(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024172598
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20241205BHJP
H02P 21/22 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
G01R15/20 D
H02P21/22
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090419
(22)【出願日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】梶田 浩介
【テーマコード(参考)】
2G025
5H505
【Fターム(参考)】
2G025AA15
2G025AB02
5H505AA06
5H505AA16
5H505EE41
5H505GG04
5H505HB01
5H505LL22
5H505LL33
(57)【要約】
【課題】ベクトル制御を行う後段のモータ制御装置における演算負荷を軽減できる三相モータの電流検出装置を提供すること。
【解決手段】電流検出装置は、三相モータのU相電流線5u、V相電流線5v及びW相電流線5wを流れる電流を、これら相電流線5u,5v,5wの周囲に設けられたα軸磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβに基づいて検出する。これら電流線5u,5v,5wは、互いに平行かつ断面視で二等辺三角形の角に配置され、β軸磁気検出素子Sβはα軸磁気検出素子Sαより出力感度が大きく、磁気検出素子Sα,Sβは、二等辺三角形の頂角と底辺の中点P1とを通過する第1仮想線L1上において各々の中心位置が一致しかつ各磁気検出素子Sα,Sβの検出軸が直交するように配置される。また頂角と中点P1との間の距離は、底辺の長さと等しく、磁気検出素子Sα,Sβの中心位置は、二等辺三角形の内側に設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相モータの第1相電流線、第2相電流線及び第3相電流線を流れる電流を、前記第1、第2及び第3相電流線の周囲に設けられたα軸磁気検出素子及びβ軸磁気検出素子に基づいて検出する電流検出装置であって、
前記α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置は一致し、
前記β軸磁気検出素子は前記α軸磁気検出素子より出力感度が大きく、
前記第1相電流線を流れる電流値をI1とし、前記第2相電流線を流れる電流値をI2とし、前記第3相電流線を流れる電流値をI3とし、前記α軸磁気検出素子の出力値をVαとし、前記β軸磁気検出素子の出力値をVβとした場合、前記第1相、第2相及び第3相電流線に対する前記α軸及びβ軸磁気検出素子の相対位置並びに検出軸の向きは、下記式(1)が成立するように定められることを特徴とする電流検出装置。
【数1】
【請求項2】
三相モータの第1相電流線、第2相電流線及び第3相電流線を流れる電流を、前記第1相、第2相及び第3相電流線の周囲に設けられたα軸磁気検出素子及びβ軸磁気検出素子に基づいて検出する電流検出装置であって、
前記第1相、第2相及び第3相電流線は、互いに平行かつ断面視で二等辺三角形の角に配置され、
前記β軸磁気検出素子は前記α軸磁気検出素子より出力感度が大きく、
前記α軸及びβ軸磁気検出素子は、前記二等辺三角形の頂角と底辺の中点とを通過する第1仮想線上において各々の中心位置が一致するように配置されることを特徴とする電流検出装置。
【請求項3】
前記頂角と前記中点との間の距離は、前記底辺の長さと等しく、
前記α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置は、前記第1仮想線上のうち前記中点よりも前記頂角側に設けられ、
前記α軸磁気検出素子の検出軸であるα軸は、前記第1仮想線に対し直交し、
前記β軸磁気検出素子の検出軸であるβ軸は、前記第1仮想線と平行であることを特徴とする請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
三相モータの第1相電流線、第2相電流線及び第3相電流線を流れる電流を、前記第1相、第2相及び第3相電流線の周囲に設けられたα軸磁気検出素子及びβ軸磁気検出素子に基づいて検出する電流検出装置であって、
前記第1相、第2相及び第3相電流線は、互いに平行かつ断面視で直線上に等間隔に配置され、
前記β軸磁気検出素子は前記α軸磁気検出素子より出力感度が大きく、
前記α軸及びβ軸磁気検出素子は、前記直線に対し直交しかつ前記第1相、第2相及び第3相電流線のうち中央に配置される中央電流線を通過する第2仮想線上において各々の中心位置が一致するように配置されることを特徴とする電流検出装置。
【請求項5】
前記α軸磁気検出素子の検出軸であるα軸は、前記第2仮想線に対し直交し、
前記β軸磁気検出素子の検出軸であるβ軸は、前記第2仮想線と平行であることを特徴とする請求項4に記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置と前記第2及び第3相電流線との間の距離は、前記中心位置と前記第1相電流線との間の距離に対し2の平方根倍大きく、
前記β軸磁気検出素子の出力感度は、前記α軸磁気検出素子の出力感度に対し3の平方根倍大きいことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の電流検出装置。
【請求項7】
前記α軸及びβ軸磁気検出素子は、各々の検出軸に沿って視て環状に巻き回されたコイルを備え、
前記α軸及びβ軸磁気検出素子は、前記コイルの鎖交面積、前記コイルの線材の太さ、前記線材の材質、前記線材の巻き数、前記線材の長さ、コアの有無、前記コアの材質、前記コアの形状、及び前記コアの断面積の何れか又は複数が異なることを特徴とする請求項6に記載の電流検出装置。
【請求項8】
前記α軸磁気検出素子は、その検出軸であるα軸に沿って視て円環状に巻き回されたα軸コイルを備え、
前記β軸磁気検出素子は、その検出軸であるβ軸に沿って視て円環状に巻き回されたβ軸コイルを備え、
前記β軸コイルの内径は、前記α軸コイルの外径よりも大きく、
前記α軸コイルは前記β軸コイルの内側において、各々の中心位置が一致しかつ前記α軸と前記β軸とが直交するように設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の電流検出装置。
【請求項9】
前記α軸磁気検出素子は、前記α軸コイルと、前記α軸コイルの内側に設けられかつ当該α軸コイルの内周部の少なくとも一部を支持するα軸支持部材と、を備え、
前記β軸磁気検出素子は、前記β軸コイルと、前記β軸コイルの内側に設けられかつ当該β軸コイルの内周部の少なくとも一部及び前記α軸磁気検出素子の少なくとも一部を支持するβ軸支持部材と、を備えることを特徴とする請求項8に記載の電流検出装置。
【請求項10】
前記α軸磁気検出素子は、その検出軸であるα軸に沿って視て円環状に巻き回されかつ互いに平行に設けられた第1α軸コイル及び第2α軸コイルを備え、
前記β軸磁気検出素子は、その検出軸であるβ軸に沿って視て円環状に巻き回されかつ互いに平行に設けられた第1β軸コイル及び第2β軸コイルを備え、
前記第2α軸コイルは、前記α軸に沿って視て前記第1α軸コイルに対し逆回りであり、
前記第2β軸コイルは、前記β軸に沿って視て前記第1β軸コイルに対し逆回りであることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の電流検出装置。
【請求項11】
前記第1及び第2β軸コイルの内径は、前記第1及び第2α軸コイルの外径よりも大きく、
前記第1及び第2α軸コイルは、前記第1及び第2β軸コイルの内側において前記α軸と前記β軸とが直交するように設けられ、
前記第1及び第2α軸コイルは、前記α軸及び前記β軸の交点を挟み互いに平行に設けられ、
前記第1及び第2β軸コイルは、前記交点を挟み互いに平行に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の電流検出装置。
【請求項12】
前記α軸磁気検出素子は、前記第1及び第2α軸コイルと、前記第1α軸コイルの内側に設けられかつ当該第1α軸コイルの内周部の少なくとも一部を支持する第1α軸支持部材と、前記第2α軸コイルの内側に設けられかつ当該第2α軸コイルの内周部の少なくとも一部を支持する第2α軸支持部材と、を備え、
前記β軸磁気検出素子は、前記第1及び第2β軸コイルと、前記第1β軸コイルの内側に設けられかつ前記第1β軸コイルの内周部の少なくとも一部及び前記α軸磁気検出素子の少なくとも一部を支持する第1β軸支持部材と、前記第2β軸コイルの内側に設けられかつ前記第2β軸コイルの内周部の少なくとも一部及び前記α軸磁気検出素子の少なくとも一部を支持する第2β軸支持部材と、を備えることを特徴とする請求項11に記載の電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置に関する。より詳しくは、三相モータの各相の電流を2つの磁気検出素子に基づいて検出する電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギ効率の改善のために、電動車両に関する研究開発が行われている。
【0003】
電動車両や家電機器(例えば、エアコンや洗濯機等)等に搭載される三相交流モータの制御方式として、所謂ベクトル制御が広く採用されている。ベクトル制御では、モータ制御装置は、モータの回転直交座標系であるd-q座標上で定義されるd軸電流及びq軸電流のフィードバック制御に基づいてインバータに対する指令信号を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにモータ制御装置では、d-q座標上で電流のフィードバック制御を行うため、例えば特許文献1に示すような電流検出装置を用いて検出されたモータのU相電流、V相電流及びW相電流を、d軸電流及びq軸電流に変換する必要がある。より具体的には、モータ制御装置では、初めに電流検出装置によって検出された三相電流(Iu,Iv,Iw)をクラーク変換によって固定座標系で定義される二相電流(Iα,Iβ)に変換した後、この二相電流(Iα,Iβ)をモータの回転角度θを用いたパーク変換によってd-q座標系で定義される二相電流(Id,Iq)に変換する。このように従来の電流検出装置の出力を用いたベクトル制御では、三相電流(Iu,Iv,Iw)を二相電流(Id,Iq)に変換する演算をモータ制御装置において実行する必要がある。
【0006】
本発明は、ベクトル制御を行う後段のモータ制御装置における演算負荷を軽減できる三相モータの電流検出装置を提供することを目的とし、ひいてはエネルギ効率の改善に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る電流検出装置(例えば、後述の電流検出装置3,3´)は、三相モータ(例えば、後述のモータM)の第1相電流線(例えば、後述のU相電流線5u)、第2相電流線(例えば、後述のV相電流線5v)及び第3相電流線(例えば、後述のW相電流線5w)を流れる電流を、前記第1、第2及び第3相電流線の周囲に設けられたα軸磁気検出素子(例えば、後述のα軸磁気検出素子Sα,Sα´)及びβ軸磁気検出素子(例えば、後述のβ軸磁気検出素子Sβ,Sβ´)に基づいて検出するものであって、前記α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置は一致し、前記β軸磁気検出素子は前記α軸磁気検出素子より出力感度が大きく、前記第1相電流線を流れる電流値をI1とし、前記第2相電流線を流れる電流値をI2とし、前記第3相電流線を流れる電流値をI3とし、前記α軸磁気検出素子の出力値をVαとし、前記β軸磁気検出素子の出力値をVβとした場合、前記第1相、第2相及び第3相電流線に対する前記α軸及びβ軸磁気検出素子の相対位置並びに検出軸(例えば、後述のα軸Oα、β軸Oβ)の向きは、下記式(1)が成立するように定められることを特徴とする。
【数1】
【0008】
(2)本発明に係る電流検出装置(例えば、後述の電流検出装置3,3´)は、三相モータ(例えば、後述のモータM)の第1相電流線(例えば、後述のU相電流線5u)、第2相電流線(例えば、後述のV相電流線5v)及び第3相電流線(例えば、後述のW相電流線5w)を流れる電流を、前記第1相、第2相及び第3相電流線の周囲に設けられたα軸磁気検出素子(例えば、後述のα軸磁気検出素子Sα,Sα´)及びβ軸磁気検出素子(例えば、後述のβ軸磁気検出素子Sβ,Sβ´)に基づいて検出するものであって、前記第1相、第2相及び第3相電流線は、互いに平行かつ断面視で二等辺三角形の角に配置され、前記β軸磁気検出素子は前記α軸磁気検出素子より出力感度が大きく、前記α軸及びβ軸磁気検出素子は、前記二等辺三角形の頂角と底辺の中点(例えば、後述の中点P1)とを通過する第1仮想線(例えば、後述の第1仮想線L1)上において各々の中心位置が一致するように配置されることを特徴とする。
【0009】
(3)この場合、前記頂角と前記中点との間の距離は、前記底辺の長さと等しく、前記α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置は、前記第1仮想線上のうち前記中点よりも前記頂角側に設けられ、前記α軸磁気検出素子の検出軸であるα軸(例えば、後述のα軸Oα)は、前記第1仮想線に対し直交し、前記β軸磁気検出素子の検出軸であるβ軸(例えば、後述のβ軸Oβ)は、前記第1仮想線と平行であることが好ましい。
【0010】
(4)本発明に係る電流検出装置(例えば、後述の電流検出装置3,3´)は、三相モータ(例えば、後述のモータM)の第1相電流線(例えば、後述のU相電流線5u)、第2相電流線(例えば、後述のV相電流線5v)及び第3相電流線(例えば、後述のW相電流線5w)を流れる電流を、前記第1相、第2相及び第3相電流線の周囲に設けられたα軸磁気検出素子(例えば、後述のα軸磁気検出素子Sα,Sα´)及びβ軸磁気検出素子(例えば、後述のβ軸磁気検出素子Sβ,Sβ´)に基づいて検出するものであって、前記第1相、第2相及び第3相電流線は、互いに平行かつ断面視で直線(例えば、後述の直線L3)上に等間隔に配置され、前記β軸磁気検出素子は前記α軸磁気検出素子より出力感度が大きく、前記α軸及びβ軸磁気検出素子は、前記直線に対し直交しかつ前記第1相、第2相及び第3相電流線のうち中央に配置される中央電流線(例えば、後述のU相電流線5u)を通過する第2仮想線(例えば、後述の第2仮想線L2)上において各々の中心位置が一致するように配置されることを特徴とする。
【0011】
(5)この場合、前記α軸磁気検出素子の検出軸であるα軸(例えば、後述のα軸Oα)は、前記第2仮想線に対し直交し、前記β軸磁気検出素子の検出軸であるβ軸(例えば、後述のβ軸Oβ)は、前記第2仮想線と平行であることが好ましい。
【0012】
(6)この場合、前記α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置と前記第2及び第3相電流線との間の距離は、前記中心位置と前記第1相電流線との間の距離に対し2の平方根倍大きく、前記β軸磁気検出素子の出力感度は、前記α軸磁気検出素子の出力感度に対し3の平方根倍大きいことが好ましい。
【0013】
(7)この場合、前記α軸及びβ軸磁気検出素子は、各々の検出軸に沿って視て環状に巻き回されたコイル(例えば、後述のα軸コイル61、及びβ軸コイル71)を備え、前記α軸及びβ軸磁気検出素子は、前記コイルの鎖交面積、前記コイルの線材の太さ、前記線材の材質、前記線材の巻き数、前記線材の長さ、コアの有無、前記コアの材質、前記コアの形状、及び前記コアの断面積の何れか又は複数が異なることが好ましい。
【0014】
(8)この場合、前記α軸磁気検出素子は、その検出軸であるα軸(例えば、後述のα軸Oα)に沿って視て円環状に巻き回されたα軸コイル(例えば、後述のα軸コイル61)を備え、前記β軸磁気検出素子は、その検出軸であるβ軸(例えば、後述のβ軸Oβ)に沿って視て円環状に巻き回されたβ軸コイル(例えば、後述のβ軸コイル71)を備え、前記β軸コイルの内径は、前記α軸コイルの外径よりも大きく、前記α軸コイルは前記β軸コイルの内側において、各々の中心位置が一致しかつ前記α軸と前記β軸とが直交するように設けられていることが好ましい。
【0015】
(9)この場合、前記α軸磁気検出素子は、前記α軸コイルと、前記α軸コイルの内側に設けられかつ当該α軸コイルの内周部(例えば、後述の内周部61a)の少なくとも一部を支持するα軸支持部材(例えば、後述のα軸支持部材62)と、を備え、前記β軸磁気検出素子は、前記β軸コイルと、前記β軸コイルの内側に設けられかつ当該β軸コイルの内周部(例えば、後述の内周部71a)の少なくとも一部及び前記α軸磁気検出素子の少なくとも一部を支持するβ軸支持部材(例えば、後述のβ軸支持部材72)と、を備えることが好ましい。
【0016】
(10)この場合、前記α軸磁気検出素子は、その検出軸であるα軸(例えば、後述のα軸Oα)に沿って視て円環状に巻き回されかつ互いに平行に設けられた第1α軸コイル(例えば、後述の第1α軸コイル81)及び第2α軸コイル(例えば、後述の第2α軸コイル84)を備え、前記β軸磁気検出素子は、その検出軸であるβ軸(例えば、後述のβ軸Oβ)に沿って視て円環状に巻き回されかつ互いに平行に設けられた第1β軸コイル(例えば、後述の第1β軸コイル91)及び第2β軸コイル(例えば、後述の第2β軸コイル95)を備え、前記第2α軸コイルは、前記α軸に沿って視て前記第1α軸コイルに対し逆回りであり、前記第2β軸コイルは、前記β軸に沿って視て前記第1β軸コイルに対し逆回りであることが好ましい。
【0017】
(11)この場合、前記第1及び第2β軸コイルの内径は、前記第1及び第2α軸コイルの外径よりも大きく、前記第1及び第2α軸コイルは、前記第1及び第2β軸コイルの内側において前記α軸と前記β軸とが直交するように設けられ、前記第1及び第2α軸コイルは、前記α軸及び前記β軸の交点を挟み互いに平行に設けられ、前記第1及び第2β軸コイルは、前記交点を挟み互いに平行に設けられていることが好ましい。
【0018】
(12)この場合、前記α軸磁気検出素子は、前記第1及び第2α軸コイルと、前記第1α軸コイルの内側に設けられかつ当該第1α軸コイルの内周部(例えば、後述の内周部81a)の少なくとも一部を支持する第1α軸支持部材(例えば、後述の第1α軸支持部材82)と、前記第2α軸コイルの内側に設けられかつ当該第2α軸コイルの内周部(例えば、後述の内周部84a)の少なくとも一部を支持する第2α軸支持部材(例えば、後述の第2α軸支持部材85)と、を備え、前記β軸磁気検出素子は、前記第1及び第2β軸コイルと、前記第1β軸コイルの内側に設けられかつ前記第1β軸コイルの内周部(例えば、後述の内周部91a)の少なくとも一部及び前記α軸磁気検出素子の少なくとも一部を支持する第1β軸支持部材(例えば、後述の第1β軸支持部材92)と、前記第2β軸コイルの内側に設けられかつ前記第2β軸コイルの内周部(例えば、後述の内周部95a)の少なくとも一部及び前記α軸磁気検出素子の少なくとも一部を支持する第2β軸支持部材(例えば、後述の第2β軸支持部材96)と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
(1)本発明に係る電流検出装置では、3本の電流線を流れる電流を、これら電流線の周囲に設けられた2つの磁気検出素子に基づいて検出する。よって本発明によれば、1本の電流線毎に1つずつ磁気検出素子を設ける従来の電流検出装置よりも磁気検出素子の数を減らすことができるので、その分だけコストを低減できる。また本発明に係る電流検出装置では、第1相~第3相電流線に対するα軸及びβ軸磁気検出素子の相対位置及び検出軸の向きは、クラーク変換と等価な行列演算式である上記式(1)が成立するように定められる。よって本発明の電流検出装置によれば、これら2つの磁気検出素子の出力を用いることにより、その後段に設けられるモータ制御装置では、クラーク変換を演算によって行う必要が無いので、その分だけモータ制御装置の演算負荷を軽減することができる。また本発明によれば、モータ制御装置の演算負荷を軽減することにより、電流検出装置及びモータ制御装置を含むシステム全体のエネルギ効率を向上することもできる。
【0020】
また本発明によれば、第1相~第3相電流線に対するα軸及びβ軸磁気検出素子の相対位置及び検出軸の向きを上記式(1)が成立するように定めることにより、各相の電流線毎に磁気検出素子を設ける従来の電流検出装置ではノイズとなる複数相の磁気を有意なシグナルとして利用することができる。このため従来の電流検出装置では、上記のようなノイズを抑制するために必要であった複数相磁界混線対策を不要とすることができる。
【0021】
なお各相の電流線毎に磁気検出素子を設ける従来の電流検出装置における各磁気検出素子の出力(V1,V2,V3)と、各相の電流値(I1,I2,I3)との間の関係式は、一般的には電流-センサ間影響係数(a11,a12,…,a33)による非対角行列を用いて下記式(2)によって表される。このため従来の電流検出装置では、非対角成分の影響係数が0になるように複数相磁界混線対策を講じたり、磁気検出素子の出力に逆行列を乗算したりすることによって各相の電流値を得る必要がある。これに対し本発明によれば、このような措置が不要となる。
【数2】
【0022】
また本発明によれば、α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置を一致させることにより、これらα軸及びβ軸磁気検出素子を一体化させることができるので、これら磁気検出素子の占有スペースを小さくすることができかつこれら磁気検出素子の第1相~第3相電流線に対する位置合わせを容易にすることもできる。また本発明によれば、α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置を一致させるとともに、β軸磁気検出素子の出力感度をα軸磁気検出素子の出力感度より大きくすることにより、α軸及びβ軸磁気検出素子と各電流線との間の距離を等しくしながら上記式(1)を成立させることができる。
【0023】
(2)本発明に係る電流検出装置では、3本の電流線を流れる電流を、これら電流線の周囲に設けられた2つの磁気検出素子に基づいて検出する。よって本発明によれば、1本の電流線毎に1つずつ磁気検出素子を設ける従来の電流検出装置よりも磁気検出素子の数を減らすことができるので、その分だけコストを低減できる。また本発明に係る電流検出装置では、断面視で二等辺三角形の頂点に配置された3本の電流線に対し、この二等辺三角形の頂点と底辺の中点とを通過する第1仮想線を定め、α軸及びβ軸磁気検出素子を第1仮想線上において各々の中心位置が一致するように配置することにより、α軸及びβ軸磁気検出素子を一体化させることができるので、これら磁気検出素子の占有スペースを小さくすることができかつこれら磁気検出素子の第1相~第3相電流線に対する位置合わせを容易にすることもできる。また本発明によれば、α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置を一致させるとともに、β軸磁気検出素子の出力感度をα軸磁気検出素子の出力感度より大きくすることにより、α軸及びβ軸磁気検出素子と各電流線との間の距離を等しくしながら上記式(1)に示すクラーク変換後の二相電流と等価な出力をα軸及びβ軸磁気検出素子から得ることができる。よって本発明の電流検出装置によれば、これら2つの磁気検出素子の出力を用いることにより、その後段に設けられるモータ制御装置では、クラーク変換を演算によって行う必要が無いので、その分だけモータ制御装置の演算負荷を軽減することができる。また本発明によれば、モータ制御装置の演算負荷を軽減することにより、電流検出装置及びモータ制御装置を含むシステム全体のエネルギ効率を向上することもできる。
【0024】
(3)本発明によれば、上記二等辺三角形の頂点と中点との間の距離を底辺の長さと等しくし、α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置を上記二等辺三角形の内側に設け、α軸磁気検出素子の検出軸であるα軸を第1仮想線に対し直交させ、さらにβ軸磁気検出素子の検出軸であるβ軸を第1仮想線と平行にする。これにより、クラーク変換後の二相電流と等価な出力を得ることができる。
【0025】
(4)本発明に係る電流検出装置では、3本の電流線を流れる電流を、これら電流線の周囲に設けられた2つの磁気検出素子に基づいて検出する。よって本発明によれば、1本の電流線毎に1つずつ磁気検出素子を設ける従来の電流検出装置よりも磁気検出素子の数を減らすことができるので、その分だけコストを低減できる。また本発明に係る電流検出装置では、断面視で直線上に等間隔に配置された3本の電流線に対し、この直線と直交しかつ中央電流線を通過する第2仮想線を定め、α軸及びβ軸磁気検出素子を第2仮想線上において各々の中心位置が一致するように配置することにより、α軸及びβ軸磁気検出素子を一体化させることができるので、これら磁気検出素子の占有スペースを小さくすることができかつこれら磁気検出素子の第1~第3相電流線に対する位置合わせを容易にすることもできる。また本発明によれば、α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置を一致させるとともに、β軸磁気検出素子の出力感度をα軸磁気検出素子の出力感度より大きくすることにより、α軸及びβ軸磁気検出素子と各電流線との間の距離を等しくしながら上記式(1)に示すクラーク変換後の二相電流と等価な出力をα軸及びβ軸磁気検出素子から得ることができる。よって本発明の電流検出装置によれば、これら2つの磁気検出素子の出力を用いることにより、その後段に設けられるモータ制御装置では、クラーク変換を演算によって行う必要が無いので、その分だけモータ制御装置の演算負荷を軽減することができる。また本発明によれば、モータ制御装置の演算負荷を軽減することにより、電流検出装置及びモータ制御装置を含むシステム全体のエネルギ効率を向上することもできる。
【0026】
(5)本発明によれば、α軸磁気検出素子の検出軸であるα軸を第2仮想線に対し直交させ、さらにβ軸磁気検出素子の検出軸であるβ軸を第2仮想線と平行にする。これにより、クラーク変換後の二相電流と等価な出力を得ることができる。
【0027】
(6)本発明では、α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置と第2及び第3相電流線との間の距離を、中心位置と第1相電流線との間の距離に対し2の平方根倍大きくするとともに、β軸磁気検出素子の出力感度を、α軸磁気検出素子の出力感度に対し3の平方根倍大きくすることにより、クラーク変換後の二相電流と等価な出力をα軸及びβ軸磁気検出素子から得ることができる。
【0028】
(7)本発明では、α軸及びβ軸磁気検出素子をコイルとするとともに、これらα軸及びβ軸磁気検出素子の間で、鎖交面積、線材の太さ、線材の材質、線材の巻き数、線材の長さ、コアの有無、コアの材質、コアの形状、及びコアの断面積の何れか又は複数に違いを設ける。これにより、容易にβ軸磁気検出素子の出力感度をα軸磁気検出素子の出力感度よりも大きくすることができる。
【0029】
(8)本発明では、β軸磁気検出素子のβ軸コイルの内径を、α軸磁気検出素子のα軸コイルの外径よりも大きくし、このα軸コイルをβ軸コイルの内側において各々の中心位置が一致しかつα軸とβ軸とが直交するように設けることにより、これら磁気検出素子の占有スペースを小さくすることができる。
【0030】
(9)本発明では、α軸支持部材によってα軸コイルの内周部の少なくとも一部を支持することにより、α軸コイルの形状を維持することができる。またβ軸支持部材によってβ軸コイルの内周部の少なくとも一部及びα軸磁気検出素子の少なくとも一部を支持することにより、α軸コイル及びβ軸コイルの中心位置を一致させながらβ軸コイルの形状を維持することができる。よって本発明によれば、振動によるα軸及びβ軸コイルの変形や位置ずれを防止することができるので、電流の検出精度を維持することができる。
【0031】
(10)本発明では、α軸磁気検出素子をα軸に沿って視て逆回りの2つのα軸コイルによって構成し、β軸磁気検出素子をβ軸に沿って視て逆回りの2つのβ軸コイルによって構成する。よって本発明によれば、各磁気検出素子において、各コイルの差動出力を利用することにより、同相ノイズ(信号源のグランドと測定回路のグランドの間に発生するノイズや、測定回路のグランドに別回路の電流が流れることにより発生するノイズ等)をキャンセルすることができるので、電流の検出精度を向上することができる。
【0032】
(11)本発明では、第1及び第2β軸コイルの内径を、第1及び第2α軸コイルの外径よりも大きくし、第1及び第2α軸コイルを、第1及び第2β軸コイルの内側においてα軸とβ軸とが直交するように設け、第1及び第2α軸コイルを、α軸及びβ軸の交点を挟み互いに平行に設け、さらに第1及び第2β軸コイルを、この交点を挟み互いに平行に設ける。これにより、α軸及びβ軸磁気検出素子の中心位置を一致させながらこれら磁気検出素子の占有スペースを小さくすることができる。
【0033】
(12)本発明では、第1α軸支持部材によって第1α軸コイルの内周部の少なくとも一部を支持し、第2α軸支持部材によって第2α軸コイルの内周部の少なくとも一部を支持することにより、第1及び第2α軸コイルの形状を維持することができる。また第1β軸支持部材によって第1β軸コイルの内周部の少なくとも一部及びα軸磁気検出素子の少なくとも一部を支持し、第2β軸支持部材によって第2β軸コイルの内周部の少なくとも一部及びα軸磁気検出素子の少なくとも一部を支持することにより、α軸及びβ軸磁気検出装置の中心位置を一致させながら第1及び第2β軸コイルの形状を維持することができる。よって本発明によれば、振動による第1及び第2α軸コイル並びに第1及び第2β軸コイルの変形や位置ずれを防止することができるので、電流の検出精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電流検出装置及びこの電流検出装置を備える電動車両の構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る電流検出装置の2軸磁気検出ユニットの構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る電流検出装置の2軸磁気検出ユニットの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る電流検出装置及びこの電流検出装置が搭載された電動車両について図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本実施形態に係る電流検出装置3及びこの電流検出装置を備える電動車両Vの構成を示す図である。なお以下では、電流検出装置3を電動車両Vに搭載した場合について説明するが、本発明はこれに限らない。電流検出装置3は、電動車両Vの他、エアコンや洗濯機等、ベクトル制御に基づいて三相モータを制御するものであればどのようなものにも搭載できる。
【0037】
電動車両Vは、三相交流モータM(以下、単に「モータM」という)と、このモータMの出力軸と図示しない動力伝達機構を介して連結された駆動輪Wと、図示しないバッテリとモータMとを接続するインバータ1と、モータMの電流を検出する電流検出装置3と、モータMの回転位置を検出するレゾルバ4と、これら電流検出装置3及びレゾルバ4の検出信号に基づいてインバータ1を制御するモータ制御装置2と、を備える。
【0038】
インバータ1は、例えば、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT)をブリッジ接続して構成されるブリッジ回路を備えた、パルス幅変調によるPWMインバータであり、直流電力と交流電力とを変換する機能を備える。インバータ1は、その直流入出力側においてバッテリに接続され、交流入出力側においてモータMのU相、V相、W相の各コイルに接続されており、これらバッテリとモータMとの間で電力を変換する。インバータ1は、図示しないゲートドライブ回路から所定のタイミングで生成されるゲート駆動信号に従って各相のスイッチング素子をオン/オフ駆動することにより、バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換してモータMに供給したり、モータMから供給される交流電力を直流電力に変換してバッテリに供給したりする。
【0039】
モータ制御装置2は、電流検出装置3及びレゾルバ4からの検出信号に基づくベクトル制御を行うことにより、インバータ1に対する指令信号を生成し、ゲートドライブ回路に入力する。より具体的には、モータ制御装置2は、電流検出装置3及びレゾルバ4の検出信号を用いた演算を行うことによってd軸電流Id及びq軸電流Iqを算出するとともに、運転者による要求駆動力に応じたd軸電流指令Idc及びq軸電流指令Iqcを取得し、これら電流値の偏差(Idc-Id,Iqc-Iq)に基づくフィードバック制御を行うことにより、運転者による要求駆動力に応じた指令信号を生成する。なお以下で説明するように、電流検出装置3の出力値は、モータMの三相電流(Iu,Iv,Iw)をクラーク変換して得られる二相電流(Iα,Iβ)に比例している。このためモータ制御装置2では、d-q座標系における二相電流(Id,Iq)を算出するにあたり、あえてクラーク変換を行う必要がないので、その分だけモータ制御装置2における演算負荷を従来と比較して軽減することができる。
【0040】
電流検出装置3は、モータMとインバータ1とを接続する3本の電流線の周囲に設けられたα軸磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβを備える。電流検出装置3は、これら磁気検出素子Sα,Sβに基づいて3本の電流線を流れる電流を検出する。より具体的には、これら磁気検出素子Sα,Sβは、各電流線を流れる電流によって発生する磁界の磁束密度の各々の検出軸に沿った成分に応じた検出信号を出力する電流センサである。従って磁気検出素子Sα,Sβの出力値は、3本の電流線に対する磁気検出素子Sα,Sβの相対位置及び検出軸の向きや磁気検出素子Sα,Sβの出力感度に応じて変化する。なお本実施形態では、磁気検出素子Sα,Sβへの入力に対する出力の比(出力/入力)を、これら磁気検出素子Sα,Sβの出力感度として定義する。
【0041】
そこで電流検出装置3では、第1相電流線としてのU相電流線を流れる電流値をIuとし、第2相電流線としてのV相電流線を流れる電流値をIvとし、第3相電流線としてのW相電流線を流れる電流値をIwとし、α軸磁気検出素子Sαの出力値をVαとし、β軸磁気検出素子Sβの出力値をVβとした場合、これら3本の電流線に対する磁気検出素子Sα,Sβの相対位置及び検出軸の向き並びに磁気検出素子Sα,Sβの出力感度は、三相電流(Iu,Iv,Iw)を二相電流(Iα,Iβ)に変換するクラーク変換の変換式と等価な下記式(3)が成立するように定められる。
【数3】
【0042】
ところで本願出願人による中国特許出願CN202211040361.X(以下、単に「先願」とも言う)には、2つの磁気検出素子Sα,Sβを異なる位置に配置する場合における、上記式(3)が成立するような3本の電流線及び2つの磁気検出素子Sα,Sβのレイアウトの複数の具体例が記載されている。しかしながら先願に記載のように、2つの磁気検出素子Sα,Sβを異なる位置に配置すると、これら2つの磁気検出素子Sα,Sβの3本の電流線に対する相対位置や検出軸の向きをそれぞれ別の支持部材によって固定する必要があるため、位置ずれが生じやすくまた電流検出装置3全体の重量も重くなる。また先願に記載のレイアウトでは、2つの磁気検出素子Sα,Sβを離れて配置するために十分なスペースを3本の電流線の周囲に確保する必要がある。
【0043】
そこで以下では、2つの磁気検出素子Sα,Sβを同じ位置に配置する場合、より具体的には2つの磁気検出素子Sα,Sβを各々の中心位置が一致するように配置する場合について説明する。しかしながら2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置を一致させると、これら磁気検出素子Sα,Sβの中心位置と3本の電流線との間の距離が等しくなってしまうため、2つの磁気検出素子Sα,Sβの3本の電流線に対するレイアウトを調整するだけでは、上記式(3)を成立させることができない。一方、上記式(3)は、下記式(4)に示すように変形することができる。これは、β軸磁気検出素子Sβの出力感度をα軸磁気検出素子Sαの出力感度に対し3の平方根倍大きくするとともに、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置とV相及びW相電流線との間の距離を、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置とU相電流線との間の距離に対し2の平方根倍大きくすることにより、2つの磁気検出素子Sα,Sβの各々の中心位置を一致させながら、上記式(3)及び下記式(4)を成立させることができることを意味する。
【数4】
【0044】
以下では、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置を一致させかつβ軸磁気検出素子Sβの出力感度をα軸磁気検出素子Sαの出力感度よりも大きくした場合における、上記式(3)及び(4)が成立するような、3本の電流線に対する磁気検出素子Sα,Sβの相対位置及び検出軸の向きの複数のレイアウト例について、
図2~
図3を参照しながら説明する。
【0045】
図2は、第1のレイアウト例を示す図である。より具体的には、
図2は、互いに平行に設けられたU相電流線5u、V相電流線5v、及びW相電流線5wを、各々の延在方向に対し直交する断面に沿って視た図である。なお
図2~
図3では、各電流線5u,5v,5wの向きについて、紙面手前から奥へ正の電流が流れるものをばつ印で示し、紙面奥から手前へ正の電流が流れるものを黒丸印で示す。
【0046】
図2に示すように、第1の設定例では、U相電流線5u、V相電流線5v、及びW相電流線5wを、互いに平行かつ断面視で二等辺三角形の角に配置する。またこの二等辺三角形の2つの等辺の長さは、頂角と底辺の中点P1との間の距離と底辺の長さとが等しくなるように設定する。なお以下では、底辺の長さを2Lとする。以下では、U相電流線5uを頂角に配置し、V相電流線5v及びW相電流線5wをそれぞれ2つの底角に配置する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。各電流線5u,5v,5wを配置する位置は適宜入れ替えてもよい。また以下では、各電流線5u,5v,5wの向きを、正の電流が紙面手前から奥へ流れるようにした場合について説明するが、本発明はこれに限らない。各電流線5u,5v,5wの向きは、正の電流が紙面奥から手前へ流れるようにしてもよい。
【0047】
図2に示すように、二等辺三角形の3つの角に各電流線5u,5v,5wを配置した場合、β軸磁気検出素子Sβの出力感度をα軸磁気検出素子Sαの出力感度よりも大きくするとともに、α軸磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβを、頂角と底辺の中点P1とを通過する第1仮想線L1上において各々の中心位置が一致するように配置する。また第1のレイアウト例では、α軸及びβ軸磁気検出素子Sα,Sβの中心位置は、第1仮想線L1上のうち中点P1よりも頂角側(すなわち、二等辺三角形の内側)、より具体的には中点P1と頂角との間の中間の位置に配置される。すなわち、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置と頂角との間の距離と、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置と中点P1との間の距離は、何れもLであり等しい。また上述のように、中点P1とV相電流線5vとの間の距離と、中点P1とW相電流線5wとの間の距離は、何れもLであり等しい。よって2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置とV相電流線5v及びW相電流線5wとの間の距離は、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置とU相電流線5uとの間の距離に対し2の平方根倍大きい。
【0048】
また
図2に示すように、α軸磁気検出素子Sαの検出軸であるα軸Oαは、第1仮想線L1に対し直交しかつV相電流線5v側が正側となるように配置される。またβ軸磁気検出素子Sβの検出軸であるβ軸Oβは、α軸Oαと直交し、第1仮想線L1と平行になり、かつ中点P1側が正側となるように配置される。すなわちβ軸磁気検出素子Sβのβ軸Oβは、頂角に配置されるU相電流線5uを流れる電流によって形成される磁界と直交するので、U相電流線5uを流れる電流が変化してもβ軸磁気検出素子Sβの出力値Vβは変化しない。
【0049】
以上のような第1のレイアウト例によれば、α軸磁気検出素子Sαは、U相電流線5u、V相電流線5v、及びW相電流線5wを流れる電流によって生成される磁界の重ね合わせを検出し、β軸磁気検出素子Sβは、V相電流線5v及びW相電流線5wを流れる電流によって生成される磁界の重ね合わせを、α軸磁気検出素子Sαよりも3の平方根倍大きな出力感度の下で検出する。このため、2つの磁気検出素子Sα,Sβの出力値Vα,Vβは、上記式(3)及び(4)を満たす。
【0050】
図3は、第2のレイアウト例を示す図である。より具体的には、
図3は、互いに平行に設けられたU相電流線5u、V相電流線5v、及びW相電流線5wを、各々の延在方向に対し直交する断面に沿って視た図である。
【0051】
図3に示すように、第2のレイアウト例では、U相電流線5u、V相電流線5v、及びW相電流線5wを、互いに平行かつ断面視で直線L3上に等間隔に配置する。なお以下では、隣接する電流線の間の長さ、すなわち
図3の例では、U相電流線5uとV相電流線5vとの間の長さ及びU相電流線5uとW相電流線5wとの間の長さは、何れもLとする。以下では、U相電流線5uを直線L3上の中央に配置し、V相電流線5vを直線L3上の
図3中U相電流線5uに対し右側に配置し、W相電流線5wを直線L3上の
図3中U相電流線5uに対し左側に配置する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。各電流線5u,5v,5wを配置する位置は適宜入れ替えてもよい。なお以下では、3本の電流線を断面視で直線L3上に配置した場合、その中央に配置した電流線を中央電流線ともいう。すなわち
図3の例では、U相電流線5uが中央電流線となる。
【0052】
また以下では、3本の電流線のうち中央電流線を除く2本の電流線の向きを、正の電流が紙面手前から奥へ流れるようにし、3本の電流線のうち中央電流線の向きを、正の電流が紙面奥から手前へ流れるようにした場合について説明するが、本発明はこれに限らない。3本の電流線のうち中央電流線を除く2本の電流線の向きを、正の電流が紙面奥から手前へ流れるようにし、3本の電流線のうち中央電流線の向きを、正の電流が紙面手前から奥へ流れるようにしてもよい。
【0053】
図3に示すように、直線L3上に等間隔で各電流線5u,5v,5wを配置した場合、α軸磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβは、それぞれ直線L3に対し直交しかつ中央電流線5uを通過する第2仮想線L2上に配置される。また第2のレイアウト例では、α軸磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβは、第2仮想線L2上において各々の中心位置が一致するように、
図3中直線L3よりも上方に配置する。より具体的には、2つの磁気検出素子Sα,Sβは、第2仮想線L2上のうち、中央電流線5uから距離Lだけ離れた位置に設置する。すなわち2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置と中央電流線5uとの間の距離は、中央電流線5uと左右の電流線5v,5wとの間の距離と、何れも等しくLである。よって2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置とV相電流線5v及びW相電流線5wとの間の距離は、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置とU相電流線5uとの間の距離に対し2の平方根倍大きい。
【0054】
また
図3に示すように、α軸磁気検出素子Sαの検出軸であるα軸Oαは、第2仮想線L2に対し直交しかつV相電流線5v側が正側となるように配置される。またβ軸磁気検出素子Sβの検出軸であるβ軸Oβは、α軸Oαと直交し、第2仮想線L2と平行になり、かつV相電流線5v側が正側となるように配置される。すなわちβ軸磁気検出素子Sβのβ軸Oβは、中央に配置されるU相電流線5uを流れる電流によって形成される磁界と直交するので、U相電流線5uを流れる電流が変化してもβ軸磁気検出素子Sβの出力値Vβは変化しない。
【0055】
以上のような第2のレイアウト例によれば、α軸磁気検出素子Sαは、U相電流線5u、V相電流線5v、及びW相電流線5wを流れる電流によって生成される磁界の重ね合わせを検出し、β軸磁気検出素子Sβは、V相電流線5v及びW相電流線5wを流れる電流によって生成される磁界の重ね合わせを、α軸磁気検出素子Sαよりも3の平方根倍大きな出力感度の下で検出する。このため、2つの磁気検出素子Sα,Sβの出力値Vα,Vβは、上記式(3)及び(4)を満たす。
【0056】
以上のように、第1及び第2のレイアウトの例では、2つの磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβは、各々の検出軸Oα,Oβが直交しかつ中心位置が一致するように配置される。以下では、各々の検出軸Oα,Oβが直交しかつ中心位置が一致するように、2つの磁気検出素子Sα,Sβを一体化した2軸磁気検出ユニットSの具体的な構成を説明する。
【0057】
図4は、本実施形態に係る2軸磁気検出ユニットSの構成を示す斜視図である。なお以下では、α軸磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβを、それぞれ環状に巻き回されたコイルによって構成した場合(すなわち、所謂コイル型とした場合)について説明するが、本発明はこれに限らない。これらα軸磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβの両方又は何れかは、例えばホール素子によって構成してもよい。
【0058】
2軸磁気検出ユニットSは、図示しない電流線を流れる電流によって発生する磁界の磁束密度のα軸Oαに沿った成分に応じた検出信号を出力するα軸磁気検出素子Sαと磁束密度のβ軸Oβに沿った成分に応じた検出信号を出力するβ軸磁気検出素子Sβとを、各々の検出軸Oα,Oβが直交しかつ各々の中心位置が一致するように組み合わせて構成される。
【0059】
α軸磁気検出素子Sαは、導電性の線材を、
図4において鉛直方向に沿って上方側へ延びるα軸Oαに沿って視て円環状(例えば、時計回り)に巻き回して構成されるα軸コイル61と、このα軸コイル61の内側に設けられかつこのα軸コイル61の内周部61aの少なくとも一部を支持するα軸支持部材62と、を備える。なおこのようにα軸コイル61とα軸支持部材62とを組み合わせて構成されるα軸磁気検出素子Sαでは、α軸コイル61の中心がα軸磁気検出素子Sαの中心となる。
【0060】
α軸支持部材62は、α軸Oαに対し直交する面に沿って延びる円盤状でありかつα軸コイル61の内周部61aを全周にわたって支持する。またα軸支持部材62の中央には、α軸Oαに沿って延びる中央貫通孔63が形成されている。なお本実施形態では、α軸支持部材62は、α軸コイル61の内周部61aを全周にわたって支持する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。α軸支持部材62は、後述のβ軸支持部材72と同様に、α軸コイル61の内周部61aのうち対向する2辺を含む少なくとも一部を支持してもよい。
【0061】
β軸磁気検出素子Sβは、導電性の線材を、
図4において水平方向に沿って紙面奥側から手前側へ延びるβ軸Oβに沿って視て円環状(例えば、時計回り)に巻き回して構成されるβ軸コイル71と、このβ軸コイル71の内側に設けられかつこのβ軸コイル71の内周部71aの少なくとも一部及びα軸磁気検出素子Sαの少なくとも一部を支持するβ軸支持部材72と、を備える。なおこのようにβ軸コイル71とβ軸支持部材72とを組み合わせて構成されるβ軸磁気検出素子Sβでは、β軸コイル71の中心がβ軸磁気検出素子Sβの中心となる。
【0062】
図4に示すように、β軸コイル71の内径は、α軸コイル61の外径よりも大きい。これにより、
図4に示すようにα軸コイル61を、このα軸コイル61よりも大径のβ軸コイル71の内側に配置することができ、またβ軸磁気検出素子Sβの出力感度をα軸磁気検出素子Sαの出力感度よりも大きくすることができる。より具体的には、β軸コイル71の鎖交面積がα軸コイル61の鎖交面積に対し3の平方根倍大きくなるように、β軸コイル71の径をα軸コイル61の径よりも大きくすることにより、β軸磁気検出素子Sβの出力感度をα軸磁気検出素子Sαの出力感度に対し3の平方根倍大きくすることができる。
【0063】
β軸支持部材72は、β軸Oβに対し直交する面内において、β軸コイル71の径方向に沿って延びる板状である。β軸支持部材72は、その両端部である第1内周支持部731及び第2内周支持部732において、β軸コイル71の内周部71aの対向する2辺に接することにより、β軸コイル71の内周部71aを支持する。なお本実施形態では、β軸支持部材72は、β軸コイル71の内周部71aのうち対向する2辺を含む少なくとも一部を支持する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。β軸支持部材72は、上述のα軸支持部材62と同様に、β軸コイル71の内周部71aを全周にわたって支持してもよい。
【0064】
β軸支持部材72の中央には、β軸Oβに沿って延びる中央貫通孔741が形成されている。またβ軸支持部材72のうち、中央貫通孔741と第1内周支持部731との間及び中央貫通孔741と第2内周支持部732との間には、それぞれβ軸Oβに沿って延び貫通孔としての第1外周支持部742及び第2外周支持部743が形成されている。
図4に示すように、円環状のα軸磁気検出素子Sαは、これら貫通孔としての外周支持部742,743内に挿通されている。またこのようにα軸磁気検出素子Sαをα軸支持部742,743内に挿通した状態では、これらα軸支持部742,743の内周部はα軸コイル61の外周部61bの対向する2辺に接する。これによりβ軸支持部材72は、α軸コイル61の中心位置とβ軸コイル71の中心位置とが一致しかつα軸Oαとβ軸Oβとが直交するように、β軸コイル71の内周部71aの少なくとも一部及びα軸磁気検出素子Sαの少なくとも一部を支持する。
【0065】
なお本実施形態では、α軸支持部材62及びβ軸支持部材72を、非磁性体の材料、より具体的には樹脂によって成形した場合について説明するが、本発明はこれに限らない。α軸支持部材62及びβ軸支持部材72の両方又は何れかは、強磁性体の材料や強磁性体を練りこんだ樹脂によって成形してもよい。これによりα軸支持部材62やβ軸支持部材72を、α軸コイル61やβ軸コイル71に対するコアとして利用することができる。
【0066】
また以上のようにして2つの磁気検出素子Sα,Sβを一体化して構成される2軸磁気検出ユニットSにおいて、β軸磁気検出素子Sβの出力感度はα軸磁気検出素子Sαの出力感度に対し3の平方根倍に設定される。また上述のようなコイル型の磁気検出素子Sα,Sβの出力感度は、コイルの鎖交面積、コイルの線材の太さ、線材の材質、線材の巻き数、線材の長さ、コアの有無、コアの材質、コアの形状、及びコアの断面積等の複数の出力感度調整パラメータと相関がある。そこで本実施形態では、2つの磁気検出素子Sα,Sβの間で、上記複数の出力感度調整パラメータの何れか又は複数に違いを設けることにより、α軸磁気検出素子Sαの出力感度とβ軸磁気検出素子Sβの出力感度との比を1:√3に調整する。
【0067】
本実施形態に係る電流検出装置3によれば、以下の効果を奏する。
(1)電流検出装置3では、3本の電流線5u,5v,5wを流れる電流を、これら電流線5u,5v,5wの周囲に設けられた2つの磁気検出素子Sα,Sβに基づいて検出する。よって本実施形態によれば、1本の電流線毎に1つずつ磁気検出素子を設ける従来の電流検出装置よりも磁気検出素子の数を減らすことができるので、その分だけコストを低減できる。また本実施形態に係る電流検出装置3では、電流線5u,5v,5wに対するα軸磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβの相対位置及び検出軸Oα,Oβの向きは、クラーク変換と等価な行列演算式である上記式(3)及び(4)が成立するように定められる。よって電流検出装置3によれば、これら2つの磁気検出素子Sα,Sβの出力を用いることにより、その後段に設けられるモータ制御装置2では、クラーク変換を演算によって行う必要が無いので、その分だけモータ制御装置2の演算負荷を軽減することができる。また電流検出装置3によれば、モータ制御装置2の演算負荷を軽減することにより、電流検出装置3及びモータ制御装置2を含むシステム全体のエネルギ効率を向上することもできる。
【0068】
また電流検出装置3によれば、電流線5u,5v,5wに対する2つの磁気検出素子Sα,Sβの相対位置及び検出軸Oα,Oβの向きを上記式(3)及び(4)が成立するように定めることにより、各電流線5u,5v,5w毎に磁気検出素子を設ける従来の電流検出装置ではノイズとなる複数相の磁気を有意なシグナルとして利用することができる。このため従来の電流検出装置では、上記のようなノイズを抑制するために必要であった複数相磁界混線対策を不要とすることができる。
【0069】
なお各電流線5u,5v,5w毎に磁気検出素子を設ける従来の電流検出装置における各磁気検出素子の出力(V1,V2,V3)と、各相の電流値(I1,I2,I3)との間の関係式は、一般的には電流-センサ間影響係数(a11,a12,…,a33)による非対角行列を用いて下記式(5)によって表される。このため従来の電流検出装置では、非対角成分の影響係数が0になるように複数相磁界混線対策を講じたり、磁気検出素子の出力に逆行列を乗算したりすることによって各相の電流値を得る必要がある。これに対し電流検出装置によれば、このような措置が不要となる。
【数5】
【0070】
また電流検出装置3によれば、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置を一致させることにより、2軸磁気検出ユニットSとしてこれら磁気検出素子Sα,Sβを一体化させることができるので、これら磁気検出素子Sα,Sβの占有スペースを小さくすることができかつこれら磁気検出素子Sα,Sβの各電流線5u,5v,5wに対する位置合わせを容易にすることもできる。また電流検出装置3によれば、これら磁気検出素子Sα,Sβの中心位置を一致させるとともに、β軸磁気検出素子Sβの出力感度をα軸磁気検出素子Sαの出力感度より大きくすることにより、磁気検出素子Sα,Sβと各電流線5u,5v,5wとの間の距離を等しくしながら上記式(3)及び(4)を成立させることができる。
【0071】
(2)第1のレイアウト例では、断面視で二等辺三角形の頂点に配置された3本の電流線5u,5v,5wに対し、この二等辺三角形の頂点と底辺の中点P1とを通過する第1仮想線L1を定め、2つの磁気検出素子Sα,Sβを第1仮想線L1上において各々の中心位置が一致するように配置することにより、2つの磁気検出素子Sα,Sβを2軸磁気検出ユニットSとして一体化させることができるので、これら磁気検出素子Sα,Sβの占有スペースを小さくすることができかつこれら磁気検出素子Sα,Sβの各電流線5u,5v,5wに対する位置合わせを容易にすることもできる。
【0072】
(3)第1のレイアウト例によれば、上記二等辺三角形の頂点と中点P1との間の距離を底辺の長さと等しくし、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置を上記二等辺三角形の内側に設け、α軸磁気検出素子Sαの検出軸であるα軸Oαを第1仮想線L1に対し直交させ、さらにβ軸磁気検出素子Sβの検出軸であるβ軸Oβを第1仮想線L1と平行にする。これにより、クラーク変換後の二相電流と等価な出力を得ることができる。
【0073】
(4)第2のレイアウト例では、断面視で直線L3上に等間隔に配置された3本の電流線5u,5v,5wに対し、この直線L3と直交しかつ中央電流線5uを通過する第2仮想線L2を定め、2つの磁気検出素子Sα,Sβを第2仮想線L2上において各々の中心位置が一致するように配置することにより、2つの磁気検出素子Sα,Sβを2軸磁気検出ユニットSとして一体化させることができるので、これら磁気検出素子Sα,Sβの占有スペースを小さくすることができかつこれら磁気検出素子Sα,Sβの各電流線5u,5v,5wに対する位置合わせを容易にすることもできる。
【0074】
(5)第2のレイアウト例によれば、α軸磁気検出素子Sαのα軸Oαを第2仮想線L2に対し直交させ、さらにβ軸磁気検出素子Sβのβ軸Oβを第2仮想線L2と平行にする。これにより、クラーク変換後の二相電流と等価な出力を得ることができる。
【0075】
(6)本実施形態では、2つの磁気検出素子Sα,Sβの中心位置と電流線5v,5wとの間の距離を、中心位置と電流線5uとの間の距離に対し2の平方根倍大きくするとともに、β軸磁気検出素子Sβの出力感度を、α軸磁気検出素子Sαの出力感度に対し3の平方根倍大きくすることにより、クラーク変換後の二相電流と等価な出力を2つの磁気検出素子Sα,Sβから得ることができる。
【0076】
(7)本実施形態では、2つの磁気検出素子Sα,Sβをそれぞれコイルとするとともに、これら2つの磁気検出素子Sα,Sβの間で、鎖交面積、線材の太さ、線材の材質、線材の巻き数、線材の長さ、コアの有無、コアの材質、コアの形状、及びコアの断面積等の複数の出力感度調整パラメータの何れか又は複数に違いを設ける。これにより、容易にβ軸磁気検出素子Sβの出力感度をα軸磁気検出素子Sαの出力感度よりも大きく、より具体的には、α軸磁気検出素子Sαの出力感度とβ軸磁気検出素子Sβの出力感度との比を1:√3に調整することができる。
【0077】
(8)本実施形態では、β軸コイル71の内径をα軸コイル61の外径よりも大きくし、このα軸コイル61をβ軸コイル71の内側において各々の中心位置が一致しかつα軸Oαとβ軸Oβとが直交するように設けることにより、これら磁気検出素子Sα,Sβの占有スペースを小さくすることができる。
【0078】
(9)本実施形態では、α軸支持部材62によってα軸コイル61の内周部61aの少なくとも一部を支持することにより、α軸コイル61の形状を維持することができる。またβ軸支持部材72によってβ軸コイル71の内周部71aの少なくとも一部及びα軸磁気検出素子Sαの少なくとも一部を支持することにより、α軸コイル61及びβ軸コイル71の中心位置を一致させながらβ軸コイル71の形状を維持することができる。よって本実施形態によれば、振動によるα軸コイル61及びβ軸コイル71の変形や位置ずれを防止することができるので、電流の検出精度を維持することができる。
【0079】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る電流検出装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る電流検出装置は、第1実施形態に係る電流検出装置3と、2軸磁気検出ユニットの構成が異なる。なお以下では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0080】
図5は、本実施形態に係る電流検出装置3´の2軸磁気検出ユニットS´の構成を示す斜視図である。なお以下では、2つの磁気検出素子Sα´,Sβ´を、第1実施形態に係る2軸磁気検出ユニットSと同様にコイル型とした場合について説明するが、本発明はこれに限らない。これら磁気検出素子Sα´,Sβ´の両方又は何れかは、例えばホール素子によって構成してもよい。
【0081】
2軸磁気検出ユニットS´は、図示しない電流線を流れる電流によって発生する磁界の磁束密度のα軸Oαに沿った成分に応じた検出信号を出力するα軸磁気検出素子Sα´と磁束密度のβ軸Oβに沿った成分に応じた検出信号を出力するβ軸磁気検出素子Sβ´とを、各々の検出軸Oα,Oβが直交しかつ各々の中心位置が一致するように組み合わせて構成される。なお本実施形態に係るα軸磁気検出素子Sα´及びβ軸磁気検出素子Sβ´は、それぞれ2系統の検出信号を出力する点において、第1実施形態に係るα軸磁気検出素子Sα及びβ軸磁気検出素子Sβと異なる。
【0082】
α軸磁気検出素子Sα´は、互いに平行に設けられた2つの円環状の第1α軸コイル81及び第2α軸コイル84と、第1α軸コイル81の内側に設けられかつこの第1α軸コイル81の内周部81aの少なくとも一部を支持する第1α軸支持部材82と、第2α軸コイル84の内側に設けられかつこの第2α軸コイル84の内周部84aの少なくとも一部を支持する第2α軸支持部材85と、を備える。
【0083】
第1α軸コイル81及び第2α軸コイル84は、それぞれ独立した導電性の線材を、α軸Oαに沿って視て円環状に巻き回すことによって構成される。第1α軸コイル81は、α軸Oαに沿って視て、例えば時計回りに巻き回して構成され、第2α軸コイル84は、α軸Oαに沿って視て、例えば反時計回り、すなわち第1α軸コイル81に対し逆回りに巻き回して構成される。これら第1α軸コイル81及び第2α軸コイル84は、α軸Oαを中心軸として同軸になるように、所定間隔空けて互いに平行に設けられている。従ってこれら2つのα軸コイル81,84を組み合わせて構成されるα軸磁気検出素子Sα´では、α軸Oα上における第1α軸コイル81の中心と第2α軸コイル84の中心との間の中点がα軸磁気検出素子Sα´の中心となる。また以下では、これらα軸コイル81,84の間のα軸Oαに沿った間隔は、このα軸磁気検出素子Sα´の中心と各電流線5u,5v,5wとの間の距離と比較して十分に小さいものとする。
【0084】
第1α軸支持部材82は、α軸Oαに対し直交する面に沿って延びる円盤状でありかつ第1α軸コイル81の内周部81aを全周にわたって支持する。また第1α軸支持部材82の中央には、α軸Oαに沿って延びる中央貫通孔83が形成されている。また第2α軸支持部材85は、α軸Oαに対し直交する面に沿って延びる円盤状でありかつ第2α軸コイル84の内周部84aを全周にわたって支持する。また第2α軸支持部材85の中央には、α軸Oαに沿って延びる中央貫通孔86が形成されている。なお本実施形態では、これらα軸支持部材82,85は、それぞれα軸コイル81,84の内周部81a,84aを全周にわたって支持する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。これらα軸支持部材82,85は、後述のβ軸支持部材92,96と同様に、α軸コイル81,84の内周部81a,84aのうち対向する2辺を含む少なくとも一部を支持してもよい。
【0085】
β軸磁気検出素子Sβ´は、互いに平行に設けられた2つの円環状の第1β軸コイル91及び第2β軸コイル85と、第1β軸コイル91の内側に設けられかつこの第1β軸コイル91の内周部91aの少なくとも一部を支持する第1β軸支持部材92と、第2β軸コイル95の内側に設けられかつこの第2β軸コイル95の内周部95aの少なくとも一部を支持する第2β軸支持部材96と、を備える。
【0086】
第1β軸コイル91及び第2β軸コイル95は、それぞれ独立した導電性の線材を、β軸Oβに沿って視て円環状に巻き回すことによって構成される。第1β軸コイル91は、β軸Oβに沿って視て、例えば時計回りに巻き回して構成され、第2β軸コイル95は、β軸Oβに沿って視て、例えば反時計回り、すなわち第1β軸コイル91に対し逆回りに巻き回して構成される。これら第1β軸コイル91及び第2β軸コイル95は、β軸Oβを中心軸として同軸になるように、所定間隔空けて互いに平行に設けられている。従ってこれら2つのβ軸コイル91,95を組み合わせて構成されるβ軸磁気検出素子Sβ´では、β軸Oβ上における第1β軸コイル91の中心と第2β軸コイル95の中心との間の中点がβ軸磁気検出素子Sβ´の中心となる。また以下では、これらβ軸コイル91,95の間のβ軸Oβに沿った間隔は、このβ軸磁気検出素子Sβ´の中心と各電流線5u,5v,5wとの間の距離と比較して十分に小さいものとする。
【0087】
図5に示すように、これらβ軸コイル91,95の内径は、上述のα軸コイル81,84の外径よりも大きい。これにより、
図5に示すように2つのα軸コイル81,84を、これらα軸コイル81,84よりも大径のβ軸コイル91,95の内側において、α軸Oαとβ軸Oβとが直交しかつα軸磁気検出素子Sα´の中心位置とβ軸磁気検出素子Sβ´の中心位置とが上記α軸Oαとβ軸Oβの交点において一致するように配置することができる。これにより2つのα軸コイル81,84は、α軸Oαとβ軸Oβの交点を挟み互いに平行に設けられ、2つのβ軸コイル9,95は、上記交点を挟み互いに平行に設けられる。またβ軸磁気検出素子Sβ´の出力感度をα軸磁気検出素子Sα´の出力感度よりも大きくすることができる。より具体的には、β軸コイル91,95の鎖交面積がα軸コイル81,84の鎖交面積に対し3の平方根倍大きくなるように、β軸コイル91,95の径をα軸コイル81,84の径よりも大きくすることにより、β軸磁気検出素子Sβ´の出力感度をα軸磁気検出素子Sα´の出力感度に対し3の平方根倍大きくすることができる。
【0088】
第1β軸支持部材92は、β軸Oβに対し直交する面内において、第1β軸コイル91の径方向に沿って延びる板状である。第1β軸支持部材92は、その両端部である第1内周支持部931及び第2内周支持部932において、第1β軸コイル91の内周部91aの対向する2辺に接することにより、第1β軸コイル91の内周部91aを支持する。
【0089】
第2β軸支持部材96は、β軸Oβに対し直交する面内において、第2β軸コイル95の径方向に沿って延びる板状である。第2β軸支持部材96は、その両端部である第1内周支持部971及び第2内周支持部(図示せず)において、第2β軸コイル95の内周部915の対向する2辺に接することにより、第2β軸コイル95の内周部95aを支持する。
【0090】
なお本実施形態では、β軸支持部材92,96は、β軸コイル91,95の内周部91a,95aのうち対向する2辺を含む少なくとも一部を支持する場合について説明するが、本発明はこれに限らない。これらβ軸支持部材92,96は、上述のα軸支持部材82,85と同様に、β軸コイル91,95の内周部91a,95aを全周にわたって支持してもよい。
【0091】
これらβ軸支持部材92,96には、それぞれβ軸Oβに沿って延びる複数(
図5の例では、3つ)の貫通孔941,981が形成されている。β軸支持部材92,96のうちα軸Oαに沿って
図5中上方側の上端部942,982には、第1α軸支持部材82が第1α軸コイル81と共に固定されている。またβ軸支持部材92,96のうちα軸Oαに沿って
図5中下方側の下端部943,973には、第2α軸支持部材85が第2α軸コイル84と共に固定されている。これによりβ軸支持部材92,96は、α軸磁気検出素子Sα´の中心位置とβ軸磁気検出素子Sβ´の中心位置とが一致しかつα軸Oαとβ軸Oβとが直交するように、β軸コイル91,95の内周部91a,95aの少なくとも一部及びα軸磁気検出素子Sα´の少なくとも一部を支持する。
【0092】
なお本実施形態では、α軸支持部材82,85及びβ軸支持部材92,96を、非磁性体の材料、より具体的には樹脂によって成形した場合について説明するが、本発明はこれに限らない。α軸支持部材82,85及びβ軸支持部材92,96の両方又は何れかは、強磁性体の材料や強磁性体を練りこんだ樹脂によって成形してもよい。これによりα軸支持部材82,85やβ軸支持部材92,96を、α軸コイル81,84やβ軸コイル91,95に対するコアとして利用することができる。
【0093】
また以上のようにして2つの磁気検出素子Sα´,Sβ´を一体化して構成される2軸磁気検出ユニットS´において、β軸磁気検出素子Sβ´の出力感度はα軸磁気検出素子Sα´の出力感度に対し3の平方根倍に設定される。また上述のようなコイル型の磁気検出素子Sα´,Sβ´の出力感度は、第1実施形態と同様、2つの磁気検出素子Sα´,Sβ´の間で、上記複数の出力感度調整パラメータの何れか又は複数に違いを設けることにより、α軸磁気検出素子Sα´の出力感度とβ軸磁気検出素子Sβ´の出力感度との比を1:√3に調整する。
【0094】
本実施形態に係る電流検出装置3´によれば、以下の効果を奏する。
(10)電流検出装置3´では、α軸磁気検出素子Sα´をα軸Oαに沿って視て逆回りの2つのα軸コイル81,84によって構成し、β軸磁気検出素子Sβ´をβ軸Oβに沿って視て逆回りの2つのβ軸コイル91,95によって構成する。よって電流検出装置3´によれば、α軸磁気検出素子Sα´及びβ軸磁気検出素子Sβ´において、α軸コイル81,84及びβ軸コイル91,95の差動出力を利用することにより、同相ノイズ(信号源のグランドと測定回路のグランドの間に発生するノイズや、測定回路のグランドに別回路の電流が流れることにより発生するノイズ等)をキャンセルすることができるので、電流の検出精度を向上することができる。
【0095】
すなわち、下記式(6-1)に示すように第1α軸コイル81の出力値Vα1の内訳を、磁界によって誘起される成分Aと上記同相ノイズの成分Bとの和によって表すと、上述のように第1α軸コイル81に対し逆回りの第2α軸コイル84の出力値Vα2は、下記式(6-2)によって表される。従ってα軸磁気検出素子Sα´では、2つのα軸コイル81,84の差動出力(Vα1-Vα2)を利用することにより、同相ノイズの成分Bを容易にキャンセルすることができる。なおβ軸磁気検出素子Sβ´においても同様に作動出力を利用することにより、同相ノイズの成分を容易にキャンセルすることができる。
Vα1=A+B (6-1)
Vα2=-A+B (6-2)
【0096】
(11)電流検出装置3´では、2つのβ軸コイル91,95の内径を、2つのα軸コイル81,84の外径よりも大きくし、これら2つのα軸コイル81,84を、2つのβ軸コイル91,95の内側においてα軸Oαとβ軸Oβとが直交するように設け、これらα軸コイル81,84を、α軸Oα及びβ軸Oβの交点を挟み互いに平行に設け、さらにβ軸コイル91,95を、この交点を挟み互いに平行に設ける。これにより、これら磁気検出素子Sα´,Sβ´の中心位置を一致させながらこれら磁気検出素子Sα´,Sβ´の占有スペースを小さくすることができる。
【0097】
(12)電流検出装置3´では、第1α軸支持部材82によって第1α軸コイル81の内周部81aの少なくとも一部を支持し、第2α軸支持部材85によって第2α軸コイル84の内周部84aの少なくとも一部を支持することにより、これらα軸コイル81,84の形状を維持することができる。また第1β軸支持部材92によって第1β軸コイル91の内周部91aの少なくとも一部及びα軸磁気検出素子Sα´の少なくとも一部を支持し、第2β軸支持部材96によって第2β軸コイル95の内周部95aの少なくとも一部及びα軸磁気検出素子Sα´の少なくとも一部を支持することにより、これら磁気検出装置Sα´,Sβ´の中心位置を一致させながらβ軸コイル91,95の形状を維持することができる。よって電流検出装置3´によれば、振動によるα軸コイル81,84並びにβ軸コイル91,95の変形や位置ずれを防止することができるので、電流の検出精度を維持することができる。
【0098】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0099】
V…車両
W…駆動輪
M…モータ(三相モータ)
5u…U相電流線
5v…V相電流線
5w…W相電流線
1…インバータ
2…モータ制御装置
3,3´…電流検出装置
S,S´…2軸磁気検出ユニット
Sα,Sα´…α軸磁気検出素子
61…α軸コイル
62…α軸支持部材
Sβ,Sβ´…β軸磁気検出素子
71…β軸コイル
72…β軸支持部材
731…第1内周支持部
732…第2内周支持部
742…第1外周支持部
743…第2外周支持部
81…第1α軸コイル
82…第1α軸支持部材
84…第2α軸コイル
85…第2α軸支持部材
91…第1β軸コイル
92…第1β軸支持部材
931…第1内周支持部
932…第2内周支持部
95…第2β軸コイル
96…第2β軸支持部材
971…第1内周支持部