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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172575
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】モータ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/16 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H02K15/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090370
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖
(72)【発明者】
【氏名】毒島 順一
(72)【発明者】
【氏名】星野 晃正
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP21
5H615PP24
5H615SS54
(57)【要約】
【課題】出力トルクの低下等を抑えつつ、ロータの回転バランスを調整可能としたモータ装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ロータ33は、回転軸34と、回転軸34に固定されるロータコア33aと、ロータコア33aに固定されるマグネットMGと、回転軸34に固定され、ロータ33の回転バランスを調整する調整部材37と、を備え、回転軸34の軸方向におけるマグネットMGと調整部材37との離間距離L1が、回転軸34の径方向におけるマグネットMGとステータ32との離間距離L2よりも長くなっている(L1>L2)。これにより、ロータ33の回転バランスを調整でき、かつ調整部材37をステータ32よりもマグネットMGから離間させて配置できる。よって、マグネットMGの磁束[Wb]は、調整部材37に向かうことが抑えられ、ステータ32に効率良く向かう。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
を有するモータ装置であって、
前記ロータは、
回転軸と、
前記回転軸に固定されるロータコアと、
前記ロータコアに固定されるマグネットと、
前記回転軸に固定され、前記ロータの回転バランスを調整する調整部材と、
を備え、
前記回転軸の軸方向における前記マグネットと前記調整部材との離間距離が、前記回転軸の径方向における前記マグネットと前記ステータとの離間距離よりも長い、
モータ装置。
【請求項2】
前記調整部材は、複数の鋼板を積層して筒状に形成されている、
請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記調整部材の外径寸法が、前記ロータの外径寸法以下である、
請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記回転軸は、軸方向一側が第1軸受に回転自在に支持され、軸方向他側が第2軸受に回転自在に支持され、軸方向中央部が第3軸受により回転自在に支持されており、
前記調整部材が、前記第3軸受と前記ロータコアとの間に配置されている、
モータ装置。
【請求項5】
ステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
を有するモータ装置の製造方法であって、
前記ロータは、
回転軸と、
前記回転軸に固定されるロータコアと、
前記ロータコアに固定されるマグネットと、
前記回転軸に固定され、前記ロータの回転バランスを調整する調整部材と、
を備え、
前記回転軸に前記ロータコアを固定するロータコア固定工程と、
前記ロータコアに着磁前のマグネット素材を固定するマグネット素材固定工程と、
前記回転軸の軸方向における前記マグネット素材から離れた位置に前記調整部材を固定し、前記調整部材の外周部を削る回転バランス調整工程と、
前記回転バランス調整工程の後に実施され、前記マグネット素材を着磁するマグネット着磁工程と、
を有する、
モータ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータと、ステータに対して回転するロータと、を有するモータ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ステータと、ステータに対して回転するロータと、を備えたブラシレスモータが記載されている。具体的には、ステータの径方向内側に、ロータが隙間を介して回転自在に設けられ、かつロータを形成するロータ鉄心の軸方向両側に、金属製のバランス修正部が設けられている。
【0003】
一対のバランス修正部は、ブッシュを介して回転軸に固定され、かつロータ鉄心の軸方向両側の端面にそれぞれ密着して設けられている。そして、これらのバランス修正部は、ロータ鉄心の内部に設けられた永久磁石の飛び出しを防止する機能と、外周部を部分的に切除することでロータの回転バランスを修正する機能と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-160196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、永久磁石に密着するようにして金属製のバランス修正部が設けられるため、永久磁石が発生する磁束の一部がバランス修正部に向かってしまい、これによりステータ鉄心に向かう磁束が減るという問題を生じていた。すなわち、バランス修正部を設けた結果、ブラシレスモータの出力トルクが低下する等の問題を生じていた。
【0006】
本発明の目的は、出力トルクの低下等を抑えつつ、ロータの回転バランスを調整可能としたモータ装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、ステータと、前記ステータに対して回転するロータと、を有するモータ装置であって、前記ロータは、回転軸と、前記回転軸に固定されるロータコアと、前記ロータコアに固定されるマグネットと、前記回転軸に固定され、前記ロータの回転バランスを調整する調整部材と、を備え、前記回転軸の軸方向における前記マグネットと前記調整部材との離間距離が、前記回転軸の径方向における前記マグネットと前記ステータとの離間距離よりも長い。
【0008】
本発明の他の態様では、ステータと、前記ステータに対して回転するロータと、を有するモータ装置の製造方法であって、前記ロータは、回転軸と、前記回転軸に固定されるロータコアと、前記ロータコアに固定されるマグネットと、前記回転軸に固定され、前記ロータの回転バランスを調整する調整部材と、を備え、前記回転軸に前記ロータコアを固定するロータコア固定工程と、前記ロータコアに着磁前のマグネット素材を固定するマグネット素材固定工程と、前記回転軸の軸方向における前記マグネット素材から離れた位置に前記調整部材を固定し、前記調整部材の外周部を削る回転バランス調整工程と、前記回転バランス調整工程の後に実施され、前記マグネット素材を着磁するマグネット着磁工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出力トルクの低下等を抑制しつつ、ロータの回転バランスを調整可能とした構造を備えたモータ装置およびその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両のルーフに設置されたサンルーフ装置の概要図である。
図2】サンルーフモータの出力ギヤ側を示す斜視図である。
図3】サンルーフモータのカバー部材側を示す斜視図である。
図4】回転軸の軸方向に沿うサンルーフモータの断面図である。
図5】ロータをウォーム側から見た斜視図である。
図6】ロータをロータコア側から見た斜視図である。
図7】ベアリング支持部材をモータ部側から見た斜視図である。
図8】ベアリング支持部材を減速機構部側から見た斜視図である。
図9】ロータの組立手順(1)を説明する図である。
図10】ロータの組立手順(2)を説明する図である。
図11】サンルーフモータの組立手順(1)を説明する図である。
図12】サンルーフモータの組立手順(2)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は車両のルーフに設置されたサンルーフ装置の概要図を、図2はサンルーフモータの出力ギヤ側を示す斜視図を、図3はサンルーフモータのカバー部材側を示す斜視図を、図4は回転軸の軸方向に沿うサンルーフモータの断面図を、図5はロータをウォーム側から見た斜視図を、図6はロータをロータコア側から見た斜視図を、図7はベアリング支持部材をモータ部側から見た斜視図を、図8はベアリング支持部材を減速機構部側から見た斜視図をそれぞれ示している。
【0013】
<サンルーフ装置の概要>
図1に示されるように、サンルーフ装置10は、ルーフパネル11を備えている。ルーフパネル11は、車両12のルーフ13に形成された開口部14を開閉する。ルーフパネル11の車幅方向両側(図1の上下側)には、一対のシュー15a,15bがそれぞれ固定されている。
【0014】
また、ルーフ13における開口部14の車幅方向両側には、車両12の前後方向(図1の左右方向)に延びるガイドレール16がそれぞれ固定されている。そして、一対のシュー15a,15bが、対応する一対のガイドレール16にそれぞれ案内されることで、ルーフパネル11が、車両12の前後方向に移動する。
【0015】
車両12の後方側(図1の右側)に配置されたシュー15bのそれぞれには、ギヤ付きの駆動ケーブル17a,17bの一端が連結されている。これらの駆動ケーブル17a,17bの他端は、開口部14よりも車両12の前方側(図1の左側)に取り回されている。
【0016】
開口部14よりも車両12の前方側で、かつフロントガラスFGとの間のルーフ13の内部には、サンルーフモータ20が設けられている。そして、一対の駆動ケーブル17a,17bの他端は、サンルーフモータ20に設けられた出力ギヤ47aに噛み合わされている。
【0017】
これにより、サンルーフモータ20が駆動されると、一対の駆動ケーブル17a,17bは、互いに逆向きにその長手方向に移動する。したがって、ルーフパネル11は、一対のシュー15bを介して、一対の駆動ケーブル17a,17bにより押し引きされ、開口部14を開閉する。
【0018】
なお、サンルーフモータ20は、本発明におけるモータ装置に相当する。
【0019】
<サンルーフモータ>
図2ないし図4に示されるように、サンルーフモータ20は、電動モータ部30および減速機構部40を備えている。これらの電動モータ部30および減速機構部40は、合計3つの固定ねじSCにより互いに固定されている。
【0020】
<電動モータ部>
電動モータ部30は、ブラシレスモータを採用しており、鋼板等(磁性体)を深絞り加工等することで有底筒状に形成されたモータケース31を有している。モータケース31は、電動モータ部30の外郭を形成しており、断面が略正六角形に形成された側壁部31aを備えている。また、側壁部31aの軸方向一側(図2ないし図4の右側)は、段付きの底壁部31bにより閉塞されている。
【0021】
<ステータ>
図4に示されるように、モータケース31の内部には、ステータ32が収容されている。ステータ32は、複数の薄い鋼板(磁性体)を積層して形成されたステータコア32aを有している。ステータコア32aは、モータケース31に固定され、かつ合計6つのティース32b(詳細図示せず)を備えている。そして、これらのティース32bには、インシュレータ(絶縁部材)32cを介して、U相,V相およびW相からなる三相のコイルCLがそれぞれ巻装されている。
【0022】
<ロータ>
図4ないし図6に示されるように、ステータ32の径方向内側には、所定のエアギャップAGを介して、ロータ33が回転自在に設けられている。ロータ33は、ステータ32に対して回転するものであって、略筒状に形成されたロータコア33aを有している。ロータコア33aは、複数の薄い鋼板(磁性体)を積層して形成され、当該ロータコア33aの径方向外側には、合計4つのマグネットMGが接着剤等により固定されている。具体的には、それぞれのマグネットMGは、ロータコア33aの周方向に等間隔(90°間隔)となるように配置されている。
【0023】
また、ロータコア33aに固定されたそれぞれのマグネットMGの径方向外側は、薄いステンレス板等により略筒状に形成されたマグネットホルダ33bで覆われている。このマグネットホルダ33bは、マグネットMGがロータコア33aから脱落するのを防止するものである。これにより、ロータ33が高速で回転しても、その際の遠心力によりマグネットMGがロータコア33aから外れることがない。
【0024】
<回転軸>
ロータコア33aは、回転軸34に固定されている。具体的には、ロータコア33aの回転中心に、回転軸34が圧入により固定されている。このように、ロータ33は回転軸34を備えており、回転軸34は、十分な強度を確保すべく丸鋼棒製となっている。
【0025】
そして、回転軸34の軸方向一側(図4の右側)は、モータケース31の内部に収容され、かつモータケース31の底壁部31bに装着された第1メタル(ラジアル軸受)BR1により回転自在に支持されている。一方、回転軸34の軸方向他側(図4の左側)は、減速機構部40を形成するハウジング41の内部に収容され、かつハウジング41のウォーム収容部49に装着された第2メタル(ラジアル軸受)BR2により回転自在に支持されている。
【0026】
なお、第1メタルBR1は、本発明における第1軸受に相当し、第2メタルBR2は、本発明における第2軸受に相当する。
【0027】
また、回転軸34の軸方向他側には、減速機構SDを形成するウォーム35が一体に設けられている。すなわち、ウォーム35においても丸鋼棒製となっている。これにより、ウォーム35の剛性が高められてウォーム35は湾曲したりすることがなく、ひいてはウォームホイール46に対して確実に噛み合わされる。
【0028】
<ボールベアリング>
さらに、回転軸34の軸方向中央部には、ボールベアリング36が装着されている。つまり、ボールベアリング36は、回転軸34の軸方向中央部を、回転自在に支持している。回転軸34の軸方向において、マグネットMGが固定されたロータコア33aおよびボールベアリング36は並んで設けられ、ボールベアリング36と第1メタルBR1との間に、マグネットMGが固定されたロータコア33aが配置されている。
【0029】
なお、ボールベアリング36は、本発明における第3軸受に相当する。
【0030】
ボールベアリング36は、第1メタルBR1および第2メタルBR2と同様に、回転軸34を回転自在に支持するもので、鋼材により略筒状に形成されたインナーレース(内輪)36aと、当該インナーレース36aと同様に鋼材により略筒状に形成され、かつインナーレース36aよりも大径となったアウターレース(外輪)36bと、を備えている。また、インナーレース36aとアウターレース36bとの間には、複数のボール(鋼球)36cが設けられている。
【0031】
ここで、インナーレース36aは、回転軸34に対して圧入により固定されている。つまり、インナーレース36aは、回転軸34と共に回転する。また、図4に示されるように、ウォーム35の外径寸法D1は、回転軸34の外径寸法D2よりも小さくなっている(D1<D2)。これにより、ボールベアリング36は、回転軸34の軸方向において、ウォーム35側から回転軸34に対して圧入可能となっている。
【0032】
<センサマグネットユニット>
また、回転軸34の軸方向において、ウォーム35とボールベアリング36との間には、センサマグネットユニットSMUが設けられている。センサマグネットユニットSMUは、回転軸34に対して圧入により固定される筒状のブラケット部材BKと、当該ブラケット部材BKに保持されるセンサマグネットSMと、を有している。ここで、センサマグネットSMは、回転軸34(ロータ33)の回転状態、具体的には回転方向や回転数等を検知するために用いられる。
【0033】
なお、センサマグネットユニットSMUにおいても、ボールベアリング36のインナーレース36aと同様に回転軸34と共に回転する。また、センサマグネットユニットSMUにおいても、回転軸34の軸方向において、ウォーム35側から回転軸34に対して圧入可能となっている。
【0034】
<調整部材>
さらに、回転軸34の軸方向において、ボールベアリング36とロータコア33a(マグネットMG)との間には、ロータ33の回転バランスを調整するために用いられる調整部材37が設けられている。調整部材37は、複数の薄い鋼板(磁性体)37aを積層して略筒状に形成され、回転軸34に対して圧入により固定されている。
【0035】
また、調整部材37の外径寸法D3(図12参照)は、ロータ33の外径寸法D4(図12参照)以下となっている(D3<D4)。ここで、ロータ33の外径寸法D4は、マグネットホルダ33bの最も径方向寸法が大きい部分となっている。
【0036】
調整部材37は、回転軸34の軸方向において、ボールベアリング36とロータコア33aとの間に配置され、かつマグネットMGよりもボールベアリング36の近傍(ボールベアリング36寄りの部分)に配置されている。これにより、図4に示されるように、回転軸34の軸方向においてマグネットMGと調整部材37との間には、比較的長い長さの第1隙間G1が形成されている。
【0037】
ここで、回転軸34の径方向におけるマグネットMGとステータ32との間には、比較的短い長さの第2隙間G2が形成されている。そして、回転軸34の軸方向におけるマグネットMGと調整部材37との離間距離L1を比較する比較対象を、回転軸34の径方向におけるマグネットMGとステータ32との離間距離L2としたときに、離間距離L1は離間距離L2よりも長くなっている(L1>L2)。具体的には、離間距離L1は離間距離L2の「約7倍」となっている(L1≒L2×7)。
【0038】
このように、調整部材37を、ステータ32よりもマグネットMGから離間させて配置することで、合計4つのマグネットMGの磁束[Wb]が、調整部材37に向かうことを抑制している。言い換えれば、それぞれのマグネットMGの磁束[Wb]を、ステータ32に効率良く向かうようにしている。したがって、ボールベアリング36とマグネットMGとの間に、磁性体からなる調整部材37を設けても、サンルーフモータ20の出力トルクの低下等が抑制される。
【0039】
なお、調整部材37は、製品毎に異なる回転軸34の微小な歪みや、回転軸34の回転中心とロータコア33aの回転中心との微小な位置ズレ等に起因したロータ33の回転ブレを抑える機能を有する。具体的には、ロータ33を組み立て時において、当該ロータ33を回転させつつ、調整部材37の外周を部分的に削ることで、ロータ33の回転バランスを最適化する(回転ブレ抑制)。
【0040】
これにより、サンルーフモータ20の作動音を小さくすることが可能となる(静粛性向上)。特に、サンルーフモータ20は、運転者や同乗者の頭上に配置されるため、作動音が大きいと耳障りとなる。よって、サンルーフモータ20においては、より静粛性を向上させる必要がある。なお、ロータ33の回転バランスの調整を含む、ロータ33の組立手順については、後で詳述する。
【0041】
<ベアリング支持部材>
さらに、電動モータ部30は、図4図7および図8に示されるように、ベアリング支持部材38を備えている。ベアリング支持部材38は、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成されている。ベアリング支持部材38は、略平板状に形成された支持本体38aと、ハウジング41に入り込む複数の壁部38bと、を備えている。つまり、ベアリング支持部材38は、ハウジング41に装着される部品となっている。
【0042】
ベアリング支持部材38の支持本体38aには、環状支持部38cが一体に設けられている。環状支持部38cは、回転軸34の軸方向他側(図4の左側)に向けられた環状平坦面38dを備え、当該環状平坦面38dは、ボールベアリング36のアウターレース36bに対して、その軸方向一側(図4の右側)から接している。つまり、環状支持部38cは、アウターレース36bの軸方向一側の全周を支持している。なお、アウターレース36bの軸方向他側(図4の左側)は、ハウジング41に設けられたベアリング装着部50により支持されている。
【0043】
このように、ボールベアリング36のアウターレース36bは、回転軸34の軸方向において、ハウジング41とベアリング支持部材38との間に挟持されている。ここで、ベアリング支持部材38は、合計3つの固定ねじSCによりモータケース31をハウジング41に固定することで、ハウジング41の内部でがたつくことなく固定される。つまり、ベアリング支持部材38は、回転軸34の軸方向において、アウターレース36bとモータケース31との間に挟持されている。
【0044】
また、環状支持部38cには、合計3つの位置決め突起38eが一体に設けられている。これらの位置決め突起38eは、環状支持部38cの周方向に延び、略円弧状に形成されている。また、これらの位置決め突起38eは、環状支持部38cの周方向に等間隔(120度間隔)で配置されている。さらに、それぞれの位置決め突起38eは、環状支持部38cから軸方向他側(図4の左側)に突出されている。そして、合計3つの位置決め突起38eの内側には、ボールベアリング36のアウターレース36bが接触して入り込んでいる。
【0045】
これにより、サンルーフモータ20の組立時において、ボールベアリング36の軸心と環状支持部38cの軸心とを正確に一致(センタリング)させることができる。言い換えれば、ボールベアリング36は、それぞれの位置決め突起38eを介して、ベアリング支持部材38を正規の位置に位置決めする機能を有している。
【0046】
さらに、環状支持部38cの径方向内側には、当該環状支持部38cの軸方向に貫通する貫通小径孔38fおよび貫通大径孔38gが設けられている。なお、貫通小径孔38fの内径寸法D5は、貫通大径孔38gの内径寸法D6よりも小さくなっている(D5<D6)。
【0047】
ここで、貫通小径孔38fおよび貫通大径孔38gの径方向内側には、図4に示されるように、調整部材37が配置されている。そして、環状支持部38cは、ボールベアリング36のアウターレース36bを軸方向一側から支持可能な大きさのため、貫通小径孔38fおよび貫通大径孔38gの径方向内側には、比較的大きなデッドスペースDSが形成されている。
【0048】
このデッドスペースDSを有効利用することで、当該デッドスペースDSに調整部材37を配置している。よって、調整部材37を回転軸34に設けることで、ハウジング41やサンルーフモータ20の全体が大型化するようなことはない。
【0049】
また、支持本体38aには、三相のコイルCL(図4参照)に対応させて、合計3つの導電部材39(図8参照)が装着されている。これらの導電部材39は、導電性に優れた黄銅等により略棒状に形成され、その長手方向一側(図7の手前側)が、三相のコイルCLにそれぞれ電気的に接続される。これに対し、導電部材39の長手方向他側(図8の左側)は、車両12(図1参照)側に設けられる外部コネクタの接続端子(図示せず)が、電気的に接続可能となっている。これにより、車載コントローラ等からサンルーフモータ20の三相のコイルCLに駆動電流が供給され、ひいては回転軸34が正方向または逆方向に回転される。
【0050】
このように、ベアリング支持部材38は、ボールベアリング36を支持する機能に加えて、合計3つの導電部材39を保持する機能を有している。
【0051】
<減速機構部>
図2ないし図4に示されるように、減速機構部40は、減速機構SDを収容するハウジング41を備えている。ハウジング41は、プラスチック等の樹脂材料により、略扁平の直方体形状に形成され、第1壁部42,第2壁部43および第3壁部44を有している。第1,第2および第3壁部42,43,44のうち、第1壁部42の占める割合が最も大きくなっている。
【0052】
図4に示されるように、ハウジング41の内側には、ウォームホイール収容部45が設けられている。ウォームホイール収容部45は、第3壁部44寄りの部分に配置されている。そして、ウォームホイール収容部45の内部には、減速機構SDを形成するウォームホイール46が回転自在に収容されている。ここで、ウォームホイール46は、プラスチック等の樹脂材料からなり、軽量化が図られている。ウォームホイール46には歯部46aが設けられ、当該歯部46aは、ハウジング41の内部において、ウォーム35に噛み合わされている。
【0053】
すなわち、減速機構SDは、比較的大きな減速比が得られるウォーム減速機となっている。具体的には、本実施の形態では、減速機構SDの減速比は[1:67]となっている。すなわち、ウォーム35が67回転すると、漸くウォームホイール46が1回転する減速比となっている。もちろん、他の減速比に設定することも可能である。
【0054】
また、ウォームホイール46の回転中心には、丸鋼棒からなる出力軸47の軸方向基端側が固定されている。これに対し、出力軸47の軸方向先端側には、一対の駆動ケーブル17a,17b(図1参照)が噛み合わされる出力ギヤ47a(図2参照)が一体に設けられている。
【0055】
したがって、回転軸34の高速回転が減速機構SDにより減速され、かつ減速されて高トルク化された回転力が、出力軸47および出力ギヤ47aを介して、一対の駆動ケーブル17a,17bに伝達される。なお、減速機構SDは、ウォーム35およびウォームホイール46により形成されている。
【0056】
ここで、ウォームホイール収容部45は、その第1壁部42側とは反対側が開口されている(図示せず)。そして、ウォームホイール収容部45の開口部分は、図3に示されるように、鋼板をプレス加工等して略円板状に形成されたカバー部材48により閉塞されている。
【0057】
また、図4に示されるように、ハウジング41の内側には、ウォーム収容部49が設けられている。ウォーム収容部49は、第2壁部43寄りの部分に配置されている。そして、ウォーム収容部49は、ウォームホイール収容部45の近傍に配置され、これらの収容部49,45の内部は互いに連通している。これにより、ウォーム35および歯部46aは、互いに噛み合い可能となっている。
【0058】
ウォーム収容部49は、回転軸34の軸方向に延びており、ウォーム収容部49の軸方向他側(図4の左側)には、回転軸34の軸方向他側を回転自在に支持する第2メタルBR2が収容されている。
【0059】
さらに、ハウジング41の内側には、ベアリング装着部50が設けられている。ベアリング装着部50は、ウォーム収容部49の軸方向一側(図4の右側)に配置され、モータケース31に向けて開口している。ベアリング装着部50の内部には、ボールベアリング36が収容され、アウターレース36bの軸方向他側(図4の左側)の全周が、ベアリング装着部50により支持されている。
【0060】
なお、ベアリング装着部50には、略筒状に形成されたサポートリングSRが圧入により固定されている。サポートリングSRは、例えば、金属粉末を押し固めた焼結材により形成されている。そして、サポートリングSRの径方向内側には、微小隙間(図示せず)を介してアウターレース36bが配置されている。ここで、ボールベアリング36の外径寸法D7(図12参照)は、環状支持部38cにおける貫通小径孔38fの内径寸法D5(図12参照)よりも大きくなっている(D7>D5)。
【0061】
図4に示されるように、回転軸34は、第1メタルBR1,第2メタルBR2およびボールベアリング36により3点支持されている。これにより、サンルーフモータ20の作動時において、ウォーム35がウォームホイール46の歯部46aから離れるようなこと(互いの噛み合いが外れること)が抑えられ、互いに確実に動力伝達可能となっている。
【0062】
そして、回転軸34にはインナーレース36aが固定され、アウターレース36bはベアリング装着部50とベアリング支持部材38とにより挟持されている。したがって、回転軸34はその軸方向に移動することがない。よって、回転軸34の軸方向両側に、スラスト軸受を設ける必要がなく、これにより部品点数の削減を図っている。
【0063】
その一方で、回転軸34を3点支持でスムーズに回転させるには、サンルーフモータ20を形成する部品の精度を向上させる必要がある。しかしながら、このような部品精度の向上は、製造工程の煩雑化や製品コストのアップを招くため非現実的である。よって、本実施の形態では、サポートリングSRの径方向内側に、微小隙間を介してボールベアリング36(アウターレース36b)を配置している。
【0064】
これにより微小隙間が、部品の製造誤差を吸収したり部品間の線膨張差を吸収したりする。よって、回転軸34のスムーズな回転が確保される。このように、サポートリングSRとアウターレース36bとの間の微小隙間は、サンルーフモータ20を形成する部品の製造誤差や部品間の線膨張差を吸収する機能を有している。
【0065】
<モータ収容部>
また、図4図11および図12に示されるように、ハウジング41の内側には、略箱形状に形成されたモータ収容部51が設けられている。モータ収容部51は、回転軸34の軸方向においてベアリング装着部50のモータケース31側(図4の右側)に配置されている。
【0066】
モータ収容部51には、電動モータ部30の一部が収容されている。具体的には、図4に示されるように、モータ収容部51には、電動モータ部30を形成するベアリング支持部材38の壁部38bが、入り込んでいる。
【0067】
<メタルジャケット>
ここで、図2および図3に示されるように、ハウジング41の外側には、薄い鋼板を折り曲げて形成されたメタルジャケット60が部分的に装着されている。メタルジャケット60は、ハウジング41の内部で発生した電気ノイズが、ハウジング41の外部に放射されるのを防止する機能を有する。これにより、車両12(図1参照)に搭載されたカーオーディオ等(図示せず)に電気ノイズが到達せず、ラジオノイズ等の発生が抑えられる。
【0068】
<組立手順>
次に、以上のように形成したロータ33の組立手順およびサンルーフモータ20の組立手順(製造方法)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0069】
図9はロータの組立手順(1)を説明する図を、図10はロータの組立手順(2)を説明する図を、図11はサンルーフモータの組立手順(1)を説明する図を、図12はサンルーフモータの組立手順(2)を説明する図をそれぞれ示している。
【0070】
<ロータの組立手順>
図9および図10に示されるように、ロータ33を組み立てるに当たり、回転軸34,ロータコア33a,着磁前のマグネット素材MM,マグネットホルダ33b,調整部材37,ボールベアリング36およびセンサマグネットユニットSMUを準備する。
【0071】
<ナール加工>
そして、図9に示されるように、回転軸34の表面に、その軸方向に沿うようにしてナールKを形成するナール加工を実施する。ここで、ナール加工とは、表面にギザギザ(knurl)を形成する加工であり、これにより、ロータコア33aおよび調整部材37を、回転軸34に対して圧入により強固に固定可能となる。
【0072】
<ロータコア圧入>
次いで、回転軸34にロータコア33aを圧入して固定する作業を実施する。具体的には、図9の矢印M1に示されるように、回転軸34の軸方向他側、つまりウォーム35側から、ロータコア33aを回転軸34に対して圧入する作業を実施する。そして、ロータコア33aを回転軸34の軸方向における規定の位置に配置する。ここで、回転軸34にロータコア33aを固定する工程が、本発明におけるロータコア固定工程に相当する。
【0073】
<マグネット素材装着>
その後、回転軸34に固定されたロータコア33aの径方向外側に、着磁前のマグネット素材MMを固定する作業を実施する。具体的には、合計4つのマグネット素材MMの内側に接着剤(図示せず)を塗布し、かつ、図9の矢印M2に示されるように、それぞれのマグネット素材MMをロータコア33aの外周部に装着する。ここで、マグネット素材MMは着磁前であるため磁力を有さず、マグネット素材MMのロータコア33aへの装着作業を容易に行うことができる。ここで、ロータコア33aに着磁前のマグネット素材MMを固定する工程が、本発明におけるマグネット素材固定工程に相当する。
【0074】
<マグネットホルダ装着>
次いで、図9の矢印M3に示されるように、マグネットホルダ33bをそれぞれのマグネット素材MMの外周部に装着する作業を実施する。具体的には、回転軸34の軸方向一側(図9の上側)からマグネットホルダ33bを装着するようにする。そして、マグネットホルダ33bを、回転軸34の軸方向における規定の位置、つまりマグネット素材MMの外周部を完全に覆う位置に配置する。
【0075】
<バランス調整作業>
その後、図10の矢印M4に示されるように、回転軸34に調整部材37を圧入により固定する。具体的には、回転軸34の軸方向におけるウォーム35側から、調整部材37を回転軸34に対して圧入する作業を実施する。ここでは、回転軸34の軸方向におけるマグネット素材MMから離間距離L1(図4参照)だけ離れた位置に、調整部材37を固定する。
【0076】
次いで、マグネットホルダ33bおよび調整部材37が装着された回転軸34を、バランス調整装置(詳細図示せず)に取り付け、回転軸34を図10の矢印RTに示されるように回転させる。このとき、図10の矢印M5に示されるように、バランス調整装置に設けられる一対の支持アームAMを、マグネット素材MM(マグネットホルダ33b)と調整部材37との間の第1隙間G1に差し込み、一対の支持アームAMで回転軸34を支持する。
【0077】
その後、回転軸34を矢印RTのように回転させた状態において、図10の矢印M6に示されるように、バランス調整装置に設けられる切削刃CBを、調整部材37の外周部に突き当てつつ移動させることで、調整部材37の外周部を部分的に削る。これにより、製品毎に異なる回転軸34の微小な歪みや、回転軸34の回転中心とロータコア33aの回転中心との微小な位置ズレ等に起因したロータ33の回転ブレが抑えられる。
【0078】
ここで、調整部材37を形成する鋼板37a(図5および図6参照)の枚数は、サンルーフモータ20の仕様、具体的には、回転軸34(ロータ33)の長さや重量等によって決まる。すなわち、調整部材37によれば、鋼板37aの枚数を調整することで大体の調整が可能であり、その後の微調整において上述のような調整部材37の削り作業を最小限で済ませることができる。よって、削り作業の作業時間を短縮でき、かつ削りカスの排出量を最小限に抑えることができる。
【0079】
なお、バランス調整作業のタイミングでは、それぞれのマグネット素材MM(図9参照)は磁力を有さないので、調整部材37の削りカス(切削屑)が、マグネット素材MMやマグネットホルダ33bに付着することがない。このように、着磁前にバランス調整作業を実施することで、組立作業性の向上を図っている。
【0080】
ここで、回転軸34の軸方向におけるマグネット素材MMから離間距離L1だけ離れた位置に調整部材37を固定し、当該調整部材37の外周部を削ってバランス調整を行う工程が、本発明における回転バランス調整工程に相当する。
【0081】
<着磁作業>
<バランス調整作業>を終えた後には、図10に示されるように<着磁作業>が実施される。具体的には、バランス調整を終えたロータ33を、着磁装置(詳細図示せず)にセットする。このとき、着磁装置を形成する空芯コイルACの径方向内側に、合計4つのマグネット素材MM(マグネットホルダ33b)をセットする。そして、空芯コイルACに着磁電流を流し、その径方向内側に磁界MF(図10の白抜矢印参照)を発生させる。これにより、それぞれのマグネット素材MM(図9参照)が着磁されて、磁力を有するマグネットMG(図4参照)となる。ここで、合計4つのマグネット素材MMを着磁する工程が、本発明におけるマグネット着磁工程に相当する。
【0082】
<他部品装着>
その後、図10の矢印M7に示されるように、回転軸34に対して、当該回転軸34のウォーム35側から、ボールベアリング36およびセンサマグネットユニットSMUを装着する作業を行う。なお、ボールベアリング36およびセンサマグネットユニットSMUは、何れも回転軸34に対して圧入により固定される。
【0083】
また、ボールベアリング36は汎用品である高精度のボールベアリングを採用し、かつセンサマグネットユニットSMUは小径かつ軽量となっている。したがって、バランス調整後であっても、ロータ33(回転軸34)の回転バランスが崩れることはない。これにより、図10の<完成>に示されるように、ロータ33の組み立てが完了(ロータアッシRAが完成)する。
【0084】
<サンルーフモータの組立手順>
次に、組み立て終えたロータ33(ロータアッシRA)のハウジング41への組み付け手順、つまりサンルーフモータ20の組立手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0085】
ここで、図12を参照しつつ、調整部材37の外径寸法D3,ロータ33の外径寸法D4,貫通小径孔38fの内径寸法D5,貫通大径孔38gの内径寸法D6およびボールベアリング36の外径寸法D7の大小関係については、D6≒D7>D5>D4>D3となっている。
【0086】
これにより、環状支持部38cの径方向内側に、ロータ33および調整部材37を挿通することができ、かつ環状平坦面38dをアウターレース36bの軸方向一側の全周に接触させることが可能となっている。よって、図11および図12に示されるように、サンルーフモータ20を容易に組み立てることができる。
【0087】
<組立手順(1)>
図11に示されるように、まず、ハウジング41,第2メタルBR2,サポートリングSRおよびロータアッシRAを準備する。ここで、ロータアッシRAとは、図10の<完成>で示した組立完了済のロータ33のことである。
【0088】
そして、一点鎖線に沿わせるようにして、まず、第2メタルBR2をウォーム収容部49に装着する。次いで、サポートリングSRをベアリング装着部50に装着する。その後、ロータアッシRAの軸方向におけるウォーム35側を、モータ収容部51に臨ませる。そして、ロータアッシRAのウォーム35をウォーム収容部49に収容し、ボールベアリング36をベアリング装着部50に装着する。
【0089】
このとき、回転軸34のウォーム35側を第2メタルBR2に支持させ、アウターレース36bをサポートリングSRに差し込む。なお、アウターレース36bとサポートリングSRとの間には微小隙間(図示せず)が設けられているため、ロータアッシRAのハウジング41への装着作業は容易に行える。
【0090】
これにより、ロータアッシRAのハウジング41への装着作業が完了する。ここで、<組立手順(1)>を経てロータアッシRAが組み付けられたハウジング41を、ハウジングアッシHAとする。
【0091】
<組立手順(2)>
次に、図12に示されるように、ハウジングアッシHA,ベアリング支持部材38,モータアッシMAおよび合計3つの固定ねじSCを準備する。なお、ベアリング支持部材38には、合計3つの導電部材39を装着しておく。また、モータアッシMAとは、モータケース31の底壁部31bに第1メタルBR1が装着され、かつモータケース31の側壁部31aにステータ32が固定されたものである。
【0092】
そして、一点鎖線に沿わせるようにして、まず、ベアリング支持部材38のハウジング41側を、モータ収容部51に臨ませる。次いで、ベアリング支持部材38に設けられた複数の壁部38bを、モータ収容部51に差し込む。このとき、調整部材37の外径寸法D3およびロータ33の外径寸法D4は、環状支持部38cにおける貫通小径孔38fの内径寸法D5よりも小さい(D3<D4<D5)ので、貫通小径孔38fの径方向内側に、調整部材37およびロータ33を容易に挿通可能となっている。
【0093】
その後、ベアリング支持部材38に設けられた合計3つの位置決め突起38e内側に、アウターレース36bが入り込む。そして、貫通小径孔38fの内径寸法D5は、アウターレース36bの外径寸法D7よりも小さい(D5<D7)ので、環状支持部38cにおける環状平坦面38dの全周が、アウターレース36bの軸方向一側に当接する。また、環状支持部38cの径方向内側に形成されるデッドスペースDS(図4参照)に、調整部材37が配置される。
【0094】
このように、アウターレース36bの軸方向他側(図12の左側)の全周が、ベアリング装着部50により支持され、アウターレース36bの軸方向一側(図12の右側)の全周が、環状支持部38cの環状平坦面38dにより支持される。したがって、ボールベアリング36(回転軸34)が傾いてしまうようなことが抑制される。
【0095】
次いで、モータアッシMAをモータ収容部51に臨ませる。このとき、モータケース31のベアリング支持部材38側を、モータ収容部51に臨ませる。そして、ステータ32の径方向内側にロータ33を挿入しつつ、モータケース31の開口側を、ハウジング41に突き当てる。その際に、回転軸34の軸方向一側を第1メタルBR1に支持させる。
【0096】
このとき、ベアリング支持部材38はアウターレース36bにより位置決めされ、モータアッシMAは回転軸34により位置決めされる。また、ボールベアリング36および回転軸34は、互いに精度良く同軸上に配置されている。したがって、ベアリング支持部材38およびモータアッシMAにおいても、互いに精度良く同軸上に配置される。よって、合計3つの導電部材39と三相のコイルCLとを容易に精度良く位置決めすることができ、これらを互いに容易に電気的に接続可能となっている(組立性の向上)。
【0097】
その後、プラスドライバー等の締結工具(図示せず)を用い、合計3つの固定ねじSCを、ハウジング41にねじ止めする。これにより、モータケース31およびハウジング41が互いに強固に固定される。このように、ロータアッシRAをハウジング41に組み付けた後に、ベアリング支持部材38およびモータアッシMAがハウジングアッシHAに組み付けられて、ベアリング支持部材38およびモータアッシMAのハウジングアッシHAへの固定作業が終了する。
【0098】
なお、<組立手順(2)>の後は、ハウジング41のウォームホイール収容部45にウォームホイール46(図4参照)を収容し、かつウォームホイール収容部45の開口部分をカバー部材48(図3参照)で閉塞する。これにより、サンルーフモータ20の組立作業が終了する。
【0099】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、ロータ33は、回転軸34と、回転軸34に固定されるロータコア33aと、ロータコア33aに固定されるマグネットMGと、回転軸34に固定され、ロータ33の回転バランスを調整する調整部材37と、を備え、回転軸34の軸方向におけるマグネットMGと調整部材37との離間距離L1が、回転軸34の径方向におけるマグネットMGとステータ32との離間距離L2よりも長くなっている(L1>L2)。
【0100】
これにより、ロータ33の回転バランスを調整することができ、かつ調整部材37を、ステータ32よりもマグネットMGから離間させて配置することができる。したがって、マグネットMGの磁束[Wb]が調整部材37に向かうことが抑えられ、マグネットMGの磁束[Wb]をステータ32に効率良く向かわせることが可能となる。よって、サンルーフモータ20の出力トルクの低下等を抑制することもできる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、調整部材37は、複数の鋼板37aを積層して筒状に形成されているので、鋼板37aの枚数を調整することで大体の調整が可能であり、その後の微調整における調整部材37の削り作業を最小限で済ませることができる。したがって、削り作業の作業時間を短縮でき、かつ削りカスの排出量を最小限に抑えることが可能となる。
【0102】
さらに、本実施の形態によれば、調整部材37の外径寸法D3が、ロータ33の外径寸法D4以下であるので、内径寸法D5(D5>D4>D3)の貫通小径孔38fを有するベアリング支持部材38を、回転軸34の軸方向一側(ウォーム35側とは反対側)から、容易に装着することができる(図12参照)。よって、サンルーフモータ20の組立作業性を低下させることがない。
【0103】
また、本実施の形態によれば、回転軸34は、軸方向一側が第1メタルBR1に回転自在に支持され、軸方向他側が第2メタルBR2に回転自在に支持され、軸方向中央部がボールベアリング36により回転自在に支持されており、調整部材37が、ボールベアリング36とロータコア33aとの間に配置されている。これにより、回転軸34の軸方向における比較的大きなスペースを、調整部材37の配置のために有効利用でき、ひいては、サンルーフモータ20の全体が大型化することを抑制できる。
【0104】
さらに、本実施の形態によれば、回転軸34にロータコア33aを固定するロータコア固定工程と、ロータコア33aに着磁前のマグネット素材MMを固定するマグネット素材固定工程と、回転軸34の軸方向におけるマグネット素材MMから離れた位置に調整部材37を固定し、調整部材37の外周部を削る回転バランス調整工程と、回転バランス調整工程の後に実施され、マグネット素材MMを着磁するマグネット着磁工程と、を経てロータ33を組み立てることができる。
【0105】
これにより、調整部材37の削りカス(切削屑)を、マグネット素材MMやマグネットホルダ33bに付着させずに済む。このように、着磁前にバランス調整作業を実施することで、組立作業性の向上を図ることができる。
【0106】
また、本実施の形態によれば、上述のように、例えば、削り作業の作業時間を短縮でき、かつ削りカスの排出量を最小限に抑えることができるので、製造エネルギーの省力化を図ることが可能となり、これにより国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を実現することができる。
【0107】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記実施の形態では、本発明を、車両12のサンルーフ装置10に用いられるサンルーフモータ20に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、車両に搭載されるスライドドア装置,パワーウインド装置,ワイパ装置等に用いられる車載用モータ(モータ装置)にも適用することができる。
【0108】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0109】
10:サンルーフ装置,11:ルーフパネル,12:車両,13:ルーフ,14:開口部,15a,15b:シュー,16:ガイドレール,17a,17b:駆動ケーブル,20:サンルーフモータ(モータ装置),30:電動モータ部,31:モータケース,31a:側壁部,31b:底壁部,32:ステータ,32a:ステータコア,32b:ティース,33:ロータ,33a:ロータコア,33b:マグネットホルダ,34:回転軸,35:ウォーム,36:ボールベアリング(第3軸受),36a:インナーレース,36b:アウターレース,37:調整部材,37a:鋼板,38:ベアリング支持部材,38a:支持本体,38b:壁部,38c:環状支持部,38d:環状平坦面,38e:位置決め突起,38f:貫通小径孔,38g:貫通大径孔,39:導電部材,40:減速機構部,41:ハウジング,42:第1壁部,43:第2壁部,44:第3壁部,45:ウォームホイール収容部,46:ウォームホイール,46a:歯部,47:出力軸,47a:出力ギヤ,48:カバー部材,49:ウォーム収容部,50:ベアリング装着部,51:モータ収容部,60:メタルジャケット,AC:空芯コイル,AG:エアギャップ,AM:支持アーム,BK:ブラケット部材,BR1:第1メタル(第1軸受),BR2:第2メタル(第2軸受),CB:切削刃,CL:コイル,DS:デッドスペース,FG:フロントガラス,G1:第1隙間,G2:第2隙間,HA:ハウジングアッシ,K:ナール,L1,L2:離間距離,MA:モータアッシ,MF:磁界,MG:マグネット,MM:マグネット素材,RA:ロータアッシ,SC:固定ねじ,SD:減速機構,SM:センサマグネット,SMU:センサマグネットユニット,SR:サポートリング
図1
図2
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図10
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