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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172592
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20241205BHJP
   G01G 5/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E02F9/26 B
G01G5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090411
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西牧 潤
(72)【発明者】
【氏名】平沼 一則
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB01
2D015HB02
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】作業具から放出された物体の重量を精度よく特定する。
【解決手段】本開示の一態様に係る作業機械は、下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在の搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記アタッチメントの先端に設けられる作業具と、前記作業具を駆動させる油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁と、前記制御弁を動作させるパイロット圧を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、さらに、前記作業具によって物体が搬送されている間に前記物体の重量を測定し、前記パイロット圧の変化に関する情報に基づいて前記作業具の姿勢の変化を特定し、前記作業具の姿勢の変化に応じて前記作業具から前記物体を放出されたことを推定した場合、測定した結果に基づいて放出された前記物体の重量を特定するように構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在の搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントの先端に設けられる作業具と、
前記作業具を駆動させる油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁と、
前記制御弁を動作させるパイロット圧を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、さらに、前記作業具によって物体が搬送されている間に前記物体の重量を測定し、前記パイロット圧の変化に関する情報に基づいて前記作業具の姿勢の変化を特定し、前記作業具の姿勢の変化に応じて前記作業具から前記物体を放出されたことを推定した場合、測定した結果に基づいて放出された前記物体の重量を特定するように構成されている、
作業機械。
【請求項2】
前記アタッチメント又は前記上部旋回体の姿勢を検出する姿勢検出部と、を備え、
前記制御部は、前記姿勢検出部により検出される姿勢の変化から、前記アタッチメント又は前記上部旋回体の動作を推定し、所定の動作が行われた時に前記物体の重量を測定するように構成されている、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、前記パイロット圧の変化に関する情報に基づいて前記作業具から前記物体が放出されたと推定した後、前記所定の動作が行われた時に前記作業具に残っている前記物体の重量を測定するように構成されている、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定の動作が行われたと推定された後から出力される前記パイロット圧の積分値に基づいて前記作業具の姿勢の変化を特定するように構成されている、
請求項2又は3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記油圧アクチュエータは、前記作業具を開かせる駆動及び前記作業具を閉じさせる駆動が可能であり、
前記制御弁は、前記作業具を開かせる第1パイロット圧が入力された場合に、前記油圧アクチュエータに開かせる駆動を行うように圧油の流れを制御し、前記作業具を閉じさせる第2パイロット圧が入力された場合に、前記油圧アクチュエータに閉じさせる駆動を行うように圧油の流れを制御し、
前記制御部は、前記第1パイロット圧と、前記第2パイロット圧と、の差分の変化に基づいて前記作業具の姿勢の変化を特定するように構成されている、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記油圧アクチュエータは、前記作業具を開かせる駆動及び前記作業具を閉じさせる駆動が可能であり、
前記制御弁は、前記作業具を開かせる第1パイロット圧が入力された場合に、前記油圧アクチュエータに開かせる駆動を行うように圧油の流れを制御し、前記作業具を閉じさせる第2パイロット圧が入力された場合に、前記油圧アクチュエータに閉じさせる駆動を行うように圧油の流れを制御し、
前記制御部は、前記所定の動作が行われたと推定された後から出力される、前記第1パイロット圧と、前記第2パイロット圧と、の差分の積分値に基づいて前記作業具の姿勢の変化を特定するように構成されている、
請求項2又は3に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アタッチメントの先端に設けられた作業具に物体を保持し、且つ当該アタッチメントを用いて物体を持ち上げて、当該物体がダンプトラックの荷台の上に来るように旋回動作を行った後、ダンプトラックやトレーラの荷台等に積み込む作業機械が知られている。近年、作業機械は、作業具に保持されている物体の重量を検出する機能が設けられている。当該機能で物体の重量を検出することで、作業機械がダンプトラックやトレーラの荷台に積載した物体の合計量を重量から把握できる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/241526号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械に積載物の重量を検出する機能を用いる場合、作業機械から放出された積載物の重量を精度よく検出するためには、アタッチメントの現在の動作を認識するのが好ましい。そこで、近年、作業具を含むアタッチメントの姿勢を検出するためのセンサを作業機械に設ける傾向にある。これにより、例えば、作業具から物体が放出されているのか否か等を把握できる。
【0005】
しかしながら、作業具の姿勢を検出するためにセンサ等が設けられていない作業機械でも、作業具から放出される物体の重量の計測を行いたい場合もある。
【0006】
本発明の一態様は、作業具の姿勢を検出するためのセンサを設けることなく、作業具の姿勢を特定し、当該作業具の姿勢を考慮して当該作業具から放出された物体の重量の計測することで、作業具から放出された物体の重量を精度よく特定する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業機械は、下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在の搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記アタッチメントの先端に設けられる作業具と、前記作業具を駆動させる油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁と、前記制御弁を動作させるパイロット圧を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、さらに、前記作業具によって物体が搬送されている間に前記物体の重量を測定し、前記パイロット圧の変化に関する情報に基づいて前記作業具の姿勢の変化を特定し、前記作業具の姿勢の変化に応じて前記作業具から前記物体を放出されたことを推定した場合、測定した結果に基づいて放出された前記物体の重量を特定するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、作業具から放出された物体の重量を精度よく特定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係るショベルの側面図である。
図2】第1の実施形態に係るショベルの構成の一例を概略的に示す図である。
図3】第1の実施形態に係るショベルの油圧システムの構成の一例を概略的に示す図である。
図4】第1の実施形態に係るバケットシリンダの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
図5】第1の実施形態に係るショベルのコントローラが有する機能のブロック構成の一例を示した図である。
図6】第1の実施形態に係る重量算出部における土砂の重量の算出手法を説明する模式図である。
図7】第1の実施形態に係るショベルの状態の変化を示した状態遷移図である。
図8】第1の実施形態に係るパイロット圧の積分値とショベルの状態との対応関係の一例を示した図である。
図9】第2の実施形態に係る、開きパイロット圧と閉じパイロット圧との差分の変化と、ショベルの状態の遷移と、の対応関係を示した図である。
図10】第3の実施形態に係るショベルの状態の変化と、パイロット圧の変化と、の対応関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
(作業機械の概要)
本実施形態では、作業機械の一例としてショベルを用いる例について説明するが、ショベルに制限するものではない。建設機械、標準機、応用器、林業機械、又は油圧ショベルをベースとした搬送機械に適用してもよい。
【0012】
図1を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る作業機械としてのショベル100の側面図である。
【0013】
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメント(作業機)を構成するブーム4、アーム5、及び、バケット6と、キャビン10を備える。
【0014】
下部走行体1は、左右一対のクローラが走行油圧モータ1L,1R(後述する図2参照)でそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。つまり、一対の走行油圧モータ1L,1R(走行モータの一例)は、被駆動部としての下部走行体1(クローラ)を駆動する。
【0015】
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2A(後述する図2参照)で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。つまり、旋回油圧モータ2Aは、被駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向きを変化させることができる。
【0016】
なお、上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aの代わりに、電動機(以下、「旋回用電動機」)により電気駆動されてもよい。つまり、旋回用電動機は、旋回油圧モータ2Aと同様、非駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向きを変化させることができる。
【0017】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0018】
なお、バケット6は、エンドアタッチメント(作業具)の一例であり、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、土羽打ち可能な他のエンドアタッチメント、例えば、法面用バケット等が取り付けられてもよい。
【0019】
キャビン10は、操作者が搭乗する運転室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0020】
[ショベルの構成]
次に、図1に加えて、図2を参照して、本実施形態に係るショベル100の具体的な構成について説明する。
【0021】
図2は、本実施形態に係るショベル100の構成の一例を概略的に示す図である。
【0022】
なお、図2において、機械的動力系、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御系は、それぞれ、二重線、実線、破線、及び点線で示されている。
【0023】
本実施形態に係るショベル100の駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17を含む。また、本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。
【0024】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、後述するコントローラ30による直接或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
【0025】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。レギュレータ13は、例えば、後述の如く、レギュレータ13L,13Rを含む。
【0026】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、上述の如く、コントローラ30による制御下で、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御される。メインポンプ14は、例えば、後述の如く、メインポンプ14L,14Rを含む。
【0027】
コントロールバルブ17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、制御弁171~176を含み、油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する。制御弁175は、制御弁175L,制御弁175R(図3参照)を含み、制御弁176は制御弁176L,176R(図3参照)を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。制御弁171~176は、例えば、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行油圧モータ1L、1R、及び旋回油圧モータ2Aを含む。より具体的には、制御弁171は、左走行油圧モータ1Lに対応し、制御弁172は、右走行油圧モータ1Rに対応し、制御弁173は、旋回油圧モータ2Aに対応する。また、制御弁174は、バケットシリンダ9に対応し、制御弁175は、ブームシリンダ7に対応し、制御弁176は、アームシリンダ8に対応する。また、制御弁175は、例えば、後述の如く、制御弁175L,175R(図3参照)を含み、制御弁176は、例えば、後述の如く、制御弁176L,176R(図3参照)を含む。制御弁171~176の詳細は、後述する。
【0028】
パイロットポンプ15は、パイロット圧生成装置の一例であり、パイロットラインを介して油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロット圧生成装置は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する機能に加え、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。
【0029】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。
【0030】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出するように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28は、例えば、後述の如く、吐出圧センサ28L,28Rを含む。
【0031】
操作センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出するように構成されている。本実施形態では、操作センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。本実施形態では、コントローラ30は、操作センサ29の出力に応じて電磁弁31の開口面積を制御する。そして、コントローラ30は、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、原則として、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。このように、操作装置26は、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できるように構成されている。
【0032】
マシンコントロール用制御弁として機能する電磁弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17内の制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、電磁弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、電磁弁31を介し、コントロールバルブ17内の制御弁のパイロットポートに供給できる。電磁弁31は、例えば、後述の如く、電磁弁31AL,31AR,31BL,31BR,31CL,31CRを含む。
【0033】
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。
【0034】
本実施形態に係るショベル100の制御系は、コントローラ30と、表示装置40と、入力装置42と、音声出力装置43と、記憶装置47と、ブーム角度センサ(姿勢検出部の一例)S1と、アーム角度センサ(姿勢検出部の一例)S2と、機体傾斜センサS4と、旋回状態センサ(姿勢検出部の一例)S5と、撮像装置S6と、測位装置PSと、通信装置T1を含む。
【0035】
このように、本実施形態に係るショベル100においては、アタッチメントの姿勢(角度)を検出するために、ブーム角度センサS1、及びアーム角度センサS2が設けられる一方、バケット角度センサが設けられていないものとする。
【0036】
コントローラ30(制御装置の一例)は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、不揮発性の補助記憶装置と、各種入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、ROMや不揮発性の補助記憶装置に格納される各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0037】
例えば、コントローラ30は、操作者等の操作等に基づき、目標回転数を設定し、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。
【0038】
また、例えば、コントローラ30は、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
【0039】
また、例えば、コントローラ30は、例えば、操作者による操作装置26を通じたショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能に関する制御を行う。また、コントローラ30は、例えば、操作者による操作装置26を通じたショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能に関する制御を行う。
【0040】
なお、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。例えば、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能は、専用のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。
【0041】
表示装置40は、キャビン10内の着座した操作者から視認し易い場所に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報画像を表示する。表示装置40は、CAN(Controller Area Network)等の車載通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよいし、一対一の専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0042】
入力装置42は、キャビン10内の着座した操作者から手が届く範囲に設けられ、操作者による各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。入力装置42は、各種情報画像を表示する表示装置のディスプレイに実装されるタッチパネル、レバー装置26A~26Cのレバー部の先端に設けられるノブスイッチ、表示装置40の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル、回転ダイヤル等を含む。入力装置42に対する操作内容に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0043】
音声出力装置43は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30と接続され、コントローラ30による制御下で、音声を出力する。音声出力装置43は、例えば、スピーカやブザー等である。音声出力装置43は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて各種情報を音声出力する。
【0044】
記憶装置47は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報を記憶する。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶装置47は、ショベル100の動作中に各種機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に各種機器を介して取得する情報を記憶してもよい。
【0045】
ブーム角度センサS1は、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する俯仰角度(以下、「ブーム角度」)、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよい。また、ブーム角度センサS1は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、ブーム角度に対応する油圧シリンダ(ブームシリンダ7)のストローク量を検出するシリンダストロークセンサ等を含んでもよい。以下、アーム角度センサS2についても同様である。ブーム角度センサS1によるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0046】
アーム角度センサS2は、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。アーム角度センサS2によるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0047】
機体傾斜センサ(姿勢検出部の一例)S4は、水平面に対する機体(上部旋回体3或いは下部走行体1)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、ショベル100(即ち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU等を含んでよい。機体傾斜センサS4による傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0048】
旋回状態センサS5は、上部旋回体3の旋回状態に関する検出情報を出力する。旋回状態センサS5は、例えば、上部旋回体3の旋回角速度及び旋回角度を検出する。旋回状態センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含んでよい。旋回状態センサS5による上部旋回体3の旋回角度や旋回角速度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0049】
空間認識装置としての撮像装置S6は、ショベル100の周辺を撮像する。撮像装置S6は、ショベル100の前方を撮像するカメラS6F、ショベル100の左方を撮像するカメラS6L、ショベル100の右方を撮像するカメラS6R、及び、ショベル100の後方を撮像するカメラS6Bを含む。
【0050】
カメラS6Fは、例えば、キャビン10の天井、即ち、キャビン10の内部に取り付けられている。また、カメラS6Fは、キャビン10の屋根、ブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。カメラS6Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、カメラS6Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、カメラS6Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0051】
撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)は、それぞれ、例えば、非常に広い画角を有する単眼の広角カメラである。また、撮像装置S6は、ステレオカメラや距離画像カメラ等であってもよい。撮像装置S6による撮像画像は、表示装置40を介してコントローラ30に取り込まれる。
【0052】
空間認識装置としての撮像装置S6は、物体検知装置として機能してもよい。この場合、撮像装置S6は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知してよい。検知対象の物体には、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、穴等が含まれうる。また、撮像装置S6は、撮像装置S6又はショベル100から認識された物体までの距離を算出してもよい。物体検知装置としての撮像装置S6には、例えば、ステレオカメラ、距離画像センサ等が含まれうる。そして、空間認識装置は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。また、空間認識装置は、空間認識装置又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。また、撮像装置S6に加えて、空間認識装置として、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、LIDAR、赤外線センサ等の他の物体検知装置が設けられてもよい。空間認識装置としてミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等を利用する場合には、多数の信号(レーザ光等)を物体に発信し、その反射信号を受信することで、反射信号から物体の距離及び方向を検出してもよい。
【0053】
なお、撮像装置S6は、直接、コントローラ30と通信可能に接続されてもよい。
【0054】
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。
【0055】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。
【0056】
測位装置PSは、上部旋回体3の位置及び向きを測定する。測位装置PSは、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)コンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、上部旋回体3の位置及び向きに対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。また、測位装置PSの機能のうちの上部旋回体3の向きを検出する機能は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサにより代替されてもよい。
【0057】
通信装置T1は、基地局を末端とする移動体通信網、衛星通信網、インターネット網等を含む所定のネットワークを通じて外部機器と通信を行う。通信装置T1は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュールや、衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等である。
【0058】
[ショベルの油圧システム]
次に、図3を参照して、本実施形態に係るショベル100の油圧システムについて説明する。
【0059】
図3は、本実施形態に係るショベル100の油圧システムの構成の一例を概略的に示す図である。
【0060】
なお、図3において、機械的動力系、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御系は、図2等の場合と同様、それぞれ、二重線、実線、破線、及び点線で示されている。
【0061】
当該油圧回路により実現される油圧システムは、エンジン11により駆動されるメインポンプ14L,14Rのそれぞれから、センタバイパス油路C1L,C1R、パラレル油路C2L,C2Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0062】
センタバイパス油路C1Lは、メインポンプ14Lを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁171,173,175L,176Lを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0063】
センタバイパス油路C1Rは、メインポンプ14Rを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁172,174,175R,176Rを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0064】
制御弁171は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を走行油圧モータ1Lへ供給し、且つ、走行油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクに排出させるスプール弁である。
【0065】
制御弁172は、メインポンプ14Rから吐出される作動油を走行油圧モータ1Rへ供給し、且つ、走行油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0066】
制御弁173は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0067】
制御弁174は、メインポンプ14Rから吐出される作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0068】
制御弁175L,175Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0069】
制御弁176L,176Rは、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出させる。
【0070】
制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176Rは、それぞれ、パイロットポートに作用するパイロット圧に応じて、油圧アクチュエータに給排される作動油の流量を調整したり、流れる方向を切り換えたりする。
【0071】
パラレル油路C2Lは、センタバイパス油路C1Lと並列的に、制御弁171,173,175L,176Lにメインポンプ14Lの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路C2Lは、制御弁171の上流側でセンタバイパス油路C1Lから分岐し、制御弁171,173,175L,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Lの作動油を供給可能に構成される。これにより、パラレル油路C2Lは、制御弁171,173,175Lの何れかによってセンタバイパス油路C1Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0072】
パラレル油路C2Rは、センタバイパス油路C1Rと並列的に、制御弁172,174,175R,176Rにメインポンプ14Rの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路C2Rは、制御弁172の上流側でセンタバイパス油路C1Rから分岐し、制御弁172,174,175R,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Rの作動油を供給可能に構成される。パラレル油路C2Rは、制御弁172,174,175Rの何れかによってセンタバイパス油路C1Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0073】
レギュレータ13L,13Rは、それぞれ、コントローラ30による制御下で、メインポンプ14L,14Rの斜板の傾転角を調節することによって、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節する。
【0074】
吐出圧センサ28Lは、メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することができる。
【0075】
センタバイパス油路C1L,C1Rには、最も下流にある制御弁176L,176Rのそれぞれと作動油タンクとの間には、ネガティブコントロール絞り(以下、「ネガコン絞り」)18L,18Rが設けられる。これにより、メインポンプ14L,14Rにより吐出された作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rで制限される。そして、ネガコン絞り18L,18Rは、レギュレータ13L,13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」)を発生させる。
【0076】
ネガコン圧センサ19L,19Rは、ネガコン圧を検出し、検出されたネガコン圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0077】
コントローラ30は、吐出圧センサ28L,28Rにより検出されるメインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御し、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて、レギュレータ13Lを制御し、メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することにより、吐出量を減少させてよい。レギュレータ13Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14L,14Rの吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないように、メインポンプ14L,14Rの全馬力制御を行うことができる。
【0078】
また、コントローラ30は、ネガコン圧センサ19L,19Rにより検出されるネガコン圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することにより、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させる。
【0079】
具体的には、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態(図3に示す状態)の場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、センタバイパス油路C1L,C1Rを通ってネガコン絞り18L,18Rに至る。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンタバイパス油路C1L,C1Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0080】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作装置26を通じて操作された場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータを確実に駆動させることができる。
【0081】
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
【0082】
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lが、前後方向に操作された場合、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左操作レバー26Lが、左右方向に操作された場合、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
【0083】
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0084】
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作された場合、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作された場合、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
【0085】
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0086】
以下では、左右方向に操作される左操作レバー26Lは、「旋回操作レバー」と称され、前後方向に操作される左操作レバー26Lは、「アーム操作レバー」と称される場合がある。また、左右方向に操作される右操作レバー26Rは、「バケット操作レバー」と称され、前後方向に操作される右操作レバー26Rは、「ブーム操作レバー」と称される場合がある。
【0087】
左走行レバー26DLは、左クローラ1CLの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラ1CRの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
【0088】
操作センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出できるように構成されている。本実施形態では、操作センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を検出し、検出した操作方向及び操作量に対応するパイロット圧の検出信号をコントローラ30に対して出力する。
【0089】
操作センサ29は、操作センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作の内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0090】
同様に、操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0091】
コントローラ30は、操作センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、コントローラ30は、絞り18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19はネガコン圧センサ19L、19Rを含む。
【0092】
次に、コントローラ30がアクチュエータを動作させるための構成について説明する。図4は、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0093】
また、図4に示すように、右操作レバー26Rは、バケット6を操作するためにも用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、バケット開き方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の右側パイロットポートに作用させる。
【0094】
操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0095】
電磁弁31CL、31CRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。電磁弁31CL、31CRは、コントローラ30から入力された制御指令に従って、制御弁174を動作させるためのパイロット油によるパイロット圧を制御する。換言すれば、コントローラ30が、制御指令を出力することで、制御弁174を動作させるパイロット圧を制御する。
【0096】
具体的には、電磁弁31CLは、パイロットポンプ15から、制御弁174の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧(以下、閉じパイロット圧とも称する)を調整する。同様に、電磁弁31CRは、パイロットポンプ15から、制御弁174の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧(以下、開きパイロット圧とも称する)を調整する。
【0097】
電磁弁31CLは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。同様に、電磁弁31CRは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0098】
そして、制御弁174は、パイロットポートに導入されたパイロット圧に応じて、メインポンプ14Rから吐出される作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出させる。
【0099】
バケットシリンダ9は、制御弁174から供給される作動油に応じて、バケット6を開かせる駆動及びバケット6を閉じさせる駆動を可能としている。なお、本実施形態は、作業具を駆動させる油圧アクチュエータの一例として、バケットシリンダ9を用いる例について説明するが、バケットシリンダ9を用いる例に制限するものではなく、作業具を駆動させるための油圧アクチュエータであればよく、シリンダ以外の機構を用いてもよい。
【0100】
具体的には、制御弁174は、右側パイロットポートに開きパイロット圧(第1パイロット圧の一例)が入力された場合に、バケットシリンダ9にバケット6に開かせる駆動を行うように作動油の流れを制御し、左側パイロットポートに閉じパイロット圧(第2パイロット圧の一例)が入力された場合に、バケットシリンダ9にバケット6に閉じさせる駆動を行うように作動油の流れを制御する。
【0101】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作に応じ、或いは、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、バケット6を閉じることができる。このように、電磁弁31CLは、「バケット用電磁弁」又は「バケット閉じ用電磁弁」として機能する。
【0102】
また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作に応じ、或いは、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、バケット6を開くことができる。このように、電磁弁31CRは、「バケット用電磁弁」又は「バケット開き用電磁弁」として機能する。
【0103】
[ショベルの重量検出機能に関する構成の詳細]
次に、図5を参照して、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30における、バケット6に積載された物体(例えば土砂)の重量検出機能に関する構成について説明する。図5は、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30が有する機能のブロック構成の一例を示した図である。
【0104】
コントローラ30は、バケット6で掘削した土砂等の物体の重量を検出する機能に関する機能部として、重量処理部60を含む。さらに、コントローラ30は、表示装置40を制御するための機能部として、表示制御部50を含む。
【0105】
本実施形態に係る重量処理部60は、バケット6によって土砂(物体の一例)が搬送されている間に土砂の重量を測定し、バケットシリンダ9に流れる作業油を制御する制御弁174を動作させるパイロット圧の積分値に基づいてバケット6の姿勢(角度)の変化を特定し、バケット6の姿勢の変化に応じてバケット6から土砂(物体)を放出されたことを推定した場合、搬送されている間に測定された結果に基づいて放出された土砂(物体)の重量を確定(特定)する。
【0106】
ところで、従来からショベルにおいてバケットから土砂が放出されるか否かは、バケットに設けられた角度センサの検知結果で判定する傾向にあった。しかしながら、バケットに角度センサを設けるとコストが高くなる。さらには、ショベルのアタッチメントの先端に装着される(バケットを含む)作業具によっては、アタッチメントの先端近傍で振動又は衝撃が生じる可能性がある。この場合、角度センサの検知精度が低下したり、角度センサに不具合が発生したりする可能性がある。角度センサに不具合が発生した場合には、角度センサの交換等が必要になる。つまり、作業具から土砂の放出が他の手法で検知可能であれば、アタッチメントの先端近傍には角度センサが設けない方がよい場合もある。
【0107】
そこで、本実施形態に係る重量処理部60は、制御弁174を動作させるパイロット圧の積分値に基づいてバケット6の姿勢(角度)の変化を特定し、土砂が放出されたか否かを判定する。これにより、本実施形態では、バケット6に角度センサを設けずとも、バケット6から放出された土砂(物体)の重量の測定精度が低下することを抑制できる。
【0108】
本実施形態では、バケット6の姿勢(角度)の変化の特定にパイロット圧の積分値を用いる例について説明する。つまり、バケットシリンダ9を駆動させる制御弁174を動作させるパイロット圧は、操作者によるバケット6の開き操作又は閉じ操作とみなすことができるので、パイロット圧の積分値は、バケット6が開いた角度の量又はバケット6が閉じた角度の量とみなすことができる。そこで、本実施形態では、パイロット圧の積分値に基づいて、バケット6の姿勢、例えばバケット6が土砂を放出可能な程度に開いたか否か等を判定する。なお、積分に用いられるパイロット圧は、パイロットラインを流れる実際の作動油の圧力の検知結果でもよいし、操作センサ29から出力されたパイロット圧の検出信号に基づいてもよい。なお、本実施形態は、バケット6の姿勢(角度)の変化の特定するために、パイロット圧の積分値を用いる例について説明するが、パイロット圧の積分値を用いる手法に制限するものではなく、バケット6の開き操作又は閉じ操作に対応している、パイロット圧の変化に関する情報を用いた手法であればよい。
【0109】
そこで、本実施形態に係る重量処理部60は、上述した制御を行うために、状態判定部61と、重量算出部62と、重量確定部63と、最大積載量検出部64と、残積載量算出部65と、重心算出部66と、を有する。
【0110】
ここで、本実施形態に係るショベル100によるダンプトラックへの土砂(物体の一例)の積み込み作業の動作の一例について説明する。
【0111】
まず、ショベル100は、掘削位置において、アタッチメントを制御してバケット6により土砂を掘削する(掘削動作)。次に、ショベル100は、ブーム4の上げ動作を行う。ショベル100は、ブーム4の上げ動作と共に、重量算出部62によるバケット6内の土砂(物体の一例)の重量の算出を行う。
【0112】
次に、ショベル100は、上部旋回体3を旋回させ、バケット6を掘削位置から放出位置へと移動する(旋回動作)。また、ショベル100は、上部旋回体3の旋回動作と共に、重量算出部62によるバケット6内の土砂(物体の一例)の重量の算出を行ってもよい。放出位置の下方には、ダンプトラックの荷台が配置されている。次に、ショベル100は、放出位置において、アタッチメントを制御してバケット6内の土砂(物体の一例)を放出することにより、バケット6内の土砂をダンプトラックの荷台へと積み込む(放出動作)。
【0113】
次に、ショベル100は、上部旋回体3を旋回させ、バケット6を放出位置から掘削位置へと移動する(旋回動作)。これらの動作を繰り返すことにより、ショベル100は、掘削した土砂(物体の一例)をダンプトラックの荷台へと積み込む。
【0114】
本実施形態においては、状態判定部61が、ショベル100がどのような動作を行っているか状態の判定を行う。具体的な状態の判定手法については後述する。
【0115】
重量算出部62は、バケット6に積載されている物体(例えば土砂)の重量を算出する。本実施形態に係る重量算出部62は、ブームシリンダ7の推力に基づいて、物体(例えば土砂)の重量を算出する。
【0116】
本実施形態に係る重量算出部62は、バケット6に物体(例えば、土砂)が積載された後、物体の重量の算出を常時行っている。
【0117】
そして、重量確定部63は、重量算出部62により常時算出されている複数の重量から、所定の条件を満たした重量を、積載されている物体の重量として仮確定し、実際に物体が放出された段階で、仮確定されていた重量を、放出された物体の重量として確定(特定)する。
【0118】
このため、本実施形態では、重量算出部62により算出された物体の重量のうち、バケット6に積載されている物体の実際の重量として、仮確定するための所定の条件が設定されている。
【0119】
具体的には、バケット6の位置が所定の高さ以上になったと判定された時、又は、上部旋回体3の旋回速度が所定の速度以上になったと判定された時に、重量確定部63は、仮確定するための条件を満たしたとみなし、当該タイミングで重量算出部62によって計測された物体の重量で仮確定する。なお、当該物体の重量の仮確定は、条件を満たしたと判定される毎に更新される。なお、本実施形態は、重量算出部62が常時重量を算出する例について説明するが、重量の算出を常時行う手法に制限するものではなく、例えば、所定の条件を満たしたと判定されたタイミングで重量の算出を行ってもよい。
【0120】
例えば、ブーム上げによって、バケット6が所定の高さ以上の位置に来た時に、重量算出部62が、当該位置で取得したブームシリンダ7の推力に基づいて、物体の重量を算出する。所定の高さ以上の位置とは、ブームシリンダ7の推力に含まれるノイズが少ないと推測される位置として予め設定された高さの位置とする。
【0121】
例えば、上部旋回体3の旋回によって、上部旋回体3の回転速度が所定の速度以上になった時に、重量算出部62が、ブームシリンダ7の推力に基づいて、物体の重量を算出する。所定の速度とは、物体の重量を算出する際にノイズが少ないと推測される速度として予め設定された速度とする。
【0122】
そして、仮確定された物体の重量は、当該物体がダンプトラック等に放出された段階で確定される。つまり、仮確定された物体の重量は、ダンプトラックに放出されるまでは、ショベル100の状況に応じて更新される。そして、ダンプトラックに放出された段階で、仮確定されていた重量が、ダンプトラックに積載された重量として定められる。
【0123】
最大積載量検出部64は、土砂を積載する対象のダンプトラックの最大積載量を検出する。例えば、最大積載量検出部64は、撮像装置S6で撮像された画像に基づいて、土砂を積載する対象のダンプトラックを特定する。次に、最大積載量検出部64は、特定されたダンプトラックの画像に基づいて、ダンプトラックの最大積載量を検出する。例えば、最大積載量検出部64は、特定されたダンプトラックの画像に基づいて、ダンプトラックの車種(サイズ等)を判定する。最大積載量検出部64は、車種と最大積載量とを対応付けしたテーブルを有しており、画像から判定した車種及びテーブルに基づいて、ダンプトラックの最大積載量を求める。なお、入力装置42によってダンプトラックの最大積載量、車種等が入力され、最大積載量検出部64は、入力装置42の入力情報に基づいて、ダンプトラックの最大積載量を求めてもよい。
【0124】
残積載量算出部65は、最大積載量検出部64で検出したダンプトラックの最大積載量と、重量確定部63で確定されたバケット6からダンプトラックに放出された物体の重量との差を残積載量として算出する。残積載量とは、ダンプトラックに積載可能な土砂の残りの重量である。
【0125】
重心算出部66は、バケット6内の物体(例えば土砂)の重心を算出する。例えば、重心算出部66は、バケット6の爪先位置と物体の重心との位置関係が既知のものであり、且つ、バケット6の開口面が水平面と略平行のものとして、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、に基づいて、物体の重心を算出してもよい。なお、算出方法はこれに限られるものではなく、種々の方法を用いることができる。
【0126】
本実施形態に係る表示制御部50は、重量算出部62で算出されたバケット6内の物体の重量、最大積載量検出部64で検出されたダンプトラックの最大積載量、重量確定部63で確定されたダンプトラックに放出された物体の重量(荷台に積載された物体の重量の合計)、及び残積載量算出部65で算出されたダンプトラックの残積載量(積載可能な土砂の残りの重量)のうちいずれか一つ以上を、表示装置40に表示してもよい。
【0127】
なお、重量確定部63で確定されたダンプトラックに放出された物体の重量の合計が最大積載量を超えた場合、表示制御部50が、表示装置40に警告を表示してもよい。また、算出されたバケット6内に積載されている物体の重量が残積載量を超える場合、表示制御部50が、表示装置40に警告を表示してもよい。
【0128】
[重量算出部62における物体の重量算出方法]
次に、図5を参照しつつ、図6を用いて、本実施形態に係るショベル100の重量算出部62におけるバケット6内の土砂(物体)の重量を算出する方法について説明する。
【0129】
図6は、本実施形態に係る重量算出部62における土砂重量の算出手法を説明する模式図である。図6(a)はショベル100を示し、図6(b)はバケット6付近を示す。なお、以下の説明において、後述するピンP1とバケット重心G3及び土砂重心Gsが水平線L1上に配置されているものとして説明する。
【0130】
ここで、上部旋回体3とブーム4を連結するピンをP1とする。上部旋回体3とブームシリンダ7を連結するピンをP2とする。ブーム4とブームシリンダ7を連結するピンをP3とする。ブーム4とアームシリンダ8を連結するピンをP4とする。アーム5とアームシリンダ8を連結するピンをP5とする。ブーム4とアーム5を連結するピンをP6とする。アーム5とバケット6を連結するピンをP7とする。また、ブーム4の重心をG1とする。アーム5の重心をG2とする。バケット6の重心をG3とする。バケット6に積載された土砂(物体の一例)の重心をGsとする。基準線L2は、ピンP7を通りバケット6の開口面と平行な線とする。また、ピンP1とブーム4の重心G1との距離をD1とする。ピンP1とアーム5の重心G2との距離をD2とする。ピンP1とバケット6の重心G3との距離をD3とする。ピンP1と土砂の重心Gsとの距離をDsとする。ピンP2とピンP3を結ぶ直線と、ピンP1との距離をDcとする。また、ブームシリンダ7のシリンダ圧による力をFbとする。また、ブーム重量(ブーム4の自重による重力)のうち、ピンP1とブーム重心G1を結ぶ直線に対して垂直方向の垂直成分をW1aとする。アーム重量(アーム5の自重による重力)のうち、ピンP1とアーム重心G2を結ぶ直線に対して垂直方向の垂直成分をW2aとする。バケット6の重量をW6とし、バケット6に積載された土砂(物体の一例)の重量をWsとする。
【0131】
図6(a)に示すように、ピンP7の位置は、ブーム角度及びアーム角度により算出される。即ち、ピンP7の位置は、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2の検出値に基づいて算出することができる。
【0132】
また、図6(b)に示すように、ピンP7とバケット重心G3との位置関係(バケット6の基準線L2と、ピンP7とバケット重心G3を結ぶ直線との角度θ4、ピンP7とバケット重心G3との距離D4)は、既定値である。
【0133】
また、ピンP7と土砂重心Gsとの位置関係(バケット6の基準線L2と、ピンP7と土砂重心Gsを結ぶ直線との角度θ5、ピンP7と土砂重心Gsとの距離D5)は、例えば、実験的に予め求めてコントローラ30に記憶させておく。
【0134】
そして、ショベル100がバケット6で土砂を搬送している間、バケット6から土砂が零れ落ちないように、操作者によるバケット操作によって、バケット6の開口面が水平面と略平行になるように制御されている。
【0135】
そこで、本実施形態に係る重心算出部66は、基準線L2が、ピンP7を通りバケット6の開口面と平行な線とみなして、ブーム角度センサS1、及びアーム角度センサS2の検出値と、に基づいて、土砂重心Gsを推定する。換言すれば、バケット6が搬送している土砂の重量を精度よく計測するタイミングは、少なくともショベル100がバケット6の開口面が水平面と略平行になるように、土砂を搬送している間とする。例えば、掘削した後にブーム上げが行われているタイミング、又は、上部旋回体3が旋回しているタイミングで、土砂の重量を計測してもよい。
【0136】
次に、ピンP1回りの各モーメントとブームシリンダ7との釣り合いの式は、以下の式(A1)で表すことができる。
【0137】
WsDs+W1aD1+W2aD2+W3D3=FbDc ……(A1)
式(A1)を土砂重量Wsについて展開すると、以下の式(A2)で表すことができる。
【0138】
Ws=(FbDc-(W1aD1+W2aD2+W3D3))/Ds ……(A2)
ここで、ブームシリンダ7のシリンダ圧による力Fbは、ブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bの少なくとも1つの検出値より算出される。距離Dc及びブーム重量の垂直成分W1aは、ブーム角度センサS1の検出値より算出される。アーム重量の垂直成分W2a及び距離D2は、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2のそれぞれの検出値より算出される。距離D1及びバケット重量W3(バケット6の自重による重力)は既知の値である。また、土砂重心Gsとバケット重心G3を推定したことにより、距離Ds、距離D3も推定される。
【0139】
よって、土砂重量Wsは、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値(ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7Bの検出値)、ブーム角度(ブーム角度センサS1の検出値)及びアーム角度(アーム角度センサS2の検出値)に基づいて算出することができる。これにより、重量算出部62は、重心算出部66で推定した土砂重心Gsに基づいて土砂重量Wsを算出できる。
【0140】
なお、本実施形態は、バケット6の姿勢は、バケット6の開口面が水平であるものとみなして、土砂重心を推定し、土砂重量を算出するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、前方を撮像するカメラS6Fでバケット6を撮像し、その画像に基づいて、バケット6の姿勢を推定してもよい。また、カメラS6Fでバケット6を撮像し、その画像に基づいて、バケット6の開口面が水平であると判定した場合に土砂重心の推定及び土砂重量の算出を行ってもよい。
【0141】
[状態判定部61におけるショベル100の動作の判定方法]
次に、ショベル100の状態の判定について説明する。図7は、本実施形態に係るショベル100の状態の変化を示した状態遷移図である。
【0142】
図7で示される状態遷移図では、状態"0"である掘削から、ショベル100の状態の変化について説明する。
【0143】
まず、状態判定部61は、状態"0"の掘削時に、重量算出部62が算出された土砂重量が、所定の重量以上であるか否かを判定する。状態判定部61は、所定の重量以上であると判定した場合、バケット6に所定の重量以上の土砂が積載されたとみなして、状態"1"の計測開始に遷移する(S1601)。所定の重量は、例えば、バケット6に積載される土砂が最も少ない場合に基づいて定められた量とする。
【0144】
状態"1"の計測開始時に、状態判定部61は、旋回状態センサS5の検知結果から、上部旋回体3の旋回速度が所定の速度以上か否かを判定する。また、状態判定部61は、状態"1"の計測開始時に、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2の検知結果から、バケット6の位置が所定の高さ以上上昇したか否かを判定する。このように当該状態において2種類の判定を行う場合、先に条件を満たした方に従って状態の遷移が行われる。なお、所定の速度は、ショベル100の性能など、実施態様に応じて定められるものとする。所定の高さは、上述したように、ブームシリンダ7の推力に含まれるノイズが少ないと推測される高さ等であって実施態様に応じて定められるものとする。
【0145】
状態"1"の掘削時に、状態判定部61は、旋回速度が所定の速度以上であると判定した場合、状態"2"の旋回+重量の仮確定に遷移する(S1602)。
【0146】
状態"2"では、重量確定部63は、旋回速度が所定の速度以上と判定された時に上部旋回体3が旋回していると推定し、旋回(所定の動作の一例)している時に重量算出部62により算出(測定)された重量を、バケット6の土砂重量として仮確定する。
【0147】
そして、状態判定部61は、状態"2"の旋回+重量の仮確定時に、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2の検知結果から、バケット6の位置が所定の高さ以上上昇したか否かを判定する。また、状態判定部61は、状態"2"に遷移した時、換言すれば旋回が行われたと推定された時から現在までに出力されたバケット6の開きパイロット圧の積分を開始する。そして、状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第1閾値以上か否かを判定する。なお、第1閾値は、土砂の放出が開始された程度にバケット6が開いたとみなせる値とし、実施態様に応じて定められる。
【0148】
一方、状態"1"の掘削時に、状態判定部61は、バケット6の位置が所定の高さ以上上昇したと判定した場合、状態"3"のブーム上げ+重量の仮確定に遷移する(S1603)。
【0149】
同様に、状態"2"の旋回+重量の仮確定時に、状態判定部61は、バケット6の位置が所定の高さ以上上昇したと判定した場合、状態"3"のブーム上げ+重量の仮確定に遷移する(S1604)。
【0150】
状態"3"では、重量確定部63は、バケット6の位置が所定の高さ以上上昇したと判定された時に、ブーム上げが行われていると推定し、ブーム上げ(所定の動作の一例)が行われている時に重量算出部62により算出(測定)された重量を、バケット6の土砂重量として仮確定する。本実施形態においては、バケット6の位置が所定の高さ以上上昇したタイミング、換言すれば、ノイズが少ないと推測される位置で算出された重量を、バケット6の土砂重量として仮確定することで、土砂重量の計測精度の向上を実現できる。
【0151】
そして、状態判定部61は、状態"3"のブーム上げ+重量の仮確定に遷移した時、換言すればブーム上げが行われたと推定された時から現在までのバケット6の開きパイロット圧の積分を開始する。そして、状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第1閾値以上か否かを判定する。
【0152】
一方、状態"2"の旋回+重量の仮確定時に、状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第1閾値以上であると判定した場合、バケット6の姿勢が土砂を放出可能な程度に開いた(変化した)と特定して、状態"4"の排土に遷移する(S1605)。
【0153】
また、状態"3"のブーム上げ+重量の仮確定時に、状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第1閾値以上であると判定した場合、バケット6の姿勢が土砂を放出可能な程度に開いた(変化した)と特定して、状態"4"の排土に遷移する(S1606)。
【0154】
そして、状態判定部61は、状態"4"の排土時に、状態"4"に遷移した時から現在までの、バケット6の開きパイロット圧の積分を開始する。そして、状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第2閾値以上か否かを判定する。なお、第2閾値は、土砂の放出が完了した程度にバケット6が開いたとみなせる値とし、実施態様に応じて定められる。
【0155】
また、状態"4"の排土時に、状態判定部61は、旋回状態センサS5の検知結果から、上部旋回体3の旋回速度が所定の速度以上か否かを判定する。また、状態判定部61は、状態"4"の排土時に、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2の検知結果から、バケット6の位置が所定の高さ以上上昇したか否かを判定する。
【0156】
状態"4"の排土時に、状態判定部61は、旋回速度が所定の速度以上であると判定した場合、状態"5"の旋回+重量を再び仮確定に遷移する(S1607)。
【0157】
状態"5"では、重量確定部63は、旋回速度が所定の速度以上と判定された時に、上部旋回体3が旋回していると推定し、旋回(所定の動作の一例)している時に重量算出部62により算出された重量を、バケット6に残っている土砂重量として再び仮確定する。その後、再び、状態判定部61は、状態"4"の排土に遷移する(S1608)。
【0158】
状態"4"の排土時に、状態判定部61は、バケット6の位置が所定の高さ以上上昇したと判定した場合、状態"6"のブーム上げ+重量を再び仮確定に遷移する(S1609)。
【0159】
状態"6"では、重量確定部63は、バケット6の位置が所定の高さ以上上昇したと判定された時に、ブーム上げが行われていると推定し、ブーム上げが行われている時に重量算出部62により算出された重量を、バケット6に残っている土砂重量として再び仮確定する。その後、再び、状態判定部61は、状態"4"の排土に遷移する(S1610)。
【0160】
本実施形態においては、状態"2"又は状態"3"で土砂の重量を仮確定した後、状態"5"又は状態"6"において再び土砂の重量の仮確定を可能としている。つまり、ショベル100においては、バケット6に土砂を積載した後、ダンプトラックに放出する前に、調整のためにバケット6から土砂を放出することもある。この場合、ダンプトラックに放出していないので、状態"2"又は状態"3"で仮確定した土砂重量を用いると誤差が生じる可能性がある。そこで、本実施形態においては、状態"4"で土砂を放出した後に、ブーム上げ又は旋回が行われた場合には、バケット6からの土砂の放出は調整のために行われたものとして、重量確定部63は、バケット6に残っている土砂重量を再び仮確定する。これにより、本実施形態においては土砂重量の算出精度の向上を実現できる。
【0161】
また、状態"4"の排土時に、状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第2閾値以上であると判定した場合、バケット6の姿勢が土砂を放出完了した程度に開いた(変化した)と特定して、状態"7"の確定に遷移する(S1611)。
【0162】
状態"7"では、重量確定部63は、開きパイロット圧の積分値が第2閾値以上であると判定された時に、土砂の放出が完了した程度にバケット6が開いた(変化した)と特定して、既に仮確定されていた土砂重量を、実際にバケット6に放出された土砂の重量として確定する。
【0163】
そして、状態判定部61は、状態"7"の確定時に、状態"7"に遷移した時から現在までの、バケット6の閉じパイロット圧の積分を開始する。そして、状態判定部61は、閉じパイロット圧の積分値が第3閾値以上か否かを判定する。なお、第3閾値は、バケット6による掘削が開始したとみなせる値とし、実施態様に応じて定められる。
【0164】
また、状態"7"の確定時に、状態判定部61は、放出によって所定の重量以上減少した、及び、閉じパイロット圧の積分値が第3閾値以上であると判定した場合、バケット6の姿勢が掘削を開始した程度に閉じた(変化した)と特定して、状態"0"の確定に遷移する(S1612)。
【0165】
図7で示される例では、重量の仮確定が複数回行われた場合、後に仮確定が行われた重量で更新される。これにより、操作者が調整のために、バケット6から土砂を少しこぼす操作を行った場合、こぼした後の土砂の重量が、ダンプトラックに放出した土砂の重量として特定できる。
【0166】
次に、パイロット圧の積分値と、ショベル100の状態の変化と、の関係について説明する。図8は、本実施形態に係るパイロット圧の積分値とショベル100の状態との対応関係の一例を示した図である。図8は、ショベル100が状態"0"、状態"1"、状態"2"、状態"4"、状態"7"に遷移する例とする。図8は、状態の遷移の一例を示したもので、図7に示したように様々な状態の遷移の仕方がある。
【0167】
図8で示される例では、ショベル100の状態を示した線(実線)1701と、バケット6の開きパイロット圧の積分値の線(1点鎖線)1702と、バケット6の閉じパイロット圧の積分値の線(2点鎖線)1703と、が示されている。ショベル100の状態を示す番号は、図7と同様として説明を省略する。
【0168】
まずは、線1701に示されるように、ショベル100は、状態"0"から、状態"1"、状態"2"へと遷移する。状態"2"まで遷移する条件は、図7と同様として説明を省略する。
【0169】
状態判定部61が状態"2"に遷移したと判定したタイミングで、重量確定部63は、バケット6の土砂重量を仮確定する。そして、状態判定部61は、バケット6の開きパイロット圧の積分値の算出を開始する。これにより線1702で示されるように、時間の変化に応じて開きパイロット圧の積分値が上昇していく。
【0170】
状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第1閾値以上になったか否かを判定する。状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第1閾値より小さいと判定した場合には、状態"2"を維持する。
【0171】
状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第1閾値以上と判定した場合に、土砂を放出するためにバケット6が開いたと推定して、状態"4"に遷移させる。したがって、線1702が第1閾値に到達した時点で、線1701が状態"4"に変化する。その際に、状態判定部61は、今まで算出されていた開きパイロット圧の積分値を初期化(線1702の値が"0")して、再び、バケット6の開きパイロット圧の積分値の算出を開始する。
【0172】
状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第2閾値以上になったか否かを判定する。状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第2閾値より小さいと判定した場合には、状態"4"を維持する。
【0173】
状態判定部61は、開きパイロット圧の積分値が第2閾値以上と判定した場合に、土砂の放出が終了する程度にバケット6が開いたと推定して、状態"7"に遷移させる。したがって、線1702が第2閾値に到達した時点で、線1701が状態"7"に変化する。
【0174】
重量確定部63は、状態"7"に遷移したタイミングで、仮確定されていたバケット6の土砂重量を、放出された土砂重量として確定する。状態判定部61は、バケット6の閉じパイロット圧の積分値の算出を開始する。
【0175】
状態判定部61は、閉じパイロット圧の積分値が第3閾値以上になったか否かを判定する。状態判定部61は、閉じパイロット圧の積分値が第3閾値より小さいと判定した場合には、状態"7"を維持する。
【0176】
状態判定部61は、閉じパイロット圧の積分値が第3閾値以上と判定した場合に、土砂を掘削が開始された程度にバケット6が閉じたと推定して、状態"0"に遷移させる。つまり、線1703が第3閾値に到達した時点で、線1701が状態"0"に変化する。
【0177】
点線1704は、従来のバケットに設けられた角度センサの検知結果に基づいてショベルの状態遷移を検知した場合を示している。つまり、点線1704と、線1701とは、ほぼ一致しているので、バケット6に角度センサを用いずとも、適切にバケット6の姿勢を検出できていることを認識できる。
【0178】
本実施形態では、バケット6の姿勢の変化を特定するために、開きパイロット圧の積分値又は閉じパイロット圧の積分値を用いる場合について説明した。本実施形態では、積分値を用いることで、単に操作者がバケット6の開き操作又は閉じ操作を行ったか否かの判定にとどまらず、開き操作又は閉じ操作がどの程度行われていたかを判定している。開き操作又は閉じ操作がどの程度行われていたかとは、バケット6の姿勢がどの程度変化に対応したかに対応しているので、バケット6に対する角度センサを用いることなく、バケット6の姿勢の変化を精度よく検出できる。したがって、バケット6の積載されている物体の重量の測定精度の向上を実現できる。
【0179】
(第2の実施形態)
上述した実施形態においては、開きパイロット圧の積分値又は閉じパイロット圧の積分値を用いる場合について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、パイロット圧の変化に関する情報を、開きパイロット圧の積分値又は閉じパイロット圧の積分値に制限するものではない。そこで第2の実施形態においては、状態判定部61が、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分に基づいて、ショベル100の状態を判定する例について説明する。
【0180】
開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分は、バケット6の角速度に対応している。このため、状態判定部61は、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分の変化に基づいて、バケット6の姿勢の変化を特定する。
【0181】
図9は、第2の実施形態に係る、開きパイロット圧と閉じパイロット圧との差分の変化と、ショベル100の状態の遷移と、の対応関係を示した図である。図9に示される例では、開きパイロット圧から閉じパイロット圧を減算した値(開きパイロット圧と閉じパイロット圧との差分の一例)を、線1801で示している。また、点線を指し示す数値は、状態を示す番号とする。状態を示す番号は、第1の実施形態と同様として、説明を省略する。
【0182】
図9に示される例では、状態判定部61は、開きパイロット圧と閉じパイロット圧との差分が+第4閾値より大きくなった場合に、バケット6が開いたと判定し、開きパイロット圧と閉じパイロット圧との差分が-第4閾値より小さくなった場合に、バケット6が閉じたと判定する。なお、第4閾値は、バケット6が開いた又は閉じたと判定するために予め定められた値であって、実施態様に応じて定められる。
【0183】
図9に示される例では、ショベル100の状態"0"の掘削の時に、状態判定部61が、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分が、-第4閾値より小さくなったと判定した場合に、掘削によってバケット6が閉じたと特定される。
【0184】
図9に示される例では、第1の実施形態と同様に、状態判定部61が、重量算出部62が算出された土砂重量が所定の重量以上であると判定した場合に、状態"1"の計測開始に遷移する。
【0185】
その後、状態判定部61は、第1の実施形態と同様の判定を行うことで、状態"2"の旋回+重量の仮確定に遷移する。
【0186】
状態"2"の旋回+重量の仮確定の時に、重量確定部63が、上述した実施形態と同様に、計測された土砂の重量で仮確定する。さらに、状態判定部61が、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分が、+第4閾値より大きくなったと判定した場合に、排土のためにバケット6が開き始めたと特定し、状態"4"の排土に遷移する。
【0187】
状態"4"の排土の時に、状態判定部61が、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分が、"0"になったと判定した場合に、排土のためのバケット6の開きが完了したと特定し、状態"7"の確定に遷移する。
【0188】
状態"7"の確定の時に、重量確定部63が、上述した実施形態と同様に、仮確定されていた土砂の重量を確定する。さらに、状態判定部61が、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分が、-第4閾値より小さくなったと判定した時、排土が完了したためにバケット6が閉じたと特定し、その後、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分が、"0"になったと判定した場合に、掘削を開始するためにバケット6の姿勢変化が停止したと特定し、状態"0"の確定に遷移する。
【0189】
本実施形態では、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分の変化に基づいて、バケット6の開き又は閉じ等の姿勢の変化を特定できる。したがって、状態判定部61が、バケット6の姿勢の変化に基づいて、ショベル100の状態を特定できるので、バケット6で搬送された土砂の重量の算出が可能となる。
【0190】
(第3の実施形態)
第2の実施形態においては、状態判定部61が、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分に基づいてバケット6の姿勢を判定する例について説明した。これに対して、第3の実施形態では、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分の積分値に基づいて、ショベル100の状態を判定する例について説明する。
【0191】
つまり、第3の実施形態では、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分の積分値を用いることで、バケット6の角速度の積分値、換言すれば、バケット6の姿勢(角度)の変化を特定できる。
【0192】
そして、第3の実施形態に係る状態判定部61は、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分の積分値に応じて、特定されたバケット6の姿勢(角度)の変化に基づいて、ショベル100の状態を特定する。
【0193】
図10は、本実施形態に係るショベル100の状態の変化と、パイロット圧の変化と、の対応関係を示した図である。図10(a)にはショベル100の状態を示し、図10(b)には、開きパイロット圧から閉じパイロット圧を減算した値(開きパイロット圧と閉じパイロット圧との差分の一例)の積分値を示し、図10(c)には、開きパイロット圧と閉じパイロット圧とを示している。なお、状態毎に行われる処理は、上述した実施形態と同様として説明を省略する。
【0194】
図10(c)に示される例では、二点鎖線1901で、閉じパイロット圧を示し、一点鎖線1902で開きパイロット圧を示している。
【0195】
図10(b)に示される例では、開きパイロット圧から閉じパイロット圧を減算した値の積分値を線1911で示している。線1911で示される積分値は、ショベル100の状態が遷移する毎に、初期化される。例えば、時刻t1で、ショベル100が状態"0"から状態"1"に遷移したので、線1911で示される積分値が"0"となる。
【0196】
図10(a)に示される例では、線1921でショベル100の状態の遷移を示している。図10(a)では、線1921で示されるように、状態"0"、状態"1"、状態"2"、状態"4"、状態"7"の順に遷移していく例とする。ショベル100の状態"0"の掘削、時刻t1からの状態"1"の測定開始、時刻t2からの状態"2"の旋回+重量の仮確定までの遷移は、第1の実施形態と同様の判定によって行われる。
【0197】
そして、状態"2"の旋回+重量の仮確定から状態"4"の排土に遷移させる際には、状態判定部61が、積分値が第5閾値以上か否かの判定によって行われる。なお、第5閾値は、土砂の放出が開始された程度にバケット6が開いたとみなせる値とし、実施態様に応じて定められる。状態判定部61が、時刻t4で、積分値が第5閾値以上と判定した時、状態"2"から状態"4"に遷移させる。状態判定部61は、状態の遷移と共に、積分値を初期化する。
【0198】
状態"4"の排土から状態"7"の確定に遷移させる際には、状態判定部61が、積分値が第6閾値以上か否かの判定によって行われる。なお、第6閾値は、土砂の放出が完了した程度にバケット6が開いたとみなせる値とし、実施態様に応じて定められる。状態判定部61が、時刻t7で、積分値が第6閾値以上と判定した時、状態"4"から状態"7"に遷移させる。また、重量確定部63は、状態"2"の測定で仮確定されていた土砂の重量を確定する。そして、状態判定部61は、状態の遷移と共に、積分値を初期化する。
【0199】
状態"7"の確定から状態"0"の掘削に遷移させる際には、状態判定部61が、積分値が-第7閾値以下か否かの判定によって行われる。なお、-第7閾値は、バケット6による掘削が開始したとみなせる値とし、実施態様に応じて定められる。状態判定部61が、時刻t0で、積分値が-第7閾値以下と判定した時、状態"7"から状態"0"に遷移させる。状態判定部61は、状態の遷移と共に、積分値を初期化する。
【0200】
本実施形態においては、開きパイロット圧と、閉じパイロット圧と、の差分の積分値に基づいて、バケット6の姿勢(角度)の変化を特定できる。したがって、状態判定部61が、バケット6の姿勢の変化に基づいて、ショベル100の状態を特定できるので、バケット6で搬送された土砂の重量の算出精度の向上を実現できる。
【0201】
<作用>
上述した実施形態においては、ショベル100にバケット6の姿勢を検出するための角度センサ等を設けることなく、バケット6の姿勢を特定し、当該バケット6の姿勢を考慮して当該バケット6から放出された物体の重量の算出している。これにより、バケット6の姿勢を検出する角度センサが設けられていない場合でも、角度センサが設けられていない場合と同様にバケット6から放出された物体の重量を適切に算出できる。換言すれば、コントローラ30は、物体の重量の算出精度を維持できる。さらに、バケット6の角度センサを設ける必要がないので、コストの削減を実現できる。また、バケット6の角度センサが設けられていないので、バケット6近傍に衝撃又は振動が生じた場合に角度センサに異常が生じることを抑制できる。したがって、ショベル100に異常が生じる可能性を低減しているので、保守性の向上を実現できる。
【0202】
以上、本発明に係る作業機械の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0203】
100 ショベル
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム(アタッチメント)
5 アーム(アタッチメント)
6 バケット(作業具)
7 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
8 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
9 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
17 コントロールバルブ
171~176 制御弁
30 コントローラ
50 表示制御部
60 重量処理部
61 状態判定部
62 重量算出部
63 重量確定部
64 最大積載量検出部
65 残積載量算出部
66 重心算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10