(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172569
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両制御システム及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241205BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241205BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241205BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20241205BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/16 D
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090363
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛也
(72)【発明者】
【氏名】岡 雄平
(72)【発明者】
【氏名】角間 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 健人
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF21
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
5H181LL17
5H181MC19
(57)【要約】
【課題】所定エリア内を走行する車両を制御する際の安全性を向上させること。
【解決手段】車両制御システムは、所定エリア内を走行する車両を制御する。車両制御システムは、車両の位置を示す車両情報を取得し、車両情報に基づいて車両の周囲に判定領域を設定する。また、車両制御システムは、車両の外部に設置され所定エリアの状況を撮影するインフラカメラによって撮影される画像を取得する。更に、車両制御システムは、インフラカメラによって撮影された画像に基づいて、判定領域に物標が存在するか否かを判定する。判定領域に物標が存在する場合、車両制御システムは、車両を減速させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定エリア内を走行する車両を制御する車両制御システムであって、
1又は複数のプロセッサを備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記車両の位置を示す車両情報を取得し、
前記車両情報に基づいて、前記車両の周囲に判定領域を設定し、
前記車両の外部に設置され、前記所定エリアの状況を撮影するインフラカメラによって撮影される画像を取得し、
前記インフラカメラによって撮影された前記画像に基づいて、前記判定領域に物標が存在するか否かを判定し、
前記判定領域に前記物標が存在する場合、前記車両を減速させる
ように構成された
車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムであって、
前記車両情報は、更に、前記車両の進行方向を示し、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記車両情報に基づいて、前記車両の前方の前記判定領域である前方判定領域を設定し、
前記車両情報の更新頻度よりも低い頻度で前記前方判定領域の前端を更新する
ように構成された
車両制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、前記車両の速度が低くなるほど前記前方判定領域の前記前端の更新頻度を下げるように構成された
車両制御システム。
【請求項4】
請求項2に記載の車両制御システムであって、
前記所定エリアは、第1方向に延在しており、前記第1方向に沿って複数のブロックに分割され、
前記複数のブロックの各々は、前方ブロック境界と後方ブロック境界との間の領域であり、
前記前方ブロック境界は、前記後方ブロック境界から見て、前記車両の前記進行方向に位置し、
前記複数のブロックは、前記車両が存在する第1ブロックと、前記第1ブロックから見て前記車両の前記進行方向に位置する第2ブロックとを含み、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記車両情報に基づいて、前記第1ブロックと前記第2ブロックを認識し、
前記第2ブロックの前記前方ブロック境界を前記前方判定領域の前記前端として設定し、
前記車両が前記第1ブロックの前記前方ブロック境界を通過する度に、前記第1ブロック、前記第2ブロック、及び前記前方判定領域の前記前端を更新する
ように構成された
車両制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両制御システムであって、
ブロック長は、前記複数のブロックの各々の前記第1方向に沿った長さであり、
前記ブロック長は、前記車両の速度が高くなるほど長くなる
車両制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両制御システムであって、
前記車両情報は、更に、前記車両の進行方向を示し、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、前記車両情報に基づいて、前記車両の前方の前記判定領域である前方判定領域と、前記車両の後方の前記判定領域である後方判定領域を設定するように構成された
車両制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車両制御システムであって、
前方距離は、前記車両の前記位置から前記前方判定領域の前端までの距離であり、
後方距離は、前記車両の前記位置から前記後方判定領域の後端までの距離であり、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、前記後方距離が前記前方距離よりも短くなるように前記前方判定領域と前記後方判定領域を設定するように構成された
車両制御システム。
【請求項8】
請求項7に記載の車両制御システムであって、
前記後方距離は、所定の距離である
車両制御システム。
【請求項9】
請求項6に記載の車両制御システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、前記車両情報の更新頻度よりも低い頻度で前記後方判定領域の後端を更新するように構成された
車両制御システム。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両制御システムであって、
前記判定領域は、第1判定領域と、前記第1判定領域の周囲の第2判定領域とを含み、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記第1判定領域に前記物標が存在する場合、前記車両を減速させて停止させる停止制御を実行し、
前記第2判定領域に前記物標が存在する場合、前記停止制御の場合よりも緩やかに前記車両を減速させる
車両制御システム。
【請求項11】
コンピュータによって、所定エリア内を走行する車両を制御する車両制御方法であって、
前記車両の位置を示す車両情報を取得することと、
前記車両情報に基づいて、前記車両の周囲に判定領域を設定することと、
前記車両の外部に設置され、前記所定エリアの状況を撮影するインフラカメラによって撮影される画像を取得することと、
前記インフラカメラによって撮影された前記画像に基づいて、前記判定領域に物標が存在するか否かを判定することと、
前記判定領域に前記物標が存在する場合、前記車両を減速させることと
を含む
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、所定エリア内を走行する車両を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両用の運転支援装置を開示している。運転支援装置は、車両前方に衝突リスク判定用の判定エリアを設定する。また、運転支援装置は、車載カメラを用いて、車両前方の先行車を検出する。先行車が判定エリアに入ったとき、運転支援装置は、衝突リスクがあると判定し、乗員に対して警報を出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、車載カメラによって視認可能な物標だけが衝突リスクの判定対象となる。例えば、車両の前方のカーブの先の物標は車載カメラでは視認できないため、その物標に関する衝突リスクを判定することはできない。物標にかなり近づいてからその物標が車載カメラの視界に入った場合、急ブレーキが発生する可能性がある。
【0005】
本開示の1つの目的は、所定エリア内を走行する車両を制御する際の安全性を向上させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点は、所定エリア内を走行する車両を制御する車両制御システムに関する。
車両制御システムは、1又は複数のプロセッサを備える。
1又は複数のプロセッサは、車両の位置を示す車両情報を取得する。
1又は複数のプロセッサは、車両情報に基づいて、車両の周囲に判定領域を設定する。
1又は複数のプロセッサは、車両の外部に設置され所定エリアの状況を撮影するインフラカメラによって撮影される画像を取得する。
1又は複数のプロセッサは、インフラカメラによって撮影された画像に基づいて、判定領域に物標が存在するか否かを判定する。
判定領域に物標が存在する場合、1又は複数のプロセッサは、車両を減速させる。
【0007】
第2の観点は、コンピュータによって、所定エリア内を走行する車両を制御する車両制御方法に関する。
車両制御方法は、
車両の位置を示す車両情報を取得することと、
車両情報に基づいて、車両の周囲に判定領域を設定することと、
車両の外部に設置され、所定エリアの状況を撮影するインフラカメラによって撮影される画像を取得することと、
インフラカメラによって撮影された画像に基づいて、判定領域に物標が存在するか否かを判定することと、
判定領域に物標が存在する場合、車両を減速させることと
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両の制御にインフラカメラが利用される。インフラカメラを利用することによって、車載カメラ等の車載センサでは検出できない物標についても検出することが可能となる。そして、車載センサでは検出できない物標も考慮して車両の制御が行われる。具体的には、車両の周囲の判定領域に物標が存在する場合、車両の減速が行われる。車載センサでは検出できない物標も考慮されるため、余裕をもって車両を減速させることができ、急ブレーキの必要性が軽減される。従って、車両を制御する際の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る車両制御システムの概要を説明するための概念図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るリスク回避制御に用いられる判定領域の例を説明するための概念図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るリスク回避制御に用いられる判定領域の他の例を説明するための概念図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る車載システムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る車両制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施の形態に係るリスク回避制御に関連する処理を要約的に示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施の形態に係る前方判定領域の前方境界の更新方法を説明するための図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る前方判定領域の前方境界の更新の一例を説明するための図である。
【
図9】第2の実施の形態に係る車速に応じたブロック設定の例を説明するための図である。
【
図10】第3の実施の形態に係る前方判定領域と後方判定領域を説明するための概念図である。
【
図11】第5の実施の形態に係る後方判定領域の更新方法を説明するための図である。
【
図12】第5の実施の形態に係る後方判定領域の更新の一例を説明するための図である。
【
図13】第5の実施の形態に係るブロック設定の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0011】
1.第1の実施の形態
1-1.概要
図1は、第1の実施の形態に係る車両制御システム100の概要を説明するための概念図である。車両制御システム100は、所定エリアAR内を走行する車両1を制御する。
【0012】
車両1が走行する所定エリアARは、例えば、第1方向Sに延在する細長い領域である。第1方向Sは、所定エリアARの長手方向であると言える。所定エリアARとしては、車道(高速道、一般道)、駐車場内の通路、工場内の通路、等が例示される。第1方向Sに平行な所定エリアARの中心線は、車道や通路の中心線と一致していてもよい。一方、第1方向Sに直交する所定エリアARの幅は、車道や通路の幅と完全に一致する必要はない。所定エリアARの幅は、一般的な車両の車幅にマージン幅を加えたものであってもよい。所定エリアARの幅は、カーブ区間において広くなってもよい。
【0013】
車両制御システム100は、車両1に搭載された車載システム10の少なくとも一部を含んでいてもよい。車載システム10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して車両1の現在位置を取得する。また、車載システム10は、車載カメラによって撮影される画像を取得する。車載システム10は、車載カメラによって撮影された画像に基づいて車両1を制御してもよい。例えば、車載システム10は、車載カメラによって撮影された画像に基づいて、車両1の自動運転を制御してもよい。つまり、車両1は自動運転車両であってもよい。ここで、自動運転とは、車両1の操舵、加速、及び減速の少なくとも一部を、ドライバの操作から独立して自動的に行うことを意味する。一例として、自動運転は、レベル3以上のものであってもよい。
【0014】
車両制御システム100は、車両1の外部の外部装置を含んでいてもよい。例えば、外部装置は、車両1を管理する管理サーバである。管理サーバは、分散処理を行う分散サーバであってもよい。外部装置は、車両1(車載システム10)と通信を行い、車両1をリモートで制御する。
【0015】
車両制御システム100は、車載システム10と外部装置とに分散していてもよい。
【0016】
本実施の形態によれば、車両1の制御に、車両1の外部に設置された「インフラカメラCAM」も利用される。インフラカメラCAMは、所定エリアAR及びその周囲の状況を撮影可能なように設置されている。典型的には、所定エリアARの長手方向(第1方向S)に沿って複数のインフラカメラCAMが設置されている。複数のインフラカメラCAMのそれぞれの画角は部分的に重なっていてもよい。画像250は、インフラカメラCAMによって撮影される画像であり、所定エリアAR及びその周囲の状況を示す。
【0017】
車両制御システム100は、インフラカメラCAMと通信を行い、インフラカメラCAMによって撮影される画像250を取得する。画像250には、所定エリアAR内に存在する物標TGTが映っている可能性がある。ここでの物標TGTとは、制御対象である車両1以外の物体である。物標TGTとしては、歩行者、自転車、車両1以外の他車両(例:先行車両、駐車車両)、等が例示される。
【0018】
車両制御システム100は、インフラカメラCAMによって撮影される画像250に基づいて、所定エリアAR内に存在する物標TGTを検出(認識)することができる。例えば、車両制御システム100は、画像認識AIを利用して、画像250に映っている物標TGTを認識する。画像認識AIは、機械学習を通して予め生成される。インフラカメラCAMの設置情報(設置位置、設置向き、画角、等)は、既知情報である。車両制御システム100は、インフラカメラCAMの設置情報と画像250内の物標TGTの画像内位置に基づいて、所定エリアAR内に存在する物標TGTを検出し、更に、絶対座標系における物標TGTの位置を算出することができる。
【0019】
インフラカメラCAMを利用することによって、車載カメラ等の車載センサでは検出できない物標TGTについても検出することができる場合がある。例えば
図1において、車両1の前方のカーブの先の所定エリアAR内に物標TGTが存在している。車両1の前方のカーブの先の物標TGTは、車載センサでは検出できないが、インフラカメラCAMによって検出することができる。車両1の前方に急斜面が存在する場合も同様である。
【0020】
所定エリアAR内に存在する物標TGTは、所定エリアARを走行する車両1にとって「リスク」となり得る。よって、車両制御システム100は、必要に応じて、リスクを回避するための「リスク回避制御」を行う。具体的には、車両制御システム100は、車両1と物標TGTとの衝突を回避するために、車両1の操舵と減速のうち少なくとも一方を自動的に行う。つまり、リスク回避制御は、操舵制御と減速制御のうち少なくとも一方を含む。
【0021】
以下では、特に、リスク回避制御の中の減速制御について詳しく説明する。以下に説明される減速制御に加えて操舵制御が実施されてもよい。
【0022】
図2は、リスク回避制御に用いられる「判定領域D」の例を説明するための概念図である。判定領域Dは、リスク回避制御を作動させるか否かを判定するための領域である。判定領域D内に物標TGTが存在する場合、リスク回避制御(減速制御)が作動する。
図2に示されるように、判定領域Dは、車両1の周囲に設定される。典型的には、判定領域Dは、所定エリアARと同様に第1方向Sに延在するように設定される。第1方向Sに直交する判定領域Dの幅は、所定エリアARの幅と一致していてもよい。あるいは、第1方向Sに直交する判定領域Dの幅は、所定エリアARの幅より少し大きくてもよい。
【0023】
車両位置PVは、絶対座標系における車両1の位置である。進行方向Xは、車両1が進む方向である。「前方向」は進行方向Xであり、「後方向」は進行方向Xとは逆の方向である。判定領域Dは、「前方判定領域Df」と「後方判定領域Dr」に区分されてもよい。
【0024】
前方判定領域Dfは、車両1の前方の判定領域Dであり、車両位置PVから見て前方向(進行方向X)に位置する。前方境界DBfは、前方判定領域Dfの前端である。前方判定領域Dfは、前方境界DBfと車両位置PVとの間の領域であると言える。前方距離Lfは、第1方向Sに沿った車両位置PVから前方境界DBfまでの距離である。前方距離Lfは、車両1が余裕をもって停止できる距離に設定される。前方境界DBfの位置は、車両位置PVに連動して変化してもよい。その場合、前方判定領域Dfも、車両位置PVに連動して変化する。
【0025】
一方、後方判定領域Drは、車両1の後方の判定領域Dであり、車両位置PVから見て後方向に位置する。後方境界DBrは、後方判定領域Drの後端である。後方判定領域Drは、後方境界DBrと車両位置PVとの間の領域であると言える。後方距離Lrは、第1方向Sに沿った車両位置PVから後方境界DBrまでの距離である。後方境界DBrの位置は、車両位置PVに連動して変化してもよい。その場合、後方判定領域Drも、車両位置PVに連動して変化する。
【0026】
車両制御システム100は、車両位置PVに基づいて、判定領域D(前方判定領域Df、後方判定領域Dr)を設定する。また、上述の通り、車両制御システム100は、インフラカメラCAMによって撮影される画像250に基づいて、所定エリアAR内に存在する物標TGTを検出する。更に、車両制御システム100は、インフラカメラCAMの設置情報(設置位置、設置向き、画角、等)に基づいて、絶対座標系における物標TGTの位置を算出する。追加的に、車両制御システム100は、車載カメラ等の車載センサによって、車両1の周囲の物標TGTを検出してもよい。
【0027】
そして、車両制御システム100は、判定領域Dに物標TGTが存在するか否かを判定する。この判定処理の一例は、次の通りである。車両制御システム100は、検出された物標TGTとその近傍を覆う物標領域を設定する。例えば、物標領域は、円形状を有する。物標TGTのサイズが大きくなるにつれて、物標領域も大きくなる。物標TGTの移動速度が高くなるにつれて、物標領域が大きくなってもよい。物標領域は、物標TGTの移動方向が広くなる形状を有していてもよい。このような物標領域と判定領域Dが少なくとも部分的に重なっている場合、車両制御システム100は、物標TGTが判定領域Dに存在すると判定する。
【0028】
判定領域Dに物標TGTが存在する場合、車両制御システム100は、リスク回避制御(減速制御)を作動させる。すなわち、判定領域Dに物標TGTが存在する場合、車両制御システム100は、車両1を減速させる。ここで、減速させることは、減速させて停止させることも包含する概念である。つまり、車両制御システム100は、車両1を停止させてもよい。
【0029】
図3は、判定領域Dの他の例を説明するための概念図である。
図3に示される例では、判定領域Dは、第1判定領域D1と第2判定領域D2に区分される。第1判定領域D1は内側に位置し、第2判定領域D2は外側に位置する。言い換えれば、第2判定領域D2は、第1判定領域D1の周囲を覆っている。
【0030】
前方判定領域Dfは、第1前方判定領域D1fと第2前方判定領域D2fに区分される。第1前方判定領域D1fは内側に位置し、第2前方判定領域D2fは外側に位置する。言い換えれば、第2前方判定領域D2fは、第1前方判定領域D1fの周囲を覆っている。第1前方境界DB1fは、第1前方判定領域D1fの前端である。第2前方境界DB2fは、第2前方判定領域D2fの前端である。
【0031】
後方判定領域Drは、第1後方判定領域D1rと第2後方判定領域D2rに区分される。第1後方判定領域D1rは内側に位置し、第2後方判定領域D2rは外側に位置する。言い換えれば、第2後方判定領域D2rは、第1後方判定領域D1rの周囲を覆っている。第1後方境界DB1rは、第1後方判定領域D1rの後端である。第2後方境界DB2rは、第2後方判定領域D2rの後端である。
【0032】
車両制御システム100は、判定領域Dに物標TGTが存在するか否かを判定する。内側の第1判定領域D1に物標TGTが存在する場合、車両制御システム100は、車両1を減速させて停止させる。これは、緊急停止制御に相当する。一方、外側の第2判定領域D2に物標TGTが存在する場合、車両制御システム100は、緊急停止制御の場合よりも緩やかに車両1を減速させる。これは、通常減速制御に相当する。通常減速制御における減速度は、緊急停止制御における減速度よりも低い。
【0033】
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、車両1の制御にインフラカメラCAMが利用される。インフラカメラCAMを利用することによって、車載カメラ等の車載センサでは検出できない物標TGTについても検出することが可能となる。例えば、車両1の前方のカーブの先に存在する物標TGTも、インフラカメラCAMによって検出され得る。そして、車載センサでは検出できない物標TGTも考慮して車両1の制御が行われる。具体的には、車両1の周囲の判定領域Dに物標TGTが存在する場合、車両1の減速が行われる。車載センサでは検出できない物標TGTも考慮されるため、余裕をもって車両1を減速させることができ、急ブレーキの必要性が軽減される。従って、車両1を制御する際の安全性が向上する。
【0034】
1-2.車載システムの例
図4は、車両1に搭載される車載システム10の構成例を示すブロック図である。車載システム10は、センサ群20、通信装置30、走行装置40、及び制御装置50を含んでいる。
【0035】
センサ群20は、認識センサ、車両状態センサ、及び位置センサを含んでいる。認識センサは、車両1の周囲の状況を認識(検出)する。認識センサとしては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。車両状態センサは、車両1の状態を検出する。例えば、車両状態センサは、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等を含んでいる。位置センサは、車両1の位置及び方位を検出する。例えば、位置センサは、GNSSセンサを含んでいる。
【0036】
通信装置30は、通信ネットワークを介して外部と通信を行う。例えば、通信装置30は、インフラカメラCAM、管理サーバ、等と通信を行う。
【0037】
走行装置40は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車輪を転舵する。例えば、操舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0038】
制御装置50は、車両1を制御するコンピュータである。制御装置50は、1又は複数のプロセッサ60(以下、単にプロセッサ60と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置70(以下、単に記憶装置70と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ60は、各種処理を実行する。プロセッサ60として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、等が例示される。記憶装置70は、各種情報を格納する。記憶装置70として、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、等が例示される。
【0039】
車両制御プログラム80は、車両1を制御するためのコンピュータプログラムである。車両制御プログラム80を実行するプロセッサ60と記憶装置70との協働により、制御装置50の機能が実現されてもよい。車両制御プログラム80は、記憶装置70に格納される。あるいは、車両制御プログラム80は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0040】
制御装置50は、車両1の運転環境を示す運転環境情報90を取得する。運転環境情報90は、記憶装置70に格納される。
【0041】
運転環境情報90は、認識センサに基づいて得られる周辺状況情報を含んでいる。例えば、周辺状況情報は、カメラによって撮像される画像を含む。他の例として、周辺状況情報は、LIDARによって得られる点群情報を含んでいてもよい。また、周辺状況情報は、車両1の周囲の物体(物標)に関する物体情報を含んでいる。車両1の周囲の物体としては、歩行者、他車両、障害物、白線、ランドマーク、信号機、等が例示される。物体情報は、車両1に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。
【0042】
運転環境情報90は、更に、絶対座標系における車両位置PV(車両1の現在位置)を示す位置情報を含む。制御装置50は、位置センサによる検出結果から位置情報を取得する。また、制御装置50は、物体情報と地図情報を利用した周知の自己位置推定処理(Localization)により、高精度な位置情報を取得してもよい。
【0043】
運転環境情報90は、更に、車両状態センサによって検出される車両状態情報を含む。
【0044】
また、制御装置50は、車両1の走行を制御する車両走行制御を実行する。車両走行制御は、操舵制御、加速制御、及び減速制御を含む。制御装置50は、走行装置40(操舵装置、駆動装置、制動装置)を制御することによって車両走行制御を実行する。
【0045】
更に、制御装置50は、車両1の自動運転を制御する自動運転制御を行ってもよい。ここで、自動運転とは、車両1の操舵、加速、及び減速の少なくとも一部を、ドライバの操作から独立して自動的に行うことを意味する。制御装置50は、運転環境情報90に基づいて、車両1の走行計画を生成する。走行計画としては、現在の走行車線を維持する、車線変更を行う、右左折を行う、物体との衝突を回避する、等が例示される。更に、制御装置50は、走行計画を実現するための目標トラジェクトリを生成する。目標トラジェクトリは、車両1の目標位置と目標速度を含んでいる。そして、制御装置50は、車両1が目標トラジェクトリに追従するように車両走行制御を行う。
【0046】
1-3.車両制御システムの例
図5は、車両制御システム100の構成例を示すブロック図である。車両制御システム100は、1又は複数のプロセッサ110(以下、単にプロセッサ110と呼ぶ)、1又は複数の記憶装置120(以下、単に記憶装置120と呼ぶ)、及び通信装置130を含んでいる。プロセッサ110は、各種処理を実行する。プロセッサ110として、CPU、GPU、ASIC、FPGA、等が例示される。記憶装置120は、各種情報を格納する。記憶装置120として、HDD、SSD、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、等が例示される。通信装置130は、通信ネットワークを介して外部と通信を行う。例えば、通信装置130は、インフラカメラCAMと通信を行う。通信装置130は、車両1(車載システム10)と通信を行ってもよい。
【0047】
車両制御プログラム140は、車両1を制御するためのコンピュータプログラムである。車両制御プログラム140を実行するプロセッサ110と記憶装置120との協働により、車両制御システム100の機能が実現されてもよい。車両制御プログラム140は、記憶装置120に格納される。あるいは、車両制御プログラム140は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0048】
車両制御システム100は、上記の車載システム10と部分的に共通であってもよい。つまり、プロセッサ60とプロセッサ110は同じであってもよい。記憶装置70と記憶装置120は同じであってもよい。車両制御プログラム80と車両制御プログラム140は同じであってもよい。
【0049】
プロセッサ110は、各種情報200を取得する。各種情報200は、記憶装置120に格納される。各種情報200は、地図情報210、車両情報220、判定領域情報230、インフラカメラ情報240、画像250、物標情報260、等を含む。
【0050】
地図情報210は、車両1が走行する所定エリアARの地図情報である。地図情報210は、予め車両制御システム100に提供される。
【0051】
車両情報220は、制御対象の車両1に関する情報である。車両情報220は、少なくとも、絶対座標系における車両位置PV(車両1の現在位置)を示す位置情報を含んでいる。位置情報は、車載システム10から得られる。車両情報220は、車両1の進行方向Xの情報を含んでいてもよい。車両1の進行方向Xは、車両位置PVに基づいて判定可能である。車両情報220は、更に、車両1の速度情報を含んでいてもよい。速度情報も、車載システム10から得られる。
【0052】
判定領域情報230は、リスク回避制御に用いられる判定領域Dに関する情報である。例えば、判定領域情報230は、判定領域Dを設定するための設定ポリシーを含む。判定領域情報230は、第1方向Sに沿った車両位置PVから前方境界DBfまでの前方距離Lfの設定値を含んでいてもよい。判定領域情報230は、第1方向Sに沿った車両位置PVから後方境界DBrまでの後方距離Lrの設定値を含んでいてもよい。
【0053】
インフラカメラ情報240は、各インフラカメラCAMの設置位置、設置向き、画角、等を示す。インフラカメラ情報240は、予め車両制御システム100に提供される。
【0054】
画像250は、インフラカメラCAMによって撮影される画像であり、所定エリアAR及びその周囲の状況を示す。プロセッサ110は、通信装置130を介して、インフラカメラCAMから画像250を取得する。
【0055】
物標情報260は、所定エリアAR内に存在する物標TGTに関する情報である。プロセッサ110は、インフラカメラCAMによって撮影される画像250に基づいて、所定エリアAR内に存在する物標TGTを検出する。例えば、プロセッサ110は、画像認識AIを利用して、画像250に映っている物標TGTを認識する。また、プロセッサ110は、インフラカメラ情報240と画像250内の物標TGTの画像内位置に基づいて、絶対座標系における物標TGTの位置を算出する。追加的に、物標情報260は、車載システム10によって検出された物標の情報を含んでいてもよい。
【0056】
尚、制御対象の車両1と他の物標TGTとは互いに区別される。例えば、車両位置PVと物標TGTの位置とを対比することによって、車両1と他の物標TGTとを区別することができる。例えば、検出された物標TGTとその近傍を覆う物標領域が設定される。車両位置PVが物標領域内にある場合、その物標TGTは制御対象の車両1であるとみなされる。
【0057】
プロセッサ110は、車両1を制御する。車両制御システム100が車載システム10を含む場合、プロセッサ110は、走行装置40を制御することによって車両1を制御する。車両制御システム100が車載システム10の外部にある場合、プロセッサ110は、通信装置130を介して車載システム10に制御指示を出すことによって、車両1をリモートで制御する。
【0058】
特に、プロセッサ110は、車両1と物標TGTとの衝突を回避するためにリスク回避制御を行う。
図6は、リスク回避制御に関連する処理を要約的に示すフローチャートである。
【0059】
ステップS100において、プロセッサ110は、各種情報200を取得する。
【0060】
ステップS110において、プロセッサ110は、地図情報210、車両情報220、及び判定領域情報230に基づいて、判定領域Dを設定する。プロセッサ110は、車両1の進行方向Xを考慮して、前方判定領域Dfと後方判定領域Drを設定してもよい。
【0061】
ステップS120において、プロセッサ110は、物標情報260と判定領域Dに基づいて、判定領域Dに物標TGTが存在するか否かを判定する。例えば、プロセッサ110は、物標TGTとその近傍を覆う物標領域を設定する。例えば、物標領域は、円形状を有する。物標TGTのサイズが大きくなるにつれて、物標領域も大きくなる。物標TGTの移動速度が高くなるにつれて、物標領域が大きくなってもよい。物標領域は、物標TGTの移動方向が広くなる形状を有していてもよい。このような物標領域と判定領域Dが少なくとも部分的に重なっている場合、プロセッサ110は、物標TGTが判定領域Dに存在すると判定する。
【0062】
物標TGTが判定領域D内に存在しない場合(ステップS120;No)、処理は、ステップS130に進む。ステップS130において、プロセッサ110は、通常の車両走行制御を行う。
【0063】
一方、物標TGTが判定領域D内に存在する場合(ステップ120;Yes)、処理は、ステップS140に進む。ステップS140において、プロセッサ110は、車両1を減速させる減速制御を行う。プロセッサ110は、車両1を減速させて停止させてもよい。
【0064】
1-4.効果
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、車両1の制御にインフラカメラCAMが利用される。インフラカメラCAMを利用することによって、車載カメラ等の車載センサでは検出できない物標TGTについても検出することが可能となる。例えば、車両1の前方のカーブの先に存在する物標TGTも、インフラカメラCAMによって検出され得る。そして、車載センサでは検出できない物標TGTも考慮して車両1の制御が行われる。具体的には、車両1の周囲の判定領域Dに物標TGTが存在する場合、車両1の減速が行われる。車載センサでは検出できない物標TGTも考慮されるため、余裕をもって車両1を減速させることができ、急ブレーキの必要性が軽減される。従って、車両1を制御する際の安全性が向上する。
【0065】
以下、他の実施の形態を説明する。車載システム10及び車両制御システム100の構成は、第1の実施の形態の場合と同様である。
【0066】
2.第2の実施の形態
図7は、前方判定領域Dfの前方境界DBfの更新の例を示している。横軸は時間を表し、縦軸は車両位置PV及び前方境界DBfを表している。前方判定領域Dfは、車両位置PVと前方境界DBfとの間の領域である。車両位置PVと前方境界DBfとの間の前方距離Lfは、車両1が余裕をもって停止できる距離に設定される。
【0067】
図7中のパターン(A)によれば、車両位置PVが更新される度に前方境界DBfも更新される。つまり、前方境界DBfの更新頻度は、車両位置PVの更新頻度(サンプリング周波数)と同じである。前方境界DBfは車両位置PVに完全に連動して変化しているとも言える。しかしながら、前方境界DBfの更新頻度が高くなると、プロセッサ110にかかる処理負荷も高くなる。必要以上に前方境界DBfの更新頻度を高くすることは、処理負荷の観点から好ましくない。
【0068】
そこで、第2の実施の形態によれば、
図7中のパターン(B)で示されるように、前方判定領域Dfの前方境界DBfの更新頻度は、車両位置PVの更新頻度よりも低く設定される。つまり、プロセッサ110は、車両位置PV(つまり車両情報220)の更新頻度よりも低い頻度で前方判定領域Dfの前方境界DBfを更新する。これにより、プロセッサ110にかかる処理負荷を軽減することが可能となる。
【0069】
プロセッサ110は、車両1の速度が低くなるほど前方境界DBfの更新頻度を下げてもよい。車両1の速度は車両情報220から得られる。前方境界DBfの更新頻度は、車両1の速度に応じて、単調に減少してもよいし、段階的に減少してもよい。例えば、車両1の速度が所定の閾値以上である場合の更新頻度は、第1更新頻度であり、車両1の速度が所定の閾値未満である場合の更新頻度は、第1更新頻度よりも低い第2更新頻度である。車両1の速度も考慮して前方境界DBfの更新頻度を変更することによって、プロセッサ110にかかる処理負荷をより効果的に軽減することが可能となる。
【0070】
図8は、前方判定領域Dfの前方境界DBfの更新の一例を説明するための図である。車両1が走行する所定エリアARは、第1方向Sに沿って複数のブロックBKに分割される。各ブロックBKは、前方ブロック境界BKBfと後方ブロック境界BKBrとの間の領域である。前方ブロック境界BKBfは、後方ブロック境界BKBrから見て、車両1の進行方向Xに位置している。ブロック長Lbkは、第1方向Sに沿ったブロックBKの長さである。つまり、各ブロックBKのブロック長Lbkは、第1方向Sに沿った前方ブロック境界BKBfと後方ブロック境界BKBrとの間の長さである。ブロック長Lbkは、車両1が余裕をもって停止できる距離に設定される。
【0071】
ブロック配置情報は、絶対座標系における複数のブロックBKの配置を示す。つまり、ブロック配置情報は、絶対座標系における各ブロックBKの前方ブロック境界BKBfと後方ブロック境界BKBrの位置を示す。そのようなブロック配置情報は、地図情報210に予め登録される。
【0072】
プロセッサ110は、車両位置PVとブロック配置情報に基づいて、前方判定領域Dfの前方境界DBfの設定及び更新を行う。その説明のため、車両1が現在存在するブロックBKを、以下、「第1ブロックBK1」と呼ぶ。また、第1ブロックBK1に隣接する前方のブロックBKを、以下、「第2ブロックBK2」と呼ぶ。つまり、第2ブロックBK2は、第1ブロックBK1から見て、車両1の進行方向Xに位置している。プロセッサ110は、車両位置PVとブロック配置情報に基づいて、第1ブロックBK1と第2ブロックBK2を認識する。そして、プロセッサ110は、第2ブロックBK2の前方ブロック境界BKBfを前方判定領域Dfの前方境界DBfとして設定する。
【0073】
図8に示される例では、最初、車両1はブロックBK(i)に存在している。つまり、第1ブロックBK1はブロックBK(i)であり、第2ブロックBK2はブロックBK(i+1)である。このとき、前方判定領域Dfの前方境界DBfは、ブロックBK(i+1)の前方ブロック境界BKBf(i+1)である。車両1がブロックBK(i)内を進行中、前方境界DBfはそのまま更新されない。
【0074】
やがて車両1はブロックBK(i)の前方ブロック境界BKBf(i)に差し掛かる。プロセッサ110は、車両位置PVとブロック配置情報に基づいて、車両1の所定部分がブロックBK(i)の前方ブロック境界BKBf(i)を通過したか否かを判定する。所定部分は任意である。車両1の所定部分がブロックBK(i)の前方ブロック境界BKBf(i)を通過した場合、プロセッサ110は、車両1が前方ブロック境界BKBf(i)を通過してブロックBK(i+1)に入ったと判定する。
【0075】
車両1がブロックBK(i+1)に入ると、ブロックBK(i+1)が新たな第1ブロックBK1となり、ブロックBK(i+2)が新たな第2ブロックBK2となる。つまり、第1ブロックBK1と第2ブロックBK2が更新される。よって、プロセッサ110は、ブロックBK(i+2)の前方ブロック境界BKBf(i+2)を新たな前方境界DBfに設定する。すなわち、前方判定領域Dfの前方境界DBfが更新される。
【0076】
以降、同様の処理が繰り返される。車両1が第1ブロックBK1の前方ブロック境界BKBfを通過する度に、プロセッサ110は、第1ブロックBK1、第2ブロックBK2、及び前方判定領域Dfの前方境界DBfを更新する。このような手法によって、前方判定領域Dfの前方境界DBfの更新頻度を、車両位置PVの更新頻度よりも低くすることができる。
【0077】
図9に示されるように、各ブロックBKのブロック長Lbkは、車両1の速度が高くなるほど長くなってもよい。ブロック長Lbkは、車両1の速度に応じて、単調に変化してもよいし、段階的に変化してもよい。
図9に示される例では、車両1の速度が所定の閾値未満である場合のブロック長Lbkは、第1ブロック長Lbk-lである。車両1の速度が所定の閾値以上である場合のブロック長Lbkは、第1ブロック長Lbk-lよりも長い第2ブロック長Lbk-hである。第1ブロック長Lbk-lと第2ブロック長Lbk-hのそれぞれの場合のブロック配置情報が地図情報210に登録される。車両1の速度は車両情報220から得られる。プロセッサ110は、車両1の速度に対応するブロック配置情報を取得する。
<効果>
以上に説明されたように、第2の実施の形態によれば、前方判定領域Dfの前方境界DBfの更新頻度は、車両位置PVの更新頻度よりも低く設定される。これにより、プロセッサ110にかかる処理負荷を軽減することが可能となる。特に、多数のインフラカメラCAMによって撮影される画像250に基づいて多数の車両1の制御を同時並列的に行う場合、処理負荷の軽減は好ましい。
【0078】
図8で示されたように、ブロックBKに基づいて前方判定領域Dfの前方境界DBfを設定、更新してもよい。これにより、前方境界DBfの更新頻度を下げ、処理負荷を軽減することができる。また、予め設定されたブロックBKが利用される場合、プロセッサ110は、道路形状を逐一考慮して前方境界DBfを引く必要がない。このことも処理負荷の軽減に寄与する。更に、前方境界DBfが不自然なラインになることも防止される。
【0079】
3.第3の実施の形態
図10は、第3の実施の形態に係る前方判定領域Dfと後方判定領域Drを説明するための概念図である。前方判定領域Dfは、車両1がこれから通過する領域である。一方、後方判定領域Drは、車両1が既に通過した領域である。仮に後方判定領域Drに物標TGTがいるとしても、そのリスクは比較的低いと言える。後方判定領域Drが徒らに広く設定されると、物標TGTが車両1から遠く離れているにもかかわらず、減速制御が作動してしまう可能性がある。必要以上に過剰な減速制御は、走行継続性を悪化させ、また、車両1のユーザの違和感を招く。
【0080】
そこで、第3の実施の形態によれば、後方判定領域Drは、前方判定領域Dfよりも狭く設定される。より詳細には、プロセッサ110は、後方距離Lrが前方距離Lfよりも短くなるように前方判定領域Dfと後方判定領域Drを設定する(Lf>Lr)。前方距離Lfと後方距離Lrはそれぞれ所定の値であってもよい。
【0081】
第3の実施の形態によれば、安全性を確保しつつ、減速制御の過剰作動を抑制することが可能となる。その結果、走行継続性が確保される。また、車両1のユーザの違和感も抑制される。
【0082】
4.第4の実施の形態
上述の第2の実施の形態と第3の実施の形態の組み合わせも可能である。その場合、前方判定領域Dfの前方境界DBfの更新頻度は、車両位置PVの更新頻度よりも低く設定される。また、後方判定領域Drは、前方判定領域Dfよりも狭く設定される。これにより、処理負荷の軽減と減速制御の過剰作動の抑制の両方の効果が得られる。
【0083】
5.第5の実施の形態
第5の実施の形態では、後方判定領域Drの後方境界DBrの更新頻度が、車両位置PVの更新頻度よりも低く設定される。上述の第2の実施の形態と重複する説明は適宜省略される。
【0084】
図11は、後方判定領域Drの後方境界DBrの更新の例を示している。パターン(A)によれば、車両位置PVが更新される度に後方境界DBrも更新される。つまり、後方境界DBrの更新頻度は、車両位置PVの更新頻度(サンプリング周波数)と同じである。この場合、処理負荷が高くなる。一方、パターン(B)によれば、後方境界DBrの更新頻度は、車両位置PVの更新頻度よりも低い。よって、プロセッサ110にかかる処理負荷が軽減される。
【0085】
プロセッサ110は、車両1の速度が低くなるほど後方境界DBrの更新頻度を下げてもよい。これにより、処理負荷をより効果的に軽減することが可能となる。
【0086】
図12は、後方判定領域Drの後方境界DBrの更新の一例を説明するための図である。第1ブロックBK1は、車両1が現在存在するブロックBKである。第2ブロックBK2は、第1ブロックBK1に隣接する後方のブロックBKである。つまり、第2ブロックBK2は、第1ブロックBK1から見て、車両1の進行方向Xと反対方向に位置している。プロセッサ110は、車両位置PVとブロック配置情報に基づいて、第1ブロックBK1と第2ブロックBK2を認識する。そして、プロセッサ110は、第2ブロックBK2の後方ブロック境界BKBrを後方判定領域Drの後方境界DBrとして設定する。車両1が第1ブロックBK1の前方ブロック境界BKBfを通過する度に、プロセッサ110は、第1ブロックBK1、第2ブロックBK2、及び後方判定領域Drの後方境界DBrを更新する。このような手法によって、後方判定領域Drの後方境界DBrの更新頻度を、車両位置PVの更新頻度よりも低くすることができる。
【0087】
第5の実施の形態によれば、プロセッサ110にかかる処理負荷を軽減することが可能となる。特に、多数のインフラカメラCAMによって撮影される画像250に基づいて多数の車両1の制御を同時並列的に行う場合、処理負荷の軽減は好ましい。
【0088】
第5の実施の形態と上述の実施の形態のいずれかとの組み合わせも可能である。
【0089】
図13は、第5の実施の形態と第4の実施の形態の組み合わせを説明するための図である。前方判定領域Dfの前方境界DBfを設定する際、ブロック長Lbk-fのブロックBKが用いられる。一方、後方判定領域Drの後方境界DBrを設定する際、ブロック長Lbk-rのブロックBKが用いられる。ブロック長Lbk-rは、ブロック長Lbk-fよりも短い。その結果、後方距離Lrが前方距離Lfよりも短くなる。これにより、処理負荷の軽減と減速制御の過剰作動の抑制の両方の効果が得られる。
【符号の説明】
【0090】
1 車両
10 車載システム
100 車両制御システム
AR 所定エリア
BK ブロック
CAM インフラカメラ
D 判定領域
Df 前方判定領域
Dr 後方判定領域
DBf 前方境界
DBr 後方境界