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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172593
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】X線検査装置、X線検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/10 20180101AFI20241205BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N23/10
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090412
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】村田 耕治
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA13
2G001JA06
2G001JA11
2G001KA06
2G001LA10
2G001QA04
2G001QA10
(57)【要約】
【課題】可搬性に優れた簡易的な構造を有し、且つ、対象物に応じた最適な撮像環境を構築することができるX線検査装置を実現すること。
【解決手段】対象物を検査するX線検査装置は、対象物にX線を照射するX線照射装置(11)と、対象物を透過したX線を検出するX線検出器(12)と、X線照射装置(11)とX線検出器(12)とが、対向するように固定され枠体(13)と、を備え、枠体(13)は、前記X線照射装置と前記X線検出器との距離を変化させるように伸縮する伸縮機構を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を検査するX線検査装置であって、
前記対象物にX線を照射するX線照射装置と、
前記対象物を透過した前記X線を検出するX線検出器と、
前記X線照射装置と前記X線検出器とが、対向するように固定された枠体と、を備え、
前記枠体は、前記X線照射装置と前記X線検出器との距離を変化させるように伸縮する伸縮機構を備える、
ことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記枠体は、前記X線照射装置及び前記X線検出器の高さを調整する調整機構を備え、
前記調整機構は、前記X線照射装置と前記X線検出器とが常に対向するように高さを調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記伸縮機構は、スライドレールである、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記調整機構は、定荷重バネである、
ことを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のX線検査装置と、
前記X線検査装置から取得した前記対象物の内部を示すX線画像を表示する表示部を備えている画像表示装置と、を含む、
ことを特徴とするX線検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通機関やイベント会場等において、利用者の荷物検査及び不審物の特定に使用されるX線検査装置及びX線検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊で対象物の内部を観察することができるX線検査装置は、空港等の交通機関やイベント会場において、利用者の荷物に危険物又は持ち込み禁止物が含まれているか否かを検査する荷物検査に使用されている。また、X線検査装置は、不審物を特定するために使用されている。一般的に、X線検査装置は、X線を照射するX線照射装置、X線検出器、枠体、X線の漏洩を防ぐためのシールド、画像を表示するモニタ等の多くの構成要素からなる大規模な装置であり、所定の位置に設置されている。
【0003】
しかしながら、イベント会場において荷物検査を実施する場合、X線検査装置は、イベント開催時のみに設置されることが好ましい。また、不審物を特定する場合には、不審物が置かれている位置にX線検査装置を移動させ、不審物に触れることなく検査できることが好ましい。そのため、可搬式のX線検査装置の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-340667号公報
【特許文献2】特開2019-178915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可搬式のX線検査装置としては、特許文献1及び特許文献2に記載のX線検査装置が知られている。特許文献1に記載のX線検査装置は、走査機構を有するX線照射装置及び簡易的な構成で鉛直方向に走査するラインディテクタを薄型かつ軽量にすることで可搬性に優れたX線検査装置を実現している。しかしながら、ラインディテクタを走査させながらX線を検出するため、対象物のX画像を取得するのに時間がかかるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載のX線検査装置は、X線の照射装置、X線検出器、シールド等の構成要素を枠体から着脱可能に構成することで可搬性に優れたX線検査装置を実現している。しかしながら、X線照射装置及びX線検出器は走査機構等の位置調整機能を有していないため、X線画像の撮像範囲に制約があり、対象物の大きさや形状によっては検査が困難であるという問題がある。
【0007】
本発明の一態様は、上述のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、可搬性に優れた簡易的な構造を有し、且つ、対象物に応じた最適な撮像環境を構築することができるX線検査装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るX線検査装置は、対象物を検査するX線検査装置であって、前記対象物にX線を照射するX線照射装置と、前記対象物を透過した前記X線を検出する検出器と、前記X線照射装置と前記X線検出器が対向するように固定された枠体と、を備え、前記枠体は、前記X線照射装置と前記X線検出器との距離を変化させるように伸縮する伸縮機構を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、可搬性に優れた簡易的な構造を有し、且つ、対象物に応じた最適な撮像環境を構築することができるX線検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】X線検査システムの構成の一例を示す模式図である。
図2】X線検査システムが備えているX線検査装置の構成を示す斜視図である。
図3】X線検査システムが備えているX線照射装置とX線検出器との距離調整の一例を示す模式図である。
図4】X線検査システムが備えているX線照射装置及びX線検出器の高さ調整の一例を示す正面図である。
図5】X線検査システムが備えているX線検査装置の使用例を示す模式図である。
図6】X線検査システムが備えている画像表示装置の表示例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1図6を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(X線検査システムSの概要)
本発明の一態様に係るX線検査システムSは、X線を照射された対象物Xから透過したX線を検出することにより、当該対象物Xの内部を非破壊で検査することができるX線検査装置1を含んでいるX線検査システムである。そのため、X線検査システムは、交通機関やイベント会場等での荷物検査や、不審物を特定するために使用され得る。したがって、本発明の一態様は、治安の改善に寄与することができると考えられ、持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「目標11:住み続けられるまちづくりを」の達成に貢献することができる。
【0013】
本明細書において、「対象物」とは、交通機関やイベント会場において利用者が所持している手荷物や、発見された不審物等である。また、「ユーザ」とは、X線検査を実施する者であり、典型的には交通機関やイベント会場のスタッフ等である。
【0014】
従来のX線検査装置では、可搬性のX線検査装置を実現するために、構成要素を小型化して走査させる機構、各構成要素が枠体から着脱可能な構成を採用した。しかしながら、検査時間の増大、対象物の大きさや形状によっては検査が困難である等の問題を有しており改善の余地がある。
【0015】
これに対して、X線検査システムSは、X線照射装置11及びX線検出器12が固定された枠体がX線照射装置11とX線検出器12との距離を変化させるように伸縮する伸縮機構を備える構成を採用することにより、可搬性に優れた簡易的な構造を有し、且つ、対象物Xの形状や大きさに応じた最適な撮像環境を構築することができるX線検査システムを実現する。
【0016】
(X線検査システムSの構成)
X線検査システムSの概略構成について、図1を参照して説明する。図1は、X線検査システムSの構成の一例を示す模式図である。
【0017】
X線検査システムSは、図1に示すように、X線検査装置1と、画像表示装置2と、を含んでいる。X線検査装置1は、WiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信により画像表示装置2と通信可能に構成されている。
【0018】
X線検査装置1は、対象物Xの内部を非破壊で検査する装置である。一例として、X線検査装置1は、X線検査装置1の内部空間Rに載置される検査対象物である対象物XにX線を照射し、当該対象物を透過したX線を検出する。また、X線検査装置1は、検出したX線に基づいてX線画像を作成して画像表示装置2に送信する。X線検査装置1の詳細については、図面を代えて後述する。
【0019】
画像表示装置2は、各種画像を表示する表示部を備えている装置である。一例として、画像表示装置2は、対象物Xの内部を示すX線画像をX線検査装置1から取得し、表示部に表示する。例えば、本システムのユーザであるユーザUaは、画像表示装置2の表示部に表示されたX線画像を確認することにより、対象物Xの内部に危険物又は持ち込み禁止物が含まれているか否かを判定する。本実施形態においては、デスクトップPC(Personal Computer)を画像表示装置2として使用するが、スマートフォンやタブレット等の持ち運び可能なデバイスを画像表示装置2として使用してもよい。
【0020】
上述したように、本実施形態では、X線検査装置1と画像表示装置2が近くに位置している場合を想定するため、X線検査装置1と画像表示装置2とがWiFiやBluetooth等の近距離無線通信により画像表示装置2と通信可能な構成を採用した。しかしながら、X線検査装置1と画像表示装置2とは、通信可能に構成されていればよく、その通信手段は問わない。したがって、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワーク等のネットワークを利用した通信であってもよい。
【0021】
(X線検査装置1の構成)
X線検査装置1の構成について、図2を参照して説明する。図2は、X線検査システムSを構成するX線検査装置1の構成の一例を示す模式図である。図2では、X線が照射される照射領域の中心をLRで表している。
【0022】
X線検査装置1は、図2に示すように、X線照射装置11と、X線検出器12と、枠体13と、車輪14と、を備えている。
【0023】
X線照射装置11は、対向するように枠体13に固定されているX線検出器12に向けてX線を照射する装置である。一例として、X線照射装置11は、内部空間Rに載置された対象物Xを介してX線検出器12にX線を照射する。本実施形態において、X線照射装置11は、管電圧65kVである低管電圧のX線を照射する。これにより、X線検査装置1の周辺への立ち入り規制やX線検査装置1を覆うように遮蔽シールド等を設置する必要がなくなるので、より簡易的な構造のX線検査装置1を実現する。
【0024】
X線検出器12は、X線を検出し、検出したX線に基づいてX線画像を作成する。一例として、X線検出器12は、X線照射装置11が照射したX線であって、対象物Xを透過したX線を検出する。また、X線検出器12は、検出したX線に基づいて対象物Xの内部を示すX線画像を作成し、画像表示装置2に送信する。X線検出器12は、X線照射装置11が照射したX線の照射領域の中心LRが受光面の中心となるように位置合わせされる。なお、上述したX線照射装置11及びX線検出器12は、公知の装置を用いることができる。
【0025】
枠体13は、第1のU字部材131aと第2のU字部材131bとを組み合わせてなる矩形の上枠131と、第1のL字部材132aと第2のL字部材132bとを組み合わせてなるU字型の中枠132と、第1のL字部材133aと第2のL字部材133bとを組み合わせてなるU字型の下枠133と、上枠131の四隅の各々と下枠133の四隅の各々とを鉛直方向に沿って接続する4つのI字部材134と、中枠132の開放方向と下枠133の開放方向が同一方向を向いた状態で中枠132の四隅の各々と下枠133の四隅の各々とを接続する4つのI字部材135と、により構成されている。
【0026】
より詳細に説明すると、第1のU字部材131aおよび第2のU字部材131bは、それぞれ、矩形の4辺のうち1辺が開放された形状を有し、互いに対向する2辺(対向辺)と、当該2辺を接続する1辺(接続辺)とを有する。上枠131は、第1のU字部材131aの開放方向と第2のU字部材131bの開放方向とが互いに向き合うように組み合わされており、第1のU字部材131aの対向辺の一方は、第2のU字部材131bの対向辺の一方と嵌合し、第1のU字部材131aの対向辺の他方は、第2のU字部材131bの対向辺の他方と嵌合している。中枠132は、第1のL字部材132aの1辺と第2のL字部材132bの1辺とが嵌合している。下枠133は、第1のL字部材133aの1辺と第2のL字部材133bの1辺とが嵌合している。また、I字部材134の各々とI字部材135の各々とは、嵌合している。
【0027】
なお、X線照射装置11は、第1のL字部材132a及び第1のL字部材133aに固定され、X線検出器12は、第2のL字部材132b及び第2のL字部材133bに固定されている。すなわち、X線照射装置11とX線検出器12とは、対向するように枠体13に固定されている。
【0028】
[伸縮機構]
また、枠体13は、対向するように固定されているX線照射装置11とX線検出器12との距離を変化させるように伸縮する伸縮機構を備えている。以下、枠体13が備えている伸縮機構について、図3を参照して説明する。図3は、伸縮機構を利用したX線照射装置11とX線検出器12との距離の変化の一例を示す模式図である。
【0029】
枠体13は、X線照射装置11とX線検出器12との距離を変化させるように伸縮する伸縮機構として、スライドレールを採用している。スライドレールは、上枠131において第1のU字部材131aと第2のU字部材131bとが嵌合している部分、中枠132において第1のL字部材132aと第2のL字部材132bとが嵌合している部分、及び、下枠133において第1のL字部材133aと第2のL字部材133bとが嵌合している部分の各々に設けられている。なお、ここで使用するスライドレールは、上枠131、中枠132、及び下枠133を水平方向に伸縮するスライドレールである。
【0030】
したがって、X線検査装置1は、図3の上図のようにX線照射装置11とX線検出器12との距離Lが最小である状態から図3の下図のように距離Lが最大となる状態まで伸長することができる。また、保持固定機能を備えたスライドレールを使用することにより、任意の距離LでX線検査装置1を保持することができる。
【0031】
これにより、X線検査装置1は、距離Lが最小の状態で可搬性に優れ、且つ、対象物Xの大きさに応じて距離Lを調整することで最適な撮像環境を提供することができる。
【0032】
[高さ調整機構]
また、枠体13は、X線照射装置11及びX線検出器12の高さを調整する調整機構を備えていてもよい。以下、枠体13が備え得る調整機構について、図4を参照して説明する。図4は、調整機構を利用したX線照射装置11及びX線検出器12の高さの調整の一例を示す模式図である。
【0033】
枠体13は、X線照射装置11及びX線検出器12の高さを調整する調整機構として、定荷重バネ136を採用している。X線検査装置1では、定荷重バネ136が巻き付けられているドラムを上枠131の第1のU字部材131a及び第2のU字部材131bの接続辺の各々に設置し、定荷重バネの一方の端部をX線照射装置11及びX線検出器12の各々に固定する。なお、定荷重バネの一方の端部を上枠131の第1のU字部材131a及び第2のU字部材131bの接続辺の各々に固定し、ドラムをX線照射装置11及びX線検出器12の各々に設置してもよい。
【0034】
このように高さ調整機構として定荷重バネを採用することにより、X線照射装置11及びX線検出器12の高さを容易に調整し、且つ、任意の位置で維持することができる。また、必須の構成ではないが、枠体13において、上枠131の四隅の各々と下枠133の四隅の各々とを接続するI字部材134と、中枠132の四隅の各々と下枠133の四隅の各々とを接続するI字部材135と、が嵌合している部分にスライドレールを設けてもよい。これにより、X線照射装置11及びX線検出器12の高さを少ない力で容易に調整することができる。
【0035】
また、枠体13は、X線照射装置11が固定されている第1のL字部材132a及び第1のL字部材133aが、X線検出器12が固定されている第2のL字部材132b及び第2のL字部材133bとそれぞれ1辺が嵌合しているため、X線照射装置11とX線検出器12とは高さ調整の際に連動して移動する。すなわち、X線照射装置11とX線検出器12との位置関係は常に一定であるため、高さを変更する度にX線照射装置11が照射したX線の照射領域の中心LRがX線検出器12の受光面の中心となるよう位置合わせする必要がないという効果も奏する。
【0036】
したがって、X線検査装置1は、図4の上図のようにX線照射装置11及びX線検出器12の高さhが最小である状態から図4下図のように高さhが最大となる状態まで、X線照射装置11が照射したX線の照射領域の中心LRがX線検出器12の受光面の中心となるような位置関係を維持した状態で高さを調整することができる。
【0037】
これにより、X線検査装置1は、対象物Xの検査したい位置にX線照射装置11及びX線検出器12を移動させて検査する等効率的な検査を実施することができる。
【0038】
車輪14は、上枠131の四隅の各々と下枠133の四隅の各々を接続するI字部材134の端部のうち、地面と接する端部の各々に設けられている。これにより、ユーザUaがX線検査装置1を移動させる際に車輪14を転がしながら移動させることができる。すなわち、車輪14は、X線検査装置1の可搬性を更に向上させることができる。本実施形態においては、ユーザUaがX線検査装置1を移動させる構成を採用したがこれに限定されない。例えば、遠隔操作で車輪14を転がしてX線検査装置1を移動させる構成であってもよい。この構成は、車輪14に駆動部を設けることにより実現し得る。これにより、不審物を特定するとき、ユーザUaが当該不審物に近づくことなく検査を実施することができるため、不審物が爆発物等の危険物であった場合でも安全な位置から検査を実施することができる。
【0039】
(X線検査装置1の操作手順)
X線検査装置1の操作手順について説明する。X線検査装置1の操作手順は、交通機関やイベント会場において、利用者の荷物に危険物又は持ち込み禁止物が含まれているか否かを検査する荷物検査を実施する場合と、不審物の特定を実施する場合とで異なる。以下、それぞれの操作手順について図5を参照して説明する。図5は、X線検査装置の使用例を示す模式図である。
【0040】
[荷物検査の操作手順]
ユーザUaは、以下の操作手順でX線検査装置1を操作することにより、荷物検査を実施する。
(1)対象物Xのサイズに合わせて距離Lを調整する。
(2)対象物Xのサイズに合わせて高さhを調整する。
(3)対象物Xを内部空間Rに載置する。
(4)X線を照射する。
(5)X線画像を確認する。
【0041】
まず、ユーザUaは、対象物Xのサイズに合わせて距離Lを調整する(操作手順(1))。このときユーザUaは、X線検査装置1のハンドルH1を操作する。距離Lの調整は、図5に示すように、X線照射装置11の照射口から対象物X表面までの距離Pが所定の値になるように定める。
【0042】
次にユーザUaは、対象物Xのサイズに合わせて高さhを調整する(操作手順(2))。高さhの調整は、図5に示すように、対象物Xの中心線と、X線照射領域の中心LRが一致するように調整する。
【0043】
次に、ユーザUaは、対象物Xを内部空間Rに載置する(操作手順(3))。このときユーザUaは、X線検査装置1のハンドルH2を操作する。また、対象物Xは、内部空間Rにおいて対象物Xの表面がX線検出器12と接するように載置されることが好ましい。
【0044】
ユーザUaは、対象物Xの載置が終了したらX線検査装置1を操作してX線の照射を開始する(操作手順(4))。その後、X線検出器12が対象物Xを透過したX線を検出し、検出結果に基づいてX線画像を作成する。作成されたX線画像は画像表示装置2の表示部に表示される。
【0045】
ユーザUaは、画像表示装置2の表示部に表示されたX線画像を確認する(操作手順(5))。確認した結果、鮮明な画像が取得出来ていれば検査を終了し、荷物に危険物又は持ち込み禁止物が含まれているか否かを判断する。一方で、X線画像が不鮮明である等の問題が生じた場合には、X線照射装置11から照射されるX線の出力を調整する、又は、対象物Xの位置及び向きを調整して、操作手順(4)に戻って再度X線を照射する。
【0046】
[不審物特定の操作手順]
ユーザUaは、以下の操作手順でX線検査装置1を操作することにより、不審物の特定を行う。
(i)対象物X近傍にX線検査装置1を移動する。
(ii)対象物Xのサイズに合わせて距離Lを調整する。
(iii)対象物Xのサイズに合わせて高さhを調整する。
(iv)内部空間Rに対象物Xが位置するようにX線検査装置1を移動する。
(v)X線を照射する。
(vi)X線画像を確認する。
【0047】
まず、ユーザUaは、対象物X近傍にX線検査装置1を移動する(操作手順(i))。不審物の特定を行う場合には、当該不審物を不用意に持ち運ぶことは危険であるためX線検査装置1を対象物X近傍に移動する。
【0048】
操作手順(ii)及び(iii)は、上述の操作手順(1)及び(2)と同様であるため説明を省略する。
【0049】
ユーザUaは、距離L及び高さhの調整が終了したらX線検査装置1の内部空間Rに対象物Xが位置するようにX線検査装置1を移動する(操作手順(iv))。この時、対象物Xは、内部空間Rにおいて対象物Xの表面がX線検出器12と接するように載置されることが好ましい。
【0050】
操作手順(v)及び(vi)は、上述の操作手順(4)及び(5)と同様であるため説明を省略する。なお、ユーザUaは、操作手順(5)において確認した画像(鮮明な画像)から不審物の特定を行う。
【0051】
(表示例)
画像表示装置2の表示部に表示される表示画像であって、ユーザUaが検査結果を判定するために閲覧する表示画像の具体例について、図6を参照して説明する。図6は、画像表示装置2の表示部に表示される表示画像の一例を示す図である。
【0052】
画像表示装置2の表示部には、図6に示すように、X線画像が表示画像として表示される。ユーザUaは、X線画像の色の濃淡や輪郭を参考に参照しながら、対象物Xの内部に危険物や持ち込み禁止物が含まれているか否かを判定したり、不審物を推定したりする。
【0053】
上述した実施形態1では、X線検査装置1が撮像したX線画像を画像表示装置2の表示部に表示する構成を採用したX線検査システムについて記載したが、本願発明はこれに限定されない。例えば、X線画像を表示する表示部がX線検査装置1に設けられている構成を採用してもよい。この場合、X線検査装置1のみでX線画像の撮像から表示までの全てを完結させることが可能になる。
【0054】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
〔まとめ〕
本実施形態の態様1に係るX線検査装置は、対象物を検査するX線検査装置であって、前記対象物にX線を照射するX線照射装置と、前記対象物を透過した前記X線を検出するX線検出器と、前記X線照射装置と前記X線検出器とが、対向するように固定され枠体と、を備え、前記枠体は、前記X線照射装置と前記X線検出器との距離を変化させるように伸縮する伸縮機構を備えている。
【0056】
上記の構成によれば、X線検査装置は、伸縮機構により枠体の大きさを調整することができる。したがって、X線検査装置は、可搬性に優れ、且つ、対象物の形状や大きさに応じた適切な撮像環境を提供することができる。
【0057】
本実施形態の態様2に係るX線検査装置は、上記態様1において、前記枠体は、前記X線照射装置及び前記X線検出器の高さを調整する調整機構を備え、前記調整機構は、前記X線照射装置と前記X線検出器とが常に対向するように高さを調整する。
【0058】
上記の構成によれば、X線検査装置は、X線照射装置及び前記X線検出器の高さを調整することができる。これにより、対象物Xを動かすことなく撮像したい部分のX線画像を取得することができる。
【0059】
本実施形態の態様3に係るX線検査装置は、上記態様1又は2において、前記伸縮機構は、スライドレールである。
【0060】
上記の構成によれば、簡易的な構造で枠体の大きさを調整することができる。そのためX線検査装置の軽量化に寄与する。
【0061】
本実施形態の態様4に係るX線検査装置は、上記態様2において、前記調整機構は、定荷重バネである。
【0062】
上記の構成によれば、常に一定の力でX線照射装置及びX線検出器を移動させることができるため、容易に高さを調整することができる。
【0063】
本実施形態の態様5に係るX線検査システムは、上記態様1から4の何れか1つに記載のX線検査装置と、前記X線検査装置から取得した前記対象物の内部を示すX線画像を表示する表示部を備えている画像表示装置と、を含む。
【0064】
上記の構成によれば、表示されたX線画像を参照して荷物検査や不審物の特定を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
S X線検査システム
1 X線検査装置
2 画像表示装置
11 X線照射装置
12 X線検出器
13 枠体
図1
図2
図3
図4
図5
図6