(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172588
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241205BHJP
H01H 9/02 20060101ALI20241205BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20241205BHJP
C08L 101/04 20060101ALI20241205BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20241205BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08L101/00
H01H9/02 Z
H01R13/46 301B
C08L101/04
C08L5/00
C08K3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090401
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】今泉 豊博
(72)【発明者】
【氏名】大谷 修
【テーマコード(参考)】
4J002
5E087
5G052
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AA042
4J002BB021
4J002BB111
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4J002BC112
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4J002BD151
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4J002DE096
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5E087KK05
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5G052AA03
5G052AA04
5G052BB06
5G052HA14
(57)【要約】
【課題】大気汚染及び水質汚染等の環境汚染に対する安全性が高く、かつ高い難燃性を有する新規な電子部品を提供する。
【解決手段】リレー(10)は、樹脂材料、臭素系難燃剤、及び無機系難燃助剤を含む、難燃性樹脂組成物から成形されてなるベース(2)、カード(3)、及びケース(4)を備え、前記無機系難燃助剤は、第IV族の元素から選択される少なくとも1つの元素を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料、臭素系難燃剤、及び無機系難燃助剤を含む、難燃性樹脂組成物から成形されてなる成形体を備え、
前記無機系難燃助剤は、第IV族の元素から選択される少なくとも1つの元素を含んでいる、電子部品。
【請求項2】
電気接点、若しくは、前記電気接点及びコイルを備え、
前記成形体が、前記電気接点及び前記コイルを封入しているか、又は、前記電気接点若しくは前記コイルに接触している、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記成形体は、ベース、ケース、カード、スプール、及びハウジングから選択される少なくとも1つの成形体である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
リレー、スイッチ、又はコネクタである、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記樹脂材料はポリエステル系樹脂である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記前記成形体は、肉厚が最も薄い部位の厚さが2.0mmよりも薄い、請求項1~5の何れか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記前記成形体は、肉厚が最も薄い部位の厚さが0.5mm以下である、請求項5に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、100重量部のポリエステル樹脂に対し、所定の臭素系難燃剤1~80重量部と、ガラス繊維10~100重量部と、アンチモン系難燃助剤1~30重量部と、を含んでなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物が記載されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、ベース樹脂と、ハロゲン系難燃剤と、有機ホスフィン酸塩および塩基性窒素含有化合物のオキソ酸塩から選択された少なくとも1種の有機・無機酸塩と、電気特性向上剤とで構成され、電気特性向上剤が、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂および周期表第4族金属化合物から選択された少なくとも1種で構成されている難燃性樹脂組成物が記載されている。特許文献2には、難燃性樹脂組成物がアンチモン含有化合物(三酸化アンチモン)等の難燃助剤を含むことも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-105433号公報
【特許文献2】再公表特許第2007/007663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示された樹脂組成物に含まれる三酸化アンチモンは、皮膚や粘膜に対する弱い刺激性が報告されており、発がん性についても議論されている。
【0006】
より具体的には、2013年からRohs指令において、三酸化アンチモンの規制について議論が開始されている。2019年12月に再評価の提案があり、規制の方向性は2020年に一旦示される計画であったが、関係者へのヒアリングから、現状では三酸化アンチモンの使用は規制されない方針になると予想されている。また、国際発がん性機関(IARC)において、三酸化アンチモンの発がん性は、「人に対して発がん性がある可能性がある(2B)」と定義されている。現在、追加検査が実施されており、その結果により、「人に対しておそらく発がん性がある(2A)」とレベルが上がればREACH規制の対象になり得る。
【0007】
上述の事情から、将来的な三酸化アンチモンの規制を見据え、大気汚染及び水質汚染等の環境汚染に対する安全性が高い難燃助剤を用いる電気部品は有用である。しかしながら、三酸化アンチモン以外の難燃助剤を用いる樹脂組成物の成形体では、十分な難燃性を達成することが困難であるという問題がある。
【0008】
このため、特許文献1及び2に開示された電子部品よりも、大気汚染及び水質汚染等の環境汚染に対する安全性が高く、かつ高い難燃性を有する新規な電子部品が求められている。
【0009】
本発明は、上述の問題を鑑みなされたものであり、その目的は、大気汚染及び水質汚染等の環境汚染に対する安全性が高く、かつ高い難燃性を有する新規な電子部品、及び当該電子部品を製造するための難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電子部品は、樹脂材料、臭素系難燃剤、及び無機系難燃助剤を含む、難燃性樹脂組成物から成形されてなる成形体を備え、
前記無機系難燃助剤は第IV族の元素から選択される少なくとも1つの元素を含んでいる。
【0011】
上記構成により、大気汚染及び水質汚染等の環境汚染に対する安全性が高く、かつ高い難燃性を有する新規な電子部品が提供できる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る電子部品は、上記態様において、電気接点、若しくは、前記電気接点及びコイルを備え、前記電気接点及び前記コイルを封入しているか、又は、前記電気接点若しくは前記コイルに接触してもよい。
【0013】
上記構成により、電気接点、若しくは、前記電気接点及びコイルを備えている電子部品の大気汚染及び水質汚染等の環境汚染に対する安全性を高めることができ、かつ当該電子部品に高い難燃性を付与できる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る電子部品は、上記態様のいずれかにおいて、前記成形体は、ベース、ケース、カード、スプール、及びハウジングから選択される少なくとも1つの成形体であるとよい。
【0015】
上記構成を備えた成形体によって、高い難燃性を備えた電子部品を提供することができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る電子部品は、上記態様のいずれかにおいて、リレー、スイッチ、又はコネクタであるとよい。
【0017】
上記構成により、高い難燃性を備え、大気汚染及び水質汚染等の環境汚染に対する安全性が高い電子部品を提供できる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る電子部品は、上記態様のいずれかにおいて、前記樹脂材料はポリエステル系樹脂であるとよい。
【0019】
上記構成により、肉薄部の成形性に優れた電子部品として提供でき、さらには、高い難燃性及び高い機械強度を備えた電子部品を提供することができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る電子部品は、上記態様のいずれかにおいて、前記成形体の肉厚が最も薄い部位の厚さが2.0mmよりも薄いことが好ましい。
【0021】
上記構成を備えた本発明の一態様に係る電子部品は、小型化さたれ電子部品であり、かつ、高い難燃性を備えている。
【0022】
また、本発明の一態様に係る電子部品は、上記態様のいずれかにおいて、前記成形体の肉厚が最も薄い部位の厚さが0.5mm以下であることが好ましい。
【0023】
上記構成を備えた本発明の一態様に係る電子部品は、さらに小型化さたれ電子部品であり、かつ、高い難燃性を備えている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、大気汚染及び水質汚染等の環境汚染に対する安全性が高く、かつ高い難燃性を有する新規な電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子部品であるリレー10の概略を説明する図である。
【
図2】
図2は、カード31の断面を例示し、電子部品を構成する成形体の最小肉厚部の厚さa1を説明する図である。
【
図3】
図3は、UL94燃焼性試験の規格に沿った難燃性評価装置の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、詳細に説明する。
【0027】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0028】
§1 適用例
<電子部品>
本発明の一実施形態に係る電子部品は、樹脂材料、臭素系難燃剤、及び無機系難燃助剤を含む、難燃性樹脂組成物から成形されてなる成形体を備え、前記無機系難燃助剤は第IV族の元素から選択される少なくとも1つの元素を含んでいる。
【0029】
以下では、便宜上、本発明の一実施形態に係る電子部品が備える、成形体の難燃性樹脂組成物に含まれる「無機系難燃助剤」を「所定の無機系難燃助剤」と記載する。
【0030】
本発明の一実施形態に係る電子部品は、電気回路の一部を構成する電子部品であり得、例えば、電気回路のオン/オフ、電気回路の切り替え、又は、電気回路への接続のための電気接点を有する電子部品であり得る。電子部品は、少なくとも1つの電気接点を備えていてもよく、磁気回路を構成するコイル及び鉄心を備えていてもよい。
【0031】
電子部品が備える成形体は、外部回路を介して通電される各部材によって加熱される部材であり得、かつ、絶縁性が求められる成形体であり得る。
【0032】
電子部品は、所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物の成形体を備えていることで、難燃助剤として三酸化二アンチモン(Sb2O3、以下、三酸化アンチモンと記載することもある)を含む成形体を備える電子部品と同等の難燃性を備え得る。
【0033】
よって、一実施形態に係る電子部品は、三酸化アンチモンを用いた電子部品、及び難燃性樹脂組成物に劣らない難燃性を備えつつ、大気汚染、及び水質汚染等の環境汚染の観点からも、安全性が高い電子部品として提供することができる。
【0034】
一実施形態に係る電子部品には、例えば、リレー、スイッチ、及びコネクタ等を挙げることができる。また、一実施形態に係る電子部品は、例えば、センサー等であってもよい。
【0035】
§2 構成例
〔1〕リレー
図1は、一実施形態に係る電子部品であるリレー10の概略を説明する図である。リレー10は、接点(電気接点)1、ベース2、カード3、ケース4、コイル5、スプール6、及び鉄片7を備えている。
図1において、ベース2、カード3は、接点1に接触し、ケース4は接点1を封入している。
【0036】
接点1は、固定片1aと、可動片1bとを備えている。固定片1aは、固定接点a、固定片端子1cを備え、可動片1bは、可動接点b及び可動片端子1dを備えている。
【0037】
固定片1a及び可動片1bは、互いに対向するようにベース2に固定されている。可動片1bは、可動接点bが固定接点aから離れるように付勢されている。固定片端子1c及び可動片端子1dは、いずれも、リレー10の外部回路に接続される端子である。
【0038】
可動片1bは、カード3が可動片1bに向かって移動したとき、カード3と共に移動し、固定接点aに可動接点bを接触させる。これにより、固定片端子1cと可動片端子1dとが通電する。この通電により接点1が発熱し、固定片1a及び可動片1bを介してベース2、さらには、カード3、及びケース4が加熱され、さらにはスプール6も加熱され得る。それ故に、ベース2、カード3、ケース4、さらにはスプール6には高い難燃性が求められる。
【0039】
ベース2は、固定片1a、可動片1b、コイル5、鉄心5a、鉄片7のそれぞれを、互いに絶縁距離を確保できる位置に固定するための成形体であり、所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物から成形された成形体であり得る。
【0040】
カード3は、鉄片7から加わる力を可動片1bに伝達する。カード3は、可動片1bとコイル5との絶縁距離を確保しつつ、固定片1aの固定接点aに向かって可動片1bの可動接点bを移動させるための成形体であり、所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物から成形された成形体であり得る。コイル5が通電したときに、当該コイル5の内側に配置された鉄心5aに発生する磁力により鉄片7の一端をスプール6に向かって吸引される。これに伴い、鉄片7の他端が移動することでカード3に力が加えられる。
【0041】
ケース4は、接点1に対する防塵、接点1及びコイル5の絶縁距離の確保、並びに接点1及びコイル5の保護のための成形体であり、所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物から成形された成形体であり得る。
【0042】
リレー10は、コイル5は、鉄心5a、コイル端子5bを備えている。リレー10は、コイル端子5bに通電したときに生じるコイル5の磁束によって鉄心5aを磁気回路における電磁石とする。コイル5は、ワイヤ端子と称されこともあり、継続的に通電されたときにおいて熱を発生し得る。当該熱によっても、ベース2、カード3、及びケース4、スプール6が加熱され得る。
【0043】
スプール6は、コイル5と鉄片7との絶縁距離を確保するための成形体であり、所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物から成形された成形体であり得る。スプール6は、コイル5と鉄片7との絶縁距離を保ちつつ、ベース2にコイル5を固定するための成形体であってよい。
【0044】
外部回路によってコイル5への通電が遮断されたとき、鉄片7は、ヒンジバネ7aによって、スプール6から離れるように付勢される。このとき、鉄片7によるカード3への押圧が解かれ、これに伴い可動接点bが固定接点aから離れる。これにより、接点1への通電が遮断される。
【0045】
その他、一実施形態に係るリレーは、
図1に例示されるリレー10に限定されず、例えばヨーク等の他の金属部材を備えていてもよい。また、一実施形態に係るリレーは、ベース、カード、ケース、スプール以外に、所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物から成形された成形体を備えていてもよい。
【0046】
リレーが備えるベース、カード、ケース、及びスプールの等の成形体には、上述の接点、コイル、鉄芯、及び鉄片等の部材の配置を規定するための凹凸、ベースとケースとを所定の配置において互いに嵌合させるためのガイドとして形成された凹凸、ケース内におけるカードの動作を誘導するための凹凸等の凹凸が形成され得る。成形体の凹凸は、リブ等の凹凸、及びリレーに付与された意匠の形状に由来する凹凸であってもよい。これら凹凸により成形体のそれぞれには、肉厚が最も薄い部位とその厚さが規定される。また、成形体の凹凸は、電気接点等を挿通する貫通孔等の孔を規定する凹凸として設けられていてもよい。
【0047】
図2は、カード31の断面を例示し、電子部品を構成する成形体の最小肉厚部の厚さa1の定義を説明する図である。
【0048】
図2に示す、カード31は、平面部31aに鉄片(不図示)が当接され、凸部31bに可動接点(不図示)が当接されるカードであり、これら鉄片及び可動接点の動作に応じて、
図2に示すX方向に沿って移動する。
図2におけるX方向は、カード31の厚さ方向でもある。厚さ方向とは、成形体の基準となる平面に対する法線方向でもあり得る。
【0049】
図2に示すように、カード31は厚さ方向に沿って、厚さa1、a2、及びa3の凹凸が形成されており、Y方向、つまり、縦幅方向に沿ってこれら凹凸の厚さが厚さb1、及びb2と規定される。カード31では、a1、b1、a2、b2、及びa3の順に厚さが厚くなっており、a1の肉厚が最も薄く、a3の肉厚が最も厚い。従って、カード31において、肉厚が最も薄い部位の厚さa1が最小肉厚部の厚さに該当する。なお、便宜上、図示することを省略しているが、
図2に示す、Z方向、つまり、カード31の横幅方向において、a1よりも薄い部位があれば、そのa1よりも薄い部位が最小肉厚部となる。
【0050】
成形体が、カードではなく、例えば、ケース、及びハウジング等のような複数の面を有する成形体である場合、成形体の全ての面のうち最も肉厚が薄い部位が最小肉厚部として規定される。最小肉厚部は、成形体において厚さ方向のみならず、縦幅方向、横幅方向においても最も肉厚が薄い部位である。
【0051】
成形体における最小肉厚部の厚さは2.0mmよりも薄く、好ましくは0.8mmよりも薄く、さらに好ましくは0.5mm以下であるとよい。また、最小肉厚部の厚さが、0.3mm以上であることにより、電子部品における各成形体の機械強度を維持することができ、所定の無機系難燃助剤を含む成形体を採用することにより三酸化アンチモンを難燃助剤として用いる電子部品に劣らないレベルの難燃性を達成できる。
【0052】
カード31に例示される成形体の厚さa3は、成形体の最小肉厚部以外の厚さであり、厚さa1よりも厚い範囲で設計すればよい。例えば、最小肉厚部以外の成形体の厚さa3は、2.0mm以上にすることで、高い難燃性を備えつつ、電子部品の高い機械強度を備える電子部品を提供できる。また、最小肉厚部以外の成形体の厚さa3は、成形体の種類に応じて適宜設計すればよい。
【0053】
カード31に例示される成形体の厚さa2は、a1の厚さ以上、a3の厚さ以下であればよい。また、成形体の縦幅方向の厚さb1及びb2は、成形体の最小肉厚部の厚さa1よりも厚い範囲で適宜設計すればよい。ただし、成形体においてこれら厚さb1及びb2に相当する部位の肉厚が最も薄い場合、当該部位の厚さb1及びb2が最小肉厚部として設計されるべきであることは理解されたい。
【0054】
高い難燃性が求められるリレーには、例えば、高電流及び/又は高電圧条件にて外部回路の開閉、又は切り替えが求められるリレーが挙げられ、さらに小型化が求められるリレーが挙げられる。一実施形態に係るリレーとして、より具体的には、例えば、パワーリレー、マイクロリレー、及びサーフェス・マウントリレー等が挙げられる。
【0055】
〔2〕スイッチ
一実施形態に係る電子部品は、上述のリレーに限定されない。一実施形態に係る電子部品には、例えば、スイッチが挙げられる。
【0056】
スイッチは、電気回路の一部を構成するスイッチであり、電気回路の切り替えを行なうための電子部品である。スイッチは、アクチュエータ部、スナップアクション機構、電気接点及びハウジングを備えている。スイッチのハウジングは、スナップアクション機構、及び電気接点の絶縁距離を保ちつつ、これらを保護するハウジングを備えている。スイッチにおいて、ハウジングはカバーと称されることもある。
【0057】
スイッチは、アクチュエータ部によって、ハウジングの内部に配置されたスナップアクション機構にハウジング外部の力、又は動作を伝達する。スイッチが備えるアクチュエータ部のタイプには、押しボタン型、及びレバー型等が挙げられる。これらアクチュエータ部のタイプはスイッチの用途に応じて適宜選択すればよい。
【0058】
スイッチは、スナップアクション機構として導電性バネを備え、当該導電性バネの端部には可動接点が設けられている。また、スイッチが備える電気接点は、ハウジングの内部において互いに対峙する2つの固定接点と、当該2つの固定接点の間において、導電性バネに設けられた可動接点とによって構成され得る。スナップアクション機構の端部に設けられた可動接点は、アクチュエータ部から伝達された動作により、2つの固定接点のうちのいずれに接触するかを切り替えられる。ここで、スナップアクション機構、及び2つの固定接点のそれぞれは、ハウジングの外部に接続される外部端子を備えている。スナップアクション機構が備える可動接点は、ハウジング内部に接触する2つの固定接点のいずれか一方に接触して通電し、このとき残りの他方の固定接点との通電を遮断する。これにより、スイッチは、外部の電気回路の切り替えを行うことができる。スイッチは、ハウジング内において接点が通電することにより発熱する。よって、スイッチのハウジングには高い難燃性が求められる。
【0059】
よって、一実施形態に係るスイッチは、ハウジングが所定の無機系難燃助剤を含む、難燃性樹脂組成物から成形されてなるとよい。
【0060】
スイッチが備えるハウジング等の成形体には、リレーの場合と同じく、アクチュエータ部、スナップアクション機構、及び電気接点等の部材の配置を規定するための凹凸等が形成されている。ここで、一実施形態に係るスイッチが備えるハウジングは、上述のカード31の場合と同じく、最小肉厚部の厚さを設計すればよい。また、ハウジングの最小肉厚部の厚さ以外の厚さも、適宜設計すればよい。一実施形態に係るスイッチは、ハウジングの最小肉厚部の厚さを設計することで、スイッチ自身の小型化を達成しつつ、三酸化アンチモンを含む成形体を備えたスイッチに劣らない高い難燃性を達成できる。
【0061】
一実施形態に係るスイッチが備えるハウジングは、複数のパーツを組み合わせて1つのハウジングとなるように成形されていてもよい。また、スイッチは、ハウジング以外に所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物により成形された成形体を備えていてもよい。
【0062】
一実施形態に係るスイッチの具体例には、例えば、高電流及び/又は高電圧条件にて切り替えが求められるスイッチが挙げられ、さらに小型化が求められるスイッチが挙げられる。一実施形態に係るスイッチとして、より具体的には、マイクロスイッチ、超小型基本スイッチ、シール形極超小形基本スイッチ等のスイッチが挙げられる。
【0063】
〔3〕コネクタ
一実施形態に係る電子部品は、上述のリレー、及びスイッチに限定されない。一実施形態に係る電子部品には、例えば、コネクタが挙げられる。
【0064】
コネクタは、2つの電気回路の接続、又は電気回路と電源との接続を行なう電子部品であり得る。コネクタは、電気回路との接続のための接点(ピン、電極ともいう)と、当該接点を保護し、固定するためのハウジングとを備えている。ここで電気回路は、プリント基板やフレキシブル基板であり得る。コネクタは、各電気回路を接続した接点に電気信号又は電流が流れることで接点が発熱する。よって、コネクタのハウジングには高い難燃性が求められる。
【0065】
よって、一実施形態に係るコネクタは、ハウジングが所定の無機系難燃助剤を含む、難燃性樹脂組成物から成形されてなるとよい。
【0066】
コネクタの形状は、ケーブルに取り付けられるプラグ、ジャックであってよく、基板等の電気回路に取り付けられるレセプタクルであってもよい。また、コネクタは、ピンインサート型であってもよく、ソケットインサート型であってもよい。コネクタは、例えば、音声・映像用コネクタ、通信用コネクタ、及び電源用コネクタであってよい。
【0067】
コネクタは、規格に応じて接点の配置が定められる。よって、コネクタのハウジングは、接点の配置に準じてその形状、すなわち凹凸が成形されている。ここで、一実施形態に係るコネクタが備えるハウジングは、上述のカード31と同じく、最小肉厚部の厚さを設計すればよい。また、コネクタにおけるハウジングの最小肉厚部の厚さ以外の厚さも、カード31と同様に設計すればよい。一実施形態に係るコネクタは、ハウジング(成形体)の最小肉厚部の厚さを設計することで、コネクタ自身の小型化を達成しつつ、所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物から形成されてなる成形体により、高い難燃性を達成できる。
【0068】
一実施形態に係るコネクタが備えるハウジングは、複数のパーツを組み合わせて1つのハウジングとなるように成形されていてもよく、ハウジング以外に所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物により成形された成形体を備えていてもよい。例えば、一実施形態に係るコネクタは、接点を接続した後に、当該コネクタを電気回路に固定するための固定機構(ロックレバー)を備えていてもよく、当該固定機構を、所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物から形成されてなる成形体としてもよい。
【0069】
一実施形態に係るコネクタには、例えば、フレキシブルフラットケーブル(FFC)コネクタ、ハーフピッチコネクタ等のコネクタが挙げられる。また、コネクタは、例えば、DIN、MIL等の規格に対応するコネクタであってもよい。
【0070】
〔4〕難燃性樹脂組成物
一実施形態に係る電子部品は、所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物から成形された成形体を備えている。難燃性樹脂組成物は、樹脂材料、臭素系難燃剤、及び所定の無機系難燃助剤を含み、これら以外の他の材料が含まれていてもよい。
【0071】
〔4-1〕無機系難燃助剤
三酸化アンチモンは難燃化助剤として用いられているが、将来的に規制の対象になり得る。本発明の発明者は、肉薄である、言い換えれば、成形体の厚さが薄い電子部品に、難燃助剤として所定の無機系難燃助剤を含む難燃性樹脂組成物の成形体を使用することで、難燃助剤として三酸化アンチモンを含む難燃性樹脂組成物の成形体を使用する電子部品と同等の難燃性を得ることができる。
【0072】
三酸化アンチモンを含む樹脂成形材料は、燃焼時の熱とハロゲン系難燃剤に由来するハロゲンとによってハロゲン化アンチモンを生成し、当該ハロゲン化アンチモンが熱により気化する。ハロゲン化アンチモンは、熱に対して安定性が高く、樹脂成形材料の近傍において活性ガス濃度が高くなることを抑制し、かつ、酸素が燃焼中の樹脂成形材料に供給されることを抑制する。これにより、樹脂成形材料に難燃性がもたらされる。ここで、活性ガスとは、樹脂成形材料が熱により分解することにより発生する可燃性有機物、つまり、分解ガスのことを指し得る。
【0073】
例えば、三酸化二アンチモン(Sb2O3、以下単に三酸化アンチモンと記載することもある)は以下に示す反応式に沿って、臭化アンチモンを生成する。
【0074】
【0075】
三酸化アンチモンは、労働基準法では、業務療養補償すべき疾病を起こす化学物質等、労働安全衛生法では、表示・通知対象物質、毒物及び劇物取締法では、劇物(毒物及び劇物指定令第二条)に指定されている。三酸化アンチモンは、大気汚染防止法では、有害大気汚染物質(政令第2条第1項第7号)に指定され、水質汚濁防止法においても、指定物質(政令第3条の3第47号)とされている。また、GHS判定では、三酸化アンチモンは、区分1Bとして「発がんのおそれあり」とされている。
【0076】
これに対し、以下に説明する所定の無機系難燃助剤は、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法について非該当であり、GHS判定の健康に対する有害性についても区分1に該当する。よって、労働作業環境、大気、水質等の環境汚染に対する安全性の面から三酸化アンチモンの代替として有望な、無機系難燃助剤である。
【0077】
所定の無機系難燃助剤は、第IV族の元素から選択される少なくとも1つの元素を、無機元素として含んでいる。所定の無機系難燃助剤が含む、第IV族の元素は、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニムウ(Hf)からなる群から選択されることが好ましく、ジルコニウム(Zr)、ハフニムウ(Hf)からなる群から選択されることがより好ましい。これら、第IV族の元素は、何れも、4価の酸化物として入手することが可能であり、何れも、4価のハロゲン化物を生成する点において共通している。
【0078】
所定の無機系難燃助剤には、第IV族元素である、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)から選択される無機元素の酸化物である無機酸化物が挙げられる。当該無機酸化物には、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(ZrO2)等が挙げられ、これら無機酸化物の前駆体である無機水酸化物、又は、ゾル-ゲル法等により得られる無機水酸化物のゲルであってもよい。中でも、電子部品により高い難燃性を付与できるという観点から、所定の無機系難燃助剤は酸化ジルコニウム(ZrO2)であることがより好ましい。無機系難燃助剤は、臭素系難燃剤とともに燃焼することで、臭化チタン(TiBr4)、臭化ジルコニウム(ZrBr4)、又は、臭化ハフニウム(HfBr4)を生成する。
【0079】
すなわち、所定の無機系難燃助剤は、無機粉末として入手され、当該無機粉末は、多孔質粒子の集合体である無機粉末であってよい。無機粉末は、例えば、平均粒子径(D50)が0.1μm~100μmであればよく、1μm~50μmであることがより好ましく、0.1μm~100μmの範囲内において、平均粒子径(D50)が小さいほど、より高い難燃性を難燃性樹脂組成物の成形体にもたらすことができる。
【0080】
難燃性樹脂組成物の成形体に含まれる所定の無機系難燃助剤の含有量は、後述する臭素系難燃剤の含有量との比率により調整すればよい。例えば、臭素系難燃剤の含有量:所定の無機系難燃助剤の含有量は、8:1~1:1の範囲内であることが好ましく、4:1~2:1の範囲内であることがより好ましい。難燃性樹脂組成物における臭素系難燃剤の含有量:所定の無機系難燃助剤の含有量は、8:1~1:1の範囲内において、より所定の無機系難燃助剤の含有量を多くすることで、臭素系難燃剤の難燃性を十分に発揮されせることができる。また、難燃性樹脂組成物における臭素系難燃剤の含有量:所定の無機系難燃助剤の含有量は、8:1~1:1の範囲内において、より所定の無機系難燃助剤の含有量を少なくすることで、難燃性樹脂組成物を含む成形体の成形性を高めることができる。よって、所定の無機系難燃助剤を用いつつ、難燃助剤として三酸化アンチモンを用いた成形体を備える電子部品に劣らない難燃性を得ることができる。また、樹脂材料に難燃助剤として所定の無機系難燃助剤が含有されることで、三酸化アンチモンがRohs指令及びREACH規制等において規制対象となったとしても、高い難燃性を備えた電子部品を提供することができる。
【0081】
〔4-2〕臭素系難燃剤
臭素系難燃剤は、難燃性樹脂組成物の成形体が燃焼したときにともに燃焼し、所定の無機系難燃助剤への臭素の供給源となる。臭素系難燃剤は、例えば、TBAエポキシオリゴマー、TBAポリカーボネートオリゴマー、臭素化ポリスチレン、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタンなどが挙の高分子量タイプの難燃剤であることが好ましい。本明細書中、TBAはテトラブロモビスフェノールAの略記である。また、臭素系難燃剤は、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、トリブロモフェール、及びヘキサブロムシクロデカンを挙であってもよい。高分子量タイプの臭素系難燃剤を用いることが成形体表面へのブリードを防ぐことができ、かつ使用禁止物質に該当しないことから好ましい。
【0082】
難燃性樹脂組成物の成形体に含まれる臭素系難燃剤の含有量は、限定されるものではないが、樹脂材料を100質量部として、5~50重量部であるとよく、5~20重量部であることが好ましく、8~18重量部であることがより好ましい。100質量部の樹脂材料に対し、5質量部以上の臭素系難燃剤を用いることで、所定の無機系難燃助剤に十分な臭素を供給でき、これにより、電子部品の難燃性を高めることができる。また、100質量部の樹脂材料に対し、50質量部以下の臭素系難燃剤を用いることで、成形時における難燃性樹脂組成物の流動性、及び難燃性樹脂組成物から成形される成形体の機械的強度を高めることができる。よって、電子部品を好適に小型化させることができる。
【0083】
〔4-3〕樹脂材料
樹脂材料は、例えば、6ナイロン、66ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、PC-ABS(ポリカーボネート-アクリロニトリルブタジエンスチレンのポリマーアロイ)等のエンジニアリングプラスチック;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、ポリメチルメタクリレート等の汎用プラスチック;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコン樹脂、ポリウレタン等の熱可塑性プラスチック;ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフロオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のスーパーエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。これらの樹脂材料の中でも、成形体の成形し易さ、及び成形体の機械的強度、並びに製造コストという観点から、樹脂材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチックとしてのポリエステル系樹脂が好ましい。
【0084】
エンジニアリングプラスチックとしてのポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分からなり、例えば、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ポリオキシメチレングリコール等の脂肪族グリコールが挙げられる。
【0085】
〔4-4〕その他の組成
難燃性樹脂組成物は、その他の組成として、例えば、強化剤を含んでいてもよい。強化剤には、ガラス繊維、ウォラストナイト、ゾノライト、セピオライト、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、層状ケイ酸塩、有機化処理ベントナイト等が挙げられる。難燃性樹脂組成物は、100質量部の樹脂材料に対し、1~50質量部の強化剤が含まれていることが好ましい。100質量部の樹脂材料に対し、1質量部以上の強化剤を含んでいることにより、小型の電子部品においても、樹脂組成物に由来する機械的強度を高めることができる。また、100質量部の樹脂材料に対し、50質量部以下の強化剤を含んでいることにより、成形体を成形するときにおける難燃性樹脂組成物の流動性を維持することができる。
【0086】
難燃性樹脂組成物は、その他の組成として、酸化防止剤、加水分解抑制剤、滑剤、分散湿潤剤、シランカップリング剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0087】
難燃性樹脂組成物は、例えば、ヘンシエルミキサー等の公知の混合機により、樹脂材料、臭素系難燃剤、及び所定の無機系難燃助剤を予備的に混合し、その後、2軸押出し機等の公知の溶融混練装置により、溶融混練した後に、ペレット化するとよい。溶融混練時おける加熱温度及び混練時間は、難燃性樹脂組成物に含まれる、樹脂材料の種類、及び臭素系難燃剤、及び所定の無機系難燃助剤等の配合量等に応じて適宜設計すればよい。
【0088】
また、難燃性樹脂組成物からの成形体の成形方法には、押出成形、プレス成形等の公知方法が挙げられ、難燃性樹脂組成物の種類、及び製造すべき成形体の大きさに応じて適宜設計すればよい。
【0089】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る電子部品は、樹脂材料、臭素系難燃剤、及び無機系難燃助剤を含む、難燃性樹脂組成物から成形されてなる成形体を備え、前記無機系難燃助剤は、第IV族の元素から選択される少なくとも1つの元素を含んでいる。
【0090】
本発明の態様2に係る電子部品は、前記態様2において、電気接点、若しくは、前記電気接点及びコイルを備え、前記成形体が、前記電気接点及び前記コイルを封入しているか、又は、前記電気接点若しくは前記コイルに接触し得る。
【0091】
本発明の態様3に係る電子部品は、前記態様1又は2において、前記成形体は、ベース、ケース、カード、スプール、及びハウジングから選択される少なくとも1つの成形体であるとよい。
【0092】
本発明の態様4に係る電子部品は、前記態様1~3の何れかにおいて、リレー、スイッチ、又はコネクタであるとよい。
【0093】
本発明の態様5に係る電子部品は、前記態様1~4の何れかにおいて、前記樹脂材料はポリエステル系樹脂であるとよい。
【0094】
本発明の態様6に係る電子部品は、前記態様1~5の何れかにおいて、前記前記成形体は、肉厚が最も薄い部位の厚さが2.0mmよりも薄いことが好ましい。
【0095】
本発明の態様7に係る電子部品は、前記態様1~6の何れかにおいて、前記前記成形体は、肉厚が最も薄い部位の厚さが0.5mm以下であることが好ましい。
【実施例0096】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0097】
〔1〕難燃性樹脂組成物の作成
〔サンプル1〕
まず、樹脂材料としてノバデュラン(登録商標)(繊維強化型ポリブチレンテレフタレート;PBT,GF30%:三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)を120℃、8時間の条件で熱風乾燥した。乾燥後、100質量部の樹脂材料に対し、12質量部の臭素系難燃剤ピロガード(第一工業製薬株式会社製)と、4質量部の酸化ジルコニウム(ZrO2;製品名:酸化ジルコニウム,株式会社高純度化学製)とを混合し、スクリュー径25mmのベント付き2軸押出し機を用いて真空に引きながら溶融混練した。2軸押出し機における押出は、シリンダー温度250℃、回転数120rpm、吐出量6Kg/hの条件で行なった。ダイスから吐出した樹脂組成物のストランドを冷却水に通し、切断することでサンプル1の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。
【0098】
〔サンプル2〕
サンプル1の難燃性樹脂組成物における4質量部の酸化ジルコニウムを、4質量部の酸化ハフニウム(HfO2;製品名:酸化ハフニウム,株式会社高純度化学製)に変更した以外は、サンプル1と同じ条件でサンプル2の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。
【0099】
〔サンプル3〕
サンプル1の難燃性樹脂組成物における4質量部の酸化ジルコニウムを、4質量部の酸化ゲルマニウム(GeO2;製品名:酸化ゲルマニウム,株式会社高純度化学製)に変更した以外は、サンプル1と同じ条件でサンプル3の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。
【0100】
〔サンプル4〕
サンプル1の難燃性樹脂組成物における4質量部の酸化ジルコニウムを、4質量部の酸化スズ(SnO2;製品名:酸化スズ(IV),林純薬工業株式会社製)に変更した以外は、サンプル1と同じ条件でサンプル4の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。
【0101】
〔サンプル5〕
サンプル1の樹脂組成物における4質量部の酸化ジルコニウムを、4質量部の酸化アンチモン(Sb2O3;製品名:酸化アンチモン(III),関東化学社製)に変更した以外は、サンプル1と同じ条件でサンプル5の難燃性樹脂組成物のペレットを作成した。
【0102】
〔2〕試験片の作成
サンプル1~5の難燃性樹脂組成物のペレットのそれぞれから、難燃性評価のための試験片(成形体)の作成を行なった。型締め力40tの成形機を用い、加熱温度245℃にて樹脂組成物のペレットを加熱しつつ、押圧し、約89mm×89mm×厚さ0.4mmの平板を成形した。この平板を任意の方向で切削加工し、85mm長×1.7mm×厚さ0.4mmの試験片を作成した。同様にして、サンプル1~5の難燃性樹脂組成物のペレットのそれぞれから、85mm長×1.7mm×厚さ0.8mmの試験片、及び、85mm長×1.7mm×厚さ1.6mmの試験片を作成した。
【0103】
次いで、前処理として、作成した各試験片を、まず、23±2℃、50±10%RHの恒温槽に静置し、48時間放置した。
【0104】
〔3〕難燃性評価
図3は、UL94燃焼性試験の規格に沿った難燃性評価装置の概略を説明する図である。
図3に示す、難燃性評価装置を用い、UL94燃焼性試験の規格に沿って、難燃性の評価を行った。具体的には、作成した試験片(
図3の試料)の上端部をクランプで挟持し、当該試験片を垂直にセッティングした。セッティングした試験片の下端にバーナーを用い10±0.5秒間の条件で接炎した。1回目の離炎後の残炎時間(t1)を測定し、炎が消えたらすぐに再び10±0.5秒間接炎した。2回目の離炎後の残炎時間(t2)およびアフターグロー時間(t3)を測定した。ついで、以下の表1に示すランク評価基準に沿って、サンプル1~3のUL94燃焼試験を行なった。
【0105】
【表1】
UL94燃焼試験の結果として、表1におけるV-2以上のものを「○」として評価し、V-2の基準に満たなかったもの(つまり、V-1、V-0、HB)を「×」として評価した。
【0106】
【0107】
表2に示す、サンプル1及び2の難燃性樹脂組成物の成形体は、成形体厚さが0.4mm、0.8mm、1.6mmの何れの場合であっても、表1に示す、V-2以上の評価基隼を満たし、難燃助剤として三酸化アンチモンを用いたサンプル5の難燃性樹脂組成物の成形体と同レベルの難燃性を示した。サンプル1及び2の難燃性樹脂組成物の成形体は、三酸化アンチモンを含まない難燃性樹脂組成物の成形体として有益であることを確認した。
【0108】
また、サンプル1及び2の難燃性樹脂組成物の成形体は、難燃助剤として三酸化アンチモンを含まず、代替として酸化ゲルマニウムを含むサンプル3、及び酸化スズを含むサンプル4の樹脂組成物の成形体と比較しても高い難燃性を有することを確認した。
以上の通り、一実施形態に係る電子部品は、高い難燃性を備えつつ、大気汚染、及び水質汚染等の環境汚染に対する安全性が高い、マイクロリレー等のリレー、マイクロスイッチ等のスイッチ、及びコネクタ等の電子部品として利用することができる。