IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱農機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017258
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】耕耘作業装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 21/08 20060101AFI20240201BHJP
   A01B 25/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A01B21/08
A01B25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119780
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 秀樹
【テーマコード(参考)】
2B032
【Fターム(参考)】
2B032AA06
2B032FA06
2B032FB03
2B032FB08
2B032FB14
2B032GA19
(57)【要約】
【課題】ディスクハローの後方にローラーを回転自在に設ける耕耘作業装置をトラクタに連結して田畑を耕す場合に、ディスクハローの多数のディスクによって耕耘した土塊を、可能な限り砕土してロータリ耕耘装置並みに粉砕することができる耕耘作業装置を提供する。
【解決手段】ディスクハローの前列と後列のディスク群は、そのディスクの湾曲面が左や右を向くように互いに異ならせて設け、また、前列のディスク群が残した未耕地を後列のディスク群が耕すように前列と後列のディスク群を左右方向に所定距離だけずらして設け、さらに、前列のディスク群が後上方の一側方へ向けて放擲する土塊に後列のディスク群が突き当たってこれを砕土し、尚且つ、後列のディスク群が後上方の他側方へ向けて放擲する土塊にローラーの多数の破砕板が突き当たってこれを砕土して粉砕するように構成する。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに連結する作業機フレームの下方に、その進行方向と直交する左右方向に間隔を空けて回転自在に設けるディスクハローのディスク群を前後方向に近接させて2列設け、また、この作業機フレームの後部に、その進行方向と直交する左右方向に長尺な多数の破砕板を備えるローラーを回転自在に設ける耕耘作業装置にあって、前記前列と後列のディスク群は、そのディスクの湾曲面が左や右を向くように互いに異ならせて設け、また、前列のディスク群が残した未耕地を後列のディスク群が耕すように前列と後列のディスク群を左右方向に所定距離だけずらして設け、さらに、前列のディスク群が後上方の一側方へ向けて放擲する土塊に後列のディスク群が突き当たってこれを砕土し、尚且つ、後列のディスク群が後上方の他側方へ向けて放擲する土塊にローラーの多数の破砕板が突き当たってこれを砕土して粉砕するように構成することを特徴とする耕耘作業装置。
【請求項2】
前記作業機フレームの下方に設ける前列と後列のディスク群の内、左右方向の最外側に位置するディスクが後上方の外側方へ向けて放擲する土塊を、後列のディスク群やローラーの多数の破砕板が位置する内方側に向かうように放擲方向を変更する偏向板を前列と後列のディスク群に対応させて1つずつ設けることを特徴とする請求項1に記載の耕耘作業装置。
【請求項3】
前記作業機フレームの下方に設けるディスクの円盤角を、前列と後列のディスク群毎に変更調節自在になすと共に、この前列と後列のディスク群の内、左右方向の最外側に位置するディスクの外側方に対向させて設ける前記偏向板を、作業機フレームの下方に左右移動調節自在に設けることを特徴とする請求項2に記載の耕耘作業装置。
【請求項4】
前記ローラーに備える多数の破砕板の左右端を、前列と後列のディスク群によって耕耘した既耕地とこれから耕耘する未耕地との略境界線上に臨むように整列させて設けることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の耕耘作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに連結して圃場を耕耘する耕耘作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本農業にあって農作物を栽培する田畑は、トラクタに装着するプラウやロータリ耕耘装置等の作業機を用いて耕している。また、この内、一般的に用いられているロータリ耕耘装置は、トラクタに搭載するエンジン動力によって耕耘爪を回転させて土壌を砕きながら攪拌するので、砕土性は優れているものの、その耕耘負荷によってトラクタ側のエンジンの燃料消費量が大きく、また、トラクタによる作業速度の高速化を阻む要因となっている。
【0003】
一方、欧米において一般的に用いられている圃場の耕起後の砕土を担うディスクハローを、畑だけではなく水田の耕耘作業に用いることが、近年、日本において注目されている。そして、このディスクハローはトラクタに牽引させて、耕耘、播種床の準備、除草、肥料・堆肥の混和、表層の固い土を破砕、作物残渣・緑肥のすき込み等を一度に高速で行うことができ、作業能率の向上に貢献する。
【0004】
また、係るディスクハローの耕耘を行う曲面を持った皿状の円盤(ディスク)は、土壌に突き刺さって自ら回転し、一方、ロータリ耕耘装置の耕耘爪のようにエンジン動力によって回転させるものではないので、トラクタ側のエンジンの燃料消費量を大幅に節約して、コスト低減を図ることができる。
【0005】
しかし、このようなディスクハローは、広大な農地で大規模農業が行われる海外で開発された耕耘作業機である。そのため、農地面積が狭く集約農業を行う国内にあっては、作業機が大き過ぎて狭い圃場での取り扱いが悪かったり、国内各地の農地の土壌に対する適応性に問題があったりして、作業機の小型化と共に性能面での改良の余地がある。
【0006】
そこで、これらの問題解決のために、現在、国内で使用されている比較的馬力の少ない小型や中型のトラクタであっても、その三点リンク等に連結して無理なく牽引作業を行うことができる性能面でも優れたディスクハローを使用した耕耘作業装置の出現が待たれている。
【0007】
なお、ディスクハローを使用した耕耘作業装置は古くから種々提案されており、例えば、トラクタの油圧三点リンクヒッチに連結する方形フレームに前部デスクハロー、カルチベータ、後部デスクハロー、ケージローラを備える複合作業機(特許文献1参照)や、心土作溝犂体、ディスクプラウ列、砕土鎮圧用ローラを備える耕耘作業機(特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-225003号公報
【特許文献2】特開2007-68528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように田畑の耕耘作業にディスクハローを用いると、作業能率やコスト面で優位性を発揮する。そこで、狭い圃場での取扱性を向上させたり、馬力の少ないトラクタであってもこれを連結して耕耘作業を行うことができるように、例えば、ディスク配列やディスクの枚数等を見直して、外国製より耕幅の少ない小型のディスクハローを使用した耕耘作業装置の開発を行う。
【0010】
ところで、ディスクハローの特性について考察するとき、その皿状のディスクは作物残渣や雑草等の切断を行ったり、土壌に突き刺さってトラクタの牽引に伴って自らを回転させて耕耘した土塊を上方に持ち上げる。さらに、持ち上げた土塊は後方側の側方に放擲することで破砕させる。しかし、このディスクは、ロータリ耕耘装置の耕耘爪のように強制回転させて土壌を砕きながら攪拌するものではないので、砕土性はあまり期待することができない。
【0011】
そのため、これを補う意味でディスクハローの後方にローラーを設けて、このローラーによってディスクハローで耕耘した土塊を砕いて砕土性を向上させたり、土や土塊の鎮圧、或いはディスクハローの耕深調節を行うことができるようになすが、このローラーもトラクタの牽引に伴って接地して回転するだけなので、土壌条件や作物残渣等の多少によって期待するだけの砕土性を発揮しない場合がある。
【0012】
そこで、本発明は係る問題点に鑑み、ディスクハローの後方にローラーを回転自在に設ける耕耘作業装置をトラクタに連結して田畑を耕す場合に、ディスクハローの多数のディスクによって耕耘した土塊を、可能な限り砕土してロータリ耕耘装置並みに粉砕することができる耕耘作業装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の耕耘作業装置は、上記課題を解決するため第1に、トラクタに連結する作業機フレームの下方に、その進行方向と直交する左右方向に間隔を空けて回転自在に設けるディスクハローのディスク群を前後方向に近接させて2列設け、また、この作業機フレームの後部に、その進行方向と直交する左右方向に長尺な多数の破砕板を備えるローラーを回転自在に設ける耕耘作業装置にあって、前記前列と後列のディスク群は、そのディスクの湾曲面が左や右を向くように互いに異ならせて設け、また、前列のディスク群が残した未耕地を後列のディスク群が耕すように前列と後列のディスク群を左右方向に所定距離だけずらして設け、さらに、前列のディスク群が後上方の一側方へ向けて放擲する土塊に後列のディスク群が突き当たってこれを砕土し、尚且つ、後列のディスク群が後上方の他側方へ向けて放擲する土塊にローラーの多数の破砕板が突き当たってこれを砕土して粉砕するように構成する。
【0014】
また、本発明の耕耘作業装置は第2に、前記作業機フレームの下方に設ける前列と後列のディスク群の内、左右方向の最外側に位置するディスクが後上方の外側方へ向けて放擲する土塊を、後列のディスク群やローラーの多数の破砕板が位置する内方側に向かうように放擲方向を変更する偏向板を前列と後列のディスク群に対応させて1つずつ設ける。
【0015】
さらに、本発明の耕耘作業装置は第3に、前記作業機フレームの下方に設けるディスクの円盤角を、前列と後列のディスク群毎に変更調節自在になすと共に、この前列と後列のディスク群の内、左右方向の最外側に位置するディスクの外側方に対向させて設ける前記偏向板を、作業機フレームの下方に左右移動調節自在に設ける。
【0016】
そして、本発明の耕耘作業装置は第4に、前記ローラーに備える多数の破砕板の左右端を、前列と後列のディスク群によって耕耘した既耕地とこれから耕耘する未耕地との略境界線上に臨むように整列させて設ける。
【発明の効果】
【0017】
本発明の耕耘作業装置によれば、トラクタに連結する作業機フレームの下方に、その進行方向と直交する左右方向に間隔を空けて回転自在に設けるディスクハローのディスク群を前後方向に近接させて2列設け、また、この作業機フレームの後部に、その進行方向と直交する左右方向に長尺な多数の破砕板を備えるローラーを回転自在に設ける耕耘作業装置にあって、前記前列と後列のディスク群は、そのディスクの湾曲面が左や右を向くように互いに異ならせて設け、また、前列のディスク群が残した未耕地を後列のディスク群が耕すように前列と後列のディスク群を左右方向に所定距離だけずらして設け、さらに、前列のディスク群が後上方の一側方へ向けて放擲する土塊に後列のディスク群が突き当たってこれを砕土し、尚且つ、後列のディスク群が後上方の他側方へ向けて放擲する土塊にローラーの多数の破砕板が突き当たってこれを砕土して粉砕するように構成する。
【0018】
そのため、前列のディスク群が後上方の一側方へ向けて放擲する土塊に後列のディスク群が突き当たって、この土塊を後列のディスク群が砕土し、また、後列のディスク群が後上方の他側方へ向けて放擲する土塊にローラーの多数の破砕板が突き当たって、この土塊を多数の破砕板が砕土するから、ディスクハローの複数のディスクによって耕耘した土塊を、後列のディスク群やローラーの多数の破砕板によって効果的に砕土して、ロータリ耕耘装置並みに粉砕することができる。
【0019】
なお、前列のディスク群と後列のディスク群や、後列のディスク群と多数の破砕板との間の距離が離れていたり、或いは、前列のディスク群が放擲する土塊に後列のディスク群が元々当たらない配置であれば、高速な耕耘作業によって後方に勢いよくディスクから放擲される土塊であっても、その後方に設ける後列のディスク群や多数の破砕板がこの土塊にうまく突き当たって、これを砕土することができない。
【0020】
しかし、ディスクハローの前列と後列のディスク群や、後列のディスク群とローラーの多数の破砕板との間は、詰り等を生じない適切な距離を空けながら出来るだけ近接させて設ける、また、前列と後列のディスク群を左右方向に所定距離ずらして、後列のディスク群を前列のディスク群が放擲する土塊に適切に臨むように設けるといった対策をとることによって、上述のような不具合を未然に防止することができる。
【0021】
また、本発明の耕耘作業装置によれば、前記作業機フレームの下方に設ける前列と後列のディスク群の内、左右方向の最外側に位置するディスクが後上方の外側方へ向けて放擲する土塊を、後列のディスク群やローラーの多数の破砕板が位置する内方側に向かうように放擲方向を変更する偏向板を前列と後列のディスク群に対応させて1つずつ設けるので、ディスクハローの前列と後列のディスク群で耕耘した土塊を漏れなく、後列のディスク群やローラーの多数の破砕板によって砕土して粉砕することができる。
【0022】
さらに、本発明の耕耘作業装置によれば、前記作業機フレームの下方に設けるディスクの円盤角を、前列と後列のディスク群毎に変更調節自在になすと共に、この前列と後列のディスク群の内、左右方向の最外側に位置するディスクの外側方に対向させて設ける前記偏向板を、作業機フレームの下方に左右移動調節自在に設ける。
【0023】
そのため、ディスクの円盤角を前列と後列のディスク群毎に変更することができ、田畑の硬軟等の土壌条件等に左右されることなく、所望する適切な耕耘状態を得ることができる。また、このようにディスクの円盤角を変更したり、耕耘深さや耕耘作業速度を変更すると、ディスクが放擲する土塊量や後上方の外側方へ向けて放擲する角度等が少なからず変化するので、ディスクの外側方に対向させて設ける偏向板も、作業機フレームの下方に左右移動調節自在に設けることによって、ディスクから放擲された土塊を後列のディスク群やローラーの多数の破砕板が位置する内方側に向かうように調節することができる。
【0024】
そして、本発明の耕耘作業装置によれば、前記ローラーに備える多数の破砕板の左右端を、前列と後列のディスク群によって耕耘した既耕地とこれから耕耘する未耕地との略境界線上に臨むように整列させて設けるので、ディスクハローの前列と後列のディスク群で耕耘した土塊をローラーの多数の破砕板によって漏れなく砕土して粉砕することができると共に、境界線から外れた未耕地を無用に砕土することなく、ローラーによる砕土や鎮圧の作用幅を必要最小限に抑えて、ローラーをコンパクトに纏めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】トラクタに本発明に係る耕耘作業装置を連結して耕耘作業を行う状態を示す側面図である。
図2】耕耘作業装置の正面図である。
図3】耕耘作業装置の平面図である。
図4】作業機フレームへのディスクの取付構造を示す断面図である。
図5】円盤角の調節手段を示す断面図である。
図6】円盤角の調節手段を示す平面図である。
図7】許容値の調節手段を示し、(a)は許容値を下げた状態、(b)は許容値を上げた状態を示す側面図である。
図8】退避手段を示し、(a)はディスクの退避状態を示す側面図、(b)はスプリングのへたりを防止した状態を示す断面図である。
図9】ローラーの上下調節手段と解除手段を示す断面図である。
図10】ローラーの上下調節手段と解除手段を示す平面図である。
図11】解除操作レバーの配設状態を示す側面図である。
図12】解除操作レバーの配設状態を示す平面図である。
図13】解除操作レバーの取付状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
図14】ローラーの上下動による耕深調節を示し、(a)は耕深を深くした状態、(b)は耕深を浅くした状態を示す側面図である。
図15】カムと屈伸リンクの作動状態を示す側面図であって、(a)はカムの非作動状態、(b)はカムの作動状態、(c)は屈伸リンクが屈折した状態を示す。
図16】耕耘作業装置を上昇させた状態を示す側面図である。
図17】圃場隅や枕地の耕耘状態を示す側面図である。
図18】圃場隅や枕地の耕耘を終えた状態を示す側面図である。
図19】耕耘作業時のディスクによる土塊の放擲方向を示す平面図である。
図20】偏向板の取付構造を示し、(a)は側面図、(b)は平断面図である。
図21】偏向板の左右調節状態を示す平面図であって、(a)は最も内側に移動させた状態、(b)最も外側に移動させた状態を示す。
図22】偏向板の前後調節状態を示す側面図であって、(a)は後方に移動させた状態、(b)は前方に移動させた状態を示す。
図23】偏向板65の土壌表面への追従状態を示す側面図であって、(a)は耕深が深い状態、(b)は耕深が浅い状態を示す。
図24】後列ディスクの円盤に砕土用の孔を設けて耕耘を行う状態の側面図である。
図25】第2の実施形態の耕耘作業装置の斜視図である。
図26】第2の実施形態のローラーの上下調節を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように、トラクタ1の後部に設ける三点リンク2のトップリンク2aと左右のロアリンク2b、2bに連結(直装)して、トラクタ1の前進走行に伴って田畑を耕耘するディスクハロー3は、角型鋼管(角パイプ)を用いて枠組形成する作業機フレーム4を備える。
【0027】
また、この作業機フレーム4は、耕耘作業を行う際のトラクタ1の前進走行方向と一致する前後方向に長尺な左右のメインフレーム4a、4bと、この左右のメインフレーム4a、4bの上面に固着して前進走行方向に直交する左右方向に長尺な前後のディスクフレーム4c、4dと、この前後のディスクフレーム4c、4dの左右端寄りの上面に固着して前後方向に長尺な左右のサブフレーム4e、4fと、左右のメインフレーム4a、4bの後寄り中程を繋ぐ左右方向となる連結フレーム4gから構成する。
【0028】
そして、作業機フレーム4の左右のメインフレーム4a、4bの前部寄りに、鋼板を折り曲げて形成するトップリンクマスト5とサポートプレート6を取り付け、このトップリンクマスト5の上部にトップリンク2aに連結するトップリンクピン7を設ける。また、左右のメインフレーム4a、4bの前端面に、コ字状のリンクブラケット8を夫々固着し、このリンクブラケット8に左右のロアリンク2bに連結するロアリンクピン9を設ける。
【0029】
ところで、ディスクハロー3の耕耘主体となるディスク10は、凹状の湾曲面を持った皿状の円盤(ディスク)10aで構成し、この円盤10aの外周縁10bは鋭利な切断刃に形成し、作物残渣等をこの切断刃によって切断することができる。また、この外周縁10bに円弧状の切欠部10cを多数(12個)設けて、ディスク10が土壌に突き刺さって自ら回転し易くすることができ、以上のことから所謂、花形ディスクと称されるディスク10を使用する。
【0030】
そして、このようなディスク10を用いて田畑を耕耘する場合に、係るディスク10によって掻き取られた土塊は、ディスク10の凹状の湾曲面内に溜まる。また、この溜まった土塊はディスク10の回転に伴って上方に持ち上げられて、その後に湾曲面の開放された側からその側方に向けて放擲される(図19図24参照)。
【0031】
そのため、作業機フレーム4の下方に多数のディスク10を、その凹状の湾曲面を同じ左向きや右向きに揃えて左右方向に所定の間隔(L)を空けて並べて設けると、この多数のディスク10によって耕耘した土塊は、トラクタ1の前進走行方向に直交する左右方向の一側に放擲されて移動する。そこで、同数となす多数のディスク10を前後のディスクフレーム4c、4dの下方に夫々左右方向に並べて設けると共に、係る前後2列のディスク10の湾曲面の向きを、例えば、前列は左向きに後列は右向きというように互いに異ならせて設ける。
【0032】
そして、このように多数のディスク10を配設すると、前ディスクフレーム4cの下方に設ける前列のディスク10によって左右方向の一側に移動した土塊を、後ディスクフレーム4dの下方に設ける後列のディスク10によって元の他側に戻して、耕耘跡を均平にすることができる。また、この場合に、前列と後列のディスク群を左右方向に所定距離だけずらして設けると、前列のディスク10群が耕耘することができなかった未耕地を、後列のディスク10群で耕耘することができて、耕耘面の凹凸を無くすことができる。
【0033】
以上、作業機フレーム4の下方に設ける多数のディスク10の基本的な配置形態について説明したが、次に、ディスク10の具体的な作業機フレーム4への取付構造について説明すると、先ず、この単体としてのディスク10は、鋼板を略三角形状に形成するディスクアーム11にベアリング12を介して回転自在に設ける。
【0034】
つまり、ディスクアーム11の下部に孔11aを穿設し、この孔11aにベアリング12の軸12aを通してナットで取り付ける。また、このディスクアーム11に取り付けたベアリング12のハウジング12bに、ディスク10をその湾曲面の内側からボルトを通して、ナットで締結して着脱自在に取り付ける。
【0035】
ところで、ディスクアーム11の下部に回転自在に設けるディスク10は、その円盤の湾曲面がトラクタ1の前進走行方向に対してある程度傾いていないと土壌を掻き取って耕すことができない。そこで、このディスク10を傾かせる円盤角(ギャング角、図6参照)αをとるためにディスク10を作業機フレーム4に傾けて設ける必要があるが、円盤角αはその角度を大きくとると土壌の掻き取り量が多くなって深く耕耘することができる。
【0036】
しかし、あまり円盤角αをとり過ぎると、トラクタ1の牽引抵抗が増して高速で耕耘作業を行うことができなくなり、作業能率を低下させてしまう。そこで、耕耘しようとする田畑の土壌条件に合わせたり、或いは耕深等の所望する耕耘状態を得るために、この円盤角αを適切に変更することができる調節手段を、特にディスク10を取り付けたディスクアーム11の作業機フレーム4への取付構造のなかに取り入れる。
【0037】
そこで、この円盤角αの調節手段の具体例について説明すると、この調節手段は図4乃至図6に示すように、先ず作業機フレーム4の前後のディスクフレーム4c、4dに、多数のディスクブラケット13を水平回動自在に取り付け、この回動自在になす個々のディスクブラケット13に、ディスクアーム11を取り付けて、これによりディスク10を水平回動させて円盤角αを調節できるようにする。
【0038】
従って、前後のディスクフレーム4c、4dには、その左右方向となる長手方向に所定の間隔Lを空けて上下方向に貫通する孔を、装着するディスク10の数に対応させて例えば、9個穿設する。また、この各孔に夫々パイプ14を通してこれを溶着固定する。一方、ディスクブラケット13は、鋼板で形成する左右のフレーム13a、13aの間にコ字状の挟持片13bと矩形状の支持片13cとL字状の連結片13dを溶着して形成する。
【0039】
そして、前述のパイプ14に先ず円筒となすピン15を嵌めて、次にこのパイプ14とピン15が収まるようにディスクブラケット13の挟持片13bを後方側から嵌め込む。さらに、ボルト16を挟持片13bに穿設した孔とピン15に穿設した孔に通してナット17で締結し、これにより前後のディスクフレーム4c、4dに各ディスクブラケット13をパイプ14を回動中心として水平回動自在に取り付ける。
【0040】
また、以上のように前後のディスクフレーム4c、4dに夫々取り付けたディスクブラケット13のフレーム13aに孔13eを穿設し、この孔13eに小径の連結パイプ18を前列と後列において左右方向に1本ずつ通す。さらに、ディスクブラケット13の連結片13dと支持片13c、並びに連結パイプ18に夫々穿設する孔に連結ピン19を通して、スナップリング20で連結ピン19の抜け止めを行う。
【0041】
そして、このように連結すると、前列と後列に夫々設けるディスクブラケット13の回動角(円盤角α)を各列において全て同じ角度にすることができる。また、この連結パイプ18は、調節ハンドル21の正逆回転操作によって左右方向に移動させて、ディスクブラケット13の回動角を無段階に調節することができるようにする。
【0042】
つまり、左側のサブフレーム4eにはコ字状のブラケット22を溶接して設ける。また、このブラケット22にスナップリングで抜け止めして回動自在に設ける支点ピン23に、前述の調節ハンドル21を備えた調節軸24を取り付ける。そして、この調節軸24に加工した雄螺子に螺合する雌螺子を備える調節パイプ25の先端を、前述の連結パイプ18にピン26を用いて連結する。
【0043】
そのため、調節ハンドル21を回すと調節軸24と調節パイプ25の螺合に基づく伸縮調節によって連結パイプ18を左右移動させることができ、これにより前列と後列に夫々設けるディスクブラケット13の回動角、並びにディスク10の(円盤角α)を各別に、例えば、α1からα2の範囲で調節することができる。
【0044】
さて、以上のように円盤角αの調節手段を備えたディスクブラケット13に、ディスク10を回動自在に設けたディスクアーム11を取り付けることによって、作業機フレーム4の下方に田畑を耕耘する多数のディスク10を取り付けて設けることができる。しかし、耕耘する田畑の土壌中に石等の障害物があると、ディスク10はこの障害物に衝突して破損する虞がある。
【0045】
そこで、障害物にディスク10が衝突した際のディスク10の破損を防止するために、弾性ゴムや板ばねを用いてディスク10を上方に逃がすことが知られているが、これらのものでは耕耘する土壌の硬度等がそれなりに高ければ、石等に衝突しなくともその硬い土壌を耕耘する抵抗によって弾性ゴムや板ばねが相応に歪んだり撓んで、これによりディスク10が常に上方に浮き上がり気味となって期待した耕深をディスク10によって安定して得られないという問題がある。
【0046】
そこで、この問題を解決するために、作業機フレーム4の下方に設ける多数のディスク10は、石等の障害物に衝突して生ずる衝撃力が許容値Fを超えると障害物の上方にディスク10を逃がす退避手段と、この許容値Fの調節手段とを各ディスク10毎に備えるようになして、ディスク10の破損の防止と共に、ディスク10の走行フレーム4に対する取付位置の高さ(耕深)を維持して安定した耕耘を行うことができるようにする。
【0047】
次に、このディスク10の退避手段と許容値Fの調節手段の具体例について説明すると、図4図7、及び図8に示すように、ディスクブラケット13の左右のフレーム13a、13aの前部寄り下部に孔aを穿設し、また、ディスクアーム11の上部寄り前部と後部に同様な孔b、cを穿設する。そして、左右のフレーム13a、13aの孔aとディスクアーム11の上部寄り前部の孔bに支点ボルト27を通して、ディスクアーム11をディスクブラケット13に回動自在に取り付ける。
【0048】
また、ディスクアーム11の上部寄り後部の孔cと、ロッド28の下部に固着するコ字状片28aに穿設する左右孔dにボルト29を通して、ロッド28の下部をディスクアーム11に回動自在に取り付ける。そして、このロッド28に加工する螺子部に、ロック用のダブルナット30と、スプリングの撓みを許容長に制限するパイプ31を溶接固定したスプリング受け皿32と、圧縮コイルスプリング(スプリング)33を順に装着して、その後、ロッド28の上部寄りをディスクブラケット13の支持片13cに穿設する孔eに通す。また、孔eに通したロッド28の上部にはワッシャ34とナット35を装着する。
【0049】
そして、このようにディスクアーム11をディスクブラケット13に上下揺動自在に取り付けて、ディスク10の退避手段を構成するが、ディスク10が障害物の上方に退避する際の許容値Fは、ディスクアーム11に作用させる圧縮コイルスプリング33の初期圧によって設定するものであって、この初期圧(許容値F)は前述のロック用のダブルナット30をスパナ等の工具を用いて回して、スプリング受け皿32を上下動させることによって調節(初期撓みA、A')することができる。
【0050】
従って、図7及び図8に示すように、ロッド28の上部寄りに螺合するナット35の取付位置からボルト29の中心位置迄の高さによって決定される所定の高さに保持したディスク10に前方から障害物の衝撃力が加わり、その衝撃力が圧縮コイルスプリング33の初期圧Fを超えなければ、ディスク10は上方に逃げずにそれ迄の耕深をそのまま維持して田畑を耕耘するが、衝撃力が初期圧Fを超えると圧縮コイルスプリング33は、その初期撓みAから仕事撓みBに縮んでディスク10は上方に逃げて、ディスク10の破損を防止することができる。
【0051】
なお、ディスク10に加わる衝撃力が過大で、その衝撃力によって圧縮コイルスプリング33が縮んだ結果、スプリング受け皿32に固定したパイプ31の上端がディスクブラケット13の支持片13cに穿設する孔eの周縁に当たると、圧縮コイルスプリング33はそれ以上の撓みをパイプ31によって阻止されて、圧縮コイルスプリング33のへたりを防止する。また、言い忘れたが、各ディスク10はディスクアーム11に、その湾曲する円盤10aが斜め上方Uを向くように回動自在に取り付けることによって、掻き取った土塊を上方に高く持ち上げて、その後の放擲によって細かく砕土し易くする(図2参照)。
【0052】
以上、トラクタ1の前進走行に伴って田畑を耕耘するディスクハロー3について説明したが、次に、ディスクハロー3の後方に設けて、ディスクハロー3で耕耘した土や土塊、或いは作物残渣等をより細かく砕土・切断して粉砕するローラー36について説明すると、このローラー36は所謂、かご型と称されるローラー36を用いる。
【0053】
そして、このかご型ローラー36は、図1及び図3に示すように鋼管で形成するローラーフレーム37を備え、このローラーフレーム37の左右端部には鋼板で形成するローラーアーム38を取り付ける。また、左右のローラーアーム38の下部に孔を穿設し、この孔にベアリング39の軸39aを通してナットで取り付ける。さらに、このローラーアーム38に取り付けたベアリング39のハウジング39bに、ローラー本体40をボルトとナットで取り付けて、ローラーフレーム37にローラー本体40を回転自在に設ける。
【0054】
また、ローラー本体40は、間隔を空けて左右方向に並べて設ける数個(実施形態にあっては4個)の鋼板で形成する円板41を備え、この円板41の外周縁に形成する数個(実施形態にあっては10個)の切欠に、波型の凹凸を先端部に備える長尺な鋼板で形成する破砕板42や、或いは、この破砕板42とともに真っすぐな先端部に鋭利な刃を先端に備える長尺な破砕板42を交互に溶接固定して、円筒かご型のローラーに形成する。
【0055】
なお、上述の破砕板42は、土塊や作物残渣等を砕土して粉砕し易くするために、自らの板面を回転方向に前進角θをもたせて円板41の外周縁に設ける(図24参照)。また、円板41には中央の孔41aとこの孔を取り囲むように6個の孔41bを設けて、ローラー本体40内に入った土塊や作物残渣等をこの孔41a、41bの周縁に衝突させて、長尺な破砕板42とともにこれ等を粉砕するように構成する。
【0056】
そして、以上のように構成するかご型ローラー36は、次に説明するようにディスクハロー3の後方に上下調節手段を介装することによって、ディスクハロー3の走行フレーム4に対して高さ調節自在に設け、これによりディスクハロー3の耕深調節を行い、或いは、この上下調節の解除手段を設けることによって、ローラー36を畦に乗り上げさせた状態でのディスクハロー3の耕耘作業を可能にする。
【0057】
より詳細に説明すると図9及び図10に示すように、ディスクハロー3の左右のメインフレーム4a、4bの後端部上面に後方に向けて開放するU字状の取付板43を溶接固定し、この取付板43にローラーフレーム37を後方から差し込む。次に、このローラーフレーム37の後面側を、取付板43にボルト44で取り付ける押え板45によって抜け止めし、これにより左右のメインフレーム4a、4bの後端部に、ローラー36をその取付板43のU字状部を中心として上下回動自在に取り付ける。
【0058】
また、ローラーフレーム37の左右方向の中央に2枚の取付板46を対向させて溶接固定すると共に、連結フレーム4gの左右方向の中央に2枚の取付板47を同じく対向させて溶接固定する。そして、ローラーフレーム37の取付板46に支点ピン48をスナップリングで抜け止めして回転自在に設けると共に、この支点ピン48に設ける孔にカバー筒49を備える螺子軸杆50を通して、また、支点軸48の後方側にスラストベアリング51を介装して上下調節ハンドル52を取り付ける。
【0059】
さらに、支点軸48より前方側の螺子軸杆50に加工する雄螺子に、その雌螺子を螺合させて調整パイプ53を取り付けて設ける。一方、連結フレーム4gの左右取付板47に支点ピン54をスナップリングで抜け止めして設け、この支点ピン54に屈伸リンク55の前部を回動自在に取り付ける。さらに、この屈伸リンク55の後部寄りと調整パイプ53の先端に固着するU字型取付部53aの先端部をピン56を用いて連結する。
【0060】
そして、前述のU字型取付部53aに設けるピン56の奥側(後方側)に、屈伸リンク55をそのピン56を中心として回動させるための、円柱の中央部を円弧状に切り欠いて形成するカム57を回動自在に取り付ける。また、このカム57を回動させる解除操作レバー59を設け、この解除操作レバー59は、図11乃至図13に示すようにトップリンクマスト5に取り付けたレバーガイド60の支点ピン61を中心に回動自在に取り付けて設ける。
【0061】
また、この解除操作レバー59とカム57の外端部に固着するレバー58とをワイヤケーブル62で繋ぎ、さらに、この解除操作レバー59を通常耕耘位置と解除位置に支点越えさせて保持する引っ張りスプリング63を設ける。
【0062】
従って、解除操作レバー59を後方の通常耕耘位置に操作して通常の耕耘作業を行っている場合に、前述の上下調節ハンドル52を正逆回転操作すると、図14に示すようにネジ式の伸縮調節体(螺子軸杆50と調整パイプ53)によって前方の支点ピン54と後方の支点ピン48との間の芯間長Sを変化させて、ローラー36を作業機フレーム4に対して上下動させることができる。また、ローラー本体40は土壌に接地してトラクタ1に連結する作業機フレーム4のそれ以上の下降を阻止するので、ローラー36の上下動によって作業機フレーム4の下方に設けるディスク10を逆に上下動させて、その耕深調節を無段階に行うことができる。
【0063】
また、図16に示すように、トラクタ1の三点リンク2によってディスクハロー3とローラー36を非作業位置に上昇させた状態で、解除操作レバー59を操縦部から手を伸ばして前方の解除位置に操作すると、図15(b)に示すようにカム57が屈伸リンク55をそのピン56を中心として下方に回動させる。
【0064】
また、ここで、図17に示すようにディスクハロー3とローラー36を下降させて、ローラー36が畦Zの上面に接地して乗ると、図15(c)に示すようにローラー36の上方側への持ち上げ力Pによって屈伸リンク55が支点ピン54を中心に下方に回動して、調整パイプ53との連結角度が鋭角となるので、ローラー36を畦Zの上に残したままディスクハロー3を田畑の土壌表面に下降させることができ、これによりディスクハロー3を用いて枕地や圃場の4隅の耕耘を畦際から余すことなく行うことができる。なお、屈伸リンク55がU字型取付部53aに設けるストッパピン64に当接すると、その下方回動は阻止されるので、それ以上にローラー36を持ち上げることはできない。
【0065】
そして、図18に示すように、この枕地等の耕耘を終えた段階で耕耘作業を一旦中断して、ディスクハロー3とローラー36を図16に示すように非作業位置に上昇させ、トラクタ1の操縦部から手を伸ばして解除操作レバー59を後方の通常耕耘位置に操作する。また、このように操作すると、図15(b)に示す屈伸リンク55の状態においてカム57が作用しない位置に回動すると共に、ローラー36の自重による持ち上げ力Pと反対の力が調整パイプ53に作用して、図15(a)に示す通常耕耘状態の屈伸リンク55の位置に戻るので、その後、図1に示すようにディスクハロー3とローラー36を作業位置に下降させて、通常の耕耘作業を行うことができる。
【0066】
以上、ディスクハロー3やその後方に設けるローラー36について説明したが、このディスクハロー3やローラー36を用いて耕耘した土塊の砕土処理について説明すると、図19に示すように、ディスクハロー3の前列のディスク10群がその湾曲面の向きを左向きに設けている場合には、このディスク10群によって掻き取られた土塊は、矢印で示すように前進走行の左側後上方へ放擲される。また、ディスクハロー3の後列のディスク10群は、その湾曲面の向きを前列と逆の右向きに設けるので、このディスク10群によって掻き取られた土塊や前列で掻き取られた土塊は、矢印で示すように前進走行方向の右側後上方へ放擲される。
【0067】
さらに、後列のディスク10群は、前列のディスク10群によって耕耘することができなかった未耕地を耕耘するため、前列のディスク10群に対して左方向に所定距離ずらして配設している。また、前列と後列のディスク10群と、後列のディスク10群とローラー36は夫々近接させて設けることによって、耕耘作業装置の前後長を短く抑えて狭い圃場での旋回性を保証したり、トラクタ1側の油圧揚力が低くてもこの耕耘作業装置を持ち上げることができるようにする。
【0068】
そして、以上のことからディスクハロー3の前列のディスク10群が掻き取った土塊は、後列のディスク10群の真上近くに放擲されることになって、後列のディスク10群はこの土塊に衝突して、その切断刃によりこの衝突した土塊を細かく砕くので砕土性が向上する。また、後列のディスク10群が掻き取って放擲した土塊は、ローラー36に設ける多数の破砕板42に衝突して、この破砕板42は同様に衝突した土塊を細かく砕く。さらに、破砕板42は耕した耕土表面に突き刺さって作物残渣等を切断しながら後方に向けて掻き上げてこれ等を粉砕する。
【0069】
なお、図24に示すように後列に設けるディスク10の湾曲する円盤10aに孔10dを数個(実施形態にあっては4個)設けると、この孔10dの周縁部に放擲された土塊が当たって破砕されるので砕土性が向上し、また、円盤10aの表面積が孔10dの存在によって少なくなるので、土塊や作物残渣等のディスク10への付着を防止することができる。さらに、ローラー36の円板41にも同様な孔41a、41bを設けることは前述の通りである。
【0070】
ところで、作業機フレーム4の下方に設ける前列と後列のディスク10群の内、左右方向の最外側に位置するディスク10が後上方の外側方へ向けて放擲する土塊は、後列のディスク10群やローラー36の多数の破砕板42に何等衝突することなく、左右の未耕地側にそのまま落ちてしまうので、これ等の土塊は砕土処理されることなく、未耕地側に盛り上がった状態で残されることになる。
【0071】
そこで、このような問題を解決するために、作業機フレーム4の下方に設ける前列と後列のディスク10群の内、左右方向の最外側に位置するディスク10が後上方の外側方へ向けて放擲する土塊を、後列のディスク10群やローラー36の多数の破砕板42が位置する内方側に向かうように放擲方向を変更する偏向板65を前列と後列のディスク10群に対応させて1つずつ設け、これにより、ディスクハロー3の前列と後列のディスク10群で耕耘した土塊を漏れなく、後列のディスク10群やローラー36の多数の破砕板42によって砕土して粉砕することができるようにする。
【0072】
そして、この偏向板65は、図19に示すようにディスクハロー3の前列と後列のディスク10群の側方に設け、より詳細には前列のディスク10群であれば、そのディスク10が左後上方側に向けて土塊を放擲する最も左側に位置するディスク10に対面するように設け、また、その偏向板65によって偏向する土塊が後列のディスク10群の左から右に向けて2番目のディスク10に衝突するように設けることが望ましい。
【0073】
また、後列のディスク10群であれば、そのディスク10が右後方側に向けて土塊を放擲する最も右側に位置するディスク10に対面するように偏向板65を設け、また、その偏向板65によって偏向する土塊が後方に設けるローラー36の破砕板42の右端から内側の端部に衝突するように設けることが望ましい。
【0074】
そこで、この2つの偏向板65は、図20に示すように鋼板で略々羽子板状に形成して、その後部寄りを若干内側に向けて折り曲げて土塊の偏向方向(放出方向)を整えている。また、その柄となる前部寄りの前後方向2箇所に取付孔65a、65bを穿設する。さらに、偏向板65は、それ自体を取り付ける取付フレーム66を備える。
【0075】
この取付フレーム66は、角パイプ66aの左右方向の一端部にアーム66bを溶接固定し、また、アーム66bの下部に雌螺子を加工したボス66cを溶接固定し、さらに、このボス66cより上方のアーム66bの外側面にストッパ66dを溶接固定して構成する。そして、偏向板65は、この取付フレーム66のボス66cにその取付孔65a、65bの何れかを嵌めて、ワッシャ67を入れたボルト68をボス66cの雌螺子に螺合することによって、ボス66cを中心に回動自在に取り付ける。
【0076】
また、偏向板65の取付フレーム66は、図21に示すように前後のディスクフレーム4c、4dに左右位置調節自在に取り付けるものであって、前後のディスクフレーム4c、4dの角パイプ中に取付フレーム66の角パイプ66aを入れて、ディスクフレーム4c、4dの左右端部に形成する孔と、角パイプ66aに穿設する3つの孔66e~66fの内、1つの孔を合致させて両孔にピン69を差し込むことによって、偏向板65を最外側のディスク10の外方側に3つの左右方向となる位置だけ離して設けることができる。
【0077】
従って、例えば、図21(a)に示すようにディスク10の放擲する土塊量や円盤角αが少なければ、偏向板65を最外側のディスク10に近づけて取り付けることによって、前述の望ましい後列のディスク10やローラー36の破砕板42の内側に向けて土塊が放出されるように調節する。また、図21(b)に示すようにディスク10の放擲する土塊量や円盤角αが多ければ、偏向板65を最外側のディスク10から離して取り付けることによって、後列の最外側のディスク10の少なくとも内側に土塊が余裕をもって漏れなく放出されるように調節する。
【0078】
また、図22(a)は偏向板65を取付フレーム66のボス66cに前側の取付孔65aを用いて取り付けた状態を示し、図22(b)は偏向板65を取付フレーム66のボス66cに後側の取付孔65bを用いて取り付けた状態を示す。このように、偏向板65を最外側のディスク10に対して前後にその取付位置を調節する際は、例えば、ディスク10の円盤角αの調節によってディスク10から放擲される土塊の方向が前後方向に変化した場合に、これに同調させて変更することが考えられる。
【0079】
さらに、図23(a)はローラー36を上昇させてディスクハロー3の耕深を深くした耕耘状態を示し、また、図23(b)はローラー36を下降させてディスクハロー3の耕深を浅くした耕耘状態を示し、この何れの耕耘状態であっても偏向板65の下端部は、前述の偏向板65がボス66cを中心に回動自在に取り付けてあることから、ディスク10群の側方の土壌表面に追従して自由に上下動させることができ、これによって偏向板65の下端部からの土塊の漏れ出しを防ぐことができる。
【0080】
なお、図16に示すように、圃場の枕地等でトラクタ1を旋回させるためにディスクハロー3とローラー36を非作業位置に上昇させると、偏向板65は自重で下方へ回転しようとする。しかし、この場合、偏向板65はアーム66bの外側面に設けるストッパ66dに当接すると、それ以上に下方に回転することができなくなって、再びディスクハロー3とローラー36を下降させた際に、偏向板65がディスク10群より先に地表面等に突き当たって破損する虞を無くすことができる。
【0081】
以上、ディスクハロー3に設ける偏向板65について説明したが、前述のローラー36に備える多数の破砕板42の左右端は、図19に示すように前列と後列のディスク10群によって耕耘した既耕地とこれから耕耘する未耕地との略境界線Y上に臨むように整列させて設ける。そのため、ディスクハロー3の前列と後列のディスク10群で耕耘した土塊をローラー36の多数の破砕板42によって漏れなく砕土して粉砕することができると共に、境界線Yから外れた未耕地を無用に砕土することなく、ローラー36による砕土や鎮圧の作用幅を必要最小限に抑えて、ローラー36をコンパクトに纏めることができる。
【0082】
また、図25に示すローラー36は、先に説明した波型の凹凸を先端部に備える長尺な鋼板Qと真っすぐな先端部に鋭利な刃を先端に備える長尺な鋼板Rを、円板41の外周縁に形成する切欠に交互に溶接固定して形成する破砕板42を備える。そして、この第2の実施形態に示すローラー36は、先に説明するディスクハロー3の耕深調節を行うための上下調節手段を設けるものの、この上下調節の解除手段は設けないため、ローラー36を畦に乗り上げさせた状態でのディスクハロー3の耕耘作業はできない。
【0083】
しかし、図26に示すように、このものではローラー36の上下調節手段を構成する調整パイプ53の先端部に設けるU字型取付部53aを左右取付板47に回動自在に取り付けるにあたって、その支点ピン54を左右取付板47に新たに形成する長穴47aに通して両者を連結する。そのため、ネジ式の伸縮調節体(螺子軸杆50と調整パイプ53)によって調節する前方の支点ピン54と後方の支点ピン48との間の芯間長Sに、長穴47a内を支点ピン54が移動する長さに相当する遊びが新たに上下調節手段に加わることになる。
【0084】
従って、上下調節ハンドル52の正逆回転操作によってディスクハロー3の耕深を例えば、図14に示すように深耕、或いは浅耕等に調節して耕耘作業している際は、ローラー36が接地してディスクハロー3の下降を阻止する反力で支点ピン54が長穴47aの前部に移動して、ディスクハロー3の耕深が保持され、また、ローラー36は自ら回転して土塊を砕土して粉砕する。
【0085】
しかし、ここで高速で耕耘作業を行っているトラクタ1が圃場の凹凸によってピッチングしてその車体が前低後高状に傾くと、トラクタ1の後部に三点リンク2で連結するディスクハロー3とローラー36も上方に浮き上がろうとする。ただその場合、上下調節手段には長穴47aによる遊びを前述の通り設けているから、少なくともローラー36はその遊びが支点ピン54の長穴47aの後端部への移動によって無くなる迄、自重によって下降するので、それまでと同様に地表に接地して土塊を砕土して粉砕することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここで開発する比較的小型のディスクハロー3とローラー36からなる耕耘作業装置を、逆に大型のトラクタに連結して能率的に作業を行う場合は、前列や後列のディスク10群のディスク枚数を増やしたり、長い破砕板42を備えたローラー36を用意する等、全体のサイズアップをおこなっても支障はなく、その点で本発明は、前述の実施形態に必ずしも限定するものではない。
【符号の説明】
【0087】
1 トラクタ(牽引車両)
3 ディスクハロー
4 作業機フレーム
10 ディスク
11 ディスクアーム
13 ディスクブラケット
33 圧縮コイルスプリング(スプリング)
36 ローラー
42 破砕板
65 偏向板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26