はステップS220に進む。それ以外の場合(ステップS210;No)、処理は上述したステップS120に進む。
【0095】
ステップS220において、制御装置100は、予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも高いか否かを判定する。予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも高いと判定された場合(ステップS220;Yes)、処理はステップS230に進む。それ以外と判定された場合(ステップS220;No)、処理はステップS260に進む。
【0096】
ステップS230において、制御装置100は、焼却炉2に流入する空気量Fが所定風量以上か否かを判定する。当該空気量Fが所定風量以上と判定された場合(ステップS230;Yes)、処理はステップS240に進む。それ以外の場合(ステップS230;No)、すなわち、当該空気量Fが所定風量未満と判定された場合、処理はステップS250に進む。
【0097】
ステップS240において、制御装置100は、対象排ガス温度を適正温度に上昇させるまで第1調整弁21の開度値の設定値を現在値よりも小さい値に変更するとともに第3調整弁23の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。尚、第3調整弁23の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更したことに伴い、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量未満となる場合、制御装置100は、当該空気量Fが基準風量以上となるように空気調整弁25の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する、第1送風機5のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更するのいずれか、もしくは両方を実施する。
【0098】
ステップS250において、制御装置100は、焼却炉2に流入する空気量Fの風量が所定風量以上となるように第1送風機5のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。尚、所定風量は、例えば、設定変更後の第3調整弁23の開度値であっても、当該空気量Fが基準風量以上となるように計算された風量である。
【0099】
ステップS260において、制御装置100は、予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも高くなるように、第1調整弁21の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。尚、予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも低い場合、予熱空気の一部である予熱分割空気を第2ダクト62に流入させないように第3調整弁23の開度値をゼロに設定してもよい。
【0100】
尚、ステップS240における第1調整弁21の開度値の設定値を変更する処理は、ステップS240での実施に限られない。例えば、第1調整弁21の開度値の設定値を変更する処理は、ステップS200の処理後、あるいは、ステップS210の処理後、あるいは、ステップS220の処理後に実行されてもよい。
【0101】
3-3.対象排ガス温度を適正温度に降下させる第1の処理例
図10は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1における対象排ガス温度を適正温度に降下させる第1の処理例を示すフローチャートである。
【0102】
ステップS300において、制御装置100は、対象排ガス温度が適正温度よりも高いか否かを判定する。対象排ガス温度が適正温度よりも高いと判定された場合(ステップS300;Yes)、処理はステップS310に進む。それ以外と判定された場合(ステップS300;No)、処理は上述したステップS110またはステップS210に進む。
【0103】
ステップS310において、制御装置100は、対象排ガス温度と適正温度の温度差が所定温度未満か否かを判定する。当該温度差が所定温度未満と判定された場合(ステップS310;Yes)、処理はステップS320に進む。それ以外の場合(ステップS310;No)、処理は後述するステップS420またはステップS520またはステップS620に進む。
【0104】
ステップS320において、制御装置100は、対象排ガス温度を適正温度に降下させるまで第1調整弁21の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0105】
3-4.対象排ガス温度を適正温度に降下させる第2の処理例
図11は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1における対象排ガス温度を適正温度に降下させる第2の処理例を示すフローチャートである。
【0106】
ステップS400において、制御装置100は、対象排ガス温度が適正温度よりも高いか否かを判定する。対象排ガス温度が適正温度よりも高いと判定された場合(ステップS400;Yes)、処理はステップS410に進む。それ以外と判定された場合(ステップS400;No)、処理は上述したステップS110またはステップS210に進む。
【0107】
ステップS410において、制御装置100は、対象排ガス温度と適正温度の温度差が所定温度以上か否かを判定する。当該温度差が所定温度以上と判定された場合(ステップS410;Yes)、処理はステップS420に進む。それ以外の場合(ステップS410;No)、処理は上述したステップS320に進む。
【0108】
ステップS420において、制御装置100は、対象排ガス温度を降下させるのに用いられる複数の調整弁(第2調整弁22A、第2調整弁22B、第3調整弁23、第4調整弁24、第5調整弁26、第6調整弁27)のうち、第1調整弁21と、対象排ガス温度と適正温度の温度差の度合いに応じた対象調整弁とを決定する。その後、処理はステップS430に進む。
【0109】
尚、当該温度差の度合いに応じた対象調整弁とは、当該温度差の度合いに応じて対象排ガス温度を降下させるのに適した冷媒装置による冷媒の流量を増やすことが可能な調整弁を意味する。例えば、当該温度差の度合いが高い場合、対象排ガス温度を降下させるのに適した冷媒装置として冷却水ポンプ6が選定され、当該冷却水ポンプ6の流量を増やすことが可能な対象調整弁として第2調整弁22Bが決定される。一方、当該温度差の度合いが低い場合、対象排ガス温度を降下させるのに適した冷媒装置として第1送風機5あるいは第2送風機8が選定される。例えば、対象排ガス温度を降下させるのに適した冷媒装置として第1送風機5を選定した場合、当該第1送風機5により給気される第1空気のうち第2配管52Aに流入する第3分割空気の流量を増やすことが可能な対象調整弁として第2調整弁22Aが決定される。
【0110】
ステップS430において、制御装置100は、対象排ガス温度を適正温度に降下させるまで第1調整弁21及び対象調整弁の開度値の設定値をともに現在値よりも大きい値に変更する。尚、対象排ガス温度と適正温度の温度差が小さい段階では第2調整弁22Aを調節して第2ダクト62に供給する第3分割空気の流量を増やし、当該温度差が大きい段階では第2調整弁22Bを調節して第2ダクト62に供給する冷却水の噴霧量を増やすようにしてもよい。
【0111】
3-5.対象排ガス温度を適正温度に降下させる第3の処理例
図12は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1における対象排ガス温度を適正温度に降下させる第3の処理例を示すフローチャートである。
【0112】
ステップS500において、制御装置100は、対象排ガス温度が適正温度よりも高いか否かを判定する。対象排ガス温度が適正温度よりも高いと判定された場合(ステップS500;Yes)、処理はステップS510に進む。それ以外と判定された場合(ステップS500;No)、処理は上述したステップS110またはステップS210に進む。
【0113】
ステップS510において、制御装置100は、対象排ガス温度と適正温度の温度差が所定温度以上か否かを判定する。当該温度差が所定温度以上と判定された場合(ステップS510;Yes)、処理はステップS520に進む。それ以外の場合(ステップS510;No)、処理は上述したステップS320に進む。
【0114】
ステップS520において、制御装置100は、焼却炉2に流入する空気量Fが所定風量以上か否かを判定する。当該空気量Fが所定風量以上と判定された場合(ステップS520;Yes)、処理はステップS530に進む。それ以外の場合(ステップS520;No)、すなわち、当該空気量Fが所定風量未満と判定された場合、処理はステップS540に進む。
【0115】
ステップS530において、制御装置100は、対象排ガス温度を適正温度に降下させるまで第1調整弁21の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更するとともに、第2調整弁22Aの開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0116】
ステップS540において、制御装置100は、当該空気量Fが所定風量以上となるように第1送風機5のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0117】
3-6.対象排ガス温度を適正温度に降下させる第4の処理例
図13は、実施の形態に係る焼却灰捕集システム1における対象排ガス温度を適正温度に降下させる第4の処理例を示すフローチャートである。
【0118】
ステップS600において、制御装置100は、対象排ガス温度が適正温度よりも高いか否かを判定する。対象排ガス温度が適正温度よりも高いと判定された場合(ステップS600;Yes)、処理はステップS610に進む。それ以外と判定された場合(ステップS600;No)、処理は上述したステップS110またはステップS210に進む。
【0119】
ステップS610において、制御装置100は、対象排ガス温度と適正温度の温度差が所定温度以上か否かを判定する。当該温度差が所定温度以上と判定された場合(ステップS610;Yes)、処理はステップS620に進む。それ以外の場合(ステップS610;No)、処理は上述したステップS320に進む。
【0120】
ステップS620において、制御装置100は、予熱空気の温度が対象排ガスの温度よりも低いか否かを判定する。予熱空気の温度が対象排ガスの温度よりも低いと判定された場合(ステップS620;Yes)、処理はステップS630に進む。それ以外と判定された場合(ステップS620;No)、処理は上述したステップS420に進む。尚、それ以外と判定された場合(ステップS620;No)、すなわち、予熱空気の温度が対象排ガス温度よりも高い場合、予熱空気の一部である予熱分割空気を第2ダクト62に流入させないように第3調整弁23の開度値をゼロに設定してもよい。
【0121】
ステップS630において、制御装置100は、焼却炉2に流入する空気量Fが所定風量以上か否かを判定する。当該空気量Fが所定風量以上と判定された場合(ステップS630;Yes)、処理はステップS640に進む。それ以外の場合(ステップS630;No)、すなわち、当該空気量Fが所定風量未満と判定された場合、処理はステップS650に進む。
【0122】
ステップS640において、制御装置100は、対象排ガス温度を適正温度に降下させるまで第1調整弁21の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更するとともに第3調整弁23の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。尚、第3調整弁23の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更したことに伴い、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量未満となる場合、制御装置100は、当該空気量Fが基準風量以上となるように空気調整弁25の開度値の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0123】
ステップS650において、制御装置100は、当該空気量Fが所定風量以上となるように第1送風機5のファンの回転数の設定値を現在値よりも大きい値に変更する。
【0124】
4.効果
実施の形態に係る焼却灰捕集システム1によれば、集塵機4に流入する第1排ガスの温度及び集塵機4から排出する第2排ガスの温度の少なくとも一方の対象排ガス温度と適正温度との温度差に基づいて、対象排ガス温度を適正温度に降下または上昇させるのに適した調整弁が決定され、当該調整弁に基づいた開閉制御が行われる。その結果、集塵機4の温度が適正温度に維持される。従って、重金属の含有量を低下させるとともに適量の焼却灰を捕集することが可能となる。また、焼却灰捕集システム1では、焼却炉2に流入する空気量Fが基準風量以上となるように第1送風機5のファンの回転数が制御される。従って、単に焼却炉2の予熱空気流入口2Aに供給する空気量を第1送風機5で加減し、集塵機4の出入口温度の調整を行う手段の場合には、焼却炉2での燃焼状態に影響してしまうのに対して、焼却炉2の燃焼に必要な分を確保できている場合に限り、余分の空気量を集塵機4の出入口温度の調整のために使うことができるので、焼却炉2の燃焼状態への影響を最小限にとどめ、燃焼効率の低下を回避できることとなる。
【符号の説明】
【0125】
1…焼却灰捕集システム, 2…流動焼却炉, 2A…予熱空気流入口, 2B…排ガス流出口, 3…第1熱交換器, 3A…並流側空気流入口, 3B…向流側空気流入口, 3C…排ガス流入口, 3D…空気流出口, 3E…排ガス流出口, 4…集塵機, 4A…排ガス流入口, 4B…排ガス流出口, 4C…灰排出機, 5…第1送風機, 5A…モータ, 6…冷却水ポンプ, 7…第2熱交換器, 7A…空気流入口, 7B…空気流出口, 7C…排ガス流入口, 7D…排ガス流出口, 8…第2送風機, 8A…モータ, 9…排ガス処理装置, 10…排気ファン, 11…煙突, 21…第1調整弁, 22A,22B…第2調整弁, 23…第3調整弁, 24…第4調整弁, 25…空気調整弁, 26…第5調整弁, 27…第6調整弁, 28…第7調整弁, 29…第8調整弁, 30a…筐体, 30c…仕切り板, 30d…上部の並流式の熱交換室, 30e…下部の向流式の熱交換室, 30f…高温側管板, 30g…低温側管板, 30h…伝熱管, 30i…バッフルプレート, 30j…排ガス排出室, 30k…上部空気導入ヘッダー, 30m…下部空気導入ヘッダー, 30n…排出ヘッダー, 31…第1温度計, 32…第2温度計, 33…第3温度計, 34…第4温度計, 41…第1風量計, 42…第2風量計, 43…第3風量計, 44…第4風量計, 45…第5風量計, 51…第1配管, 51A…第1分岐配管, 52A,52B…第2配管, 53…第3配管, 53A…第3分岐配管, 54…第4配管, 55…空気配管, 56…第5配管, 57…第6配管, 58…第7配管, 61…第1ダクト, 62…第2ダクト, 63…第3ダクト, 100…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13