IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-作業機械の制御装置 図1
  • 特開-作業機械の制御装置 図2
  • 特開-作業機械の制御装置 図3
  • 特開-作業機械の制御装置 図4
  • 特開-作業機械の制御装置 図5
  • 特開-作業機械の制御装置 図6
  • 特開-作業機械の制御装置 図7
  • 特開-作業機械の制御装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172570
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20241205BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241205BHJP
   E02F 3/43 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/20 N
E02F3/43 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090364
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西牧 潤
(72)【発明者】
【氏名】平沼 一則
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA03
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB01
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
2D015HA03
2D015HB00
(57)【要約】
【課題】作業具に積載された物の重量の計測を安定させる。
【解決手段】作業機械の制御装置は、下部走行体と、下部走行体に旋回自在の搭載される上部旋回体と、上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、アタッチメントの先端に設けられる作業具と、を有する作業機械を制御するように構成される制御部を、有し、制御部は、作業具に積載された積載物を所定の対象物に積込むために生成された移動軌道に従って作業具が移動している間に、積載物の重量計測を行うためにアタッチメントに所定の動作を行わせる動作指令を生成するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在の搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記アタッチメントの先端に設けられる作業具と、を有する作業機械を制御するように構成される制御部を、有し、
前記制御部は、前記作業具に積載された積載物を所定の対象物に積込むために生成された移動軌道に従って前記作業具が移動している間に、前記積載物の重量計測を行うために前記アタッチメントに所定の動作を行わせる動作指令を生成するように構成されている、
作業機械の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記所定の動作として、前記積載物の重量計測を行っている間、前記作業具が移動している加速度を所定の加速度より小さくさせる前記動作指令を生成する、
請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記積載物の重量計測を行っている間、水平面に対する前記作業具の開口面の傾きが所定の閾値より小さくなった状態を維持するような前記移動軌道を生成する、
請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記積載物の重量計測を行っている間、前記上部旋回体の旋回動作が抑制された前記移動軌道を生成する、
請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記積載物の重量計測を行った後、操作者に前記アタッチメントの操作を受け渡し可能な前記移動軌道を生成する、
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の作業機械の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記積載物を前記所定の対象物に積み込みが完了するまでの前記移動軌道を生成する、
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の作業機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ショベルがダンプトラックの荷台等に、土砂などの物を積み込むために様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された技術では、土砂等の積載物が必要以上に作業具に積載されないように、土砂等を掘削する際の作業具の移動軌道を設定している。これにより、特許文献1に記載された技術では、ダンプトラックの荷台に適切な重量の物を積載することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/189260号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、掘削する土砂の量を調整するための技術であって、作業具に積載された物の重量を計測するための技術ではない。このため、作業具に積載された物の重量を計測する際に値が安定しない可能性がある。
【0006】
本発明の一態様は、作業具に積載された物の重量の計測を安定させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業機械の制御装置は、下部走行体と、下部走行体に旋回自在の搭載される上部旋回体と、上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、アタッチメントの先端に設けられる作業具と、を有する作業機械を制御するように構成される制御部を、有し、制御部は、作業具に積載された積載物を所定の対象物に積込むために生成された移動軌道に従って作業具が移動している間に、積載物の重量計測を行うためにアタッチメントに所定の動作を行わせる動作指令を生成するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、作業具の積載物の重量の検出する際に所定の動作を行わせることで、重量の計測精度を安定させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るショベルの側面図である。
図2図2は、実施形態に係るショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、掘削対象範囲を設定する際に表示装置に表示される設定画面の構成例を示した図である。
図4図4は、設定画面で設定された掘削対象範囲にある掘削対象物を掘削するショベルの上面図である。
図5図5は、実施形態に係る自律制御機能の構成例を示すブロック図である。
図6図6は、実施形態に係る、各種指令値を算出する機能要素の構成例を示すブロック図である。
図7図7は、実施形態に係る自律制御機能の別の構成例を示すブロック図である。
図8図8は、実施形態に係るバケットの爪先が移動する軌跡を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
[ショベルの概要]
最初に、図1を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る掘削機としてのショベル100の側面図である。
【0012】
ショベル100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられ、ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
【0013】
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例としての掘削アタッチメントを構成している。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
【0014】
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度(以下、「ブーム角度」とする。)を検出できる。ブーム角度は、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
【0015】
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度(以下、「アーム角度」とする。)を検出できる。アーム角度は、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
【0016】
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度(以下、「バケット角度」とする。)を検出できる。バケット角度は、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
【0017】
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3はそれぞれ、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、ジャイロセンサ、又は、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせ等であってもよい。
【0018】
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R、及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。
【0019】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。
【0020】
上部旋回体3には運転室であるキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、コントローラ30、表示装置40、入力装置42、音出力装置43、記憶装置47、向き検出装置D1、測位装置P1、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、撮像装置S6、及び通信装置T1が取り付けられている。上部旋回体3には、電力を供給する蓄電部、及び、エンジン11の回転駆動力を用いて発電する電動発電機等が搭載されていてもよい。蓄電部は、例えば、キャパシタ又はリチウムイオン電池等である。電動発電機は、発電機として機能して電気負荷に電力を供給してもよく、電動機として機能してエンジン11の回転をアシストしてもよい。
【0021】
コントローラ30は、ショベル100の駆動制御を行う主制御部として機能する。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM、及びROM等を含むコンピュータで構成されている。コントローラ30の各種機能は、例えば、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。各種機能は、例えば、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100の手動操作を自律的に支援するマシンコントロール機能等を含んでいてもよい。
【0022】
表示装置40は、各種情報を表示するように構成されている。表示装置40は、CAN等の通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよく、専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0023】
入力装置42は、操作者が各種情報をコントローラ30に入力できるように構成されている。入力装置42は、例えば、キャビン10内に設置されたタッチパネル、マイクロフォン、ノブスイッチ、及びメンブレンスイッチ等の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0024】
音出力装置43は、音を出力するように構成されている。音出力装置43は、例えば、コントローラ30に接続されるスピーカであってもよく、ブザー等の警報器であってもよい。本実施形態では、音出力装置43は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて各種情報に関する音又は音声を出力するように構成されている。
【0025】
記憶装置47は、各種情報を記憶するように構成されている。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体であってもよい。記憶装置47は、ショベル100の動作中に各種機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に各種機器を介して取得する情報を記憶してもよい。記憶装置47は、例えば、通信装置T1等を介して取得されるデータを記憶していてもよい。
【0026】
向き検出装置D1は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報を検出するように構成されている。向き検出装置D1は、例えば、下部走行体1に取り付けられた地磁気センサと上部旋回体3に取り付けられた地磁気センサとの組み合わせで構成されていてもよい。或いは、向き検出装置D1は、下部走行体1に取り付けられたGNSS受信機と上部旋回体3に取り付けられたGNSS受信機との組み合わせで構成されていてもよい。向き検出装置D1は、ロータリエンコーダ又はロータリポジションセンサ等であってもよい。旋回電動発電機で上部旋回体3が旋回駆動される構成では、向き検出装置D1は、レゾルバで構成されていてもよい。向き検出装置D1は、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する旋回機構2に関連して設けられるセンタージョイントに取り付けられていてもよい。
【0027】
向き検出装置D1は、上部旋回体3に取り付けられたカメラで構成されていてもよい。この場合、向き検出装置D1は、例えば、上部旋回体3に取り付けられているカメラが撮像した画像(入力画像)に既知の画像処理を施す。入力画像に含まれる下部走行体1の画像を認識するためである。そして、向き検出装置D1は、既知の画像認識技術を用いて下部走行体1の画像を認識することで、下部走行体1の長手方向を特定する。そして、向き検出装置D1は、上部旋回体3の前後軸の方向と下部走行体1の長手方向との間に形成される角度を導き出す。上部旋回体3の前後軸の方向は、カメラの取り付け位置から導き出される。特に、下部走行体1を構成するクローラは上部旋回体3から突出しているため、向き検出装置D1は、クローラの画像を検出することで下部走行体1の長手方向を特定できる。このようにして、向き検出装置D1は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報を検出する。この場合、向き検出装置D1は、コントローラ30に統合されていてもよい。
【0028】
測位装置P1は、上部旋回体3の位置を測定するように構成されている。測位装置P1は、上部旋回体3の向きを追加的に測定するように構成されていてもよい。本実施形態では、測位装置P1は、GNSSコンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。そのため、測位装置P1は、上部旋回体3の向きを検出する向き検出装置としても機能し得る。
【0029】
機体傾斜センサS4は、例えば、所定の平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は、水平面に対する上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角及び左右軸回りの傾斜角を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、ショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点で互いに直交する。
【0030】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出するように構成されている。旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角度を検出するように構成されていてもよい。本実施形態では、旋回角速度センサS5は、ジャイロセンサである。旋回角速度センサS5は、レゾルバ又はロータリエンコーダ等であってもよい。
【0031】
撮像装置S6はショベル100の周辺の画像を取得するように構成されている。本実施形態では、撮像装置S6は、ショベル100の前方の空間を撮像する前カメラS6F、ショベル100の左方の空間を撮像する左カメラS6L、ショベル100の右方の空間を撮像する右カメラS6R、及び、ショベル100の後方の空間を撮像する後カメラS6Bを含む。
【0032】
周囲監視装置としての撮像装置S6は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。周囲監視装置としての撮像装置S6は、LIDAR、ステレオカメラ、又は距離画像カメラ等であってもよい。また、撮像装置S6は、撮像装置S6又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。周囲監視装置としてミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等が利用される場合には、ショベル100は、撮像した画像を利用するだけでなく、周囲監視装置から多数の信号(レーザ光等)を物体に向けて発信し、その反射信号を受信することで、反射信号から物体の距離及び方向を導き出してもよい。
【0033】
前カメラS6Fは、例えば、キャビン10の天井、すなわちキャビン10の内部に取り付けられている。但し、キャビン10の屋根又はブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。左カメラS6Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、右カメラS6Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、後カメラS6Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0034】
通信装置T1は、ショベル100の外部にある外部機器との通信を制御するように構成されている。本実施形態では、通信装置T1は、衛星通信網、携帯電話通信網、及びインターネット網等の少なくとも1つを介した外部機器との通信を制御する。
【0035】
図2は、ショベル100の駆動系の構成例を示すブロック図である。図2においては、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御系をそれぞれ二重線、実線、破線、及び点線で示している。
【0036】
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30、燃料タンク55、及びエンジンコントローラユニット(ECU74)等を含む。
【0037】
エンジン11は、ショベルの駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0038】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給するように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0039】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御するように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによって1回転当たりの押し退け容積を増減させてメインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、コントローラ30は、操作圧センサ29等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
【0040】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給するように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。この場合、パイロットポンプ15が担っていた機能は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、コントロールバルブ17に作動油を供給する機能とは別に、絞り等により作動油の圧力を低下させた後で操作装置26等に作動油を供給する機能を備えていてもよい。
【0041】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171~176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。旋回用油圧モータ2Aは、電動アクチュエータとしての旋回用電動発電機であってもよい。この場合、旋回用電動発電機は、蓄電部又は電動発電機から電力の供給を受けてもよい。
【0042】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。本実施形態では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、原則として、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0043】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出するように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0044】
操作圧センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出するように構成されている。本実施形態では、操作圧センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、操作圧センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
【0045】
燃料タンク55は、燃料を収容する容器である。燃料タンク55に収容されている燃料の残量状態は、燃料残量センサ55aによって検出される。燃料残量センサ55aは、燃料の残量状態に関する情報をコントローラ30に対して出力する。
【0046】
ECU74は、エンジン11を制御する装置である。本実施形態では、ECU74は、エンジン11における燃料噴射量、燃料噴射タイミング、及びブースト圧等を制御する。また、ECU74は、エンジン11に関する情報をコントローラ30に対して出力する。
【0047】
次に、コントローラ30が有する機能要素について説明する。本実施形態では、コントローラ30は、取得部31、軌道生成部32、自律制御部33、及び算出部34を機能要素として有している。本実施形態にかかるコントローラ30(制御部の一例)は、ショベル100全体を制御するように構成されている。
【0048】
取得部31は、ショベルに設けられている各種センサ(S1~S6、28、29、55a)からの信号を取得する。例えば、取得部31は、撮像装置S6によりショベル100周辺を撮像した画像を取得する。
【0049】
軌道生成部32は、バケット6(作業具の一例)に積載された積載物を、ダンプトラック(所定の対象物の一例)に積込むために、バケット6(作業具の一例)の所定部位が辿る目標軌道(移動軌道の一例)を生成する。本実施形態に係るバケット6の所定部位は、バケット6の構成であればよく、例えば、バケット6の爪先とする。
【0050】
本実施形態に係る軌道生成部32が生成する目標軌道は、バケット6の積載物の重量を検出するために適した、バケット6の所定部位の移動軌道とする。
【0051】
具体的な例としては、本実施形態に係る軌道生成部32は、バケット6に積載物が搭載された後、上部旋回体3の旋回動作を抑制して、鉛直上方向にブーム4を持ち上げるような目標軌道を生成する。つまり、本実施形態では、バケット6の積載物の重量を算出する間、上部旋回体3の旋回を抑制することで、旋回による重量の計測誤差が生じるのを抑制できる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る軌道生成部32は、鉛直上方向にブーム4を持ち上げている間、水平面とバケット6の開口面が略水平(例えば、水平面に対する開口面の傾きが、5度以下)となった状態を維持するような目標軌道を生成する。本実施形態では、ブーム4を持ち上げている間、バケット6の開口面が略水平の状態を維持することで、バケット6から積載物がこぼれ落ちることを抑制できる。
【0053】
本実施形態に係る軌道生成部32が生成する目標軌道の終点は、積載物の重量の検出が完了した後の位置であればよい。例えば、軌道生成部32は、ブーム4上げが完了するまでの軌道であって、ブーム4上げが完了した後のアタッチメントの操作を操作者に受け渡し可能な目標軌道を生成してもよい。計測が完了した後、操作者が所望する操作を行うことができるので、作業効率の向上を実現できる。
【0054】
また、軌道生成部32は、ダンプトラックへの積み込みが完了するまでの目標軌道を生成してよい。当該目標軌道を生成するために、軌道生成部32は、取得部31が取得したショベル100周辺を撮像した画像から、ダンプトラックの位置及び高さを抽出してもよい。そして、軌道生成部32は、抽出したダンプトラックの位置及び高さに基づいて、バケット6の積載物を、ダンプトラックに積み込みが完了するまでの目標軌道を生成してもよい。この場合、操作者による積み込むための操作負担を軽減できる。
【0055】
自律制御部33は、アクチュエータを自律的に動作させることで操作者によるショベル100の手動操作を自律的に支援するために、ショベル100の各構成を制御する動作指令を生成し、生成した動作指令を出力する。例えば、自律制御部33は、操作者が手動でアーム閉じ操作を行っている場合に、バケット6の爪先の軌道が目標軌道と一致するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを自律的に伸縮させるような動作指令を出力する。この場合、操作者は、例えば、ブーム操作レバーを開き方向に操作するだけで、バケット6の爪先の軌道を目標軌道に一致させながら、爪先の移動速度を所定速度に制限して、ブーム4の持ち上げ制御が可能となる。これら自律制御するための動作指令の出力は、入力装置42の1つである所定のスイッチが押下された場合に出力されるように構成されていてもよい。所定のスイッチは、例えば、マシンコントロールスイッチ(以下、「MCスイッチ」とする。)であり、ノブスイッチとして操作装置26の先端に配置されていてもよい。なお、所定速度は、バケット6の積載物の重量計測を行うために適切な速度として、実施態様に応じて定められた速度とする。
【0056】
本実施形態では、自律制御部33は、動作指令を出力して、各アクチュエータに対応する制御弁に作用するパイロット圧を個別に且つ自律的に調整することで各アクチュエータを自律的に動作させることができる。
【0057】
本実施形態に係る自律制御部33は、目標軌道に従ってバケット6の爪先が移動している間に、バケット6の積載物の重量計測を行うためにアタッチメントに所定の動作を行わせる動作指令を生成する。
【0058】
本実施形態における、アタッチメントに行わせる所定の動作としては、例えば、ブーム4の持ち上げが開始されてから、バケット6の積載物の重量計測が終了するまで、バケット6の爪先の移動速度が、所定速度を維持させる動作とする。つまり、自律制御部33は、移動速度を所定速度に制限するような動作指令を生成することで、重量計測が終了するまでの間、バケット6の状態を安定させることができる。
【0059】
つまり、バケット6の爪先の移動速度を、所定速度に維持させる動作指令を生成することで、バケット6の爪先の加速度が、所定の加速度より小さくさせた状態が維持される。これにより、加速度による重量の計測誤差が生じるのを抑制される。さらに、重量の計測を行う際に、シリンダ圧センサの出力により、実際のアタッチメントで加減速が生じているか検出を行ってもよい。例えば、積載物の重量を計測する際に、バケット6を移動させているブーム4及びアーム5各々の加速度が、所定の角加速度(例えば±0.07rad/sec2)より小さいか否かの判定を行ってもよい。当該判定条件を満たした場合に、積載物の重量を計測することで計測誤差が生じることを抑制できる。なお、所定の加速度、及び所定の角加速度は、実施態様に応じて定められる値であって、当該実施態様において重量の計測誤差が含まれないような値であればよい。
【0060】
算出部34は、ブーム4の持ち上げによってバケット6の爪先が所定速度で目標軌道を移動している間に、シリンダ圧センサの出力に基づき、バケット6に取り込まれた積載物の重量を算出する。積載物の重量を算出するタイミングは、ブーム4の持ち上げによってバケット6が所定速度で移動している間であればよく、例えば、バケット6が地面から離れて、所定の高さにたどり着いたタイミングであってもよい。
【0061】
次に、図3及び図4を参照し、コントローラ30が1回の掘削動作による掘削重量を制御する処理について説明する。図3は、掘削対象範囲R1を設定する際に表示装置40に表示される設定画面GMの構成例を示す。図4は、設定画面GMで設定された掘削対象範囲R1にある掘削対象物BKを掘削するショベル100の上面図である。図4では、ショベル100は、掘削対象物BKを掘削してバケット6内に取り込んだ被掘削物をダンプトラックDTの荷台に積み込んでいる。ダンプトラックDTの荷台に積み込まれている被掘削物EX1は1回目の掘削動作で掘削された被掘削物に対応し、被掘削物EX2は2回目の掘削動作で掘削された被掘削物に対応している。
【0062】
掘削対象範囲R1は、ショベル100の周囲に設定される範囲である。掘削対象範囲R1は、例えば、深さ制限のある立体的な範囲である。掘削アタッチメントによる掘削の対象である掘削対象物BKは、例えば、地山、盛土、表土、又は堆積物等の地物である。掘削対象物BKは、ダンプトラックDTへの積み込みのために寄せ集められた被掘削物EXによって形成される土砂山であってもよい。反対に、掘削対象範囲R1の外側にある地物は、バケット6(掘削アタッチメントの一例)による掘削の対象とはならない。そのため、自律制御部33によってバケット6が動かされるときに、掘削対象範囲R1の外にある地物が掘削されることはない。
【0063】
掘削対象範囲R1が設定される実施形態では、軌道生成部32が、掘削対象範囲R1内の位置を始点として目標軌道を生成するように構成されている。そのため、コントローラ30は、情報取得装置の出力に基づいて掘削対象範囲R1内の地形を検出する。図3及び図4に示す例では、カメラ、レーダ、及びLIDAR等の少なくとも1つの出力に基づいて掘削対象範囲R1内の地形を検出する。
【0064】
コントローラ30は、例えば、MCスイッチが押下されたときに、図3に示す設定画面GMを表示装置40に表示させる。設定画面GMは、ショベル図形G1及びダンプ図形G2を含む。
【0065】
ショベル図形G1は、上部旋回体3の位置及び向きを表す図形である。ダンプ図形G2は、ダンプトラックDTの位置及び向きを表す図形である。コントローラ30は、例えば、向き検出装置D1、測位装置P1、及び撮像装置S6等の出力に基づいてショベル100とダンプトラックDTとの位置関係を把握し、その位置関係に対応するようにショベル図形G1及びダンプ図形G2を表示させる。
【0066】
ショベル図形G1の周囲には周囲画像が表示されていてもよい。図3の例では、周囲画像は、後カメラS6B、前カメラS6F、左カメラS6L、及び右カメラS6Rのそれぞれが撮像した画像に視点変換処理を施して生成される合成画像としての俯瞰画像である。但し、周囲画像は、コンピュータグラフィックスであってもよい。
【0067】
ショベル100の操作者は、設定画面GMを見ながら、入力装置42を用いて掘削対象範囲R1を設定してもよい。図3の例では、操作者は、入力装置42としてのタッチパネルを用い、ショベル図形G1の左側に範囲図形G3を設定している。範囲図形G3は、掘削対象範囲R1を表す図形である。具体的には、操作者は、ピンチアウト操作によって所望のサイズの範囲図形G3を設定している。操作者は、タップ操作によって範囲図形G3を設定してもよい。この場合、範囲図形G3は、例えば、タップ操作された点を中心とする所定サイズの範囲として設定される。
【0068】
図3の例では、範囲図形G3は、矩形であるが、円形又は楕円形等の他の形状であってもよい。また、範囲図形G3は、複雑な輪郭を有する図形であってもよい。この場合、操作者は、例えば、タッチパネル上で所望の範囲の輪郭をなぞることでその範囲に対応する範囲図形G3を設定してもよい。
【0069】
操作者は、設定画面GMに予め表示されている複数の範囲図形から1つの範囲図形を選択してもよい。また、操作者は、互いに独立している複数の掘削対象範囲に対応する複数の範囲図形を選択してもよい。この場合、掘削対象範囲内の掘削対象物は、選択された順で掘削されていてもよい。例えば、最初に選択された範囲図形に対応する掘削対象範囲内にある掘削対象物が最初に掘削されてもよい。
【0070】
コントローラ30は、例えば、MCスイッチが押下される度に、上述のようにして設定された掘削対象範囲R1内で目標軌道を設定し、バケット6の爪先を掘削開始地点の上に移動させる。そして、コントローラ30は、アーム操作レバーが手動で操作されると、バケット6の爪先が土砂等をバケット内に収納するようにブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の少なくとも1つを伸縮させる。
【0071】
また、軌道生成部32は、バケット6の爪先が土砂等をバケット内に収納するような目標軌道を生成してもよい。図4の例では、軌道生成部32は、掘削対象範囲R1の地面と、ショベル100が位置する平面を含む仮想平面とが面一となるように目標軌道を生成する。但し、軌道生成部32は、ショベル100が位置する平面を含む仮想平面に対して掘削対象範囲R1の地面の深さが所定の深さとなるように目標軌道を生成してもよい。また、軌道生成部32は、ショベル100が位置する平面を含む仮想平面に対する掘削対象範囲R1の地面の傾斜角度が所定角度となるように目標軌道を設定してもよい。
【0072】
このように、本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるアタッチメントと、制御装置としてのコントローラ30と、を備えている。コントローラ30は、掘削が開始される前の地形に関する情報に基づいてバケット6の所定部位が辿る軌道である目標軌道を設定する軌道生成部32を有する。この構成により、ショベル100は、例えば、土砂等の被掘削物をバケット6内に取り込むための操作負担を軽減できる。
【0073】
以上、実施形態について詳説した。しかしながら、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0074】
例えば、ショベル100は、以下に示すような自律制御機能を実行して掘削動作等の複合操作を自律的に実行してもよい。図5は、自律制御機能の構成例を示すブロック図である。図5の例では、コントローラ30は、自律制御の実行に関する機能要素FA~FD及びF1~F6を有する。機能要素は、ソフトウェアで構成されていてもよく、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。
【0075】
本実施形態においては、機能要素FA、FB、F1は、軌道生成部32の一部機能とし、機能要素F3~F6は、自律制御部33の一部機能とし、機能要素FC~FEは、算出部34の一部機能とする。
【0076】
機能要素FAは、地形を計測するように構成されている。図5の例では、機能要素FAは、周囲監視装置としての撮像装置S6が撮像した画像に基づき、ショベル100の周囲にある地形の最新の状態を計測する。
【0077】
周囲監視装置は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知するように構成されている。物体は、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、壁、柵、穴、ヘルメット、安全ベスト、作業服、又は、ヘルメットにおける所定のマーク等である。周囲監視装置は、ミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等であってもよい。
【0078】
周囲監視装置は、ショベル100の周囲に設定された所定領域内の所定物体を検知するように構成されていてもよい。すなわち、周囲監視装置は、物体の種類、位置、及び形状等の少なくとも1つを識別できるように構成されていてもよい。例えば、周囲監視装置は、人と人以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。また、周囲監視装置は、周囲監視装置又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されてもよい。
【0079】
機能要素FBは、ダンプトラックDTを検知するように構成されている。図5の例では、機能要素FBは、撮像装置S6が撮像した画像に基づいてダンプトラックDTを検知する。
【0080】
機能要素F1は、目標軌道を生成するように構成されている。図5の例では、機能要素F1は、入力装置42を介して入力された自律動作に関する情報と、機能要素FAが計測した現在の地形と、機能要素FBが検知したダンプトラックDTの位置及び高さと、に基づいてバケット6の爪先が辿るべき軌道を目標軌道として生成する。自律動作に関する情報は、例えば、積載物の重量の検出が完了した後の自律制御を行うか否かに関する情報である。自律動作に関する情報は、例えば、積載物の重量の検出が完了した後の操作者に操作を受け渡す等とする。つまり、機能要素F1は、自律動作に関する情報に基づいて、積載物の重量の検出と共にブーム4上げが完了するまでの目標軌道を生成してもよいし、ダンプトラックDTに積載物を積み込むまでの目標軌道を生成してもよい。
【0081】
機能要素F1は、典型的には、各回の掘削動作が開始される前に、目標軌道を算出するように構成されている。すなわち、目標軌道は、典型的には、各回の掘削動作が開始される前に更新される。具体的には、目標軌道の始点である掘削開始位置の座標、及び、目標軌道の終点であるブーム4上げの完了位置の座標は、各回の掘削動作が開始される前に更新される。
【0082】
機能要素F1は、生成した目標軌道に関する画像を表示装置40に表示させるように構成されていてもよい。ショベル100の操作者は、ブーム4上げによる現在のバケット6の爪先の高さを見ることで、操作者に操作が受け渡される状態か否かを容易に把握できる。
【0083】
機能要素F1は、後方監視画像及び周囲監視画像の少なくとも一方とともに目標軌道に関する画像を表示装置40に表示させてもよい。後方監視画像は、ショベル100の後方を操作者が監視できるようにするための画像であり、例えば、後カメラS6Bが撮像した画像に基づいて生成される。周囲監視画像は、ショベル100の周囲を操作者が監視できるようにするための画像であり、例えば、後カメラS6B、左カメラS6L、及び右カメラS6Rのそれぞれが撮像した画像を合成して生成される視点変換画像としての俯瞰画像である。俯瞰画像は、典型的には、ショベル100の周囲を真上の仮想視点から見たときの様子を示す画像である。機能要素F1は、例えば、後方監視画像及び周囲監視画像の少なくとも一方に隣接するように目標軌道に関する画像を表示装置40に表示させてもよい。
【0084】
或いは、機能要素F1は、エンジン回転数モード、走行モード、アタッチメントの種類、及びエンジン制御状態等の少なくとも1つに関する情報であるショベル100の設定状態に関する情報とともに、目標軌道に関する画像を表示装置40に表示させてもよい。或いは、機能要素F1は、尿素水残量、燃料残量、冷却水温、エンジン稼働時間、及び累積稼動時間等の少なくとも1つに関する情報であるショベルの運転状態に関する情報とともに、目標軌道に関する画像を表示装置40に表示させてもよい。
【0085】
機能要素F2は、現在の爪先位置を算出するように構成されている。図5の例では、機能要素F2は、ブーム角度センサS1が検出したブーム角度β1と、アーム角度センサS2が検出したアーム角度β2と、バケット角度センサS3が検出したバケット角度β3と、旋回角速度センサS5が検出した旋回角度α1とに基づき、バケット6の爪先の座標点を現在の爪先位置として算出する。機能要素F2は、現在の爪先位置を算出する際に、機体傾斜センサS4の出力を利用してもよい。
【0086】
機能要素F3は、次の爪先位置を算出するように構成されている。図5の例では、機能要素F3は、操作圧センサ29が出力する操作データと、機能要素F1が生成した目標軌道と、機能要素F2が算出した現在の爪先位置とに基づき、所定時間後の爪先位置を目標爪先位置として算出する。
【0087】
機能要素F3は、現在の爪先位置と目標軌道との間の乖離が許容範囲内に収まっているか否かを判定してもよい。図5の例では、機能要素F3は、現在の爪先位置と目標軌道との間の距離が所定値以下であるか否かを判定する。そして、機能要素F3は、その距離が所定値以下である場合、乖離が許容範囲内に収まっていると判定し、目標爪先位置を算出する。一方で、機能要素F3は、その距離が所定値を上回っている場合、乖離が許容範囲内に収まっていないと判定し、レバー操作量とは無関係に、アクチュエータの動きを減速させ或いは停止させる。
【0088】
機能要素F4は、爪先の速度に関する指令値を生成するように構成されている。図5の例では、機能要素F4は、機能要素F2が算出した現在の爪先位置と、機能要素F3が算出した次の爪先位置とに基づき、所定時間で現在の爪先位置を次の爪先位置に移動させるために必要な爪先の速度を爪先の速度に関する指令値として算出する。
【0089】
機能要素F5は、爪先の速度に関する指令値を制限するように構成されている。図5の例では、機能要素F5は、算出された指令値で示された速度が、所定速度以上の場合には、所定速度になるよう指令値を制限する。機能要素F5は、機能要素FEから積載物の重量の算出完了のする旨が入力された場合には、指令値の制限を終了する。このようにして、コントローラ30は、積載物の重量の算出が完了するまで爪先の速度が所定速度に維持されるよう制御できる。さらに、爪先の速度が所定速度に維持されるので、爪先の加速度が所定の加速度以上になることが抑制される。つまり、図5に示される例では、機能要素F5が、操作者からの操作に従ってブーム4の持ち上げが開始されてから、バケット6の積載物の重量計測が終了するまで、バケット6の爪先の移動速度が、所定速度を維持させるよう半自動制御を行う。
【0090】
具体的には、機能要素F5は、ブーム4の持ち上げ時に、爪先の速度が所定速度以下になるように、ブーム4の回転速度を制御する。なお、機能要素F5は、ブーム4の回転速度の制御のみを制限するものではなく、アーム5の回転速度も、アーム5のために定められた速度以下になるように制御を行ってもよい。これによりアーム5の開閉によるダンプトラックDTへの当接を抑制できる。
【0091】
機能要素F6は、アクチュエータを動作させる動作指令の指令値を算出するように構成されている。図5の例では、機能要素F6は、現在の爪先位置を目標爪先位置に移動させるために、機能要素F3が算出した目標爪先位置に基づき、ブーム角度β1に関する指令値β1r、アーム角度β2に関する指令値β2r、バケット角度β3に関する指令値β3r、及び旋回角度α1に関する指令値α1rを算出する。機能要素F6は、ブーム4が操作されていないときであっても、必要に応じて指令値β1rを算出する。これは、ブーム4を自動的に動作させるためである。アーム5、バケット6、及び旋回機構2についても同様である。
【0092】
機能要素FCは、ブーム4の状態を判定するように構成されている。図5の例では、機能要素FCは、積載物を積載したバケット6が地面から離れて所定の高さまでブーム4が上昇したか否かを判定する。
【0093】
具体的には、機能要素FCは、後述の機能要素F2によって算出されるバケット6の現在の爪先位置に基づき、被掘削物を取り込んだバケット6が地面から離れて所定の高さまでブーム4が上昇したか否かを判定する。機能要素FCは、撮像装置S6が撮像した画像に基づき、被掘削物を取り込んだバケット6が地面から離れて所定の高さまでブーム4が上昇したか否かを判定してもよい。
【0094】
機能要素FDは、バケット6の速度、及び加速度の状態を判定するように構成されている。図5の例では、機能要素FDは、シリンダ圧センサの出力に基づいて、アタッチメントの先端に設けてあるバケット6の爪先の速度が、所定速度以下であるか否かを判定する。さらに、機能要素FDは、シリンダ圧センサの出力に基づいて、ブーム4及びアーム5各々の加速度が、所定の閾値(例えば±0.07rad/sec2)より小さいか否かを判定する。
【0095】
機能要素FEは、バケット6に取り込まれた積載物の重量を算出するように構成されている。図5の例では、機能要素FEは、積載物を取り込んだバケット6が地面から離れて所定の高さまでブーム4が上昇したと機能要素FCが判定すると共に、バケット6の爪先の速度が所定速度以下であり且つブーム4及びアーム5各々の加速度が所定の閾値より小さいと機能要素FDが判定した場合、シリンダ圧センサの出力に基づき、バケット6に取り込まれた積載物の重量を算出する。機能要素FDは、後述の機能要素F2によって算出される掘削アタッチメントの姿勢と、バケット6の爪先の速度及びブーム4及びアーム5の加速度と、シリンダ圧センサの出力と、に基づき、バケット6に取り込まれた積載物の重量を算出してもよい。
【0096】
図5で示される例では、操作圧センサ29が検出した操作装置26の操作に従って、ブーム4上げの制御が行われている間に、バケット6の積載物の重量を検出する例について説明した。図5で示される例では、積載物の重量の検出が完了して、指令値の制限が終了した後に行われる制御は、どのような制御であってもよく、コントローラ30は、操作者に操作を受け渡してもよいし、ダンプトラックDTに積載物を積み込むまで自律制御を行ってもよい。また、図5で示される例では、操作圧センサ29が検出した操作装置26の操作に制限するものではなく、通信装置T1を介して入力された操作に従って、ブーム4上げの制御が行われている間に、バケット6の積載物の重量を検出してもよい。このように、図5に示される構成を、遠隔操作に適用してもよい。
【0097】
次に、図6を参照し、機能要素F6の詳細について説明する。図6は、各種指令値を算出する機能要素F6の構成例を示すブロック図である。
【0098】
コントローラ30は、図6に示すように、指令値の生成に関する機能要素F11~F13、F21~F23、F31~F33、及びF50を更に有する。機能要素は、ソフトウェアで構成されていてもよく、ハードウェアで構成されていてもよく、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせで構成されていてもよい。
【0099】
機能要素F11~F13は、指令値β1rに関する機能要素であり、機能要素F21~F23は、指令値β2rに関する機能要素であり、機能要素F31~F33は、指令値β3rに関する機能要素であり、機能要素F41~F43は、指令値α1rに関する機能要素である。
【0100】
機能要素F11、F21、F31、及びF41は、アクチュエータ制御機構に対して出力される電流指令を生成するように構成されている。本実施形態では、機能要素F11は、ブーム制御機構31Cに対してブーム電流指令を出力し、機能要素F21は、アーム制御機構31Aに対してアーム電流指令を出力し、機能要素F31は、バケット制御機構31Dに対してバケット電流指令を出力し、機能要素F41は、旋回制御機構31Bに対して旋回電流指令を出力する。
【0101】
ブーム制御機構31Cは、ブームシリンダパイロット圧指令に対応する制御電流に応じたパイロット圧をブーム制御弁としての制御弁175に対して作用させることができるように構成されている。
【0102】
アーム制御機構31Aは、アームシリンダパイロット圧指令に対応する制御電流に応じたパイロット圧をアーム制御弁としての制御弁176に対して作用させることができるように構成されている。
【0103】
バケット制御機構31Dは、バケットシリンダパイロット圧指令に対応する制御電流に応じたパイロット圧をバケット制御弁としての制御弁174に対して作用させることができるように構成されている。
【0104】
旋回制御機構31Bは、旋回用油圧モータパイロット圧指令に対応する制御電流に応じたパイロット圧を旋回制御弁としての制御弁173に対して作用させることができるように構成されている。
【0105】
機能要素F12、F22、F32、及びF42は、スプール弁を構成するスプールの変位量を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F12は、ブームスプール変位センサS7の出力に基づき、ブームシリンダ7に関する制御弁175を構成するブームスプールの変位量を算出する。機能要素F22は、アームスプール変位センサS8の出力に基づき、アームシリンダ8に関する制御弁176を構成するアームスプールの変位量を算出する。機能要素F32は、バケットスプール変位センサS9の出力に基づき、バケットシリンダ9に関する制御弁174を構成するバケットスプールの変位量を算出する。機能要素F42は、旋回スプール変位センサS2Aの出力に基づき、旋回用油圧モータ2Aに関する制御弁173を構成する旋回スプールの変位量を算出する。なお、ブームスプール変位センサS7は、制御弁175を構成するスプールの変位量を検出するセンサである。アームスプール変位センサS8は、制御弁176を構成するスプールの変位量を検出するセンサである。バケットスプール変位センサS9は、制御弁174を構成するスプールの変位量を検出するセンサである。そして、旋回スプール変位センサS2Aは、制御弁173を構成するスプールの変位量を検出するセンサである。
【0106】
機能要素F13、F23、F33、及びF43は、作業体の回動角度を算出するように構成されている。本実施形態では、機能要素F13は、ブーム角度センサS1の出力に基づき、ブーム角度β1を算出する。機能要素F23は、アーム角度センサS2の出力に基づき、アーム角度β2を算出する。機能要素F33は、バケット角度センサS3の出力に基づき、バケット角度β3を算出する。機能要素F43は、旋回角速度センサS5の出力に基づき、旋回角度α1を算出する。
【0107】
具体的には、機能要素F11は、基本的に、機能要素F6が生成した指令値β1rと機能要素F13が算出したブーム角度β1との差がゼロになるように、ブーム制御機構31Cに対するブーム電流指令を生成する。その際に、機能要素F11は、ブーム電流指令から導き出される目標ブームスプール変位量と機能要素F12が算出したブームスプール変位量との差がゼロになるように、ブーム電流指令を調節する。そして、機能要素F11は、その調節後のブーム電流指令をブーム制御機構31Cに対して出力する。
【0108】
ブーム制御機構31Cは、ブーム電流指令に応じて開口面積を変化させ、その開口面積の大きさに対応するパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。制御弁175は、パイロット圧に応じてブームスプールを移動させ、ブームシリンダ7に作動油を流入させる。ブームスプール変位センサS7は、ブームスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F12にフィードバックする。ブームシリンダ7は、作動油の流入に応じて伸縮し、ブーム4を上下動させる。ブーム角度センサS1は、上下動するブーム4の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F13にフィードバックする。機能要素F13は、算出したブーム角度β1を機能要素F4にフィードバックする。
【0109】
機能要素F21は、基本的に、機能要素F6が生成した指令値β2rと機能要素F23が算出したアーム角度β2との差がゼロになるように、アーム制御機構31Aに対するアーム電流指令を生成する。その際に、機能要素F21は、アーム電流指令から導き出される目標アームスプール変位量と機能要素F22が算出したアームスプール変位量との差がゼロになるように、アーム電流指令を調節する。そして、機能要素F21は、その調節後のアーム電流指令をアーム制御機構31Aに対して出力する。
【0110】
アーム制御機構31Aは、アーム電流指令に応じて開口面積を変化させ、その開口面積の大きさに対応するパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。制御弁176は、パイロット圧に応じてアームスプールを移動させ、アームシリンダ8に作動油を流入させる。アームスプール変位センサS8は、アームスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F22にフィードバックする。アームシリンダ8は、作動油の流入に応じて伸縮し、アーム5を開閉させる。アーム角度センサS2は、開閉するアーム5の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F23にフィードバックする。機能要素F23は、算出したアーム角度β2を機能要素F4にフィードバックする。
【0111】
機能要素F31は、基本的に、機能要素F6が生成した指令値β3rと機能要素F33が算出したバケット角度β3との差がゼロになるように、バケット制御機構31Dに対するバケット電流指令を生成する。その際に、機能要素F31は、バケット電流指令から導き出される目標バケットスプール変位量と機能要素F32が算出したバケットスプール変位量との差がゼロになるように、バケット電流指令を調節する。そして、機能要素F31は、その調節後のバケット電流指令をバケット制御機構31Dに対して出力する。
【0112】
バケット制御機構31Dは、バケット電流指令に応じて開口面積を変化させ、その開口面積の大きさに対応するパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。制御弁174は、パイロット圧に応じてバケットスプールを移動させ、バケットシリンダ9に作動油を流入させる。バケットスプール変位センサS9は、バケットスプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F32にフィードバックする。バケットシリンダ9は、作動油の流入に応じて伸縮し、バケット6を開閉させる。バケット角度センサS3は、開閉するバケット6の回動角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F33にフィードバックする。機能要素F33は、算出したバケット角度β3を機能要素F4にフィードバックする。
【0113】
機能要素F41は、基本的に、機能要素F6が生成した指令値α1rと機能要素F43が算出した旋回角度α1との差がゼロになるように、旋回制御機構31Bに対する旋回電流指令を生成する。その際に、機能要素F41は、旋回電流指令から導き出される目標旋回スプール変位量と機能要素F42が算出した旋回スプール変位量との差がゼロになるように、旋回電流指令を調節する。そして、機能要素F41は、その調節後の旋回電流指令を旋回制御機構31Bに対して出力する。なお、機能要素F6が生成した指令値α1rと機能要素F43が算出した旋回角度α1との差は、機能要素F41に入力される前に、制限部F50によって制限される場合がある。
【0114】
制限部F50は、機能要素F13が算出したブーム角度β1に基づき、ブーム4が所定の高さ(角度)まで上昇しているか否かを判定するように構成されている。そして、制限部F50は、ブーム4が所定の高さ(角度)まで上昇していないと判定した場合、機能要素F41に対して出力される差である指令値α1rと旋回角度α1との差を所定値以下に制限するように構成されている。ブーム4が十分に上昇していない段階で上部旋回体3が急旋回されてしまうのを防止するためである。
【0115】
旋回制御機構31Bは、旋回電流指令に応じて開口面積を変化させ、その開口面積の大きさに対応するパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。制御弁173は、パイロット圧に応じて旋回スプールを移動させ、旋回用油圧モータ2Aに作動油を流入させる。旋回スプール変位センサS2Aは、旋回スプールの変位を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F42にフィードバックする。旋回用油圧モータ2Aは、作動油の流入に応じて回転し、上部旋回体3を旋回させる。旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角度を検出し、その検出結果をコントローラ30の機能要素F43にフィードバックする。機能要素F43は、算出した旋回角度α1を機能要素F4にフィードバックする。
【0116】
上述のように、コントローラ30は、作業体毎に、3段のフィードバックループを構成している。すなわち、コントローラ30は、スプール変位量に関するフィードバックループ、作業体の回動角度に関するフィードバックループ、及び、爪先位置に関するフィードバックループを構成している。そのため、コントローラ30は、自律制御の際に、バケット6の爪先の動きを高精度に制御できる。
【0117】
次に、図7を参照し、自律制御機能の別の構成例について説明する。図7は、自律制御機能の別の構成例を示すブロック図である。図7に示す構成は、自動運転式の無人ショベルを動作させるための機能要素を含む点で、手動運転式の有人ショベルを動作させるための機能要素を含む図5に示す構成と異なる。具体的には、図7に示す構成は、操作圧センサ29の出力ではなく通信装置T1の出力に基づいて次の爪先位置を算出する点、及び、機能要素FF~FIを有する点で、図5に示す構成と異なる。そのため、以下では、図5に示す構成と共通する部分の説明が省略され、相違部分が詳説される。
【0118】
通信装置T1は、ショベル100とショベル100の外部にある外部機器との間の通信を制御するように構成されている。図7の例では、通信装置T1は、外部機器から受信した信号に基づいて機能要素FFに開始指令を出力するように構成されている。通信装置T1は、外部機器から受信した信号に基づいて機能要素FFに操作データを出力するように構成されていてもよい。但し、通信装置T1は、ショベル100に搭載されている入力装置42であってもよい。
【0119】
機能要素FFは、作業の開始を判定するように構成されている。図7の例では、機能要素FFは、通信装置T1から開始指令を受けた場合に、作業の開始が指示されたと判定し、機能要素FGに対して開始指令を出力するように構成されている。機能要素FFは、通信装置T1から開始指令を受けた場合、周囲監視装置としての撮像装置S6の出力に基づいてショベル100の周囲に物体が存在しないと判定できたときに、機能要素FGに対して開始指令を出力するように構成されていてもよい。機能要素FFは、機能要素FGに対して開始指令を出力する際に、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17とを繋ぐパイロットラインに配置された電磁開閉弁に指令を出力し、そのパイロットラインを開通させてもよい。
【0120】
機能要素FGは、動作の内容を判定するように構成されている。図7の例では、機能要素FGは、機能要素FFから開始指令を受けた場合に、機能要素F2が算出した現在の爪先位置に基づき、掘削動作、ブーム上げ旋回動作、排土動作、及びブーム下げ旋回動作等の何れの動作が現在行われているか、或いは、何れの動作も行われていないかを判定するように構成されている。そして、機能要素FGは、機能要素F2が算出した現在の爪先位置に基づいてブーム下げ旋回動作が終了したと判定した場合、機能要素FHに対して開始指令を出力するように構成されている。
【0121】
機能要素FHは、ショベル100の動作条件を設定するように構成されている。図10の例では、機能要素FHは、機能要素FGから開始指令を受けた場合に、自律制御による掘削動作が行われる際の掘削深さ(深め又は浅め)、掘削長さ等の動作条件を設定するように構成されている。そして、機能要素FHは、動作条件を設定した後で、機能要素FIに対して開始指令を出力するように構成されている。
【0122】
機能要素FIは、所定動作の開始を判定するように構成されている。図7の例では、機能要素FIは、機能要素FHから開始指令を受けた場合に、機能要素F2によって算出される現在のバケット6の爪先位置に基づき、掘削動作を開始させることができるか否かを判定する。具体的には、機能要素FIは、現在の爪先位置に基づき、ブーム下げ旋回動作が終了しているか否か、及び、バケット6の爪先が掘削開始位置に達しているか否か等を判定する。そして、機能要素FIは、ブーム下げ旋回動作が終了しており、且つ、バケット6の爪先が掘削開始位置に達していると判定した場合、掘削動作を開始させることができると判定する。そして、機能要素FIは、掘削動作を開始させることができると判定した場合、自動運転式の無人ショベルにおいて自動的に生成される操作データが機能要素F3に入力されるようにする。
【0123】
そして、機能要素F3~F6は、掘削動作を開始した後、バケット6の爪先が目標軌道に沿って移動するように次の爪先位置を算出から、次の爪先位置まで移動させるための指令値の算出までを繰り返し行うことで、バケット6の積載物をダンプトラックDTに積み込むことができる。
【0124】
この構成により、コントローラ30は、自動運転式の無人ショベルにおいても、手動運転式の有人ショベルにおける場合と同様に、自律制御による掘削動作及び積込動作を実行(いわゆる全自動制御を実現)できる。このように、コントローラ30は、通信装置T1の出力に従うことで遠隔操作を行ってもよい。
【0125】
また、上述の実施形態では、油圧式パイロット回路を備えた油圧式操作システムが開示されている。具体的には、アーム操作レバーに関する油圧式パイロット回路では、パイロットポンプ15からアーム操作レバーのリモコン弁へ供給される作動油が、アーム操作レバーの傾倒によって開閉されるリモコン弁の開度に応じた流量で、アーム制御弁としての制御弁176のパイロットポートへ伝達される。
【0126】
次に本実施形態に係るコントローラ30によって制御されるバケット6が移動する軌跡について説明する。図8は、本実施形態に係るバケット6の爪先が移動する軌跡を示した図である。
【0127】
図8のバケット6Aは、掘削が終了した後の位置を示している。バケット6Aの開口面AP1は、掘削が終了した後に、地面GRと略平行になるようにコントローラ30によって制御される。
【0128】
そして、自律制御部33が、バケット6Aの爪先PT1が目標軌道TR1に沿って移動するように、ブーム4の上げ動作を行う。図8の目標軌道TR1に示されるように、自律制御部33が、ブーム4の上げ動作を行っている間、上部旋回体3による旋回動作が抑制される。上部旋回体3による旋回動作の抑制は、少なくとも積載物の重量を検出するまで行われる。
【0129】
そして、自律制御部33は、目標軌道TR1に沿ってバケット6Bの爪先PT2の位置までブーム4の上げ動作を行う。このように、自律制御部33が、ブーム4の上げ動作を行っている間、開口面AP1、AP2が地面GRと略平行な状態が維持するよう、バケット6を制御する。したがって、バケット6から積載物がこぼれ落ちることを抑制できる。
【0130】
本実施形態では、目標軌道TR1に沿ってバケット6Bの爪先が鉛直上方向に移動している間に、算出部34が、シリンダ圧センサの出力に基づき、バケット6に取り込まれた積載物の重量を算出する。目標軌道TR1に沿ってバケット6Bの爪先が移動している間、所定速度で移動するように制御される。これにより、加速度及び左右方向の旋回に基づいた、積載物の重量の計測誤差が生じることを抑制できる。
【0131】
なお、ブーム4の上げ動作によるバケット6Bの到達点は、ダンプトラックDTの高さHdに応じて定められている。したがって、ブーム4の上げ動作が完了した後、上部旋回体3が旋回動作する場合、目標軌跡TR2に沿ってバケット6C、バケット6Dの順に移動していく。換言すれば、上部旋回体3が旋回動作することで、バケット6DはダンプトラックDTに積み込み可能な位置まで移動できる。
【0132】
上述した実施形態では、作業具として、バケット6を備えた例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、作業具をバケット6に制限するものではなく、物を積載可能な作業具であればよく、例えば、リフティングマグネットを用いてもよい。
【0133】
また、上述した実施形態は、作業機械としてショベル100を用いた例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、作業機械をショベルに制限するものではなく、積載した物体を持ち上げ可能な作業機械であればよい。
【0134】
上述した実施形態では、コントローラ30(制御装置の一例)による制御に従って、バケット6の積載物の重量を計測する場合について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、制御を行うための制御装置をコントローラ30に制限するものではない。例えば、クラウド(制御装置の一例)からの制御に従って、ショベル100バケット6の積載物の重量を計測してもよい。このように、制御装置は、ショベル100内に設ける手法に制限するものではなく、ショベル100の外に設けてもよい。
【0135】
<作用>
上述した実施形態のショベル100(作業機械の一例)によれば、軌道生成部32が、バケット6に積載された積載物をダンプトラック(所定の対象物の一例)に積込む際に、バケット6が移動する目標軌道を生成する。
【0136】
上述した実施形態のショベル100(作業機械の一例)によれば、自律制御部33が、生成された目標軌道に従ってバケット6の爪先が移動している間に、積載物の重量計測を行うためにアタッチメントに所定の動作を行わせる動作指令を生成する。所定の動作は、上述した実施形態では、バケット6の爪先が所定速度で移動させる動作としたが、当該動作に制限するものではなく、予め設定された動作であればよい。つまり、積載物の重量を計測する際に所定の動作を行わせることで、計測する毎に異なる条件で計測されることを抑制して、安定した重量の計測を可能とする。
【0137】
上述した実施形態では、積載物の重量の計測が安定するので、計測誤差を抑制して、重量の計測精度の向上を実現できる。よって、ダンプトラックDTへの積み込まれた物の重量の測定精度を向上させることができる。したがって、作業効率の向上を実現できる。
【0138】
以上、本発明に係る作業機械の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0139】
100 ショベル
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム(アタッチメント)
5 アーム(アタッチメント)
6 バケット(作業具)
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
30 コントローラ
31 取得部
32 軌道生成部
33 自律制御部
34 算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8